JP4184119B2 - 可逆的感熱記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物との間の発色反応を利用した可逆性感熱発色組成物を用い、熱エネルギーを制御することにより発色画像の形成と消去が可能な可逆的感熱記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子供与性呈色性化合物(以下、発色剤またはロイコ染料ともいう)と電子受容性化合物(以下、顕色剤ともいう)との間の発色反応を利用した感熱記録媒体は広く知られており、ファクシミリ、ワードプロセッサー、科学計測機などのプリンターに使用されている。しかし、これらの実用化されている従来の記録媒体はいずれも不可逆的な発色であり、一度記録した画像を消去して繰り返して使用することはできない。
【0003】
一方、特許公報によれば発色と消色を可逆的に行うことができる記録媒体も提案されており、たとえば、顕色剤として没食子酸とフロログルシノールを組合せを用いる特開昭60−193691号公報、顕色剤にフェノールフタレインやチモールフタレインなどの化合物を用いる特開昭61−237684号公報、発色剤と顕色剤とカルボン酸エステルの均質相溶体を記録層に含有する特開昭62−138556号公報、特開昭62−138568号公報および特開昭62−140881号公報、顕色剤にアスコルビン酸誘導体を用いた特開昭63−173684号公報、顕色剤にビス(ヒドロキシフェニル)酢酸または没食子酸と高級脂肪族アミンとの塩を用いる特開平2−188293号公報および特開平2−188294号公報などが開示されている。
【0004】
さらに本発明者らは、先に特開平5−124360号公報において顕色剤として長鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール化合物を用い、これと発色剤であるロイコ染料と組み合わせることによって、発色と消色を加熱冷却条件により容易に行わせることができ、しかもその発色状態と消色状態を常温において安定に保持させることが可能であり、しかも発色と消色を繰り返すことが可能な可逆性感熱発色組成物およびこれを記録層に用いた可逆性感熱記録媒体を提案した。またその後、長鎖脂肪族炭化水素基をもつフェノール化合物について特定の構造の使用が提案されている(特開平6−210954号公報)。
【0005】
これらの材料を用いて作製された可逆性感熱記録媒体はサーマルヘッドによる発色や、ホットスタンプなどによる消去ができ、繰り返し印字による発色/消色が可能である。
しかしながら、これらの記録媒体では発色感度が不十分であり、装置の小型化が困難であるなどの問題を有している。
【0006】
また、支持体上に断熱層を設ける例として特開平6−340174号公報、特開平5−96852号公報、特開平10−52974号公報(特許文献1〜3)に開示された感熱記録媒体では、リライタブルプロセスにおける繰り返し印字・消去を行った際の耐久性が未だ不十分であり、多数回印字後の濃度特性と消去性の再現が悪くなるという欠点があった。また断熱性を付与する有機フィラーの耐熱性、耐溶剤性が十分でないために記録層材料及び処方設計が大きく制約を受ける結果、感熱記録媒体の性能アップが難しいという問題もあった。
【0007】
可逆的感熱記録媒体に求められる他の要求特性として高速化対応、画像保存性、低コスト及び省エネルギー対応があり、今後より総合的な性能に優れた可逆的感熱記録媒体の設計も要望されている。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−340174号公報
【特許文献2】
特開平5−96852号公報
【特許文献3】
特開平10−52974号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、高速消去性が良好で、しかも繰り返し耐久性に優れる可逆的感熱記録媒体を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の可逆的感熱記録媒体は支持体上に中空粒子を含有するアンダー層を設け、該アンダー層上に感熱記録層を設け、さらに必要に応じて、保護層を形成することで構成される。
本発明は、特定のアンダー層を設けることにより、より低エネルギーで効率よく発色濃度を得ると同時に良好な繰り返し消去性を維持するためにアンダー層の耐久性も必要であることを見い出し、完成するに至ったものである。
【0011】
即ち、本発明によれば、下記(1)〜(10)が提供される。
(1)支持体上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いによって相対的に発色した状態を形成しうる可逆的感熱記録層を設けた可逆的感熱記録媒体において、前記感熱記録層と支持体の間に不活性無機粉体で表面コートされた中空粒子を含有するアンダー層を設けたことを特徴とする可逆的感熱記録媒体。
(2)アンダー層が、不活性無機粉体で表面コートされ、かつ、ハロゲンを含まない熱可塑性樹脂を主成分とする中空粒子を含有する前記(1)に記載の可逆的感熱記録媒体。
(3)前記中空粒子を含むアンダー層の厚みが2〜50μmであることを特徴とする前記(1)〜(2)のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
(4)前記アンダー層中にバインダー樹脂としてポリビニルアルコール樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、及びスチレン・アクリル共重合体から選ばれる1種又は2種以上の混合物を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
(5)前記支持体と前記アンダー層の間に接着層を設けたことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
(6)前記電子受容性化合物が炭素数8以上の脂肪族炭化水素基を有するフェノール性化合物であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
(7)前記可逆的感熱記録層中に架橋状態にある樹脂を含有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
(8)前記感熱記録層の上にバリア層を設け、さらにその上に保護層を設けたことを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
(9)前記支持体の厚さが60〜150μmであることを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の可逆的感熱記録媒体について詳細を述べる。
本発明の可逆的感熱記録媒体はアンダー層に特徴を有し、該アンダー層を形成する樹脂としては、例えばポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル樹脂、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・アクリル共重合体、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
該アンダー層を形成するこれらの樹脂の内、接着性、耐久性等の点で特にポリビニルアルコール樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・アクリル共重合体が好ましい。
【0013】
アンダー層に含有させる中空粒子はブタン、ペンタン等の低沸点液体をポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂または共重合体でマイクロカプセル化したものである。該中空粒子としては、あらかじめ発泡させた中空粒子と未発泡状態の中空粒子があるが、未発泡状態で添加し感熱記録媒体作成時または印字時の熱により発泡させると均一な発泡が難しく画質が劣るため、あらかじめ発泡した中空粒子を添加した方が良好な画質が得られる。
【0014】
本発明の第一の可逆的感熱記録媒体は、アンダー層に含有させる中空粒子として、その表面を不活性無機粉体でコートした中空粒子を用いたものである。
アンダー層に含有させる中空粒子の表面をコートする不活性無機粉体としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等があげられる。この不活性無機粉体処理により、中空粒子単独よりも高い耐熱性が得られ、アンダー層全体の膜強度も向上する。また中空粒子は比重が小さく作業上扱いにくいので、該無機粉体でコートすることにより比重が大きくなり作業性も向上する。
中空粒子の表面をコートする不活性無機粉体の量は、ほぼ均一に単層で被覆していることが好ましい。
【0015】
また、本発明の第二の可逆的感熱記録媒体は、アンダー層が、不活性無機粉体で表面コートされ、かつ、該中空粒子として特にハロゲンを含まない熱可塑性樹脂を主成分とする中空粒子を用いたものである。該ハロゲンを含まない熱可塑性樹脂として、特にポリアクリロニトリル樹脂等のニトリル系樹脂を主成分とする樹脂、又は共重合体でマイクロカプセル化したものが耐熱性に優れ、好ましい。主成分のニトリルとしては、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリル等が用いられる。
【0016】
さらに、本発明の第二の可逆的感熱記録媒体において、上記中空粒子として、前記本発明の第一の可逆的感熱記録媒体の如く、その表面を不活性無機粉体でコートしたものを用いることは特に望ましい。
【0017】
中空粒子の粒径は0.2〜50μmが好ましく、0.2μm未満であると十分なクッション性と断熱性が得られにくい。また50μmを超えると塗膜の平滑性が下がり均一なクッション性が損なわれ、画像抜け等が発生しやすくなるため、より好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下である。中空粒子の体積中空率は50%以上が好ましく、これ未満の体積中空率では十分なクッション性と断熱性が得られにくい。
【0018】
また中空粒子の隔壁の厚みは0.05〜3μmが好ましい。
該厚みが0.05μm未満では粒子の強度が低く、印字/消去を繰り返した際に中空粒子が破壊されてしまい、クッション性や断熱性が低下することとなり、一方3μmより厚い場合は、粒子が堅くなるためクッション性が低下したり、断熱性が低くなり、上記範囲を外れた場合は好ましくない。
【0019】
さらにアンダー層の厚みは2〜50μmが好ましい。
該厚みが2μm未満では十分なクッション性、断熱性が得られなくとなり、一方50μmより厚い場合は、繰り返し時の耐久性が低下するため、いずれの場合も好ましくない。
【0020】
本発明の可逆的感熱記録媒体は、加熱温度および/または加熱後の冷却速度により相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうるものである。この本発明の可逆的感熱記録媒体の記録層に用いられる発色剤と顕色剤からなる組成物の基本的な発色・消色現象を説明する。
図1はこの記録媒体の発色濃度と温度との関係を示したものである。はじめ消色状態(A)にある記録媒体を昇温していくと、溶融し始める温度T1でロイコ染料と顕色剤が溶融混合し、発色が起こり溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると発色状態のまま室温に下げることができ、固定された発色状態(C)となる。この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温の速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が起き、はじめと同じ消色状態(A)あるいは急冷発色状態(C)より相対的に濃度の低い状態が形成される。一方、急冷発色状態(C)をふたたび昇温していくと発色温度より低い温度T2で消色が起き(DからE)、ここから降温するとはじめと同じ消色状態(A)に戻る。実際の発色温度、消色温度は、用いる顕色剤と発色剤の組合せにより変化するので目的に合わせて選択できる。また溶融発色状態の濃度と急冷したときの発色濃度は、必ずしも一致するものではなく、異なる場合もある。
【0021】
本発明の記録媒体では、溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は顕色剤と発色剤が分子どうしで接触反応しうる状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態は顕色剤と発色剤が凝集して発色を保持した状態であり、この凝集構造の形成により発色が安定化していると考えられる。一方、消色状態は両者が相分離した状態である。この状態は少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより発色剤と顕色剤が分離して安定化した状態であると考えられる。本発明では多くの場合、両者が相分離し顕色剤が結晶化することによってより完全な消色が起きる。図1に示した溶融状態から徐冷による消色および発色状態からの昇温による消色は、いずれもこの温度で凝集構造が変化し、相分離や顕色剤の結晶化が起きている。
【0022】
本発明の発色画像の形成は、サーマルヘッドなどによりいったん溶融混合する温度に加熱し、急冷すればよい。また、消色は加熱状態から徐冷する方法と発色温度よりやや低い温度に加熱する方法の二つである。しかし、これらは両者が相分離したり、少なくとも一方が結晶化する温度に一時的に保持するという意味で同じである。発色状態の形成で急冷するのは、この相分離温度または結晶化温度に保持しないようにするためである。ここにおける急冷と徐冷はひとつの組成物に対して相対的なものであり、その境界は発色剤と顕色剤の組合せにより変化する。
【0023】
このように記録層は加熱温度および加熱後の冷却速度の制御によって記録消去ができる。この記録層による印字は、コントラストが高く優れた画像品質が得られる。また、保存安定性や印字消去の繰り返し耐久性にも優れ、本発明の可逆的感熱記録媒体は文書用書き替え型記録媒体として特に適している。この記録層を用いた可逆的感熱記録媒体の印字は通常の感熱記録と同様にサーマルヘッドで行うことができ、消去は温度制御されたヒートローラ、セラミックヒータ等の発熱体およびサーマルヘッドなどによってできるため、小型で簡易な書き替え記録装置で使用できる。
【0024】
本発明において用いられるロイコ染料としては、この種の可逆的感熱記録媒体に用いられる全ての化合物を1種または2種以上用いることができ、たとえば、フタリド化合物、アザフタリド化合物、フルオラン化合物など公知の染料前駆体である。
【0025】
本発明において用いられるロイコ染料の具体例としては、2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリフルロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−6−(N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2,3−ジメチル−6−ジメトルアミノフルオラン、3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−ブロモ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−6−ジプロピルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−クロロ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(o−クロロアニリノ)−3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、2−(2,3−ジクロロアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−(m−トリフロロメチルアニリノ)フルオラン、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−N−n−アミル−N−メチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド等が挙げられる。
【0026】
また、感熱記録層中に用いられるは顕色剤としては、代表例として、たとえば特開平5−124360号公報、特開平6−210954号公報、特開平10−95175号公報などに記載のものである。ここで用いる顕色剤は、分子内にロイコ染料を発色させる顕色能をもつ構造、たとえばフェノール性水酸基、カルボン酸基、リン酸基などと、分子間の凝集力を制御する構造、たとえば長鎖炭化水素基が連結した構造を一つ以上有する化合物である。連結部分にはヘテロ原子を含む2価以上の連結基を介していても良く、また長鎖炭化水素基中にも同様の連結基および/または芳香族基が含まれていても良い。このような可逆性顕色剤の具体例はたとえば特開平9−290563号公報、特開平11−188969号公報に記載に示されている。
【0027】
以下に本発明に用いられる顕色剤について具体的に例示する。なお、顕色剤は単独で用いても良いし2種類以上を混合して用いても良い。
フェノール化合物としては下記一般式で表される化合物が挙げられる。
【化1】
(式中、X1はヘテロ原子を含む2価の基または直接結合手を示し、X2はヘテロ原子を含む2価の基を示す。R1は2価の炭化水素基を表し、R2は炭素数1〜22の炭化水素基を表す。また、pは0〜4の整数を表し、pが2〜4の時繰り返されるR1およびX2は同一でも、異なっていても良い。また、qは1〜3を表す。)
【0028】
具体的には、R1およびR2は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、これらは脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、これらの両方から構成される炭化水素基でもよい。また脂肪族炭化水素基は直鎖でも分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。炭化水素基につく置換基としては、水酸基、ハロゲン、アルコキシ基等がある。なお、R1は直接結合手でも良い。
またR1及びR2の炭素数の和が7以下では発色の安定性や消色性が低下するため、炭素数は8以上が好ましく、11以上であることがより好ましい。X1及びX2はヘテロ原子を含む2価の基を示し、好ましくは下記の表1に示される基を少なくとも1個以上有する2価の基である。
【表1】
【0029】
その具体例としては、下記の表2に示すものが挙げられる。
【表2】
【0030】
本発明におけるフェノール化合物の具体的な例を下記の表3に挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、フェノール化合物を単独または混合して用いることもできる。尚、表3中、rは1〜22、sは1〜22である。但し、r、sの少なくとも一方は8以上である。
【表3】
【0031】
有機リン酸系の顕色剤としては以下のような化合物が例示できる。
ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸、ドコシルホスホン酸、テトラコシルホスホン酸、リン酸ジテトラデシルエステル、リン酸ジヘキサデシルエステル、リン酸ジオクタデシルエステル、リン酸ジエイコシルエステル、リン酸ジベヘニルエステルなど。
【0032】
脂肪族モノカルボン酸化合物としては以下のような化合物が例示できる。
2−ヒドロキシテトラデカン酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、2−ヒドロキシエイコサン酸、2−ヒドロキシドコサン酸、2−ブロモヘキサデカン酸、2−ブロモオクタデカン酸、2−ブロモエイコサン酸、2−ブロモドコサン酸、3−ブロモオクタデカン酸、3−ブロモドコサン酸、2,3−ジブロモオクタデカン酸、2−フルオロドデカン酸、2−フルオロテトラデカン酸、2−フルオロヘキサデカン酸、2−フルオロオクタデカン酸、2−フルオロエイコサン酸、2−フルオロドコサン酸、2−ヨードヘキサデカン酸、2−ヨードオクタデカン酸、3−ヨードヘキサデカン酸、3−ヨードオクタデカン酸、パーフルオロオクタデカン酸など。
【0033】
脂肪族ジカルボン酸およびトリカルボン酸化合物としては以下のような化合物が例示できる。
2−ドデシルオキシこはく酸、2−テトラデシルオキシこはく酸、2−ヘキサデシルオキシこはく酸、2−オクタデシルオキシこはく酸、2−エイコシルオキシこはく酸、2−ドテシルチオこはく酸、2−テトラデシルチオこはく酸、2−ヘキサデシルチオこはく酸、2−オクタデシルチオこはく酸、2−エイコシルチオこはく酸、2−ドコシルチオこはく酸、2−テトラコシルチオこはく酸、2−ヘキサデシルジチオこはく酸、2−オクタデシルジチオこはく酸、2−エイコシルジチオこはく酸、ドデシルこはく酸、テトラデシルこはく酸、ペンタデシルこはく酸、ヘキサデシルこはく酸、オクタデシルこはく酸、エイコシルこはく酸、ドコシルこはく酸、2,3−ジヘキサデシルこはく酸、2,3−ジオクタデシルこはく酸、2−メチル−3−ヘキサデシルこはく酸、2−メチル−3−オクタデシルこはく酸、2−オクタデシル−3−ヘキサデシルこはく酸、ヘキサデシルマロン酸、オクタデシルマロン酸、エイコシルマロン酸、ドコシルマロン酸、ジヘキサデシルマロン酸、ジオクタデシルマロン酸、ジドコシルマロン酸、メチルオクタデシルマロン酸、2−ヘキサデシルグルタル酸、2−オクタデシルグルタル酸、2−エイコシルグルタル酸、ドコシルグルタル酸、2−ペンタデシルアジピン酸、2−オクタデシルアジピン酸、2−エイコシルアジピン酸、2−ドコシルアジピン酸、2−ヘキサデカノイルオキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、2−オクタデカノイルオキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸など。
【0034】
発色剤と顕色剤の割合は、使用する化合物の組合せにより適切な範囲が変化するが、おおむねモル比で発色剤1に対し顕色剤が0.1〜20の範囲であり、好ましくは0.2〜10の範囲である。この範囲より顕色剤が少なくても多くても発色状態の濃度が低下し問題となる。又、発色剤と顕色剤はマイクロカプセル中に内包して用いることもできる。
【0035】
本発明の可逆的感熱記録媒体の感熱記録層には、必要に応じて塗布特性や消色性、画像安定性等の発色消色特性を改善したり制御するための添加剤を用いることができる。これらの添加剤には、たとえば界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、発色消色制御剤、発色安定化剤、消色促進剤などがある。消色促進剤として好ましくは、ヘテロ原子を含む2価の基と炭素数8以上のアルキル鎖を有する化合物であったり、N,N′−2置換基のアミド基を有する化合物であったりするが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0036】
以下、本発明の可逆的感熱記録媒体の記録層の他の成分やその他の構成について説明する。
本発明の可逆的感熱記録媒体の記録層に用いられる樹脂としては、従来公知の樹脂が広く用いられるが、中でも繰り返し耐久性の点から熱や紫外線、電子線などによって架橋可能な樹脂が好ましく用いられ、例えば活性水酸基を有する樹脂をイソシアネート系架橋剤で硬化した樹脂などが特に好ましく用いられる。
【0037】
本発明で記録層に用いられる樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、水添ポリブタジエンのようなオレフィン系ポリマー;ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリ(n−ブチルアクリレート)、ポリ(イソボルニルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート、ポリ(2−ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシブチルアクリレート)、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(sec−ブチルメタクリレート)、ポリ(tert−ブチルメタクリレート)、ポリ(イソボルニルメタクリレート)、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリシクロヘキシルメタクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシブチルメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びこれらの共重合体のようなアクリル系ポリマー;ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(4−メトキシスチレン)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体のようなスチレン系ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール、ビニルアルコール−ビニルブチラール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ(2−ビニルピリジン)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(N−ビニルカルバゾール)のようなビニル系ポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンのようなフッソ系ポリマー;ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、エチルセルロース、メチルセルロースのようなセルロース系ポリマー;ポリテトラヒドロフラン;イソブチレン−無水マレイン酸共重合体;ポリイソブチルエーテル;;ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリ(2,6−ジメチル−p−フエニレンオキサイド)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドのようなエンジニアリングプラスチックス;ポリウレタン;ナイロン6、ナイロン66のようなポリアミド系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム塩のような水溶性ポリマー;天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴムのようなゴム系ポリマーなどが挙げられ、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0038】
また、該樹脂としてアクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなど架橋剤と反応する基、例えば活性水素基を持つ樹脂、または架橋剤と反応する基を持つモノマーとそれ以外のモノマーを共重合した樹脂なども挙げられるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。また、紫外線吸収構造を有するポリマーを単独、または上記の樹脂を必要に応じて2種以上併用することもできる。
【0039】
本発明においては、前記したように活性水素基を有する樹脂と架橋剤としてのイソシアネート化合物とを用いた熱硬化型の樹脂が特に好ましい。
このようなイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を2個以上有する化合物であり、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンによるアダクト型等が挙げられる。
【0040】
記録層中の発色成分と樹脂の重量割合は、発色成分1に対して0.1〜10が好ましく、これより少ないと記録層の熱強度が不足し、これより多い場合には発色濃度が低下して問題となる。
【0041】
記録層の形成には、顕色剤、発色剤、種々の添加剤、バインダー樹脂ならびに塗液溶媒よりなる混合物を均一に混合分散させて調製した塗液を用いる。塗液調製に用いられる溶媒の具体例としては水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコ−ル、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、iso−オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類等を例示することができる。特に、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチルや酢酸ブチルなどが好ましく用いられる。
【0042】
塗液調製はペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、三本ロールミル、ケディーミル、サンドミル、ダイノミル、コロイドミル等公知の塗液分散装置を用いて行うことができる。又、上記塗液分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散しても良いし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせても良い。更に加熱溶解して急冷または除冷によって析出させても良い。
【0043】
記録層を設ける塗工方法については特に制限はなく、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法を用いることができる。
【0044】
本発明において、発色感度の向上、耐久性の向上、耐光性の向上等のために、記録層上に保護層や、支持体裏面にバック層を形成しても良く、また、記録層と保護層の接着性向上、保護層の塗布による記録層の変質防止、保護層に含まれる材料が記録層へ移行する、あるいは、記録層に含まれる材料が保護層へ移行することを防止する目的で、両者の間に中間層を設けても良い。
【0045】
中間層に用いられる樹脂は、前記の記録層用の樹脂と同様の樹脂を用いることが出来る。もちろん、紫外線吸収構造を有するポリマーを単独、または前記の記録層用の樹脂を必要に応じて2種以上併用することもできる。架橋剤においても、前記の記録層用の架橋剤と同様の架橋剤を用いることが出来る。
中間層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜10μmである。中間層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、バインダー、塗工方法等は上記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0046】
また、本発明に用いられる保護層の樹脂は、前記の熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、電子硬化樹脂などが用いられる。中間層に紫外線吸収構造を有するポリマーを添加した場合、保護層への添加は特に限定しない。ただし、中間層で用いられなかった場合、保護層で紫外線吸収構造を有するポリマーを用いる。すなわち、紫外線吸収構造を有するポリマーの使用は、記録層・中間層・保護層のどれか一方、もしくは2層以上のいずれの場合でも良い。本発明に用いる紫外線硬化樹脂の場合、紫外線照射の光源としては水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどがあるが、光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に対応した発光スペクトルを有する光源を使用すればよい。また、紫外線照射条件としては、樹脂を架橋させるために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度を決めればよい。また、電子線照射装置としては照射面積、照射線量などの目的に応じて走査形、非走査形いずれかを選べば良く、照射条件としては樹脂を架橋するのに必要な線量に応じて、電子流、照射幅、搬送速度を決めれば良い。
保護層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜10μmである。保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、バインダー、塗工方法等は上記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0047】
記録層、中間層、保護層、アンダー層、バック層には、フィラー、紫外線吸収剤、滑剤、着色顔料等を添加しても良い。
フィラーとしては無機フィラーと有機フィラーに分けることができる。無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;無水ケイ酸、含水ケイ酸、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸カルシウムなどのケイ酸塩;アルミナ、酸化鉄などの水酸化物;酸化亜鉛、酸化インジウム、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニア、酸化スズ、酸化セリウム、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ビスマス、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化トリウム、酸化ハフニウム、酸化モリブデン、鉄フェライト、ニッケルフェライト、コバルトフェライト、チタン酸バリウム、チタン酸カリウムのような金属酸化物;硫化亜鉛、硫酸バリウムのような金属硫化物あるいは硫酸化合物;チタンカーバイド、シリコンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンカーバイド、タンタルカーバイドのような金属炭化物;窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化チタニウム、窒化ニオブ、窒化ガリウムのような金属窒化物等が挙げられる。
【0048】
有機フィラーとしては、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、ポリスチレン・イソプレン、ポリスチレン・ビニルベンゼンなどのスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン・アクリル、ポリアクリル・ウレタン、ポリエチレン・アクリルなどのアクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げらる。本発明では有機フィラーを単独で用いることもできるが、2種類以上含まれてもよく、複合粒子であっても良い。また、形状としては球状、粒状、板状、針状等が挙げられる。
【0049】
記録層、中間層、保護層等に滑剤を添加しても良く、滑剤の具体例としては、エステルワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス類:硬化ひまし油等の植物性ワックス類:牛脂硬化油等の動物性ワックス類:ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類:マルガリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチル酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、フロメン酸等の高級脂肪酸類:ソルビタンの脂肪酸エステルなどの高級脂肪酸エステル類:ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド等のアミド類などが挙げられる。
【0050】
本発明において、各層形成の乾燥・硬化方法は塗布・乾燥後、必要に応じて硬化処理を行う。高温槽等を用いて比較的高温で短時間でも良く、又比較的低温で長時間かけて熱処理しても良い。架橋反応の具体的な条件としては反応性の面から30〜130℃程度の温度条件で1分から150時間程度加温することが好ましい。より好ましくは40〜100℃の温度条件で2分から120時間程度加温することが好ましい。また、支持体としてPETフィルムを用いることが多いが、PETフィルムの耐熱性から130℃以上での乾燥は困難であることから、乾燥条件程度では架橋時間が短いため十分な架橋ではない。したがって、乾燥過程とは別に架橋工程を設ける必要がある。さらに、架橋温度を非常に高温にした場合、架橋が急速に進行するが、これにより層表面の塗れ性が極端に劣化し、塗工不良が起きたり、積層した層間の接着性が悪化する問題が生じる。そこで、架橋温度としては40〜100℃の温度条件で2分から120時間程度加温することが好ましい。
【0051】
本発明の可逆的感熱記録媒体の支持体としては紙、樹脂フィルム、PETフィルム、合成紙、金属箔、ガラスまたはこれらの複合体などであり、記録層を保持できるものであればよい。また、必要に応じた厚みのものが単独あるいは貼り合わす等して用いることができる。すなわち、数μm程度から数mm程度まで任意の厚みの支持体が用いられる。また、これらの支持体は可逆性感熱記録層と同一面および/または反対面に磁気記録層を有していても良い。また、本発明の可逆的感熱記録媒体は粘着層等を介して、他の媒体へ貼り付けても良い。あるいは、PETフィルムなどの支持体の片面にバックコート層を設け、該バックコート層の反対面に熱転写リボンに用いられる剥離層、剥離層上に本発明の感熱記録層、更に表面上に紙、樹脂フィルム、PETフィルムなどに転写できる樹脂層を設け熱転写プリンターを用いて転写させても良い。
【0052】
また本発明の可逆的感熱記録媒体は、シート状、ロール状あるいはカード状に加工されていても良く、その形状は任意の形状に加工することができる。
カード状に加工されたものについてはプリペイドカードやポイントカードさらにはクレジットカードなどへの応用が挙げられ、また、シート状に加工されたものは、A4サイズなど一般文書サイズに加工された場合、印字/消去装置を用いることにより、試し印字はもちろんのこと、回覧文書や会議資料など一時出力用途などに広く用いることができる。さらに、ロール状に加工されたものは、印字/消去部を有した装置に組み込まれるなどして、表示板・掲示板または電子黒板に用いることができる。このような表示装置は塵、ゴミなどの発生がないため、クリーンルームなどに好ましく用いることができる。
【0053】
また、本発明の可逆的感熱記録媒体は、非可逆の感熱記録層を併用しても良く、このときそれぞれの記録層の発色色調は同じでも異なっても良い。また、本発明の可逆性感熱記録媒体の一部分もしくは全面に、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷、またはインクジェットプリンター、熱転写プリンター、昇華型プリンターなどによって任意の絵柄などを施した着色層を設けても良く、さらに着色層上の一部分もしくは全面に硬化性樹脂を主成分とするOPニス層を設けても良い。これらの支持体は可逆性感熱記録層と同一面および/または反対面に磁気記録層を有していても良い。
【0054】
また本発明の可逆的感熱記録媒体を有する熱可逆性記億部と情報記憶部の両方を設けることにより、情報記憶部に記憶された情報を熱可逆性記録部に表示することで、特別な装置がなくても情報を確認することができ、利便性が向上する。その際に用いられる記憶部は磁気記録層やIC記録部などが好ましく用いられる。
【0055】
本発明の可逆的感熱記録媒体を用いて発色画像を形成させるためには、たとえばサーマルヘッドやレーザー光で短時間加熱すると記録層が局部的に加熱されるため、直ちに熱が拡散し急激な冷却が起こり、発色状態が固定できる。一方、消色させるためには適当な熱源を用いて比較的長時間加熱し冷却するか、発色温度よりやや低い温度に一時的に加熱すればよい。長時間加熱すると記録媒体の広い範囲が昇温し、その後の冷却は遅くなるため、その過程で消色が起きる。この場合の加熱方法には、熱ローラー、熱スタンプ、熱風などを用いてもよいし、サーマルヘッドを用いて長時間加熱してもよい。記録層を消色温度域に加熱するためには、例えばサーマルヘッドへの印加電圧やパルス幅を調節することによって、印加エネルギーを記録時よりやや低下させればよい。この方法を用いれば、サーマルヘッドだけで記録・消去ができ、いわゆるオーバーライトが可能になる。記録装置としては、通常用いられるプリンター以外にインクジェットプリンター、熱転写プリンター、昇華型プリンターなどを用いても良い。また、熱ローラー、熱スタンプによって消色温度域に加熱して消去することもできる。
【0056】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。尚、部又は%とあるのは特に断わりの無い限り重量基準である。
【0057】
上記組成から成る混合物をディスパーにて撹拌分散して得られた塗布液を市販の上質紙の表面に乾燥付着量が4.0〜5.0g/m2となるように塗布乾燥した。
[記録層の作成]
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 2部
下記の構造式で表される顕色剤 8部
【化2】
下記の構造式で表される発色消色制御剤 3部
【化3】
アクリルポリオール樹脂の15%テトラヒドロフラン
(THF)溶液 150部
上記組成物をボールミルを用いて平均粒径約1μmまで粉砕分散した。得られた分散液に日本ポリウレタン社製コロネートHL(アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート 75%酢酸エチル溶液)20部を加え、良く攪拌し記録層塗布液を調製した。
上記組成の記録層塗布液を、前記アンダー層上にワイヤーバーを用い塗布し、100℃2分で乾燥した後、60℃24時間加熱して、膜厚約8.0μmの記録層を設けた。
上記組成物を、よく溶解攪拌し保護層塗布液を調製した。上記組成の保護層塗布液を、上記記録層上にワイヤーバーを用いて塗工し90℃1分で乾燥した後、照射エネルギー80W/cmの紫外線ランプ下を9m/分の搬送速度で通して硬化して膜厚3μmの保護層を設け、可逆的感熱記録媒体を作製した。
【0058】
実施例2
実施例1のアンダー層液の代わりに下記処方のアンダー層液を用いた以外は実施例1と同様に可逆的感熱記録媒体を得た。
【0059】
実施例3
実施例1のアンダー層液の代わりに下記処方のアンダー層液を用いた以外は実施例1と同様に可逆的感熱記録媒体を得た。
【0060】
参考例4
実施例1のアンダー層液の代わりに下記処方のアンダー層液を用いた以外は実施例1と同様に可逆的感熱記録媒体を得た。
【0061】
比較例1
実施例1において、記録層及び保護層のみを塗工し、可逆的感熱記録媒体を得た。
【0062】
比較例2
実施例1のアンダー層液の代わりに下記処方のアンダー層液を用いた以外は実施例1と同様にして可逆的感熱記録媒体を得た。
<アンダー層液>
PVA613 10部
水 90部
【0063】
比較例3
実施例1のアンダー層液の代わりに下記処方のアンダー層液を用いた以外は実施例1と同様にして可逆的感熱記録媒体を得た。
【0064】
比較例4
実施例1のアンダー層液の代わりに下記処方のアンダー層液を用いた以外は実施例1と同様にして可逆的感熱記録媒体を得た。
【0065】
[評価方法と評価基準]
各実施例及び比較例で得られた可逆的感熱記録媒体について、下記の試験を評価した。評価結果を表4に示す。
試験1.発色/消色試験
作製した記録媒体を八製作所製感熱印字装置を用い、パルス幅2msecで電圧18Vの条件で印字試験を行い、記録媒体を発色させ、発色画像を得た。発色濃度を表1に示す。
次に、上記の発色画像上にパルス幅2msecで電圧7〜15V(0.5V刻み)でエネルギーを印加し消色の均一性を目視で評価した。
試験2.耐久性試験
試験1で行った発色/消色試験を10回繰り返して実施した。10回後の記録媒体の消去の均一性と様子を目視で評価した。また、記録媒体の耐久性をあわせて目視で評価した。
【0066】
【表4】
※1消色均一性 ○:均一に消去されている、×:消去にムラがある
※2耐久性 ○:良好、×:キズはがれなどが見られる
【0067】
【発明の効果】
本発明の可逆的感熱記録媒体は、発色濃度及び高速消去性に優れるとともに、繰り返し耐久性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の可逆的感熱記録媒体の発色・消色特性を示す図である。
Claims (9)
- 支持体上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度および/または加熱後の冷却速度の違いによって相対的に発色した状態を形成しうる可逆的感熱記録層を設けた可逆的感熱記録媒体において、前記感熱記録層と支持体の間に不活性無機粉体で表面コートされた中空粒子を含有するアンダー層を設けたことを特徴とする可逆的感熱記録媒体。
- アンダー層が、不活性無機粉体で表面コートされ、かつ、ハロゲンを含まない熱可塑性樹脂を主成分とする中空粒子を含有する請求項1に記載の可逆的感熱記録媒体。
- 前記中空粒子を含むアンダー層の厚みが2〜50μmであることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
- 前記アンダー層中にバインダー樹脂としてポリビニルアルコール樹脂、スチレン・ブタジエン共重合体、及びスチレン・アクリル共重合体から選ばれる1種又は2種以上の混合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
- 前記支持体と前記アンダー層の間に接着層を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
- 前記電子受容性化合物が炭素数8以上の脂肪族炭化水素基を有するフェノール性化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
- 前記可逆的感熱記録層中に架橋状態にある樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
- 前記感熱記録層の上にバリア層を設け、さらにその上に保護層を設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
- 前記支持体の厚さが60〜150μmであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の可逆的感熱記録媒体。
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