JP2005215133A - 無端ベルト、定着ベルトおよびその製造方法 - Google Patents

無端ベルト、定着ベルトおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 PI樹脂の持つ本来の強度を低下させずに、高い摺動性を有する無端ベルト、定着ベルトおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 内周面側から、第1のポリイミド樹脂層と第2のポリイミド樹脂層とが設けられてなり、前記第1のポリイミド樹脂層中に、固体潤滑剤が分散されてなることを特徴とする無端ベルトである。
上記無端ベルトの第2のポリイミド樹脂層上に、フッ素樹脂層が設けられてなることを特徴とする定着ベルトである。
固体潤滑剤を分散した第1のポリイミド前駆体層と、第2のポリイミド前駆体層と、をこの順に形成する塗膜形成工程と、塗膜形成後にフッ素樹脂塗料を塗布するフッ素樹脂塗膜形成工程と、ポリイミド皮膜を形成すると共に、ポリイミド皮膜上にフッ素樹脂層を形成する樹脂皮膜形成工程と、芯体から抜き取る樹脂皮膜抜き取り工程と、をこの順に含むことを特徴とする定着ベルトの製造方法である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、例えば、複写機やレーザープリンタ等の電子写真装置に好ましく使用される無端ベルト、定着ベルトおよびその製造方法に関する。
無端ベルトは、物体の搬送や、回転装置の駆動等に使用される。無端ベルトには、金属製のものと、樹脂製のものがあるが、扱いやすさやコストの面で、樹脂製の方が好ましく用いられる。なかでも、耐久性と耐熱性の観点で、ポリイミド樹脂製のものが最も好ましい。以下、ポリイミドは適宜、PIと略す。
無端ベルトとして、ベルトの内面を摺動させる場合には、内面の摩擦抵抗が小さい、すなわち摺動性が向上した無端ベルトが望まれる。例えば、特許文献1記載の定着装置では、ベルト内面に圧力部材を配置して押圧するので、摺動性の良いことが望まれる。
PI樹脂の摺動性を向上させるために、特許文献2や3に記載のように、PI樹脂中に固体潤滑剤を分散含有させる方法がある。固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、黒鉛、窒化硼素、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂粉体、等が挙げられる。
しかし、PI樹脂中に固体潤滑剤を含有させると、PI樹脂本来の強度が低下する短所があり、特にベルトのような薄膜で使用する用途には不向きであった。強度を補うために、更に炭素繊維等をPI樹脂中に含有させる手段もあるが、表面平滑性が低下することがあるので、十分な方法ではなかった。
一方、定着ベルトは、ポリイミド樹脂を代表とする耐熱樹脂ベルトの表面に、定着されるトナーの剥離性のため、非粘着性の層が設けられたものである。その材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素樹脂が挙げられる。非粘着性の層には、耐摩耗性や静電オフセットの向上、トナー付着防止用オイルとの親和性等のために、カーボン粉体や、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機化合物粉体等、フッ素樹脂以外の材料を含んでもよい。
PI樹脂層の表面にフッ素樹脂層を形成するには、フッ素樹脂が溶剤に不溶性であるため、フッ素樹脂の粉体を、界面活性剤を用いて水等の溶媒に分散した塗料を、PI樹脂層上に塗布した後、溶媒を乾燥し、焼成して加熱溶融する方法がとられる。また、特許文献4に記載のように、フッ素樹脂分散液をPI前駆体表面に塗布し、加熱時に、PI樹脂の生成とフッ素樹脂の焼成を同時に行っても良く、その方が、PI樹脂層とフッ素樹脂層の密着性が向上することもあって好都合である。
定着ベルトにおけるPI樹脂層は、引っ張りや曲げに対する強度が要求されるので、摺動性のために前述の如き固体潤滑剤を含有させるのは、不都合である。 そこで、基材となるPI樹脂に固体潤滑剤を含有させずに、ベルトの摺動性を向上させることが望まれていた。
特開平11−133776号公報 特開平7−97517号公報 特開平11−106779号公報 特開昭63−218349号公報
以上から、本発明は、上記従来の課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、PI樹脂の持つ本来の強度を低下させずに、高い摺動性を有する無端ベルトを提供することを目的とする。また、当該無端ベルトを利用した定着ベルトおよびその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決すべく検討の結果、本発明者らは、下記本発明により当該課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は、
<1> 内周面側から、第1のポリイミド樹脂層(摺動層ともいう)と第2のポリイミド樹脂層とが設けられてなり、
前記第1のポリイミド樹脂層中に、固体潤滑剤が分散されてなることを特徴とする無端ベルト。
<2> 芯体の表面に、固体潤滑剤を分散したポリイミド第1の前駆体層(摺動層)と、第2のポリイミド前駆体層とをこの順に形成する塗膜形成工程と、加熱処理を施してポリイミド皮膜を形成する樹脂皮膜形成工程と、該ポリイミド皮膜を芯体から抜き取る樹脂皮膜抜き取り工程と、をこの順に含むことを特徴とする無端ベルトの製造方法。
<3> 前記樹脂皮膜抜き取り工程において、前記ポリイミド皮膜の熱膨張率Aと前記芯体の熱膨張率Bとの差(B−A)を10×10-6/K以下とし、前記芯体の一端部に、当該芯体と同じ外径で、側面に貫通孔を設けた円筒体を接合し、該円筒体の周囲にベルトを嵌め、前記芯体に形成されている前記ポリイミド皮膜に空気が漏れないように貼り付けた後、円筒体の内側から前記貫通孔を通して、前記芯体の表面と前記ポリイミド皮膜との隙間に加圧空気を注入し、ポリイミド皮膜を剥離して取り出すことを特徴とする<2>に記載の無端ベルトの製造方法。
<4> <1>に記載の無端ベルトの前記第2のポリイミド樹脂層上に、フッ素樹脂層が設けられてなることを特徴とする定着ベルト。
<5> 前記フッ素樹脂層中に、カーボンナノチューブが含有されてなることを特徴とする<4>に記載の定着ベルト。
<6> 芯体の表面に、固体潤滑剤を分散した第1のポリイミド前駆体層(摺動層)と、第2のポリイミド前駆体層と、をこの順に形成する塗膜形成工程と、塗膜形成後に外側の前記第2のポリイミド前駆体層上にフッ素樹脂塗料を塗布してフッ素樹脂塗膜層を形成するフッ素樹脂塗膜形成工程と、加熱処理を施してポリイミド皮膜を形成すると共に、該ポリイミド皮膜上にフッ素樹脂層を形成する樹脂皮膜形成工程と、前記フッ素樹脂層が形成されてなる前記ポリイミド皮膜を芯体から抜き取る樹脂皮膜抜き取り工程と、をこの順に含むことを特徴とする定着ベルトの製造方法。
<7> 少なくとも、前記フッ素樹脂塗膜形成工程において、前記フッ素樹脂塗膜層を形成した後、30℃以上の気流を前記フッ素樹脂塗膜層に当てることを特徴とする<6>に記載の定着ベルトの製造方法である。
<8> 少なくとも、前記フッ素樹脂塗膜形成工程において、前記フッ素樹脂塗膜層を形成する方法が浸漬塗布法であり、浸漬した後で前記芯体を引き上げる際に前記芯体を30℃以上に加熱することを特徴とする<6>または<7>に記載の定着ベルトの製造方法。
<9> 前記浸漬塗布法が、前記芯体断面の外径よりも大きな孔を設けた環状体を、塗布槽に満たされた前記塗液中に自由移動可能状態で設置し、前記環状体の前記孔に前記芯体を通して前記塗液に浸漬した後、前記環状体が塗液面から持ち上げられつつ、かつ前記環状体の底面が塗液面から離脱しないようにして(離脱しないような高さになるように制御して)、前記芯体を前記塗液から相対的に上昇させる方法であって、
前記環状体の孔の内壁が傾斜した面であり、その傾斜角が鉛直線に対して1〜10°であることを特徴とする<8>に記載の定着ベルトの製造方法。
<10> 前記環状体に沈没防止部材を設けて、環状体の質量を調整することを特徴とする<9>に記載の定着ベルトの製造方法。
<11> 前記フッ素樹脂塗膜形成工程において、当該フッ素樹脂塗膜層に欠陥があった際に、前記フッ素樹脂塗膜層を除去して、再度、前記フッ素樹脂塗料を塗布してフッ素樹脂塗膜層を形成するフッ素樹脂塗膜再形成工程を含むことを特徴とする<6>〜<10>のいずれかに記載の定着ベルトの製造方法。
<12> 前記皮膜抜き取り工程を経た後、前記フッ素樹脂層が形成されてなる前記ポリイミド皮膜の両端を切断する切断工程を含むことを特徴とする<6>〜<11>のいずれかに記載の定着ベルトの製造方法。
本発明によれば、ポリイミド樹脂の持つ本来の強度を低下させずに、高い摺動性を有する無端ベルトおよびそれを利用した定着ベルト、並びに、その製造方法を提供することができる。
以下、本発明の無端ベルトおよびそれを利用した定着ベルト、並びに、それらの製造方法を詳細に説明する。
<無端ベルト>
本発明の無端ベルトは、内周面側から、第1のポリイミド樹脂層(摺動層)と第2のポリイミド樹脂層とが設けられてなり、第1のポリイミド樹脂層中に、固体潤滑剤が分散されてなる。
第1および第2のポリイミド樹脂層に用いられるPI樹脂は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと略す)とp−フェニレンジアミン(以下、PDAと略す)とからなるもの(以下、S型と略す);BPDAと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとからなるもの(以下、A型と略す);ピロメリット酸二無水物(PMDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとからなるもの(以下、K型と略す);3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとからなるもの;3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物と4,4’−ジアミノベンゾフェノンとからなるもの;等各種の材料が用いられる。
但し、無端ベルトを利用して定着ベルトとする場合、最適なのは強度の観点で、上記S型である。
PI樹脂層を形成するには、これらの材料の前駆体溶液を芯体の表面に塗布して乾燥し、加熱する方法等を採用することができる。
本発明においては、第2のポリイミド樹脂層の内側に、固体潤滑剤を分散した第1のポリイミド樹脂の層を設けられてなる。本明細書において、第1のポリイミド樹脂層を摺動層ということがある。
固体潤滑剤の分散には、ボールミル、サンドミル、ロールミル、対向衝突型分散機、超音波分散機、等、公知の分散機が用いられる。摺動層の厚さは、2〜20μmの範囲が好ましい。摺動層には第2のポリイミド樹脂層ほどの強度は不要なので、使用するPI樹脂は、上記いずれのものでもよい。無端ベルトとしての第2のポリイミド樹脂層の厚さは、25〜250μmの範囲が好ましい。
摺動層を形成するには、固体潤滑剤粉体の分散液をPI樹脂無端ベルトの内面に塗布し、加熱して成膜してもよい。
また、PI樹脂無端ベルトの内面に摺動層を塗布するかわりに、芯体の表面に、先に摺動層溶液(固体潤滑剤を分散したPI樹脂前駆体溶液)を塗布し、次いで、PI樹脂前駆体溶液を塗布し(塗膜形成工程)、次いで加熱処理を施してポリイミド皮膜を形成し(樹脂皮膜形成工程)、このポリイミド皮膜を芯体から抜き取って(樹脂皮膜抜き取り工程)、無端ベルトを作製してもよい。当該方法については後述するが、この方法により、製造工程が短縮されるばかりでなく、両者のイミド化反応が同時に進むことで、密着性が大幅に向上する利点がある。
以上のような無端ベルトでは、内周面に固体潤滑剤を分散した摺動層が設けられているため、内面の摩擦抵抗が小さくなり、内周側の摺動性を向上させることが可能となる。
なお、固体潤滑剤等については、後述の製造方法で説明する。
<定着ベルト>
定着ベルトは、本発明の無端ベルトの表面に非粘着層が設けられたものである。すなわち、本発明の無端ベルトの第2のポリイミド樹脂層上に、フッ素樹脂層が設けられてなる。フッ素樹脂層を設けることで、トナーの剥離性を向上させることができる。
フッ素樹脂層中には、カーボンナノチューブ(CNT)が含有されていることが好ましい。CNTは、炭素からなる筒状の中空繊維であり、直径に対して長さが数十倍以上のものが挙げられる。具体的には好ましくは、直径が0.005〜1μmで、長さが1〜100μm;より好ましくは、直径が0.01〜0.5μmで、長さが1〜10μm;のものである。大きさによってはカーボンナノファイバーと称されることもあるが、本明細書では総合してCNTとする。
CNTは、触媒を用いて熱分解する方法や、アーク放電法、レーザー蒸発法などの公知の方法により製造され、強度、耐磨耗性、低摩擦性、電気伝導性、熱伝導性等に優れた材料である。
これをフッ素樹脂層に含有させることにより、フッ素樹脂層の耐磨耗性の向上、摺動性の向上等を図ることができる。更に、フッ素樹脂層への電気伝導性付与により、定着時にトナーが静電気によって飛散する現象を防止することができる。また、フッ素樹脂層の熱伝導性向上により、熱の伝播がよくなり、所定温度に達する時間が短縮される効果もある。
フッ素樹脂分散液にCNTを含有させるには、ボールミルやサンドミル、ロールミル等の公知の分散方法を用いることができる。CNTの含有量は、フッ素樹脂に対して4〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜30質量%である。
<無端ベルトおよび定着ベルトの製造方法>
本発明の定着ベルトは、本発明の無端ベルトを利用したものである。そこで、本発明の定着ベルトの製造方法を説明しながら、本発明の無端ベルトの製造方法にも言及する。
本発明の定着ベルトの製造方法は、芯体の表面に、固体潤滑剤を分散した第1のポリイミド前駆体層と、第2のポリイミド前駆体層と、をこの順に形成する塗膜形成工程と、塗膜形成後に外側の前記第2のポリイミド前駆体層上にフッ素樹脂塗料を塗布してフッ素樹脂塗膜層を形成するフッ素樹脂塗膜形成工程と、加熱処理を施してポリイミド皮膜を形成すると共に、該ポリイミド皮膜上にフッ素樹脂層を形成する樹脂皮膜形成工程と、前記フッ素樹脂層が形成されてなる前記ポリイミド皮膜を芯体から抜き取る樹脂皮膜抜き取り工程と、をこの順に含む。
フッ素樹脂粉体分散液の塗布方法には、スプレー塗布法や、芯体を回転しながら液を流延する塗布法もあるが、浸漬塗布法が最も好ましい。定着ベルトとしてのPI樹脂層の厚さは、25〜200μmの範囲が好ましく、フッ素樹脂層(非粘着層)の厚さは5〜50μmの範囲が好ましい。
以下、各工程について説明する。
(塗膜形成工程)
被塗物として用いられる芯体の材質は、アルミニウムや、ニッケル、ステンレス鋼等の金属が好ましい。形状は円筒形が好ましい。芯体の表面は、クロムやニッケルでメッキしたり、フッ素樹脂やシリコーン樹脂で被覆してもよい。芯体表面には、PI樹脂が接着しないよう、離型剤を塗布することが好ましい。
後述するPI樹脂の加熱時に、皮膜内から発生する残留溶剤や反応生成水が膨張し、PI樹脂皮膜に膨れを生じさせることがある。特にポリイミド皮膜の膜厚が50μmを越えるような厚い場合に顕著である。その場合、芯体表面の粗面化が有効である。
粗面化の粗さは、表面粗さ(Ra)が0.2〜2μm程度であることが好ましい。粗面化方法には、ブラスト、切削、サンドペーパーがけ等の方法がある。粗面化により、PI皮膜から生じる残留溶剤または水の蒸気は、芯体とPI皮膜との間にできるわずかな隙間を通って外部に出ることができ、膨れが生じなくなる。
本発明では、PI前駆体の塗布に先立って、固体潤滑剤粉体を分散したPI前駆体溶液を芯体表面に塗布する。その方法として、溶液をノズルから芯体表面に流下させつつ、へらでPI前駆体溶液を平坦化し、ノズルとへらを芯体の一端から他の一端へ水平方向に移動させることにより、塗布する方法がある(螺旋塗布法)。
固体潤滑剤粉体としては、二硫化モリブデン、グラファイト等が挙げられる。
他の好ましい塗布方法に浸漬塗布法もある。但し、PI前駆体溶液が高粘度のために、膜厚が厚くなりすぎる場合には、特開2002−91027号公報に記載のように、芯体の外径よりも大きな孔を設けた環状体により、PI前駆体溶液の膜厚を制御する方法がある。この方法について、塗布工程の概略断面図である図1により説明する(図は塗布主要部のみを示し、周辺部は省略)。
なお、「芯体上に塗布する」とは、芯体の表面上、及び該表面に層を有する場合は、その層上に塗布することを示す。また、「芯体を上昇」とは、塗布液面との相対関係であり、「芯体を停止し、塗布液面を下降」させる場合を含む。
塗布は、図1に示すように、溶液2を塗布槽3に入れ、その中に芯体1を浸漬し、次いで上昇させることにより行われ、塗膜4が形成される。溶液2上には、芯体1の外径よりも大きな円形の孔6を設けた環状体5を自由移動可能状態で設置する。塗膜4の濡れ膜厚は、芯体1と孔6との間隙により定まるので、孔6の内径は、所望の膜厚から設定する(乾燥後の膜厚は、濡れ膜厚と溶液の不揮発分濃度の積となる)。
環状体5の沈没防止のために、環状体5の外周面、または塗布槽3に、環状体5を支える足や腕を設けてもよい。
浸漬塗布方式を改良した環状塗布方式について、図2に示す。この場合、溶液2を環状塗布槽7に入れ、図面上、その下部から上部へ芯体1を通過させて塗布を行う。環状塗布槽7の底部には、溶液2が漏れないように、ポリエチレンやシリコーンゴム等の柔軟性板材から成る環状のシール材8を設ける。芯体1の上下には、中間体9が取り付けられる。
環状塗布方式は、図1に示した浸漬塗布方法より、溶液2の量が少なくて済む利点がある。環状体5を溶液2上に自由移動可能状態で設置するのは、図1の場合と同じである。
環状体5は、溶液2上でわずかな力で動くことができるよう、自由移動可能状態で設置するが、その方法としては、液上に浮遊させる方法のほか、環状体をロールやベアリングで支える方法、環状体をエア圧で支える方法、などがある。
環状体5の孔6を通して芯体1を溶液から上昇させると、溶液2の介在により、芯体1と環状体5との間に摩擦抵抗が生じ、環状体5には上昇力が作用し、環状体5は少し持ち上げられる。この時、環状体5は芯体1との摩擦抵抗が周方向で一定になるように移動し、間隙が一定になるので、塗布される膜厚は周方向で均一になる。すなわち、均一な膜厚の塗膜4が芯体1上に形成される。
芯体上に固体潤滑剤粉体を分散したPI前駆体溶液を塗布後、乾燥をすると、固体潤滑剤粉体を含む第1のポリイミド前駆体層が形成される。乾燥温度は50〜200℃、乾燥時間は30〜200分間とするのが好ましい。乾燥の時、乾燥前の塗膜は粘度が低下し、重力の影響を受けて、垂れが生じやすいが、その場合には、芯体の軸方向を水平にして、10〜60rpm程度で回転させるのがよい。
次いで、固体潤滑剤粉体を含む第1のポリイミド前駆体層上に、第2のポリイミド前駆体層を形成するためのPI前駆体溶液を塗布する。その塗布方法は、固体潤滑剤粉体を分散したPI前駆体溶液の塗布方法と同じでよい。塗布後、上記と同様に乾燥処理がなされて、第2のポリイミド前駆体層が形成される。
なお、無端ベルトを製造する場合は、その後、加熱処理を施してポリイミド皮膜を形成し(樹脂皮膜形成工程)、このポリイミド皮膜を芯体から抜き取って(樹脂皮膜抜き取り工程)、無端ベルトを作製する(加熱処理については後述するので、ここでは省略する)。樹脂皮膜抜き取り工程の内容や、その他に切断工程等を設けることが好ましいのは、定着ベルトの製造方法の場合と同様である。
(フッ素樹脂塗膜形成工程)
この工程では、定着ベルトを製造するために、フッ素樹脂分散液を、PI樹脂皮膜またはPI前駆体皮膜の上に塗布する。浸漬塗布の場合、まず、PI樹脂皮膜またはPI前駆体皮膜の端部、および芯体表面の金属露出部に被覆処理を施す。必要に応じて、芯体の下端側となる部分に蓋を嵌める。
被覆処理には、図3に示すように、蓋10も合わせて、ポリイミド前駆体層18の端部と芯体表面露出部を覆うように粘着テープ15を貼り付ける方法、粘着テープの代わりに幅広のゴムバンドを拡張して被せる方法、等を適用することができる。
他の被覆処理について、図4により説明する。図4は、PI前駆体層18を形成した芯体1の側面図を示し、その一端に粘着テープ70を巻いて貼り付けた例である。この場合、粘着テープ70を貼り付けた側を下端にして、芯体はその中心軸を垂直にされる。反対側、すなわち上端側になる部分は、芯体表面が露出していても、フッ素樹脂分散液への浸漬時、その部分まで浸漬しなければ、芯体表面にフッ素樹脂分散液が付着しないので、被覆しなくてもかまわない。もちろんその部分も被覆すれば、より確実である。
次いで、図5に示すように、芯体1を保持部材11に取り付け、塗布槽17内のフッ素樹脂分散液16に浸漬し、引き上げることにより、フッ素樹脂分散液が塗布されてフッ素樹脂塗膜層19が形成される。フッ素樹脂分散液16は、塗布槽17に溜め置きするほか、図6に示すように、塗布槽17の外側に、芯体1の体積以上の容量を有する外部槽12を設け、ポンプ13により、塗布槽17の下部から供給し、上部から溢流させて、循環させてもよい。
このようにして循環をさせると、フッ素樹脂分散液16の沈降や凝集を防止でき、液の表面を常に新鮮な状態に確保することができる。外部槽12との間で循環させることは、外部に別の塗料タンクを設けて循環するよりも、高価なフッ素樹脂分散液の総量を少なくできるほか、塗布槽17上部から溢流するフッ素樹脂分散液が、外部塗料タンクに落流することによる泡立ちが起きにくい利点もある。循環経路にはフィルター14や、粘度計、希釈液追加装置等を付加することも好ましい。
また、環状体5に設けられる孔6の内壁の形状は、図5および図6の断面図に示すように、塗液に浸る下部で芯体との間隙が広く、上部が狭い形状であれば、斜めの直線状である傾斜面のほか、階段状や曲線状でもよいが、作製の容易さを鑑みると、傾斜面が好ましい。傾斜面である場合、図7を用いて説明すると、内壁の傾斜角55は、鉛直線54に対して1〜10°であるのが好ましい。傾斜角が小さいほど摩擦力が強く働き、芯体外径との間隙を均一にする作用が強くなるが、塗布速度が遅くなるので、最小値は1°程度である。傾斜角が10°を越えると、芯体外径との間隙を均一にする作用が弱くなるので好ましくない。
また、図7に示すように、環状体に沈没防止部材を設けて、環状体の質量を調整することが好ましい。このようにすることで、塗布速度を調整することができる。さらに、沈没防止部材51に質量調整部材56を取り付けることが簡単で好ましい。この場合、質量調整部材56の重心は、環状体の孔の最小内径部より低い位置になるようにするのが良い。
フッ素樹脂分散液には、粒径が0.1〜20μmのフッ素樹脂粉体が分散されていることが好ましい。また、複数の粒径の粉体を混合しても良い。例えば、比較的大きな粒径のフッ素樹脂粉体と、比較的小さな粒径のフッ素樹脂粉体とを混合して用いてもよい。フッ素樹脂分散液の溶媒は、水のほか、エタノールやブタノール等のアルコールや、エチレングリコール等のグリコール、またそのエステル類を併用してもよい。
また、界面活性剤や粘度調整剤等も添加してもよい。カーボン粉体や、酸化チタン、硫酸バリウム等のフッ素樹脂以外の材料を含ませる場合、上記フッ素樹脂分散液の中にこれらを混ぜて分散すればよい。界面活性剤を添加したものは非常に泡立ちやすく、また一旦、泡が形成された場合は、泡が消えにくいので、塗布に先立って、脱泡処理をするのが良い。脱泡の方法には、時間をかけて静置することのほか、減圧や遠心分離、ろ過、超音波印加、等の方法がある。
フッ素樹脂分散液の固形分濃度は、塗布する膜厚にもよるが、10〜70%であることが好ましく、粘度は0.1〜1Pa・s程度であることが好ましい。溶媒の蒸発により、フッ素樹脂分散液の濃度が変化した場合には、水やアルコール等を加えて調整すればよい。
フッ素樹脂分散液を塗布する際、芯体の引き上げ速度は、所望の膜厚にもよるが、50〜500mm/分程度である。引き上げの際、フッ素樹脂分散液の塗膜に垂れが生じる場合、図5および図6に示した送風装置20を設けて、塗膜に気流を当て、溶媒の乾燥を促進することが好ましい。塗膜に当てる気流は、一方向からよりは、周方向で均一になるよう、周回または環状に当てるのがよい。そのような送風装置として、特許第2844784号公報や、特許第2629417号公報に記載されているものが好ましい。
フッ素樹脂分散液の塗膜の乾燥をより促進するため、上記気流としては、常温の空気よりは、30℃以上の温風であることが更に好ましい。但し、あまり温度が高すぎると乾燥むらを生じるため、およそ100℃以下であるのがよい。
フッ素樹脂分散液の塗膜の乾燥を促進する他の手段として、芯体を加熱することを併用しても良い。但し、加熱した芯体をフッ素樹脂分散液に浸漬すると、フッ素樹脂分散液の温度が変化するばかりでなく、芯体の温度が低下して好ましくないので、芯体の加熱は、引き上げ中、または引き上げ後になされるのが良い。加熱温度は30℃以上が好ましいが、気流と同様、あまり温度が高すぎると乾燥むらを生じるため、100℃以下であるのがよい。
芯体の加熱方法としては、図8に示すように、芯体1内部に加熱装置170(例えば面状ヒーター)を取り付ける(貼り付ける)方法が挙げられる。
気流の風速は、1〜10m/分程度が好ましい。これが弱いと乾燥促進の効果が小さく、強すぎると塗膜に筋やむら等の欠陥を生じるおそれがある。また、塗膜に当たった気流が塗布槽に流れると、液面が揺れたり、液面で溶媒の乾燥が生じるので、気流が塗布槽に流れないよう、上向きに当てるのが好ましい。気流としては空気流を使用することができる。
フッ素樹脂分散液の塗膜に気流を当てることにより、溶媒の乾燥が促進されるので、被膜は垂れを生じる間もなく、乾燥される。
(樹脂皮膜形成工程)
フッ素樹脂分散液の塗布後、室温から150℃の温度に5〜20分間置いて、溶媒を乾燥させる。乾燥の前後に、先に形成した被覆処理を取り外す。その後、350〜450℃の温度で20〜60分間加熱すると、摺動層とPI層に含まれるPI前駆体は縮合反応して第1のポリイミド樹脂層と第2のポリイミド樹脂層とからなるポリイミド皮膜が形成される。また、フッ素樹脂粉体は溶融されてフッ素樹脂層となる。このとき、PI前駆体皮膜中の残留溶剤により、皮膜に膨れを生じることがあるため、前記温度に達するまでに、温度を段階的に上昇させたり、ゆっくりと上昇させることが好ましい。
(樹脂皮膜抜き取り工程)
その後、常温に冷やし、芯体を取り外すことで摺動性無端ベルトまたは定着ベルトが製造される。
ここで、樹脂皮膜抜き取り工程において、前記ポリイミド皮膜の熱膨張率Aと前記芯体の熱膨張率Bとの差(B−A)を10×10-6/K以下とし、前記芯体の一端部に、当該芯体と同じ外径で、側面に貫通孔を設けた円筒体を接合し、該円筒体の周囲にベルトを嵌め、前記芯体に形成されている前記ポリイミド皮膜に空気が漏れないように貼り付けた後、円筒体の内側から前記貫通孔を通して、前記芯体の表面と前記ポリイミド皮膜との隙間に加圧空気を注入し、ポリイミド皮膜を剥離して取り出すことが好ましい。
上記差(B−A)が10×10-6/Kを超えると、本発明の方法に拠らなくても加熱後の円筒状芯体の収縮により、樹脂皮膜が剥離することがある。
図9を用いて具体的に説明する。図9(a)のように、貫通孔110を設けた円筒体13を用意しておき、PI樹脂皮膜(図示せず)が形成された芯体1に接合する(図9(b))。この場合の「接合」とは、加圧空気が漏れない程度の結合状態を示し、シール材を挟んで両者を嵌合させたり、両者の継ぎ目に粘着テープを貼る、といった方法をとることができる。なお、配管を溶接する場合、あるいはステンレスの板材を丸めて溶接をして円筒を作製した場合、芯体表面のステンレスの固さに変化が生じることがあるので、芯体全体を千℃程度で熱処理するとよい。
次いで、円筒体の周囲に、円筒体の外径とぴったり合うベルト14を嵌め、芯体に形成されている樹脂皮膜と、空気が漏れないように粘着テープ等を用いて張り付ける。ベルト14としては、あらかじめ用意した無端ベルトでもよいし、樹脂フィルムを巻きつけて張り合わせたベルトでもよい。
その後、図9に示すように、円筒体13の貫通孔110に空気チューブ15をつなぎ、加圧空気を注入すると、ベルト14の内側に加圧空気が注入されてベルト14が膨張し、さらに、芯体1と、その表面に形成されているPI樹脂皮膜(図示せず)との隙間にも加圧空気が注入され、PI樹脂皮膜が膨張するので、PI樹脂皮膜を剥離することができるのである。
円筒体に設ける貫通孔110の大きさは、大きすぎると液が入り込んで詰まるおそれがあり、小さすぎると加圧空気の注入量が不足するので、直径0.5〜4mm程度の範囲が好ましい。なお、PI樹脂皮膜の剥離時には、一定量の加圧空気を注入させる必要があるため、直径が3mm以下の貫通孔の場合には、2つ以上設けられることが好ましく、直径が1mm以下の場合には、4つ以上設けられることが好ましい。
この方法は、工数が余計にかかるものの、円筒状芯体に貫通孔を設ける加工が不要であるほか、貫通孔に溶液が入り込む虞がない利点がある。なお、穴の径が大きい場合、穴の中に溶液が浸入して穴を塞ぐことがあるが、その場合は浸入した溶液を掻き出すか、穴の内側からエアを注入して溶液を吹き飛ばすとよい。
(フッ素樹脂塗膜再形成工程)
フッ素樹脂塗膜形成工程において、当該フッ素樹脂塗膜層に欠陥があった際には、前記フッ素樹脂塗膜層を除去して、再度、前記フッ素樹脂塗料を塗布してフッ素樹脂塗膜層を形成するフッ素樹脂塗膜再形成工程を設けることが好ましい。
当該工程の前には、フッ素樹脂分散液の塗膜を観察し、欠陥を発見することに努める。欠陥としては、フッ素樹脂の凝集物や、分散液中に混入した固体異物などが原因の「ブツ」、オイル性の異物が原因の「はじき」や「へこみ」、液中の気泡が原因の「泡」「ブツ」、その気泡がはじけて生じる「へこみ」、気泡が塗布されないで尾引きすることが原因の「スジ」、PI皮膜のよごれが原因の「むら」、等があるほか、「垂れ」が生じるとか、各種の欠陥がある。
塗膜にこれらの欠陥があった場合、加熱焼成を行っても、不良品になるだけなので、無駄である。そこで本発明では、欠陥があった塗膜を除去して再生するのである。フッ素樹脂分散液の塗膜は、粉体の膜なので、容易に除去することができるが、除去方法としては、紙等で拭き取る方法、塗膜を水に漬けて剥離する方法、その際に拭き取り部材でこすり取る方法、等があり、複数の方法を併用してもよい。塗膜の除去後、再びフッ素樹脂分散液の塗布を行う。
(その他の工程)
更に必要に応じて、樹脂皮膜抜き取り工程を経た後、前記フッ素樹脂層が形成されてなる前記ポリイミド皮膜の両端を切断して端部の長さを揃える切断加工工程、表面の粗さを調整する研磨処理工程、等を設けてもよい。
研磨処理は、乾式法および湿式法のいずれでもよい。乾式法としてはサンドペーパや研磨フィルムを使用して研磨する方法がある。湿式法としては、上記と同じことを、水等の液体を介して行う方法がある。
以下、本発明を下記実施例により具体的に説明する。
〔実施例1〕
PI前駆体溶液として、BPDAとPDAとを、N,N−ジメチルアセトアミド中で合成した、固形分濃度20%、粘度約10Pa・sのS型の前駆体溶液を用意した。この中に平均粒径0.4μmのニ硫化モリブデン粉体を塗布液に対する固形分比10重量%で混入し、ボールミルにて分散し、摺動層の塗布液とした。
外径70mm、長さ400mmのアルミニウム素管の表面を切削して外径を68mmにした円筒体を用意した。その表面を、球形アルミナ粒子(不二製作所社製、粒径105〜125μm)によるブラスト処理により、Ra0.8μmに粗面化した後、シリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、300℃で1時間の焼き付け処理し、芯体とした。
図2における塗布槽7として、内径120mm、高さ50mmの環状槽を用意し、底面に66mmの円孔をあけた0.5mm厚のポリエチレン製環状シール8を取り付けた。環状体5は、高さ25mm、外径84mm、最小部6の内径68.4mm、内面が図2に示すような傾斜面のアルミニウムリングを用意した。外側に3本のアームを取り付け、環状槽に載せた。芯体1の上下に中間体9を取り付けて、環状槽に通し、溶液2を入れた。
次いで、芯体1を400mm/分の速度で上昇させた。その間、環状体5は約20mm持ち上げられたが、芯体1に接触することはなく、芯体1の表面には濡れ膜厚が約0.2mmの摺動層となる塗膜が形成された。
塗布後、芯体を10rpmで回転させながら、120℃の乾燥器に入れ、30分後に取り出すと、約80μm厚の第1のポリイミド前駆体層が形成された。
次に、前記と同じS型の前駆体溶液を用意した。但し、粘度は約30Pa・sとした。これを同じ大きさの塗布槽7に入れた。環状体5は、やはり同じ形状であるが、最小部6の内径は69.2mmとした。
次いで、芯体1を400mm/分の速度で上昇させた。その間、環状体5は約20mm持ち上げられたが、芯体1に接触することはなかった。これにより、濡れ膜厚が約0.5mmの第2のポリイミド前駆体層が形成された。
塗布後、芯体を10rpmで回転させながら、120℃の乾燥炉に入れ、60分後に取り出すと、約150μm厚のPI前駆体皮膜が形成された。この状態ではまだ、皮膜を芯体から取り外すことはできなかった。
次に、150℃で20分間、220℃で20分間、及び380℃で30分間、芯体を加熱処理して、第1のポリイミド樹脂層および第2のポリイミド樹脂層を有するポリイミド皮膜を形成した。芯体が室温に冷えた後、芯体からポリイミド皮膜を取り外し、10μm厚の第1のポリイミド樹脂層(摺動層)上に、75μm厚の第2のポリイミド樹脂層を有する無端ベルトを得た。
該無端ベルトの引っ張り強度は、420MPaであった。これはほぼPI樹脂層のみと同じ強度である。
〔実施例2〕
実施例1において、摺動層のニ硫化モリブデン粉体に代えて、体積平均粒径2.0μmのグラファイト粉体を用いても、実施例1と同じ結果が得られた。
〔比較例1〕
実施例1において、粘度約30Pa・sのS型前駆体溶液にニ硫化モリブデン粉体を固形分比10重量%で混入し、ボールミルにて分散した。この溶液を用いて、芯体上に摺動層を形成せずに、他は同様にして、75μm厚のPI樹脂層を形成した。このPI樹脂層の引っ張り強度は、280MPaであり、実施例1の結果より低い結果であった。PI樹脂にニ硫化モリブデン粉体が含まれているために、引っ張り強度が低下したものと考えられる。
〔実施例3〕
実施例1において、摺動層とPI前駆体を塗布して乾燥した、加熱前の芯体の一端に、図3に示すように蓋10を嵌め、幅20mmの粘着テープ15を一周巻き付け、蓋を固定した。
フッ素樹脂塗料として、水のほかに、エタノール、t−ブタノールを含むPFA水性塗料(濃度60%、粘度500mPa・s)を用意した。この中には固形分として、粒径約17μmのPFA粉体(大粒子)が55質量%、粒径約1μmのPFA粉体(小粒子)が40質量%、粒径約5μmの硫酸バリウム粉体が5質量%が分散されている。この液を20hPaの減圧下で12時間置いて脱泡処理をした。
図6に示すように、内径90mm、高さ480mmの塗布槽17の外側に、内径150mm、高さ160mmの外部槽12を取り付けた。上記分散液16を塗布槽17に満たし、更に外部槽12の下部から30mmまで入れ、ポンプ13(商品名:サインポンプ、特殊機化工業社製)にて、2リットル/分の流量で循環した。このポンプは、液体にかかるせん断応力が小さい特徴を有する。循環経路には、200メッシュのフィルター14を介し、凝集物を除くようにした。塗布槽17の上部には、環状に風速5m/分の気流が上方45°に向けて吹き出される環状送風装置20を取り付けた。
芯体1を保持部材に取り付け、PI前駆体皮膜18を上部から5mm残して塗料16に浸漬した(浸漬処理)。次いで気流を当てながら、0.2m/分の速度で芯体1を引き上げ、PFAの塗膜19を形成した。
引き上げ終了後、粘着テープを除去し、蓋を取り外した後、120℃の熱風が上方から下降する乾燥炉に5分間入れて乾燥した。
次いで、150℃で20分間、220℃で20分間、及び380℃で30分間、芯体を加熱して、PI樹脂を反応させると共に、PFA塗膜を焼成した。芯体が室温に冷えた後、芯体を取り外し、10μm厚の摺動層上に75μm厚のPI樹脂層、その上に40μm厚のPFA層を有する定着ベルトを得た。
その両端を切断して、長さを340mmとなるようにして、定着ベルトを製造することができた。
〔実施例4〕
フッ素樹脂塗料中に、カーボンナノチューブ(昭和電工製、直径約150μm、長さ約10μm)をフッ素樹脂に対して5質量%添加した以外は、実施例3と同様にして、定着ベルトを作製した。
(定着ベルトの評価)
実施例3,4で得られた定着ベルトについて、図10の模式的断面図に示す空回し評価機により評価を行った。
図中、加熱定着ロール21は不図示のモーターに接続され、回転されると共に、その内部には、加熱源22が設置されている。一方、圧力パッド23とオイル供給源24と摺動シート25とを備えた加圧ユニット27は、その外周部に定着ベルト26が、回転可能に取りつけられる。なお、実施例3〜5で得られた定着ベルト26は、その外周面が加熱定着ロール21表面と圧接し、圧接部(ニップ)を形成すると共に、加熱定着ロール21の矢印R方向への回転に伴い、従動回転する。
定着ベルト26の内周面には、前記ニップが形成できるように、摺動シート25を介して、圧力パッド23が定着ベルト26の内周面を押圧するように配置されており、圧力パッド23の押圧力を調整することにより前記ニップ部におけるニップ荷重が調整される。
摺動シート25は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含浸させたガラス繊維シートに覆われたものからなり、摺動シート25の定着ベルト26に接する面の算術平均粗さRaは3.1μmである。
また、オイル供給源24は、定着ベルト26の回転時に、その内周面に対して、オイルが供給可能なように、定着ベルト内周面と当接して配置されている。
空回し評価に際しては、摺動シート25の定着ベルト26に接する面に適量の粘度300csのアミノ変性シリコーンオイル(信越化学製)を塗布した後、定着ベルト26を加圧ユニット27の外周部に装着した。
次に、ニップ荷重を440N(負荷を増すための過酷条件)、加熱定着ロール21の回転数を74.4rpm、加熱定着ロール21の表面温度を175℃に設定し、加熱定着ロールを矢印R方向に回転させ、加熱定着ロール21に接続されたモーターの負荷トルクを測定することにより実施した。なお、負荷トルクは、モーターに流れる電流値を測定し、これを換算して求めた。
実施例3の定着ベルトの初期負荷トルクは2.0×10-2N・mであり、2時間後でもほとんど変化はなかった。また、実施例4の定着ベルトも2時間後でもほとんど変化はなかった。さらに、実施例4の定着ベルトは、 ×10-2N・mであり、2時間後でもほとんど変化はなかった。一方、摺動層を設けていない定着ベルト2の初期負荷トルクは、初期及び2時間後で3.0×10-2N・mであり、実施例3のものより摩擦抵抗が大きかった。
また、比較例1の無端ベルトにフッ素樹脂層を設けたベルトは、同じ試験をしたら、1時間後にベルトの端部が破断した。強度が不足しているためと考えられる。
〔参考例〕
実施例3の条件で、1000本の定着ベルトの作製を行った際、フッ素樹脂塗膜形成工程において、当該フッ素樹脂塗膜層に欠陥があったものについて、フッ素樹脂塗膜層を除去して、再度、前記フッ素樹脂塗料を塗布してフッ素樹脂塗膜層を形成した(フッ素樹脂塗膜再形成工程)。
かかる工程を設けたことで、フッ素樹脂層を有するPI樹脂無端ベルトの不良を減少させることができた。すなわち、フッ素樹脂層に欠陥があった場合でも、加熱焼成前に除去して再塗布するので、PI皮膜を捨てることなく再生利用することができる。
ポリイミド前駆体の塗布方法を示す概略断面図である。 ポリイミド前駆体の他の塗布方法を示す概略断面図である。 蓋に被覆処理を施す説明図である。 他の被覆処理を説明するための側面図である。 フッ素樹脂分散液の浸漬塗布方法を示す概略図である。 循環式塗布槽を用いたフッ素樹脂分散液の浸漬塗布方法の概略図である。 環状体に設けた沈没防止部材に、環状体の質量調整部材を取りつけた概略構成図である。 芯体の内部に加熱装置を設けた態様を示す概略図である。 (a)は、貫通孔を設けた円筒体を用いる場合の説明図であり、(b)は、貫通孔を設けた円筒体を芯体に接合した場合の説明図である。 定着装置の概略断面図である。
符号の説明
1…円筒体、2…溶液、3…塗布槽、
4…塗膜、5…環状体、6…環状体の孔、
7…環状塗布槽、8…環状シール材、9…中間体、
10…蓋、11…保持部材、12…外部槽、
13…ポンプ、14…フィルター、15…被覆部材、
16…フッ素樹脂分散液、17…浸漬塗布槽、18…ポリイミド前駆体皮膜、
19…塗膜、20…送風装置、21…加熱定着ロール、
22…加熱源(ハロゲンヒーター)、23…圧力パッド、24…オイル供給源、
25…摺動シート、26…定着ベルト、27…加圧ユニット、
30…空回し評価機

Claims (6)

  1. 内周面側から、第1のポリイミド樹脂層と第2のポリイミド樹脂層とが設けられてなり、
    前記第1のポリイミド樹脂層中に、固体潤滑剤が分散されてなることを特徴とする無端ベルト。
  2. 芯体の表面に、固体潤滑剤を分散した第1のポリイミド前駆体層と、第2のポリイミド前駆体層とをこの順に形成する塗膜形成工程と、加熱処理を施してポリイミド皮膜を形成する樹脂皮膜形成工程と、該ポリイミド皮膜を芯体から抜き取る樹脂皮膜抜き取り工程と、をこの順に含むことを特徴とする無端ベルトの製造方法。
  3. 請求項1に記載の無端ベルトの前記第2のポリイミド樹脂層上に、フッ素樹脂層が設けられてなることを特徴とする定着ベルト。
  4. 前記フッ素樹脂層中に、カーボンナノチューブが含有されてなることを特徴とする請求項3に記載の定着ベルト。
  5. 芯体の表面に、固体潤滑剤を分散した第1のポリイミド前駆体層と、第2のポリイミド前駆体層と、をこの順に形成する塗膜形成工程と、塗膜形成後に外側の前記第2のポリイミド前駆体層上にフッ素樹脂塗料を塗布してフッ素樹脂塗膜層を形成するフッ素樹脂塗膜形成工程と、加熱処理を施してポリイミド皮膜を形成すると共に、該ポリイミド皮膜上にフッ素樹脂層を形成する樹脂皮膜形成工程と、前記フッ素樹脂層が形成されてなる前記ポリイミド皮膜を芯体から抜き取る樹脂皮膜抜き取り工程と、をこの順に含むことを特徴とする定着ベルトの製造方法。
  6. 前記フッ素樹脂塗膜形成工程において、当該フッ素樹脂塗膜層に欠陥があった際に、前記フッ素樹脂塗膜層を除去して、再度、前記フッ素樹脂塗料を塗布してフッ素樹脂塗膜層を形成するフッ素樹脂塗膜再形成工程を含むことを特徴とする請求項5に記載の定着ベルトの製造方法。
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