JP4854154B2 - 新規なカルバミド酸エステル化合物及び該化合物を用いた可逆性感熱記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なカルバミド酸エステル化合物に関するものである。さらに詳しくは、本化合物は熱エネルギーを制御することにより発色画像の形成と消去が可能な可逆性感熱記録材料の消色促進剤として有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明の化合物を利用可能な可逆性感熱記録体は、電子供与性呈色性化合物(以下、発色剤またはロイコ染料ともいう)と電子受容性化合物(以下、顕色剤ともいう)とを主成分とする感熱記録層を設けて構成されている。
従来、感熱記録媒体は広く知られており、ファクシミリ、ワードプロセッサー、科学計測機などのプリンターに使用されている。しかし、これらの実用化されている従来の記録媒体はいずれも不可逆的な発色であり、一度記録した画像を消去して繰り返して使用することはできない。
【0003】
しかし、特許公報によれば発色と消色を可逆的に行なうことができる記録媒体も提案されており、たとえば、顕色剤として没食子酸とフロログルシノールを用いるもの(特開昭60−193691号公報に記載)、顕色剤にフェノールフタレインやチモールフタレインなどの化合物を用いるもの(特開昭61−237684号公報に記載)、発色剤と顕色剤とカルボン酸エステルの均質相溶体を記録層に含有するもの(特開昭62−13556号公報、特開昭62−138568号公報および特開昭62−140881号公報に記載)、顕色剤にアスコルビン酸誘導体を用いたもの(特開昭63−173684号公報に記載)、顕色剤にビス(ヒドロキシフェニル)酢酸または没食子酸と高級脂肪族アミンとの塩を用いるもの(特開平2−188293号公報および特開平2−188294号公報に記載)などが開示されている。
【0004】
さらに、本発明者らは、先に特開平5−124360号公報において、顕色剤として長鎖脂肪族炭化水素基をもつ有機リン酸化合物、脂肪族カルボン酸化合物またはフェノール化合物を用い、これと発色剤であるロイコ染料と組み合わせることによって、発色と消色を加熱冷却条件により容易に行なわせることができ、しかもその発色状態と消色状態を常温において安定に保持させることが可能であり、しかも発色と消色を安定して繰り返すことが可能な可逆性発色組成物およびこれを記録層に用いた可逆性感熱記録媒体を提案した。
【0005】
またその後、長鎖脂肪族炭化水素基をもつフェノール化合物について特定の構造のものを使用すること(特開平6−210954号公報に記載)が提案されている。
【0006】
これは発色の安定性と消色性のバランスや発色濃度の点で実用レベルの性能を持つものであるが、実使用条件下では繰り返して印字・消去を行なうと画像濃度の低下などの問題が生じ、顕色剤とロイコ染料の組成物がもつ発色・消色特性を充分に発揮できる可逆性感熱記録媒体は得られていなかったので、さらに広範囲な使用環境への対応や発色消色条件の適用範囲の面で改良すべき余地があった。
【0007】
さらに、特開平8−310128号公報、特開平9−272262号公報、特開平9−270563号公報、特開平9−300817号公報、特開平9−300820号公報等において、特定の消色促進剤を添加することにより、高速消去特性が提案されているが、可逆的な色調変化を生じさせる電子受容性化合物およびバインダーが変わることによって、実用上消色時の画像濃度が高かったり、消色開始温度及び消色温度範囲等に改善が見られないという問題を有していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規なカルバミド酸エステル化合物を提供することにあり、また、上記のような従来技術における問題点を改善し、可逆性感熱記録材料の消色制御剤として用いられたとき、広範囲な使用条件、環境条件に対応できる新規な消色制御剤を提供することにある。さらに高速消去特性が良好である可逆性感熱記録媒体を提供し、さらに発色特性および保存特性が良好な可逆性感熱記録媒体を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、支持体上に、電子供与性呈色性化合物と電子受容性化合物を用い、加熱温度及び/又は加熱後の冷却速度の違いにより相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうる可逆性熱発色組成物を含有する可逆性感熱記録層を有する可逆性感熱記録媒体において、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ない、新規な消色制御剤を種々設計、合成、検討し、その結果、新規な消色制御剤として有用な下記化学式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表わされる化合物の製造に成功した。
【0010】
また該可逆性感熱記録層中に発色消色制御剤として下記化学式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表わされる化合物を含有することを特徴とすることにより、広範囲な使用条件、環境条件に対応できる可逆性感熱記録材料が提供され、熱応答性に優れ高速消去に対応できる可逆性感熱記録媒体が提供されることを見い出した。
【0011】
すなわち、本発明の化合物は、下記化学式(I)、(II)、(III)及び(IV)で表わされる新規なカルバミド酸エステル化合物である。
【0012】
【化5】
(但し、式中nは11〜21の整数を表わす。)
【0013】
【化6】
(但し、式中nは11〜21の整数を表わす。)
【0014】
【化7】
(但し、式中nは11〜21の整数を表わす。)
【0015】
【化8】
(但し、式中nは11〜21の整数を表わす。)
【0016】
また、上記目的は、本発明の(1)「上記化学式(I)、(II)、(III)及び/又は(IV)で表わされる新規なカルバミド酸エステル化合物を用いた可逆性感熱記録媒体」により達成され、また「前記化合物(I)、(II)、(III)及び/又は(IV)の他に、発色消色促進剤として、ヘテロ原子を含む2価の基と炭素数6以上のアルキル鎖を有する化合物を用いることを特徴とする前記第(1)項に記載の可逆性感熱記録媒体」により達成される。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の化合物(I)、(II)及び(III)は、たとえば、ジオールと長鎖アルキルイソシアネート化合物とのウレタン結合生成反応により合成することが可能であり、また化合物(IV)は、たとえば、トリオールと長鎖アルキルイソシアネート化合物とのウレタン結合生成反応により合成することが可能である。
これらの合成反応は、ジオールに対し長鎖アルキルイソシアネートの2当量を混合、又はトリオールに対し長鎖アルキルイソシアネートの3当量を混合して行なわれ、この付加反応によりほぼ定量的に目的の本発明の化合物(I)、(II)、(III)及び(IV)を生成する。
【0018】
また、この合成反応は、有機溶媒中で行なわれ、長鎖アルキルイソシアネートと反応して上記の合成反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、不活性溶媒を用いることが好ましい。ここで言う不活性溶媒とは、トルエン、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、アセトン、メチルエチルケトン、THF等である。
なお、本発明の新規なカルバミド酸エステル化合物(I)、(II)、(III)及び(IV)はこれらの合成方法に何ら限られるものではない。
【0019】
本発明の前記化合物(I)、(II)、(III)及び(IV)は可逆性感熱記録材料に含有される消色制御剤として有用であり、この可逆性感熱記録材料は、これらの化合物とともに基本的に顕色剤と発色剤を組み合わせることによって構成されるものである。
【0020】
本発明の化合物を使用した本発明の可逆性感熱記録材料は、発色剤又はロイコ型染料前駆体(電子供与性化合物)と顕色剤(電子受容性化合物)および本発明の前記化合物を主成分として構成される。
ここで用いる発色剤は電子供与性を示すものであり、それ自体無色あるいは淡色の染料前駆体(ロイコ染料)であり、とくに限定されず、従来公知なもの、例えばトリフェニルメタンフタリド系化合物、フルオラン系化合物、フェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物、インドリノフタリド系化合物、アザフタリド系化合物などから選択できる。
【0021】
以下に、本発明で用いられるロイコ染料の例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ(n−ブチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(m−トリフルロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(m−トリクロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、
2−(2,4−ジメチルアニリノ)−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、
2−(N−エチル−p−トルイジノ)−3−メチル−6−( N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−アニリノ−6−( N−n−ヘキシル−N−エチルアミノ)フルオラン、
2−(o−クロロアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(o−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、
2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2,3−ジメチル−6−ジメトルアミノフルオラン、
3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−ブロモ−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−クロロ−6−ジプロピルアミノフルオラン、
3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
3−ブロモ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−クロロ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(o−クロロアニリノ)−3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(2,3−ジクロロアニリノ)−3−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、
3−ジエチルアミノ−6−(m−トリフロロメチルアニリノ)フルオラン、
3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、
3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−メチル−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド、
3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(4−N−n−アミル−N−メチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−(1−メチル−2−メチルインドール−3−イル)−3−(2−ヘキシルオキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−7−アザフタリド。
【0022】
本発明で用いる発色剤は、前記のフルオラン化合物、アザフタリド化合物の他に、従来公知のロイコ染料を単独または混合して使用することができる。その発色剤を以下に示す。
2−(p−アセチルアニリノ)−6−(N−n−アミル−N−n−ブチルアミノ)フルオラン、
2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、
2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、
2−ベンジルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−ベンジルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−(ジ−p−メチルベンジルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−(α−フェニルエチルアミノ)−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−メチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、
2−メチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、
2−メチルアミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、
2−エチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−メチルアミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、
2−エチルアミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、
2−ジメチルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、
2−ジメチルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、
2−ジエチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−ジエチルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−ジプロピルアミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、
2−ジプロピルアミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−メチルアニリノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−エチルアニリノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−プロピルアニリノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−プロピル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−メチル−p−エチルアニリノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−エチル−p−エチルアニリノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−プロピル−p−エチルアニリノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−メチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−エチル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−プロピル−2,4−ジメチルアニリノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−メチル−p−クロロアニリノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−エチル−p−クロロアニリノ)フルオラン、
2−アミノ−6−(N−プロピル−p−クロロアニリノ)フルオラン、
1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンゾ−6−ジブチルアミノフルオラン、
1,2−ベンゾ−6−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−トルイジノ)フルオラン、その他。
【0023】
本発明において好ましく用いられる他の発色剤の具体例を示すと以下のとおりである。
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−2−エトキシプロピル−N−エチルアミノ)フルオラン、
2−(p−クロロアニリノ)−6−(N−n−オクチルアミノ)フルオラン、
2−(p−クロロアニリノ)−6−(N−n−パルミチルアミノ)フルオラン、
2−(p−クロロアニリノ)−6−(ジ−n−オクチルアミノ)フルオラン、
2−ベンゾイルアミノ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−(o−メトキシベンゾイルアミノ)−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−ジベンジルアミノ−4−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−ジベンジルアミノ−4−メトキシ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−ジベンジルアミノ−4−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−(α−フェニルエチルアミノ)−4−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(p−トルイジノ)−3−(t−ブチル)−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−(o−メトキシカルボニルアミノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アセチルアミノ−6−(N−メチル−p−トルイジノ)フルオラン、
4−メトキシ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−エトキシエチルアミノ−3−クロロ−6−ジブチルアミノフルオラン、
2−ジベンジルアミノ−4−クロロ−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、
2−(α−フェニルエチルアミノ)−4−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−ベンジル−p−トリフロロメチルアニリノ)−4−クロロ−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ピロリジノフルオラン、
2−アニリノ−3−クロロ−6−ピロリジノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)フルオラン、
2−メシジノ−4',5'−ベンゾ−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(m−トリフロロメチルアニリノ)−3−メチル−6−ピロリジノフルオラン、
2−(α−ナフチルアミノ)−3,4ベンゾ−4'−ブロモ−6−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)フルオラン、
2−ピペリジノ−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−n−プロピル−p−トリフロロメチルアニリノ)−6−モルフォリノフルオラン、
2−(ジ−N−p−クロロフェニル−メチルアミノ)−6−ピロリジノフルオラン、
2−(N−n−プロピル−m−トリフロロメチルアニリノ)−6−モルフォリノフルオラン、
1,2−ベンゾ−6−(N−エチル−N−n−オクチルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンゾ−6−ジアリルアミノフルオラン、
1,2−ベンゾ−6−(N−エトキシエチル−N−エチルアミノ)フルオラン、
ベンゾロイコメチレンブルー、
2−[3,6−ビス(ジエチルアミノ)−7−(o−クロロアニリノ)キサンチル]安息香酸ラクタム、
2−[3,6−ジエチルアミノ)−9−(o−クロロアニリノ)キサンチル]安息香酸ラクタム、
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−フタリド、
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名クリスタルバイオレットラクトン)、
3,3−ビス−(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、
3,3−ビス−(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロロフタリド、
3,3−ビス−(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、
3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−4,5−ジクロロフェニル)フタリド、
3−(2−ヒドロキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−クロロフェニル)フタリド、
3−(2−ヒドロキシ−4−ジメトキシアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−クロロフェニル)フタリド、
3−(2−ヒドロキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−ニトロフェニル)フタリド、
3−(2−ヒドロキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)フタリド、
3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−ヒドロキシ−4−クロロ−5−メトキシフェニル)フタリド、
3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオレンスピロ(9,3')−6'−ジメチルアミノフタリド、
6'−クロロ−8'−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン、
6'−ブロモ−2'−メトキシ−ベンゾインドリノ−スピロピラン。
【0024】
特に好ましいロイコ染料として、化学式(A)、化学式(B)、化学式(C)の化合物が単独もしくは混合して用いられる。
【0025】
【化9】
式(A)中、R12、R13は低級アルキル基、置換されてもよいアリール基、水素原子を示し、さらにR12、R13は互いに結合し環を形成していてもよい。R14は低級アルキル基、ハロゲン原子または水素原子を表わし、また、R15は低級アルキル、ハロゲン原子、水素原子、または化学式(D)で表わされる置換アニリノ基を示す。
【0026】
【化10】
式(D)中、R16は低級アルキル基または水素原子を示し、Yは低級アルキル基またはハロゲン原子を示す。zは0から3の整数を表わす。
【0027】
【化11】
式(B)中、R17〜R20はアルキル基または水素原子を表わし、R21はアルキル基、アルコキシル基または水素原子を表わす。
【0028】
【化12】
式(C)中、R22〜R25は低級アルキル基または水素原子を表わす。R26、R27はアルキル基、アルコキシル基または水素原子を表わす。
【0029】
次に、本発明の化合物とともに用いられる発色剤と組み合わせて用いられる顕色剤について説明する。
顕色剤には、すでに特開平5−124360号公報に長鎖炭化水素基をもつリン酸化合物、脂肪酸化合物フェノール化合物の代表例とともに記載されているように、分子内に発色剤を発色させることができる顕色能をもつ構造と、分子間の凝集力をコントロールする構造を併せ持つ化合物が使用される。
【0030】
顕色能をもつ構造としては、一般の感熱記録媒体と同様に、たとえばフェノール性水酸基、カルボキシル基、リン酸基などの酸性の基が用いられるが、これらに限らず発色剤を発色できる基をもてばよい。これらには、たとえばチオ尿素基、カルボン酸金属塩などがある。分子間の凝集力をコントロールする代表的な構造としては長鎖アルキル基などの炭化水素基がある。この炭化水素基の炭素数は、一般的には8以上であることが良好な発色・消色特性を得る上で好ましい。また、この炭化水素基には不飽和結合が含まれていてもよく、また分枝状の炭化水素基も包含される。この場合も、主鎖部分は炭素数8以上であることが好ましい。また、この炭化水素基は、たとえばハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基などの基で置換されていてもよい。
【0031】
上記のように、顕色剤は、顕色能を持つ構造と炭化水素基で代表される凝集力を制御する構造が連結した構造をもつ。この連結部分には下記に示すようなヘテロ原子を含む2価の基、または、これらの基が複数個組み合わされた基をはさんで結合していてもよい。
また、フェニレン、ナフチレンなどの芳香環または複素環などをはさんで結合していてもよいし、これら両方をはさんでいてもよい。
炭化水素基は、その鎖状構造中に上記と同様な2価の基、すなわち芳香環やヘテロ原子を含む2価の基を有するものであってもよい。
【0032】
以下、顕色剤については、上記の特開平5−124360号公報に示されている他、特開平9−193558号公報、特開平9−193557号公報、特開平9−315009号公報、特開平9−323479号公報、特開平9−290566号公報、特開平10−861号公報、特開平10−6655号公報、特願平8−166894号明細書、特願平9−161908号明細書等に示される顕色剤を用いることができる。しかしながら、本発明の化合物と用いられる発色剤および顕色剤は上記の例に限定されるものではない。
【0033】
以下、本発明に用いられる顕色剤について一部を具体的に例示する。
有機リン酸系の顕色剤としては以下のような化合物が例示できる。
ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、ヘキサデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エイコシルホスホン酸、ドコシルホスホン酸、テトラコシルホスホン酸、リン酸ジテトラデシルエステル、リン酸ジヘキサデシルエステル、リン酸ジオクタデシルエステル、リン酸ジエイコシルエステル、リン酸ジベヘニルエステルなど。
【0034】
脂肪族カルボン化合物としては以下のような化合物が例示できる。
2−ヒドロキシテトラデカン酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、2−ヒドロキシエイコサン酸、2−ヒドロキシドコサン酸、2−ブロモヘキサデカン酸、2−ブロモオクタデカン酸、2−ブロモエイコサン酸、2−ブロモドコサン酸、3−ブロモオクタデカン酸、3−ブロモドコサン酸、2,3−ジブロモオクタデカン酸、2−フルオロドデカン酸、2−フルオロテトラデカン酸、2−フルオロヘキサデカン酸、2−フルオロオクタデカン酸、2−フルオロエイコサン酸、2−フルオロドコサン酸、2−ヨードヘキサデカン酸、2−ヨードオクタデカン酸、3−ヨードヘキサデカン酸、3−ヨードオクタデカン酸、パーフルオロオクタデカン酸など。
【0035】
脂肪族ジカルボン酸およびトリカルボン酸化合物としては以下のような化合物が例示できる。
2−ドデシルオキシこはく酸、2−テトラデシルオキシこはく酸、2−ヘキサデシルオキシこはく酸、2−オクタデシルオキシこはく酸、2−エイコシルオキシこはく酸、2−ドデシルオキシこはく酸、2−ドテシルチオこはく酸、2−テトラデシルチオこはく酸、2−ヘキサデシルチオこはく酸、2−オクタデシルチオこはく酸、2−エイコシルチオこはく酸、2−ドコシルチオこはく酸、2−テトラコシルチオこはく酸、2−ヘキサデシルジチオこはく酸、2−オクタデシルジチオこはく酸、2−エイコシルジチオこはく酸、ドデシルこはく酸、テトラデシルこはく酸、ペンタデシルこはく酸、ヘキサデシルこはく酸、オクタデシルこはく酸、エイコシルこはく酸、ドコシルこはく酸、2,3−ジヘキサデシルこはく酸、2,3−ジオクタデシルこはく酸、2−メチル−3−ヘキサデシルこはく酸、2−メチル−3−オクタデシルこはく酸、2−オクタデシル−3−ヘキサデシルこはく酸、ヘキサデシルマロン酸、オクタデシルマロン酸、エイコシルマロン酸、ドコシルマロン酸、ジヘキサデシルマロン酸、ジオクタデシルマロン酸、ジドコシルマロン酸、メチルオクタデシルマロン酸、2−ヘキサデシルグルタル酸、2−オクタデシルグルタル酸、2−エイコシルグルタル酸、ドコシルグルタル酸、2−ペンタデシルアジピン酸、2−オクタデシルアジピン酸、2−エイコシルアジピン酸、2−ドコシルアジピン酸、2−ヘキサデカノイルオキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、2−オクタデカノイルオキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸など。
【0036】
また、上記化合物(I)、(II)、(III)及び(IV)の他に、本発明で用いられる発色消色制御剤として、下記化学式(G)で表わされる化合物を用いることにより、保存特性、高速消去特性に優れた可逆的感熱記録媒体を得ることができる。
式(G)の構造発色消色制御剤の例としては、つぎのものが挙げられる。
【0037】
【化13】
【0038】
式中、X1、X2及びX3はヘテロ原子を含む基を示し、またR1、R2、R3及びR4は炭素数1〜22の基を表わす。また、l、m及びoはそれぞれ独立に0または1を表わし、nは0〜4の整数を示す。ただし、l、m、n及びoが同時に0であることはない。さらに、nが2以上のとき繰り返されるR3およびX2は同一であっても異なっていても良い。また、R1、R2、R3及びR4は複素環を含んでいても良い。より好ましくは、R1、R2及びR3の炭素数の和は8以上であることが好ましい。R1、R2及びR3は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、これらは脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、これらの両方から構成される炭化水素基でもよい。また脂肪族炭化水素基は直鎖でも分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。炭化水素基につく置換基としては、水酸基、ハロゲン、アルコキシ基等がある。また、R1、R2、R3及びR4の炭素数の和が7以下では発色の安定性や消色性が低下するため、炭素数は8以上が好ましく、11以上であることがより好ましい。R1、R3の好ましい例としては表1のものが挙げられる。
【0039】
【表1】
【0040】
また、R2、R3及びR4の好ましい例としては表2のものが挙げられる。なお、表2の式中q、q'、q''、q'''はそれぞれ前記R1、R2及びR3の炭素数を満足する整数を表わす。また、X1及びX3の例として、構造式の末端位にある場合には、好ましくは表3に表わされる基を少なくとも1個以上有する基を表わす。その例としては、表4のものが挙げられる。また、X1及びX2はヘテロ原子を含む2価の基を示し、好ましくは表5で表わされる基を少なくとも1個以上有する2価の基を表わす。その例としては、表6のものが挙げられる。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
【表6】
【0046】
また、表7に本発明で用いられる発色消色制御剤の好ましい構造を例示するが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
【0047】
【表7】
【0048】
表7中、R1、R2、R3、R4、X1、X2及びX3はそれぞれ前記と同様の基を表わす。また、nは0から4の整数であり、nが2以上のときに繰り返されるR3、X2は同一であっても、異なっていても良い。さらに、mは0あるいは1を示す。ただしnとmが同時に0であることはない。さらに、特に好ましい構造としては表8のものが挙げられる。
【0049】
【表8】
【0050】
本発明で用いられる発色消色制御剤の具体的な例としては、また、例えば式8−(h)の例としては表9に記載の化合物が挙げられる。
また、式8−(i)についても同様の化合物が挙げられる。
【0051】
【表9】
さらに具体例としては例えば、表9中の、
【0052】
【化14】
CH3(CH2)q−NHCONH−(CH2)q’CH3
および
【0053】
【化15】
CH3(CH2)q−NHCONH−(CH2)q’’CH3−NHCONH−(CH2)q’’’CH3
で表わされる化合物の例として、表10に記載の化合物が挙げられる。
【0054】
【表10】
【0055】
また、本発明によれば顕色剤として化学式(H)で表わされるフェノール性化合物を用いることによって、画像コントラストの良好なものとなる。
【0056】
【化16】
【0057】
式中、X4はヘテロ原子を含む2価の基または直接結合手を示し、X5はヘテロ原子を含む2価の基を示す。R10は2価の炭化水素基を表わし、R11は炭素数1〜22の炭化水素基を表わす。また、vは0〜4の整数を表わし、vが2〜4のとき繰り返されるR18およびX5は同一でも、異なっていても良い。また、uは1から3を表わす。
【0058】
具体的には、R10およびR11は置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、これらは脂肪族炭化水素基でも芳香族炭化水素基でもよく、また、これらの両方から構成される炭化水素基でもよい。また脂肪族炭化水素基は直鎖でも分枝していてもよく、不飽和結合を有していてもよい。炭化水素基につく置換基としては、水酸基、ハロゲン、アルコキシ基等がある。なお、R10は直接結合手でも良い。またR10及びR11の炭素数の和が7以下では発色の安定性や消色性が低下するため、炭素数は8以上が好ましく、11以上であることがより好ましい。R10の好ましい例としては、直接結合手の他に表11に記載のものが挙げられる。また、R11の好ましい例としては表12に記載のものが挙げられる。なお、式中のq、q’、q’’、q’’’はそれぞれ前記R10、R11の炭素数を満足する整数を表わす。
【0059】
【表11】
【0060】
【表12】
【0061】
また、X4及びX5はヘテロ原子を含む2価の基を示し、好ましくは、表13で表わされる基を少なくとも1個以上有する2価の基を表わす。その例としては、表14のものが挙げられる。
【0062】
【表13】
【0063】
【表14】
【0064】
本発明で用いられるフェノール化合物の特に好ましい例としては、表15中の式で表わされる化合物が挙げられる。なお、式中のw、w’、yはそれぞれ独立にR10またはR11の炭素数を満足する整数を示す。
【0065】
【表15】
【0066】
本発明におけるフェノール化合物のさらに具体的な例としては、例えば表16に示した化合物が挙げられる。また、他の式で表わされる化合物もこれらと同様なものが具体例として挙げられる。しかし、本発明は何等これらに限定されるものではない。
【0067】
【表16−1】
【0068】
【表16−2】
【0069】
【表16−3】
【0070】
また、さらに具体的なフェノール化合物としてはたとえば以下のものが挙げられる。その例として化学式(J)で表わされる化合物の具体的な例を表17に挙げる。なお、表16中の他の式で表わされる化合物についても同様なものが挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
【化17】
【0072】
【表17】
【0073】
本発明の化合物を使用した可逆性感熱記録材料の実使用上の形態としては、支持体上に顕色剤と発色剤および本発明の化合物を主成分として記録層を設けるものである。支持体としては紙、樹脂フィルム、合成紙、金属箔、ガラスまたはこれらの複合体などであり、記録層を保持できるものであればよい。
【0074】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、加熱温度およびまたは加熱後の冷却速度により相対的に発色した状態と消色した状態を形成しうるものである。
以下、本発明に用いられる発色剤と顕色剤からなる組成物の基本的な発色・消色現象を説明する。
【0075】
図8はこの記録媒体の発色濃度と温度との関係を示したものである。はじめ消色状態(A)にある記録媒体を昇温していくと、溶融し始める温度T1で発色が起こり溶融発色状態(B)となる。溶融発色状態(B)から急冷すると発色状態のまま室温に下げることができ、固まった発色状態(C)となる。
【0076】
この発色状態が得られるかどうかは、溶融状態からの降温の速度に依存しており、徐冷では降温の過程で消色が起き、はじめと同じ消色状態(A)あるいは急冷発色状態(C)より相対的に濃度の低い状態が形成される。一方、急冷発色状態(C)をふたたび昇温していくと発色温度より低い温度T2で消色が起き(DからE)、ここから降温するとはじめと同じ消色状態(A)に戻る。実際の発色温度、消色温度は、用いる顕色剤と発色剤の組み合わせにより変化するので目的に合わせて選択できる。また溶融発色状態の濃度と急冷したときの発色濃度は、必ずしも一致するものではなく、異なる場合もある。
【0077】
本発明の記録媒体では、溶融状態から急冷して得た発色状態(C)は顕色剤と発色剤が分子同士で接触反応しうる状態で混合された状態であり、これは固体状態を形成していることが多い。この状態は顕色剤と発色剤が凝集して発色を保持した状態であり、この凝集構造の形成により発色が安定化していると考えられる。
【0078】
一方、消色状態は両者が相分離した状態である。この状態は少なくとも一方の化合物の分子が集合してドメインを形成したり結晶化した状態であり、凝集あるいは結晶化することにより発色剤と顕色剤が分離して安定化した状態であると考えられる。本発明では多くの場合、両者が相分離し顕色剤が結晶化することによってより完全な消色が起きる。図8に示した溶融状態から徐冷による消色および発色状態からの昇温による消色は、いずれもこの温度で凝集構造が変化し、相分離や顕色剤の結晶化が起きている。
【0079】
本発明の可逆性感熱記録媒体の発色記録の形成はサーマルヘッドなどによりいったん溶融混合する温度に加熱し、急冷すればよい。また、消色は加熱状態から徐冷する方法と発色温度よりやや低い温度に加熱する方法の二つである。しかし、これらは両者が相分離したり、少なくとも一方が結晶化する温度に一時的に保持するという意味で同じである。発色状態の形成で急冷するのは、この相分離温度または結晶化温度に保持しないようにするためである。ここにおける急冷と徐冷はひとつの組成物に対して相対的なものであり、その境界は発色剤と顕色剤の組合せにより変化する。
【0080】
発色剤と顕色剤の割合は、使用する化合物の組み合わせにより適切な範囲が変化するが、おおむねモル比で発色剤1に対し顕色剤が0.1〜20の範囲であり、好ましくは0.2〜10の範囲である。この範囲より顕色剤が少なくても多くても発色状態の濃度が低下し問題となる。また、消色促進剤、発色消色制御剤の割合は顕色剤に対し0.1重量%〜300重量%が好ましく、より好ましくは3重量%〜100重量%が好ましい。また、発色剤と顕色剤はマイクロカプセル中に内包して用いることもできる。
【0081】
記録層中の発色成分と樹脂の割合は、発色成分1に対して0.1〜10が好ましく、これより少ないと記録層の熱強度が不足し、これより多い場合には発色濃度が低下して問題となる。
【0082】
記録層の形成には、前記の顕色剤、発色剤、消色促進剤、発色消色制御剤及び架橋状態にある樹脂ならびに塗液溶媒よりなる混合物を均一に混合分散させて調製した塗液を用いる。
塗液調製に用いられる溶媒の具体例としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール,n−ブタノール、メチルイソカルビノールなどのアルコール類;アセトン、2−ブタノン、エチルアミルケトン、ジアセトンアルコール、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、3,4−ジヒドロ−2H−ピランなどのエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、乳酸エチル、エチレンカーボネートなどのエステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、iso−オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、1,2−ジクロルエタン、ジクロロプロパン、クロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;N−メチル−2−ピロリドン、N−オクチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類等を例示することができる。
【0083】
塗液調製は、ペイントシェーカー、ボールミル、アトライター、三本ロールミル、ケディーミル、サンドミル、ダイノミル、コロイドミル等公知の塗液分散装置を用いて行なうことができる。また、上記塗液分散装置を用いて各材料を溶媒中に分散しても良いし、各々単独で溶媒中に分散して混ぜ合わせても良い。更に加熱溶解して急冷または除冷によって析出させても良い。
【0084】
記録層を設ける塗工方法については特に制限はなく、ブレード塗工、ワイヤーバー塗工、スプレー塗工、エアナイフ塗工、ビード塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、キス塗工、リバースロール塗工、ディップ塗工、ダイ塗工等公知の方法を用いることができる。
【0085】
記録層の乾燥・硬化方法は塗布・乾燥後、必要に応じて硬化処理を行なう。熱で架橋するものであれば高温槽等を用いて比較的高温で短時間でも良く、又比較的低温で長時間かけて熱処理しても良い。また、紫外線硬化・電子線硬化であれば、それぞれ公知の硬化装置を用いれば良い。例えば、紫外線照射の際の光源としては水銀ランプ、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、水銀キセノンランプ、フラッシュランプなどがあるが、前記した光重合開始剤及び光重合促進剤の紫外線吸収波長に対応した発光スペクトルを有する光源を使用すればよい。また、紫外線照射条件としては、樹脂を架橋させるために必要な照射エネルギーに応じてランプ出力、搬送速度を決めればよい。また、電子線照射装置としては照射面積、照射線量などの目的に応じて走査形、非走査形いずれかを選べば良く、照射条件としては樹脂を架橋するのに必要な線量に応じて、電子流、照射幅、搬送速度を決めれば良い。
記録層の膜厚は1〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは3〜10μmである。
【0086】
上記のように、本発明の可逆性感熱記録媒体の支持体としては紙、樹脂フィルム、合成紙、金属箔、ガラスまたはこれらの複合体などであり、記録層を保持できるものであればよい。
【0087】
本発明の可逆性感熱記録媒体には、必要に応じて記録層の塗布特性や発色消色特性を改善したり制御するための添加剤を用いることができる。これらの添加剤には、たとえば界面活性剤、導電剤、充填剤、酸化防止剤、光安定化剤、発色安定化剤などがある。
【0088】
本発明の可逆性感熱記録媒体は、基本的に支持体上に上記の架橋状態にある樹脂を含む記録層、および必要に応じ架橋状態にある樹脂を含む保護層が設けられたものであるが、記録媒体としての特性を向上するため、接着層、中間層、アンダーコート層、バックコート層などを設けることができる。さらに、磁気記録層を設けていても良い。
【0089】
また、前記の各層、支持体は着色剤により着色されていても良い。これは記録媒体の一部あるいは全面が例えば印刷により着色されていても良い。また、着色した印刷層上に樹脂を主成分とする無色あるいは淡色の印刷保護層を設けても良い。
【0090】
保護層に用いる樹脂としては、前記の架橋状態にある樹脂の他にポリビニルアルコール、スチレン無水マレイン酸共重合体、カルボキシ変性ポリエチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
保護層の膜厚は0.1〜20μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜10μmである。
【0091】
記録層と保護層の接着性向上、保護層の塗布による記録層の変質防止、保護層中の添加剤の記録層への移行を防止する目的で、両者の間に中間層を設けることも好ましい。
【0092】
また、印加した熱を有効に利用するため支持体と記録層の間に断熱性のアンダーコート層を設けることができる。断熱層は有機または無機の微小中空体粒子をバインダー樹脂を用いて塗布することにより形成できる。支持体と記録層の接着性の改善や支持体への記録層材料の浸透防止を目的としたアンダーコート層を設けることもできる。
中間層、アンダーコート層には、前記の記録層用の樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
【0093】
また、アンダーコート層、記録層、中間層、保護層にフィラーを添加しても良く、フィラーとしては無機フィラーと有機フィラーに分けることができる。
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;無水ケイ酸、含水ケイ酸、含水ケイ酸アルミ二ウム、含水ケイ酸カルシウムなどのケイ酸塩;アルミナ、酸化鉄などの水酸化物;酸化亜鉛、酸化インジウム、アルミナ、シリカ、酸化ジルコニア、酸化スズ、酸化セリウム、酸化鉄、酸化アンチモン、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ビスマス、酸化ニッケル、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化トリウム、酸化ハフニウム、酸化モリブデン、鉄フェライト、ニッケルフェライト、コバルトフェライト、チタン酸バリウム、チタン酸カリウムのような金属酸化物;硫化亜鉛、硫酸バリウムのような金属硫化物あるいは硫酸化合物;チタンカーバイド、シリコンカーバイド、モリブデンカーバイド、タングステンカーバイド、タンタルカーバイドのような金属炭化物;窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素、窒化ジルコニウム、窒化バナジウム、窒化チタニウム、窒化ニオブ、窒化ガリウムのような金属窒化物等が挙げられる。有機フィラーとしては、シリコーン樹脂、セルロース樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、スチレン、ポリスチレン、ポリスチレン・イソプレン、スチレンビニルベンゼンなどのスチレン系樹脂、塩化ビニリデンアクリル、アクリルウレタン、エチレンアクリルなどのアクリル系樹脂、ポリエチレン樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒドなどのホルムアルデヒド系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられる。本発明では有機フィラーを単独で用いることもできるが、2種類以上含まれてもよく、複合粒子であっても良い。また、形状としては球状、粒状、板状、針状等が挙げられる。
また層中のフィラーの含有量は体積分率で1〜95%、より好ましくは5〜75%である。
【0094】
また、アンダーコート層、記録層、中間層、保護層に滑剤を添加しても良く、滑剤の具体例としては、エステルワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等の合成ワックス類:硬化ひまし油等の植物性ワックス類:牛脂硬化油等の動物性ワックス類:ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類:マルガリン酸、ラウリン酸、ミスチレン酸、パルミチル酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、フロメン酸等の高級脂肪酸類:ソルビタンの脂肪酸エステルなどの高級脂肪酸エステル類:ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチロールステアリン酸アミド等のアミド類などが挙げられる。
層中の滑剤の含有量は体積分率で0.1〜95%、より好ましくは1〜75%である。
【0095】
また、中間層、保護層中に無機または有機紫外線吸収剤を含有しても良く、その含有量はバインダー100重量部に対して0.5〜10重量部の範囲が好ましい。
有機紫外線吸収剤としては、例えば
2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
2−(2'−ヒドロキシ−5'−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、
2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、
2−(2'−ヒドロキシ−3'−t−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、
2−(2'−ヒドロキシ−5'−エトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、
2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、
2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、
2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、
2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2'−カルボキシベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−オキシベンジルベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−クロロベンゾフェノン、
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、
2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン−スルホン酸ナトリウム等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、
フェニルサリシレート、
p−オクチルフェニルサリシレート、
p−t−ブチルフェニルサリシレート、
カルボキシフェニルサリシレート、
メチルフェニルサリシレート、
ドデシルフェニルサリシレート、
2−エチルヘキシルフェニルサリシレート、
ホモメンチルフェニルサリシレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤、
2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、
エチル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、
p−アミノ安息香酸、
p−アミノ安息香酸グリセリル、
p−ジメチルアミノ安息香酸アミル、
p−ジヒドロキシプロピル安息香酸エチル等のp−アミノ安息香酸系紫外線吸収剤、
p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、
p−メトキシケイ皮酸−2−エトキシエチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤、
4−t−ブチル−4'−メトキシ−ジベンゾイルメタン、
ウロカニン酸、ウロカニン酸エチル等が挙げられる。
【0096】
中間層、保護層の塗液に用いられる溶媒、塗液の分散装置、塗工方法、乾燥・硬化方法等は前記記録層で用いられた公知の方法を用いることができる。
【0097】
本発明の可逆性感熱記録媒体を用いて発色画像を形成させるためには、いったん発色温度以上に加熱したのち急冷されるようにすればよい。具体的には、たとえばサーマルヘッドやレーザー光で短時間加熱すると記録層が局部的に加熱されるため、直ちに熱が拡散し急激な冷却が起こり、発色状態が固定できる。一方、消色させるためには適当な熱源を用いて比較的長時間加熱し冷却するか、発色温度よりやや低い温度に一時的に加熱すればよい。長時間加熱すると記録媒体の広い範囲が昇温し、その後の冷却は遅くなるため、その過程で消色が起きる。この場合の加熱方法には、熱ローラー、熱スタンプ、熱風などを用いてもよいし、サーマルヘッドを用いて長時間加熱してもよい。記録層を消色温度域に加熱するためには、例えばサーマルヘッドへの印加電圧やパルス幅を調節することによって、印加エネルギーを記録時よりやや低下させればよい。この方法を用いれば、サーマルヘッドだけで記録・消去ができ、いわゆるオーバーライトが可能になる。もちろん、熱ローラー、熱スタンプによって消色温度域に加熱して消去することもできる。
【0098】
また、本発明の可逆性感熱記録媒体は前記に例示される支持体に記録層を保持して形成されるが、このとき使用される支持体は必要に応じた厚みのものが単独あるいは貼り合わせる等して用いることができる。すなわち、数μm程度から数mm程度まで任意の厚みの支持体が用いられる。また、これらの支持体は可逆性感熱記録層と同一面および/または反対面に磁気記録層を有していても良い。
【0099】
また、本発明の可逆性感熱記録媒体は粘着層等を介して、他の媒体へ貼り付けても良い。
本発明の可逆性感熱記録媒体は、シート状あるいはカード状に加工されていても良く、その形状は任意の形状に加工することができ、また、媒体表面への印刷加工を施すことができる。
また、本発明の可逆性感熱記録媒体は、非可逆の感熱記録層を併用しても良く、このときそれぞれの記録層の発色色調は同じでも異なっても良い。
【0100】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例中の「部」及び「%」はいずれも重量を基準とするものである。
【0101】
[新規カルバミド酸エステルの製造例]
[製造例1]
[カテコールとn−オクタデシルカルバミド酸とによるジエステル化合物の合成]
あらかじめ乾燥させたN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlにカテコール2.2gを仕込み、攪拌した。
次いで、n−オクタデシルイソシアネート11.8gを滴下した。滴下後80℃に加熱し、トリチルアミンを数滴滴下し、8時間攪拌を続けた。その後、この反応液を室温まで冷却したところ、結晶が析出した。この析出した結晶を濾取し、メチルエチルケトン(MEK)300mlから再結晶し、白色の結晶11.2gを得た。融点は104℃であった。
なお、元素分析および赤外吸収スペクトルより、得られた白色結晶が目的物であることを確認した。
【0102】
[製造例2]
[レゾルシノールとn−オクタデシルカルバミド酸とによるジエステル化合物の合成]
あらかじめ乾燥させたN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlにレゾルシノール2.2gを仕込み、攪拌した。
次いで、n−オクタデシルイソシアネート11.8gを滴下した。滴下後80℃に加熱し、トリチルアミンを数滴滴下し、8時間攪拌を続けた。その後、この反応液を室温まで冷却したところ、結晶が析出した。この析出した結晶を濾取し、メチルエチルケトン(MEK)500mlから再結晶し白色の結晶11.8gを得た。融点は119℃であった。
なお、元素分析および赤外吸収スペクトルより、得られた白色結晶が目的物であることを確認した。
【0103】
[製造例3]
[ヒドロキノンとn−オクタデシルカルバミド酸とによるジエステル化合物の合成]
あらかじめ乾燥させたN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlにヒドロキノン2.2gを仕込み、攪拌した。
次いで、n−オクタデシルイソシアネート11.8gを滴下した。滴下後80℃に加熱し、トリチルアミンを数滴滴下し、8時間攪拌を続けた。その後、この反応液を室温まで冷却したところ、結晶が析出した。この析出した結晶を濾取し、メチルエチルケトン(MEK)400mlから再結晶し、白色の結晶10.7gを得た。融点は168℃であった。
なお、元素分析および赤外吸収スペクトルより、得られた白色結晶が目的物であることを確認した。
【0104】
[製造例4]
[p−キシレングリコールとn−オクタデシルカルバミド酸とによるジエステル化合物の合成]
あらかじめ乾燥させたN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlにp−キシレングリコール2.76gを仕込み、攪拌した。
次いで、n−オクタデシルイソシアネート11.8gを滴下した。滴下後80℃に加熱し、トリチルアミンを数滴滴下し、8時間攪拌を続けた。その後、この反応液を室温まで冷却したところ、結晶が析出した。この析出した結晶を濾取し、メチルエチルケトン(MEK)250mlから再結晶し、白色の結晶10.2gを得た。融点は129℃であった。
なお、元素分析および赤外吸収スペクトルより、得られた白色結晶が目的物であることを確認した。
【0105】
[製造例5]
[1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとn−オクタデシルカルバミド酸とによるジエステル化合物の合成]
あらかじめ乾燥させたN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mlに1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン3.96gを仕込み、攪拌した。次いで、n−オクタデシルイソシアネート11.8gを滴下した。滴下後80℃に加熱し、トリチルアミンを数滴滴下し、8時間攪拌を続けた。その後、この反応液を室温まで冷却したところ、結晶が析出した。
この析出した結晶を濾取し、メチルエチルケトン(MEK)300mlから再結晶し、白色の結晶12.0gを得た。融点は147℃であった。
なお、元素分析および赤外吸収スペクトルより、得られた白色結晶が目的物であることを確認した。
【0106】
[製造例6]
[1,3,5−トリヒドロキシベンゼンのトリ(n−オクタデシルカルバミド酸)エステル化合物の合成]
1,3,5−トリヒドロキシベンゼン1.26g(0.01mol)にジメチルホルムアミド150mlを加え室温で溶解させた。さらに攪拌下オクタデシルイソシアネート8.87g(0.03mol)を滴下し4時間還流後、減圧下で溶媒を除去し粗結晶を得た。これをメチルエチルケトンより再結晶することにより生成して目的物を得た。白色粉末結晶収量8.13g、融点125℃であった。なお、元素分析および赤外吸収スペクトルより、得られた白色結晶が目的物であることを確認した。
【0107】
[製造例7]
[1,2,3−トリヒドロキシベンゼンのトリ(n−オクタデシルカルバミド酸)エステル化合物の合成]
1,2,3−トリヒドロキシベンゼン1.26g(0.01mol)にジメチルホルムアミド150mlを加え室温で溶解させた。さらに攪拌下オクタデシルイソシアネート8.87g(0.03mol)を滴下し4時間還流後、減圧下で溶媒を除去し粗結晶を得た。これをメチルエチルケトンより再結晶することにより生成して目的物を得た。白色粉末結晶収量7.94g、融点112℃であった。なお、元素分析および赤外吸収スペクトルより、得られた白色結晶が目的物であることを確認した。
【0108】
[可逆性感熱記録媒体の実施例]
[実施例1]
下記組成物をボールミルを用いて粒径1〜4μmまで粉砕分散して記録層塗布液を調整した。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 2部
N−(4−ヒドロキシフェニル)−6−
(N’−オクタデシルウレイド)ヘキサンアミド 8部
表21に示す本発明の化合物 1部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体
(ユニオンカーバイト社製、VYHH) 20部
メチルエチルケトン 45部
トルエン 45部
【0109】
上記組成の記録層塗布液を、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にワイヤーバーを用い塗布し、乾燥して膜厚約6.0μmの記録層を持つ本発明の化合物を用いた可逆性感熱記録媒体を作製した。
得られた記録媒体を8ドット/mmのサーマルヘッドによって印加電圧13.3V、印加パルス幅1.2ミリ秒の条件で印字し発色画像を得た。この発色画像の光学濃度をマクベス濃度計RD−914を使用して測定した。次いで、この発色した記録媒体をホットスタンプを用いて90℃、110℃の消去温度で、0.2秒、0.5秒間加熱した後、濃度を測定した。
これらの結果を表22に示す。またこの印字、0.5秒間の加熱消去を繰り返し10回行なった結果を表22に示す。
【0110】
【表21】
【0111】
【表22】
【0112】
表22より、本発明の化合物(I)、(II)、(III)を添加しない場合、低い消去加熱、短時間では消去が地肌まで達していないのに比べ、本発明の化合物を使用した記録媒体が、0.2秒〜0.5秒間の加熱で地肌濃度と同レベルまで消色し、低い温度で、かつ高速に消去可能であることがわかり、かつ、印字、消去が安定して繰り返されていることがわかる。
したがって、本発明の化合物(I)、(II)、(III)を使用した記録媒体が高速に消去可能であり、かつ発色、消去が安定に繰り返し行なえる可逆性感熱記録媒体を提供できることが明らかになった。
【0113】
[実施例2]
下記組成物をボールミルを用いて粒径1〜4μmまで粉砕分散して記録層塗布液を調整した。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 2部
N−(4−ヒドロキシフェニル)−6−
(N’−オクタデシルウレイド)ヘキサンアミド 8部
表23に示す本発明の化合物 1部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体
(ユニオンカーバイト社製、VYHH) 20部
メチルエチルケトン 45部
トルエン 45部
【0114】
上記組成の記録層塗布液を、厚さ100μmのポリエステルフィルム上にワイヤーバーを用いて塗布し、乾燥して膜厚約6.0μmの記録層を持つ本発明の化合物を用いた可逆性感熱記録媒体を作製した。
得られた記録媒体を8ドット/mmのサーマルヘッドによって印加電圧13.3V、印加パルス幅1.2ミリ秒の条件で印字し発色画像を得た。この発色画像の光学濃度をマクベス濃度計RD−914を使用して測定した。次いで、この発色した記録媒体をホットスタンプを用いて90℃、110℃の消去温度で、0.2秒、0.5秒間加熱した後、濃度を測定した。
これらの結果を表24に示す。またこの印字、0.5秒間の加熱消去を繰り返し10回行なった結果を表24に示す。
【0115】
【表23】
【0116】
【表24】
【0117】
表24より、本発明の化合物(IV)を添加しない場合、低い消去加熱、短時間では消去が地肌まで達していないのに比べ、本発明の化合物を使用した記録媒体が、0.2秒〜0.5秒間の加熱で地肌濃度と同レベルまで消色し、低い温度で、かつ高速に消去可能であるとこがわかり、かつ、印字、消去が安定して繰り返されていることがわかる。
したがって、本発明の化合物(IV)を使用した記録媒体が高速に消去可能であり、かつ発色、消去が安定に繰り返し行なえる可逆性感熱記録媒体を提供できることが明らかになった。
【0118】
[実施例3]
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 2部
化学式(m)の構造の顕色剤 8部
【0119】
【化18】
化学式(IVa)の構造の消色促進剤 3部
【0120】
【化19】
アクリルポリオール樹脂の
15%テトラヒドロフラン(THF)溶液 70部
【0121】
上記組成物をボールミルを用いて平均粒径0.1〜3μmまで粉砕分散した。
得られた分散液に日本ポリウレタン社製コロネートHL(アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート75%酢酸エチル溶液)10部を加え、良く攪拌し記録層塗布液を調製した。
【0122】
上記組成の記録層塗布液を、厚さ188μmのポリエステルフィルム上にワイヤーバーを用い塗布し、100℃、2分で乾燥した後、60℃24時間加熱して、膜厚約8.0μmの記録層を設け、本発明の可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0123】
[実施例4]
実施例3中の消色促進剤の代わりに化学式(n)の消色促進剤を用いた他は、実施例3と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0124】
【化20】
【0125】
[実施例5]
実施例3中の顕色剤の代わりに化学式(p)の顕色剤と用いた他は、実施例3と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0126】
【化21】
【0127】
[実施例6]
実施例5中の消色促進剤の代わりに化学式(n)の消色促進剤を用いた他は、実施例5と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0128】
[実施例7]
実施例3の分散液を下記の組成に変えた他は、実施例3と同様にして可逆性感熱記録媒体を得た。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジブチルアミノフルオラン 2部
化学式(p)の構造の顕色剤 8部
化学式(IVa)の構造の消色促進剤 1部
化学式(q)の構造の発色消色制御剤 3部
【0129】
【化22】
アクリルポリオール樹脂の
15%テトラヒドロフラン(THF)溶液 70部
【0130】
[実施例8]
実施例7中の消色促進剤の代わりに化学式(n)の消色促進剤を用いた他は、実施例7と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0131】
[比較例1]
実施例3中の顕色剤と消色促進剤の代わりに化学式(r)の顕色剤を用いて、消色促進剤を用いなかった他は、実施例3と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0132】
【化23】
【0133】
[比較例2]
実施例3中の消色促進剤の代わりに化学式(s)の消色促進剤を用いた他は、実施例3と同様にして可逆性感熱記録媒体を作製した。
【0134】
【化24】
【0135】
以上の様にして作製した可逆性感熱記録媒体を、大倉電機社製感熱印字装置にて、電圧13.3V、パルス幅1.2msecで印字し、得られた画像をマクベス濃度計RD−914で測定した。また、発色画像を、東洋精機社製熱傾斜試験機で110℃、1秒の条件で消色して消色後の画像部の濃度と地肌濃度を測定した。次に、下記式から消し残り濃度を算出した。
消し残り濃度=(消去後の画像部の濃度)−(地肌濃度)
【0136】
次いで、得られた画像部および地肌部の濃度を測定し、それぞれ試験前画像濃度、試験前地肌濃度として測定した後、このサンプルを50℃乾燥条件下で24時間保存し、同様に画像部および地肌部の濃度を測定してそれぞれ試験後画像濃度、試験後地肌濃度とする。次に下記の式から濃度保持率を算出した。
濃度保持率(%)=(保存後画像濃度−保存後地肌濃度)/(保存前画像濃度−保存前地肌濃度)
以上の結果を表25に示す。
【0137】
【表25】
【0138】
【発明の効果】
以上、詳細且つ具体的な説明より明らかなように、本発明のカルバミド酸エステル化合物(I)、(II)、(III)、(IV)は新規かつ有用な化合物である。
そして、本発明の化合物(I)、(II)、(III)を消色制御として用いた可逆性感熱記録材料および媒体は、コントラストの高い画像の形成と消色が容易な操作により可能であり、発色画像は通常の使用条件下で安定であり、記録消去の繰り返しに対する耐久性も高く、実用性の高い書き換え型記録媒体が得られる。
また、本発明の化合物(IV)を消色制御として用いた可逆性感熱記録材料および媒体は、コントラストの高い画像の形成と消色が容易な操作により可能であり、発色画像は通常の使用条件下で安定であり、記録消去の繰り返しに対する耐久性も高く、高速消去性に優れ、実用性の高い書き換え型記録媒体が得られるという優れた効果を奏するものでる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化合物であるカテコールとn−オクタデシルカルバミド酸とによるジエステル化合物の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図2】本発明の化合物であるレゾルシノールとn−オクタデシルカルバミド酸とによるジエステル化合物の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図3】本発明の化合物であるヒドロキノンとn−オクタデシルカルバミド酸とによるジエステル化合物の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図4】本発明の化合物であるp−キシレングリコールとn−オクタデシルカルバミド酸とによるジエステル化合物の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図5】本発明の化合物である1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとn−オクタデシルカルバミド酸とによるジエステル化合物の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図6】本発明の化合物である1,3,5−トリヒドロキシベンゼンのトリ(n−オクタデシルカルバミド酸)エステル化合物の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図7】本発明の化合物である1,2,3−トリヒドロキシベンゼンのトリ(n−オクタデシルカルバミド酸)エステル化合物の赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図8】本発明の可逆性感熱記録媒体の発色・消色特性を示す図である。
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