JP4620888B2 - 新規な尿素結合を有するカルバミド酸エステル化合物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な尿素結合を有するカルバミド酸エステル化合物に関し、更に詳しくは、熱エネルギーを制御することにより発色画像の形成と消去が可能な可逆性感熱記録材料の発色消色制御剤として有用な新規な尿素結合を有するカルバミド酸エステル化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の化合物を利用可能な可逆性感熱記録媒体は、電子供与性呈色性化合物(以下、発色剤またはロイコ染料ともいう)と電子受容性化合物(以下、顕色剤ともいう)とを主成分とする感熱記録層を設けて構成されている。従来、感熱記録媒体は広く知られており、ファクシミリ、ワードプロセッサー、科学計測機などのプリンターに使用されている。しかし、これらの実用化されている従来の記録媒体はいずれも不可逆的な発色であり、一度記録した画像を消去して繰り返して使用することはできない。
【0003】
しかし、特許公報によれば発色と消色を可逆的に行なうことができる記録媒体も提案されており、たとえば、顕色剤として没食子酸とフロログルシノールの組合せを用いるもの(特開昭60−193691号公報に記載)、顕色剤にフェノールフタレインやチモールフタレインなどの化合物を用いるもの(特開昭61−237684号公報に記載)、発色剤と顕色剤とカルボン酸エステルの均質相溶体を記録層に含有するもの(特開昭62−138556号公報、特開昭62−138568号公報、特開昭62−140881号公報等に記載)、顕色剤にアスコルビン酸誘導体を用いるもの(特開昭63−173684号公報に記載)、顕色剤にビス(ヒドロキシフェニル)酢酸または没食子酸と高級脂肪族アミンとの塩を用いるもの(特開平2−188293号公報、特開平2−188294号公報等に記載)などが開示されている。
【0004】
さらに、本発明者らは、先に特開平5−124360号公報において、顕色剤として長鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール化合物を用い、これと発色剤であるロイコ染料とを組み合わせることによって、発色と消色を加熱冷却条件により容易に行なわせることができ、しかもその発色状態と消色状態を常温において安定に保持させることが可能であり、その上、発色と消色を安定して繰り返すことが可能な可逆性感熱発色組成物、及びこれを記録層に用いた可逆性感熱記録媒体を提案した。これは発色の安定性と消色性のバランスや発色濃度の点で実用レベルの性能を持つものであるが、さらに高速消去性と広範囲な使用環境下での保存安定性の面で改良すべき余地があった。その後、長鎖脂肪族炭化水素基をもつフェノール化合物について特定の構造の使用が提案(特開平6−210954号公報に記載)されているが、これも同様の問題を持っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の課題は、可逆性感熱記録材料の発色消色制御剤として用いられたとき、高速消去性と広範囲な使用環境下での保存安定性に優れる可逆性感熱記録材料を与える新規な化合物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、新規な発色消色制御剤を種々設計、合成、検討し、その結果、新規な発色消色制御剤として有用な化合物の製造に成功し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、上記課題は、本発明の、「下記一般式(I)で表わされる尿素結合を有するカルバミド酸エステル化合物。
【0008】
【化2】
(式中、nは11〜21の整数を表わす。)」によって達成される。
【0009】
以下、本発明について、さらに詳しく説明する。
本発明は前記一般式(I)で表わされる新規な尿素結合を有するカルバミド酸エステル化合物に関するが、前記一般式(I)で表わされる化合物は、たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネートの二量体に対し、炭素数12〜22の鎖状のアルコールの2当量を混合して行なわれ、この付加反応によりほぼ定量的に目的の本発明の化合物(I)を生成する。
【0010】
また、この合成反応は、有機溶媒中で行なわれ、イソシアネートと反応して上記の合成反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、不活性溶媒を用いることが好ましい。ここで言う不活性溶媒とは、トルエン、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、アセトン、メチルエチルケトン、THF等である。
なお、本発明の新規な尿素結合を有するカルバミド酸エステル化合物はこれらの合成方法に何ら限られるものではない。
【0011】
本発明の化合物は、可逆性感熱記録材料に含有される発色消色制御剤として有用であり、この可逆性感熱記録材料は、この化合物とともに基本的に顕色剤と発色剤を組み合わせることによって構成されるものである。
【0012】
本発明の化合物を使用した可逆性感熱記録材料は、顕色剤および発色剤と本発明の化合物を主成分として構成される。
ここで用いる発色剤は電子供与性を示すものであり、それ自体無色あるいは淡色の染料前駆体(ロイコ染料)であり、特に限定されず、従来公知なもの、例えばトリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物、インドリノフタリド系化合物、アザフタリド系化合物などから選択できる。
【0013】
例えば、以下に示す発色剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、
2−(N−メチル−o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、
2,3−ジメチル−6−ジメチルアミノフルオラン、
2−(o−クロロアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、
3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインド−3−イル)−4−アザフタリド等。
【0014】
次に、本発明の化合物とともに用いられる発色剤と組み合わせて用いられる顕色剤について説明する。
顕色剤には、すでに特開平5−124360号公報に、長鎖炭化水素基をもつリン酸化合物、脂肪酸化合物フェノール化合物の代表例とともに記載されているように、分子内に発色剤を発色させることができる顕色能をもつ構造と、分子間の凝集力をコントロールする構造を併せ持つ化合物が使用される。顕色能をもつ構造としては、一般の感熱記録媒体と同様に、たとえばフェノール性水酸基、カルボキシル基、リン酸基などの酸性の基が用いられるが、これらに限らず発色剤を発色できる基をもてばよい。これらには、たとえばチオ尿素基、カルボン酸金属塩などがある。分子間の凝集力をコントロールする代表的な構造としては長鎖アルキル基などの炭化水素基がある。この炭化水素基の炭素数は、一般的には8以上であることが良好な発色・消色特性を得る上で好ましい。
【0015】
また、この炭化水素基には不飽和結合が含まれていてもよく、また分枝状の炭化水素基も包含される。この場合も、主鎖部分は炭素数8以上であることが好ましい。また、この炭化水素基は、たとえばハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基などの基で置換されていてもよい。
【0016】
上記のように顕色剤は、顕色能を持つ構造と炭化水素基で代表される凝集力を制御する構造が連結した構造をもつ。この連結部分には下記に示すようなヘテロ原子を含む2価の基、または、これらの基が複数個組み合わされた基をはさんで結合していてもよい。
また、フェニレン、ナフチレンなどの芳香環または複素環などをはさんで結合していてもよいし、これら両方をはさんでいてもよい。
炭化水素基は、その鎖状構造中に上記と同様な2価の基、すなわち芳香環やヘテロ原子を含む2価の基を有するものであってもよい。
【0017】
以下、顕色剤については、上記の特開平5−124360号公報に示されているものの他、特開平9−193558号公報、特開平9−193557号公報、特開平9−315009号公報、特開平9−323479号公報、特開平9−290566号公報、特開平10−861号公報、特開平10−6655号公報、特願平8−166894号公報、特願平9−161908号公報等に示される顕色剤を用いることができる。
しかしながら、本発明の化合物と用いられる発色剤および顕色剤は上記の例に限定されるものではない。
【0018】
本発明の化合物を使用した可逆性感熱記録材料の実使用上の形態としては、支持体上に顕色剤と発色剤および本発明の化合物を主成分として記録層を設けるものである。支持体としては紙、樹脂フィルム、合成紙、金属箔、ガラス又はこれらの複合体などであり、記録層を保持できるものであればよい。
【0019】
可逆性感熱記録材料において、発色剤と顕色剤の割合は、使用する化合物の組み合わせにより適切な範囲が変化するが、おおむねモル比で発色剤1に対して顕色剤が0.1〜20の範囲であり、好ましくは0.2〜10の範囲である。この範囲より顕色剤が少なくても多くても発色状態の濃度が低下し、実用に適さない。また、本発明の化合物の割合は顕色剤に対し、0.1重量%〜300重量%が好ましく、より好ましくは1重量%〜100重量%が好ましい。
【0020】
本発明の化合物を用いた可逆性感熱記録媒体において、発色画像を形成させるためには、いったん発色温度以上に加熱したのち急冷されるようにすればよい。具体的には、たとえばサーマルヘッドやレーザー光で短時間加熱すると記録層が局部的に加熱されるため、直ちに熱が拡散し急激な冷却が起こり、発色状態が固定できる。一方、消色させるためには適当な熱源を用いて比較的長時間加熱し冷却するか、発色温度よりやや低い温度に一時的に加熱すればよい。長時間加熱すると記録媒体の広い範囲が昇温し、その後の冷却は遅くなるため、その過程で消色が起きる。この場合の加熱方法には、熱ローラー、熱スタンプ、熱風などを用いても良いし、サーマルヘッドを用いて長時間加熱しても良い。記録層を消色温度域に加熱するためには、例えばサーマルヘッドへの印加電圧やパルス幅を調節することによって、印加エネルギーを記録時よりやや低下させればよい。
この方法を用いれば、サーマルヘッドだけで記録・消去ができ、いわゆるオーバーライトが可能になる。もちろん、熱ローラー、熱スタンプによって消色温度域に加熱して消去することもできる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、その他の化合物も同様にして合成および評価した。
(合成例)
表1に記載の長鎖アルコールそれぞれ0.02molを、それぞれヘキサメチレンジイソシアネート2量体0.01molおよびトルエン50mlを混合し、5時間環流させ、その後室温まで冷却すると白色の結晶が析出した。これを減圧下で溶媒を除去し粗結晶を得た。これをメチルエチルケトンより再結晶することにより精製して目的物を得た。また、赤外吸収スペクトルより、得られた白色結晶が目的物であることを確認した。
【0022】
(可逆性感熱記録媒体の作成例)
下記組成物をボールミルを用いて粒径1〜4μmまで粉砕分散して記録層塗布液を調整した。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 2部
N−(4−ヒドロキシフェニル)−6−
(N’−オクタデシルウレイド)ヘキサンアミド 8部
表1に記載の本発明の化合物 1部
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体
(ユニオンカーバイト社製、VYHH) 20部
メチルエチルケトン 45部
トルエン 45部
【0023】
上記組成の記録層塗布液を、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にワイヤーバーを用いて塗布し、乾燥して膜厚約6.0μmの記録層を持つ本発明の化合物を用いた可逆性感熱記録媒体を作製した。
得られた記録媒体を8ドット/mmのサーマルヘッドによって印加電圧13.3V、印加パルス幅1.2ミリ秒の条件で印字し発色画像を得た。この発色画像の光学濃度をマクベス濃度計RD−914を使用して測定した。次いで、この発色した記録媒体をホットスタンプを用いて90℃、110℃の消去温度で、0.2秒間加熱した後濃度を測定した。これらの結果を表1に示す。またこの印字、0.5秒間の加熱消去を繰り返し10回行なった結果を表1に示す。
【0024】
表1より、本発明の化合物を添加しない場合、低い消去加熱、短時間では消去が地肌まで達していないのに比べ、本発明の化合物を使用した記録媒体が、0.2秒間の加熱で地肌濃度と同じレベルまで消色することがわかる。さらにまた、印字、消去が安定して繰り返されることがわかる。また、発色した記録媒体を50℃乾燥条件下に24時間保持し、保存前後の地肌濃度および発色濃度を測定し保存性を調べた。その結果を表1に示す。
なお、表中の濃度保存率は下記式で与えられる。
濃度保持率(%)={(保存後発色濃度−保存後地肌濃度)/(保存前発色濃度−保存前地肌濃度)}×100
【0025】
【表1】
【0026】
表1の結果から、この記録媒体が、50℃の環境においても、画像の退色がないことがわかる。したがって、本発明の化合物を用いた記録媒体が高速に消去可能であり、かつ保存安定性に優れた可逆性感熱記録媒体であることが明らかになった。
【0027】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明より明らかなように、本発明のカルバミド酸エステル化合物は、新規な化合物であり、本発明の化合物を発色消色制御として用いた可逆性感熱記録材料および媒体は、コントラストの高い画像の形成と消色が容易な操作により可能であり、発色画像は通常の使用条件下で安定であり、実用性の高い書き換え型記録媒体が得られるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化合物、表1中No.1の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図2】本発明の化合物、表1中No.2の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の化合物、表1中No.3の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図4】本発明の化合物、表1中No.4の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図5】本発明の化合物、表1中No.5の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
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