JP4619730B2 - 風味に優れたアミノ酸・ペプチド混合物及びその製造方法 - Google Patents
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Description
このような低分子ペプチドの製造方法に関しては、すでに特許文献1に開示されており、市販のEndo型ペプチダーゼやExo型ペプチダーゼを組みあわせることによりジ・トリペプチド主体の低分子ペプチドを調整することができる。
しかしながら、低分子ペプチドは消化吸収性の面で利点があっても、酵素で加水分解すると、苦味ペプチドが生成したり、特異な臭気やアミノ酸特有の呈味性が発生し、継続的に経口摂取できないといったコンプライアンス上の問題が指摘されている。この苦味や特有の風味、呈味性を除去するために、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、膜処理により酵素分解液の風味等を改善する方法が利用されている(特許文献2〜4)。
また、特定の酵素を利用することにより風味や苦味や呈味性を改善しようとする試みもあるが、遊離アミノ酸含量を減少させたり、加水分解度を低く設定することにより得られるペプチドであり、消化吸収機能が低下した患者向けの高分解加水分解物ではなく、消化吸収性における利点も少ないと考えられる。
したがって、消化吸収機能が障害を受けているような術後患者や腸疾患患者に対しても吸収性の利点があり、なおかつ、苦味がなく、長期間摂取できるような風味に優れたアミノ酸・ペプチド混合物といった、高分解加水分解物でありながら、ペプチドの苦味やアミノ酸の呈味の問題のないアミノ酸・ペプチド混合物の開発が求められている。
すなわち、本発明は、動植物タンパク質を下記(1)〜(4)の4通りの組み合わせの酵素のいずれかを用いて加水分解することにより得られ、平均ペプチド鎖長が1.5〜2.5であり、タンパク質重量当たり、遊離アミノ酸の含有量が30〜55重量%で、分子量1500以上のペプチドの含有量が10重量%未満であることを特徴とする、風味に優れたアミノ酸・ペプチド混合物である。
(1)アルカラーゼ(登録商標)、プロテアーゼP6G及びウマミザイム、
(2)アルカラーゼ(登録商標)、プロテアーゼP6G及びペプチダーゼR、
(3)アルカラーゼ(登録商標)、スミチーム(登録商標)FP及びウマミザイム、及び
(4)プロテアーゼN、スミチーム(登録商標)FP及びウマミザイム。
本発明はまた、動植物性タンパク質をタンパク質濃度が5〜10重量%となるように調製し、加熱殺菌後にpHを8〜9に調整し、下記(1)〜(4)の4通りの組み合わせの酵素のいずれかを、タンパク質重量当たり各0.6〜1.0重量%添加して、45〜55℃において10〜24時間酵素反応を行った後、酵素を失活させ、不溶物を除去することを特徴とする、請求項1または2記載の風味に優れたアミノ酸・ペプチド混合物の製造方法である。
(1)アルカラーゼ(登録商標)、プロテアーゼP6G及びウマミザイム、
(2)アルカラーゼ(登録商標)、プロテアーゼP6G及びペプチダーゼR、
(3)アルカラーゼ(登録商標)、スミチーム(登録商標)FP及びウマミザイム、及び
(4)プロテアーゼN、スミチーム(登録商標)FP及びウマミザイム。
本発明において使用することができるタンパク質は、植物性タンパク質でも動物性タンパク質でもよく、いずれの場合も特に限定されないが、植物性タンパク質としては、大豆タンパク質分離物(SPI)、大豆タンパク質濃縮物(SPC)等、動物性タンパク質としては、卵白、卵黄タンパク質、乳タンパク質等を好ましい例として挙げることができる。乳タンパク質としては、カゼインやホエータンパク質濃縮物(WPC)、ホエータンパク質分離物(WPI)等が使用できる。これらのタンパク質は、1種を用いても2種類以上を溶解混合して用いてもよい。
本発明のアミノ酸・ペプチド混合物は、使用する酵素の選択に特徴を有するものである。一般的な従来のアミノ酸・ペプチド混合物の製造は、Endo型ペプチダーゼやExo型ペプチダーゼから選択して2種ないし3種の酵素を組み合わせて加水分解物を調製するが、本発明では下記(1)〜(3)からそれぞれ1種を選択して使用する。
(1)Bacillus licheniformisまたはBacillus subtilis起源酵素から選ばれるEndo型ペプチダーゼ、
(2)Aspergillus melleusまたはAspergillus oryzae起源酵素から選ばれるEndo型+Exo型ペプチダーゼ、及び
(3)Aspergillus oryzaeまたはRhizopus oryzae起源酵素から選ばれるExo型ペプチダーゼ。
本発明者らは、下記食品総合研究所ホームページに記載された酵素一覧に基づき、各酵素が単独でどのような特徴を持つかを判定し、Endo型ペプチダーゼを主体とする酵素群、Endo型+Exo型ペプチダーゼの両活性を持つ酵素群、Exo型ペプチダーゼ活性が主体の酵素群の3つのカテゴリーに分類した(表1)。
(http://www.nfri.affrc.go.jp/yakudachi/koso/index.html)
この3つのカテゴリーについてまとめると以下のようになる(なお、本分類は本発明者らが独自に分類したものである)。
(1)Endo型ペプチダーゼ群では、アルカラーゼ(ノボザイムズ社製、Bacillus licheniformis由来)またはプロテアーゼN(天野エンザイム社製、Bacillus subtilis由来)が好ましく、
(2)Endo型+Exo型ペプチダーゼ群では、プロテアーゼP6G(天野エンザイム社製、Aspergillus melleus由来)またはスミチームFP(新日本化学工業社製、Aspergillus oryzae由来)が好ましく、
(3)Exo型ペプチダーゼ群ではウマミザイム(天野エンザイム社製、Aspergillus oryzae由来)またはペプチダーゼR(天野エンザイム社製、Rhizopus oryzae社製)が好ましいことを発見した。
そのような理由により、本発明において使用される酵素は、上記したアルカラーゼとプロテアーゼNから1種類、プロテアーゼP6GとスミチームFPから1種類、ウマミザイムとペプチダーゼRから1種類ずつで計3種類とする組み合わせが特に好ましく、この場合の組み合わせは8通りとなる。
この制御は、単にExo型ペプチダーゼを作用させることで実現できるものではなく、またやみくもにEndo型ペプチダーゼとExo型ペプチダーゼを作用させればよいわけでもなく、上記3つの酵素群の組合せが重要である。
したがって、この組合せ以外の酵素群を選択した場合、平均ペプチド鎖長が1.5〜2.5、タンパク質重量当たり、遊離アミノ酸が30〜55%で、分子量1500以上のペプチドが10%未満のアミノ酸・ペプチド混合物を調製することが困難となるばかりか、調製されたものは、苦味や呈味性が顕著に現れ、長期間の摂取を要する患者用の経腸栄養剤として使用できないものとなる。
酵素反応は、45〜55℃程度に維持して行う。また、酵素反応時間は、適宜調整できるが、使用する酵素が異なっても、10〜20時間で反応を終了させることができる。ただし、24時間まで反応時間を延ばすことが可能であり、この範囲であれば、不快なにおいや苦味の発生はなく、微生物等の問題も生じない。なお、酵素反応中にpH調整を実施すると最終的なミネラル含量が高くなるため、酵素反応中のpH調整は実施しないことが望ましい。
本発明により得られたアミノ酸・ペプチド混合物は、溶液のまま用いても、噴霧乾燥によって粉末化して用いてもよく、その形態は、最終製品への添加方法や製造方法によって、適宜選択することができる。
また、本実施例における分析方法は以下の方法に従った。
(1)遊離アミノ酸の測定方法
タンパク質分解液をスルホサリチル酸で除蛋白し、アミノ酸分析器(日立社製、Hitachi L−8500)により遊離アミノ酸を分析した。
(2)平均ペプチド鎖長の測定方法
タンパク質分解液を6N塩酸中で110℃、24時間加水分解し、トリニトロベンゼンスルホン(TNBS)で発色して420nmの吸光度を測定する。また、加水分解前の試料についてもTNBSで発色させて吸光度を測定する。加水分解後の試料の吸光度と加水分解前の試料の吸光度から平均ペプチド鎖長を算出した。
(3)HPLCによる分子量の推定
ゲルろ過カラムを用いた方法により分子量を算出した。分析条件については、日本栄養食糧学会誌、47(3)、195−201、1994に従った。
(実施例1〜6、比較例1〜4)
本発明における酵素の組合せ(実施例1〜4)と他の組合せ(比較例1〜6)で調製したアミノ酸・ペプチド混合物の風味と理化学的性質を比較した。
市販の大豆タンパク質(不二製油社製、フジプロ−CLE:タンパク質含量90%)をタンパク質濃度5%となるように水中に溶解し、90℃において10分間加熱殺菌した。冷却後、KOHを用いてpHを8.5に調整し、50℃に保持した。下記表2に示す組合せの酵素を、タンパク質重量に対して各1重量%を順次添加し、12時間加水分解を行った。加水分解終了後、沸騰水中で15分間保持して酵素を失活し、マイクローザーで精密ろ過を行って不溶物を除去し、アミノ酸・ペプチド混合溶液約2Lを調製した。この溶液を専門パネラーにより官能評価を実施し、さらに前記方法で分析した結果を示す。遊離アミノ酸及び分子量1500以上のペプチドは、タンパク質重量当たりの重量(%)を示す。
○:においがしない、または不快な臭いを感じない
△:わずかに不快なにおいがする
×:不快なにおいがする
※苦味の評価基準:30名の専門パネラーが評価し、下記基準にしたがって選択人数の最も多い評価を選んだ。
○:苦味が全く感じない
△:わずかな苦みを感じる
×:明らかな苦味を感じる
それに対して、上記(1)及び(2)のみの酵素の組み合わせ(比較例1、2及び4)や、上記(1)及び(3)のみの酵素の組み合わせ(比較例3)を用いて得られたアミノ酸・ペプチドは、風味、苦味、分子量1500以上のペプチドの量等の点において、非常に劣るものであった。
上記実施例1の酵素を使用して反応時間と風味低下の関係について調べた。すなわち、市販の大豆タンパク質(不二製油社製、フジプロ−CLE:タンパク質含量90%)をタンパク質濃度5%となるように水中に溶解し、90℃で10分間加熱殺菌を行った。冷却後、pHを8.5にKOHで調整し、50℃に保持した。アルカラーゼ、プロテアーゼP6G、ウマミザイムを、タンパク質重量に対して各0.6重量%の量で順次添加し、下記表3に示すように、8〜30時間の加水分解を行い、経時的にサンプリングを行った。加水分解終了後、沸騰水中で15分間保持して酵素を失活させ、マイクローザーで精密ろ過を行って不溶物を除去し、アミノ酸、ペプチド混合溶液を調製した。調製した分解物の官能評価結果と特性を下記表3に示す。
(実施例6)
プロファーム974(松谷化学社製、タンパク質含量90%)をタンパク質濃度が7.5%となるように水中に溶解し、90℃で10分間加熱殺菌を行った。冷却後、KOHを用いてpHを8に調整し、50℃に保持した。プロテアーゼN及びプロテアーゼP6G及びウマミザイムを、タンパク質重量に対して各0.8重量%の量で順次添加し、14時間の加水分解を行った。加水分解終了後、120℃、5秒のUHT殺菌によって酵素を失活させ、マイクローザーで精密ろ過を行った後、風味に優れたアミノ酸・ペプチド混合溶液約200Lを調製した。得られたアミノ酸・ペプチド混合物は、平均ペプチド鎖長が1.8で、タンパク質重量当たり、遊離アミノ酸を45重量%含有し、分子量1500以上のペプチドを5重量%含有していた。
(実施例7)
乾燥卵白(キューピー社製)をタンパク質濃度が7.5%となるように水中に溶解し、50℃で加温殺菌した後、pHを8に調整した。温度を47℃に調整した後、プロテアーゼN、スミチームFP及びペプチダーゼRを、タンパク質重量に対して1.0%の量で順次添加し、18時間の加水分解を行った。120℃において5秒加熱殺菌した後、活性炭を液量比で0.1重量%ほど添加し、50℃で2時間攪拌した。攪拌後、フィルタープレスで活性炭を除去し、精密ろ過、濃縮を順次行った。得られた濃縮物を噴霧乾燥した後、風味に優れ、苦みのないアミノ酸・ペプチド混合物を50kgほど調製した。得られた混合物は、平均ペプチド鎖長が2.0で、タンパク質重量当たり、遊離アミノ酸を40重量%含有し、分子量1500以上のペプチドを8.9重量%含有していた。
(実施例8)
乳ホエータンパク質(フォンテラ社製、アラセン472)を、タンパク質濃度が10%となるように水中に溶解し、pH7で加熱殺菌を行った。殺菌後pHを8.5、温度を50℃に調整し、アルカラーゼ、スミチームFP及びウマミザイムを、タンパク質の重量に対して1.0重量%の量で順次添加して酵素反応を開始した。15時間後、90℃、15分間の加熱により酵素を失活させ、不溶物を精密ろ過で分離したところ、風味に優れ、苦みの少ないアミノ酸・ペプチド混合物1Lを調製した。得られた混合物は、平均ペプチド鎖長が1.5であり、タンパク質重量当たり、遊離アミノ酸を54重量%含有し、分子量1500以上のペプチドを2.3重量%含有していた。
Claims (2)
- 動植物タンパク質を下記(1)〜(4)の4通りの組み合わせの酵素のいずれかを用いて加水分解することにより得られ、平均ペプチド鎖長が1.5〜2.5であり、タンパク質重量当たり、遊離アミノ酸の含有量が30〜55重量%で、分子量1500以上のペプチドの含有量が10重量%未満であることを特徴とする、風味に優れたアミノ酸・ペプチド混合物。
(1)アルカラーゼ(登録商標)、プロテアーゼP6G(商標)及びウマミザイム(商標)、
(2)アルカラーゼ(登録商標)、プロテアーゼP6G(商標)及びペプチダーゼR(商標)、
(3)アルカラーゼ(登録商標)、スミチーム(登録商標)FP及びウマミザイム(商標)、及び
(4)プロテアーゼN(商標)、スミチーム(登録商標)FP及びウマミザイム(商標)。 - 動植物性タンパク質をタンパク質濃度が5〜10重量%となるように調製し、加熱殺菌した後、pHを8〜9に調整し、下記(1)〜(4)の4通りの組み合わせの酵素のいずれかを、タンパク質重量当たり各0.6〜1.0重量%添加し、45〜55℃において10〜24時間酵素反応を行った後、酵素を失活させ、不溶物を除去することを特徴とする、請求項1記載の風味に優れたアミノ酸・ペプチド混合物の製造方法。
(1)アルカラーゼ(登録商標)、プロテアーゼP6G(商標)及びウマミザイム(商標)、
(2)アルカラーゼ(登録商標)、プロテアーゼP6G(商標)及びペプチダーゼR(商標)、
(3)アルカラーゼ(登録商標)、スミチーム(登録商標)FP及びウマミザイム(商標)、及び
(4)プロテアーゼN(商標)、スミチーム(登録商標)FP及びウマミザイム(商標)。
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