JP2005215238A - ベルト管状体、ベルト管状体の製造方法、複層ポリイミド樹脂組成物、定着装置および画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 管状の耐熱性樹脂層と、耐熱性樹脂層の外表面に形成された離型層とを有するベルト管状体であり、耐熱性樹脂層と離型層とは、耐熱性樹脂層のイミド化率が20〜70%の状態で離型層が塗布された後、焼成されて形成されている。
【選択図】 図1
Description
このような無端ベルトに関する技術の一例として、高速通紙での耐久性の向上と、耐磨耗性と離型性の向上を図るべく、引張弾性率が6000N/mm2以上のポリイミドベルトで無端ベルトを構成するとともに、表面には融解熱量28mJ/mg以下のフッ素樹脂からなる離型層を設ける技術が存在する(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、無端ベルトのベルトウォークが規制される際においては、無端ベルトの端部が回動しながら規制部材に突き当たるために、無端ベルトの両端部で折れや挫屈、亀裂等の破損が生じ易いという問題があった。かかる無端ベルトの両端部における折れや挫屈、亀裂等の破損は、無端ベルトの円滑な回動を妨げて紙しわや画像不良を引き起こすばかりでなく、最終的に無端ベルト自体の破断を生じさせる可能性があった。
なお、特許文献2に記載された技術のように、ポリイミドベルトの引張弾性率を制御するだけでは、耐久性の向上を図ることはできても、無端ベルトの両端部における折れや挫屈、亀裂等の破損を防止するには充分ではない。
また他の目的は、画像形成装置に用いた場合に、長期に亘り紙しわや画像不良等の発生を抑えて高品質な画像を形成することにある。
ここで、かかるベルト管状体は、120℃環境下での引張破断強度が200MPa以上であることを特徴とすることもできる。この場合に、さらに、120℃環境下での引張破断伸び率が25%以下であることを特徴とすることもできる。
また、耐熱性樹脂層は、ポリイミドからなる構成とすることもできる。さらに、離型層は、フッ素樹脂からなる構成とすることもできる。
ここで、乾燥工程では、熱イミド反応によりイミド化率を制御することができる。その際、耐熱性樹脂溶解液は、熱反応促進溶剤が添加されたことを特徴とすることもできる。また、乾燥工程では、化学イミド反応によりイミド化率を制御することができる。その際、耐熱性樹脂溶解液は、三級アミンが添加されたことを特徴とすることもできる。さらに、耐熱性樹脂溶解液には、脱水剤が添加されてもよい。
ここで、エンドレスベルトの内側に配置され、エンドレスベルトを回動部材に圧接させて回動部材とエンドレスベルトとの間に記録材が通過するニップ部を形成する圧力部材をさらに備えた構成とすることができる。また、エンドレスベルトは、120℃環境下での引張破断強度が200MPa以上であることを特徴とすることができる。その際、エンドレスベルトは、120℃環境下での引張破断伸び率が25%以下であることを特徴とすることもできる。また、エンドレスベルトは、耐熱性樹脂層がポリイミドで形成され、離型層がフッ素樹脂で形成された構成とすることができる。
さらに、回動部材は、発熱源を有する定着ロールである構成や、回動部材は加圧ロールであり、エンドレスベルトは発熱源を有する定着ベルトである構成とすることができる。
[実施の形態1]
図1は本実施の形態が適用される画像形成装置を示した概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1K、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー画像を記録材(記録紙)である用紙Pに一括転写(二次転写)させる二次転写部20、二次転写された画像を用紙P上に定着させる定着装置60を備えている。また、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
二次転写部20は、中間転写ベルト15のトナー像担持面側に配置される二次転写ロール22と、バックアップロール25とによって構成される。このバックアップロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が当接配置されている。そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んでバックアップロール25に圧接配置され、さらに二次転写ロール22は接地されてバックアップロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙P上にトナー像を二次転写する。
一方、用紙Pへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回動に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニングバックアップロール34および中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
定着ロール61の内部には、発熱源としてのハロゲンランプ66が配設されている。一方、定着ロール61の表面には温度センサ69が接触して配置されている。画像形成装置の制御部40は、この温度センサ69による温度計測値に基づいてハロゲンランプ66の点灯を制御し、定着ロール61の表面温度が所定の設定温度(例えば、170℃)を維持するように調整している。
エンドレスベルト62は、圧力パッド64とベルト走行ガイド63とによって回動自在に支持されている。そして、ニップ部Nにおいて定着ロール61に対して圧接されて配置されている。
なお、剥離の補助手段として、定着ロール61のニップ部Nの下流側に、剥離部材70を配設することも可能である。剥離部材70は、剥離バッフル71が定着ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール61と近接する状態でホルダ72によって保持されている。
耐熱性弾性体層612としては、耐熱性の高い弾性体であればどのような材料を用いることも可能である。特に、ゴム硬度が25〜40°(JIS−A)程度のゴム、エラストマ等の弾性体を用いるのが好ましく、具体的には、シリコーンゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。
剥離ニップ部材64bは、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の耐熱性を有する樹脂、または鉄、アルミニウム、SUS等の金属で形成されている。剥離ニップ部材64bの形状としては、ニップ部Nにおける外面形状が一定の曲率半径を有する凸曲面状に形成されている。
ベルト走行ガイド63には、定着装置60の長手方向に亘って、潤滑剤塗布部材67が配設されている。潤滑剤塗布部材67は、エンドレスベルト62内周面に対して接触するように配置され、アミン変性シリコーンオイル等の潤滑剤を適量供給する。これにより、エンドレスベルト62と低摩擦シート68との摺動部に潤滑剤を供給し、低摩擦シート68を介したエンドレスベルト62と圧力パッド64との摺動抵抗をさらに低減して、エンドレスベルト62の円滑な回動を図っている。
図3は、エンドレスベルト62が支持された状態を説明する定着装置60の端部の断面図であり、用紙Pの搬送方向下流側から見た図である。
図3に示すように、ホルダ65の両端部にはエッジガイド80が配設されている。エッジガイド80は、ニップ部Nとその近傍に対応する部分に切り欠きが形成された円筒状、すなわち断面がC形状のベルト走行ガイド部801、ベルト走行ガイド部801の外側に設けられ、エンドレスベルト62の内径よりも大きな外径で形成されたフランジ部802、さらにフランジ部802の外側に設けられ、エッジガイド80を定着装置60本体に位置決めして固定するための保持部803で構成されている。
ホルダ65は、両端部がフランジ部802の内側面に固定され支持されている。また、ベルト走行ガイド部801は、ホルダ65の端部の一定領域とオーバーラップするように配置されている。
また、フランジ部802は、ホルダ65の両端部に配置されたフランジ部802の内側面同士の間隔がエンドレスベルト62の幅と略一致するように配置されている。そして、エンドレスベルト62が回動する際には、エンドレスベルト62の端部がフランジ部802の内側面に当接することによって、エンドレスベルト62の幅方向への移動(ベルトウォーク)が規制されている。このように、エンドレスベルト62は、エッジガイド80によって回動方向および幅方向の移動が規制されるように設定されている。
なお、エンドレスベルト62は、ニップ部Nを除いては、接触する部材が潤滑剤塗布部材67とこのエッジガイド80だけであるため、摺擦抵抗を極力小さく構成することができ、熱の損失も小さくすることができる。
エンドレスベルト62の製造方法は、円筒状芯体表面に、耐熱性樹脂溶解液を塗布し、耐熱性樹脂塗膜を形成する工程(「耐熱性樹脂塗膜形成工程(塗布工程)」)と、耐熱性樹脂塗膜を乾燥させる工程(「耐熱性樹脂塗膜乾燥工程(乾燥工程)」)と、乾燥された耐熱性樹脂塗膜に離型層を形成する工程(「離型層形成工程(離型剤塗布工程)」)と、離型層形成工程を経た塗膜を加熱する工程(「耐熱性樹脂皮膜形成工程(焼成工程)」)とを有し、更に、耐熱性樹脂皮膜を円筒状芯体から剥離する工程と、必要に応じて、その他の工程とを有する。以下、本実施の形態のエンドレスベルト62の製造方法を工程毎に分けて詳細に説明する。
耐熱性樹脂塗膜形成工程では、例えば耐熱性樹脂としてポリイミド樹脂を用いる場合には、まず、ポリイミド前駆体を非プロトン系極性溶剤に溶解してポリイミド前駆体溶液を調製する。ポリイミド前駆体としては、従来公知のものを用いることができる。また、非プロトン系極性溶剤としては、NMP(N−メチルピロリドン)、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の従来公知のものを用いることができる。なお、ポリイミド前駆体溶液の濃度、粘度等は、適宜選択して行われ、またポリイミド前駆体溶液には、必要に応じて導電性粒子等の他の材料や添加物等を加えてもよい。
環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法を、図4〜6を参照して説明する。図4は、環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法に用いる装置の一例を示す概略構成図である。ただし、図4〜6では塗布主要部のみを示し、他の装置は省略している。図4に示すように、この浸漬塗布法は、塗布槽103に満たされたポリイミド前駆体溶液102に、円筒状芯体101の外径よりも大きな孔106を設けた環状体105を浮かべ、この孔106を通して円筒状芯体101をポリイミド前駆体溶液102に浸漬し、次いで、引き上げる塗布法である。
環状体105は、ポリイミド前駆体溶液102液面に浮くものであり、その材質は、ポリイミド前駆体溶液102によって侵されないものがよく、例えば、種々の金属、種々のプラスチック等が挙げられる。また、ポリイミド前駆体溶液102液面に浮き易いように、環状体105の構造は、例えば、中空構造であってもよい。
環状体105は、ポリイミド前駆体溶液102の液面を自由に動くことができる。そこで、環状体105は、ポリイミド前駆体溶液102上でわずかの力で動くことができるよう、環状体105をポリイミド前駆体溶液102上に浮遊させる方法の他、環状体105をロールやベアリングで支える方法、環状体105をエア圧で支える方法、等の自由移動可能状態で設置する方法がある。また、環状体105が塗布槽103の中央部に位置するように、環状体105を一時的に固定する固定手段を設けてもよい。このような固定手段として環状体105に足を設ける手段、塗布槽103と環状体105とを固定する手段等がある。ただし、これらの固定手段を用いた場合、後述するように、円筒状芯体101を浸漬した後、引き上げる際に、環状体105が自由に動き得るように、固定手段は取り外し可能に配置される。
環状体105に設けられる孔106の壁面は、浮かべるポリイミド前駆体溶液102の液面に対してほぼ垂直となるように構成してもよい。例えば、図4に示す断面図にある直線状であり、かつその直線がポリイミド前駆体溶液102の液面に垂直であるものでもよいし、他の形態に構成されてもよい。例えば、図6(a)に示すように、ポリイミド前駆体溶液102に浸る下部が広く、上部が狭い、斜めの直線状の壁面107であるもの、または図6(b)に示すように、ポリイミド前駆体溶液102に浸る下部が広く、上部が狭い、曲線状の壁面108であるものが挙げられる。特に、図6(a)または図6(b)に示すように、ポリイミド前駆体溶液102に浸る下部が広い形状が好ましい。ここで、図6は環状体105に設けられる孔106の壁面の形状を示しており、(a)は直線状の壁面107、(b)は曲線状の壁面108を示す概略断面図である。
孔106を通して円筒状芯体101を引き上げる際には、環状体105は自由移動可能状態であり、さらに、環状体105の孔106が円形であり、かつ、円筒状芯体101の外周も円形であるため、円筒状芯体101と環状体105との摩擦抵抗が一定になるように、環状体105は動くことができる。すなわち、円筒状芯体101を引き上げる際、ある位置において、環状体105と円筒状芯体101との間隙が狭まろうとした場合には、狭まろうとした部分では摩擦抵抗が大きくなる。一方、その反対側では摩擦抵抗が小さくなり、一時的に摩擦抵抗が不均一な状態が生じうる。しかしながら、環状体105が自由に動くこと、円筒状芯体101の外周が円形であること、および、環状体105の孔106が円形であることから、そのような摩擦抵抗が不均一な状態から均一な状態になるように、環状体105が動く。そのため、環状体105が円筒状芯体101と接触するようなことはない。
さらに、浸漬塗布法に用いる塗布装置は、円筒状芯体101を保持する円筒状芯体保持手段、並びに、所望により、保持手段を上下方向に移動する第1の移動手段および/またはポリイミド前駆体溶液102を入れる塗布槽103を上下方向に移動する第2の移動手段を有してもよい。それらの保持手段、第1の移動手段および/または第2の移動手段が、移動の際に引き上げ方向と横断する面でフレを有する場合がある。そのような場合であっても、そのフレに追随して、環状体105は動くことができる。
このような、環状体105により膜厚を制御する浸漬塗布法を適用することで、高粘度のポリイミド前駆体溶液を用いることによる、円筒状芯体上端部でのタレは少なくなり、簡易に膜厚を均一にすることができる。
耐熱性樹脂塗膜乾燥工程では、ポリイミド前駆体塗膜中に過度に残留する非プロトン系極性溶剤を調整しながら除去して、ポリイミド前駆体塗膜中におけるイミド化率が20〜70%の範囲となるように乾燥を行う。
この場合、イミド化率を20〜70%の範囲に制御するには、2通りの方法を用いることができる。すなわち、熱イミド反応による制御と、化学イミド反応による制御である。
熱イミド反応による制御は、熱的条件を調整することでイミド化率を制御する方法である。具体的には、ポリイミド前駆体塗膜を乾燥させるオーブンの温度条件を、例えば120〜160℃の温度環境下で30〜90分程度の乾燥時間に設定することにより、イミド化率を20〜70%に制御することができる。なお、乾燥温度は、非プロトン系極性溶剤中の溶存気体が気泡となることを低減させるために、時間内において、段階的に上昇させたり、一定速度で上昇させることもできる。
したがって、三級アミンの添加量、さらには脱水剤の添加量を調整することによって、ポリイミド前駆体塗膜のイミド化率が20〜70%の範囲となるように制御することが可能である。
ここで、図7は、耐熱性樹脂塗膜乾燥工程において調整されたポリイミド前駆体塗膜中のイミド化率と、最終工程(「耐熱性樹脂皮膜形成工程」)を経たポリイミド樹脂皮膜(エンドレスベルト62)の引張破断強度との関係を実験により求めて、その結果を示した図である。図7における引張破断強度とは、実際の定着装置60内の使用環境である温度120℃の状態での引張破断強度である。これは、実際に使用される環境下でのエンドレスベルト62の引張強度が破損等の発生要因として重要であることに基づくものである。
図7から理解できるように、耐熱性樹脂塗膜乾燥工程においてイミド化率が20〜70%の範囲のエンドレスベルト62では、120℃環境下での引張破断強度を200MPa(JIS−K7113、以下同様)以上に設定することができる。この120℃環境下での引張破断強度が200MPa以上である場合には、後段で説明する実施例と比較例とにおける評価結果に基づき、エンドレスベルト62の端部での折れや挫屈、亀裂等の破損を抑制するために充分なレベルであるとの知見が得られている(図8参照)。
加えて、ポリイミド前駆体塗膜中のイミド化率が20%より小さい場合には、ポリイミド前駆体塗膜中のNMP量が多いために、NMPの揮発により、離型層形成工程で塗布される離型層表面にボイド(空乏)が発生するという現象も生じる。その観点からも、イミド化率は20%以上に設定する必要がある。
さらには、耐熱性樹脂塗膜乾燥工程でのポリイミド前駆体塗膜中のイミド化率を20〜70%とすることで、非プロトン系極性溶剤からの揮発ガスをポリイミド前駆体塗膜中からスムーズに揮発させることが可能となるので、エンドレスベルト62の寸法精度を向上させることもできる。
具体的には、イミド化率を求めようとするサンプルの波数1772cm−1付近のピーク吸光度がX、波数1520cm−1付近のピーク吸光度がYである場合、完全にイミド化させたサンプルの波数1772cm−1付近のピーク吸光度がa、波数1520cm−1付近のピーク吸光度がbであるとして、次式で算出することができる。
イミド化率(%)=(X/Y)/(a/b)×100
離型層形成工程では、耐熱性樹脂塗膜乾燥工程において、イミド化率が20〜70%の範囲に制御されたポリイミド前駆体塗膜に対し、例えばフッ素樹脂のような離型性の樹脂を塗布し、離型層を形成する。
ここで、フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)、ポリエチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等が挙げられ、特に耐熱性、機械特性等の観点から、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロメチルビニルエーテル共重合体(MFA)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロエチルビニルエーテル共重合体(EFA)が好適に用いられる。
また、離型層であるフッ素系樹脂層には、耐摩耗性や静電オフセットの向上のためにフィラーを添加してもよい。かかるフィラーとしては、無機物からなるものが好ましく、特に具体的には、硫酸バリウム、合成マイカ、グラファイト、カーボンブラック等のうち、少なくとも1種類以上が分散されていることが好ましい。
耐熱性樹脂皮膜形成工程では、離型層形成工程の後、焼成炉内においてポリイミド前駆体塗膜が形成されたままの円筒状芯体101を加熱することでポリイミド前駆体塗膜を焼成し、ポリイミド樹脂皮膜を形成する。ここで、耐熱性樹脂皮膜形成工程における焼成温度条件は、毎分2℃の速度で380℃まで加熱し、380℃の状態で20分間の焼成を行なった。
このようにして製造されたエンドレスベルト62は、強度が高い複層ポリイミド樹脂組成物により構成されているために、エッジガイド80のフランジ部802によってエンドレスベルト62の幅方向への移動(ベルトウォーク)が規制される際において、エンドレスベルト62の端部がフランジ部802に突き当たっても、エンドレスベルト62の端部に折れや挫屈、亀裂等の破損が生じるのを抑制することができる。それによって、エンドレスベルト62はベルトウォークを生じることなく安定的に回動することが可能となるので、紙しわや画像ずれ等の画像不良の発生を抑えることができるとともに、エンドレスベルト62自体の破損をも防ぐことができ、長期に亘ってエンドレスベルト62の性能を維持することができる。特に、エンドレスベルト62の外径寸法も精度良く形成できるので、ベルトウォークの発生が起こり難く、エンドレスベルト62の端部のフランジ部802への突き当たりも弱くすることができ、折れや挫屈、亀裂等の破損の抑制効果をさらに向上させることができる。
(実施例1)
アルミニウムからなる金属基体上に、ポリイミドワニス(商品名:Uワニス/宇部興産(株)製)をディップコーティングしてポリイミド前駆体塗膜を形成した。その際、焼成後の厚みが80μmとなるように塗布槽103(図4参照)からの引き上げ速度を調整した。そして、熱風オーブン内における乾燥(一時焼成)条件として、120℃の温度で60分の乾燥時間を設定した。この場合のポリイミド前駆体塗膜のイミド化率は、40%であった。
その後に、乾燥されたポリイミドワニスの表面上にフッ素樹脂ディスパージョン(三井デュポンフロロケミカル社製:710CL)を厚さ30μmとなるようにディップコーティングし、熱風オーブンにおいて毎分2℃の速度で380℃まで加熱し、380℃の状態で20分間の焼成を行なった。このようにして、ポリイミド樹脂製無端ベルトを得た。
この場合のポリイミド樹脂製無端ベルトの外径寸法をレーザ外径測定機によって測定したところ、外径値のバラツキ幅は55μm以下であった。
その際に、このエンドレスベルト62に関して120℃のオーブン内において引張強度の測定を行なった結果、引張破断強度は320MPa、その際の引張破断伸び率は25%以下であった。
本実施例では、熱風オーブン内における乾燥条件として、150℃の温度で60分の乾燥時間を設定した。この場合のポリイミド前駆体塗膜のイミド化率は、55%であった。なお、それ以外の条件は、実施例1と同様である。
このようにして得られたポリイミド樹脂製無端ベルトの外径寸法は、レーザ外径測定機による測定によって、外径値のバラツキ幅は65μm以下であることが確認された。
さらに、実施例1と同様のランニングテストでは、10万枚程度のランニング後までにおいて、ベルト端部の破損、さらには紙しわや画像不良のいずれも発生することはなかった。
また、本実施例でのエンドレスベルト62に関して120℃のオーブン内において引張強度の測定を行なった結果、引張破断強度は280MPa、その際の引張破断伸び率は25%以下であった。
本実施例では、熱風オーブン内における乾燥条件として、160℃の温度で60分の乾燥時間を設定した。この場合のポリイミド前駆体塗膜のイミド化率は、65%であった。なお、それ以外の条件は、実施例1と同様である。
このようにして得られたポリイミド樹脂製無端ベルトの外径寸法は、レーザ外径測定機による測定によって、外径値のバラツキ幅は77μm以下であることが確認された。
さらに、実施例1と同様のランニングテストでは、10万枚程度のランニング後までにおいて、ベルト端部の破損、さらには紙しわや画像不良のいずれも発生することはなかった。
また、本実施例でのエンドレスベルト62に関して120℃のオーブン内において引張強度の測定を行なった結果、引張破断強度は230MPa、その際の引張破断伸び率は25%以下であった。
本比較例では、熱風オーブン内における乾燥条件として、200℃の温度で60分の乾燥時間を設定した。この場合のポリイミド前駆体塗膜のイミド化率は、75%であった。なお、それ以外の条件は、実施例1と同様である。
このようにして得られたポリイミド樹脂製無端ベルトの外径寸法は、レーザ外径測定機による測定では、外径値のバラツキ幅は130μm程度と大きなものとなった。
さらに、実施例1と同様のランニングテストを実施した際に、ランニングの5万枚程度の経過時点において、ベルト端部の破損が発生し、さらにベルト走行不良および紙しわが生じた。
また、本比較例でのエンドレスベルト62に関して、120℃のオーブン内において引張強度の測定を行なった結果、引張破断強度は130MPaと低いレベルであった。
本比較例では、熱風オーブン内における乾燥条件として、90℃の温度で60分の乾燥時間を設定した。この場合のポリイミド前駆体塗膜のイミド化率は、18%であった。なお、それ以外の条件は、実施例1と同様である。
このようにして得られたポリイミド樹脂製無端ベルトでは、最終焼成の際にポリイミド前駆体塗膜に残存するNMP(N-メチルピロリドン)が多いために、離型層表面にボイド(空乏)が発生してしまった。それによって、このポリイミド樹脂製無端ベルトをエンドレスベルト62として組み込んだ定着装置60を用いた場合には、画像評価において、初期からプリント出力とは関係の無い画像欠陥が認められた。そのため、ランニングテストを中断し、ベルト端部の破損や紙しわの発生等については確認していない。
なお、本比較例でのエンドレスベルト62に関して、120℃のオーブン内において引張強度の測定を行なった結果、引張破断強度は160MPaと低いレベルであった。
かかる本実施の形態のエンドレスベルト62での効果は、比較例との対比によって明確である。
実施の形態1では、加熱手段として発熱源を有する定着ロール61を用い、加圧手段として圧力パッド64が押圧されたエンドレスベルト62を用いた定着装置60が搭載された画像形成装置について説明した。実施の形態2では、図1に示した画像形成装置に搭載する定着装置であって、加熱手段として発熱源が押圧された定着ベルトを用い、加圧手段として加圧ロールを用いた定着装置について説明する。尚、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
セラミックヒータ82は、加圧ロール91側の面がほぼフラットに形成されている。そして、定着ベルト92を介して加圧ロール91に押圧される状態で配置され、ニップ部Nを形成している。したがって、セラミックヒータ82は圧力部材としても機能している。ニップ部Nを通過した用紙Pは、ニップ部Nの出口領域(剥離ニップ部)において定着ベルト92の曲率の変化によって定着ベルト92から剥離される。
さらに、定着ベルト92内周面とセラミックヒータ82との間には、定着ベルト92の内周面とセラミックヒータ82との摺動抵抗を小さくするため、摺擦部材の一例としての低摩擦シート68が配設されている。この低摩擦シート68は、セラミックヒータ82と別体に構成しても、セラミックヒータ82と一体的に構成しても、いずれでもよい。
また、剥離の補助手段として、定着ベルト92のニップ部Nの下流側に、剥離部材70を配設することも可能である。剥離部材70は、剥離バッフル71が定着ベルト92の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ベルト92と近接する状態でホルダ72によって保持されている。
Claims (22)
- 管状の耐熱性樹脂層と、
前記耐熱性樹脂層の外表面に形成された離型層とを有し、
前記耐熱性樹脂層と前記離型層とは、当該耐熱性樹脂層のイミド化率が20〜70%の状態で当該離型層が塗布された後、焼成されて形成されたことを特徴とするベルト管状体。 - 120℃環境下での引張破断強度が200MPa以上であることを特徴とする請求項1記載のベルト管状体。
- 120℃環境下での引張破断伸び率が25%以下であることを特徴とする請求項2記載のベルト管状体。
- 前記耐熱性樹脂層は、ポリイミドからなることを特徴とする請求項1記載のベルト管状体。
- 前記離型層は、フッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のベルト管状体。
- 芯体の外側面に耐熱性樹脂溶解液を所定の膜厚で塗布する塗布工程と、
塗布された前記耐熱性樹脂溶解液から溶剤を除去して、イミド化率が20〜70%の耐熱性樹脂層を形成する乾燥工程と、
前記耐熱性樹脂層の表面に所定の膜厚の離型剤を塗布する離型剤塗布工程と、
前記離型剤が塗布された前記耐熱性樹脂層に対し、所定温度による所定時間の焼成を行なう焼成工程と
を含むことを特徴とするベルト管状体の製造方法。 - 前記乾燥工程は、熱イミド反応によりイミド化率を制御することを特徴とする請求項6記載のベルト管状体の製造方法。
- 前記耐熱性樹脂溶解液は、熱反応促進溶剤が添加されたことを特徴とする請求項7記載のベルト管状体の製造方法。
- 前記乾燥工程は、化学イミド反応によりイミド化率を制御することを特徴とする請求項6記載のベルト管状体の製造方法。
- 前記耐熱性樹脂溶解液は、三級アミンが添加されたことを特徴とする請求項9記載のベルト管状体の製造方法。
- 前記耐熱性樹脂溶解液は、さらに脱水剤が添加されたことを特徴とする請求項10記載のベルト管状体の製造方法。
- ポリイミド樹脂と離型剤とが積層された複層ポリイミド樹脂組成物であって、
ポリイミド前駆体のイミド化率が20〜70%の状態で前記離型剤が積層された後、焼成されて形成されたことを特徴とする複層ポリイミド樹脂組成物。 - 前記離型剤は、フッ素樹脂からなることを特徴とする請求項12記載の複層ポリイミド樹脂組成物。
- 記録材に担持されたトナー像を定着する定着装置であって、
回動可能な回動部材と、
前記回動部材に接触しながら移動可能であって、耐熱性樹脂層と当該耐熱性樹脂層の外表面に配設された離型層とを有するエンドレスベルトとを備え、
前記エンドレスベルトは、前記耐熱性樹脂層のイミド化率が20〜70%の状態で当該離型層が塗布された後、焼成されて形成されたことを特徴とする定着装置。 - 前記エンドレスベルトの内側に配置され、当該エンドレスベルトを前記回動部材に圧接させて当該回動部材と当該エンドレスベルトとの間に記録材が通過するニップ部を形成する圧力部材をさらに備えたことを特徴とする請求項14記載の定着装置。
- 前記エンドレスベルトは、120℃環境下での引張破断強度が200MPa以上であることを特徴とする請求項14記載の定着装置。
- 前記エンドレスベルトは、120℃環境下での引張破断伸び率が25%以下であることを特徴とする請求項16記載の定着装置。
- 前記エンドレスベルトは、前記耐熱性樹脂層がポリイミドで形成され、前記離型層がフッ素樹脂で形成されたことを特徴とする請求項14記載の定着装置。
- 前記回動部材は、発熱源を有する定着ロールであることを特徴とする請求項14記載の定着装置。
- 前記回動部材は加圧ロールであり、前記エンドレスベルトは発熱源を有する定着ベルトであることを特徴とする請求項14記載の定着装置。
- トナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、
前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着手段とを含み、
前記定着手段は、
回動可能な回動部材と、
前記回動部材に接触しながら移動可能であり、耐熱性樹脂層と離型層とを有するとともに、当該耐熱性樹脂層のイミド化率が20〜70%の状態で当該離型層が塗布された後、焼成されて形成されたエンドレスベルトと
を備えたことを特徴とする画像形成装置。 - トナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記トナー像形成手段によって形成されたトナー像を一時的に担持する中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトに担持されたトナー像を記録材上に転写する転写手段と、
前記記録材上に転写されたトナー像を当該記録材に定着する定着手段とを含み、
前記中間転写ベルトは、耐熱性樹脂層と離型層とを有するとともに、当該耐熱性樹脂層のイミド化率が20〜70%の状態で当該離型層が塗布された後、焼成されて形成されたことを特徴とする画像形成装置。
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