JP4112139B2 - 可逆性感熱記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応を利用した可逆性感熱発色組成物を用い、熱エネルギーを制御することにより発色画像の形成と消去が可能な可逆性感熱記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子供与性呈色性化合物(以下、発色剤またはロイコ染料ともいう)と電子受容性化合物(以下、顕色剤ともいう)との間の発色反応を利用した感熱記録媒体は広く知られており、ファクシミリ、ワードプロセッサー、科学計測機などのプリンターに使用されている。しかし、これらの実用化されている従来の記録媒体はいずれも不可逆的な発色であり、一度記録した画像を消去して繰り返して使用することはできない。
【0003】
一方、特許公報によれば発色と消色を可逆的に行なうことができる記録媒体も提案されており、例えば、顕色剤として没食子酸とフロログルシノールの組み合わせを用いるもの(特開昭60−193691号公報)、顕色剤にフェノールフタレインやチモールフタレインなどの化合物を用いるもの(特開昭61−237684号公報)、発色剤と顕色剤とカルボン酸エステルの均質相溶体を記録層に含有するもの(特開昭62−138556号公報、特開昭62−138568号公報および特開昭62−140881号公報等)、顕色剤にアスコルビン酸誘導体を用いたもの(特開昭63−173684号公報)、顕色剤にビス(ヒドロキシフェニル)酢酸または没食子酸と高級脂肪族アミンとの塩を用いるもの(特開平2−188293号公報および特開平2−188294号公報等)などが開示されている。
しかしながら、これら従来の可逆性感熱記録媒体は、発色の安定性と消色性の両立という点、或いは発色の濃度や繰り返しにおける安定性という点で問題を残しており、実用的な記録媒体として満足し得るものではない。
【0004】
更に、本発明者らは、先に特開平5−124360号公報において顕色剤として長鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール化合物を用い、これと発色剤であるロイコ染料と組み合わせることによって、発色と消色を加熱冷却条件により容易に行わせることができ、しかもその発色状態と消色状態を常温において安定に保持させることが可能であり、しかも発色と消色を安定して繰り返すことが可能な可逆性感熱発色組成物およびこれを記録層に用いた可逆性感熱記録媒体を提案した。これは発色の安定性と消色性のバランスや発色濃度の点で実用レベルの性能を持つものであるが、さらに広範囲な使用環境への対応や発色消色条件の適用範囲の面で改良すべき余地があった。その後、長鎖脂肪族炭化水素基をもつフェノール化合物についての特定の構造の使用が提案されているが(特開平6−210954号公報)、これも同様の問題を持っていた。
【0005】
上記のように、発色・消色を繰り返すことが可能な可逆性感熱記録媒体が提案されてきたが、この種の記録媒体には保存性(対温度・対湿度・対光)および消色性、特に消色感度が依然不十分であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、発色状態の保存安定性が高く、同時に消色性にも優れる可逆性感熱発色組成物および可逆性感熱記録媒体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題点を解決するために鋭意検討を行なった結果、特定の構造の発色消色制御剤(第1の発明においては特定のマレイミド、第2の発明においては特定のフタルイミド、第3の発明においては特定のピペラジン誘導体)を用いることにより、熱に対する発色状態の保存安定性を上げることができ、同時に消色性にも優れ、かつ良好な高速消去特性が得られることを見い出した。本発明においては、これら特定のマレイミド、特定のフタルイミド、特定のピペラジン誘導体は単独で或いは混合して用いることができる。
【0008】
熱に対する保存性が向上する理由としては、発色消色制御剤が発色状態において、主に染料と長鎖アルキルを有する顕色剤が構成する発色凝集構造中に入り込み、より安定な構造をつくるために高温での発色構造が安定に保持されるためと考えられる。また、消色過程においては、顕色剤同士のみの凝集力よりも強い凝集構造をとるために、消色状態への結晶化を促進させるために消色時の消し残りが少なくなると考えられる。
【0009】
すなわち、上記課題は、以下の本発明により達成される。
電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物及び発色消色制御剤を含有し、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱記録層を支持体上に設けた可逆性感熱記録媒体であって、前記発色消色制御剤が、下記一般式(1)乃至(4)で表わされる化合物から選ばれた少なくとも一種であり、前記電子受容性化合物が、下記一般式(5)で表わされるフェノール化合物であることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
【0010】
【化6】
R:C 4 〜C 21 の直鎖炭化水素基
X:−NHCONH−,−NHCSNH−,−NHCO−,
−CONH−,−NHSO2−
l=0〜12
m=0又は1
但し、(a)m=0のとき
l=0
R:C 12 〜C 18 の直鎖炭化水素基
(b)m=1のとき
l=2〜12
R:C 4 〜C 21 の直鎖炭化水素基
【0011】
【化7】
R1:C 2 〜C12の直鎖炭化水素基
R2,R3:C 2 〜C 4 の直鎖炭化水素基
l,m,nはそれぞれ0又は1
但し、(a)l=0のとき
m,n=0
R 1 :C 2 〜C 12 の直鎖炭化水素基
(b)l=1のとき
m=1
n=0又は1
R 1 ,R 3 :C 2 又はC 3 の直鎖炭化水素基
R 2 :C 2 〜C 4 の直鎖炭化水素基
【0012】
【化8】
R:C4〜C 18 の直鎖炭化水素基
X:−CO−,−CONH−
Y:−NHCONH−,−NHCO−,−CONH−
m=0又は1
n=0〜12
但し、(a)m=0のとき
n=0
R:C 4 〜C 18 の直鎖炭化水素基
(b)m=1のとき
n=4〜11
R:C 4 〜C 18 の直鎖炭化水素基
【0013】
【化9】
R1:C1〜C 18 の直鎖炭化水素基
R2:C 4 〜C 18 の直鎖炭化水素基
X1,X2:−NHCO−,−CONH−,−NHCONH−
m,q=0〜12
l,n,p,s=0又は1
但し、(a)s,n=0のとき
l=0又は1
m,q=0
p=0又は1
R 1 :C 1 〜C 18 の直鎖炭化水素基
R 2 :C 4 〜C 18 の直鎖炭化水素基
(b)s=0,n=1のとき
m=4又は5
q,l=0
p=0
R 1 :C 1 〜C 5 の直鎖炭化水素基
R 2 :C 11 〜C 18 の直鎖炭化水素基
(c)s=1のとき
n=1
l,p=0
m,q=4又は5
R 1 ,R 2 :C 4 〜C 8 の直鎖炭化水素基
【0014】
【化10】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の可逆性感熱記録層は、基本的に前記の顕色剤と発色剤を組み合わせることによって構成されるものである。本発明で用いる発色剤は電子供与性を示すものであり、それ自体無色或いは淡色の染料前駆体(ロイコ染料)であり、特に限定されず、従来公知のもの、例えばフタリド系化合物、アザフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物などから選択できる。
【0019】
本発明の発色剤の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられるが、何等これらに限定されるものではない。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(N−メチル−o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、2,3−ジメチル−6−ジメチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−3−クロロ−6−ジメチルアミノフルオラン、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインド−3−イル)−4−アザフタリド等。
【0020】
次に本発明における化合物とともに用いられる発色剤と組み合わせて使用される顕色剤について説明する。顕色剤には、すでに特開平5−124360号公報に長鎖炭化水素基をもつリン酸化合物、脂肪酸化合物、フェノール化合物の代表例とともに開示されているように、顕色剤と発色剤が凝集構造を形成することにより発色が安定化し、また両者のうち少なくとも一方の化合物の分子が凝集或いは結晶化することにより、発色剤と顕色剤が相分離して消色するため、分子内に発色剤を発色させることができる顕色能をもつ構造と、分子間の凝集力をコントロールする構造を併せ持つ化合物が使用される。顕色能をもつ構造としては、一般の感熱記録媒体と同様に、たとえば、フェノール性水酸基、カルボキシル基、リン酸基などの酸性の基が用いられるが、これらに限らず発色剤を発色できる基を持てはよい。これらには、たとえばチオ尿素基、カルボン酸金属塩などがある。分子間の凝集力をコントロールする代表的な構造としては、長鎖アルキル基などの炭化水素基がある。この炭化水素基の炭素数は、一般的には8以上であることが良好な発色・消色特性を得る上で好ましい。また、この炭化水素基には不飽和結合が含まれていてもよく、また分枝状の炭化水素基も包含される。この場合も、主鎖部分は炭素数8以上であることが好ましい。また、この炭化水素基は、たとえば、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基などの基で置換されていてもよい。
【0021】
上記のように顕色剤は、顕色能を持つ構造と炭化水素基で代表される凝集力を制御する構造が連結した構造をもつ。この連結部分には下記に示すようなヘテロ原子を含む2価の基、または、これらの基が複数個組み合わせた基をはさんで結合していてもよい。また、フェニレン、ナフチレンなどの芳香環または複素環などをはさんで結合していてもよいし、これら両方をはさんでいてもよい。炭化水素基は、その鎖状構造中に上記と同様な2価の基、すなわち芳香環やヘテロ原子を含む2価の基を有するものであってもよい。
【0022】
以下、本発明に用いられる顕色剤について具体的に例示する。
・有機リン酸系の顕色剤
有機リン酸系の顕色剤としては以下のような化合物が例示できる。
ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸、ドコシルホスホン酸、テトラコシルホスホン酸、リン酸ジテトラデシルエステル、リン酸ジヘキサデシルエステル、リン酸ジオクタデシルエステル、リン酸ジエイコシルエステル、リン酸ジベヘニルエステルなど。
【0023】
・脂肪族カルボン化合物
脂肪族カルボン化合物としては以下のような化合物が例示できる。
2−ヒドロキシテトラデカン酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、2−ヒドロキシエイコサン酸、2−ヒドロキシドコサン酸、2−ブロモヘキサデカン酸、2−ブロモオクタデカン酸、2−ブロモエイコサン酸、2−ブロモドコサン酸、3−ブロモオクタデカン酸、3−ブロモドコサン酸、2,3−ジブロモオクタデカン酸、2−フルオロドデカン酸、2−フルオロテトラデカン酸、2−フルオロヘキサデカン酸、2−フルオロオクタデカン酸、2−フルオロエイコサン酸、2−フルオロドコサン酸、2−ヨードヘキサデカン酸、2−ヨードオクタデカン酸、3−ヨードヘキサデカン酸、3−ヨードオクタデカン酸、パーフルオロオクタデカン酸など。
【0024】
・脂肪族ジカルボン酸およびトリカルボン酸化合物
脂肪族ジカルボン酸およびトリカルボン酸化合物としては以下のような化合物が例示できる。
2−ドデシルオキシこはく酸、2−テトラデシルオキシこはく酸、2−ヘキサデシルオキシこはく酸、2−オクタデシルオキシこはく酸、2−エイコシルオキシこはく酸、2−ドデシルオキシこはく酸、2−ドデシルチオこはく酸、2−テトラデシルチオこはく酸、2−ヘキサデシルチオこはく酸、2−オクタデシルチオこはく酸、2−エイコシルチオこはく酸、2−ドコシルチオこはく酸、2−テトラコシルチオこはく酸、2−ヘキサデシルジチオこはく酸、2−オクタデシルジチオこはく酸、2−エイコシルジチオこはく酸、ドデシルこはく酸、テトラデシルこはく酸、ペンタデシルこはく酸、ヘキサデシルこはく酸、オクタデシルこはく酸、エイコシルこはく酸、ドコシルこはく酸、2,3−ジヘキサデシルこはく酸、2,3−ジオクタデシルこはく酸、2−メチル−3−ヘキサデシルこはく酸、2−メチル−3−オクタデシルこはく酸、2−オクタデシル−3−ヘキサデシルこはく酸、ヘキサデシルマロン酸、オクタデシルマロン酸、エイコシルマロン酸、ドコシルマロン酸、ジヘキサデシルマロン酸、ジオクタデシルマロン酸、ジドコシルマロン酸、メチルオクタデシルマロン酸、2−ヘキサデシルグルタル酸、2−オクタデシルグルタル酸、2−エイコシルグルタル酸、ドコシルグルタル酸、2−ペンタデシルアジピン酸、2−オクタデシルアジピン酸、2−エイコシルアジピン酸、2−ドコシルアジピン酸、2−ヘキサデカノイルオキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、2−オクタデカノイルオキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸など。
【0025】
顕色剤には、分子間凝集力を制御する構造をもつフェノール化合物も好ましく用いられる。これには、たとえば下記の一般式(5)で表わされるフェノール化合物が例示できる。
【0026】
【化13】
【0027】
一般式(5)で表わされるフェノール化合物の具体例を下記表1にp,q,r,s,X,A,Y,Zの数または構造で示す。ただし、これらのそれぞれの具体例においてフェノール部のnは1〜3であり、たとえば4−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシフェニル、2−ヒドロキシフェニル、2,4−ジヒドロキシフェニル、3,4−ジヒドロキシフェニルまたは3,4,5−トリヒドロキシフェニルなどの、水酸基を少なくとも一つ以上有するフェニル基である。このフェニル基には、水酸基以外の置換基を有していてもよい。また、フェノール性水酸基を有するものであれば、他の芳香環であってもよい。
【0028】
【表1−1】
【0029】
【表1−2】
【0030】
本発明においては顕色剤として上記に記載した化合物に限られるものではなく、その他の電子受容性の種々の化合物を使用することができる。
【0031】
以下、本発明における一般式(1)化合物、一般式(2)化合物の具体例を表2に示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【表2−1】
【0033】
【表2−2】
【0034】
【表2−3】
【0035】
【表2−4】
【0036】
次に、本発明における一般式(3)の化合物の具体例を表3に示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【表3−1】
【0038】
【表3−2】
【0039】
さらに、本発明における一般式(4)の化合物の具体例を表4に示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
【表4−1】
【0041】
【表4−2】
【0042】
本発明の可逆性感熱発色組成物は、加熱温度およびまたは加熱後の冷却速度により相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうるものである。この基本的な発色・消色現像を説明する。図1はこの組成物の発色濃度と温度との関係を示したものである。はじめ消色状態(A)にある組成物を昇温していくと、溶融し始める温度T1で発色が起こり溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると発色状態のまま室温に下げることができ、固まった発色状態(C)となる。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温の速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が起き、はじめと同じ消色状態(A)あるいは急冷発色状態(C)より相対的に濃度の低い状態が形成される。一方、急冷発色状態(C)をふたたび昇温していくと発色温度より低い温度T2で消色が起き(DからE)、ここから降温するとはじめと同じ消色状態(A)に戻る。実際の発色温度、消色温度は、用いる顕色剤と発色剤の組み合わせにより変化するので目的に合わせて選択できる。また溶融発色状態の濃度と急冷したときの発色濃度は、必ずしも一致するものではなく、異なる場合もある。
【0043】
本発明の組成物では、溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は顕色剤と発色剤が分子どうしで接触反応しうる状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態は顕色剤と発色剤が凝集して発色を保持した状態であり、この凝集構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は両者が相分離した状態である。この状態は少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより発色剤と顕色剤が分離して安定化した状態であると考えられる。本発明では多くの場合、両者が相分離し顕色剤が結晶化することによってより完全な消色が起きる。図1に示した溶融状態から徐冷による消色及び発色状態からの昇温による消色は、いずれもこの温度で凝集構造が変化し、相分離や顕色剤の結晶化が起きている。
【0044】
本発明の組成物を可逆性感熱記録媒体として用いる場合、発色記録の形成はサーマルヘッドなどによりいったん溶融混合する温度に加熱し、急冷すればよい。また、消色は加熱状態から徐冷する方法と発色温度よりやや低い温度に加熱する方法の二つである。しかし、これらは両者が相分離したり、少なくとも一方が結晶化する温度に一時的に保持するという意味で同じである。発色状態の形成で急冷するのは、この相分離温度または結晶化温度に保持しないようにするためである。ここにおける急冷と徐冷はひとつの組成物に対して相対的なものであり、その境界は発色剤と顕色剤の組み合わせにより変化する。
【0045】
組成物中の発色剤と顕色剤の割合は、使用する化合物の組み合わせにより適切な範囲が変化するが、おおむねモル比で発色剤1に対し顕色剤が0.1から20の範囲であり、好ましくは0.2から10の範囲である、この範囲より顕色剤が少なくても多くても発色状態の濃度が低下し問題となる。
【0046】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、支持体上に前記の組成物を主成分として含む記録層を設けたものである。支持体としては紙、樹脂フィルム、合成紙、金属箔、ガラスまたはこれらの複合体などであり、記録層を保持できるものであればよい。
【0047】
記録層は本発明の組成物が存在していればどのようなものでもよいが、一般的にはバインダー樹脂中に発色剤と顕色剤が細かく均一に分散した状態のものが用いられる。発色剤と顕色剤は個々に粒子を形成していてもよいが、より好ましくは複合された粒子として分散された状態のものである。これは発色剤と顕色剤をいったん溶融したり溶解することによって達成できる。このような記録層の形成は、各材料をそれぞれ溶剤中で分散溶解したのち混合した液、あるいは各材料を混合して溶剤中で分散又は溶解した液を支持体上に塗布し、乾燥することによって行われる。発色剤と顕色剤はマイクロカプセル中に内包して用いることもできる。
【0048】
本発明の可逆性感熱記録媒体には、必要に応じて記録層の塗布特性や発色消色特性を改善したり制御するための添加剤を用いることができる。これらの添加剤には、例えば分散剤、界面活性剤、導電剤、充填剤、滑剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、発色安定化剤、消色促進剤などがある。
【0049】
記録層の形成に用いられるバインダー樹脂としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、エチルセルロース、ポリスチレン、スチレン系共重合体、フェノキシ樹脂、ポリエステル、芳香族ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合体、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、デンプン類などがある。これらのバインダー樹脂の役割は、組成物の各材料が記録消去の熱印加によって片寄ることなく均一に分散した状態を保つことにある。したがって、バインダー樹脂には耐熱性の高い樹脂を用いることが好ましい。例えば熱、紫外線、電子線などでバインダー樹脂を架橋させてもよい。
【0050】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、基本的に支持体上に上記の記録層が設けられたものであるが、記録媒体としての特性を向上するため、保護層、接着層、中間層、アンダーコート層、バックコート層などを設けることができる。
【0051】
サーマルヘッドを用いた印字では熱と圧力のため記録層の表面が変形し、いわゆる打痕ができる場合がある。これを防止するため表面に保護層を設けることが好ましい。保護層には、ポリビニルアルコール、スチレン無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂のほか、紫外線硬化樹脂、および電子線硬化樹脂などが使用できる。また、保護層中には紫外線吸収剤などの添加剤を含有させることができる。
【0052】
記録層と保護層の接着性向上、保護層の塗布による記録層の変質防止、保護層中の添加剤の記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることも好ましい。また、記録層の上に設置される保護層、中間層には酸素透過性の低い樹脂を用いることが好ましい。記録層中の発色剤及び顕色剤の酸化を防止または低減することが可能になる。
【0053】
また、印加した熱を有効に利用するため支持体と記録層の間に断熱性のアンダーコート層を設けることができる。断熱層は有機又は無機の微小中空体粒子をバインダー樹脂を用いて塗布することにより形成できる。支持体と記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的としたアンダーコート層を設けることもできる。
【0054】
中間層、アンダーコート層には、前記の記録層用の樹脂と同様の樹脂を用いることができる。また、保護層、中間層、記録層及びアンダーコート層には炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリン、タルクなどのフィラーを含有させることができる。その他、滑剤、界面活性剤分散剤などを含有させることもできる。支持体の滑性、搬送性を向上させ、或いはカールを防止するために支持体の反対側にバックコート層を設けることもできる。
【0055】
本発明の可逆性感熱記録媒体を用いて発色画像を形成させるためには、いったん発色温度以上に加熱したのち急冷されるようにすればよい。具体的には、たとえばサーマルヘッドやレーザー光で短時間加熱すると記録層が局部的に加熱されるため、直ちに熱が拡散し急激な冷却が起こり、発色状態が固定できる。一方、消色させるためには適当な熱源を用いて比較的長時間加熱し冷却するか、発色温度よりやや低い消色温度に一時的に加熱すればよい。長時間加熱すると記録媒体の広い範囲が昇温し、その後の冷却は遅くなり、徐冷となるため、その過程で消色が起きる。この場合の加熱方法には、熱ローラ、熱スタンプ、熱風などを用いてもよいし、サーマルヘッドを用いて長時間加熱してもよい。記録層を消色温度域に加熱するためには、例えばサーマルヘッドへの印加電圧やパルス幅を調節することによって、印加エネルギーを記録時よりやや低下させればよい。この方法を用いれば、サーマルヘッドだけで記録・消去ができ、いわゆるオーバーライトが可能になる。もちろん、熱ローラ、熱スタンプ、加熱バー等によって消色温度域に加熱して消去することもできる。
【0056】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明する。実施例中の「部」および「%」はいずれも重量を基準とするものである。
[第1の発明]
実施例1
下記組成物を乳鉢で粉砕混合した。
[発色剤]
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 1部
[顕色剤]
【0057】
【化14】
[発色消色制御剤]
表2中のNo.3の化合物 1部
この混合物の適当量を厚さ1.2mmのガラス板上にのせて、ホットプレート上で200℃に加熱、混融した。続いて、この混融混合物の上からカバーグラスをかぶせて融液を一様な厚さに広げ、すぐにガラス板ごと全体を用意しておいた氷水中に沈めて急冷した。降温後、すぐに取り出し付着した水を除き、薄膜状の黒色に発色した本発明の組成物を得た。
次に、上記の発色状態の組成物試料を110℃に加熱したホットプレート上に置くと瞬時に消色した。再び、この消色した組成物試料を200℃に加熱すると黒色を呈した。このことから、本発明の組成物は発色、消色の繰り返し特性を有することが確認された。
【0058】
実施例2
下記組成物をボールミルを用いて粒径1〜4μmまで粉砕分散した。
[発色剤]
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 2部
[顕色剤]
【0059】
【化15】
[発色消色制御剤]
表2中のNo.10の化合物 4部
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、PKHH)の
15%テトラヒドロフラン(THF)溶液 150部
【0060】
得られた分散液に日本ポリウレタン社製コロネートHL(アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート 75%酢酸エチル溶液)20部を加え、よく撹拌し記録層塗布液を調製した。
上記組成の記録層塗布液を、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にワイヤーバーを用い塗布し、80℃で乾燥した後、100℃で10分、60℃で24時間加熱して、膜厚6.0μmの記録層を設けた。
この記録層上に下記組成よりなる保護層液をワイヤーバーを用いて塗工した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下を9m/分の搬送速度で通して硬化して膜厚3μmの保護層を設け、本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
[保護層液]
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂
(大日本インキ社製、C7−157) 10部
酢酸エチル 90部
【0061】
作製した記録媒体を大倉電機社製感熱印字装置にて、電圧13.3V、パルス幅1.2msecで印字した。印字部の濃度をマクベス濃度計RD914にて測定したところ、画像濃度は1.01であった。次に、この印字サンプルを熱傾斜試験機で110℃で0.5秒間加熱して消去した。消去部及び地肌部の濃度を同様に測定した。消し残り濃度は0.02であった。
課題に対応して、発色性は画像濃度で、消色性は消し残り濃度で保存性は濃度保持率で評価した。
また、印字サンプルを50℃乾燥条件下で24時間保存したところ、画像部の濃度保持率は79%であった。ここで、本発明における濃度保持率は下記式で表わされる。
【0062】
【数1】
また、消し残り濃度は、消去後の濃度と地肌濃度の差であり下記式で表わされる。
【数2】
消し残り濃度=(消去後の画像濃度)−(地肌濃度)
【0063】
実施例3
実施例2中の顕色剤を下記のものに変えた以外は、実施例2と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
[顕色剤]
【0064】
【化16】
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例2と同様に評価したところ、画像濃度が1.00、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.01であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が74%であった。
【0065】
実施例4
実施例2中の発色剤2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランの代わりに、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリドを用いた以外は、実施例2と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例2と同様に評価したところ、画像濃度が0.89、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.02であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が70%であった。
【0066】
実施例5
実施例2中の発色消色制御剤を表2のNo.10からNo.13に代えた以外は実施例2と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例2と同様に評価したところ、画像濃度が1.01、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.01であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が78%であった。
【0067】
実施例6
実施例2中の発色消色制御剤を表2のNo.10からNo.15に代えた以外は実施例2と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例2と同様に評価したところ、画像濃度が1.06、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.02であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が81%であった。
【0068】
実施例7
下記組成物をボールミルを用いて粒径1〜4μmまで粉砕分散した。
[発色剤]
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 2部
[顕色剤]
【0069】
【化17】
[発色消色制御剤]
表2中のNo.26の化合物 4部
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、PKHH)の
15%テトラヒドロフラン(THF)溶液 150部
【0070】
得られた分散液に日本ポリウレタン社製コロネートHL(アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート 75%酢酸エチル溶液)20部を加え、よく撹拌し記録層塗布液を調製した。
上記組成の記録層塗布液を、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にワイヤーバーを用い塗布し、80℃で乾燥した後、100℃で10分、60℃で24時間加熱して、膜厚6.0μmの記録層を設けた。
この記録層上に下記組成よりなる保護層液をワイヤーバーを用いて塗工した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下を9m/分の搬送速度で通して硬化して膜厚3μmの保護層を設け、本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
[保護層液]
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂
(大日本インキ社製、C7−157) 10部
酢酸エチル 90部
【0071】
作製した記録媒体を大倉電機社製感熱印字装置にて、電圧13.3V、パルス幅1.2msecで印字した。印字部の濃度をマクベス濃度計RD914にて測定したところ、画像濃度は0.93であった。次に、この印字サンプルを熱傾斜試験機で110℃で0.5秒間加熱して消去した。消去部及び地肌部の濃度を同様に測定した。消し残り濃度は0.01であった。
課題に対応して、発色性は画像濃度で、消色性は消し残り濃度で保存性は濃度保持率で評価した。
また、印字サンプルを50℃乾燥条件下で24時間保存したところ、画像部の濃度保持率は70%であった。
【0072】
実施例8
実施例7中の顕色剤を下記のものに変えた以外は、実施例7と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
[顕色剤]
【0073】
【化18】
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例7と同様に評価したところ、画像濃度が0.88、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.02であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が72%であった。
【0074】
実施例9
実施例7中の発色剤2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランの代わりに、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリドを用いた以外は、実施例7と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例7と同様に評価したところ、画像濃度が0.85、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.02であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が75%であった。
【0075】
実施例10
実施例7中の発色消色制御剤を表2のNo.23からNo.28に代えた以外は実施例7と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例7と同様に評価したところ、画像濃度が1.02、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.01であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が78%であった。
【0076】
実施例11
実施例7中の発色消色制御剤を表2のNo.23からNo.30に代えた以外は実施例7と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例7と同様に評価したところ、画像濃度が1.06、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.02であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が78%であった。
【0077】
比較例1
実施例2中で発色消色制御剤を使用しなかった以外は、実施例2と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例2と同様に評価したところ、画像濃度が1.02、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.05であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が54%であった。
以上の結果より、第1の本発明は比較例1と比べ、発色性(発色濃度)は従来レベルを維持しつつ、発色状態の保存安定性が高く、且つ消色性も優れる、即ち消色濃度が低く、消色感度が高いことがわかる。
【0078】
[第2の発明]
実施例12
下記組成物を乳鉢で粉砕混合した。
[発色剤]
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 1部
[顕色剤]
【0079】
【化19】
[発色消色制御剤]
表3中のNo.33の化合物 1部
この混合物の適当量を厚さ1.2mmのガラス板上にのせて、ホットプレート上で200℃に加熱、混融した。続いて、この混融混合物の上からカバーグラスをかぶせて融液を一様な厚さに広げ、すぐにガラス板ごと全体を用意しておいた氷水中に沈めて急冷した。降温後、すぐに取り出し付着した水を除き、薄膜状の黒色に発色した第2の本発明の組成物を得た。
次に、上記の発色状態の組成物試料を110℃に加熱したホットプレート上に置くと瞬時に消色した。再び、この消色した組成物試料を200℃に加熱すると黒色を呈した。このことから、第2の本発明の組成物は発色、消色の繰り返し特性を有することが確認された。
【0080】
実施例13
下記組成物をボールミルを用いて粒径1〜4μmまで粉砕分散した。
[発色剤]
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 2部
[顕色剤]
【0081】
【化20】
[発色消色制御剤]
表3中のNo.37の化合物 4部
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、PKHH)の
15%テトラヒドロフラン(THF)溶液 150部
【0082】
得られた分散液に日本ポリウレタン社製コロネートHL(アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート 75%酢酸エチル溶液)20部を加え、よく撹拌し記録層塗布液を調製した。
上記組成の記録層塗布液を、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にワイヤーバーを用い塗布し、80℃で乾燥した後、100℃で10分、60℃で24時間加熱して、膜厚6.0μmの記録層を設けた。
この記録層上に下記組成よりなる保護層液をワイヤーバーを用いて塗工した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下を9m/分の搬送速度で通して硬化して膜厚3μmの保護層を設け、第2の本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
[保護層液]
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂
(大日本インキ社製、C7−157) 10部
酢酸エチル 90部
【0083】
作製した記録媒体を大倉電機社製感熱印字装置にて、電圧13.3V、パルス幅1.2msecで印字した。印字部の濃度をマクベス濃度計RD914にて測定したところ、画像濃度は0.98であった。次に、この印字サンプルを熱傾斜試験機で110℃で0.5秒間加熱して消去した。消去部及び地肌部の濃度を同様に測定した。消し残り濃度は0.02であった。
課題に対応して、発色性は画像濃度で、消色性は消し残り濃度で保存性は濃度保持率で評価した。
また、印字サンプルを50℃乾燥条件下で24時間保存したところ、画像部の濃度保持率は80%であった。
【0084】
実施例14
実施例13中の顕色剤を下記のものに変えた以外は、実施例13と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
[顕色剤]
【0085】
【化21】
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例13と同様に評価したところ、画像濃度が1.04、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.02であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が77%であった。
【0086】
実施例15
実施例13中の発色剤2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランの代わりに、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリドを用いた以外は、実施例13と同様にして第2の本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例13と同様に評価したところ、画像濃度が0.92、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.03であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が73%であった。
【0087】
実施例16
実施例13中の発色消色制御剤を表3のNo.37からNo.39に代えた以外は実施例13と同様にして第2の本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例13と同様に評価したところ、画像濃度が1.05、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.01であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が78%であった。
【0088】
実施例17
実施例13中の発色消色制御剤を表3のNo.37からNo.45に代えた以外は実施例13と同様にして第2の本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例13と同様に評価したところ、画像濃度が1.06、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.01であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が78%であった。
【0089】
比較例2
実施例13中で発色消色制御剤を使用しなかった以外は、実施例13と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例13と同様に評価したところ、画像濃度が1.02、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.05であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が54%であった。
以上の結果より、第2の本発明も比較例2と比べ、発色性(発色濃度)は従来レベルを維持しつつ、発色状態の保存安定性が高く、且つ消色性も優れる、即ち消色濃度が低く、消色感度が高いことがわかる。
【0090】
[第3の発明]
実施例18
下記組成物を乳鉢で粉砕混合した。
[発色剤]
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 1部
[顕色剤]
【0091】
【化22】
[発色消色制御剤]
表4中のNo.55の化合物 1部
この混合物の適当量を厚さ1.2mmのガラス板上にのせて、ホットプレート上で200℃に加熱、混融した。続いて、この混融混合物の上からカバーグラスをかぶせて融液を一様な厚さに広げ、すぐにガラス板ごと全体を用意しておいた氷水中に沈めて急冷した。降温後、すぐに取り出し付着した水を除き、薄膜状の黒色に発色した第3の本発明の組成物を得た。
次に、上記の発色状態の組成物試料を110℃に加熱したホットプレート上に置くと瞬時に消色した。再び、この消色した組成物試料を200℃に加熱すると黒色を呈した。このことから、第3の本発明の組成物は発色、消色の繰り返し特性を有することが確認された。
【0092】
実施例19
下記組成物をボールミルを用いて粒径1〜4μmまで粉砕分散した。
[発色剤]
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 2部
[顕色剤]
【0093】
【化23】
[発色消色制御剤]
表4中のNo.57の化合物 4部
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製、PKHH)の
15%テトラヒドロフラン(THF)溶液 150部
【0094】
得られた分散液に日本ポリウレタン社製コロネートHL(アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート 75%酢酸エチル溶液)20部を加え、よく撹拌し記録層塗布液を調製した。
上記組成の記録層塗布液を、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にワイヤーバーを用い塗布し、80℃で乾燥した後、100℃で10分、60℃で24時間加熱して、膜厚6.0μmの記録層を設けた。
この記録層上に下記組成よりなる保護層液をワイヤーバーを用いて塗工した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下を9m/分の搬送速度で通して硬化して膜厚3μmの保護層を設け、第3の本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
[保護層液]
ウレタンアクリレート系紫外線硬化性樹脂
(大日本インキ社製、C7−157) 10部
酢酸エチル 90部
【0095】
作製した記録媒体を大倉電機社製感熱印字装置にて、電圧13.3V、パルス幅1.2msecで印字した。印字部の濃度をマクベス濃度計RD914にて測定したところ、画像濃度は1.00であった。次に、この印字サンプルを熱傾斜試験機で110℃で0.5秒間加熱して消去した。消去部及び地肌部の濃度を同様に測定した。消し残り濃度は0.01であった。
課題に対応して、発色性は画像濃度で、消色性は消し残り濃度で保存性は濃度保持率で評価した。
また、印字サンプルを50℃乾燥条件下で24時間保存したところ、画像部の濃度保持率は78%であった。
【0096】
実施例20
実施例19中の顕色剤を下記のものに変えた以外は、実施例19と同様にして第3の本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
[顕色剤]
【0097】
【化24】
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例19と同様に評価したところ、画像濃度が1.05、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.02であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が80%であった。
【0098】
実施例21
実施例19中の発色剤2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオランの代わりに、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリドを用いた以外は、実施例19と同様にして第3の本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例19と同様に評価したところ、画像濃度が0.90、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.03であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が75%であった。
【0099】
実施例22
実施例19中の発色消色制御剤を表4のNo.57からNo.62に代えた以外は実施例19と同様にして第3の0本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。作製した可逆性感熱記録媒体を実施例19と同様に評価したところ、画像濃度が1.04、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.02であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が78%であった。
【0100】
実施例23
実施例19中の発色消色制御剤を表4のNo.57からNo.63に代えた以外は実施例19と同様にして第3の本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例19と同様に評価したところ、画像濃度が1.02、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.01であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が78%であった。
【0101】
比較例3
実施例19中で発色消色制御剤を使用しなかった以外は、実施例19と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
作製した可逆性感熱記録媒体を実施例19と同様に評価したところ、画像濃度が1.02、110℃、0.5秒での消し残り濃度が0.05であり、50℃乾燥条件での濃度保持率が54%であった。
以上の結果より、第3の本発明は比較例3と比べ、発色性(発色濃度)は従来レベルを維持しつつ、発色状態の保存安定性が高く、且つ消色性も優れる、即ち消色濃度が低く、消色感度が高いことがわかる。
また、上記各実施例においては、一般式(1)で表わされる化合物、一般式(2)で表わされる化合物、一般式(3)で表わされる化合物、及び、一般式(4)で表わされる化合物をそれぞれ単独で用いた例のみが示されているが、本発明においてはこれら各化合物を複数混合して用いても同様の効果が奏されることはもちろんである。
【0102】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明より明らかなように、本発明の可逆性感熱発色組成物及び可逆性感熱記録媒体は、発色消色制御剤として前記一般式(1)で表わされる化合物、一般式(2)で表わされる化合物、一般式(3)で表わされる化合物、一般式(4)で表わされる化合物を用いたことから、保存性及び消色性が良好な実用性の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化合物感熱発色組成物の発色・消色特性を示す図である。
Claims (1)
- 電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物及び発色消色制御剤を含有し、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性感熱記録層を支持体上に設けた可逆性感熱記録媒体であって、前記発色消色制御剤が、下記一般式(1)乃至(4)で表わされる化合物から選ばれた少なくとも一種であり、前記電子受容性化合物が、下記一般式(5)で表わされるフェノール化合物であることを特徴とする可逆性感熱記録媒体。
X:−NHCONH−,−NHCSNH−,−NHCO−,
−CONH−,−NHSO2−
l=0〜12
m=0又は1
但し、(a)m=0のとき
l=0
R:C 12 〜C 18 の直鎖炭化水素基
(b)m=1のとき
l=2〜12
R:C 4 〜C 21 の直鎖炭化水素基
R2,R3:C 2 〜C 4 の直鎖炭化水素基
l,m,nはそれぞれ0又は1
但し、(a)l=0のとき
m,n=0
R 1 :C 2 〜C 12 の直鎖炭化水素基
(b)l=1のとき
m=1
n=0又は1
R 1 ,R 3 :C 2 又はC 3 の直鎖炭化水素基
R 2 :C 2 〜C 4 の直鎖炭化水素基
X:−CO−,−CONH−
Y:−NHCONH−,−NHCO−,−CONH−
m=0又は1
n=0〜12
但し、(a)m=0のとき
n=0
R:C 4 〜C 18 の直鎖炭化水素基
(b)m=1のとき
n=4〜11
R:C 4 〜C 18 の直鎖炭化水素基
R2:C 4 〜C 18 の直鎖炭化水素基
X1,X2:−NHCO−,−CONH−,−NHCONH−
m,q=0〜12
l,n,p,s=0又は1
但し、(a)s,n=0のとき
l=0又は1
m,q=0
p=0又は1
R 1 :C 1 〜C 18 の直鎖炭化水素基
R 2 :C 4 〜C 18 の直鎖炭化水素基
(b)s=0,n=1のとき
m=4又は5
q,l=0
p=0
R 1 :C 1 〜C 5 の直鎖炭化水素基
R 2 :C 11 〜C 18 の直鎖炭化水素基
(c)s=1のとき
n=1
l,p=0
m,q=4又は5
R 1 ,R 2 :C 4 〜C 8 の直鎖炭化水素基
A:p-phenylene(但し、Aはなくてもよい)
Y:NHCONH,NHCO,NHCOCONH,CONH,
CONHNHCO,CONHCONH,
NHCONHCO,CONHNHCONH,
NHCONHNHCO,NHCONHNH,
SO2,O,OCO,SCO,OCONH,S,COO
(但し、Yはなくてもよい)
Z:NHCONH,CONHNHCO,NHCOCONH(但し、Zはなくてもよい)
n=1〜3
p=0〜2
q=0〜11
r=0〜6
s=11〜21
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