JP4306918B2 - 難燃性樹脂組成物、難燃性接着剤組成物及び金属接合体 - Google Patents

難燃性樹脂組成物、難燃性接着剤組成物及び金属接合体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、接着性に優れた難燃性樹脂組成物、特に金属の接合に適した常温硬化型の難燃性接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属板は、建築物の内装材、例えば間仕切板、ドア及びエレベーター等や収納庫に使用されている。
【0003】
金属接着に使用する接着剤として、省力化、省資源及び省エネルギーの点で、常温下、短時間で硬化する常温速硬化型接着剤組成物を使用することが要求されている。従来、常温速硬化型接着剤組成物としては、二液型速硬化エポキシ系接着剤組成物、嫌気性接着剤組成物、瞬間接着剤組成物及び第二世代のアクリル系接着剤組成物(SGA)が知られている。
【0004】
二液型速硬化エポキシ系接着剤は、主剤と硬化剤を計量、混合して被着体に塗布し、主剤と硬化剤の反応により硬化するものである。しかしながら、二液型速硬化エポキシ系接着剤は剥離強度と衝撃強度が低いという欠点があった。
【0005】
嫌気性接着剤は、被着体間において接着剤組成物を圧着して空気を遮断することにより硬化するものである。しかしながら、嫌気性接着剤組成物は、圧着する際に接着剤組成物の一部が被着体からハミ出した場合、ハミ出した部分は空気に接触するために硬化しないという欠点があった。又、被着体間のクリアランスが大きい場合も硬化しないという欠点があった。
【0006】
瞬間接着剤は通常シアノアクリレートを主成分とし、作業性に優れている。しかしながら、剥離強度や衝撃強度が低いという欠点があり、耐湿性と耐水性が劣るという欠点があった。
【0007】
SGAは二液性であるが、二液の正確な計量を必要とせず、計量や混合が不完全でも、時には二液の接触だけでも、常温で数分〜数十分で硬化するために、作業性に優れ、しかも剥離強度や衝撃強度が高く、ハミ出し部分の硬化も良好であるために、広く用いられている。
【0008】
しかしながら、硬化したSGAは有機高分子化合物であるために、SGAにより接着した金属接合体が火災に遭った場合は、高分子鎖の解重合または熱分解を生じ、接着剤としての機能が果たせなくなる。その結果、火災発生が想定される用途に使用される金属接合体には、従来のSGAを使用できないという制約があった。
【0009】
この結果、接合部が火炎に曝される危険のある用途には、難燃性を付与した両面テープを用いる方法や溶接工法が採用されている。
【0010】
難燃性を付与した両面テープを用いる方法として特開平9−194797号公報や特開平10−140094号公報には、光重合開始剤とポリリン酸アンモニウムを添加した速硬化型難燃性両面テープが開示されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法では被着体が紫外線を透過し得る必要があるために金属接着が出来ず、又、接着性が小さいために長期間高加重が加わる用途では耐久性が不足するという課題があった。
【0012】
又、特開平8−198907号公報には、芳香族環を臭素化した難燃剤と三酸化アンチモンとを配合した難燃性両面テープが開示されている。しかしながら、ハロゲン化合物と三酸化アンチモンの難燃性化合物の組み合わせは相乗効果により難燃性は優れるものの、ハロゲン化難燃剤は分解時にダイオキシンを発生することが危惧され、加熱時に腐食性のガスを発生し、金属被着体への悪影響が懸念されるという課題があった。
【0013】
一方、溶接工法では、接合に有機化合物を用いないため、高温に曝されても接合部位が剥がれ落ちないメリットがあるものの、溶接時に発生する熱により歪みが発生し、歪みの除去作業が必要であるという課題があった。又、意匠性が必要な金属接合体では外観が損なわれるという課題があった。
【0014】
本発明は、これらの課題を解決するために、特定の成分を用いた樹脂組成物が、人体や環境への悪影響が少なく、且つ火炎に曝される危険のある用途に用いられるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0015】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は、(1)重合性ビニルモノマー、(2)重合開始剤、(3)還元剤及び(4)一般式(A)及び/又は一般式(B)で示されるリン酸エステル及び(5)金属水酸化物を含有してなる難燃性樹脂組成物であり
【化2】
Figure 0004306918
(式中、R、R、R、R、R10、R11及びR12はCH−、C−、C−、CH−C−又は(CH−C−を示し、R、R、R、R、R10、R11及びR12は同一でもよく、異なってもよい)
さらに、(6)エラストマー成分を含有してなる該難燃性樹脂組成物であり、(1)重合性ビニルモノマーが重合性(メタ)アクリル酸誘導体である該難燃性樹脂組成物であり該難燃性樹脂組成物を第一剤及び第二剤に分け、第一剤が少なくとも重合開始剤を含有してなり、第二剤が少なくとも還元剤を含有してなる二剤型難燃性樹脂組成物である。
そして、該難燃性樹脂組成物からなる難燃性接着剤組成物である。
さらに、該難燃性樹脂組成物の硬化体である。
又、該難燃性接着剤組成物により接合してなる金属接合体である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明で使用する難燃性樹脂組成物は、(1)重合性ビニルモノマー、(2)重合開始剤、(3)還元剤及び必要に応じて用いる(6)エラストマー成分を含有する樹脂組成物と、(4)リン酸エステル及び(5)金属水酸化物とを含有するものである。なお、樹脂組成物には、パラフィン類や酸化防止剤を含有させてもよい。
【0018】
本発明で使用する(1)重合性ビニルモノマーは、ラジカル重合可能であればいかなるものでもよい。重合性ビニルモノマーの中では、硬化速度等の点で、重合性ビニルモノマーが重合性(メタ)アクリル酸誘導体であることが好ましく、重合性ビニルモノマー100質量部中、重合性(メタ)アクリル酸誘導体が70質量部以上であることがより好ましく、重合性ビニルモノマーが全て重合性(メタ)アクリル酸誘導体であることが最も好ましい。
【0019】
ここで重合性(メタ)アクリル酸誘導体とは、重合性アクリル酸誘導体及び/又は重合性メタクリル酸誘導体をいう。これらは通常、液状ないし固形状のものが使用される。重合性(メタ)アクリル酸誘導体としては例えば、次のようなものが挙げられる。
【0020】
▲1▼一般式
Z−O−R1
で示される単量体。
式中、Zは(メタ)アクリロイル基、 CH2=CHCOOCH2−CH(OH)CH2 −基又はCH2 =C(CH3)COOCH2−CH(OH)CH2 −基を示し、R1は水素、炭素数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、ベンジル基、フェニル基、テトラヒドロフルフリル基、グリシジル基、ジシクロペンチル基、ジシクロペンテニル基又は(メタ)アクリロイル基を示す。
【0021】
このような単量体としては例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、グリセロール(メタ)アクリレート及びグリセロールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
▲2▼一般式
Z−O−(R2O) p −R1
で示される単量体。
式中、Z及びR1は前述の通りである。R2は−C2H4−、−C3H6−、−CH2CH(CH3)−、−C4H8−又は−C6H12−を示し、pは1〜25の整数を表す。
【0023】
このような単量体としては例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及び1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
▲3▼一般式
【化3】
Figure 0004306918
で示される単量体。
式中、Z及びR2は前述の通りである。R3は水素又は炭素数1〜4のアルキル基を示し、qは0〜8の整数を表す。
【0025】
このような単量体としては例えば、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0026】
▲4▼前記▲1▼、▲2▼又は▲3▼に記載の単量体に含まれない多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル。
【0027】
このような単量体としては例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
▲5▼ (メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタンプレポリマー。
このような単量体は、例えば水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、有機ポリイソシアネート及び多価アルコールを反応することにより得られる。
【0029】
ここで水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0030】
又、有機ポリイソシアネートとしては例えば、トルエンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート等が挙げられる。
【0031】
多価アルコールとしては例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0032】
▲6▼ 下記一般式(I)て示される酸性リン酸化合物。
【化4】
Figure 0004306918
式中、Rは CH2=CR4CO(OR5)m −基(但し、R4は水素又はメチル基、R5は−C2H4−、−C3H6−、−CH2CH(CH3)−、−C4H8−、−C6H12−又は
【化5】
Figure 0004306918
を示し、mは1〜10の整数を表す。)を示し、nは1又は2の整数を表す。
【0033】
この一般式(I)で示される酸性リン酸化合物としては例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート及びビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)フォスフェート等が挙げられる。以上、▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼、▲5▼又は▲6▼の単量体は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0034】
又、重合性(メタ)アクリル酸誘導体以外の重合性ビニルモノマーとしては例えば、スチレン、α−アルキルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルエーテル、ジビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、並びに、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル等が挙げられる。
【0035】
本発明で使用する(2)重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましい。有機過酸化物としては例えば、クメンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド及びターシャリーブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの中では、反応性の点で、クメンハイドロパーオキサイドが好ましい。
【0036】
重合開始剤の使用量は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。0.1質量部未満だと硬化速度が遅いおそれがあり、20質量部を越えると貯蔵安定性が悪くなるおそれがある。
【0037】
本発明で使用する(3)還元剤は、前記重合開始剤と反応し、ラジカルを発生する公知の還元剤であれば使用できる。代表的な還元剤としては例えば、第3級アミン、チオ尿素誘導体及び遷移金属塩等が挙げられる。
【0038】
第3級アミンとしては例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン及びN,N−ジメチルパラトルイジン等が挙げられる。チオ尿素誘導体としては例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール、メチルチオ尿素、シブチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素及びエチレンチオ尿素等が挙げられる。遷移金属塩としては例えば、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅及びバナジルアセチルアセトネート等が挙げられる。これらの中では、反応性の点で、遷移金属塩が好ましく、バナジルアセチルアセトネートがより好ましい。
【0039】
還元剤の使用量は重合性ビニルモノマー100質量部に対して0.05〜15質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。0.05質量部未満だと硬化速度が遅いおそれがあり、15質量部を越えると未反応の還元剤が残り、接着強度が低下するおそれがある。
【0040】
本発明で使用する(4)リン酸エステルとしては、難燃性の点で、一般式(A)及び/又は一般式(B)で示されるリン酸エステルが好ましい。
【化6】
Figure 0004306918
(式中、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12はCH3−、C25−、C65−、CH3−C64−又は(CH32−C63−を示し、R6、R7、R8、R9、R10、R11及びR12は同一でもよく、異なってもよい)
【0041】
一般式(A)及び/又は一般式(B)で示されるリン酸エステルとしては、例えばトリエチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、クレジル−2,6−キシレニルフォスフェート、トレゾルシノールジフォスフェート、リン酸−t−ブチルフェニルフォスフェート及び芳香族縮合リン酸エステル類等が挙げられる。
【0042】
これらの中では、単位重量あたりのリン含有量が高く、難燃性が大きい点で、トリエチルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート及びトリキシレニルフォスフェートからなる群のうちの1種以上が好ましく、トリエチルフォスフェート及び/又はトリフェニルフォスフェートがより好ましく、沸点が低く、該難燃性樹脂組成物を用いて接合した被着体を塗装炉内で焼き付け塗装する際に塗装炉が汚染しにくい点で、トリフェニルフォスフェートが最も好ましい。
【0043】
リン酸エステルの使用量は、(1)重合性ビニルモノマー、(2)重合開始剤、(3)還元剤及び必要に応じて用いる(6)エラストマー成分を含有する樹脂組成物100質量部に対して5〜40質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。5質量部未満だと十分な難燃性が得られず、又、十分な難燃性を得るために添加する金属水酸化物の割合が多くなるので著しい粘度上昇を伴い、接着剤組成物の塗布作業が困難になるおそれがあり、40質量部を越えると接着性が極端に低下するおそれがある。
【0044】
本発明で使用する(5)金属水酸化物としては、樹脂組成物中の各成分の熱分解や解重合が起こりうる200〜400℃の範囲内に結晶水の放出を起こすものが好ましい。この条件を満たすものとして、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムが好ましい。これらの中では、硬化性や難燃性の点で、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0045】
金属水酸化物の使用量は、(1)重合性ビニルモノマー、(2)重合開始剤、(3)還元剤及び必要に応じて用いる(6)エラストマー成分を含有する樹脂組成物100質量部に対して10〜75質量部が好ましく、30〜50質量部がより好ましい。10質量部未満だと十分な難燃性が得られず、接着強度が低下するおそれがあり、75質量部を越えると、著しい粘度上昇を伴い、接着剤組成物の塗布作業が困難になるおそれがある。
【0046】
リン酸エステルと金属水酸化物の添加方法は特に制限はなく、▲1▼第一剤と第二剤それぞれに別のものを添加する方法、▲2▼一方の剤のみに添加する方法、▲3▼同じ割合で等量ずつ均等に配分する方法があるが、第一剤と第二剤の粘度が等しくなる点で、▲3▼の方法が好ましい。
【0047】
さらに、本発明では、樹脂組成物の靱性を向上させる目的で、(6)エラストマー成分を使用することが好ましい。エラストマー成分とは、常温でゴム状弾性を有する高分子物質をいい、(メタ)アクリル系モノマーに溶解又は分散できるものが好ましい。
【0048】
このような(6)エラストマー成分としては、アクリロニトリル−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−メチルメタクリレート共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS) 、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、並びに、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、線状ポリウレタン、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム及びブタジエンゴム等の各種合成ゴム、天然ゴム、スチレン−ポリブタジエン−スチレン系合成ゴムといったスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエチレン−EPDM合成ゴムといったオレフィン系熱可塑性エラストマー、並びに、カプロラクトン型、アジペート型及びPTMG型といったウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリブチレンテレフタレート−ポリテトラメチレングリコールマルチブロックポリマーといったポリエステル系熱可塑性エラストマー、ナイロン−ポリオールブロック共重合体やナイロン−ポリエステルブロック共重合体といったポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、並びに、塩ビ系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのエラストマー成分は相溶性が良ければ、1種又は2種以上が使用できる。
又、末端メタクリル変性したポリブタジエンも使用できる。
【0049】
これらの中では、樹脂組成物に対する溶解性及び接着性の点で、メチルメタクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン共重合体及び/又はアクリロニトリル−ブタジエンゴムが好ましく、メチルメタクリレート−ブタジエン−アクリロニトリル−スチレン共重合体とアクリロニトリル−ブタジエンゴムの併用がより好ましい。
【0050】
エラストマー成分の使用量は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して5〜50質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。5質量部未満だと剥離接着強さや衝撃接着強さが低下するおそれがあり、50質量部を越えると粘度が高すぎて作業上不都合が生じるおそれがある。
【0051】
又、本発明の接着剤組成物は空気に接している部分の硬化を迅速にするために各種パラフィン類を使用することができる。パラフィン類としては例えば、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバろう、蜜ろう、ラノリン、鯨ろう、セレシン及びカンデリラろう等が挙げられる。これらの中では、パラフィンが好ましい。パラフィン類の融点は40〜100℃のものが好ましい。
【0052】
パラフィン類の使用量は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、0.1〜5質量部であることが好ましい。0.1質量部未満だと空気に接している部分の硬化が悪くなるおそれがあり、5質量部を越えると接着強度が低下するおそれがある。
【0053】
更に、貯蔵安定性を改良する目的で重合禁止剤を含む各種の酸化防止剤等を使用することができる。酸化防止剤としては例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、トリフェニルホスファイト、フェノチアジン及びN−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。これらの中では、p−メトキシフェノールが好ましい。
【0054】
酸化防止剤の使用量は、重合性ビニルモノマー100質量部に対して、0.001〜3質量部が好ましい。0.001質量部未満だと効果がないおそれがあり、3質量部を越えると硬化速度が低下するおそれがある。
【0055】
本発明では粘度の調整や粘性・流動性の調整をするために、微粉末シリカ等の充填剤を使用してもよい。これらの他にも所望により可塑剤、着色剤及び防錆剤等の既に知られている物質を使用してもよい。
【0056】
本発明の実施態様として好ましくは接着剤組成物、特に好ましくは二剤型の接着剤組成物として使用することが挙げられる。二剤型については、本発明の接着剤組成物の必須成分全てを貯蔵中は混合せず、接着剤組成物を第一剤及び第二剤に分け、第一剤に少なくとも重合開始剤を、第二剤に少なくとも還元剤を別々に貯蔵する。二剤型は貯蔵安定性に優れる点で好ましい。この場合、両剤を同時に又は別々に塗布して接触、硬化することによって、二剤型の接着剤組成物として使用できる。
【0057】
本発明の接着剤組成物により被着体を接合して接合体を作製する。被着体の各種材料については、紙、木材、セラミック、ガラス、陶磁器、ゴム、プラスチック、モルタル、コンクリート及び金属等制限は無いが、被着体が金属の場合、優れた接着性を示す。
【0058】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。なお、以下、各物質の使用量の単位は質量部で示す。各物質については、次のような略号を使用した。
尚、パラフィンの融点は約56℃である。
【0059】
〔略号〕
NBR:アクリロニトリル−ブタジエンゴム
MBAS:メチルメタクリレート−ブタジェン−アクリロニトリル−スチレン共重合体
酸性リン化合物:アシッドフォスフォキシエチルメタクリレート
TPP:トリフェニルフォスフェート
TEP:トリエチルフォスフェート
【0060】
又各種物性については、次のようにして測定した。
【0061】
〔粘度〕
JIS K−7117に従い、第一剤と第二剤を500mlずつ取り、25℃の恒温槽に24時間放置したものを試料とした。粘度の測定は25℃で単一円筒型粘度計を用いて2分間連続して測定した(ローター回転数:20rpm)。
【0062】
〔引張剪断接着強さ〕
JIS K−6856に従い、試験片(100mm×25mm×1.6mmt、SECC鋼板)の片方に第一剤と第二剤を等量混合したものを塗布し、その後、直ちにもう片方の試験片を重ね合わせて張り合わせた後、室温で24時間養生したものを試料とした。
試料の引張剪断接着強さ(単位:MPa)は、温度23℃、相対湿度50%の環境下において、引張速度10mm/分で測定した。
【0063】
〔難燃性〕
UL−94垂直燃焼試験法に準じて厚さ1/8インチ(0.3175cm)の硬化物を作製し、燃焼性を評価した。
【0064】
実験例1
表1に示す組成の樹脂組成物を調製した。この樹脂組成物を用いて、表2に示す組成の二剤型難燃性接着剤組成物を調製し、物性を評価した。結果を表2に示す。
【0065】
【表1】
Figure 0004306918
【0066】
【表2】
Figure 0004306918
【0067】
実験例2
表3に示す組成の二剤型難燃性接着剤組成物を調製したこと以外は、実験例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
Figure 0004306918
【0069】
【発明の効果】
本発明の難燃性樹脂組成物によって、人体や環境への悪影響が少なく、難燃性と接着性に優れた金属接合体が得られるので、その産業上の有益性は極めて大きい。

Claims (7)

  1. (1)重合性ビニルモノマー、(2)重合開始剤、(3)還元剤及び(4)一般式(A)及び/又は一般式(B)で示されるリン酸エステル及び(5)金属水酸化物を含有してなる難燃性樹脂組成物。
    Figure 0004306918
    (式中、R、R、R、R、R10、R11及びR12はCH−、C−、C−、CH−C−又は(CH−C−を示し、R、R、R、R、R10、R11及びR12は同一でもよく、異なってもよい)
  2. さらに、(6)エラストマー成分を含有してなる請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
  3. (1)重合性ビニルモノマーが重合性(メタ)アクリル酸誘導体である請求項1又は2記載の難燃性樹脂組成物。
  4. 請求項1〜のうちの1項記載の難燃性樹脂組成物を第一剤及び第二剤に分け、第一剤が少なくとも重合開始剤を含有してなり、第二剤が少なくとも還元剤を含有してなる二剤型難燃性樹脂組成物。
  5. 請求項1〜のうちの1項記載の難燃性樹脂組成物からなる難燃性接着剤組成物。
  6. 請求項1〜のうちの1項記載の難燃性樹脂組成物の硬化体。
  7. 請求項項記載の難燃性接着剤組成物により接合してなる金属接合体。
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