JP2005215133A - 無端ベルト、定着ベルトおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 内周面側から、第1のポリイミド樹脂層と第2のポリイミド樹脂層とが設けられてなり、前記第1のポリイミド樹脂層中に、固体潤滑剤が分散されてなることを特徴とする無端ベルトである。
上記無端ベルトの第2のポリイミド樹脂層上に、フッ素樹脂層が設けられてなることを特徴とする定着ベルトである。
固体潤滑剤を分散した第1のポリイミド前駆体層と、第2のポリイミド前駆体層と、をこの順に形成する塗膜形成工程と、塗膜形成後にフッ素樹脂塗料を塗布するフッ素樹脂塗膜形成工程と、ポリイミド皮膜を形成すると共に、ポリイミド皮膜上にフッ素樹脂層を形成する樹脂皮膜形成工程と、芯体から抜き取る樹脂皮膜抜き取り工程と、をこの順に含むことを特徴とする定着ベルトの製造方法である。
【選択図】 なし
Description
しかし、PI樹脂中に固体潤滑剤を含有させると、PI樹脂本来の強度が低下する短所があり、特にベルトのような薄膜で使用する用途には不向きであった。強度を補うために、更に炭素繊維等をPI樹脂中に含有させる手段もあるが、表面平滑性が低下することがあるので、十分な方法ではなかった。
<1> 内周面側から、第1のポリイミド樹脂層(摺動層ともいう)と第2のポリイミド樹脂層とが設けられてなり、
前記第1のポリイミド樹脂層中に、固体潤滑剤が分散されてなることを特徴とする無端ベルト。
<5> 前記フッ素樹脂層中に、カーボンナノチューブが含有されてなることを特徴とする<4>に記載の定着ベルト。
前記環状体の孔の内壁が傾斜した面であり、その傾斜角が鉛直線に対して1〜10°であることを特徴とする<8>に記載の定着ベルトの製造方法。
本発明の無端ベルトは、内周面側から、第1のポリイミド樹脂層(摺動層)と第2のポリイミド樹脂層とが設けられてなり、第1のポリイミド樹脂層中に、固体潤滑剤が分散されてなる。
但し、無端ベルトを利用して定着ベルトとする場合、最適なのは強度の観点で、上記S型である。
固体潤滑剤の分散には、ボールミル、サンドミル、ロールミル、対向衝突型分散機、超音波分散機、等、公知の分散機が用いられる。摺動層の厚さは、2〜20μmの範囲が好ましい。摺動層には第2のポリイミド樹脂層ほどの強度は不要なので、使用するPI樹脂は、上記いずれのものでもよい。無端ベルトとしての第2のポリイミド樹脂層の厚さは、25〜250μmの範囲が好ましい。
また、PI樹脂無端ベルトの内面に摺動層を塗布するかわりに、芯体の表面に、先に摺動層溶液(固体潤滑剤を分散したPI樹脂前駆体溶液)を塗布し、次いで、PI樹脂前駆体溶液を塗布し(塗膜形成工程)、次いで加熱処理を施してポリイミド皮膜を形成し(樹脂皮膜形成工程)、このポリイミド皮膜を芯体から抜き取って(樹脂皮膜抜き取り工程)、無端ベルトを作製してもよい。当該方法については後述するが、この方法により、製造工程が短縮されるばかりでなく、両者のイミド化反応が同時に進むことで、密着性が大幅に向上する利点がある。
なお、固体潤滑剤等については、後述の製造方法で説明する。
定着ベルトは、本発明の無端ベルトの表面に非粘着層が設けられたものである。すなわち、本発明の無端ベルトの第2のポリイミド樹脂層上に、フッ素樹脂層が設けられてなる。フッ素樹脂層を設けることで、トナーの剥離性を向上させることができる。
CNTは、触媒を用いて熱分解する方法や、アーク放電法、レーザー蒸発法などの公知の方法により製造され、強度、耐磨耗性、低摩擦性、電気伝導性、熱伝導性等に優れた材料である。
本発明の定着ベルトは、本発明の無端ベルトを利用したものである。そこで、本発明の定着ベルトの製造方法を説明しながら、本発明の無端ベルトの製造方法にも言及する。
以下、各工程について説明する。
被塗物として用いられる芯体の材質は、アルミニウムや、ニッケル、ステンレス鋼等の金属が好ましい。形状は円筒形が好ましい。芯体の表面は、クロムやニッケルでメッキしたり、フッ素樹脂やシリコーン樹脂で被覆してもよい。芯体表面には、PI樹脂が接着しないよう、離型剤を塗布することが好ましい。
粗面化の粗さは、表面粗さ(Ra)が0.2〜2μm程度であることが好ましい。粗面化方法には、ブラスト、切削、サンドペーパーがけ等の方法がある。粗面化により、PI皮膜から生じる残留溶剤または水の蒸気は、芯体とPI皮膜との間にできるわずかな隙間を通って外部に出ることができ、膨れが生じなくなる。
固体潤滑剤粉体としては、二硫化モリブデン、グラファイト等が挙げられる。
なお、「芯体上に塗布する」とは、芯体の表面上、及び該表面に層を有する場合は、その層上に塗布することを示す。また、「芯体を上昇」とは、塗布液面との相対関係であり、「芯体を停止し、塗布液面を下降」させる場合を含む。
環状体5の沈没防止のために、環状体5の外周面、または塗布槽3に、環状体5を支える足や腕を設けてもよい。
環状塗布方式は、図1に示した浸漬塗布方法より、溶液2の量が少なくて済む利点がある。環状体5を溶液2上に自由移動可能状態で設置するのは、図1の場合と同じである。
環状体5の孔6を通して芯体1を溶液から上昇させると、溶液2の介在により、芯体1と環状体5との間に摩擦抵抗が生じ、環状体5には上昇力が作用し、環状体5は少し持ち上げられる。この時、環状体5は芯体1との摩擦抵抗が周方向で一定になるように移動し、間隙が一定になるので、塗布される膜厚は周方向で均一になる。すなわち、均一な膜厚の塗膜4が芯体1上に形成される。
なお、無端ベルトを製造する場合は、その後、加熱処理を施してポリイミド皮膜を形成し(樹脂皮膜形成工程)、このポリイミド皮膜を芯体から抜き取って(樹脂皮膜抜き取り工程)、無端ベルトを作製する(加熱処理については後述するので、ここでは省略する)。樹脂皮膜抜き取り工程の内容や、その他に切断工程等を設けることが好ましいのは、定着ベルトの製造方法の場合と同様である。
この工程では、定着ベルトを製造するために、フッ素樹脂分散液を、PI樹脂皮膜またはPI前駆体皮膜の上に塗布する。浸漬塗布の場合、まず、PI樹脂皮膜またはPI前駆体皮膜の端部、および芯体表面の金属露出部に被覆処理を施す。必要に応じて、芯体の下端側となる部分に蓋を嵌める。
また、界面活性剤や粘度調整剤等も添加してもよい。カーボン粉体や、酸化チタン、硫酸バリウム等のフッ素樹脂以外の材料を含ませる場合、上記フッ素樹脂分散液の中にこれらを混ぜて分散すればよい。界面活性剤を添加したものは非常に泡立ちやすく、また一旦、泡が形成された場合は、泡が消えにくいので、塗布に先立って、脱泡処理をするのが良い。脱泡の方法には、時間をかけて静置することのほか、減圧や遠心分離、ろ過、超音波印加、等の方法がある。
芯体の加熱方法としては、図8に示すように、芯体1内部に加熱装置170(例えば面状ヒーター)を取り付ける(貼り付ける)方法が挙げられる。
フッ素樹脂分散液の塗膜に気流を当てることにより、溶媒の乾燥が促進されるので、被膜は垂れを生じる間もなく、乾燥される。
フッ素樹脂分散液の塗布後、室温から150℃の温度に5〜20分間置いて、溶媒を乾燥させる。乾燥の前後に、先に形成した被覆処理を取り外す。その後、350〜450℃の温度で20〜60分間加熱すると、摺動層とPI層に含まれるPI前駆体は縮合反応して第1のポリイミド樹脂層と第2のポリイミド樹脂層とからなるポリイミド皮膜が形成される。また、フッ素樹脂粉体は溶融されてフッ素樹脂層となる。このとき、PI前駆体皮膜中の残留溶剤により、皮膜に膨れを生じることがあるため、前記温度に達するまでに、温度を段階的に上昇させたり、ゆっくりと上昇させることが好ましい。
その後、常温に冷やし、芯体を取り外すことで摺動性無端ベルトまたは定着ベルトが製造される。
上記差(B−A)が10×10-6/Kを超えると、本発明の方法に拠らなくても加熱後の円筒状芯体の収縮により、樹脂皮膜が剥離することがある。
その後、図9に示すように、円筒体13の貫通孔110に空気チューブ15をつなぎ、加圧空気を注入すると、ベルト14の内側に加圧空気が注入されてベルト14が膨張し、さらに、芯体1と、その表面に形成されているPI樹脂皮膜(図示せず)との隙間にも加圧空気が注入され、PI樹脂皮膜が膨張するので、PI樹脂皮膜を剥離することができるのである。
円筒体に設ける貫通孔110の大きさは、大きすぎると液が入り込んで詰まるおそれがあり、小さすぎると加圧空気の注入量が不足するので、直径0.5〜4mm程度の範囲が好ましい。なお、PI樹脂皮膜の剥離時には、一定量の加圧空気を注入させる必要があるため、直径が3mm以下の貫通孔の場合には、2つ以上設けられることが好ましく、直径が1mm以下の場合には、4つ以上設けられることが好ましい。
この方法は、工数が余計にかかるものの、円筒状芯体に貫通孔を設ける加工が不要であるほか、貫通孔に溶液が入り込む虞がない利点がある。なお、穴の径が大きい場合、穴の中に溶液が浸入して穴を塞ぐことがあるが、その場合は浸入した溶液を掻き出すか、穴の内側からエアを注入して溶液を吹き飛ばすとよい。
フッ素樹脂塗膜形成工程において、当該フッ素樹脂塗膜層に欠陥があった際には、前記フッ素樹脂塗膜層を除去して、再度、前記フッ素樹脂塗料を塗布してフッ素樹脂塗膜層を形成するフッ素樹脂塗膜再形成工程を設けることが好ましい。
更に必要に応じて、樹脂皮膜抜き取り工程を経た後、前記フッ素樹脂層が形成されてなる前記ポリイミド皮膜の両端を切断して端部の長さを揃える切断加工工程、表面の粗さを調整する研磨処理工程、等を設けてもよい。
研磨処理は、乾式法および湿式法のいずれでもよい。乾式法としてはサンドペーパや研磨フィルムを使用して研磨する方法がある。湿式法としては、上記と同じことを、水等の液体を介して行う方法がある。
PI前駆体溶液として、BPDAとPDAとを、N,N−ジメチルアセトアミド中で合成した、固形分濃度20%、粘度約10Pa・sのS型の前駆体溶液を用意した。この中に平均粒径0.4μmのニ硫化モリブデン粉体を塗布液に対する固形分比10重量%で混入し、ボールミルにて分散し、摺動層の塗布液とした。
次いで、芯体1を400mm/分の速度で上昇させた。その間、環状体5は約20mm持ち上げられたが、芯体1に接触することはなく、芯体1の表面には濡れ膜厚が約0.2mmの摺動層となる塗膜が形成された。
次いで、芯体1を400mm/分の速度で上昇させた。その間、環状体5は約20mm持ち上げられたが、芯体1に接触することはなかった。これにより、濡れ膜厚が約0.5mmの第2のポリイミド前駆体層が形成された。
次に、150℃で20分間、220℃で20分間、及び380℃で30分間、芯体を加熱処理して、第1のポリイミド樹脂層および第2のポリイミド樹脂層を有するポリイミド皮膜を形成した。芯体が室温に冷えた後、芯体からポリイミド皮膜を取り外し、10μm厚の第1のポリイミド樹脂層(摺動層)上に、75μm厚の第2のポリイミド樹脂層を有する無端ベルトを得た。
該無端ベルトの引っ張り強度は、420MPaであった。これはほぼPI樹脂層のみと同じ強度である。
実施例1において、摺動層のニ硫化モリブデン粉体に代えて、体積平均粒径2.0μmのグラファイト粉体を用いても、実施例1と同じ結果が得られた。
実施例1において、粘度約30Pa・sのS型前駆体溶液にニ硫化モリブデン粉体を固形分比10重量%で混入し、ボールミルにて分散した。この溶液を用いて、芯体上に摺動層を形成せずに、他は同様にして、75μm厚のPI樹脂層を形成した。このPI樹脂層の引っ張り強度は、280MPaであり、実施例1の結果より低い結果であった。PI樹脂にニ硫化モリブデン粉体が含まれているために、引っ張り強度が低下したものと考えられる。
実施例1において、摺動層とPI前駆体を塗布して乾燥した、加熱前の芯体の一端に、図3に示すように蓋10を嵌め、幅20mmの粘着テープ15を一周巻き付け、蓋を固定した。
芯体1を保持部材に取り付け、PI前駆体皮膜18を上部から5mm残して塗料16に浸漬した(浸漬処理)。次いで気流を当てながら、0.2m/分の速度で芯体1を引き上げ、PFAの塗膜19を形成した。
次いで、150℃で20分間、220℃で20分間、及び380℃で30分間、芯体を加熱して、PI樹脂を反応させると共に、PFA塗膜を焼成した。芯体が室温に冷えた後、芯体を取り外し、10μm厚の摺動層上に75μm厚のPI樹脂層、その上に40μm厚のPFA層を有する定着ベルトを得た。
その両端を切断して、長さを340mmとなるようにして、定着ベルトを製造することができた。
フッ素樹脂塗料中に、カーボンナノチューブ(昭和電工製、直径約150μm、長さ約10μm)をフッ素樹脂に対して5質量%添加した以外は、実施例3と同様にして、定着ベルトを作製した。
実施例3,4で得られた定着ベルトについて、図10の模式的断面図に示す空回し評価機により評価を行った。
図中、加熱定着ロール21は不図示のモーターに接続され、回転されると共に、その内部には、加熱源22が設置されている。一方、圧力パッド23とオイル供給源24と摺動シート25とを備えた加圧ユニット27は、その外周部に定着ベルト26が、回転可能に取りつけられる。なお、実施例3〜5で得られた定着ベルト26は、その外周面が加熱定着ロール21表面と圧接し、圧接部(ニップ)を形成すると共に、加熱定着ロール21の矢印R方向への回転に伴い、従動回転する。
また、オイル供給源24は、定着ベルト26の回転時に、その内周面に対して、オイルが供給可能なように、定着ベルト内周面と当接して配置されている。
次に、ニップ荷重を440N(負荷を増すための過酷条件)、加熱定着ロール21の回転数を74.4rpm、加熱定着ロール21の表面温度を175℃に設定し、加熱定着ロールを矢印R方向に回転させ、加熱定着ロール21に接続されたモーターの負荷トルクを測定することにより実施した。なお、負荷トルクは、モーターに流れる電流値を測定し、これを換算して求めた。
実施例3の条件で、1000本の定着ベルトの作製を行った際、フッ素樹脂塗膜形成工程において、当該フッ素樹脂塗膜層に欠陥があったものについて、フッ素樹脂塗膜層を除去して、再度、前記フッ素樹脂塗料を塗布してフッ素樹脂塗膜層を形成した(フッ素樹脂塗膜再形成工程)。
かかる工程を設けたことで、フッ素樹脂層を有するPI樹脂無端ベルトの不良を減少させることができた。すなわち、フッ素樹脂層に欠陥があった場合でも、加熱焼成前に除去して再塗布するので、PI皮膜を捨てることなく再生利用することができる。
4…塗膜、5…環状体、6…環状体の孔、
7…環状塗布槽、8…環状シール材、9…中間体、
10…蓋、11…保持部材、12…外部槽、
13…ポンプ、14…フィルター、15…被覆部材、
16…フッ素樹脂分散液、17…浸漬塗布槽、18…ポリイミド前駆体皮膜、
19…塗膜、20…送風装置、21…加熱定着ロール、
22…加熱源(ハロゲンヒーター)、23…圧力パッド、24…オイル供給源、
25…摺動シート、26…定着ベルト、27…加圧ユニット、
30…空回し評価機
Claims (6)
- 内周面側から、第1のポリイミド樹脂層と第2のポリイミド樹脂層とが設けられてなり、
前記第1のポリイミド樹脂層中に、固体潤滑剤が分散されてなることを特徴とする無端ベルト。 - 芯体の表面に、固体潤滑剤を分散した第1のポリイミド前駆体層と、第2のポリイミド前駆体層とをこの順に形成する塗膜形成工程と、加熱処理を施してポリイミド皮膜を形成する樹脂皮膜形成工程と、該ポリイミド皮膜を芯体から抜き取る樹脂皮膜抜き取り工程と、をこの順に含むことを特徴とする無端ベルトの製造方法。
- 請求項1に記載の無端ベルトの前記第2のポリイミド樹脂層上に、フッ素樹脂層が設けられてなることを特徴とする定着ベルト。
- 前記フッ素樹脂層中に、カーボンナノチューブが含有されてなることを特徴とする請求項3に記載の定着ベルト。
- 芯体の表面に、固体潤滑剤を分散した第1のポリイミド前駆体層と、第2のポリイミド前駆体層と、をこの順に形成する塗膜形成工程と、塗膜形成後に外側の前記第2のポリイミド前駆体層上にフッ素樹脂塗料を塗布してフッ素樹脂塗膜層を形成するフッ素樹脂塗膜形成工程と、加熱処理を施してポリイミド皮膜を形成すると共に、該ポリイミド皮膜上にフッ素樹脂層を形成する樹脂皮膜形成工程と、前記フッ素樹脂層が形成されてなる前記ポリイミド皮膜を芯体から抜き取る樹脂皮膜抜き取り工程と、をこの順に含むことを特徴とする定着ベルトの製造方法。
- 前記フッ素樹脂塗膜形成工程において、当該フッ素樹脂塗膜層に欠陥があった際に、前記フッ素樹脂塗膜層を除去して、再度、前記フッ素樹脂塗料を塗布してフッ素樹脂塗膜層を形成するフッ素樹脂塗膜再形成工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の定着ベルトの製造方法。
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