以下、本発明に係る薄膜パターン形成方法の一実施形態について、図面を参照して、説明する。なお、以下の図面において、各部材及び各層を認識可能な大きさとするために、各部材及び各層の縮尺を適宜変更している。
(第1の実施形態)
本実施形態の薄膜パターン形成方法は、基板上に導電性膜である配線膜で形成された配線パターンを形成する、配線パターン形成方法である。本実施形態の配線パターン形成方法は、最初に、基板上にバンクを形成することで、バンクに囲まれた凹部であって、薄膜パターン形状と同一の平面形状を有する凹部を形成する。次に、液滴吐出法により液滴吐出ヘッドの吐出ノズルから導電性微粒子を含む配線パターン(配線膜)形成用インク(機能液)の液滴を凹部に向けて吐出し、基板上に導電性膜である配線膜で形成された配線パターンを形成する。配線膜が第1の薄膜に相当し、配線パターンが薄膜パターンに相当する。
まず、使用するインク(機能液)について説明する。液体材料である配線パターン形成用機能液は導電性微粒子を分散媒に分散した分散液からなるものである。本実施形態では、導電性微粒子として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、パラジウム、及びニッケルのうちの少なくともいずれか1つを含有する金属微粒子の他、これらの酸化物、並びに導電性ポリマーや超電導体の微粒子などが用いられる。これらの導電性微粒子は分散性を向上させるために表面に有機物などをコーティングして使うこともできる。導電性微粒子の粒径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと後述する液滴吐出ヘッドの吐出ノズルに目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと導電性微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなり、得られる膜中の有機物の割合が過多となる。
分散媒としては、上記の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性、また液滴吐出法への適用の容易さの点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
上記導電性微粒子の分散液の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法により機能液を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、機能液のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、機能液の基板への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
上記分散液の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いて機能液を液滴として吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合にはノズル周辺部が機能液の流出により汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル孔での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
配線パターンが形成される基板としては、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種のものを用いることができる。また、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
ここで、液滴吐出法の吐出技術としては、帯電制御方式、加圧振動方式、電気機械変換方式、電気熱変換方式、静電吸引方式等が挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御して吐出ノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に30kg/cm2程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進して吐出ノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散して吐出ノズルから吐出されない。また、電気機械変換方式は、ピエゾ素子(圧電素子)がパルス的な電気信号を受けて変形する性質を利用したもので、ピエゾ素子が変形することによって材料を貯留した空間に可撓物質を介して圧力を与え、この空間から材料を押し出して吐出ノズルから吐出させるものである。
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、吐出ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液体材料の一滴の量は例えば1〜300ナノグラムである。
次に、本発明に係るデバイスを製造する際に用いられるデバイス製造装置について説明する。このデバイス製造装置としては、液滴吐出ヘッドから基板に対して液滴を吐出(滴下)することによりデバイスを製造する液滴吐出装置(インクジェット装置)が用いられる。
図1は液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。図1において、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸5と、制御装置CONTと、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ15とを備えている。
ステージ7はこの液滴吐出装置IJにより機能液を配置される基板Pを支持するものであって、基板Pを基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
液滴吐出ヘッド1は複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド1の下面にX軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルからは、ステージ7に支持されている基板Pに対して、上述した導電性微粒子を含む機能液が吐出される。
X軸方向駆動軸4にはX軸方向駆動モータ2が接続されている。X軸方向駆動モータ2はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
Y軸方向ガイド軸5は基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向駆動モータ3はステッピングモータ等であり、制御装置CONTからY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
制御装置CONTは液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。更に、制御装置CONTは、X軸方向駆動モータ2に対して液滴吐出ヘッド1のX軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給するとともに、Y軸方向駆動モータ3に対してステージ7のY軸方向への移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
クリーニング機構8は液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものであって、図示しないY軸方向駆動モータを備えている。このY軸方向駆動モータの駆動により、クリーニング機構8はY軸方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も制御装置CONTにより制御される。
ヒータ15はここではランプアニールにより基板Pを熱処理する手段であり、基板P上に塗布された機能液に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ15の電源の投入及び遮断も制御装置CONTにより制御される。
液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板Pを支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板Pに対して液滴を吐出する。ここで、以下の説明において、Y軸方向を走査方向、Y軸方向と直交するX軸方向を非走査方向とする。したがって、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルは、非走査方向であるX軸方向に一定間隔で並んで設けられている。なお、図1では、液滴吐出ヘッド1は、基板Pの進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド1の角度を調整し、基板Pの進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド1の角度を調整することでノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板Pとノズル面との距離を任意に調節可能としてもよい。
図2はピエゾ方式による液体材料の吐出原理を説明するための模式断面図である。図2において、液体材料(配線パターン形成用インク、機能液)を収容する液体室21に隣接してピエゾ素子22が設置されている。液体室21には、液体材料を収容する材料タンクを含む液体材料供給系23を介して液体材料が供給される。ピエゾ素子22は駆動回路24に接続されており、この駆動回路24を介してピエゾ素子22に電圧を印加し、ピエゾ素子22を変形させることにより、液体室21が変形し、吐出ノズル25から液体材料が吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることによりピエゾ素子22の歪み量が制御される。また、印加電圧の周波数を変化させることによりピエゾ素子22の歪み速度が制御される。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
次に、本実施形態の配線パターンの形成方法を用いて製造される装置の一例である薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))について説明する。図3は、TFTアレイ基板のTFT1個を含む一部分の概略構成を示した平面図である。図4(a)は、TFTの断面図であり、図4(b)は、ゲート配線とソース配線とが平面的に交差する部分の断面図である。
図3に示すように、TFT30を有するTFTアレイ基板10上には、ゲート配線12と、ソース配線16と、ドレイン電極14と、ドレイン電極14に電気的に接続する画素電極19とを備えている。ゲート配線12はX軸方向に延びるように形成され、その一部がY軸方向に延びるように形成されている。そして、Y軸方向に伸びるゲート配線12の一部がゲート電極11として用いられている。なお、ゲート電極11の幅はゲート配線12の幅よりも狭くなっている。そして、このゲート配線12が、本実施形態の配線パターン形成方法で形成される。また、Y軸方向に伸びるように形成されたソース配線16の一部は幅広に形成されており、このソース配線16の一部がソース電極17として用いられている。
図4に示すように、ゲート配線12及びゲート電極11は、基板Pの上に設けられたバンクBの間に形成されている。ゲート配線12及びゲート電極11並びにバンクBは、絶縁膜28に覆われており、絶縁膜28の上に、半導体層である活性層63と、ソース配線16と、ソース電極17と、ドレイン電極14と、バンクB1とが形成されている。活性層63は、概ねゲート電極11に対向する位置に設けられており、活性層63のゲート電極11に対向する部分がチャネル領域とされている。活性層63上には、接合層64a及び64bが積層されており、ソース電極17は接合層64aを介して、ドレイン電極14は接合層64bを介して、活性層63と接合されている。ソース電極17及び接合層64aと、ドレイン電極14及び接合層64bとは、活性層63上に設けられたバンク67によって、互いに絶縁されている。ゲート配線12は、絶縁膜28によって、ソース配線16と絶縁されており、ゲート電極11は、絶縁膜28によって、ソース電極17及びドレイン電極14と絶縁されている。ソース配線16と、ソース電極17と、ドレイン電極14とは、絶縁膜29で覆われている。絶縁膜29のドレイン電極14を覆う部分には、コンタクトホールが形成されており、コンタクトホールを介してドレイン電極14と接続する画素電極19が、絶縁膜29の上面に形成されている。
次に、本実施形態の配線パターンの形成方法を用いて、TFT30のゲート配線の配線パターンを形成する過程について説明する。図5は、本実施形態に係る配線パターンの形成方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る配線パターンの形成方法では、基板上に薄膜形成領域を囲むようにバンクを形成し、上述した配線パターン形成用機能液をバンクに囲まれた凹部に配置し、基板上に配線膜を形成することで、配線パターンを形成する。
ステップS1は、基板上にバンクを形成するためのバンク膜を形成する、バンク膜形成工程であり、次のステップS2は、バンク膜の表面に撥液性を付与する撥液化処理工程であり、次のステップS3は、ゲート配線パターンの形状に応じた凹部を形成するようにバンク膜をエッチングする凹部形成工程である。また、次のステップS4は、撥液性を付与されたバンク間に機能液を配置する機能液配置工程であり、次のステップS5は、機能液の液体成分の少なくとも一部を除去する中間乾燥工程であり、次のステップS6は、機能液に含まれる導電性微粒子が有機銀化合物の場合、導電性を得るために熱処理を行う焼成工程である。バンク膜が、第2の薄膜に相当する。
以下、各ステップの工程毎に詳細に説明する。本実施形態では基板Pとしてガラス基板が用いられる。最初に、ステップS1のバンク膜形成工程について説明する。図6は、バンクを形成する手順の一例を示す模式断面図である。バンク膜形成工程では、まず、バンクの形成材料を塗布する前に表面改質処理として、基板Pに対してHMDS処理が施される。HMDS処理は、ヘキサメチルジシラサン((CH3)3SiNHSi(CH3)3)を蒸気状にして塗布する方法である。これにより、バンクBと基板Pとの密着性を向上する密着層であるHMDS層32が基板P上に形成される。
バンクは仕切部材として機能する部材であり、バンクの形成はフォトリソグラフィ法や印刷法等、任意の方法で行うことができる。例えば、フォトリソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、バンクの形成材料を塗布する。基板PのHMDS層32の上にバンクの高さに合わせてバンクの形成材料が塗布されて、図6(a)に示すようなバンク膜31が形成される。
本実施形態の配線パターンの形成方法のバンク膜形成工程では、バンク膜31(バンクB)の形成材料として、機能液に対して親液性を有する材料が用いられる。機能液に対して親液性を有する材料としては、例えば、ポリシラザン、ポリシロキサン、シロキサン系レジスト、ポリシラン系レジスト等の骨格にケイ素を含む高分子無機材料や感光性無機材料、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうちいずれかを含むスピンオングラス膜、ダイヤモンド膜、及びフッ素化アモルファス炭素膜、などが挙げられる。さらに、機能液に対して親液性を有するバンク形成材料として、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、などを用いてもよい。
また、バンク膜31(バンクB)の形成材料として、有機質の材料を用いることもできる。例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の高分子材料を用いることが可能である。
バンク形成材料の親液性の程度は、機能液の接触角が40°未満であることが好ましい。接触角が40°以上である場合、後述する溝部34(図6(e)参照)の形状によっては、親液性が充分ではない可能性がある。より詳細には、溝状の凹部に注入するべく滴下された機能液は、底面及び側面が機能液に濡れて濡れ広がったり、底面及び側面が機能液をはじいて濡れ広がり難くなったりする。機能液が注入された溝状の凹部の側面の機能液に対する接触角が40°未満であると、凹部の底面が親液性であり機能液に濡れ易い場合であっても、底面に先行して側面が濡れることで機能液が濡れ広がることが確認されている。バンク形成材料の接触角が40°未満であれば、後述する溝部34の側面は機能液に対する接触角が40°未満となり、滴下された機能液は溝部34に濡れ広がり易くなる。
次に、ステップS2の撥液化処理工程について説明する。撥液化処理工程では、バンク膜31に対して撥液化処理を行い、その表面に撥液性を付与する。撥液化処理としては、四フッ化炭素(テトラフルオロメタン)を処理ガスとするプラズマ処理法(CF4プラズマ処理法)を採用する。CF4プラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが50〜1000W、4フッ化炭素ガス流量が50〜100mL/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃とされる。なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタンに限らず、他のフルオロカーボン系のガス、または、SF6やSF5CF3などのガスも用いることができる。
図7はCF4プラズマ処理する際に用いるプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。図7に示すプラズマ処理装置は、交流電源41に接続された電極42と、接地電極である試料テーブル40とを有している。試料テーブル40は試料である基板Pを支持しつつY軸方向に移動可能となっている。電極42の下面には、移動方向と直交するX軸方向に延在する2本の平行な放電発生部44,44が突設されているとともに、放電発生部44を囲むように誘電体部材45が設けられている。誘電体部材45は放電発生部44の異常放電を防止するものである。そして、誘電体部材45を含む電極42の下面は略平面状となっており、放電発生部44及び誘電体部材45と基板Pとの間には僅かな空間(放電ギャップ)が形成されるようになっている。また、電極42の中央にはX軸方向に細長く形成された処理ガス供給部の一部を構成するガス噴出口46が設けられている。ガス噴出口46は、電極内部のガス通路47及び中間チャンバ48を介してガス導入口49に接続している。
ガス通路47を通ってガス噴出口46から噴射された処理ガスを含む所定ガスは、前記空間の中を移動方向(Y軸方向)の前方及び後方に分かれて流れ、誘電体部材45の前端及び後端から外部に排気される。これと同時に、交流電源41から電極42に所定の電圧が印加され、放電発生部44,44と試料テーブル40との間で気体放電が発生する。そして、この気体放電により生成されるプラズマで前記所定ガスの励起活性種が生成され、放電領域を通過する基板Pの上に形成されたバンク膜31の表面全体が連続的に処理される。
前記所定ガスは、処理ガスである四フッ化炭素(テトラフルオロメタン)と、大気圧近傍の圧力下で放電を容易に開始させ且つ安定に維持するためのヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の希ガスや窒素(N2)等の不活性ガスとを混合したものである。四フッ化炭素がフッ素を含有するガスに相当し、四フッ化炭素と、不活性ガスとを混合した所定ガスがスフッ素を含有するガスを含むガスに相当する。
このような撥液化処理を行うことにより、図6(b)に示したように、バンク膜31の表面には、これを構成する樹脂中にフッ素基が導入された撥液処理層37が形成され、機能液に対して高い撥液性が付与される。撥液処理層37の撥液性の程度は、機能液の接触角が40°以上であることが好ましい。接触角が40°未満の場合、バンクBの上面に機能液が残存し易くなる。より詳細には、溝状の凹部に注入するべく滴下された機能液は、底面及び側面が機能液に濡れて濡れ広がったり、底面及び側面が機能液をはじいて濡れ広がり難くなったりする。機能液が注入された溝状の凹部の側面の機能液に対する接触角が40°未満であると、凹部の底面が親液性であり機能液に濡れ易い場合であっても、底面に先行して側面が濡れることで機能液が濡れ広がることが確認されている。バンクBの上面の接触角が40°未満であれば、滴下された機能液はバンクBの上面に濡れ広がり、後述する溝部34には入り難くなる。
次に、ステップS3の凹部形成工程について説明する。凹部形成工程では、フォトリソグラフィ法を用いて、バンク膜31の一部を取り除き、バンクBと、バンクBに囲まれた凹部である溝部34を形成する。最初に、ステップS1のバンク膜形成工程で形成されたバンク膜31の上にレジスト層を塗布する。次に、バンク形状(配線パターン形状)に合わせてマスクを施しレジストを露光・現像することにより、図6(c)に示したように、バンク形状に合わせたレジスト38を残す。最後に、エッチングして、レジスト38に覆われた以外の部分のバンク膜31を除去し、さらに、レジスト38を除去する。これにより、図6(d)に示すように、バンクBと、バンクBに囲まれた凹部である溝部34が形成される。
基板P上にバンクB、Bが形成されると、フッ酸処理が施される。フッ酸処理は、例えば2.5%フッ酸水溶液でエッチングを施すことでバンクB、B間のHMDS層32を除去する処理である。フッ酸処理では、バンクB、Bがマスクとして機能し、図6(e)に示すように、バンクB、B間に形成された溝部34の底部35にある有機物であるHMDS層32が除去され、基板Pが露出する。配線パターンが形成される基板Pとして用いられるガラスや石英ガラスは、機能液に対して親液性を有しており、基板Pが露出した底部35は、機能液に対して親液性となる。
これにより、図6(e)に示すように、バンクBと、バンクBに囲まれた凹部である溝部34が形成されて、ステップS3の凹部形成工程が終了する。凹部形成工程で形成された、バンクB、Bの上面には、上記した撥液化処理工程で形成された撥液処理層37が形成されており、バンクBの上面は、機能液に対して、撥液性となっている。対照的に、凹部である溝部34の側面であり、バンクBの側面でもある側面36は、機能液に対して、親液性を有するバンク膜31の形成材料が直接露出しており、機能液に対して、親液性となっている。上記したように、底部35は機能液に対して親液性となっており、溝部34は、親液性の側面36及び底部35で構成されている。
次に、ステップS4の機能液配置工程について説明する。図8は、機能液を配置する手順と、配置された機能液を乾燥させて配線膜を形成する手順の一例を示す模式図である。機能液配置工程では、上記した液滴吐出装置IJによる液滴吐出法を用いて、配線パターン形成用機能液の液滴が基板P上のバンクB、B間に配置される。ここでは、導電性材料として有機銀化合物を用い、溶媒(分散媒)としてジエチレングリコールジエチルエーテルを用いた有機銀化合物からなる機能液を吐出する。機能液配置工程では、図8(a)に示すように、液滴吐出ヘッド1から配線パターン形成用材料を含む機能液を液滴にして吐出する。液滴吐出ヘッド1は、バンクB、B間の溝部34に向け、機能液の液滴を吐出して溝部34内に機能液を配置する。このとき、液滴が吐出される配線パターン形成予定領域(すなわち溝部34)はバンクB、Bに囲まれているので、液滴が所定位置以外に拡がることを阻止できる。
本実施形態では、バンクB、B間の溝部34の幅W(ここでは、溝部34の開口部における幅)はインク(機能液)の液滴の直径Dとほぼ同等に設定されている。液滴を吐出する雰囲気は、温度60℃以下、湿度80%以下に設定されていることが好ましい。これにより、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルが目詰まりすることなく安定した液滴吐出を行うことができる。
このような液滴を液滴吐出ヘッド1から吐出し、溝部34内に配置すると、液滴はその直径Dが溝部34の幅Wとほぼ同等であることから、図8(b)に二点鎖線で示すようにその一部がバンクB、B上に乗ることがある。ところが、バンクB、Bの表面が撥液性となっていることから、これらバンクB、B上に乗った機能液部分がバンクB、Bからはじかれ、更には毛細管現象によって溝部34内に流れ落ちることにより、図8(b)の実線で示すように機能液39の殆どが溝部34内に入り込む。
また、溝部34内に吐出され、あるいはバンクB、Bから流れ落ちた機能液は、底部35及び側面36が親液性であることから濡れ拡がり易くなっており、これによって機能液はより均一に溝部34内を埋め込むようになる。
次に、ステップS5の中間乾燥工程について説明する。基板Pに液滴を吐出した後、分散媒の除去及び膜厚確保のため、必要に応じて乾燥処理をする。乾燥処理は、例えば基板Pを加熱する通常のホットプレート、電気炉などによる処理の他、ランプアニールによって行なうこともできる。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザ、アルゴンレーザ、炭酸ガスレーザ、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザなどを光源として使用することができる。これらの光源は一般には、出力10W以上5000W以下の範囲のものが用いられるが、本実施形態では、100W以上1000W以下の範囲で十分である。中間乾燥工程が終了すると、図8(c)に示すように、配線パターンを形成する配線膜である回路配線膜33が形成される。この回路配線膜33によって形成される配線パターンは、図3及び図4に示したゲート配線12及びゲート電極11である。
一回の機能液配置工程と中間乾燥工程とで形成できる回路配線膜33の厚さが、必要な膜厚に達しない場合には、この中間乾燥工程と上記機能液配置工程とを繰り返し行う。回路配線膜33が形成された上に機能液を配置すると、図8(d)に示すように、溝部34に入りきらない機能液39は、バンクBの上面が撥液性であるため、はじかれて溝部34の上に盛り上った状態となる。再び中間乾燥工程を行って溝部34内及び溝部34の上に盛り上った機能液39を乾燥させることにより、図8(e)に示すように、機能液の液滴が積層され、膜厚の厚い回路配線膜33が形成される。なお、一回の機能液配置工程と中間乾燥工程とで形成できる回路配線膜33の厚さと、必要な膜厚とから、中間乾燥工程と上記機能液配置工程とを繰り返し行う繰返し数を、適当に選ぶことにより、必要な膜厚を得ることができる。また、必要により異なる機能液を積層して形成しても良い。
次に、ステップS6の焼成工程について説明する。中間乾燥工程後の乾燥膜は、有機銀化合物の場合、導電性を得るために熱処理を行い、有機銀化合物の有機分を除去し銀粒子を残留させる必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
熱処理及び/又は光処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中、または水素などの還元雰囲気中で行なうこともできる。熱処理及び/又は光処理の処理温度は、分散媒の沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、微粒子の分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング材の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。本実施形態では、吐出されパターンを形成した機能液に対して、大気中クリーンオーブンにて280〜300℃で300分間の焼成工程が行われる。例えば、有機銀化合物の有機分を除去するには、約200℃で焼成することが必要である。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上250℃以下で行なうことが好ましい。以上の工程により吐出工程後の乾燥膜は微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜に変換される。
第1の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態の配線パターンの形成方法では、バンクBの形成材料として、機能液に対して親液性を有する材料を使用する。これによって、形成されたバンクBの側面であり溝部34の側面である側面36を親液性にする。側面36を親液性にすることによって、溝部34に入った機能液が溝部34全体に充填され易くすることができ、機能液を乾燥させた回路配線膜33が、溝部34全体に充填された断面形状となるようにすることができる。
(2)バンク膜31に対して撥液化処理を行い、その表面に撥液性を付与する。これによって、バンク膜31をエッチングして形成する、回路配線膜33を形成するための溝部34を囲むバンクBの上面を、機能液に対して撥液性にする。バンクBの表面が撥液性となっていることから、バンクB上に乗った機能液部分がバンクBからはじかれ、溝部34内に流れ落ちるようにすることができる。
(3)基板Pに形成したバンク膜31の表面を撥液化する処理を実施した後に、バンク膜31をエッチングして、バンクB及び溝部34を形成する。これによって、形成されたバンクBの側面であり溝部34の側面である側面36は、撥液化処理されることなく、形成材料の親液性が維持されるようにすることができる。側面36を親液性にすることによって、溝部34に入った機能液が溝部34全体に充填され易くすることができ、機能液を乾燥させた回路配線膜33が、溝部34全体に充填された断面形状となるようにすることができる。
(4)溝部34内に有る、ゲート配線12及びゲート電極11を形成するための機能液は、親液性を有する溝部34の側面36が機能液に濡れることによって、溝部34全体に充填される。溝部34全体に充填された機能液を乾燥させることによって、均一な膜厚で、充分な断面積を持つゲート配線12及びゲート電極11を形成することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る薄膜パターン形成方法の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、第1の実施形態で形成した配線パターンの上にさらに回路配線を形成する配線パターンの形成方法について説明する。本実施形態で使用する液滴吐出法や液滴吐出装置や、製造する半導体装置などは、第1の実施形態における液滴吐出法や液滴吐出装置や半導体装置と、基本的に同一である。
図9は、本実施形態に係る配線パターンの形成方法の一例を示すフローチャートである。本実施形態に係る配線パターンの形成方法では、基板上にバンクを形成することで、バンクに囲まれた凹部であって、薄膜パターン形状と同一の平面形状を有する凹部を形成し、第1の実施形態で説明した配線パターン形成用機能液を凹部に配置し、基板上に配線膜を形成することで、配線パターンを形成する。
ステップS21は、半導体層である活性層などを形成する、活性層形成工程であり、次のステップS22は、基板上にバンクを形成するためのバンク膜を形成する、バンク膜形成工程である。次のステップS23は、バンク膜の表面に撥液性を付与する撥液化処理工程であり、次のステップS24は、ゲート配線パターンの形状に応じた凹部を形成するようにバンク膜をエッチングする凹部形成工程である。次のステップS25は、撥液性を付与されたバンク間に機能液を配置する機能液配置工程であり、次のステップS26は、機能液の液体成分の少なくとも一部を除去する中間乾燥工程であり、次のステップS27は、機能液に含まれる導電性微粒子が機銀化合物の場合、導電性を得るために熱処理を行う焼成工程である。
以下、各ステップの工程毎に詳細に説明する。本実施形態では、第1の実施形態で形成したゲート配線の配線パターンの上に、ソース配線及びドレイン電極などの配線パターンを形成する。図10は、半導体層を形成し、さらにバンクを形成する手順の一例を示す模式図である。
ステップS21の活性層形成工程では、図10(a)に示すように、プラズマCVD法によりゲート絶縁膜(絶縁膜28)、半導体層である活性層63、接合層64の連続成膜を行う。絶縁膜28として窒化シリコン膜、活性層63としてアモルファスシリコン膜、接合層64としてn+型シリコン膜を原料ガスやプラズマ条件を変化させることにより形成する。CVD法で形成する場合、300℃〜350℃の熱履歴が必要になるが、基本骨格の主鎖に主成分として珪素を含有し、側鎖に炭化水素などの構造を有するシリカガラス系の材料をバンクに使用することで、透明性、耐熱性に関する問題を回避することが可能である。
次に、ステップS22のバンク膜形成工程について説明する。バンクは仕切部材として機能する部材であり、バンクの形成はフォトリソグラフィ法や印刷法等、任意の方法で行うことができる。例えば、フォトリソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、バンクの形成材料を塗布する。基板Pの絶縁膜28の上に、活性層63及び接合層64を覆うことができる高さにバンクの形成材料が塗布されて、図10(b)に示すようなバンク膜71が形成される。
本実施形態の配線パターンの形成方法では、バンクの形成材料として、バンク膜形成工程では、バンク膜71の形成材料として、機能液に対して親液性を有する材料が用いられる。機能液に対して親液性を有する材料としては、例えば、ポリシラザン、ポリシロキサン、シロキサン系レジスト、ポリシラン系レジスト等の骨格にケイ素を含む高分子無機材料や感光性無機材料、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうちいずれかを含むスピンオングラス膜、ダイヤモンド膜、及びフッ素化アモルファス炭素膜、などが挙げられる。さらに、機能液に対して親液性を有するバンク形成材料として、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、などを用いてもよい。バンク形成材料の親液性の程度は、機能液の接触角が40°未満であることが好ましい。接触角が40°以上である場合、後述する溝部74(図10(c)参照)の形状によっては、親液性が充分ではない可能性がある。
次に、ステップS23の撥液化処理工程について説明する。撥液化処理工程では、バンク膜71に対して撥液化処理を行い、その表面に撥液性を付与する。撥液化処理としては、四フッ化炭素(テトラフルオロメタン)を処理ガスとするプラズマ処理法(CF4プラズマ処理法)を採用する。CF4プラズマ処理の条件は、例えばプラズマパワーが50〜1000W、4フッ化炭素ガス流量が50〜100mL/min、プラズマ放電電極に対する基体搬送速度が0.5〜1020mm/sec、基体温度が70〜90℃とされる。なお、処理ガスとしては、テトラフルオロメタンに限らず、他のフルオロカーボン系のガス、または、SF6やSF5CF3などのガスも用いることができる。CF4プラズマ処理には、第1の実施形態において図7を参照して説明したプラズマ処理装置を用いることができる。
このような撥液化処理を行うことにより、図10(b)に示したように、バンク膜71の表面には、これを構成する樹脂中にフッ素基が導入された撥液処理層77が形成され、機能液に対して高い撥液性が付与される。撥液処理層77の撥液性の程度は、機能液の接触角が40°以上であることが好ましい。接触角が40°未満の場合、バンクBの上面に機能液が残存し易くなる。
次に、ステップS24の凹部形成工程について説明する。凹部形成工程では、フォトリソグラフィ法を用いて、バンク膜71の一部を取り除き、バンクB1及びバンクB2と、バンクB1及びバンクB2に囲まれた凹部である溝部74を形成する。最初に、ステップS22のバンク膜形成工程で形成されたバンク膜71の上にレジスト層を塗布する。次に、バンク形状(配線パターン形状)に合わせてマスクを施しレジストを露光・現像することにより、図10(b)に示したように、バンク形状に合わせたレジスト78を残す。最後に、エッチングして、レジスト78に覆われた以外の部分のバンク膜71を除去し、さらに、レジスト78を除去する。
これにより、図10(c)に示すように、バンクB1及びバンクB2に囲まれた凹部である溝部74が形成されて、ステップS24の凹部形成工程が終了する。凹部形成工程で形成された、バンクB1及びバンクB2の上面には、上記した撥液化処理工程で形成された撥液処理層77が形成されており、バンクB1及びバンクB2の上面は、機能液に対して、撥液性となっている。対照的に、凹部である溝部74の側面であり、バンクB1の側面でもある側面76は、機能液に対して、親液性を有するバンク膜71の形成材料が直接露出しており、機能液に対して、親液性となっている。同様に、凹部である溝部74の側面であり、バンクB2の側面でもある側面79は、機能液に対して、親液性を有するバンク膜71の形成材料が直接露出しており、機能液に対して、親液性となっている。なお、絶縁膜28の表面である底面75及び活性層63、接合層64は機能液に対して親液性となっており、溝部74は、親液性の側面76,79、活性層63、接合層64及び底面75で構成されている。
次に、ステップS25の機能液配置工程について説明する。図11は、インク(機能液)を配置する手順と、配置された機能液を乾燥させて配線膜を形成する手順の一例を示す模式図である。機能液配置工程では、上記した液滴吐出装置IJによる液滴吐出法を用いて、配線パターン形成用機能液の液滴がバンクB1及びB2で形成された凹部に配置される。ここでは、導電性材料として有機銀化合物を用い、溶媒(分散媒)としてジエチレングリコールジエチルエーテルを用いた有機銀化合物からなる機能液を吐出する。機能液配置工程では、液滴吐出ヘッド1から配線パターン形成用材料を含む機能液を液滴にして吐出する。液滴吐出ヘッド1は、バンクB1及びB2で形成された溝部74に向け、機能液の液滴を吐出して溝部74内に機能液を配置する。このとき、液滴が吐出される配線パターン形成予定領域(すなわち溝部74)はバンクB1及びB2に囲まれているので、液滴が所定位置以外に拡がることを阻止できる。
バンクB1,B2間の溝部74の幅(ここでは、溝部74の開口部における幅)はインク(機能液)の液滴の直径Dとほぼ同等に設定されている。なお、液滴を吐出する雰囲気は、温度60℃以下、湿度80%以下に設定されていることが好ましい。これにより、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズルが目詰まりすることなく安定した液滴吐出を行うことができる。
このような液滴を液滴吐出ヘッド1から吐出し、溝部74内に配置すると、液滴はその直径Dが溝部74の幅とほぼ同等であることから、図11(a)に二点鎖線で示すようにその一部がバンクB1,B2上に乗ることがある。ところが、バンクB1,B2の表面が撥液性となっていることから、これらバンクB1,B2上に乗った機能液部分がバンクB1,B2からはじかれ、更には毛細管現象によって溝部74内に流れ落ちることにより、図11(a)の実線で示すように機能液81の殆どが溝部74内に入り込む。溝部74に入りきらない機能液は、バンクB1,B2の上面が撥液性であるため、はじかれて溝部74の上に盛り上った状態となる。
また、溝部74内に吐出され、あるいはバンクB1,B2から流れ落ちた機能液は、底面75及び側面76が親液性であることから濡れ拡がり易くなっており、これによって機能液はより均一に溝部74内に充填される。
次に、ステップS26の中間乾燥工程について説明する。基板Pに液滴を吐出した後、分散媒の除去及び膜厚確保のため、必要に応じて乾燥処理をする。ステップS26の中間乾燥工程は、第1の実施形態におけるステップS5の中間乾燥工程と基本的に同一である。ステップS26の中間乾燥工程によって、図11(b)に示すように、配線パターンを形成する配線膜である回路配線膜73が形成される。本実施形態において、回路配線膜73によって形成される配線パターンは、図3及び図4に示したソース配線16、ソース電極17及びドレイン電極14である。
一回の機能液配置工程と中間乾燥工程とで形成できる回路配線膜73の厚さが、必要な膜厚に達しない場合には、この中間乾燥工程と上記機能液配置工程とを繰り返し行う。なお、一回の機能液配置工程と中間乾燥工程とで形成できる回路配線膜73の厚さと、必要な膜厚とから、中間乾燥工程と上記機能液配置工程とを繰り返し行う繰返し数を、適当に選ぶことにより、必要な膜厚を得ることができる。また、必要により異なる機能液を積層して形成しても良い。
次に、ステップS27の焼成工程について説明する。中間乾燥工程後の乾燥膜は、有機銀化合物の場合、導電性を得るために熱処理を行い、有機銀化合物の有機分を除去し銀粒子を残留させる必要がある。そのため、吐出工程後の基板には熱処理及び/又は光処理が施される。
ステップS27の焼成工程は、第1の実施形態におけるステップS6の焼成工程と基本的に同一である。ステップS27の焼成工程によって、乾燥膜は微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜に変換される。以上の工程により吐出工程後の乾燥膜は微粒子間の電気的接触が確保され、導電性膜に変換される。
次に、バンクB2を取り除き、さらに、接合層64をエッチングして、ソース電極17に接合する接合層64aと、ドレイン電極14に接合する接合層64bと、に分離する。バンクB2が取り除かれた部分と、接合層64がエッチングされて取り除かれた部分とに、ソース電極17と、ドレイン電極14とを絶縁するバンク67を形成する。また、ソース電極17及びドレイン電極14を配置した溝部74を埋めるように絶縁膜29が配置される。以上の工程により、バンクB1とバンク67と絶縁膜29からなる平坦な上面が形成される。なお、バンク67と絶縁膜29とを同じ材料で形成し、溝部74を埋めるように絶縁膜29を配置することによって、ソース電極17と、ドレイン電極14との絶縁を行っても良い。また、バンク膜71を形成する前に、予め接合層64をエッチングして、ソース電極17に接合する接合層64aと、ドレイン電極14に接合する接合層64bと、に分離しておいても良い。
溝部74を埋めるように配置された絶縁膜29のドレイン電極14を覆う部分にコンタクトホールを形成するとともに、上面上にパターニングされた画素電極(ITO)19を形成し、コンタクトホールを介してドレイン電極14と画素電極19とを接続する。第1の実施形態で説明したようにゲート配線を形成し、本実施形態で説明したようにソース配線と、ドレイン電極14とを形成することで、TFT30を有するTFTアレイ基板10が製造される。
第2の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)本実施形態の配線パターンの形成方法では、バンクB1,B2の形成材料として、機能液に対して親液性を有する材料を使用する。これによって、形成されたバンクB1,B2の側面であり溝部74の側面である側面76,79を親液性にする。側面76,79を親液性にすることによって、溝部74に入った機能液が溝部74全体に充填され易くすることができ、機能液を乾燥させた回路配線膜73が、溝部74全体に充填された断面形状となるようにすることができる。
(2)バンク膜71に対して撥液化処理を行い、その表面に撥液性を付与する。これによって、回路配線膜73を形成するための溝部74を囲むバンクB1,B2の上面を、機能液に対して撥液性にする。バンクB1,B2の表面が撥液性となっていることから、バンクB1,B2の上面に乗った機能液部分がバンクB1,B2上面のからはじかれ、溝部74内に流れ落ちるようにすることができる。
(3)形成したバンク膜71の表面を撥液化する処理を実施した後に、バンク膜71をエッチングして、バンクB1,B2及び溝部74を形成する。これによって、形成されたバンクB1,B2の側面であり溝部74の側面である側面76,79は、撥液化処理されることなく、形成材料の親液性が維持されるようにすることができる。側面76,79を親液性にすることによって、溝部74に入った機能液が溝部74全体に充填され易くすることができ、機能液を乾燥させた回路配線膜73が、溝部74全体に充填された断面形状となるようにすることができる。
(4)溝部74内に有る、ソース電極17及びドレイン電極14を形成するための機能液は、親液性を有する溝部74の側面79が機能液に濡れることによって、バンクB2の際まで充填される。バンクB2の際まで充填された機能液を乾燥させることによって、バンクB2の際まで均一な膜厚で、充分な断面積を持つソース電極17及びドレイン電極14を形成することができる。即ち、接合層64a,64bを介して活性層63と接合する部分近傍のソース電極17及びドレイン電極14を、均一な膜厚で、充分な断面積を持つ導電膜にすることができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る電気光学装置の一例である液晶表示装置について説明する。本実施形態の液晶表示装置は、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した薄膜パターン形成方法を用いて形成された回路配線を有するTFTを備えた液晶表示装置である。
図12は本実施形態に係る液晶表示装置について、各構成要素とともに示す対向基板側から見た平面図であり、図13は図12のH−H’線に沿う断面図である。図14は液晶表示装置の画像表示領域においてマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図で、図15は、液晶表示装置の部分拡大断面図である。なお、以下の説明に用いた各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
図12及び図13において、本実施の形態の液晶表示装置(電気光学装置)100は、対をなすTFTアレイ基板10と対向基板20とが光硬化性の封止材であるシール材52によって貼り合わされ、このシール材52によって区画された領域内に液晶50が封入、保持されている。シール材52は、基板面内の領域において閉ざされた枠状に形成されている。
シール材52の形成領域の内側の領域には、遮光性材料からなる周辺見切り53が形成されている。シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路201及び実装端子202がTFTアレイ基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査線駆動回路204が形成されている。TFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域の両側に設けられた走査線駆動回路204の間を接続するための複数の配線205が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通材206が配設されている。
なお、データ線駆動回路201及び走査線駆動回路204をTFTアレイ基板10の上に形成する代わりに、例えば、駆動用LSIが実装されたTAB(Tape Automated Bonding)基板とTFTアレイ基板10の周辺部に形成された端子群とを異方性導電膜を介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。なお、液晶表示装置100においては、使用する液晶50の種類、すなわち、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード等の動作モードや、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差板、偏光板等が所定の向きに配置される(図示省略)。また、液晶表示装置100をカラー表示用として構成する場合には、対向基板20において、TFTアレイ基板10の後述する各画素電極に対向する領域に、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタをその保護膜とともに形成する。
このような構造を有する液晶表示装置100の画像表示領域においては、図14に示すように、複数の画素100aがマトリクス状に構成されているとともに、これらの画素100aの各々には、画素スイッチング用のTFT(スイッチング素子)30が形成されており、画素信号S1、S2、…、Snを供給するデータ線6aがTFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画素信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次で供給してもよく、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。また、TFT30のゲートには走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmをこの順に線順次で印加するように構成されている。
画素電極19はTFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけオン状態とすることにより、データ線6aから供給される画素信号S1、S2、…、Snを各画素に所定のタイミングで書き込む。このようにして画素電極19を介して液晶に書き込まれた所定レベルの画素信号S1、S2、…、Snは、図13に示す対向基板20の対向電極121との間で一定期間保持される。なお、保持された画素信号S1、S2、…、Snがリークするのを防ぐために、画素電極19と対向電極121との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量60が付加されている。例えば、画素電極19の電圧は、ソース電圧が印加された時間よりも3桁も長い時間だけ蓄積容量60により保持される。これにより、電荷の保持特性は改善され、コントラスト比の高い液晶表示装置100を実現することができる。
図15はボトムゲート型TFT30を有する液晶表示装置100の部分拡大断面図であって、TFTアレイ基板10を構成するガラス基板Pには、上記実施形態の回路配線の形成方法によりゲート配線61がガラス基板P上のバンクB、B間に形成されている。
ゲート配線61上には、SiNxからなるゲート絶縁膜62を介してアモルファスシリコン(a−Si)層からなる半導体層である活性層63が積層されている。このゲート配線部分に対向する活性層63の部分がチャネル領域とされている。活性層63上には、オーミック接合を得るための例えばn+型a−Si層からなる接合層64a及び64bが積層されており、チャネル領域の中央部における活性層63上には、チャネルを保護するためのSiNxからなる絶縁性のエッチストップ膜65が形成されている。なお、これらゲート絶縁膜62、活性層63、及びエッチストップ膜65は、蒸着(CVD)後にレジスト塗布、感光・現像、フォトエッチングを施されることで、図示されるようにパターニングされる。
さらに、接合層64a,64b及びITO(Indium Tin Oxide)からなる画素電極19も同様に成膜するとともに、フォトエッチングを施されることで、図示するようにパターニングされる。そして、画素電極19、ゲート絶縁膜62及びエッチストップ膜65上にそれぞれバンク66…を突設し、これらバンク66…間に上述した液滴吐出装置IJを用いて、銀化合物の液滴を吐出することでソース線、ドレイン線を形成することができる。
なお、上記実施形態では、TFT30を液晶表示装置100の駆動のためのスイッチング素子として用いる構成としたが、液晶表示装置以外にも例えば有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示デバイスに応用が可能である。有機EL表示デバイスは、蛍光性の無機および有機化合物を含む薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、当該薄膜に電子および正孔(ホール)を注入して再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・燐光)を利用して発光させる素子である。そして、上記のTFT30を有する基板上に、有機EL表示素子に用いられる蛍光性材料のうち、赤、緑および青色の各発光色を呈する材料すなわち発光層形成材料及び正孔注入/電子輸送層を形成する材料を機能液とし、各々をパターニングすることで、自発光フルカラーELデバイスを製造することができる。本発明におけるデバイス(電気光学装置)の範囲にはこのような有機ELデバイスをも含むものである。
なお、本発明に係るデバイス(電気光学装置)としては、上記の他に、PDP(プラズマディスプレイパネル)や、基板上に形成された小面積の薄膜に膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用する表面伝導型電子放出素子等にも適用可能である。
半導体装置を形成する以外の他の実施形態として、非接触型カード媒体の実施形態について説明する。図16に示すように、本実施形態に係る非接触型カード媒体(電子機器)400は、カード基体402とカードカバー418から成る筐体内に、半導体集積回路チップ408とアンテナ回路412を内蔵し、図示されない外部の送受信機と電磁波または静電容量結合の少なくとも一方により電力供給あるいはデータ授受の少なくとも一方を行うようになっている。上記アンテナ回路412が、上記実施形態に係る配線パターン形成方法によって形成されている。
第3の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)薄膜の実現すべき機能を実現するのに必要な膜厚及び断面積に対応した断面形状を有する凹部を形成して、凹部全体に充填された機能液を乾燥させることで、必要な膜厚及び断面積を持つ薄膜を形成することができる。即ち、薄膜の実現すべき機能を実現するのに充分な膜厚及び断面積を有する薄膜を形成することができる薄膜パターン形成方法を用いて形成された回路配線を有することにより、高性能が得られるTFT30を備えるため、高性能の液晶表示装置100を実現することができる。
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る電子機器について説明する。本実施形態の電子機器は、第3の実施形態で説明した液晶表示装置を備えた電子機器である。本実施形態の電子機器の具体例について説明する。
図17(a)は電子機器の一例である携帯電話の一例を示した斜視図である。図17(a)において、600は携帯電話本体を示し、601は上記実施形態の液晶表示装置100を備えた液晶表示部を示している。
図17(b)はワープロ、パソコンなどの携帯型情報処理装置の一例を示した斜視図である。図17(b)において、700は情報処理装置、701はキーボードなどの入力部、703は情報処理本体、702は上記実施形態の液晶表示装置100を備えた液晶表示部を示している。
図17(c)は腕時計型電子機器の一例を示した斜視図である。図17(c)において、800は時計本体を示し、801は上記実施形態の液晶表示装置100を備えた液晶表示部を示している。
図17(a)〜(c)に示す電子機器は、上述した実施形態の液晶表示装置を備えたものであり、薄膜の実現すべき機能を実現するのに充分な膜厚及び断面積を有する薄膜を形成することができる薄膜パターン形成方法を用いて形成された回路配線を有することにより、高性能が得られるTFT30を備えている。本実施形態の電子機器は液晶装置を備えるものとしたが、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ型表示装置等、他の電気光学装置を備えた電子機器とすることもできる。
第4の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)薄膜の実現すべき機能を実現するのに充分な膜厚及び断面積を有する薄膜を形成することができる薄膜パターン形成方法を用いて形成された回路配線を有することにより、高性能が得られるTFT30を備えることにより、高性能の液晶表示装置100を備えるため、高性能の携帯電話600や、情報処理装置700や、時計800を実現することができる。
(第5の実施形態)
次に、本発明に係る薄膜パターン形成方法の第5の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態で説明した配線パターン形成方法の別の一例であって、本実施形態の薄膜パターン形成方法を用いて、第2の実施形態で説明した回路配線パターンの上に重ねて回路配線パターンを形成することも、第1の実施形態で説明した配線パターン形成方法と同様に実施することができる。また、本実施形態の薄膜パターン形成方法を用いて、第2の実施形態で説明した液晶表示装置も、第1の実施形態で説明した配線パターン形成方法と同様に形成することができる。
本実施形態で使用する液滴吐出法や液滴吐出装置や、製造する半導体装置などは、第1の実施形態における液滴吐出法や液滴吐出装置や半導体装置と、基本的に同一である。第1の実施形態と異なる、バンク膜形成工程(ステップS1)、撥液化処理工程(ステップS2)、及び凹部形成工程(ステップS3)(図5参照)についてのみ説明する。
本実施形態の配線パターンの形成方法を用いて、第1の実施形態と同様のTFT30のゲート配線の配線パターンを形成する過程について説明する。本実施形態に係る配線パターンの形成方法の工程は、第1の実施形態において、図5のフローチャートを参照して説明した各工程と基本的に同一である。即ち、基板上にバンクを形成することで、バンクに囲まれた凹部であって、薄膜パターン形状と同一の平面形状を有する凹部を形成し、上述した配線パターン形成用機能液を凹部に配置し、基板上に配線膜を形成することで、配線パターンを形成する。
第1の実施形態で説明したように、ステップS1は、基板上にバンクを形成するためのバンク膜を形成する、バンク膜形成工程であり、次のステップS2は、バンク膜の表面に撥液性を付与する撥液化処理工程であり、次のステップS3は、ゲート配線パターンの形状に応じた凹部を形成するようにバンク膜をエッチングする凹部形成工程である。また、次のステップS4は、撥液性を付与されたバンク間に機能液を配置する機能液配置工程であり、次のステップS5は、機能液の液体成分の少なくとも一部を除去する中間乾燥工程であり、次のステップS6は、機能液に含まれる導電性微粒子が有機銀化合物の場合、導電性を得るために熱処理を行う焼成工程である。バンク膜が、第2の薄膜に相当する。
以下、各ステップの工程毎に本実施形態の方法を詳細に説明する。本実施形態では基板Pとしてガラス基板が用いられる。最初に、ステップS1のバンク膜形成工程について説明する。図18は、本実施形態における、バンクを形成する手順の一例を示す模式断面図である。バンク膜形成工程では、まず、バンクの形成材料を塗布する前に表面改質処理として、基板Pに対してHMDS処理が施される。HMDS処理は、ヘキサメチルジシラサン((CH3)3SiNHSi(CH3)3)を蒸気状にして塗布する方法である。これにより、バンクBと基板Pとの密着性を向上する密着層であるHMDS層332が基板P上に形成される。
バンクは仕切部材として機能する部材であり、バンクの形成はフォトリソグラフィ法や印刷法等、任意の方法で行うことができる。例えば、フォトリソグラフィ法を使用する場合は、スピンコート、スプレーコート、ロールコート、ダイコート、ディップコート等所定の方法で、バンクの形成材料を塗布する。基板PのHMDS層332の上にバンクの高さに合わせてバンクの形成材料が塗布されて、図18(a)に示すようなバンク膜331が形成される。
本実施形態の配線パターンの形成方法では、バンクの形成材料として、バンク膜形成工程では、バンク膜331(バンクB)の形成材料として、機能液に対して親液性を有する材料が用いられる。機能液に対して親液性を有する材料としては、例えば、ポリシラザン、ポリシロキサン、シロキサン系レジスト、ポリシラン系レジスト等の骨格にケイ素を含む高分子無機材料や感光性無機材料、シリカガラス、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキサンポリマー、ポリアリールエーテルのうちいずれかを含むスピンオングラス膜、ダイヤモンド膜、及びフッ素化アモルファス炭素膜、などが挙げられる。さらに、機能液に対して親液性を有するバンク形成材料として、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、などを用いてもよい。
また、バンク膜331(バンクB)の形成材料として、有機質の材料を用いることもできる。例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、オレフィン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の高分子材料を用いることが可能である。あるいは、無機骨格(シロキサン結合)を主鎖に有機基を持った材料でもよい。
次に、バンク膜331を焼成して、バンク膜331中に残っている機能液の分散媒を強制的に除去する。
バンク形成材料の親液性の程度は、機能液の接触角が40°未満であることが好ましい。接触角が40°を越える場合、後述する溝部334(図18(d)参照)の形状によっては、親液性が充分ではない可能性がある。より詳細には、溝状の凹部に注入するべく滴下された機能液は、底面及び側面が機能液に濡れて濡れ広がったり、底面及び側面が機能液をはじいて濡れ広がり難くなったりする。機能液が注入された溝状の凹部の側面の機能液に対する接触角が40°未満であると、凹部の底面が親液性であり機能液に濡れ易い場合であっても、底面に先行して側面が濡れることで機能液が濡れ広がることが確認されている。バンク形成材料の接触角が40°未満であれば、後述する溝部334の側面は機能液に対する接触角が40°未満となり、滴下された機能液は溝部334に濡れ広がり易くなる。
次に、第1の実施形態における図5のステップS2に相当する、本実施形態における撥液化処理工程について説明する。撥液化処理の方法の一つとしては、バンク膜331の表面に、有機分子膜などからなる自己組織化膜を、図18(b)に示す撥液性膜337のように形成する方法が挙げられる。バンク膜331の表面を処理するための有機分子膜は、一端側にバンク膜331に結合可能な官能基を有し、他端側にバンク膜331の表面を撥液性等に改質する(表面エネルギーを制御する)官能基を有すると共に、これらの官能基を結ぶ炭素の直鎖あるいは一部分岐した炭素鎖を備えており、バンク膜331に結合して自己組織化して分子膜、例えば単分子膜である撥液性膜337を形成するものである。
自己組織化膜とは、基板など下地層等の構成原子と反応可能な結合性官能基とそれ以外の直鎖分子とからなり、該直鎖分子の相互作用により極めて高い配向性を有する化合物を、配向させて形成された膜である。この自己組織化膜は、単分子を配向させて形成されているので、極めて膜厚を薄くすることができ、しかも、分子レベルで均一な膜となる。即ち、膜の表面に同じ分子が位置するため、膜の表面に均一でしかも優れた撥液性等を付与することができる。
上記の高い配向性を有する化合物として、例えばフルオロアルキルシランを用いた場合には、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向されて自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に均一な撥液性が付与される。
自己組織化膜を形成する化合物としては、例えば、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロデシルトリクロロシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロ−1,1,2,2テトラヒドロオクチルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン(以下、「FAS」と表記する)を挙げることができる。使用に際しては、一つの化合物を単独で用いるのも好ましいが、2種以上の化合物を組み合せて使用してもよい。
FASは、一般的に構造式RnSiX(4-n)で表される。ここで、nは1以上3以下の整数を表し、Xはメトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子等の加水分解基である。また、Rはフルオロアルキル基であり、(CF3)(CF2)x(CH2)yの(ここで、xは0以上10以下の整数を、yは0以上4以下の整数を表す)構造を持ち、複数個のR又はXがSiに結合している場合には、R又はXはそれぞれすべて同じでも良いし、異なっていてもよい。Xで表される加水分解基は加水分解によりシラノールを形成して、バンク膜331等の下地のヒドロキシル基と反応してシロキサン結合でバンク膜331と結合する。一方、Rは表面に(CF3)等のフルオロ基を有するため、基板等の下地表面を濡れない(表面エネルギーが低い)表面に改質する。
有機分子膜などからなる自己組織化膜は、上記の原料化合物とバンク膜331が形成された基板Pとを同一の密閉容器中に入れておき、室温の場合は2〜3日程度の間放置すると基板上に形成される。また、密閉容器全体を100℃に保持することにより、3時間程度で基板上に形成される。原料化合物とバンク膜331が形成された基板Pとを同一の密閉容器中に入れて放置し自己組織化膜を形成する工程が、第2の薄膜の表面にフッ素化合物又はフッ素を含有する材料を結合させるステップ、又は第2の薄膜の表面にフッ素を含有する有機分子からなる有機薄膜を形成するステップに相当する。
以上に述べたのは、気相からの自己組織化膜の形成法であるが、液相からも自己組織化膜は形成可能である。例えば、原料化合物を含む溶液中にバンク膜331が形成された基板Pを浸積し、洗浄、乾燥することで、バンク膜331上に自己組織化膜が得られる。原料化合物を含む溶液をバンク膜331上に塗布することでも、バンク膜331上に自己組織化膜が得られる。原料化合物を含む溶液中にバンク膜331が形成された基板Pを浸積し、洗浄することで自己組織化膜を形成する工程や、原料化合物を含む溶液をバンク膜331上に塗布することで自己組織化膜を形成する工程が、第2の薄膜の表面にフッ素化合物又はフッ素を含有する材料を結合させるステップ、又は第2の薄膜の表面にフッ素を含有する有機分子からなる有機薄膜を形成するステップに相当する。
次に、第1の実施形態における図5のステップS3に相当する、本実施形態における凹部形成工程について説明する。凹部形成工程では、フォトリソグラフィ法を用いて、バンク膜331の一部を取り除き、バンクBと、バンクBに囲まれた凹部である溝部334を形成する。最初に、バンク形状(配線パターン形状)に合わせてマスクを施しバンク膜331を露光することにより、図18(c)に示したように、溝部334の形状に合わせた被露光部338を形成する。被露光部338には、撥液性膜337が露光した被露光部338aと、バンク膜331が露光した被露光部338bとが含まれる。次に、現像(エッチング)して、被露光部338を除去する。これにより、図18(d)に示すように、バンクBと、バンクBに囲まれた凹部である溝部334が形成される。
基板P上にバンクB、Bが形成されると、フッ酸処理が施される。フッ酸処理は、例えば2.5%フッ酸水溶液でエッチングを施すことでバンクB、B間のHMDS層332を除去する処理である。フッ酸処理では、バンクB、Bがマスクとして機能し、図18(e)に示すように、バンクB、B間に形成された溝部334の底部335にある有機物であるHMDS層332が除去され、基板Pが露出する。配線パターンが形成される基板Pとして用いられるガラスや石英ガラスは、機能液に対して親液性を有しており、基板Pが露出した底部335は、機能液に対して親液性となる。
これにより、図18(e)に示すように、バンクBと、バンクBに囲まれた凹部である溝部334が形成されて、凹部形成工程が終了する。凹部形成工程で形成された、バンクB、Bの上面には、上記した撥液化処理工程で形成された撥液性膜337が形成されており、バンクBの上面は、機能液に対して、撥液性となっている。対照的に、凹部である溝部334の側面であり、バンクBの側面でもある側面336は、機能液に対して、親液性を有するバンク膜331の形成材料が直接露出しており、機能液に対して、親液性となっている。上記したように、底部335は機能液に対して親液性となっており、溝部334は、親液性の側面336及び底部335で構成されている。
ここで説明したバンク膜形成工程、撥液化処理工程、凹部形成工程、及び第1の実施形態で説明したバンク膜形成工程(図5ステップS1)、撥液化処理工程(図5ステップS2)、及び凹部形成工程(図5ステップS3)における、バンク膜31,331の形成処理、バンク膜31,331の焼成処理、撥液化処理、撥液性膜337の焼成処理、凹部形成のための露光処理は、上述した順番以外の順番で実施してもよい。上述した順番異なる順番で実施する例を、図19を参照して説明する。
図19は、本実施形態における、図18に示した手順とは異なる、バンクを形成する手順の一例を示す模式断面図である。最初に、バンクBと基板Pとの密着性を向上する密着層であるHMDS層332が基板P上に形成される。次に、バンクの形成材料を塗布する。基板PのHMDS層332の上にバンクの高さに合わせてバンクの形成材料が塗布されて、図19(a)に示すようなバンク膜331が形成される。次に、バンク膜331を焼成して、バンク膜331中に残っている機能液の分散媒を強制的に除去する。
次に、凹部形成工程の最初の工程である、フォトリソグラフィ法の露光工程を実施する。バンク形状(配線パターン形状)に合わせてマスクを施しバンク膜331を露光することにより、図19(b)に示したように、溝部334の形状に合わせた被露光部338bを形成する。次に、撥液化処理工程を実施する。撥液化処理としては、バンク膜331の表面に、有機分子膜などからなる自己組織化膜を、図19(c)に示す撥液性膜337のように形成する。次に、撥液性膜337を焼成して、撥液性膜337中に残留している機能液の分散媒を強制的に除去する。次に、現像して、被露光部338bを除去する。このとき、撥液性膜337の被露光部338bを覆う部分も被露光部338bと共に除去される。これにより、図19(d)に示すように、バンクBと、バンクBに囲まれた凹部である溝部334が形成される。最後に、バンクB、B間に形成された溝部334の底部335にあるHMDS層332が除去され、図19(e)に示すように、バンクBと、バンクBに囲まれた凹部である溝部334が形成されて、凹部形成工程が終了する。
バンクB及びバンクB間に形成された溝部334を形成するための、バンク膜331の形成、バンク膜331の焼成、撥液性膜337の形成、撥液性膜337の焼成、露光、及び現像、の各工程を実施する順番は、上述した順番が必須ではない。例えば、以下に記載する順番が実行可能である。
(1)バンク膜331の形成、バンク膜331の焼成、撥液性膜337の形成、露光、及び現像による溝部334の形成の順に実施。
(2)バンク膜331の形成、バンク膜331の焼成、撥液性膜337の形成、撥液性膜337の焼成、露光、及び現像による溝部334の形成の順に実施。
(3)バンク膜331の形成、撥液性膜337の形成、バンク膜331及び撥液性膜337の焼成、露光、及び現像による溝部334の形成の順に実施。
(4)バンク膜331の形成、バンク膜331の焼成、露光、撥液性膜337の形成、及び現像による溝部334の形成の順に実施。
(5)バンク膜331の形成、バンク膜331の焼成、露光、撥液性膜337の形成、撥液性膜337の焼成、及び現像による溝部334の形成の順に実施。
上記(1)の実施順序が、図18を参照して説明した例における各工程の実施順序であり、(5)の実施順序が、図19を参照して説明した例における各工程の実施順序である。各工程をどのような順序で実施するかは、例えば、焼成が必要であるか否か、描画する機能液に対して撥液化されたバンク膜表面が、現像液に対して撥液性か親液性かなどによって、適宜選択する。
第1の実施形態で説明したバンク膜形成工程(図5ステップS1)、撥液化処理工程(図5ステップS2)、及び凹部形成工程(図5ステップS3)における、バンク膜31の形成処理、バンク膜31の焼成処理、バンク膜31の撥液化処理、凹部形成のための露光処理は、上記(1)の順序で実施されているが、上記(3)又は(4)の順序で実施してもよい。
第5の実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)溝部334を形成する前に、バンク膜331を焼成することで、バンク膜331を焼成しない場合に比べて、溝部334の側面336が機能液と反応し難くすることができる。例えば機能液とバンクBとが互いに溶解して混合部分が生じ、回路配線膜33(図8参照)の特性が損なわれる可能性を小さくすることができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
(変形例1)上記実施形態では、バンクBの間に形成された溝部に導電性膜を形成して配線パターンを形成したが、形成できる薄膜は導電性薄膜から成る配線パターンに限らない。例えば液晶表示装置において表示画像をカラー化するために用いられているカラーフィルタにも適用可能である。このカラーフィルタは、基板に対してR(赤)、G(緑)、B(青)の機能液(液体材料)を液滴として所定パターンで配置することで形成することができる。上述した実施形態と同様に、基板の上にカラーフィルタの形状に応じたバンクを形成し、このバンクによって形成された溝部に機能液を配置してカラーフィルタを形成することで、カラーフィルタを有する液晶表示装置を製造することができる。
バンクの側面が親液性である、即ち側面が親液性である溝部に機能液を配置することで、バンク際の機能液がバンクに密着し、溝の内部の機能液が均等に配置されるようにすることができる。それにより、溝の内部の機能液を乾燥させてカラーフィルタを形成することで、バンクの際まで厚さが均一なカラーフィルタを形成することができる。カラーフィルタは、カラーフィルタを透過する光の特定の波長成分を遮断することで、光に色を付けるものであり、その厚さによって遮断する量が変わるため、カラーフィルタの厚さは、カラーフィルタの性能に影響を与える重要な要素である。従って、厚さが均一なカラーフィルタを形成することで、性能の良いカラーフィルタを実現することができる。
(変形例2)上記実施形態では、バンクBの間に形成された溝部に導電性膜を形成して配線パターンを形成したが、形成できる薄膜は導電性薄膜から成る配線パターンに限らない。本発明の薄膜パターン形成方法を適用して、上記実施形態に記載した絶縁膜29や、画素電極19を形成することもできる。更に、アモルファスシリコン(a−Si)層からなる半導体層である活性層63、オーミック接合を得るための例えばn+型a−Si層からなる接合層64についても、ケイ素化合物、及びドーパント源を含有する液体材料を使用して形成することもできる。ケイ素化合物の具体的な例としては、シクロペンタシランなど、一個以上の環状構造をもったものに、紫外線を照射することによって光重合させた高次シランとしたものが挙げられる。また、ドーパント源の具体例としては、リンなどの5族元素あるいは、ホウ素などの3族元素を含有する物質が挙げられる。
(変形例3)前記第1の実施形態においては、第5の実施形態で説明したバンクを焼成する工程を実施していないが、第5の実施形態と同様にバンクを焼成する工程を実施することができるのは勿論である。第5の実施形態と同様にバンクを焼成する工程を実施することで、第5の実施形態で説明した効果と同様の効果が実現できる。
(変形例4)前記第5の実施形態においては、バンク膜331と結合する撥液性膜337を形成していたが、撥液性膜337がバンク膜331と結合することは必須ではない。パーフルオロアルキル基(Rf基)を含有するフッ素化合物をバンク膜331上に、単に付着させる方法であってもよい。撥液性膜337がバンク膜331上に単に付着していると、機能液を配置した後、比較的容易に、撥液性膜337を除去することができる。例えば、第2の実施形態で説明したような薄膜を積層する構造を形成する場合であって、絶縁膜28の材料を含む機能液をバンクB等の上に塗布する場合には、撥液処理層37に代えて単に付着している撥液性膜337を形成し、当該撥液性膜337を除去することで、バンクBの表面を絶縁膜28の材料を含む機能液に対して親液性にし易くすることができる。パーフルオロアルキル基を含有するフッ素化合物をバンク膜331上に、単に付着させる工程が、第2の薄膜の表面にフッ素化合物又はフッ素を含有する材料を付着させるステップ、又は第2の薄膜の表面にフッ素を含有する有機分子からなる有機薄膜を形成するステップに相当する。
(変形例5)前記第5の実施形態においては、現像されたときに被露光部338が削除されるフォトエッチングの方法を一例にして説明したが、露光した部分が残り、露光しない部分が削除されるフォトエッチングの方法でも良いことは勿論である。
1…液滴吐出ヘッド、10…TFTアレイ基板、11…ゲート電極、12…ゲート配線、14…ドレイン電極、16…ソース配線、17…ソース電極、19…画素電極、28,29…絶縁膜、30…TFT、31,331…バンク膜、33…回路配線膜、34,334…溝部、35,335…底部、36,336…側面、37…撥液処理層、63…活性層、64,64a,64b…接合層、67…バンク、71…バンク膜、73…回路配線膜、74…溝部、75…底面、76,79…側面、77…撥液処理層、100…液晶表示装置、337…撥液性膜、338,338a,338b…被露光部、600…携帯電話、700…情報処理装置、800…時計、B,B1,B2…バンク、IJ…液滴吐出装置、P…基板。