JP3864736B2 - ポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法及び環状塗布装置 - Google Patents

ポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法及び環状塗布装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法に係り、特に、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した画像形成装置において、感光体、帯電ローラ、転写ローラ及び定着ベルトに用い得るポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法及び該製造方法に好適に用いられる環状塗布装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真プロセスとしては、特公昭42−23910号公報等に記載されているように多数の方法が知られている。一般的には、光導電性物質を利用した感光体(潜像保持体)表面に、種々の手段により電気的に潜像を形成し、形成された潜像を、トナーを用いて現像しトナー画像を形成した後、感光体表面のトナー画像を、中間転写体を介して若しくは介さずに、用紙等の転写材表面に転写し、この転写画像を加熱、加圧若しくは加熱加圧あるいは溶剤蒸気等により定着する、という複数の工程を経て、定着画像が形成される。感光体表面に残ったトナーは、必要に応じて種々の方法によりクリーニングされ、再び上記の複数の工程に供される。
【0003】
電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、感光体、帯電手段、転写手段及び定着手段には、金属やプラスティック、又はゴム製の回転体が使用されているが、機器の小型化或いは高性能化のために、これら回転体は変形可能なものが好ましい場合があり、それには肉厚が薄いプラスチック製のフィルムからなるベルトが用いられる。この場合、ベルトに継ぎ目(シーム)があると、出力画像に継ぎ目に起因する欠陥が生じるので、継ぎ目がない無端ベルトが好ましい。材料としては、強度や寸法安定性、耐熱性等の面でポリイミド樹脂が特に好ましい。
【0004】
ポリイミド樹脂製の無端ベルトを作製するには、例えば、特開昭60−166424号公報に開示されているように、円筒状芯体の内面にポリイミド前駆体溶液を均一に塗布し、回転しながら乾燥させ、乾燥後に熱硬化させる遠心成形法がある。
【0005】
また、他の無端ベルトの製造方法として、例えば、特開昭61−273919号公報に記載されているように、所望の外径の円筒状芯体を用意し、その表面に浸漬塗布方法によってポリイミド樹脂皮膜を形成した後、剥離する方法もある。
【0006】
ここで、ポリイミド樹脂皮膜は、一般にポリイミド樹脂前駆体が溶解した溶液を塗布し、加熱硬化して形成される。このときの溶剤は、樹脂の性質上、非プロトン系極性溶剤である。しかし、この非プロトン性極性溶剤は、いずれも沸点が高く、常温では極めて乾燥が遅いという性質を有している。非プロトン性極性溶剤の中で、N,N−ジメチルアセトアミドは最も沸点が低く、乾燥しやすいという特性を有している。
【0007】
そのため、ポリイミド樹脂の前駆体溶液の塗布後は、溶剤の乾燥工程に非常に時間がかかり、塗膜が下方に垂れやすい、という問題がある。そこで従来は塗膜の乾燥のために、円筒状芯体を水平にして、かつ軸方向を中心にして回転させて、塗膜の垂れを防止する必要があり、乾燥装置は大型化せざるを得なかった。
また、乾燥が遅いために、乾燥までの間に塗膜欠陥の発生や異物の付着が生じやすいといった問題まで発生し、両問題が相まって作製コストが高くなる欠点があった。
【0008】
一方、例えば特開平10−81749号公報に開示されているように、非プロトン系極性溶剤を用いない種類のポリイミド樹脂もある。しかしながら、この種のポリイミド樹脂は機械的強度、特に引っ張り強さが非プロトン系極性溶剤を用いたポリイミド樹脂より小さいという短所があった。
【0009】
また、ポリイミド樹脂製無端ベルトの製造において、円筒状基体の表面にポリイミド皮膜を形成する工程では、実開昭63−16870号公報に記載のような、環状塗布槽に円筒状芯体を通過させて円筒状芯体表面に塗布を行う環状塗布方法が用いられることもある。この方法は、浸漬塗布法に比べて、環状塗布装置が簡単である点、塗布液が少くても塗布可能である点、等の利点がある。
【0010】
図9に、従来の環状塗布方法に用いられる環状塗布装置を示す概略断面図を示す。環状塗布装置は、底部に配置され、開口部を形成する環状シール材400を有する環状塗布槽200を有する。昇降台600上に中間体800を置き、これに円筒状芯体100を嵌めて昇降台600に直立させる。次いで、昇降台600を上昇させて、円筒状芯体100を環状塗布槽200の開口部に通過させる。それにより、円筒状芯体100の表面に塗布液500が付着し、塗膜500aが形成される。環状シール材400の内径寸法は、円筒状芯体100の外径寸法よりも僅かに小さく、環状シール材400の開口孔に円筒状芯体100の外周が密着することにより、塗布液の漏洩を防いでいる。塗布が終了した後、中間体800が開口孔に嵌まった状態で、円筒状芯体100を取り外し、昇降台を初期の位置まで下降させ、新たな中間体に他の円筒状芯体を直立させて、次の塗布操作を行う。
【0011】
環状塗布方法において、塗布の開始時には、前記開口部の中心位置で円筒状芯体を通過させることが必要である。位置合わせを正確にするために、従来の環状塗布装置は、環状塗布槽は環状塗布装置支柱に固定されている。なお、図9において、環状塗布槽200は塗布槽支持台300を介して環状塗布装置支柱700にネジ710、720によって固定されている。
【0012】
環状塗布装置を用いて塗布する際は、環状塗布槽200の開口部へ円筒状芯体の挿入が確実に行われるように、円筒状芯体100の上端に指をそえ、前記開口部に誘導することがある。従って、位置合わせ作業に時間を要し、熟練を求められるばかりでなく、円筒状芯体100の上端と塗布槽支持台300との間に指が挟み込まれ易いという安全上の懸念があった。指が挟まれたことを圧力やトルク変動で察知し、自動的に円筒状芯体100の上昇を停止させる機構も提案されているが、装置が複雑になる短所がある。また、このような自動検知停止機構は、誤作動が生じる虞もあった。
【0013】
この問題に鑑み、本出願人は、特開平10−137653号公報記載の如く、環状塗布槽と塗布槽支持台の固定強度を一定範囲とする技術を見出した。しかしながら、位置合わせの煩わしさは依然として残っていた。
また、円筒状芯体が傾いて上昇した場合、環状塗布槽が固定されていると、円筒状芯体の傾きが更に大きくなって円筒状芯体が転倒したり、円筒状芯体とシール材との間に隙間が生じて、この隙間から塗布液が漏れる等、支障が生じることがあった。
【0014】
一方、定着手段や転写手段に使用されるポリイミド樹脂製無端ベルトを製造する際に用いられるポリイミド前駆体溶液は、一般に非常に粘度が高い液体であり、従来の環状塗布方法では、膜厚が厚くなりすぎるために、膜厚の制御が困難であった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、N,N−ジメチルアセトアミドを溶剤として用いたポリイミド樹脂の無端ベルトを形成するに際して、皮膜の乾燥時間を短縮し、更に、投入数を高密度化することで、乾燥装置を比較的小型化することの可能なポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法を提供することを目的する。また、本発明のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法に好適に用いられる環状塗布装置であって、粘度の高い塗布液を用いても、膜厚を均一に塗布でき、指等が円筒状芯体と環状塗布槽との間に挟まれた場合でも、容易に対処することが可能な環状塗布装置を提供することを他の目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、
【0017】
<1> ポリイミド前駆体をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を、円筒状芯体表面に塗布し、ポリイミド前駆体塗膜を形成する工程と、乾燥前の前記ポリイミド前駆体塗膜を、N,N−ジメチルアセトアミドを溶解し得ると共に、脱気処理された特定溶剤に接触させて、ポリイミド前駆体が析出したポリイミド前駆体皮膜を形成する工程と、前記ポリイミド前駆体皮膜を、前記円筒状芯体の軸方向を垂直にして乾燥、加熱硬化させ、ポリイミド樹脂皮膜を形成する工程と、を有することを特徴とするポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法である。
【0019】
> 底部に環状のシール材を有し、塗布液を収容する環状塗布槽を有し、前記シール材に嵌合状態で挿通させつつ円筒状芯体を前記環状塗布槽に通して、該円筒状芯体表面に前記塗布液を塗布する環状塗布装置であって、前記環状塗布槽が塗布槽支持台に非固定状態で載せられ、かつ、水平方向に自在に移動可能であることを特徴とする環状塗布装置である。
【0020】
> 前記環状塗布槽上に、前記円筒状芯体の外径よりも大きな内径を有する環状体が配置されてなることを特徴とする<>に記載の環状塗布装置である。
【0021】
> 前記環状塗布槽内の塗布液液面に、前記円筒状芯体の外径よりも大きな内径を有する環状のフロートを浮かべてなることを特徴とする<>に記載の環状塗布装置である。
【0022】
なお、本発明のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法において、前記円筒状芯体が、フッ素系樹脂、又は、フッ素系樹脂を被覆して構成されていてもよく、特に、前記フッ素系樹脂として、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を用いることが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
<ポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法>
本発明のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法は、ポリイミド前駆体をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を、円筒状芯体表面に塗布し、ポリイミド前駆体塗膜を形成する工程と(以下、「ポリイミド前駆体塗膜形成工程」と称する。)、乾燥前の前記ポリイミド前駆体塗膜を、N,N−ジメチルアセトアミドを溶解し得ると共に、脱気処理された特定溶剤に接触させて、ポリイミド前駆体が析出したポリイミド前駆体皮膜を形成する工程(以下、「ポリイミド前駆体皮膜形成工程」と称する。)と、前記ポリイミド前駆体皮膜を、前記円筒状芯体の軸方向を垂直にして乾燥、加熱硬化させ、ポリイミド樹脂皮膜を形成する工程(以下、「ポリイミド樹脂皮膜形成工程」と称する。)と、を有することを特徴とする。また、必要に応じて、他の工程を有していてもよい。
以下、本発明のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法を工程毎に分けて詳細に説明する。
【0024】
−ポリイミド前駆体塗膜形成工程−
ポリイミド前駆体塗膜形成工程では、まず、ポリイミド前駆体がN,N−ジメチルアセトアミドに溶解したポリイミド前駆体溶液を調製する。ポリイミド前駆体としては、従来公知のものを用いることができる。また、ポリイミド前駆体の溶解するN,N−ジメチルアセトアミド(以下、適宜、DMACと称する。)は、非プロトン系極性溶剤であって、該非プロトン系極性溶剤の中では沸点が166℃で最も低く、乾燥しやすいという特性を有する。
なお、調製の際における濃度、粘度等は、適宜選択して行われる。
【0025】
ポリイミド前駆体塗膜形成工程おいて、前記ポリイミド前駆体溶液を円筒状芯体表面に塗布してポリイミド前駆体塗膜を形成するが、その塗布方法としては、円筒状芯体をポリイミド前駆体溶液に浸漬して引き上げる浸漬塗布法、円筒状芯体を回転させながらその表面にポリイミド前駆体溶液を吐出する流し塗り法、その際にブレードで皮膜をメタリングするブレード塗布法など、既存の公知の方法が採用できる。上記流し塗り法やブレード塗布法では塗布部を水平移動させるので皮膜はらせん状に形成されるが、ポリイミド前駆体溶液は乾燥が遅いために継ぎ目は自然に平滑化される。なお、「円筒状芯体表面に塗布する」とは、円柱も含まれる円筒状芯体の側面の表面、及び該表面に層を有する場合は、その層の表面に塗布することを意味する。
【0026】
ポリイミド前駆体塗膜形成工程おいて、ポリイミド前駆体溶液の塗布を浸漬塗布方法で行う場合、ポリイミド前駆体溶液は粘度が非常に高いので、膜厚が所望値より厚くなりすぎることがある。その際は、例えば、以下に示すフロートにより膜厚を制御する浸漬塗布法が適用できる。
【0027】
フロートにより膜厚を制御する浸漬塗布法を、図1〜3を参照して説明する。
図1は、フロートにより膜厚を制御する浸漬塗布方法に用いる装置の一例を示す概略構成図である。ただし、図は塗布主要部のみを示し、他の装置は省略する。
図1に示すように、この浸漬塗布法は、塗布槽3に満たされたポリイミド前駆体溶液2に、円筒状芯体1の外径よりも大きな孔を設けたフロート5を浮かべ、該孔を通して円筒状芯体1ポリイミド前駆体溶液2に浸漬し、次いで、引き上げる塗布法である。
【0028】
図2は、図1に示すフロート5の設置状態を説明するための要部拡大斜視図を示す。図2に示すように、ポリイミド前駆体溶液2液面に、円筒状芯体1の外径よりも一定の間隙だけ大きい径を有する孔6を設けたフロート5を浮かべてある。
【0029】
フロート5は、ポリイミド前駆体溶液2液面に浮くもので、その材質は、ポリイミド前駆体溶液2によって侵されないものがよく、例えば、種々の金属、種々のプラスチック等が挙げられる。また、ポリイミド前駆体溶液2液面に浮きやすいように、フロート5の構造は、例えば、中空構造であってもよい。
【0030】
また、フロート5が塗布槽3の中央部に位置するように、フロート5を一時的に固定する固定手段を設けてもよい。このような固定手段としてフロート5に足を設ける手段、塗布槽3とフロート5とを固定する手段などがある。但し、これらの固定手段を用いた場合、後述するように、円筒状芯体1を浸漬した後、引き上げる際に、フロート5が自由に動き得るように、該固定手段は取り外し可能なように配置される。
【0031】
円筒状芯体1の外径と、孔6の径との間隙は、所望の塗布膜厚を鑑みて調整する。所望の塗膜厚、即ち乾燥膜厚は、濡れ膜厚とポリイミド前駆体溶液2の不揮発分濃度の積になる。これから、所望の濡れ膜厚が求められる。また、円筒状芯体1の外径と、孔6の径との間隙は、所望の濡れ膜厚の1倍〜3倍であるのがよい。1倍〜3倍とするのは、ポリイミド前駆体溶液2の粘度及び/又は表面張力などにより、間隙の距離が濡れ膜厚になるとは限らないからである。このように、所望の乾燥膜厚及び所望の濡れ膜厚から、所望の孔6の径が求められる。
【0032】
フロート5に設けられる孔6の壁面は、浮かべるポリイミド前駆体溶液2の液面に対してほぼ垂直となるように構成されてもよい。例えば、図1に示す断面図にある直線状であり且つその直線がポリイミド前駆体溶液の液面に垂直であるものでもよいし、他の形態に構成されてもよい。例えば、図3(a)に示すように、ポリイミド前駆体溶液2に浸る下部が広く、上部が狭い、斜めの直線状7であるもの、又は図3(b)に示すように、ポリイミド前駆体溶液2に浸る下部が広く、上部が狭い、曲線状8であるものが挙げられる。特に、図3(a)又は図3(b)に示すように、ポリイミド前駆体溶液2に浸る下部が広い形状が好ましい。ここで、図3はフロートに設けられる孔の壁面の形状を示しており、(a)は直線状の壁面、(b)は曲線状の壁面を示す概略断面図である。
【0033】
浸漬塗布を行う際、円筒状芯体1を、孔6を通してポリイミド前駆体溶液2に浸漬する。その際、円筒状芯体1がフロート5に接触しないようにする。次いで、孔6を通して円筒状芯体1を引き上げる。この際、円筒状芯体1と孔6との間隙により皮膜4が形成される。引き上げ速度としては100〜1500mm/min程度であるのが好ましい。この塗布方法に好ましいポリイミド前駆体溶液の固形分濃度は10〜40質量%、粘度は1〜100Pa・sである。
【0034】
フロート5はポリイミド前駆体溶液2液面を自由に動くことができる。また、フロートの孔6が円形であり、且つ、円筒状芯体1の外周も円形である。従って、円筒状芯体1を、孔6を通して引き上げる際、円筒状芯体1とフロート5との摩擦抵抗が一定になるように、フロート5が動く。即ち、円筒状芯体1を引き上げる際、ある位置で、フロート5と円筒状芯体1との間隙が狭まろうとした場合、狭まろうとした部分では摩擦抵抗が大きくなる。一方、その反対側では摩擦抵抗が小さくなり、一時的に摩擦抵抗が不均一な状態が生じうる。しかしながら、フロート5が自由に動くこと、円筒状芯体1の外周が円形であること、及び、フロートの孔6が円形であることから、そのような摩擦抵抗が不均一な状態から均一な状態になるように、フロート5が動く。従って、フロート5が円筒状芯体1と接触するようなことはない。
【0035】
また、摩擦抵抗が均一となる位置は、円筒状芯体1の外周の円形と、フロートの孔6の円形とがほぼ同心円となる位置である。よって、円筒状芯体1断面の円の中心が、軸方向において、許容範囲内でずれている場合であっても、フロート5はそれに追随するように動く。従って、円筒状芯体1に一定の濡れ膜厚を提供することができる。
【0036】
更に、浸漬塗布法に用いる塗布装置は、円筒状芯体を保持する円筒状芯体保持手段、並びに、所望により、該保持手段を上下方向に移動する第1の移動手段及び/又はポリイミド前駆体溶液を入れる容器を上下方向に移動する第2の移動手段を有してもよい。それらの保持手段、第1の移動手段及び/又は第2の移動手段が、移動の際に引き上げ方向と横断する面でフレを有する場合がある。そのような場合であっても、そのフレに追随して、フロート5は動くことができる。
【0037】
このような、フロートにより膜厚を制御する浸漬塗布法を適用することで、高粘度のポリイミド前駆体溶液を用いることによる、円筒状芯体上端部でのタレは少なくなり、簡易に膜厚を均一にすることができる。
【0038】
−ポリイミド前駆体皮膜形成工程−
ポリイミド前駆体皮膜形成工程では、まず、ポリイミド前駆体塗膜を、DMACを溶解し得る特定溶剤に接触させる。これにより、ポリイミド前駆体塗膜からDMACが特定溶剤に染み出て、代わりに特定溶剤が浸透する。ここで、ポリイミド前駆体は特定溶剤には不溶なのでポリイミド前駆体は析出し、固形化されたポリイミド前駆体皮膜が形成される。その結果、後述するポリイミド前駆体皮膜の乾燥工程が速やかに行われ、乾燥時間を短縮することができる。
【0039】
ポリイミド前駆体塗膜と特定溶剤との接触は、ポリイミド前駆体塗膜形成工程の直後に行うことが好ましい。ポリイミド前駆体溶液塗布後において、塗膜に含まれるDMACは、前述したように常温では乾燥が遅いため、塗膜はいつまででも濡れたままであり、塗膜は重力の影響を受けて常に下方に垂れる。そこで、ポリイミド前駆体の塗布を行った直後に、ポリイミド前駆体塗膜と特定溶剤との接触を行い、ポリイミド前駆体皮膜を固形化することで、垂れを防止することができる。
【0040】
ポリイミド前駆体塗膜と特定溶剤との接触方法としては、ポリイミド前駆体塗膜を特定溶剤に浸漬する方法が好適である。この方法を図4を参照して、説明する。ここで、図4は、ポリイミド前駆体塗膜を特定溶剤に浸漬する方法を説明する概略断面図である。図4に示すように、ポリイミド前駆体塗膜10を形成した円筒状芯体9を、容器12に満たされた特定溶剤11中に浸漬する。円筒状芯体9を、特定溶剤11中に浸漬することで、効率よく、ポリイミド前駆体塗膜10からDMACが特定溶剤11中に染み出て、DMACを離脱させ、均一にポリイミド前駆体を固形化することができる。
【0041】
ポリイミド前駆体塗膜と特定溶剤との接触方法としては、その他、ポリイミド前駆体塗膜に、特定溶剤を流下させたり、吹き付けてもよい。ポリイミド前駆体の塗布方法が遠心成形法の場合、円筒状芯体の回転を止めて特定溶剤に浸してもよいが、円筒状芯体を回転させたまま、内面のポリイミド前駆体の塗膜に特定溶剤を吹きかけてもよい。
【0042】
ポリイミド前駆体を析出させる際、ポリイミド前駆体塗膜を特定溶剤に接触させる時間により、ポリイミド前駆体塗膜からのDMACの溶出量が変化する。塗膜からDMACが完全になくなると、析出して固形化されたポリイミド前駆体皮膜はもろくなってしまう場合があるので、DMACは5〜50質量%程度、残留しているのが好ましい。そのための特定溶剤とのポリイミド前駆体塗膜の接触時間は、ポリイミド前駆体塗膜の膜厚にもよるが、10秒から10分程度が好ましい。ポリイミド前駆体塗膜の膜厚が厚いほど、含まれるDMACが多くなるので、接触時間は長くすることが好ましい。
【0043】
また、ポリイミド前駆体塗膜から特定溶剤へのDMACの溶出は、溶液の温度が高いほど速くなるので、ポリイミド前駆体塗膜と特定溶剤の接触時間は、溶液の温度が高いほど短くてよい。後述する特定溶剤からの気泡を防止するためには、気体の溶解度を下げるために、溶液の温度は高いほど好ましい。
一方、特定溶剤にあらかじめDMACを混合(溶解)しておくことにより、ポリイミド前駆体塗膜からのDMACの溶出量を調整することもできる。すなわち、ポリイミド前駆体塗膜からのDMACの溶出比率は、あらかじめ特定溶剤にDMACを混合(溶解)した比率より下回ることはない。
【0044】
特定溶剤は、繰り返し使用すると徐々にDMACの濃度が高くなっていくので、ある段階で新鮮なものと交換しなくてはならない。交換された特定溶剤にはDMACが混ざっているが、DMACが特定溶剤よりは蒸発しにくい性質を利用して、蒸留等によりDMACと特定溶剤とを分離し、両者を再利用することもできる。
【0045】
ポリイミド前駆体皮膜形成工程における皮膜析出において、接触させる特定溶剤としては、ポリイミド前駆体を不溶であり、かつ、N,N−ジメチルアセトアミドを溶解することが可能であるものが用いられる。具体的には、水、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール等)、炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等)、ケトン類(例えばアセトン、ブタノン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル等)を挙げることができる。これらは単独で使用してもよいし、混合して用いてもよいが、特に、水、又は、水を含む混合物が最も扱いが簡便で好ましい。
【0046】
本発明において、塗膜からDMACが溶出する代わりに、塗膜中に特定溶剤が浸透するが、後述するポリイミド樹脂皮膜形成工程において、加熱して特定溶剤を乾燥させる際に、特定溶剤に気体が溶存していると、皮膜中に気泡を生じることがある。特に、特定溶剤として、水、又は、水を含む混合物を使用した場合、20゜Cの水に対する気体の溶解度は、窒素で約1.19体積%、酸素で約0.64体積%であり、両者が飽和濃度にまで溶解していれば約1.83体積%の空気が水に溶存しており、気体の溶解度は温度と共に低下するので、皮膜を加熱すると水から溶存空気が気泡となって発生するのである。そのため、ポリイミド前駆体を接触させる特定溶剤は、溶存空気を除去する脱気処理がなされていることを要する。
【0047】
特定溶剤の脱気処理には、煮沸する方法、真空近くまで減圧する方法、超音波を印加する方法、などの方法があり、特定溶剤の物性によって、適宜、選択される。脱気処理によって溶存気体を完全になくすことがもちろん好ましいが、気体が溶解度の1/4以下程度に減少すれば、実害はほぼなくすことができる。特定溶剤への空気の溶解は、該特定溶剤が空気に触れると常に起こりうるので、ポリイミド前駆体塗膜と特定溶剤との接触方法が、ポリイミド前駆体塗膜を特定溶剤に浸漬する方法である場合、特定溶剤は脱気処理装置との間で循環させることも好ましい。
【0048】
上記特定溶剤との接触を終えた後、ポリイミド前駆体皮膜表面に液滴が付着している場合がある。その際は、該液滴を拭き取りにより除去してもよいし、アルコール類やアセトン等の速乾性溶剤にポリイミド前駆体皮膜を短時間接液してもよい。
【0049】
−ポリイミド樹脂皮膜形成工程−
ポリイミド樹脂皮膜形成工程においては、ポリイミド前駆体皮膜中に浸透した特定溶剤と、残留するN,N−ジメチルアセトアミドを除去する目的で、乾燥を行う。乾燥条件は、20〜120℃の温度で10〜60分間、行うのが好ましい。また、風を当てることも有効である。乾燥温度は、特定溶剤の溶存気体が気泡になることを低減させるために、時間内において、段階的に上昇させたり、一定速度で上昇させることが好ましい。
【0050】
上記乾燥工程において、円筒状芯体の軸方向を垂直にして乾燥するのが本発明の特徴である。ポリイミド前駆体を析出させた円筒状芯体を小型の乾燥装置に高密度で格納するためには、円筒状芯体の軸方向を垂直にして所定の台に載せ、投入するのが最も好ましい。円筒状芯体の軸方向を水平にして乾燥装置に入れる場合は、円筒状芯体の両端を何らかの方法で支持しなくてはならないので、支持台も大きくなり、乾燥装置も大きくならざるを得ない。
【0051】
また、ポリイミド前駆体塗膜形成方法が前述した浸漬塗布方法である場合、円筒状芯体はその軸方向を垂直にして引き上げられるが、乾燥工程も円筒状芯体の軸方向を垂直にして行うと、円筒状芯体の方向を変換せずにできるので、作業工程が単純化するために好ましい。
【0052】
なお、特定溶剤とDMACとでは、DMACの方が蒸発しにくいので、ポリイミド前駆体皮膜中では先に特定溶剤が蒸発してDMACが残留した状態が形成される。この状態になることにより、析出したポリイミド前駆体が再び溶液状態になる。ただし、DMACは塗布直後よりは大幅に減少しているので、粘度は極めて高くなっており、皮膜が垂れることにはならない。
【0053】
ポリイミド前駆体塗膜形成工程の後、特定溶剤との接触を行わずに円筒状芯体の軸方向を垂直にして乾燥すると、ポリイミド前駆体の溶剤がDMACであっても、垂れは顕著に発生するが、本発明の製造方法によれば、ポリイミド前駆体塗膜を特定溶剤に接触させることで、乾燥時間を短縮することが可能であるため、円筒状芯体の軸方向を垂直にして乾燥しても、垂れの発生を防止することができる。
なお、円筒状芯体の軸方向を垂直にして乾燥すると、皮膜への風の当たり具合によっては、皮膜の一部分に筋やむらが生じることもある。そのような場合には、円筒状芯体の軸方向を垂直にして、更に、回転させることが有効である。回転速度は、10〜100rpm程度が好ましいが、回転装置によってはこれより速くても遅くてもかまわない。円筒状芯体の軸方向を垂直にして回転させることは、円筒状芯体の軸方向を水平にして回転させるよりも装置の構造は簡単である。
【0054】
ポリイミド樹脂皮膜形成工程において、前記乾燥後、好ましくは300〜450℃、より好ましくは350℃前後で、20〜60分間、ポリイミド前駆体皮膜を加熱硬化させることで、ポリイミド樹脂皮膜を形成することができる。加熱硬化の際、溶剤が残留しているとポリイミド樹脂皮膜に膨れが生じることがあるため、加熱硬化前には、完全に残留溶剤を除去することが好ましく、具体的には、加熱硬化前に、200〜250℃の温度で、10〜30分間加熱乾燥することが好ましく、続けて、温度を段階的、又は一定速度で上昇させて、加熱硬化することが好ましい。
【0055】
加熱硬化後、形成されたポリイミド樹脂皮膜を円筒状芯体から剥離することによりポリイミド樹脂製無端ベルトを得る。ベルトには、更に必要に応じて端部の切断加工、穴あけ加工、テープ巻き付け加工等が施されることがある。
【0056】
本発明において、ポリイミド樹脂製無端ベルトの基体となる円筒状芯体としては、その材料は目的に応じて適宜選択され、例えば、アルミニウムや銅、ステンレス等の金属が好ましく用いることができる。
【0057】
また、金属製の円筒状芯体表面にポリイミド前駆体の塗布液を直接塗布した場合には、ポリイミド樹脂皮膜形成工程において、形成されたポリイミド樹脂皮膜が円筒状芯体表面に接着してしまう可能性が高いため、円筒状芯体の表面には、離型性が付与されていることが更に好ましい。離型性を付与するためには、円筒状芯体表面をクロムやニッケルでメッキしたり、フッ素系樹脂やシリコーン樹脂で表面を被覆したり、あるいは表面にポリイミド樹脂が接着しないよう、表面に離型剤を塗布することが有効である。一方、円筒状芯体自体を離型性を有するフッ素系樹脂によって形成することも有効である。
【0058】
通常、フッ素系樹脂による離型性の付与された円筒状芯体は、フッ素系樹脂の有する高い撥液性のため、塗布液を塗布すると、時間経過と共にはじきが発生する可能性が高くなる。しかし、上述した本発明のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法によれば、ポリイミド前駆体皮膜形成工程において、特定溶剤に接触させることで、ポリイミド前駆体の乾燥が速やかに行われ、ポリイミド前駆体は皮膜として固形化されるので、はじきの発生を防止することができ、平滑で均一な皮膜を得ることができる。
【0059】
円筒状芯体の表面を被覆する離型層としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂を挙げあることができるが、中でも、ポリテトラフルオロエチレン樹脂が特に好ましい。これらは単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
離型性を有する円筒状芯体を用いた場合、ポリイミド樹脂皮膜形成工程において、円筒状芯体が耐え得る温度で、つまり円筒状芯体を形成する材料の融点より低い温度で加熱硬化することが望ましい。そのため、離型性を有する円筒状芯体を用いたポリイミド樹脂皮膜形成工程においては、加熱硬化温度は、好ましくは300〜450℃、より好ましくは300℃前後に調整される。
例えば、円筒状芯体として、フッ素系樹脂であるポリテトラフルオロエチレン樹脂を用いた場合には、該ポリテトラフルオロエチレン樹脂の融点が320℃以上であるため、300〜320℃で加熱硬化されることが好ましい。
【0061】
本発明の製造方法により得られるポリイミド樹脂製無端ベルトは、電子写真複写機やレーザープリンタ等の画像形成装置における感光体、帯電手段、転写手段、定着手段等に使用することができる。
【0062】
無端ベルトを転写ベルトや接触帯電フィルムのような帯電体として使用する場合には、樹脂材料の中に必要に応じて導電性物質を分散させる。導電性物質としては、例えば、カーボンブラック、カーボンブラックを造粒したカーボンビーズ、カーボンファイバー、グラファイト等の炭素系物質、銅、銀、アルミニウム等の金属又は合金、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、SnO2−In23複合酸化物等の導電性金属酸化物、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー等が挙げられる。
【0063】
無端ベルトを定着体として使用する場合には、表面に付着するトナーの剥離性の向上のため、ベルト表面に離型性の樹脂皮膜を形成することが有効である。その離型性の樹脂皮膜の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系樹脂が好ましい。また、離型性の樹脂皮膜には、耐久性や静電オフセットの向上のためにカーボン粉末が分散されていてもよい。
【0064】
これらフッ素系樹脂皮膜を形成するには、その水分散液を無端ベルトの表面に塗布して焼き付け処理する方法が好ましい。また、フッ素系樹脂皮膜の密着性が不足する場合には、必要に応じて、ベルト表面にプライマー層をあらかじめ塗布形成する方法がある。プライマー層の材料としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミドイミド、ポリイミド及びこれらの誘導体挙げられ、更にフッ素系樹脂から選ばれる少なくとも一つの化合物を含むことが好ましい。
【0065】
このように、ベルト表面にプライマー層、及びフッ素系樹脂皮膜を形成するには、加熱硬化してポリイミド樹脂皮膜(ベルト)を円筒状芯体の表面に形成してから、これらを塗布してもよいが、ポリイミド前駆体溶液を塗布して水に接触させた後、溶剤を乾燥させてから、又は、溶剤を乾燥させないまま、プライマー層、及びフッ素系樹脂分散液を塗布し、その後に加熱してイミド転化完結反応とフッ素系樹脂皮膜の焼成処理を同時に行ってもよい。この場合、プライマー層がなくてもフッ素系樹脂皮膜の密着性が強固になることもある。
【0066】
無端ベルトを定着体として使用する場合、その厚さとしては25〜500μmの範囲であることが好ましい。必要に応じて設けられるプライマー層の厚さは0.5〜10μmの範囲が好ましい。また、フッ素系樹脂皮膜の厚さは4〜40μmの範囲が好ましい。
【0067】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0068】
参考例1)
−ポリイミド前駆体塗膜形成工程−
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミンと、の等モルを、DMAC中で反応させ、ポリイミド前駆体溶液を調製した。その際、濃度は14質量%、粘度は約5Pa・sに調整した。次に、前記ポリイミド前駆体溶液に、カーボンブラック(商品名:Conductex975、コロンビヤンカーボン社製)を固形分質量比10%で混合し、サンドミルにより24時間分散した。
【0069】
この液を用い、図1に示すようにして浸漬塗布を行った。まず、調製した溶液を内径80mm、高さ500mmの円筒容器(塗布槽3)に入れた。
円筒状芯体1として、外径20mm、長さ400mmのアルミニウム製円筒体の表面に、シリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理したものを使用した。
一方、フロート5として、外径45mm、内径24mm、高さ20mmのアルミニウム製の中空状リングで、内壁には、最も狭い部分の径が21mmの突起を設け、孔6の径が21mmとなるものを使用した。
【0070】
フロート5を上記溶液に浮かべた後、フロート5を動かないよう固定し、円筒状芯体1をその軸方向を垂直にして溶液に1m/minの速度で挿入し、浸漬した。次いで、フロート5の固定を解除し、0.8m/minの速度で円筒状芯体1を引き上げた。引き上げ途中ではフロート5が円筒状芯体1に接触することはなく、円筒状芯体1の表面には濡れ膜厚が約500μmのポリイミド前駆体塗膜4が形成された。
【0071】
−ポリイミド前駆体皮膜形成工程−
ポリイミド前駆体塗膜が形成された後、図4に示すように、円筒状芯体9を水11中に浸漬し、5分間放置した。円筒状芯体9を引き上げると、ポリイミド前駆体は析出物となって、円筒状芯体1の表面に前駆体皮膜が形成されていた。その後、前駆体皮膜表面の水滴を拭き取った。
【0072】
−ポリイミド樹脂皮膜形成工程−
円筒状芯体を軸方向を垂直にして台に載せ、80℃の乾燥炉に入れて40分間乾燥させた。
そして、円筒状芯体を台に載せたまま、150℃で20分間、200℃で20分間、320℃で30分間と温度を上げながら加熱し、硬化させ、ポリイミド樹脂皮膜を形成した。なお、塗布から硬化までの間、円筒状芯体はその軸方向が常に垂直であり、方向を変えることはなかった。
【0073】
ポリイミド樹脂皮膜が室温に冷えた後、円筒状芯体から樹脂皮膜を取り外すことにより、均一の厚さ(40μm)を有するポリイミド樹脂製無端ベルトを得ることができた。円筒状芯体表面には離型剤を塗布してあるので、ポリイミド樹脂が接着することはなかった。この無端ベルトは、体積抵抗が約1010Ωcmであり、接触帯電用ベルトとして使用することができた。
【0074】
(比較例1)
参考例1において、ポリイミド前駆体溶液の塗布後、水中に浸漬しないでそのまま円筒状芯体の軸方向を垂直にして乾燥炉に入れたところ、ポリイミド前駆体塗膜が下方から垂れて、40分後にはほとんどなくなっていた。これは、乾燥前のポリイミド前駆体塗膜が温度の上昇により、粘度が低下して流下したためである。
【0075】
(比較例2)
参考例1において、ポリイミド前駆体溶液の塗布後、水中に浸漬せず、円筒状芯体の軸方向を水平に保持して乾燥炉に入れたところ、上方のポリイミド前駆体塗膜は40分後ではまだ乾燥が不十分で、乾燥には更に30分を要した。また、下方のポリイミド前駆体塗膜からは滴が垂れていたため、均一な厚さの樹脂皮膜を形成することはできなかった。
【0076】
(比較例3)
比較例2において、ポリイミド前駆体溶液の塗布後、水中に浸漬せず、円筒状芯体の軸方向を水平に保持し、乾燥炉に入れて30rpmで回転させたところ、ポリイミド前駆体塗膜は垂れることなく、40分間で乾燥できた。しかしながら、乾燥機には、円筒状芯体の方向を変換する機構と、円筒状芯体の軸方向を水平に保持し、回転させる機構が必要であり、コスト高になることが判明した。
また、加熱硬化の際は、円筒状芯体を軸方向を垂直にして台に載せ、150℃で20分間、200℃で20分間、350℃で30分間と温度を上げながら加熱したが、再び円筒状芯体の方向を変換する必要があった。
【0077】
(実施例
−ポリイミド前駆体塗膜形成工程−
参考例1と同様に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、p−フェニレンジアミンと、の等モルを、DMAC中で反応させて、ポリイミド前駆体溶液を調製した。この際、濃度は23質量%、粘度は約10Pa・sに調整した。次いで、参考例1と同様に浸漬塗布を行った。
【0078】
ここで、円筒状芯体1として、外径30mm、長さ450mmのアルミニウム製円筒体の表面に、シリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理したものを使用した。
フロート5としては、外径55mm、内径35mm、高さ20mmのアルミニウム製の中空状リングで、内壁には、最も狭い部分の径が31.2mmの突起を設け、孔6の径が31.2mmとなるものを使用した。
これにより、円筒状芯体1の表面には濡れ膜厚が約700μmのポリイミド前駆体塗膜4が形成された。
【0079】
−ポリイミド前駆体皮膜形成工程−
ポリイミド前駆体塗膜が形成された後、参考例1と同様に、水11中に浸漬し、8分間放置した。ただし、水11は、あらかじめ煮沸により脱気処理したものとしていないものを用意して、双方について浸漬を行った。円筒状芯体9を水から引き上げると、どちらもポリイミド前駆体は黄白色の析出物となって、円筒状芯体表面に前駆体皮膜が形成されていた。その後、前駆体皮膜表面の水滴を拭き取った。
【0080】
−ポリイミド樹脂皮膜形成工程−
円筒状芯体をその軸方向を垂直にして、30rpmで回転する台を設けた80℃の乾燥炉に入れて、50分間乾燥させた。
脱気処理した水に浸漬したものの乾燥後の皮膜には気泡や筋はなかったが、塗膜を脱気処理していない水に浸漬したものは、0.5mmほどの大きさの気泡が数個あった。これは、実施例では、塗膜の膜厚が参考例1の場合よりも厚いので、水中の溶存空気が皮膜に残るためである。
また、脱気処理した水に浸漬したものの乾燥時に、回転を行わなかった場合には、皮膜の一部分に縦方向の筋が発生することがあったが、これも塗膜の膜厚が参考例1の場合よりも厚いので、温風の影響を受けやすくなったためと考えられる。
【0081】
脱気処理した水に浸漬し、回転させつつ乾燥を行って形成されたポリイミド前駆体皮膜についてのみ、以下に示す処理を実施した。
ポリイミド前駆体皮膜が室温に冷えた後、その表面に、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)のディスパージョン水性塗布液(商品名:AW5000、ダイキン工業(株)製)を浸漬塗布した。すなわち、円筒状芯体を軸方向を垂直にして塗布液中に浸漬し、次いで300mm/minの速度で引き上げ、PFA塗膜を形成した。
【0082】
続いて、室温で5分間の乾燥後、100℃で10分間、150℃で20分間、200℃で20分間加熱乾燥させた。これにより、ポリイミド前駆体皮膜からはDMACと水が除去され、PFA塗膜からは水が除去された。
【0083】
その後、380℃で30分間加熱してポリイミド前駆体皮膜を硬化させ、ポリイミド樹脂皮膜を形成すると共に、PFA塗膜を焼成した。室温に冷えてから皮膜を取り外すことにより、均一な厚さ(75μm)を有するポリイミド樹脂製無端ベルト上に、厚さ30μmのPFA層を有する電子写真用定着ベルトを得ることができた。なお、ポリイミド樹脂とPFA層の密着性は強固であった。
【0084】
(実施例
−ポリイミド前駆体塗膜形成工程−
実施例と同様にして調製したポリイミド前駆体溶液に、カーボンブラック(商品名:Conductex975、コロンビヤンカーボン社製)を固形分質量比14%で混合し、次いで、ボールミルにより24時間分散した。その後、参考例1と同様に浸漬塗布を行った。
【0085】
ここで、円筒状芯体1として、外径168mm、長さ400mmのアルミニウム製円筒体の表面に、参考例1と同じくシリコーン系離型剤の処理をしたものを使用した。
フロート5として、外径200mm、内径180mm、高さ30mmのステンレス製の中空状のリングを作製し、この内壁に、外径が180mmで断面が三角形で、最も狭い部分の内径が169.4mmのテフロン(登録商標)製リングを嵌合させ、孔6の径が169.4mmとなるものを使用した。
これにより、円筒状芯体1には濡れ膜厚が約700μmのポリイミド前駆体塗膜が形成された。
【0086】
−ポリイミド前駆体皮膜形成工程−
ポリイミド前駆体塗膜が形成された後、参考例1と同様に、水11中に浸漬し、8分間放置した。ただし、使用した水は、予め超音波により脱気処理を施したものであった。円筒状芯体9を水11から引き上げると、ポリイミド前駆体は析出物となって、円筒状芯体表面に前駆体皮膜が形成されていた。その後、前駆体皮膜表面の水滴を拭き取った。
【0087】
−ポリイミド樹脂皮膜形成工程−
ポリイミド前駆体皮膜が形成された円筒状芯体を、実施例と同様にして、乾燥と加熱硬化を行い、ポリイミド樹脂皮膜を形成した。
ポリイミド樹脂皮膜が室温に冷えた後、ポリイミド樹脂皮膜を取り外すことにより、均一な厚さ(75μm)を有するポリイミド樹脂製無端ベルトを得ることができた。体積抵抗を測定すると、約109Ωcmであり、電子写真用転写ベルトとして使用することができた。
【0088】
参考例2
参考例1において、円筒状芯体1として、アルミニウム製円筒体を、外径20mm、長さ400mmのポリテトラフルオロエチレン製円筒体に代えた他は、参考例1と同様にしてポリイミド樹脂製無端ベルトを作製した。
作製したポリイミド樹脂製無端ベルトは、均一な厚さ(40μm)を有し、参考例1と同様に、接触帯電用ベルトとして使用することができた。
【0089】
参考例3
参考例1において、円筒状芯体1として、アルミニウム製円筒体を、アルミニウム製円筒体表面にポリテトラフルオロエチレンを被覆したものに代えた他は、参考例1と同様にしてポリイミド樹脂製無端ベルトを作製した。
作製したポリイミド樹脂製無端ベルトは、均一な厚さ(40μm)を有し、参考例1と同様に、接触帯電用ベルトとして使用することができた。
【0090】
<本発明の環状塗布装置>
以下、図を参照して、本発明のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法のポリイミド前駆体塗膜形成工程において、好適に用いられる環状塗布装置(本発明の環状塗布装置)について説明する。
図5は本発明の環状塗布装置を示す概略斜視図であり、図6は本発明の環状塗布装置を示す概略断面図である。ただし、円筒状芯体100の周辺主要部のみを示し、他の部分は省略した。なお、図5によれば、環状塗布槽200は、環状又は円筒状の壁面で構成されているが、かかる形状はこれに限定されず、角状、楕円状であってもよく、更に、底面の形状も特に限定されない。
【0091】
図5及び図6の示すように、環状塗布槽200の底部には環状シール材400が取り付けられ、円筒状芯体100を環状シール材400の中心に挿通させたところに、環状塗布槽200に塗布液500を収容する。円筒状芯体100の下端は、中間体800を介して昇降台600に取り付けられ、該昇降台600の稼動により相対的に環状塗布槽200の下方から上昇させると、塗布液500が円筒状芯体100の表面に付着し、塗膜500aが形成される。
【0092】
環状シール材400の材質は、塗布液によって侵されない柔軟性のものであれば何でもよいが、耐溶剤性の観点から、ポリエチレンやポリプロピレン等が好適である。環状シール材400の厚みは0.1〜1mmが好ましく、その内径は、円筒状芯体100の外径より、0.5〜3mm程度小さいことが好ましい。
【0093】
本発明においては、環状塗布槽200は塗布槽支持台300に非固定状態で載せられ、かつ、水平方向に自在に移動可能である。そのため、上昇する円筒状芯体100と、環状塗布槽200と、の間に、仮に、指が挟まれることがあっても、環状塗布槽200は容易に持ち上がるので、指に負傷を与えることがないのである。ただし、塗布中に環状塗布槽200が持ち上がらないようにするため、環状塗布槽200はある程度の質量を有していることが好ましいが、その質量は、使用される円筒状芯体100の径に対応する環状塗布層200自体の径(又は、容積)によって従属的に異なる。例えば、直径30mmの円筒状芯体100を用いる場合の環状塗布層200としては、錘などを付けることで、1〜5kg(塗布液500の質量を除く)に調整されていることが好ましい。
【0094】
また、環状塗布槽200は水平方向に自在に移動可能にしてあるので、塗布を開始する際の中心軸の位置合わせは極めて容易になる。更に、円筒状芯体100が仮に傾いて上昇することがあっても、環状シール材400の水平方向の位置は、接触する円筒状芯体100によって支配されているため、環状塗布槽200は水平方向で円筒状芯体100に追従して移動できるので、円筒状芯体100の傾きが大きくなり転倒するとか、塗布液500が円筒状芯体100と環状シール材400との隙間から漏れる等の支障が生じることがない。
【0095】
環状塗布槽200を塗布槽支持台300上で、水平方向に自在に移動可能にするには、例えば、ボール、ボールプランジャ、コロ(その場合は井型に4本)等の自在移動体350を介在させる方法を使用することができる。
【0096】
本発明の環状塗布装置は、図7に示すように、更に、過剰に形成された塗膜500bの厚さを調整するために、環状塗布槽200上に、環状体900が設置されていてもよい。ここで、図7は、環状体900が設けられた本発明の環状塗布装置を示す概略断面図である。図7に示すように、500bは高粘度のために厚く盛り上がって形成された塗膜であるが、円筒状芯体100の上昇に伴い、過剰に形成された塗膜500bは環状体900によって掻き落とされる。環状体900の内径は、円筒状芯体100の外径よりも、所望の濡れ膜厚を鑑みて、一定の間隔だけ大きくすればよく、間隔は所望の濡れ膜厚の1倍〜3倍であるのがよい。通常、濡れ膜厚と塗布液の不揮発分濃度の積から乾燥膜厚が求められるが、間隔を濡れ膜厚の1倍〜3倍とするのは、塗布液の粘度、表面張力及び硬化時の収縮などにより、間隔が濡れ膜厚に一致するとは限らないからである。
【0097】
環状体900は環状シール材400と中心軸を合わせて、支持部材910により環状塗布槽200上に固定される。円筒状芯体100が垂直に上昇する限りは、環状塗布槽200は水平方向で円筒状芯体100に追従して移動することができるので、環状体900の中心軸と、円筒状芯体100の中心軸と、の位置合わせは行わなくてもよい。
【0098】
一方、図8に示すように、環状体は、環状塗布槽200上に固定されるのではなく、塗布液500液面に浮遊させてもよい。本発明においては、塗布液500液面に浮遊している環状体は、フロート920と呼び、固定された環状体900とは区別している。ここで、図8は、フロート920が設けられた本発明の環状塗布装置を示す概略断面図である。図8に示すように、環状塗布槽200内の塗布液500液面に、円筒状芯体100の外径よりも一定の間隔だけ大きい内径を有する環状のフロート920を浮かべる。フロート920の内径は、環状体900の内径と同様に設定することができる。
【0099】
フロート920は、塗布液500に侵されない材質であれば任意であり、種々のプラスチックや金属が用いられる。フロートが塗布液500液面に浮きやすいように、中空構造や発泡体であってもよい。
【0100】
環状体900又はフロート920の内壁は、どちらも、最も狭くなっている部分から傾斜面を有して広がっている形状(テーパー形状)であるが、これは曲面で形成されていてもよく、最狭部が上方にあるように配されることが好ましい。いずれの場合も、最狭部分の内径を、環状体900又はフロート920の内径とする。
【0101】
フロート920は塗布液500液面をわずかの力で動くことができるので、円筒状芯体100がフロート920の孔を通過する際には、円筒状芯体100とフロート920との摩擦抵抗が周方向で一定になるようにフロート920が動く。そのため、例えば、ある位置で、フロート920と円筒状芯体100との間隔が狭まろうとした場合、その部分では摩擦抵抗が大きくなる一方、その反対側では摩擦抵抗が小さくなり、一時的に摩擦抵抗が不均一な状態が生じる。しかし、フロート920が自由に動くことから、そのような摩擦抵抗が不均一な状態から均一な状態、すなわち両者の中心軸が一致するようにフロートが動くため、フロート920が円筒状芯体100と接触するようなことがなくなる。
【0102】
また、塗布の際、昇降装置の精度上の関係で、円筒状芯体100が傾く場合があっても、フロート920はそれに追随して動くことができる。従って、フロート920は、固定された環状体900よりも、形成される塗膜500aを精度よく均一な厚さに調整することができる。
塗布作業をしない時、フロート920は保持機構等により保持されていてもよい。保持機構としは、例えば、3本以上のピンが挙げられる。
【0103】
本発明の環状塗布装置において、円筒状芯体100を相対的に環状塗布槽200の下方かから上昇させて、塗布液500を通過させればいよいので、円筒状芯体100の移動に用いられる昇降装置(図示せず)は、円筒状芯体100を固定して環状塗布槽200を下降、又は、環状塗布槽200を固定して円筒状芯体100を上昇させるいずれの機構を有していてもよい。
【0104】
円筒状芯体100は、所望の長さのものを2つ以上、直に連結させてもよいが、円筒状芯体100をつなぎ合わせる中間体800を有していてもよい。上述のように、ポリイミド前駆体を溶解するDMACは乾燥が遅いので、塗布の最中でも塗膜500aの上部は垂れやすいが、円筒状芯体100の上側に中間体800を嵌めておくと、垂れの多くは中間体800の表面に形成された塗膜500aに生じ、円筒状芯体100の表面では垂れは生じにくくなるため、膜厚500aの上下方向の均一性を確保するためには、中間体800が設けられていることが好ましい。
【0105】
中間体800の材質は、アルミニウムやステンレス等の金属か、テフロン(R)やポリアセタール等の耐溶剤性の樹脂であることが好ましい。中間体800の両端部は、円筒状芯体100と嵌合できるような構造であることが好ましい。塗布終了後、中間体800は円筒状芯体100から外され、付着した塗膜500aを洗浄されて再使用される。中間体800の洗浄が行いやすいよう、表面は離型剤処理が施されていてもよい。
【0106】
更に、本発明の環状塗布装置には、環状塗布槽200に塗布液500を注入するために、必要に応じて、ポンプなどの塗布液供給手段が設けられてもよい。また、環状塗布槽200を複数備えて、一つの昇降装置で複数本の塗布が同時にできるようにしてもよい。
【0107】
以下、本発明の環状塗布装置を用いた例示的一態様としての塗布方法ついて説明する。
塗布液500としては、ポリイミド前駆体のN−メチルピロリドン溶液(商品名:Uワニス、宇部興産(株)製)を用意した。該N−メチルピロリドン溶液は、固形分濃度は18%で、粘度は約5Pa・sであった。
円筒状芯体100としては、外径30mm、長さ400mmのアルミニウム製円筒体を用意した。その表面にはシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理した。
【0108】
内径80mm、高さ50mmの環状塗布槽200に、中央に内径29mmの孔を設けた0.5mm厚の軟質ポリエチレン製の環状シール材400を取り付けた。また、環状塗布槽200の上部には、内径31.2mmの環状体900を、その中心軸と、環状シール材400の中心軸と、を合わせて取り付けた。
環状塗布槽200は、錘を取り付けて、質量を約3kgにした。4本のコロ(5mmφのステンレス棒)を井型に組んで塗布槽支持台300に載せ、更にその上に環状塗布槽200を載せた。これにより、環状塗布槽200は塗布槽支持台300上で水平方向に自在に移動可能である。
【0109】
環状シール材400の孔に、外径30mm、長さ60mmのポリエーテル樹脂製の中間体800を取り付けた後、環状塗布槽200に400mlの溶液を入れた。
次に、昇降台600に他の中間体800を載せ、これに円筒状芯体100を載せ、手で環状塗布槽200を動かして位置合わせをしながら、環状シール材400に取り付けられている中間体800に嵌め込んだ。その際、環状塗布槽200は水平方向に移動可能であるので、位置合わせは容易であった。また、環状塗布槽200は塗布槽支持台300に載せられているだけなので、仮に、手が円筒状芯体100と、環状塗布槽200と、の間に挟まっても、環状塗布槽200が持ち上がるため手を傷める懸念はない。
そして、昇降台600を700mm/minで上昇させて塗布を行った。その結果、円筒状芯体100には濡れ膜厚が約700μmのポリイミド前駆体塗膜500aが形成された。形成されたポリイミド前駆体塗膜500aは、均一な膜厚を有していた。なお、環状塗布槽200は約3kgの質量なので、塗布中に持ち上がることはなかった。
【0110】
その後、円筒状芯体100の表面に形成されたポリイミド前駆体塗膜は、溶剤の乾燥工程、及び、加熱硬化させる工程を経ることによりポリイミド樹脂皮膜となり、円筒状芯体100から取り外されることによりポリイミド樹脂製無端ベルトとなった。前記溶剤の乾燥工程、及び、加熱硬化させる工程としては、例えば、上述したポリイミド前駆体皮膜形成工程及びポリイミド樹脂皮膜形成工程が好ましく使用することができる。
【0111】
以上、説明したように、本発明の環状塗布装置はポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法に好適に用いることができるが、円筒状芯体に他の溶液を塗布する際にも使用することができる。
【0112】
【発明の効果】
本発明によれば、N,N−ジメチルアセトアミドを溶剤として用いたポリイミド樹脂の無端ベルトを形成するに際して、皮膜の乾燥時間を短縮し、更に、投入数を高密度化することで、乾燥装置を比較的小型化することの可能なポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法を提供することができる。また、本発明のポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法に好適に用いられる環状塗布装置であって、粘度の高い塗布液を用いても、膜厚を均一に塗布でき、指等が円筒状芯体と環状塗布槽との間に挟まれた場合でも、容易に対処することが可能な環状塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 フロートにより膜厚を制御する浸漬塗布方法に用いる装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】 図1に示すフロートの設置状態を説明するための要部拡大斜視図である。
【図3】 フロートに設けられる孔の壁面の形状を示しており、(a)は直線状の壁面、(b)は曲線状の壁面を示す概略断面図である。
【図4】 ポリイミド前駆体塗膜を特定溶剤に浸漬する方法を説明する概略断面図である。
【図5】 本発明の環状塗布装置を示す概略斜視図である。
【図6】 本発明の環状塗布装置を示す概略断面図である。
【図7】 環状体が設けられた本発明の環状塗布装置を示す概略断面図である。
【図8】 フロートが設けられた本発明の環状塗布装置を示す概略断面図である。
【図9】 従来の環状塗布方法に用いられる環状塗布装置を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1、9、100 円筒状芯体
2 ポリイミド前駆体溶液
3 塗布槽
4、10 ポリイミド前駆体塗膜
5 フロート
6 フロートの孔
7 傾斜した直線状のフロート内壁
8 曲線状のフロート内壁
11 特定溶剤
12 容器
200 環状塗布槽
300 塗布槽支持台
350 自在移動体
400 環状シール材
500 塗布液
500a 塗膜
500b 盛り上がって形成された塗膜
600 昇降台
700 支柱
710、720 ネジ
800 中間体
900 環状体
910 支持部材
920 フロート

Claims (4)

  1. ポリイミド前駆体をN,N−ジメチルアセトアミドに溶解した溶液を、円筒状芯体表面に塗布し、ポリイミド前駆体塗膜を形成する工程と、
    乾燥前の前記ポリイミド前駆体塗膜を、N,N−ジメチルアセトアミドを溶解し得ると共に、脱気処理された特定溶剤に接触させて、ポリイミド前駆体が析出したポリイミド前駆体皮膜を形成する工程と、
    前記ポリイミド前駆体皮膜を、前記円筒状芯体の軸方向を垂直にして乾燥、加熱硬化させ、ポリイミド樹脂皮膜を形成する工程と、
    を有することを特徴とするポリイミド樹脂製無端ベルトの製造方法。
  2. 底部に環状のシール材を有し、塗布液を収容する環状塗布槽を有し、前記シール材に嵌合状態で挿通させつつ円筒状芯体を前記環状塗布槽に通して、該円筒状芯体表面に前記塗布液を塗布する環状塗布装置であって、
    前記環状塗布槽が塗布槽支持台に非固定状態で載せられ、かつ、水平方向に自在に移動可能であることを特徴とする環状塗布装置。
  3. 前記環状塗布槽上に、前記円筒状芯体の外径よりも大きな内径を有する環状体が配置されてなることを特徴とする請求項に記載の環状塗布装置。
  4. 前記環状塗布槽内の塗布液液面に、前記円筒状芯体の外径よりも大きな内径を有する環状のフロートを浮かべてなることを特徴とする請求項に記載の環状塗布装置。
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