JP4609254B2 - 円筒状芯体の再生方法及び無端ベルトの製造方法 - Google Patents

円筒状芯体の再生方法及び無端ベルトの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば複写機、プリンタ等の電子写真装置の感光体、転写ベルト及び定着ベルト等の製造に好適に用いられる円筒状芯体及びその再生方法、並びに該円筒状芯体を用いた無端ベルトの製造方法に関する。
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、感光体、帯電手段、転写手段、及び定着手段には、金属やプラスチック、またはゴム製の回転体が使用されているが、機器の小型化あるいは高性能化のために、これら回転体は変形可能なものが好ましい場合があり、それには肉厚が薄いプラスチック製のフィルムからなるベルトが用いられる。この場合、ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、継ぎ目がない無端ベルトが好ましく用いられる。上記無端ベルトの材料としては、強度や寸法安定性、耐熱性等の面でポリイミド樹脂(以下、ポリイミドは適宜「PI」と略す)が特に好ましく用いられる。
ポリイミド樹脂で無端ベルトを作製する方法としては、例えば、円筒状芯体の内面にポリイミド前駆体溶液を塗布し、回転しながら乾燥させる遠心成形法(例えば、特許文献1参照)、円筒体内面にポリイミド前駆体溶液を展開する内面塗布法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
無端ベルトの製造に用いる円筒状芯体は、金属製の素管に、寸法精度が高い切削加工、表面のブラスト処理、メッキ処理工程等を施して作製するが、外径が大きくなるほど加工費が高価になる問題がある。また、円筒状芯体は繰り返し使用されるものであるが、傷が入った芯体を用いると、傷が無端ベルトに転写されて欠陥になるため、通常円筒状芯体の繰り返し使用回数には限界がある。
このように使用により不適当(使用不能)となった円筒状芯体については、例えばアルミニウム基体表面にメッキ処理を施した芯体では、該メッキ層を除去した上で再メッキをすることで芯体を再生する方法が考えられる。しかしながら、上記の再生方法を実施する場合には、加工するために高額の費用や、長期の日数を要することから、さらに簡便な再生手段が望まれる。
一方、金属製の芯体母材にポリイミド樹脂ベルトを被覆し、これを円筒状芯体として使用する技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。これによれば、ベルト表面に傷が生じた際にはポリイミド樹脂ベルトを剥離し、再度ポリイミド樹脂ベルトを被覆することで、容易に樹脂被覆層を有する円筒状芯体を再生することができる。
しかし、上記のようにして芯材母材にポリイミド樹脂ベルトを被覆し、この表面に同様の材料であるポリイミド樹脂の溶液を用いてその皮膜を形成した場合には、下地の樹脂ベルトと形成された皮膜との密着性がよく、ポリイミド樹脂皮膜を抜き取ることができない場合があった。
一方、芯体への樹脂皮膜の密着を防止し、その抜き取りを容易にするため、芯体表面にシリコーン系離型剤を塗布し、これを焼き付けて使用することが知られている(例えば、特許文献4参照)。ところが、前記芯材母材に被覆したポリイミド樹脂ベルトにシリコーン系離型剤を塗布し焼付け処理を施しても、その表面に形成した樹脂皮膜を抜き取ることができないという問題があった。
特開昭57−74131号公報 特開昭62−19437号公報 特開2004−284354号公報 特開2005−88272号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、金属製基体の表面に耐熱性樹脂層を設けた円筒状芯体を用いた無端ベルトの製造にあたり、芯体の表面に形成する樹脂皮膜の抜き取りを容易に行うことができる円筒状芯体の再生方法、並びに該円筒状芯体を用いた無端ベルトの製造方法を提供することを目的とする。
> 樹脂溶液を円筒状芯体表面に塗布し、樹脂塗膜を形成する樹脂塗膜形成工程と、該樹脂塗膜を加熱乾燥及び/または加熱反応させて樹脂皮膜を形成する樹脂皮膜形成工程と、該樹脂皮膜を前記円筒状芯体から剥離する樹脂皮膜剥離工程と、を含む無端ベルトの製造方法であって、
前記円筒状芯体として、金属製基体の表面に、耐熱性樹脂溶液を塗布して耐熱性樹脂塗膜を形成し、該塗膜が未乾燥及び/または未反応の状態でその表面に離型剤を塗布して離型剤塗膜を形成した後、加熱乾燥処理して、離型剤層を有する耐熱性樹脂層を設けてなる円筒状芯体を用いた無端ベルトの製造方法である。
> 前記樹脂皮膜の熱膨張率が、10×10-6〜50×10-6/Kの範囲である<>に記載の無端ベルトの製造方法である。
> 金属製基体の表面に耐熱性樹脂層を設けた円筒状芯体から、使用により不適当となった前記耐熱性樹脂層を剥がす剥離工程と、剥離後の基体表面に再度耐熱性樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、を有する円筒状芯体の再生方法であって、
前記樹脂層形成工程が、耐熱性樹脂溶液を塗布して耐熱性樹脂塗膜を形成し、該塗膜が未乾燥及び/または未反応の状態でその表面に離型剤を塗布して離型剤塗膜を形成した後、加熱乾燥処理して、離型剤層を有する耐熱性樹脂層を形成する工程である円筒状芯体の再生方法である。
本発明によれば、金属製基体の表面に耐熱性樹脂層を設けた円筒状芯体を用いた無端ベルトの製造にあたり、芯体の表面に形成する樹脂皮膜の抜き取りを容易に行うことができる円筒状芯体の再生方法、並びに該円筒状芯体を用いた無端ベルトの製造方法を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
<円筒状芯体>
本発明の円筒状芯体は、金属製基体の表面に、耐熱性樹脂溶液を塗布して耐熱性樹脂塗膜を形成し、該塗膜が未乾燥及び/または未反応の状態でその表面に離型剤を塗布して離型剤塗膜を形成した後、加熱乾燥処理して、離型剤層を有する耐熱性樹脂層を設けてなることを特徴とする。
前記のように、金属製の基体表面に樹脂層を設けた芯体を、無端ベルトを製造するための円筒状芯体として用いることができれば、芯体表面が使用により傷ついても、樹脂層を新たに設けることによって円筒状芯体を容易に再生することができる。しかし、新たな樹脂層を設けることによって、芯体表面の平滑性は再生できたとしても、形成する樹脂皮膜との離型性が悪く樹脂皮膜を抜き取ることができなければ、円筒状芯体としては実際上使用できない。
この視点からは、前述のポリイミド樹脂ベルトで芯材母材を被覆した円筒状芯体では、従来の金属製の芯体に対して行われる表面への離型剤処理を行っても樹脂皮膜を抜き取ることができないことがあり、再生円筒状芯体としては、金属製の芯体と同様に取り扱うことはできない場合があった。
この原因について検討したところ、例えば前記ポリイミド樹脂ベルトの表面にシリコーン系離型剤と塗布し、加熱処理を行ったとしても、シリコーン系離型剤成分はほとんどポリイミド樹脂ベルトと反応していないことがわかった。このため前記シリコーン系離型剤は樹脂溶液塗布時に液中に流れてしまったり、塗布後の加熱乾燥・反応時に樹脂皮膜中に取り込まれてしまったりして、離型作用が発現されないことが判明した。
本発明者等は、上記に関し鋭意検討した結果、金属製基体の表面に耐熱性樹脂層を設けて円筒状芯体とする場合、耐熱性樹脂の塗膜を形成してから塗膜が未乾燥及び/または未反応のうちにその表面に離型剤を塗布し、その後加熱乾燥処理を行うことによって、樹脂皮膜との離型性に優れた円筒状芯体を得ることができることを見出した。
このような離型性が発現される理由は明らかではないが、完全な皮膜として層形成されていない耐熱性樹脂塗膜の上に離型剤を塗布し、その焼き付け処理を行うと、結果的に離型剤を構成する化合物分子の一部が耐熱性樹脂層の中に入り込み、離型剤が脱離しにくくなるためと考えられる。また、後述するように、耐熱性樹脂が硬化反応で得られたりする場合には、離型剤の構成化合物を選択することにより、耐熱性樹脂と離型剤分子とが反応して化学結合することも考えられる。
上記のような、離型性に優れた離型剤層を有する耐熱性樹脂層を設けた本発明の円筒状芯体は、前述の金属製の芯体の表面に離型剤を焼き付け処理した従来の円筒状芯体と同程度以上に、繰り返し使用しても離型性が安定しており、しかも、耐熱性樹脂層が傷ついた場合には、後述するように耐熱性樹脂層のみを取り替えることにより、新たな円筒状芯体として再生することができる。
さらに本発明においては、耐熱性樹脂層が完全に形成される前にその表面に離型剤を塗布するので、最終的に乾燥、硬化した樹脂層(離型剤層)表面が硬くなり、これを用いて樹脂皮膜形成を行なった場合に、耐久性が向上するという効果も得られる。
以下、本発明の円筒状芯体の構成について説明する。
図1に、本発明の円筒状芯体の構成断面を模式的に示す。本発明の円筒状芯体は、金属製の基体1の表面に、離型剤層3(実際上は層としてほとんど確認できない)を有する耐熱性樹脂層2を設けてなる。
本発明に用いることができる金属製の基体1の材料としては、アルミニウム、ステンレス、銅、鉄、真鍮、ニッケルなどいずれの材料も使用可能であるが、後述の樹脂皮膜の熱膨張率と差を考慮すると、熱膨張率が大きい材料を用いることが好ましい。
また、市場流通性の観点からは、アルミニウムやステンレスを用いることが好ましい。
本発明に用いる上記金属製の基体1は、円筒状であるが、外径が350〜380mmの範囲、厚さが8〜20mmの範囲、長さが900〜1200mmの範囲であることが好ましい。
また、本発明の円筒状芯体は、後述するように使用後の金属製の円筒状芯体を再生して得ることができるが、使用により表面がかなり傷ついていると基体として使用することができない。この場合は、芯体表面を少し切削して表面を平滑化することが好ましい。
いずれにしても、本発明に用いる基体表面の算術平均粗さRaは0.1〜0.5μmの範囲とすることが好ましい。
金属製の基体表面に形成される耐熱性樹脂層2を構成する耐熱性樹脂としては、PI樹脂、ポリアミドイミド(以下、適宜「PAI」と略す)樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などを用いることができる。これらの中では、PI樹脂、PAI樹脂を好ましく用いることができる。
PI樹脂は熱変形温度が300℃を超えるため、熱硬化(加熱反応)して作製されるPI樹脂製無端ベルト用の芯体表面部材(耐熱性樹脂層2)として用いた場合にも、熱硬化温度で変形することがないことから、PI樹脂製無端ベルトの膜質に影響を及ぼすことなく、芯体表面部材として繰り返して使用することができる。
一方、前記PAI樹脂はPI樹脂よりやや耐熱性に劣るものの、芯体表面部材として形成する際に、高温の加熱が不要である点で好ましい。
なお、本発明における耐熱性樹脂層2は、金属製の基体表面に直接形成する以外に、別途耐熱性樹脂ベルトとして作製し、これを前記金属製の基体に嵌めることにより設けてもよいが、後述するように耐熱性樹脂層2には離型層が設けられること、樹脂ベルトを嵌める場合には耐熱性樹脂層2を基体1に固定する必要があること、工数がより必要となること等から、一定の用途以外は基体表面に直接耐熱性樹脂層2を設けることが好ましい。
以下においては、上記基体表面に直接耐熱性樹脂層2を形成する方法を中心に説明する。
耐熱性樹脂の材質としてPI樹脂を用いる場合の該PI樹脂としては、各種前駆体を原材料とするものが使用可能である。これらの詳細については、後述の無端ベルトの製造方法において説明する。
また、基材無端ベルトの材質としてPAI樹脂を用いる場合の該PAI樹脂としては、例えば、芳香族トリカルボン酸としてトリメリット酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ピロメリット酸二無水物等、及び芳香族ジアミンとしてm−フェニルジアミン、p−フェニルジアミン、ビス[4−{3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル}フェニル]エーテル、4,4’−ジアミノジフェニル等を原料として用いたものが使用可能である。
円筒状芯体の作製は、まず、前記耐熱性樹脂を溶剤に溶かして溶液とし、これを既知の方法で円筒状の金属性基体1の表面に塗布して、耐熱性樹脂塗膜を形成する。この場合用いる耐熱性樹脂としては、前記のように樹脂ベルトを円筒状の基体に抜き差しするわけではないので、熱膨張率が基体のそれと同等に近いことが望ましい。また、この場合の耐熱性樹脂塗膜の膜厚(ウェット)は、塗布しやすい厚さでよく、300〜600μm程度の範囲が好ましい。
なお、円筒状の基体1の表面に耐熱性樹脂層2を形成する際、乾燥時、あるいは加熱時に、反応生成水または残留溶剤によって、皮膜に部分的に膨れが生じることがある。その場合、円筒状の基体1の表面を、算術平均粗さRaで0.2〜2μmの範囲程度に粗面化することにより、残留溶剤または水の蒸気は、基体と耐熱性樹脂皮膜との間にできるわずかな隙間を通って外部に出ることができるようになり、膨れを防止することができる。基体表面の粗面化には、ブラスト、切削、サンドペーパーがけ等の方法を用いることができる。
なお、円筒状の基体の表面が粗面であっても、その表面に形成された耐熱性樹脂層2の表面は粗面になることはなく、平滑である。
次いで、本発明においては、上記耐熱性樹脂塗膜が未乾燥及び/または未反応の状態で、その表面に離型剤を塗布して離型剤塗膜を形成する。ここで、上記樹脂塗膜が未乾燥の状態とは、塗膜中に溶剤が70〜80質量%含まれることを意味し、前記樹脂塗膜が未反応の状態とは、樹脂が硬化反応タイプの場合塗膜中に未反応の成分が仕込み全体成分量に対して70〜100モル%含まれることを意味する。
上記状態の塗膜表面に離型剤を塗布することにより、離型剤が分子状態で耐熱性樹脂を構成する分子(高分子鎖)間に入り込み、その後の加熱乾燥処理工程で固定あるいは分子間反応し、前述のような優れた離型性が発現されるものと考えられる。
離型剤としては、特に制限されないが、シリコーン系離型剤やフッ素系離型剤を用いることが好ましい。
より具体的には、シリコーン系離型剤としては、シリコーン樹脂、シリコーンオイルなどを用いることが好ましく、フッ素系離型剤としては、テフロン(登録商標)樹脂、PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー)樹脂などを用いることが好ましい。
離型剤塗布量としては、少量であるため正確にコントロールすることは難しいが、0.1〜1.0mg/m2の範囲程度とすることが好ましい。また、このような少量の離型剤を均一に耐熱性樹脂塗膜表面に塗布するためには、スプレーガン、浸漬法などを用いて塗布することが好ましい。
上記に関しては、特に、耐熱性樹脂がポリイミド樹脂であり、離型剤がシリコーン系離型剤である場合には、イミド化されていないポリイミド前駆体の塗膜の上にシリコーン系離型剤を塗布することが、その後焼き付け処理を行った場合に、ポリイミド前駆体が脱水反応によりイミド化されて、ポリイミド樹脂になると同時に、ポリイミド前駆体の炭素原子とシリコーン系離型剤との間でシロキサン結合(C−O−Si)が形成されるため好ましい。このシロキサン結合は化学的に安定したものであるため、離型作用が効果的に発現される。
その後、加熱乾燥処理工程において表面に離型剤が塗布された耐熱性樹脂塗膜を乾燥し、場合によっては樹脂形成のための硬化反応や耐熱性樹脂と離型剤分子との反応を同時に行う。これにより、耐熱性樹脂が樹脂皮膜となると共に離型剤が樹脂皮膜表面に固定化された耐熱性樹脂層2が形成される。
上記加熱乾燥処理は、200〜320℃の範囲、より好ましくは250〜300℃の範囲で0.5〜2時間程度行うことが、樹脂塗膜の乾燥、離型剤の固定を十分に行う観点から好ましい。
耐熱性樹脂層2の厚さは20〜100μmの範囲であることが好ましく、60〜90μmの範囲であることがより好ましい。また、固定化された離型剤層3の厚さは0.01〜0.1μmの範囲程度であることが好ましい。
一方、前記円筒状の基体1の表面に耐熱性樹脂層2を形成する際と同様、本発明の円筒状芯体を用いて樹脂皮膜を作製する場合にも、乾燥時、あるいは加熱時に、反応生成水または残留溶剤によって、皮膜に部分的に膨れが生じることがある。その場合、円筒状芯体(耐熱性樹脂層)の表面を粗面化しておくことにより、残留溶剤または水の蒸気は、基体と耐熱性樹脂皮膜との間にできるわずかな隙間を通って外部に出ることができるようになり、膨れを防止することができる。耐熱性樹脂層表面の粗面化には、 等の方法を用いることができる。
上記を考慮して、耐熱性樹脂層表面の算術平均粗さRaは0.1〜2.0μmの範囲であることが好ましく、0.2〜1.0μmの範囲であることがより好ましい。
なお、上記算術表面粗さRaの測定は、表面粗さ計サーフコム1400A(東京精密社製)を用いて、JIS B0601−1994に準拠し、評価長さLnを4mm、基準長さLを0.8mm、カットオフ値を0.8mmとした測定条件で実施されたものである。
なお、上記方法とは異なり、基体表面に耐熱性樹脂層2を樹脂ベルトとして嵌める場合は、ベルトの内径と円筒状の基体の外径とは、同じであることが最適であるが、それでは樹脂ベルトを基体に嵌めるのが困難になるので、樹脂ベルトの内径は、円筒状の基体の外径より、わずかに(例えば20〜100μm程度)大きいことが好ましい。この場合、樹脂ベルトを基体に嵌めた後、基体の両端には粘着テープ等を巻き付けて、樹脂ベルトとの隙間を閉じておくのが好ましい。
得られた基体表面に耐熱性樹脂層2が設けられた本発明の円筒状芯体は、耐熱性樹脂層表面に離型剤が固定されているため、芯体として繰り返し使用することが可能である。
本発明の円筒状芯体の優れた離型性を、表面の初期の水接触角θ1で示せば、θ1は80〜120度の範囲であることが好ましく、90〜110度の範囲であることがより好ましい。また、芯体として用いて100回樹脂皮膜作製を行った場合でも、そのときの表面の水接触角θ100の初期に対する変化(θ100/θ1)は0.8〜1.0の範囲であることが好ましく、0.9〜1.0の範囲であることがより好ましい。
前記表面の水接触角は、接触角計(協和界面科学(株)製:CA−X)を用い、25℃、50%RHの環境下で、純水を円筒状芯体の各部表面に約3.1μl滴下し、15秒後の接触角として求めた。なお、測定は端部、中央部で周方向に4点測定し、これらの平均値を接触角とした。
<円筒状芯体の再生方法>
本発明の円筒状芯体は、後述する無端ベルトの製造等の使用により被覆した耐熱性樹脂層の表面に傷が生じた場合には、耐熱性樹脂層を剥がし(剥離工程)、再度耐熱性樹脂層を形成する(樹脂層形成工程)ことで、容易に円筒状芯体を再生することができる。以下、各工程について説明する。
(剥離工程)
本工程は、金属製基体の表面に耐熱性樹脂層を設けた円筒状芯体から、使用により不適当となった前記耐熱性樹脂層を剥がす工程である。ここで、上記「使用により不適当となった」とは、円筒状芯体の繰り返し使用により、耐熱性樹脂層に傷がつき、その傷が円筒状芯体表面に形成される樹脂皮膜に転写された場合に転写ベルト等として使用できなくなることをいう。
金属製基体から耐熱性樹脂層を剥がすには、軟質ポリエチレンシートにより行うことが、基体の表面を傷つけることがないため好ましい。また、再度形成する耐熱性樹脂層の厚さによっては基体の表面を傷つけてもよく、この場合には旋盤などの切削機により樹脂層を剥がしてもよい。
ただし、上記切削等により基体表面まで切削する場合等は、耐熱性樹脂層を設けても基体表面の粗さを平滑化できない程度としては再生には不適となるため、剥離後の基体表面の算術平均粗さRaは1.5μm以下とすることが好ましい。
また、前記耐熱性樹脂層を樹脂ベルトを基体に嵌めることにより設ける場合には、ベルトを固定している粘着テープ等を削除すればよい。
(樹脂層形成工程)
本工程は、上記剥離後の基体表面に再度耐熱性樹脂層を形成する工程である。
耐熱性樹脂層を形成する方法は、基本的に前述の本発明の円筒状芯体を作製する場合における樹脂層形成方法と同様である。
上記樹脂層形成においては、芯体再生後にこれを用いて同様の樹脂皮膜形成を繰り返す場合には、再生前の円筒状芯体の外径(耐熱性樹脂層形成部分)と同一となるように樹脂層を形成する必要がある。したがって、前記切削等により耐熱性樹脂層を剥離した場合には、新たな耐熱性樹脂層はやや厚めに形成しなければならない。
一方、形成樹脂層の厚さ、離型性の程度をコントロールすることにより、再生後の芯体を周長の異なる無端ベルトとなる樹脂皮膜作製用に用いることもできる。
ここで、以上の本発明の円筒状芯体の再生とは異なる芯体の再生方法について説明する。
上記円筒状芯体の再生方法は、前述の円筒状芯体とは異なり、基本的に従来のアルミニウム等の金属製の円筒状芯体について、使用により表面が傷ついた場合に表面が金属製の芯体として再生する方法である。
具体的には、傷、打痕等で使用できなくなった金属性の芯体において、表面を切削加工して外径を小さくし(切削工程)、これを基体として表面に外径不足分と仕上げ切削加工に必要な切削しろとを合算した厚さの金属の板材を巻きつけ、つなぎ目を溶接し(巻きつけ工程)、この部分を研磨した後、仕上げ加工を行い(仕上げ加工工程)、円筒状芯体を再生させるものである。
すなわち、再生後の芯体は、円筒状の基体とその周囲に巻きつけられ溶接された金属平板とからなる二重構造を有するものである。このような円筒状芯体の再生は、やや工数がかかるものの、得られる再生芯体が金属製であることから、耐久性が高く、基本的に他の再生していない金属性の円筒状芯体と区別なく併用できるため、全体として円筒状芯体の使いまわし本数を低減することができ、低コスト化、省スペース化を達成することができる。
用いられる円筒状芯体としては、前記樹脂層を形成して再生される円筒状芯体において説明した基体と同様のものを用いることができる。
前記切削工程では、前述のように切削後に基体に巻きつける金属板の厚さと仕上げ加工分の厚さ分だけ、使用後の芯体を旋盤等により切削する。通常は、0.5〜3mmの範囲程度切削することが好ましい。なおこの場合、切削後に金属板を巻きつけるので、切削面の表面粗さ等を特に考慮する必要がない。
前記巻きつけ工程では、上記切削後の円筒状の基体の周囲長と完全に一致する長さの一辺と、基体の軸方向の長さの他辺とからなる長方形の金属板を基体に巻きつけ、つなぎ目を溶接する工程である。
上記金属板としては、切削した芯体と同一の材質からなるものを用いることが好ましく、厚さは1〜5mmの範囲であることが好ましい。
また、前記溶接は、アーク溶接により行うことが、耐久性及びコストの観点から好ましい。
図2に、溶接後の芯体の構成断面を模式的に示す。
図に示すように、切削後の基体11に巻きつけられた金属板12が、溶接部13で溶接され固定されているが、溶接直後では、溶接部13は溶接材等がそのまま盛り上がった状態となっており、このままでは円筒状芯体として使用することができない。
そこで、溶接部13はやすり等により研磨を行い、図3に示すように前記盛り上がった部分を平滑化することが好ましい。このように平滑化することで、次の仕上げ加工工程での切削を効率よく行うことができる。
前記仕上げ加工工程では、中実丸棒等を用いて巻きつけた金属板表面を切削、研磨し、芯体の外径を所望の長さに調整すると共に表面の粗さを平滑化、均一化する。
切削量は、厚さで0.5〜3mmの範囲であることが好ましく、また、加工後の芯体表面の算術平均粗さRaは0.1〜1.5μmの範囲とすることが好ましい。
以上のような工程を経て再生された円筒状芯体は、前記巻きつける金属板として基体と同一の材質のものを用いれば、基本的に再生前の初期の円筒状芯体と同一のものとして得ることができる。また、再生芯体を使用して再度表面に傷がついた場合等には、前記と同様の方法により再度金属製の円筒状芯体として再生することができる。
<無端ベルトの製造方法>
本発明の無端ベルトの製造方法は、樹脂溶液を円筒状芯体表面に塗布し、樹脂塗膜を形成する樹脂塗膜形成工程と、該樹脂塗膜を加熱乾燥及び/または加熱反応させて樹脂皮膜を形成する樹脂皮膜形成工程と、該樹脂皮膜を前記円筒状芯体から剥離する樹脂皮膜剥離工程と、を含む無端ベルトの製造方法であって、前記円筒状芯体として、既述の本発明の円筒状芯体を用いることを特徴とする。
すなわち、本発明においては、樹脂溶液を円筒状芯体の表面に塗布し、加熱乾燥及び/または加熱反応させて樹脂皮膜を形成する方法において、本発明の円筒状芯体を用いることで、再生した円筒状芯体として用いた場合でも、従来の金属製の円筒状芯体と同等以上の離型性を、繰り返し使用した場合でも安定して得ることができる。
本発明に用いることができる樹脂皮膜用の樹脂としては、特に制限されないが、ポリイミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリアリレート樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等から選択することができる。
本発明により製造することができる樹脂皮膜の熱膨張率は、10×10-6〜50×10-6/Kの範囲であることが好ましく、12×10-6〜30×10-6/Kの範囲であることがより好ましい。
従来の金属製の円筒状芯体を用いた場合には、作製した樹脂皮膜を円筒状芯体から抜き取るために、樹脂皮膜の熱膨張率が円筒状芯体の熱膨張率より小さいものを選択する必要があったが、本発明においては、離型剤層を有する耐熱性樹脂層の表面が離型性に優れ、かつ離型剤層と耐熱性樹脂層との密着性が高く、樹脂皮膜内面に離型剤層が転写されにくいため、比較的熱膨張率の大きい樹脂皮膜についても容易に抜き取ることができるという利点がある。
前記各種樹脂の中では特に、ポリイミドが無端ベルトとしての強度や柔軟性等を確保できる点で好ましい。
なお、本発明においては、前記各種樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を円筒状芯体の表面に塗布し、樹脂皮膜を形成するが、該樹脂溶液としては、高分子量化した樹脂を溶解した溶液だけでなく、後述するポリイミド前駆体溶液のように、反応して樹脂になる樹脂前駆体の溶液も含まれる。
以下、本発明の無端ベルトの製造方法が好ましく用いられる一例として、ポリイミド樹脂製の無端ベルトの製造方法を工程毎に詳細説明する。
−PI前駆体塗膜形成工程(樹脂塗膜形成工程)−
本工程では、樹脂塗膜を形成するための塗膜として、PI前駆体塗膜が形成されるため、本発明における樹脂塗膜形成工程がPI前駆体塗膜形成工程となる。
PI前駆体塗膜形成工程では、まず、PI前駆体が非プロトン系極性溶剤に溶解したPI前駆体溶液を調製する。
PI前駆体としては、前記において列記した種々の組み合せからなるものを用いることができる。また、PI前駆体は、2種以上を混合して用いてもよいし、酸またはアミンのモノマーを混合して共重合されたものを用いてもよい。
特に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、適宜「BPDA」と略す)とp−フェニレンジアミン(以下、適宜「PDA」と略す)とからなるポリイミド前駆体と、BPDA以外の酸無水物と任意のジアミンからなるポリイミド前駆体と、を混合してなるポリイミド前駆体溶液を用いることが好ましい。かかるポリイミド前駆体を用いることにより、製造されるポリイミド樹脂の熱膨張率を低く保ちつつも、要求物性を変化させることや材料価格を低減させることができる。これは、BPDAとPDAとからなるポリイミド前駆体を用いて製造されたポリイミド樹脂(以下、適宜「S型」と称する)の熱膨張率が円筒状芯体と比較して小さく(熱膨張率:12×10-6/K)、その差に余裕があるので、熱膨張率が円筒状芯体より小さい範囲で、他のポリイミド前駆体を混合してもよいためである。
BPDAとPDAとからなるポリイミド前駆体と併用し得る他のポリイミド前駆体としては、BPDAと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるもの(熱膨張率:21×10-6/K)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとからなるもの(熱膨張率:20×10-6/K)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとからなるもの(熱膨張率:50×10-6/K)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノベンゾフェノンとからなるもの(熱膨張率:24×10-6/K)、等の中から適宜選択すればよいが、PMDAと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとからなるものが、混合適性や特性面、材料価格等により好ましく使用される。
BPDAとPDAとからなるポリイミド前駆体と、他の組成からなるポリイミド前駆体の混合比は、他の組成からなるポリイミド前駆体が多いほど価格の点で好ましいが、多すぎると熱膨張率が大きくなり、円筒状芯体から剥離しにくくなるため、(BPDAとPDAからなるポリイミド前駆体):(他の組成からなるポリイミド前駆体)=5:5〜0:10程度の範囲から、適宜、調整される。円筒状芯体の外径が大きいほど、その表面に形成されたポリイミド樹脂皮膜との寸法差が大きくなって外れやすくなる傾向があるので、他の組成からなるポリイミド前駆体の混合比を多くすることができる。
なお、本発明においては、ポリイミド樹脂皮膜の円筒状芯体からの剥離を、単に加熱反応後の冷却による円筒状芯体の収縮のみでなく、加圧空気注入により剥離を行うため、従来より前記他の組成からなるポリイミド前駆体の混合比を高くすることができ、円筒状芯体との組み合わせによっては、他の組成からなるポリイミド前駆体単独でも使用可能である。
また、S型PI樹脂皮膜は、機械的強度がポリイミド樹脂の中では最も強いことが知られており、定着ベルトや転写ベルトとして使用した際には、変形しにくい利点がある。反面、転写ベルトのように、感光体の表面に直に接する部材においては、感光体表面を傷付けたり、磨耗させたりすることもあるので、機械的強度はある程度低い方が好ましい場合がある。このような場合、S型となるポリイミド前駆体と、他の組成からなるポリイミド前駆体とを混合して強度を調整することは有効である。
上記のポリイミド前駆体は、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン系極性溶剤に溶解することで、ポリイミド前駆体溶液として調製される。なお、この調製の際におけるポリイミド前駆体の混合比、濃度、粘度等の選択は、適宜調整して行われる。
円筒状芯体としては、既述の如く、前記本発明の耐熱性樹脂層を設けた円筒状芯体を用いるが、前記円筒状の基体がアルミニウムの場合、350℃に加熱すると強度が低下して変形を起こしやすい。このようなアルミニウムの熱変形は、円筒状形状への冷間加工中に歪みが蓄積していると発生しやすい。そのような歪みを取り去るには、アルミニウムを焼鈍(焼きなまし)する方法がある。但し、焼鈍によっても熱変形が起こるので、前記所定形状への加工は、その後に施す必要がある。焼鈍とは、アルミニウム素材を350〜400℃の範囲に加熱し、空気中で自然に冷却する方法等が挙げられる。
PI前駆体塗膜形成工程おいて、前記PI前駆体溶液(樹脂溶液)を円筒状芯体表面に塗布してPI前駆体塗膜を形成するが、PI前駆体溶液の塗布方法としては、円筒状芯体をPI前駆体溶液に浸漬して上昇させる(引き上げる)浸漬塗布法、円筒状芯体を回転させながら表面にPI前駆体溶液を吐出する流し塗り法、その際にブレードで皮膜をメタリングするブレード塗布法など、公知の方法が採用できる。上記流し塗り法やブレード塗布法では塗布部を水平移動させるので、皮膜はらせん状に形成されるが、PI前駆体溶液は乾燥が遅いために、継ぎ目は自然に平滑化される。なお、「円筒状芯体表面に塗布する」とは、円柱も含まれる円筒状芯体の側面の表面、及び該表面に層を有する場合は、その層の表面に塗布することをいう。また、「円筒状芯体を上昇」とは、塗布時の液面との相対関係であり、「円筒状芯体を停止し、塗布液面を下降」させる場合を含む。
PI前駆体塗膜形成工程おいて、PI前駆体溶液の塗布を浸漬塗布法で行う場合、PI前駆体溶液は粘度が非常に高いので、膜厚が所望値より厚くなりすぎることがある。その際は、以下に示す環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法が適用できる。
環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法を、図4、5を参照して説明する。
図4は、環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法に用いる装置の一例を示す概略構成図である。ただし、図4においては塗布主要部のみを示し、他の装置は省略している。
図4に示すように、この浸漬塗布法は、塗布槽23に満たされたPI前駆体溶液22に、円筒状芯体21の外径よりも大きな孔26を設けた環状体25を浮かべ、円筒状芯体21を図面における上側から前記孔26を通してPI前駆体溶液22に浸漬し、次いで、円筒状芯体21を引き上げる塗布法である。
環状体25は、PI前駆体溶液液面に浮くように構成されており、その材質としては、PI前駆体溶液22によって侵されないものであればよく、例えば、種々の金属やプラスチック等から選ばれる。また、浮上しやすいように、例えば、中空構造であってもよいし、沈没防止のために、環状体の外周面または塗布槽23に、環状体25を支える足や腕を設けても良い。
環状体25は、PI前駆体溶液22の液面を自由に動くことができる必要がある。そこで、PI前駆体溶液22の液面でわずかの力で動くことができよう、上記環状体25を溶液面に浮遊させる方法のほか、環状体25をロールやベアリングで支える方法、環状体25をエア圧で支える方法、などの方法で自由移動可能に設置されることが好ましい。
また、環状体25が塗布槽23の中央部に位置するように、環状体25を一時的に固定する固定手段を設けてもよい。このような固定手段としては、環状体25に足を設ける手段、塗布槽23と環状体25とを固定する手段などがある。但し、これらの固定手段を用いた場合、円筒状芯体21を浸漬した後、引き上げる際には、環状体25が自由に動き得るように、上記固定手段は取り外し可能なように配置される。
円筒状芯体21の外径と、孔26の径との間隙は、所望の塗布膜厚を鑑みて調整する。所望の塗布膜厚(乾燥膜厚)は、濡れ膜厚とPI前駆体溶液22の不揮発分濃度との積になる。これから、所望の濡れ膜厚が求められる。また、円筒状芯体21の外径と、孔26の径との間隙は、所望の濡れ膜厚の1倍〜2倍の範囲であるのが好ましい。1倍〜2倍の範囲とするのは、PI前駆体溶液22の粘度及び/または表面張力などにより、間隙が濡れ膜厚になるとは限らないからである。このように、所望の乾燥膜厚及び所望の濡れ膜厚から、所望の孔26の径が定められる。
環状体25に設けられる孔26の内壁面は、PI前駆体溶液に浸る下部が広く、上部が狭い形状であれば、図4に示すように、傾斜面であるものや、図5に示すように、組み合わせた傾斜面であってもよい。また、階段状や曲線的な面であってもよい。
浸漬塗布を行う際、円筒状芯体21を、孔26を通してPI前駆体溶液22に浸漬する。その際、円筒状芯体21が環状体25に接触しないようにする。次いで、孔26を通して円筒状芯体21を引き上げる。この際、円筒状芯体21と孔26との間隙により塗膜24の厚さが決定される。引き上げ速度は、0.1〜1.5m/min程度の範囲が好ましい。この塗布方法に好ましいPI前駆体溶液の固形分濃度は、10〜40質量%の範囲、粘度は1〜100Pa・sの範囲である。
円筒状芯体21を、孔26を通して引き上げる際、ポリイミド前駆体溶液22の介在により、円筒状芯体21と環状体25との間に摩擦抵抗が生じ、環状体25には上昇力が作用し環状体25は少し持ち上げられる。この時、環状体25は自由移動可能状態であり、更に、環状体の孔26が円形であり、かつ、円筒状芯体21の外周も円形であるため、円筒状芯体21と環状体25との摩擦抵抗が周方向で一定になるように、環状体25は動くことができる。即ち、円筒状芯体21を引き上げる際、ある位置で、環状体25と円筒状芯体21との間隙が狭まろうとした場合、狭まろうとした部分では摩擦抵抗が大きくなる一方、その反対側では摩擦抵抗が小さくなり、一時的に摩擦抵抗が不均一な状態が生じる。しかしながら、環状体25が自由に動くこと、円筒状芯体21の外周が円形であること、及び、環状体の孔26が円形であることから、そのような摩擦抵抗が不均一な状態から均一な状態になるように、環状体25が動く。従って、環状体25が円筒状芯体21と接触するようなことはない。
また、摩擦抵抗が均一となる位置は、円筒状芯体21の外周の円形と、環状体25の孔26の円形とがほぼ同心円となる位置である。よって、円筒状芯体21断面の円の中心が、軸方向において許容範囲内でずれている場合であっても、環状体25はそれに追随するように動く。従って、円筒状芯体21の表面には、一定の濡れ膜厚を有するポリイミド前駆体塗膜24を形成することができる。
更に、浸漬塗布法に用いる塗布装置は、円筒状芯体21を保持する円筒状芯体保持手段、並びに、所望により、該保持手段を図5における上下方向に移動させる第1の移動手段、及び/または、ポリイミド前駆体溶液22を入れる容器を図4における上下方向に移動する第2の移動手段を有してもよい。
このような、環状体25により膜厚を制御する浸漬塗布法を適用することで、高粘度のポリイミド前駆体溶液22を用いることによる、円筒状芯体21の上端部での塗膜のタレは少なくなり、簡易に膜厚を均一にすることができる。
なお、PI前駆体塗膜形成工程おいて、上記の浸漬塗布法を用いるほかにも、図5に示す環状塗布法も適用できる。ここで、図5は、環状塗布法に用いる装置の一例を示す概略構成図である。
図5において、図4との違いは、環状塗布槽27の底部に、円筒状芯体の外径より若干小さい穴を有する環状シール材28が設けられていることである。環状塗布槽27の底部には環状シール材28が取り付けられ、円筒状芯体21を環状シール材28の中心に挿通させ、環状塗布槽27にPI前駆体溶液22を収容する。これにより、PI前駆体溶液22が漏れないようになっている。円筒状芯体21は、図面における環状塗布槽27の下部から上部に順次つき上げられ、環状シール材28を挿通させることにより、表面に塗膜24の形成が行われる。円筒状芯体21の上下には、円筒状芯体21に嵌合可能な中間体29、29’が取り付けられることもある。環状体25の機能は、前述と同様である。
このような環状塗布法では、環状塗布槽27は図4の浸漬塗布槽23よりも小さくできるので、溶液の必要量が少なくて済む利点がある。
−PI樹脂皮膜形成工程(樹脂皮膜形成工程)−
本工程においては、樹脂皮膜としてPI樹脂皮膜が形成されるため、本発明における樹脂皮膜形成工程がPI樹脂皮膜形成工程となる。
PI樹脂皮膜形成工程においては、前記PI前駆体塗膜を加熱乾燥させてから、加熱反応させてPI樹脂皮膜を形成する。
まず、PI樹脂皮膜形成工程においては、PI前駆体塗膜中に過度に残留する溶剤を除去する目的で、静置しても塗膜が変形しない程度の加熱乾燥を行う。加熱条件は、90〜170℃の温度範囲で30〜60分間の範囲であることが好ましい。その際、温度が高いほど、加熱時間は短くてよい。また、加熱することに加え、風を当てることも有効である。加熱は、時間内において、段階的に上昇させたり、一定速度で上昇させたりしてもよい。
なお、PI前駆体塗膜から溶剤を除去させすぎると、塗膜はまだベルトとしての強度を保持していないので、割れを生じるおそれがある。そこで、ある程度(具体的にはPI前駆体塗膜中に15〜45質量%)、溶剤を残留させておく方がよい。
PI前駆体塗膜を加熱乾燥させてから加熱反応までは、連続的に行えばよいが、途中で一旦、温度を低下させてもよい。ここで、「温度を低下させる」とは、加熱乾燥により高温状態となっているPI前駆体塗膜を、円筒状芯体ごと冷却し、温度を低下させることをいう。低下させる温度は、常温でもよい。温度を低下させることは、加熱乾燥装置と加熱反応装置とが異なっている場合に有効である。
その際、PI前駆体塗膜は、温度の低下により収縮する。その収縮率は軸方向で0.5〜2%と小さい範囲であるが、この収縮により、PI前駆体塗膜は、円筒状芯体の表面でズレを生じ、円筒状芯体との間により広い隙間が生じる。一度、このような隙間が発生すると、加熱反応の際に、残留溶剤等が抜けやすくなる。
加熱乾燥装置と加熱反応装置とが同じである場合、一旦、温度を低下させることは不要である。
PI樹脂皮膜形成工程において、上述の乾燥の後、好ましくは300〜450℃の範囲、より好ましくは350℃前後で、20〜60分間、PI前駆体塗膜を加熱反応させることで、PI樹脂皮膜を形成することができる。加熱反応の際、非プロトン系極性溶剤が残留しているとPI樹脂皮膜に膨れが生じることがあるため、加熱の最終温度に達する前に、完全に残留溶剤を除去することが好ましく、具体的には、加熱前に、200〜250℃の温度で、10〜30分間加熱乾燥して残留溶剤を除去し、続けて、温度を段階的、または一定速度で徐々に上昇させて加熱し、ポリイミド樹脂皮膜を形成することが好ましい。
なお、PI樹脂皮膜形成工程において、加熱乾燥の前に、PI前駆体塗膜を、PI前駆体を溶解せず、かつ、非プロトン系極性溶剤を溶解し得る特定溶剤に接触させる処理を行い、PI前駆体皮膜を形成する工程を行ってもよい。これにより、PI前駆体塗膜から非プロトン系極性溶剤が特定溶剤に染み出て、代わりに特定溶剤が浸透する。個々で、PI前駆体は特定溶剤には不溶なので、PI前駆体は析出し、静置しても塗膜が変形しない程度に固形化され、PI前駆体塗膜が形成される。その結果、前述の乾燥工程が速やかに行われ、乾燥時間を短縮することができる。
PI前駆体塗膜と特定溶剤との接触は、前記PI前駆体塗膜形成工程の直後に行うことが好ましい。PI前駆体溶液塗布後において、塗膜に含まれる溶剤は、前述したように常温では乾燥が遅いため、塗膜はいつまでも濡れたままであり、塗膜は重力の影響を受けて常に下方に垂れる。そこで、PI前駆体の塗布を行った直後に、PI前駆体塗膜と特定溶剤との接触を行い、PI前駆体塗膜を固形化することで、垂れを防止することができる。
PI前駆体塗膜と特定溶剤との接触方法としては、PI前駆体塗膜を特定溶剤に浸漬する方法が好適であるが、その他、PI前駆体塗膜に、特定溶剤を流下させたり、吹き付けてもよい。PI前駆体の塗布方法が遠心成形法の場合、円筒状芯体の回転を止めて特定溶剤に浸してもよいが、円筒状芯体を回転させたまま、内面のPI前駆体の塗膜に特定溶剤を吹きかけてもよい。
PI前駆体を析出させる際、PI前駆体塗膜を特定溶剤に接触させる時間により、PI前駆体塗膜からの非プロトン系極性溶剤の溶出量が変化する。塗膜から非プロトン系極性溶剤が完全になくなると、析出して固形化されたPI前駆体皮膜はもろくなってしまう場合があるので、非プロトン系極性溶剤は5〜50質量%程度、残留しているのが好ましい。そのための特定溶剤とのPI前駆体塗膜の接触時間は、PI前駆体塗膜の膜厚にもよるが、10秒から10分程度が好ましい。PI前駆体塗膜の膜厚が厚いほど、含まれる溶剤が多くなるので、接触時間は長くすることが好ましい。
PI前駆体塗膜と接触させる特定溶剤としては、PI前駆体が不溶であり、かつ、非プロトン系極性溶剤を溶解するものが用いられる。具体的には、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール等)、炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等)、ケトン類(例えばアセトン、ブタノン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル等)を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、混合して用いてもよいが、特に、水、または、水を含む混合物が扱いが簡便で好ましい。
このようなPI前駆体皮膜形成工程において、PI前駆体塗膜と特定溶剤との接触させる処理を行った場合、形成されたPI前駆体皮膜中に浸透した特定溶剤と、残留する非プロトン系極性溶剤を除去する目的で、乾燥を行う。乾燥条件は、50〜120℃の温度で10〜60分間、行うのが好ましい。特定溶剤と非プロトン系極性溶剤とでは、非プロトン系極性溶剤の方が蒸発しにくいので、PI前駆体皮膜中には非プロトン系極性溶剤が残留した状態が形成される。この状態になることにより、析出したPI前駆体が再び溶解状態になり、透明化される。
その後、PI前駆体皮膜は、加熱乾燥させてから、加熱反応させてPI樹脂皮膜を形成するという、PI樹脂皮膜形成工程に供されることになる。
−PI樹脂皮膜剥離工程(樹脂皮膜剥離工程)−
本工程では、樹脂皮膜としてPI樹脂皮膜が円筒状芯体から剥離されるため、本発明における樹脂皮膜剥離工程がPI樹脂皮膜剥離工程となる。
前記加熱反応後、形成されたPI樹脂皮膜を円筒状芯体から剥離する本工程を経ることで、PI樹脂製の無端ベルトが得られる。剥離の方法としては、円筒状芯体とPI樹脂皮膜との隙間に加圧エアを注入して、隙間を拡大する方法などが有効である。
抜き取られた無端ベルトは、その両端は膜厚の均一性が劣っていたり、皮膜の破片が付着していたりするが、その部分は不要箇所部分として切断される。該不要箇所部分は、前記のように端部から50〜100mmの範囲であることが好ましい。
端部の不要箇所部分が切断されてPI樹脂製無端ベルトが得られるが、必要に応じて、穴あけ(パンチング)加工、リブ付け加工、等が施されることがある。
上記無端ベルトを、転写ベルトや接触帯電ベルトとして使用する場合には、樹脂材料の中に必要に応じて導電性物質を分散させる。導電性物質としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属または合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO2−In23複合酸化物等の導電性金属酸化物、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー等が挙げられる。
なお、無端ベルトを転写ベルトとして使用する場合、その厚さとしては、50〜100μmの範囲であることが好ましい。
また、無端ベルトを定着体として使用する場合には、表面に付着するトナーの剥離性の向上のため、ベルト表面に非粘着性の樹脂皮膜を形成することが有効である。その非粘着性の樹脂皮膜の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂が好ましい。また、非粘着性の樹脂皮膜には、耐久性や静電オフセットの向上のためにカーボン粉末が分散されていてもよい。
これらフッ素系樹脂皮膜を形成するには、その水分散液を無端ベルトの表面に塗布して焼き付け処理する方法が好ましい。また、フッ素系樹脂皮膜の密着性が不足する場合には、必要に応じて、ベルト表面にプライマー層をあらかじめ塗布形成する方法がある。プライマー層の材料としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド及びこれらの誘導体等が挙げられ、更にフッ素系樹脂から選ばれる少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
このように、ベルト表面にプライマー層、及びフッ素系樹脂皮膜を形成するには、加熱硬化してポリイミド樹脂皮膜(ベルト)を円筒状芯体の表面に形成してから、これらを塗布してもよいが、PI前駆体溶液を塗布して溶剤を乾燥させてから、または、特定溶剤に接触させた後、プライマー層、及びフッ素系樹脂分散液を塗布し、その後に加熱してイミド転化完結反応とフッ素系樹脂皮膜の焼成処理を同時に行ってもよい。この場合、プライマー層がなくてもフッ素系樹脂皮膜の密着性が強固になることもある。
無端ベルトを定着体として使用する場合、その厚さとしては25〜500μmの範囲であることが好ましい。必要に応じて設けられるプライマー層の厚さは0.5〜10μmの範囲が好ましい。また、フッ素系樹脂皮膜の厚さは4〜40μmの範囲が好ましい。
なお、プライマー層とフッ素系樹脂皮膜は、ある程度の柔軟性を有しており、膨張や収縮はポリイミド樹脂皮膜に追従することができるので、積層体としての熱膨張率は、ポリイミド樹脂だけの値と同じと見なすことができる。
以上、本発明により熱硬化性の樹脂皮膜形成を行った無端ベルトの製造について説明したが、本発明は、熱可塑性の樹脂皮膜形成による無端ベルトの製造にも適用可能である。
これは、従来、金属製の芯体上に熱可塑性樹脂の溶液を塗布して熱可塑性樹脂皮膜を形成しても、該皮膜を金属製芯体から抜き取ることが困難であったのに対し、本発明では、基体上に設けた耐熱性樹脂層の上に熱可塑性樹脂皮膜を形成するので、前述の耐熱性樹脂層としての樹脂ベルトをまず基体から抜き取った後、耐熱性樹脂層と熱可塑性樹脂皮膜を分離して、熱可塑性樹脂からなる無端ベルトを得ることができるためである。耐熱性樹脂ベルトからの熱可塑性樹脂皮膜の分離は、両者をくねらせたりして変形させれば、容易にできる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、各実施例は、本発明を制限するものではない。
<実施例1>
(円筒状芯体の作製)
BPDAと4,4'−ジアミノジフェニルエーテルとをN,N−ジメチルアセトアミド中で等モル反応させ、PI前駆体溶液A(22質量%濃度)を調製した。該PI前駆体溶液Aの粘度は35Pa・sであった。
外径366mm、厚さ10mm、長さ1100mmのアルミニウム製円筒状基体(表面算術平均粗さRa:0.35μm)表面に、リングフロート法により前記PI前駆体溶液Aを塗布し、120℃で30分間乾燥し、160μm厚のPI前駆体塗膜を形成した。この塗膜における溶剤含有量は約50質量%、未反応の成分は約80モル%であった。
この塗膜表面に、シリコーン系離型剤(商品名:セパコート、信越化学社製)をスプレーにて均一に塗布し(塗布量:約0.3mg/m2)、その後300℃で60分間加熱して、PI前駆体のイミド化とシリコーン系離型剤の焼き付け処理とを同時に行い、図1に示すような円筒状芯体を作製した。この円筒状芯体におけるPI樹脂層(耐熱性樹脂層2)の厚さは80μmであり、離型剤層3の厚さは測定できないほど薄いものであるが、計算上は0.05μmである。
上記円筒状芯体について、前述の方法により、表面の算術平均粗さRaを測定したところ0.3μmであり、表面の水接触角は110度であった。
これを、下記無端ベルトの作製用円筒状芯体として使用した。
(塗料の作製)
BPDAとPDAとをN,N−ジメチルアセトアミド中で等モル反応させ、22質量%濃度のPI前駆体溶液Bを調製した。この前駆体溶液Bに、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を固形分で23質量%となるように混合し、次いでジェットミルにより分散した。更に、塗膜にはじきを生じにくくするため、界面活性剤(商品名:LS009、楠本化成製)を、濃度が500ppmになるよう添加し、塗料とした。この塗料の粘度は45Pa・sであった。
(PI樹脂無端ベルトの作製)
まず、上記塗料を用い、図5に示したような環状塗布法により、円筒状芯体上にPI前駆体塗膜を形成した。次に、塗膜が形成された円筒状芯体を水平にして、20rpmで回転させながら、室温で5分間の乾燥後、80℃で20分間、100℃で1時間、加熱乾燥させた。これにより、厚さ約150μmのPI前駆体塗膜を得た。次いで、芯体を垂直にし、加熱用の台に載せ、加熱装置に入れて200℃で30分、300℃で30分加熱反応させ、長さ900mmのPI樹脂皮膜を形成した。
室温に冷えた後、円筒状芯体と皮膜との隙間に圧力0.5MPaの加圧空気を注入し、PI樹脂皮膜を抜き取った。こうして、膜厚80μmで均一なPI樹脂無端ベルトを得ることができた。
PI樹脂無端ベルトは不要部分を両端から切断し、電子写真用転写ベルトとした。
以上の無端ベルトの製造を、同一の円筒状芯体を用いて100回以上繰り返し行ったが、樹脂皮膜との離型性が継続して発現され、好適に使用することができた。
なお、100回繰り返し使用後の円筒状芯体表面の水接触角は90度であった。
<実施例2>
実施例1の円筒状芯体の作製において、PI前駆体溶液Aの代わりにPAI樹脂溶液(商品名:バイロマックス、東洋紡製、濃度:24質量%)を塗布して樹脂塗膜を形成し、PAI樹脂とシリコーン系離型剤との焼き付け処理を250℃で60分間に変更した以外は、同様にして円筒状芯体を作製した。
上記円筒状芯体におけるPAI樹脂層(耐熱性樹脂層)の厚さは80μmであり、離型剤層の厚さは測定できないほど薄いものであるが、計算上は0.05μmである。
また、この円筒状芯体について、前述の方法により、表面の算術平均粗さRaを測定したところ0.3μmであり、表面の水接触角は110度であった。
この円筒状芯体を用いて、実施例1と同様にして無端ベルトを作製したところ、100回以上の繰り返し使用でも離型作用が継続して発現され、好適に使用することができた。
また、100回繰り返し使用後の円筒状芯体表面の水接触角は90度であった。
<実施例3>
実施例1で100回程度使用した円筒状芯体について、軟質ポリエチレンシートにより耐熱性樹脂層を剥離したところ、樹脂層は基体上に残ることなくきれいに剥がすことができた。この剥離後の基体を用いて、実施例1の円筒状芯体の作製と同様にして離型層を有する耐熱性樹脂層を設け、円筒状芯体を再生した。
この再生した円筒状芯体の表面特性は、実施例1で作製した円筒状芯体と同一であり、無端ベルトの作製に使用した場合にも、同様の離型性の安定性を示した。
<比較例1>
実施例1の円筒状基体の作製において、円筒状基体表面にポリイミド前駆体溶液を塗布して120℃30分で乾燥した後、離型剤を塗布せずに300℃で60分間加熱し、厚さ80μmのポリイミド樹脂皮膜を有する円筒状芯体を得た。
上記樹脂皮膜表面に、実施例1と同様にして離型剤をスプレー塗布し、300℃で60分間加熱した。この円筒状芯体について、前述の方法により、表面の算術平均粗さRaを測定したところ0.3μmであり、表面の水接触角は70度であった。
次に、円筒状芯体を用いて、実施例1と同様にして無端ベルトを作製したところ、1回目の作製で樹脂皮膜を抜き取ることができなかった。このとき、無理に樹脂皮膜を剥がして、その部分の円筒状芯体表面の水接触角を測定したところ、70度であった。
<参考例>
使用済みの外径366mm、厚さ10mm、長さ1100mmのアルミニウム製の円筒状芯体を用意し、この芯体表面を切削加工にて2mm切削し、外径を362mmにしたあと、板厚が3mmで、大きさが1100mm×1147mmの長方形のアルミ板を巻きつけた。次いで、巻きつけたアルミ板のつなぎ目をアーク溶接により溶接し、この溶接部をやすりにて部分研磨した。
最後に、切削仕上げ加工によりこの芯体を厚さ1mm切削し、外径が366mm、表面の算術平均粗さRaが0.35μmの円筒状芯体として再生した。
この円筒状芯体を用いて、実施例1と同様にして無端ベルトを作製したところ、繰り返し使用が可能であり、得られた無端ベルトは電子写真用転写ベルトとして好適に使用することができた。
本発明の円筒状芯体の構成断面の一例を示す模式図である。 円筒状芯体の再生途中の一例を示す模式断面図である。 円筒状芯体の再生途中の他の一例を示す模式断面図である。 本発明に用いる塗布装置の一例を示す概略構成図である。 本発明に用いる塗布装置の他の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
1,11 基体
2 耐熱性樹脂層
3 離型剤層
12 金属平板
13 溶接部
20 マンドレル
22 ポリイミド前駆体溶液(樹脂溶液)
23 塗布槽
24 ポリイミド前駆体塗膜(樹脂皮膜)
25 環状体
26 環状体の孔、
27 環状塗布槽
28 環状シール材
29、29’ 中間体

Claims (2)

  1. 樹脂溶液を円筒状芯体表面に塗布し、樹脂塗膜を形成する樹脂塗膜形成工程と、該樹脂塗膜を加熱乾燥及び/または加熱反応させて樹脂皮膜を形成する樹脂皮膜形成工程と、該樹脂皮膜を前記円筒状芯体から剥離する樹脂皮膜剥離工程と、を含む無端ベルトの製造方法であって、
    前記円筒状芯体として、金属製基体の表面に、耐熱性樹脂溶液を塗布して耐熱性樹脂塗膜を形成し、該塗膜が未乾燥及び/または未反応の状態でその表面に離型剤を塗布して離型剤塗膜を形成した後、加熱乾燥処理して、離型剤層を有する耐熱性樹脂層を設けてなる円筒状芯体を用いたことを特徴とする無端ベルトの製造方法。
  2. 金属製基体の表面に耐熱性樹脂層を設けた円筒状芯体から、使用により不適当となった前記耐熱性樹脂層を剥がす剥離工程と、剥離後の基体表面に再度耐熱性樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、を有する円筒状芯体の再生方法であって、
    前記樹脂層形成工程が、耐熱性樹脂溶液を塗布して耐熱性樹脂塗膜を形成し、該塗膜が未乾燥及び/または未反応の状態でその表面に離型剤を塗布して離型剤塗膜を形成した後、加熱乾燥処理して、離型剤層を有する耐熱性樹脂層を形成する工程であることを特徴とする円筒状芯体の再生方法。
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