JP2004284354A - ポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法、及びポリイミド樹脂製無端ベルト - Google Patents

ポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法、及びポリイミド樹脂製無端ベルト Download PDF

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Abstract

【課題】 成膜後の抜き取りが容易で、膜厚が均一であり、幅広い要求特性及びコストに応じることが可能であるポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法、及び該ポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法により製造される、内面が平滑なポリイミド樹脂製無端ベルトの提供である。
【解決手段】 基材無端ベルトを円筒状に変形しないように保持し、該基材無端ベルトの表面にポリイミド前駆体溶液を塗布し、ポリイミド前駆体塗膜を形成するポリイミド前駆体塗膜形成工程と、該ポリイミド前駆体塗膜を加熱乾燥及び加熱反応させてポリイミド樹脂皮膜を形成するポリイミド樹脂皮膜形成工程と、該ポリイミド樹脂皮膜を前記基材無端ベルトから剥離するポリイミド樹脂皮膜剥離工程と、を含むことを特徴とするポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、複写機、プリンター等の電子写真方式を利用した画像形成装置に用い得るポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法、及びポリイミド樹脂製無端ベルトに関する。
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、感光体、帯電手段、転写手段、及び定着手段には、金属やプラスチック、またはゴム製の回転体が使用されているが、機器の小型化あるいは高性能化のために、これら回転体は変形可能なものが好ましい場合があり、それには肉厚が薄いプラスチック製のフィルムからなるベルトが用いられる。この場合、ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、継ぎ目がない無端ベルトが好ましく用いられる。上記無端ベルトの材料としては、強度や寸法安定性、耐熱性等の面でポリイミド樹脂(以下、ポリイミドは適宜「PI」と略す)が特に好ましく用いられる。
ポリイミド樹脂で無端ベルトを作製する方法としては、例えば、円筒体の内面にポリイミド前駆体溶液を塗布し、回転しながら乾燥させる遠心成形法(例えば、特許文献1参照)、円筒体内面にポリイミド前駆体溶液を展開する内面塗布法(例えば、特許文献2参照)が知られている。但し、これらの円筒体の内面に成膜する方法では、ポリイミド前駆体の熱硬化の際に、硬化前の皮膜を円筒体から抜いて外型に載せ換える必要があり、工数がかかるという短所がある。
また、他のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法としては、例えば、円筒状芯体の表面に、浸漬塗布法によってポリイミド前駆体溶液を塗布して乾燥し、加熱反応させた後、ポリイミド樹脂皮膜を円筒状芯体から剥離する方法もある(例えば、特許文献3参照)。この方法では、外型に載せ換える工数が不要であるという利点がある。
但し、ポリイミド樹脂は、加熱反応時の収縮が非常に大きいという性質を有しており、加熱反応後のポリイミド樹脂製無端ベルトは、円筒状芯体から抜き取り難いという問題を有している。
これに対し、PI樹脂製無端ベルトを円筒状芯体から抜き取るために、PI樹脂として、熱膨張率が円筒状芯体の熱膨張率より小さいものを選択し、加熱反応させてPI樹脂皮膜を形成後、冷却した際に、円筒状芯体がPI樹脂皮膜よりも大きく収縮する現象を利用する方法がある。
この場合、円筒状芯体の熱膨張率は大きいほど好ましいが、円筒状芯体として使用可能な金属材料の熱膨張率は、アルミニウムが23×10-6/K、ステンレスであるSUS304が18×10-6/K、銅が17×10-6/K、鉄が12×10-6/K、真鍮が18×10-6/K、ニッケルが15×10-6/K(いずれも常温での値)と、あまり大きい値ではない。
一方、ポリイミド樹脂(皮膜)の熱膨張率は小さいほど好ましい。各種ポリイミド樹脂の熱膨張率は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、適宜「BPDA」と略す)とp−フェニレンジアミン(以下、適宜「PDA」と略す)とからなるポリイミド前駆体を用いたもの(以下、「S型」と称する)で12×10-6/K、BPDAと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとからなるポリイミド前駆体を用いたもの(以下、「A型」と称する)で21×10-6/K、ピロメリット酸二無水物(以下、適宜「PMDA」と略す)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとからなるポリイミド前駆体を用いたもの(以下、「K型」と称する)で20×10-6/K、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとからなるポリイミド前駆体を用いたもので50×10-6/K、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノベンゾフェノンとからなるポリイミド前駆体を用いたもので24×10-6/K、等であり、前記円筒状芯体材料の熱膨張率を鑑みると、最も大きなアルミニウムと比較しても、これより大幅に小さいものは、S型の1種類しかない。
本発明者は、これらの材料を用いて、アルミニウム製円筒状芯体の表面にPI樹脂製無端ベルトを製造する場合における、加熱硬化時の皮膜の膨れを生じさせない方法を見出したが(例えば、特許文献4参照)、この方法では、円筒状芯体の表面を粗面化しているため、得られるPI樹脂製無端ベルトの内面は粗面になってしまう。
このような理由のため、S型以外のものの需要や、内面が平滑なものの需要があった場合に、対応することが困難であった。
また、前記BPDAは価格が他のモノマーに比べて高く、これを用いたPI樹脂製無端ベルトは高価格になる短所がある。一方、BPDAを用いないPI樹脂製無端ベルトは、価格は安いが、熱膨張率がアルミニウムより小さくないことが問題である。PI樹脂無端ベルトを使う上では、要求特性や材料価格などに応じられるよう、材料は幅広く選択できるのが望ましいが、剥離方法で材料が限られるのは好ましくない。
無端ベルトを円筒状芯体から抜き取る他の方法として、円筒状芯体として柔軟性の基材を用い、無端ベルトの成膜後、柔軟性の基材を変形させて抜き取る方法の開示がある(例えば、特許文献5参照)。しかし、この柔軟性の基材は金属製の薄膜であり、これを円筒状に高精度に保持するのははなはだ困難であり、特に真円度を高く保持できない問題がある。したがって、そのような柔軟性の基材を用いて無端ベルトを作製した場合、膜厚のむらが比較的大きいものしか得られなかった。
さらに、離型性樹脂スリーブを円筒状芯体に嵌め、その後は前記方法と同様にしてPI樹脂製無端ベルトを作製する方法が記載されている(例えば、特許文献6参照)。しかし、そこで用いられる離型性樹脂はフッ素樹脂であるため、300℃以上の高温で加熱反応させるPI樹脂の場合には、フッ素樹脂の耐熱性が足りないため、PI樹脂製無端ベルトの製造には不向きであった。
特開昭57−74131号公報 特開昭62−19437号公報 特開昭61−273919号公報 特開2002−160239号公報 特公昭64−1026号公報 特開2002−361658号公報
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。
すなわち、本発明は、成膜後の抜き取りが容易で、膜厚が均一であるポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法の提供を目的する。また、幅広い要求特性及びコストに応じることが可能であるポリイミド樹脂無端ベルトの製造方法の提供を目的とする。さらに、該ポリイミド樹脂無端ベルトの製造方法により製造される、内面が平滑なポリイミド樹脂無端ベルトの提供を目的する。
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち本発明は、
<1> 基材無端ベルトであるポリイミド樹脂無端ベルトまたはポリアミドイミド樹脂無端ベルトを円筒状に保持し、該基材無端ベルトの表面にポリイミド前駆体溶液を塗布し、ポリイミド前駆体塗膜を形成するポリイミド前駆体塗膜形成工程と、
該ポリイミド前駆体塗膜を加熱乾燥及び加熱反応させてポリイミド樹脂皮膜を形成するポリイミド樹脂皮膜形成工程と、
該ポリイミド樹脂皮膜を前記基材無端ベルトから剥離するポリイミド樹脂皮膜剥離工程と、を含むことを特徴とするポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法である。
<2> 円筒状芯体に前記基材無端ベルトを嵌めること、または円筒状芯体の表面に前記基材無端ベルトを皮膜として形成することにより、前記基材無端ベルトを円筒状に変形しないように保持することを特徴とする<1>に記載のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法である。
<3> 前記基材無端ベルトの表面に、離型剤層が形成されることを特徴とする<1>または<2>に記載のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法である。
<4> <1>〜<3>のいずれかに記載のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法により製造されることを特徴とするポリイミド樹脂製無端ベルトである。
<5> 定着ベルトであることを特徴とする<4>に記載のポリイミド樹脂製無端ベルトである。
本発明によれば、円筒状芯体からの剥離が容易であるPI樹脂製無端ベルトの製造方法を提供することができる。また、幅広い要求特性及びコストに応じることが可能なPI樹脂製無端ベルトの製造方法を提供することもできる。
本発明の製造方法により得られるPI樹脂製無端ベルトは、内面が平滑であり、膜厚が均一である。また、PI材料の選択幅が広いので、要求特性やコストに応じられるという効果もあり、電子写真複写機やレーザープリンタ等の画像形成装置における感光体、帯電体、転写体、定着体等に使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法は、ポリイミド前駆体溶液を、円筒状に変形しないように保持された基材無端ベルト表面に塗布し、ポリイミド前駆体塗膜を形成するポリイミド前駆体塗膜形成工程と、該ポリイミド前駆体塗膜を加熱乾燥及び加熱反応させてポリイミド樹脂皮膜を形成するポリイミド樹脂皮膜形成工程と、該ポリイミド樹脂皮膜を前記基材無端ベルトから剥離するポリイミド樹脂皮膜剥離工程とを含む。また、必要に応じて他の工程を有していてもよい。
そして、上記基材無端ベルトとしては、ポリイミド樹脂無端ベルトまたはポリアミドイミド樹脂無端ベルトが用いられる(本発明においては、基材ベルトとして用いる無端ベルトを「基材無端ベルト」とし、本発明により得られる無端ベルトを「ポリイミド樹脂製無端ベルト」とする)。
以下、本発明のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法を工程毎に分けて詳細に説明する。
−PI前駆体塗膜形成工程−
PI前駆体塗膜形成工程では、まず、PI前駆体が非プロトン系極性溶剤に溶解したPI前駆体溶液を調製する。
PI前駆体としては、前記において列記した種々の組み合せからなるものを用いることができる。また、PI前駆体は、2種以上を混合して用いてもよいし、酸またはアミンのモノマーを混合して共重合されたものを用いてもよい。
特に、BPDAとPDAとからなるポリイミド前駆体と、BPDA以外の酸無水物と任意のジアミンからなるポリイミド前駆体と、を混合してなるポリイミド前駆体溶液を用いることが好ましい。かかるポリイミド前駆体を用いることにより、製造されるポリイミド樹脂の熱膨張率を低く保ちつつも、要求物性を変化させることや材料価格を低減させることができる。これは、前記S型ポリイミド樹脂の熱膨張率が、アルミニウム製の円筒状芯体と比較して小さく、その差に余裕があるので、熱膨張率がアルミニウム製の円筒状芯体より小さい範囲で、他のポリイミド前駆体を混合してもよいためである。
BPDAとPDAとからなるポリイミド前駆体と併用し得る他のポリイミド前駆体としては、BPDAと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなるもの、ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとからなるもの、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとからなるもの、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノベンゾフェノンとからなるもの、等の中から適宜選択すればよいが、PMDAと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとからなるものが、混合適性や特性面、材料価格等により好ましく使用される。
BPDAとPDAとからなるポリイミド前駆体と、他の組成からなるポリイミド前駆体の混合比(質量比)は、他の組成からなるポリイミド前駆体が多いほど価格の点で好ましいので、(BPDAとPDAからなるポリイミド前駆体):(他の組成からなるポリイミド前駆体)=5:5〜0:10程度の範囲から、適宜、調整される。この場合、円筒状芯体の外径が大きいほど、その表面に形成されたポリイミド樹脂皮膜との寸法差が大きくなって外れやすくなる傾向があるので、他の組成からなるポリイミド前駆体の混合比を多くすることができる。
なお、本発明においては、ポリイミド樹脂皮膜の円筒状芯体からの剥離を、単に加熱反応後の冷却による円筒状芯体の収縮のみでなく、柔軟性の基材ベルトとの剥離により行うため、従来より前記他の組成からなるポリイミド前駆体の混合比を高くすることができ、他の組成からなるポリイミド前駆体単独でも使用可能である。
また、S型PI樹脂皮膜は、機械的強度がポリイミド樹脂の中では最も強いことが知られており、定着ベルトや転写ベルトとして使用した際には、変形しにくい利点がある。反面、転写ベルトのように、感光体の表面に直に接する部材においては、感光体表面を傷付けたり、磨耗させたりすることもあるので、機械的強度はある程度低い方が好ましい場合がある。このような場合、S型となるポリイミド前駆体と、他の組成からなるポリイミド前駆体とを混合して強度を調整することは有効である。
上記のポリイミド前駆体は、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン系極性溶剤に溶解することで、ポリイミド前駆体溶液として調製される。なお、この調製の際におけるポリイミド前駆体の混合比、濃度、粘度等の選択は、塗布方法等に応じて適宜調整して行われる。
前記のように、本発明では、PI樹脂皮膜を基材ベルトから容易に抜き取ることができるので、熱膨張率を考慮することなく材料を選択でき、要求物性に応じることや、材料価格を低減させることができる。
本発明においては、基材ベルトとして、あらかじめ作製しておいた基材無端ベルトを用いる。基材無端ベルトの材質はとしては、PI樹脂またはポリアミドイミド(以下、適宜「PAI」と略す)樹脂が用いられる。基材無端ベルトは熱変形温度が300℃を超えるため、熱硬化(加熱反応)して作製されるPI樹脂製無端ベルト用の基材として用いた場合にも、熱硬化温度で変形することがないことから、PI樹脂製無端ベルトの膜質に影響を及ぼすことなく、基材ベルトとして繰り返して使用することができる。
基材無端ベルトの材質としてPI樹脂を用いる場合の該PI樹脂としては、前述のような各種前駆体を原材料とするものが使用可能である。また、基材無端ベルトの材質としてPAI樹脂を用いる場合の該PAI樹脂としては、例えば、芳香族トリカルボン酸としてトリメリット酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、ピロメリット酸二無水物等、及び芳香族ジアミンとしてm−フェニルジアミン、p−フェニルジアミン、ビス[4―{3―(4―アミノフェノキシ)ベンゾイル}フェニル]エーテル、4,4′―ジアミノジフェニル等を原料として用いたものが使用可能である。
前記PI樹脂は前記のように非常に高い耐熱性を有するため、基材無端ベルトとして種々のPI樹脂製無端ベルトの製造に用いることができるため好ましい。一方、前記PAI樹脂はPI樹脂よりやや耐熱性に劣るものの、基材無端ベルトとして作製する際に、高温の加熱が不要である点で好ましい。
なお、本発明に用いるPAI樹脂の熱膨張率は、20×10-6〜40×10-6/Kの範囲であることが好ましい。
基材ベルトとして基材無端ベルトを用いる場合、柔軟性の基材無端ベルトを円筒状に保持する必要があり、具体的には円筒状に、変形しないように保持する必要がある。ここで、該円筒状に、変形しないように保持するとは、ベルトの内側を円筒状(円筒の軸方向に垂直な断面を円状)に保ったまま、その形状を外部圧力等に対しても維持することをいう。
基材無端ベルトを円筒状に変形しないように保持できない場合には、前述のように、PI樹脂製無端ベルトを作製しても膜厚の均一性が得られないことがある。
基材無端ベルトを、円筒状に変形しないよう高精度に保持するために、本発明においては以下の方法を採ることができる。
図1に、本発明における基材無端ベルトを円筒状に保持する方法を示す。図1(b)は、基材無端ベルト11を円筒状芯体1に嵌める方法(以後、「ベルト嵌め法」と略す)であり、図1(a)は、円筒状芯体1の表面に、基材無端ベルト10を皮膜として形成する方法(以後、「型ベルト法」と略す)である。
上記ベルト嵌め法の場合、基材無端ベルト11は、特開2002−160239号公報に記載の方法等、既知の方法で作製することができ、その材料としては、皮膜の剛性という点で、前記S型PI樹脂が好ましい。また、この方法では、PI樹脂製無端ベルトの加熱反応後、基材ベルトごと円筒状芯体1から抜き取るため、用いられる材料の熱膨張率Aは円筒状芯体1の熱膨張率Bより小さいことが好ましく、その熱膨張率の差(B−A)は、10×10-6/K以上であることが好ましい。
さらに、基材無端ベルト11は、膜厚が薄いと円筒状芯体1に嵌める際に折れ目が生じやすいので、膜厚が50〜100μmの範囲と比較的厚めのものを用いることが好ましい。
基材無端ベルト11の内径と円筒状芯体1の外径とは、同じであることが最適であるが、それでは基材無端ベルト11を円筒状芯体1に嵌めるのが困難になるので、基材無端ベルト11の内径は、円筒状芯体1の外径より、わずかに(例えば20〜100μm程度)大きいことが好ましい。この場合、基材無端ベルト11を円筒状芯体1に嵌めた後、円筒状芯体1の両端には粘着テープ等を巻き付けて、基材無端ベルト11との隙間を閉じておくのが好ましい。
前記型ベルト法の場合には、まず、円筒状芯体1の表面に、既知の方法で基材無端ベルト10を皮膜として作製する。この基材無端ベルト10は、前記ベルト嵌め法のように、円筒状芯体1に抜き差しするわけではないので、その材料は、熱膨張率が円筒状芯体1のそれと同等に近いことが望ましい。すなわち、円筒状芯体1がアルミニウムの場合、基材ベルト10の材料は、前記A型PI樹脂やK型PI樹脂、またはPAI樹脂等であることが好ましい。また、この場合の基材無端ベルト10の膜厚は、塗布しやすい厚さでよく、20〜100μm程度の範囲が好ましい。
型ベルト法において、円筒状芯体1の表面に、基材無端ベルト10を作製する際、乾燥時、あるいは加熱時に、反応生成水または残留溶剤によって、皮膜に部分的に膨れが生じることがある。その場合、円筒状芯体1の表面を、算術平均粗さRaで0.2〜2μmの範囲程度に粗面化することにより、残留溶剤または水の蒸気は、円筒状芯体1とPI樹脂皮膜のと間にできるわずかな隙間を通って外部に出ることができるようになり、膨れを防止することができる。円筒状芯体表面の粗面化には、ブラスト、切削、サンドペーパーがけ等の方法を用いることができる。
なお、円筒状芯体1の表面が粗面であっても、その表面に形成された基材無端ベルト10の表面は粗面になることはなく、平滑である。
後述するPI樹脂皮膜形成工程において、基材無端ベルト表面に形成されるPI樹脂皮膜は、基材無端ベルト表面に接着するおそれがあるため、両方法ともに、基材無端ベルトの表面には離型性が付与されていることが好ましい。離型性を付与するには、フッ素系樹脂やシリコーン樹脂で基材無端ベルト表面を被覆したり、基材無端ベルト表面に離型剤を塗布する方法等を用いることができる。
円筒状芯体1に皮膜として形成された基材無端ベルト10の表面にPI前駆体溶液を塗布する方法(型ベルト法)、及び円筒状芯体1に嵌められた基材無端ベルト11の表面にPI前駆体溶液を塗布する方法(ベルト嵌め法)としては、円筒状芯体1を基材無端ベルトと共にPI前駆体溶液に浸漬して上昇させる(引き上げる)浸漬塗布法、円筒状芯体1を回転させながら表面にPI前駆体溶液を吐出する流し塗り法、その際にブレードで皮膜をメタリングするブレード塗布法など、公知の方法が採用できる。上記流し塗り法やブレード塗布法では塗布部を水平移動させるので、皮膜はらせん状に形成されるが、PI前駆体溶液は乾燥が遅いために、継ぎ目は自然に平滑化される。
なお、上記「基材無端ベルト表面に塗布する」とは、円筒状芯体1によって円筒状に保持された基材無端ベルト10または11の側面の表面、及び該表面に層を有する場合は、その層の表面に塗布することをいう。また、「円筒状芯体を上昇」とは、塗布時の液面との相対関係であり、「円筒状芯体を停止し、塗布液面を下降」させる場合を含む。
PI前駆体溶液の塗布を前記浸漬塗布法で行う場合、PI前駆体溶液は粘度が非常に高いので、膜厚が所望値より厚くなりすぎることがある。その際は、以下の如き環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法が適用できる。
環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法を、図2、3を参照して説明する。
図2は、この塗布法に用いる塗布装置の一例を示す概略構成図である。ただし、図は塗布主要部のみを示し、他の装置は省略している。
上記環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法は、図2に示すように、塗布槽3に収容されたPI前駆体溶液2に、円筒状芯体1により円筒状に保持された基材無端ベルトの外径よりも大きな円孔6を設けた環状体5を浮かべ、基材無端ベルトを備えた円筒状芯体1を図面における上側から前記円孔6を通してPI前駆体溶液2に浸漬し、次いで円筒状芯体1を引き上げる塗布法である。
環状体5は、PI前駆体溶液液面に浮くように構成されており、その材質としては、PI前駆体溶液2によって侵されないものであればよく、例えば、種々の金属やプラスチック等から選ばれる。また、浮上しやすいように、例えば、中空構造であってもよいし、沈没防止のために、環状体5の外周面または塗布槽3に、環状体5を支える足や腕を設けてもよい。
環状体5は、PI前駆体溶液2の液面を自由に動くことができる必要がある。そこで、PI前駆体溶液2の液面でわずかの力で動くことができるよう、環状体5を溶液面に浮遊させる方法のほか、環状体5をロールやベアリングで支える方法、環状体5をエア圧で支える方法、などの方法で自由移動可能に設置されることが好ましい。
また、環状体5が塗布槽3の中央部に位置するように、環状体5を一時的に固定する固定手段を設けてもよい。このような固定手段としては、環状体5に足を設ける手段、塗布槽3と環状体5とを固定する手段などがある。但し、これらの固定手段を用いた場合、円筒状芯体1を浸漬した後、引き上げる際には、環状体5が自由に動き得るように、上記固定手段は取り外し可能なように配置される。
前記円孔6の内径は、所望の塗布膜厚を鑑みて調整する。所望の塗布膜厚(乾燥膜厚)は、濡れ膜厚とPI前駆体溶液2の不揮発分濃度との積になる。これから、所望の濡れ膜厚が求めらる。また、円孔6の内径と円筒状に保持された基材無端ベルトの外径との差から求められる両者の間隙は、所望の濡れ膜厚の1倍〜2倍の範囲であるのが好ましい。1倍〜2倍の範囲とするのは、PI前駆体溶液2の粘度及び/または表面張力などにより、間隙が濡れ膜厚になるとは限らないからである。このように、所望の乾燥膜厚及び所望の濡れ膜厚から、所望の円孔6の径が定められる。
環状体5に設けられる円孔6の内壁面は、PI前駆体溶液に浸る下部が広く、上部が狭い形状であれば、図2に示すように、傾斜面であるものや、図3の後述する環状塗布法に用いる塗布装置の概略構成図に示すように、組み合わせた傾斜面であってもよい。また、階段状や曲線的な面でもあってもよい。
浸漬塗布を行う際、基材無端ベルト10、11を備えた円筒状芯体1を、円孔6を通してPI前駆体溶液2に浸漬する。その際、基材無端ベルト10、11が環状体5に接触しないようにする。次いで、円孔6の中を通して円筒状芯体1を引き上げる。この際、基材無端ベルト10、11と孔6との間隙により塗膜4の厚さが決定される。引き上げ速度は、0.1〜1.5m/minの範囲程度が好ましい。この塗布方法に好ましいPI前駆体溶液の固形分濃度は10〜40質量%の範囲、粘度は1〜100Pa・sの範囲である。
円筒状芯体1を円孔6を通して引き上げる際、ポリイミド前駆体溶液2の介在により、基材無端ベルト10、11と環状体5との間に摩擦抵抗が生じ、環状体5には上昇力が作用し環状体5は少し持ち上げられる。この時、環状体5は自由移動可能状態でるため、基材無端ベルト10、11と環状体5との摩擦抵抗が周方向で一定になるように、環状体5は動く。即ち、ある位置で環状体5と基材無端ベルト10、11との間隙が狭まろうとした場合、狭まろうとした部分では摩擦抵抗が大きくなる一方、その反対側では摩擦抵抗が小さくなり、一時的に摩擦抵抗が不均一な状態が生じる。しかしながら、環状体5は自由に動きうること、円筒状芯体1の外周が円形であること、及び環状体の円孔6が円形であることから、そのような摩擦抵抗が不均一な状態から均一な状態になるように、環状体5が自動的に動き、環状体5が基材無端ベルト10、11と接触するようなことはない。
また、摩擦抵抗が均一となる位置は、円筒状芯体1の外周の円形と、環状体5の円孔6の円形とがほぼ同心円となる位置である。よって、円筒状芯体1断面の円の中心が、軸方向において許容範囲内でずれている場合であっても、環状体5はそれに追随するように動く。従って、円筒状芯体1によって保持された基材無端ベルト10、11の表面には、一定の濡れ膜厚を有するPI前駆体塗膜4が形成される。
更に、浸漬塗布法に用いる塗布装置は、円筒状芯体1を保持する円筒状芯体保持手段、並びに、所望により、該保持手段を上下方向に移動する第1の移動手段及び/またはPI前駆体溶液を入れる容器を上下方向に移動する第2の移動手段を有してもよい。それらの保持手段、第1の移動手段及び/または第2の移動手段は、移動の際に引き上げ方向と垂直な面でフレを有する場合がある。そのような場合であっても、そのフレに追随して、環状体5は動くことができる。
なお、PI前駆体塗膜形成工程おいて、上記浸漬塗布法を用いるほかにも、図3に示す環状塗布法も適用できる。ここで、図3は、環状塗布法に用いる塗布装置の一例を示す概略構成図である。
図3において、図2に示す塗布装置との違いは、環状塗布槽7の底部に、円筒状芯体1の外径より若干小さい穴を有する環状シール材8が設けられていることである。円筒状芯体1を環状シール材8の中心に挿通させ、環状塗布槽7にPI前駆体溶液2を収容する。これにより、PI前駆体溶液2が漏れないようになっている。円筒状芯体1は、図面における環状塗布槽7の下部から上部に順次つき上げられ、環状シール材8を挿通させることにより、基材無端ベルト表面にPI前駆体塗膜4の形成が行われる。円筒状芯体1の図面における上下には、円筒状芯体1に嵌合可能で外径が円筒状芯体1と同一の円筒状の中間体9、9’を取り付けてもよいし、同形状の複数の円筒状芯体同士を積み重ねてもよい。環状体5の機能は、前述と同様である。
このような環状塗布法では、環状塗布槽7は、図2に示す塗布装置における浸漬塗布槽3よりも小さくできるので、溶液の必要量が少なくて済む利点がある。
このような、環状体5により膜厚を制御する塗布法を適用することで、高粘度のポリイミド前駆体溶液2を用いることによる、円筒状芯体1により保持された基材無端ベルト10、11の上端部での重力による塗膜の垂れは少なくなり、周方向でも軸方向でも膜厚を均一にすることができる。
−PI樹脂皮膜形成工程−
この工程においては、前記PI前駆体塗膜を加熱乾燥及び加熱反応させてPI樹脂皮膜を形成する。なお、本発明において該PI樹脂皮膜とは、PI前駆体塗膜から溶剤を除去し加熱反応させた膜を意味する。
まず、PI樹脂皮膜形成工程において、PI前駆体塗膜中に存在する溶剤を除去する目的で、静置しても塗膜が変形しない程度の加熱乾燥を行う。加熱条件は、90〜170℃の温度範囲で30〜60分間であることが好ましい。その際、温度が高いほど、加熱時間は短くてよい。また、加熱することに加え、風を当てることも有効である。加熱は、一定時間内において段階的に温度を上昇させたり、一定速度で温度を上昇させて行ってもよい。
なお、PI前駆体塗膜から溶剤を除去させすぎると、塗膜はまだベルトとしての強度を保持していないので、割れを生じるおそれがある。そこで、ある程度(具体的にはPI前駆体塗膜中に15〜45質量%)、溶剤を残留させておくのよい。
PI前駆体塗膜を加熱乾燥させてから加熱反応までは、連続的に行えばよいが、途中で一旦、温度を低下させてもよい。ここで、「温度を低下させる」とは、加熱乾燥により高温状態となっているPI前駆体塗膜を、円筒状芯体ごと冷却し、温度を低下させることをいう。低下させる温度は、常温でもよい。温度を低下させることは、溶剤を除去する加熱乾燥装置と塗膜を加熱反応させる加熱反応装置とが異なっている場合に有効である。
その際、PI前駆体塗膜は、温度の低下により収縮する。その収縮率は円筒状芯体の軸方向で0.5〜2%と小さい範囲であるが、この収縮により、PI前駆体塗膜は、円筒状芯体の表面でズレを生じ、円筒状芯体との間により広い隙間が生じる。一度、このような隙間が発生すると、加熱反応の際に、残留溶剤等が抜けやすくなる。
前記加熱乾燥装置と加熱反応装置とが同じである場合、一旦、温度を低下させることは不要である。
なお、本発明においては、基本的にPI前駆体塗膜が円筒状芯体の表面にではなく、平滑な基材無端ベルトの表面に形成されることから、基材無端ベルトとPI前駆体塗膜との間に隙間はなく、PI前駆体塗膜から溶剤が抜け難くなることが懸念されるが、本発明におけるPI樹脂もしくはPAI樹脂からなる基材無端ベルトには、PI前駆体塗膜からの溶剤蒸気が容易に染み込むため、円筒状芯体の表面に直接PI前駆体塗膜を形成した場合のような加熱時の膨れ等の問題は発生しにくい。
PI樹脂皮膜形成工程において、上述の乾燥の後、好ましくは300〜450℃の範囲、より好ましくは350℃前後で、20〜60分間、PI前駆体塗膜を加熱反応させることで、PI樹脂皮膜を形成することができる。加熱反応の際、PI前駆体塗膜中に溶剤が残留していると、皮膜に膨れが生じることがあるため、加熱の最終温度に達する前に、完全に残留溶剤を除去することが好ましく、具体的には、加熱前に、200〜250℃の温度範囲で、10〜30分間加熱乾燥して残留溶剤を除去し、続けて、温度を段階的、または一定速度で徐々に上昇させて加熱し、PI樹脂皮膜を形成することが好ましい。
なお、PI樹脂皮膜形成工程において、加熱乾燥の前に、PI前駆体塗膜を、PI前駆体を溶解せず、かつ、溶剤を溶解し得る特定溶剤に接触させる処理を行い、PI前駆体皮膜を形成する工程を行ってもよい。これにより、PI前駆体塗膜から溶剤が特定溶剤に染み出る。PI前駆体は特定溶剤には不溶なので、PI前駆体は析出し、静置しても塗膜が変形しない程度に固形化され、PI前駆体塗膜が形成される。その結果、前述の乾燥工程が速やかに行われ、乾燥時間を短縮することができる。
PI前駆体塗膜と特定溶剤との接触は、前記PI前駆体塗膜形成工程の直後に行うことが好ましい。PI前駆体溶液塗布後において、塗膜に含まれる溶剤は、前述したように常温では乾燥が遅いため、塗膜はいつまでも濡れたままであり、塗膜は重力の影響を受けて常に下方に垂れる。そこで、PI前駆体の塗布を行った直後に、PI前駆体塗膜と特定溶剤との接触を行い、PI前駆体塗膜を固形化することで、垂れを防止することができる。
PI前駆体塗膜と特定溶剤との接触方法としては、PI前駆体塗膜を特定溶剤に浸漬する方法が好適であるが、その他、PI前駆体塗膜の表面に、特定溶剤を流下させたり、吹き付けたりしてもよい。
PI前駆体を析出させる際、PI前駆体塗膜を特定溶剤に接触させる時間により、PI前駆体塗膜からの溶剤の溶出量が変化する。塗膜から溶剤が完全になくなると、析出して固形化されたPI前駆体皮膜はもろくなってしまう場合があるので、溶剤は塗膜全体の5〜50質量%程度、残留しているのが好ましい。そのための特定溶剤とPI前駆体塗膜との接触時間は、PI前駆体塗膜の膜厚にもよるが、10秒から10分間程度が好ましい。PI前駆体塗膜の膜厚が厚いほど、含まれる溶剤が多くなるので、接触時間は長くすることが好ましい。
PI前駆体塗膜と接触させる特定溶剤としては、PI前駆体が不溶であり、かつ、非プロトン系極性溶剤を溶解するものが用いられる。具体的には、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール等)、炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等)、ケトン類(例えばアセトン、ブタノン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル等)を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、混合して用いてもよいが、特に、水、または、水を含む混合物が扱いが簡便で好ましい。
このようなPI樹脂皮膜形成工程において、PI前駆体塗膜と特定溶剤とを接触させる処理を行った場合、形成されたPI前駆体皮膜中に浸透した特定溶剤と、残留する非プロトン系極性溶剤を除去する目的で、乾燥を行う。乾燥条件は、50〜120℃の温度で10〜60分間行うのが好ましい。特定溶剤と非プロトン系極性溶剤とでは、非プロトン系極性溶剤の方が蒸発しにくいので、PI前駆体塗膜中には非プロトン系極性溶剤が残留した状態が形成される。この状態になることにより、析出したPI前駆体が再び溶解状態になり、透明化される。
その後、PI前駆体塗膜は、加熱乾燥させてから、加熱反応させてPI樹脂皮膜を形成するという、PI樹脂皮膜形成工程に供されることになる。
−PI樹脂皮膜剥離工程−
加熱反応後、円筒状芯体を常温に冷却し、形成されたPI樹脂皮膜を剥離する本工程を経ることで、PI樹脂製無端ベルトを得ることができる。
本発明における前記図1(a)の型ベルト法の場合、円筒状芯体1と基材無端ベルト10とは、冷却後は、形成されたPI樹脂製無端ベルトよりも収縮するので、PI樹脂製無端ベルトは基材無端ベルト10から抜き取ることができる。その際、基材無端ベルト10は、円筒状芯体1と熱膨張率が同等か大きいものを選んであれば抜けることはなく、再びPI樹脂製無端ベルトの製造に供される。
本発明における前記図1(b)のベルト嵌め法の場合、基材無端ベルト11は、円筒状芯体1より熱膨張率が小さいものを選んであるので、冷却後は円筒状芯体1の方が収縮し、基材無端ベルト11を円筒状芯体1から抜き取ることができる。次いで、図4に示すように、基材無端ベルト11をたわませて、形成されているPI樹脂製無端ベルト12を剥離して抜き取る。基材無端ベルト11は再び円筒状芯体1に嵌めて、PI樹脂製無端ベルトの製造に供される。
前記型ベルト法、ベルト嵌め法のいずれの方法でPI樹脂製無端ベルトを作製した場合であっても、得られるPI樹脂製無端ベルトは、平滑な基材無端ベルト表面に形成されたものであるため、その内面は、表面が粗面化された円筒状芯体を用いて作製された無端ベルトに比べ平滑にすることができる。
具体的には、得られたPI樹脂製無端ベルトの内面の算術平均粗さRaを、およそ0.01〜0.3μmの範囲と平滑にすることができる。なお、上記算術表面粗さRaの測定は、表面粗さ計サーフコム1400A(東京精密社製)を用いて、JIS B0601−1994に準拠し、評価長さLnを4mm、基準長さLを0.8mm、カットオフ値を0.8mmとした測定条件で実施されたものである。
前記いずれの方法に拠っても、抜き取られたPI樹脂製無端ベルトは、その両端は膜厚の均一性が劣っていたり、皮膜の破片が付着していたりするので、その部分は不要部分として切断する。さらに必要に応じて、穴あけ(パンチング)加工、リブ付け加工、等が施されることがある。
このようにして得られるポリイミド樹脂製無端ベルトは、電子写真複写機やレーザープリンタ等の画像形成装置における感光体、帯電体、転写体、定着体等の無端ベルト等に利用することができる。
上記PI樹脂製無端ベルトを、転写ベルトや接触帯電ベルトとして使用する場合には、樹脂材料の中に必要に応じて導電性物質を分散させる。導電性物質としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属または合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO2−In23複合酸化物等の導電性金属酸化物、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー等が挙げられる。そしてその表面抵抗率は1×1010〜1×1014Ω/□の範囲に調整されることが好ましい。上記表面抵抗率は、円形電極(例えば、三菱油化(株)製ハイレスターIPの「HRプローブ」)を用い、JIS K6991に従って測定することができる。
なお、PI樹脂製無端ベルトを転写ベルトとして使用する場合、その厚さとしては50〜100μmの範囲であることが好ましい。
また、PI樹脂製無端ベルトを定着体として使用する場合には、表面に付着するトナーの剥離性の向上のため、ベルト表面に非粘着性の樹脂層を形成することが有効である。該非粘着性の樹脂層の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂が好ましい。また、非粘着性の樹脂層には、耐久性や静電オフセットの向上のためにカーボン粉末が分散されていてもよい。
これらフッ素系樹脂を用いて非粘着性の樹脂層を形成するには、前記フッ素系樹脂水分散液をPI樹脂皮膜表面に塗布して焼き付け処理する方法が好ましい。また、フッ素系樹脂層の密着性が不足する場合には、必要に応じて、PI樹脂皮膜表面にプライマー層をあらかじめ塗布により形成する方法がある。該プライマー層の材料としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド及びこれらの誘導体等が挙げられ、更にフッ素系樹脂から選ばれる少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
このように、PI樹脂皮膜表面にプライマー層、及びフッ素系樹脂層を形成するには、前記PI樹脂皮膜形成工程によりPI樹脂皮膜(ベルト)を円筒状芯体の表面に形成してから、この表面にプライマー層形成液及び前記フッ素系樹脂の水分散液を塗布してもよいが、PI前駆体溶液を円筒状芯体表面に塗布して溶剤を乾燥させた後、または、特定溶剤に接触させた後、プライマー層形成液、及び前記フッ素系樹脂の水分散液を塗布し、その後に加熱してイミド化反応とフッ素系樹脂層の焼成処理を同時に行ってもよい。この場合、プライマー層がなくてもフッ素系樹脂層の密着性が強固になることもある。
PI樹脂製無端ベルトを定着体として使用する場合、その厚さは25〜500μmの範囲であることが好ましい。また、必要に応じて設けられるプライマー層の厚さは0.5〜10μmの範囲が好ましく、非粘着性の樹脂層の厚さは4〜40μmの範囲が好ましい。
特に本発明のPI樹脂製無端ベルトは、定着体である定着ベルトとしても好ましく用いられる。定着ベルトを用いた定着方式には各種あるが、特開平8−262903号公報に記載のように、内面に押圧物を接触させて定着ベルトを回転させる方式においては、定着ベルトの内面は平滑であることが望ましく、この方式だけでなく、類似の用途に対しても本発明のPI樹脂製無端ベルトは定着ベルトとして有効に使用できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、各実施例は、本発明
を制限するものではない。
(実施例1)
−基材無端ベルトとなるPI樹脂無端ベルトの作製−
BPDAと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとをN,N−ジメチルアセトアミド中で等モル反応させ、PI前駆体溶液A(22質量%濃度、A型PI樹脂前駆体)を調製した。該PI前駆体溶液Aの粘度は35Pa・sであった。
外径が70mm、長さが400mmのアルミニウム製素管の表面を切削して、外径を68mmにし、更に、球形アルミナ粒子によるブラスト処理により、表面を算術平均粗さRaで1.0μmとなるように粗面化し、円筒状芯体とした(熱膨張率:23×10-6/K)。
前記PI前駆体溶液Aを用い、図3に示すような環状塗布法に用いる塗布装置により、上記円筒状芯体表面にPI前駆体塗膜を形成した。環状体5としては、外径が110mm、高さ30mmのアルミニウム製のものを作製した。この環状体5の内壁は傾斜状であり、最小部の内径を69mm、最大部の内径を75mmとした。なお、前記環状体5の高さとは、環状体5の最小内径部分のPI前駆体溶液2の液面からの高さを示す。
底面に内径66mmの穴を有するポリエチレン製環状シール材8が取り付けられた、内径150mm、高さ50mmの環状塗布槽7に、円筒状芯体1を図3における下側から通した。環状塗布槽7にPI前駆体溶液2を入れ、環状体5を円筒状芯体1が円孔6の中心となるように配置して、円筒状芯体1を0.5m/分で上昇させ、塗布を行った。これにより、円筒状芯体1の表面には濡れ膜厚が約500μmのPI前駆体塗膜4が形成された。
次に、塗膜が形成された円筒状芯体1を水平にして、20rpmで回転させながら、室温で5分間の乾燥後、80℃で20分間、100℃で1時間、加熱乾燥させた。これにより、厚さが約150μmのPI前駆体塗膜を得た。更に、150℃で20分間、続いて200℃で20分間、その後、350℃で30分間加熱して、厚さが75μmのPI樹脂皮膜を形成した(PI樹脂としての熱膨張率は、21×10-6/Kであった)。
これを常温にまで冷やしたが、PI樹脂皮膜が円筒状芯体1から剥離することはなかった。その表面に、シリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学社製)を塗布し、380℃で30分間、焼き付け処理を施した。これにより、図1(a)に示すように、円筒状芯体1の表面に基材無端ベルト10(PI樹脂無端ベルト)が皮膜として形成された円筒状芯体を得た。
−PI前駆体塗膜形成工程−
BPDAとPDAとをN,N−ジメチルアセトアミド中で等モル反応させ、PI前駆体溶液S(22質量%濃度、S型PI樹脂前駆体)を調製した。該PI前駆体溶液Sの粘度は50Pa・sであった。
このPI前駆体溶液Sを用い、図3に示すような環状塗布法に用いる塗布装置により、前記基材無端ベルトの作製と同様にして、円筒状芯体1に設けられた基材無端ベルト10の表面にPI前駆体塗膜を形成した。但し、環状体5の最小部の内径は、基材無端ベルト10の厚みが加わることを考慮して69.15mmとした。
これにより、基材無端ベルト10の表面には濡れ膜厚が約150μmのPI前駆体塗膜が形成された。
−PI樹脂皮膜形成工程−
PI前駆体塗膜の形成後、PI前駆体塗膜の一端部に、幅20mmのポリエステルテープを巻き付けて被覆処理をした。次に、PFAのディスパージョン水性塗料(商品名:AW5000、ダイキン工業社製)を内径90mm、高さ480mmの塗布槽7に入れ、その中に塗膜が形成された円筒状芯体1を、前記被覆処理した部分を下側にして垂直方向に、PI前駆体塗膜の上部5mmだけが液面から出るようにして浸漬した。次いで、0.3m/minの速度で引き上げ、前記PI前駆体塗膜表面にPFA塗膜を形成した。80℃で10分間の乾燥後、前記ポリエステルテープを除去した。
その後、150℃で20分間、続いて200℃で20分間、更に、380℃で30分間加熱して、PI樹脂皮膜を形成すると共に、前記PFA塗膜を焼成した。
−PI樹脂皮膜剥離工程−
円筒状芯体1が室温に冷えると、円筒状芯体1は基材無端ベルト10と共に収縮して、PI樹脂皮膜はゆるんだので、容易に抜き取ることができた。これにより、膜厚75μmの均一なPI樹脂皮膜表面に、膜厚30μmのPFA層を有するPI樹脂製無端ベルトを得ることができた。その内面は、基材無端ベルト10の表面に由来する光沢性の平滑面であり、算術平均粗さRaは0.1μmであった。
なお、形成されたS型PI樹脂皮膜は、PIの中では最も剛直で、かつ耐熱性も高いものである(PI樹脂としての熱膨張率は、12×10-6/Kであった)。このPI樹脂製無端ベルトを、両端から30mmずつ不要部分を切断することにより、電子写真用定着ベルト1とした。
(実施例2)
−基材となるPI樹脂無端ベルトの作製−
実施例1におけるPI樹脂前駆体溶液Sを用いて、基材無端ベルトを作製した。
外径が170mm、長さが400mmのアルミニウム製素管を350℃で10分間加熱し、自然に冷却した後、表面を切削して外径を167.6mmとし、更に、球形アルミナ粒子によるブラスト処理により、表面を算術平均粗さRaで1.0μmとなるように粗面化したアルミニウム製円筒(熱膨張率:23×10-6/K)を円筒状芯体として用意した。上記円筒状芯体の表面に、シリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理を施した。
実施例1におけるPI前駆体溶液Sを用い、図3に示す環状塗布法に用いる塗布装置により、上記円筒状芯体表面にPI前駆体塗膜を形成した。環状体5として、外径が250mm、高さ40mmのアルミニウム製の中空体を作製した。この環状体5の内壁は傾斜状であり、最小部の内径を169mm、最大部の外型を180mmとした。
円筒状芯体1の図における上下に、図3に示すように円筒状芯体1と同一の外形の円筒状の中間体9、9’を取り付け、底面に内径166mmの穴を有するポリエチレン製の環状シール材8が取り付けられた、内径250mm、高さ50mmの環状塗布槽7に、円筒状芯体1を図3における下側から通した。そして、環状塗布槽7にPI前駆体溶液2を入れ、環状体5を円筒状芯体1が円孔6の中心となるように配置して、円筒状芯体1を0.4m/分で上昇させ、塗布を行った。これにより、円筒状芯体1の表面には、濡れ膜厚が約700μmのPI前駆体塗膜が形成された。
塗膜が形成された円筒状芯体1を水平にして、室温で5分間の乾燥後、20rpmで回転させながら、80℃で20分間、130℃で30分間、加熱して乾燥させ、その後、円筒状芯体1を垂直にして、200℃で30分、350℃で30分加熱反応させ、PI樹脂皮膜を形成した。
円筒状芯体1が常温に冷えると、PI樹脂皮膜は円筒状芯体1から抜き取ることができた。抜き取ったPI樹脂無端ベルトの膜厚は80μmで均一であり、内径は167.9mmであった。このPI樹脂無端ベルトを基材無端ベルト11とし、図1(b)のように、外径が167.8mm、長さが400mmのアルミニウム製円筒に嵌めた。次いで、基材無端ベルト11の表面に、シリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)社製)を塗布し、300℃で1時間、焼き付け処理を施した。
−PI前駆体塗膜形成工程−
PMDAと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとをN,N−ジメチルアセトアミド中で等モル反応させたPI前駆体溶液K(22質量%濃度、K型PI樹脂前駆体)を調製した。該前駆体溶液の粘度は28Pa・sであった。これは、材料中にBPDAを使用していないので、前記PI前駆体溶液Sの半額程度のコストである。
このPI前駆体溶液Kに、カーボンブラック(商品名:スペシャルブラック4、デグザヒュルス社製)を、溶液中の固形分質量比で23%混合し、次いで対抗衝突型分散機により分散した。更に、塗膜にはじきを生じにくくするため、シリコーンレベリング剤(商品名:DC3PA、ダウコーニングトーレシリコーン社製)を、濃度が溶液全体の500ppmになるよう添加し、塗布溶液とした。
この塗布溶液を用い、前記基材無端ベルトの作製と同様の環状塗布法により、前記円筒状芯体1に嵌めた基材無端ベルト11の表面にPI前駆体塗膜を形成した。但し、環状体5の最小部の内径は169.1mmとした。このようにして、基材無端ベルト11の表面には、濡れ膜厚が約500μmのPI前駆体塗膜が形成された。
−PI樹脂皮膜形成工程−
PI前駆体塗膜が形成された円筒状芯体1を水平にして、室温で5分間の乾燥後、20rpmで回転させながら、80℃で20分間、130℃で30分間、加熱して乾燥させ、次に、円筒状芯体1を室温まで冷却した。これにより、前記PI前駆体塗膜の厚さを約150μmとした。
その後、円筒状芯体1を垂直にして、200℃で30分間、320℃で30分間加熱反応させ、PI樹脂皮膜を形成した。
−PI樹脂皮膜剥離工程−
室温に冷えた後、基材無端ベルト11がゆるんだので、前記PI樹脂皮膜と共に円筒状芯体1から引き抜くことができた。基材無端ベルト11を図4に示すようにたわませると、PI樹脂製無端ベルト(PI樹脂皮膜)12を剥離することができた。その膜厚は75μmで均一であり、実施例1で得られたS型PI樹脂製無端ベルトより柔軟性に富むものであった。
PI樹脂製無端ベルト12の内面は、基材無端ベルト11の表面に由来する光沢性の平滑面であり、算術平均粗さRaは0.1μmであった。また、このPI樹脂製無端ベルトの表面抵抗率は1011Ω/□であった。
得られたPI樹脂皮膜は、不要部分を両端から30mmずつ切断することにより、電子写真用転写ベルトとして好適に使用することができた。
(実施例3)
−基材無端ベルトとなるPAI樹脂無端ベルトの作製−
PAI樹脂溶液(商品名:バイロマックス、東洋紡績製、15質量%濃度、溶剤:NMP)を用意した。その粘度は50Pa・sであった。
このPAI樹脂溶液を用い、実施例1における基材無端ベルトの作製と同様にして、円筒状芯体1の表面にPAI樹脂溶液を塗布した。これにより、円筒状芯体1の表面には濡れ膜厚が約500μmのPAI樹脂塗膜4が形成された。
次に、塗膜が形成された円筒状芯体1を水平にして、20rpmで回転させながら、80℃で20分間、150℃で30分間、200℃で30分間加熱乾燥させた。これにより、厚さが約60μmのPAI樹脂皮膜が形成された(PAI樹脂皮膜の熱膨張率は、23×10-6/Kであった)。
これを常温にまで冷やしたが、PAI樹脂皮膜が円筒状芯体1から剥離することはなかった。その表面に、実施例1と同様にしてシリコーン系離型剤を塗布し、300℃で30分間、焼き付け処理をした。これにより、図1(a)に示すように円筒状芯体1の表面に基材無端ベルト10(PAI樹脂無端ベルト)が皮膜として形成された円筒状芯体を得た。
上記表面に基材無端ベルトが形成された円筒状芯体1を用いて、実施例1と同様のPI前駆体塗膜形成工程以降の工程を経ることにより形成されたPI樹脂皮膜は、円筒状芯体1から容易に抜き取ることができた。これにより、膜厚が30μm、内面の算術平均粗さRaが0.1μmのPI樹脂製無端ベルトを作製することができた。
なお、本実施例では基材無端ベルトとしてPAI樹脂を用いたことにより、基材無端ベルトの作製時において、300℃以上の高温の加熱反応は不要であった。
(比較例1)
実施例1の基材無端ベルトの作製において、PI前駆体溶液Aの代わりにPI前駆体溶液Sを用いた以外は同様にして、膜厚が75μmのPI樹脂皮膜を作製しこれをPI樹脂製無端ベルトとした。このPI樹脂製無端ベルトの内面は、粗面化された円筒状芯体表面に由来して同様に粗面であり、算術平均粗さRaは1.0μmであった。
このPI樹脂製無端ベルトの両端部を、実施例1と同様にして切断し、電子写真用定着ベルト2とした。
(比較例2)
実施例1において、基材無端ベルトの作製を、PI前駆体溶液Aの代わりにPFAのディスパージョン水性塗料(商品名:AW5000、ダイキン工業社製)を用いて浸漬塗布法により行い、円筒状芯体の表面に形成された膜厚30μmのPFA層を基材無端ベルトとした以外は実施例1と同様にして、PI樹脂製無端ベルトの作製を行った。
本比較例においては、PI樹脂皮膜形成工程で380℃まで加熱したことにより、PI樹脂皮膜と基材無端ベルトのPFA層とが張り付いてしまい、両者を剥離することができなかった。
(定着ベルトの評価)
前記実施例1及び比較例1で得られた定着ベルト1及び2について走行特性を評価するために、図5に示すような、空回し評価機により評価を行った。
図5は、無端ベルト(定着ベルト)を評価するための空回し評価機の模式断面図であり、21が加熱定着ロール、22が加熱源(ハロゲンヒーター)、23が圧力パッド、24がオイル供給源、25が摺動シート、26が無端ベルト(定着ベルト)、27が空回しユニット、30が空回し評価機、を各々表す。
図5中、加熱定着ロール21は不図示のモーターに接続され、回転可能であると共に、加熱定着ロール21の内部には、加熱源22が設置されている。
一方、圧力パッド23とオイル供給源24と摺動シート25とを備えた空回しユニット27は、その外周部に定着ベルト26が、回転可能なように取りつけられている。なお、定着ベルト26は、その外周面が加熱定着ロール21表面と圧接し、圧接部(ニップ)を形成すると共に、加熱定着ロール21の矢印R方向への回転に伴い従動回転することができる。
定着ベルト26としては、実施例1および比較例1で得られた定着ベルト1、2を用いた。また、定着ベルト26の内周面には、前記ニップが形成できるように、摺動シート25を介して、圧力パッド23が定着ベルト26の内周面を押圧するように配置されており、圧力パッド23の押圧力を調整することにより前記ニップ部におけるニップ荷重が調整される。
摺動シート25は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含浸させたガラス繊維シートに覆われたもの(中興化成製)からなり、摺動シート25の定着ベルト26に接する面の算術平均粗さRaは3.1μmである。
また、オイル供給源24は、定着ベルト26の回転時に、定着ベルト26内周面に対して、単位時間当たりに一定量のオイルが供給可能なように、定着ベルト24内周面と当接して配置されている。
空回し評価に際しては、摺動シート25の定着ベルト26に接する面に適量の粘度300csのアミノ変性シリコーンオイル(信越化学製)を塗布した後、定着ベルト26を空回しユニット27の外周部に装着した。
次に、空回し評価機30のニップ荷重を333N、加熱定着ロール21の回転数を74.4rpm、加熱定着ロール21の表面温度を175℃に設定し、加熱定着ロール21を矢印R方向に回転させ、加熱定着ロール21に接続されたモーターの負荷トルクと、ニップ部の騒音レベルとを測定することにより評価を行った。
なお、負荷トルクは、モーターに流れる電流値を測定し、これを換算して求めた。また、騒音レベルの測定は、ニップ部から30mm離れたところに集音マイクを設置し、積分平均型精密騒音計(リオン製、NL−14)を用いて実施した。これらの測定は、空回しスタート直後、及び2時間後で行った。
実施例1で作製した定着ベルト1の初期負荷トルクは2.6×10-2N・mであり、2時間後でもほとんど変化はなかった。また、初期及び2時間後の騒音レベルは62dBであり、モーターやロールの回転音と同程度であったので支障はなかった。一方、比較例1で作製した定着ベルト2の初期負荷トルクは、初期及び2時間後で2.7×10-2N・mであり、定着ベルト1と同程度の負荷トルクであったが、騒音レベルが初期及び2時間後で69dBと定着ベルト1に比べて大きく、耳ざわりに聞こえることがあった。
本発明における円筒状芯体及び基材無端ベルトの説明図である。 浸漬塗布法に用いる装置の一例を示す概略構成断面図である。 環状塗布法に用いる装置の一例を示す概略構成断面図である。 基材無端ベルトからポリイミド樹脂製無端ベルトを剥離している状態を示す説明図である。 定着ベルトを評価するための空回し評価機の模式断面図である。
符号の説明
1 円筒状芯体
2 ポリイミド前駆体溶液
3 塗布槽
4 ポリイミド前駆体塗膜
5 環状体
6 円孔
7 環状塗布槽
8 環状シール材
9、9’ 中間体
10 型ベルト法における基材無端ベルト
11 ベルト嵌め法における基材無端ベルト、
12 ポリイミド樹脂製無端ベルト
21 加熱定着ロール
22 加熱源(ハロゲンヒーター)
23 圧力パッド
24 オイル供給源
25 摺動シート
26 無端ベルト(定着ベルト)
27 空回しユニット
30 空回し評価機

Claims (5)

  1. 基材無端ベルトであるポリイミド樹脂無端ベルトまたはポリアミドイミド樹脂無端ベルトを円筒状に保持し、該基材無端ベルトの表面にポリイミド前駆体溶液を塗布し、ポリイミド前駆体塗膜を形成するポリイミド前駆体塗膜形成工程と、
    該ポリイミド前駆体塗膜を加熱乾燥及び加熱反応させてポリイミド樹脂皮膜を形成するポリイミド樹脂皮膜形成工程と、
    該ポリイミド樹脂皮膜を前記基材無端ベルトから剥離するポリイミド樹脂皮膜剥離工程と、を含むことを特徴とするポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法。
  2. 円筒状芯体に前記基材無端ベルトを嵌めること、または円筒状芯体の表面に前記基材無端ベルトを皮膜として形成することにより、前記基材無端ベルトを円筒状に変形しないように保持することを特徴とする請求項1に記載のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法。
  3. 前記基材無端ベルトの表面に、離型剤層が形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法により製造されることを特徴とするポリイミド樹脂製無端ベルト。
  5. 定着ベルトであることを特徴とする請求項4に記載のポリイミド樹脂製無端ベルト。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006240099A (ja) * 2005-03-03 2006-09-14 Fuji Xerox Co Ltd 熱硬化性樹脂製無端ベルト、及びその製造方法
JP2010201890A (ja) * 2009-03-06 2010-09-16 Nippon Steel Chem Co Ltd ポリイミドフィルムの製造方法
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