JP4604415B2 - スピーカ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は音響機器等に用いられる動電型のスピーカに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電気音響変換器の一つとして動電型のスピーカがあり、音楽・音声の再生に利用されている。以下、図面を用いて、従来のスピーカについて説明する。図14は従来のスピーカの断面構造を示すものであり、1は上ヨーク、2はマグネット、3はマグネット2の下面に設けられた下ヨーク、4は下ヨーク3と連続しているセンターポール、6はフレーム、7aはボイスコイルボビン7bに巻いたボイスコイル、19はボイスコイルボビン7bの外周をフレーム6に固着したダンパー、10は内周をボイスコイルボビン7bに、外周を後述するエッジに固着した振動板、11は内周を振動板10に、外周をフレーム6に固着したエッジ、8は振動板10の中央部に固着したセンターキャップである。
【0003】
以上のように構成されたスピーカについて、以下その動作について説明する。ボイスコイルボビン7bに巻いてあるボイスコイル7aに電流を流すと、上ヨーク1とセンターポール4で構成された磁気空隙内の磁界に対し電流が直交することになり、フレミングの法則により、磁界と電流のそれぞれと直角な方向に力が生じる。このとき、ダンパー19およびエッジ11はボイスコイル7aをセンターポール4と同心になるように支持し、振動板10が振動したときに上ヨーク1の厚み方向の中点と、ボイスコイル7aのコイル巻幅の中点を一致させるように力が加わる振幅方向のばねとして働く。ボイスコイル7aに交流を流すと、ボイスコイルボビン7bと振動板10はダンパー19およびエッジ11に支持されながら振動する。それにより、空気が振動され疎密波が発生し、音となって聞こえる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような構成では、第一の問題点として、ダンパー19およびエッジ11の支持力の非対称性や、スピーカ自体を箱に取り付けて再生したときに振動板10に加わる背圧の非対称性によって振動系が理想的なピストン移動を行なわず、ローリング現象(左右方向のゆれ)を起こすという課題がある。このローリング現象が生じたとき、振動板10の全体が同相に動かず、部分的に逆相に動き、図15のa曲線に示すように音圧周波数特性に乱れが発生する。第二の問題点として、ダンパー19の力と変位の関係がリニアでなく、さらにヒステリシスも持っているため、図15のb曲線、c曲線に示すように音圧周波数特性に高調波歪が発生するという課題がある。
【0005】
これらの課題を解決するために、従来からダンパーを廃止するために軸受とシャフトを用いて上下振幅のピストン運動をサポートする方式が提案されているが、シャフトと軸受の摺動音が発生し、実現が困難であった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するものであり、摺動音なくローリング現象を防ぐことができ、非直線性による歪の原因となっているダンパーを使用しない構成にすることができるスピーカおよびその製造法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の発明は、リング状の上ヨークと、リング状のマグネットと、センターポールと連結された下ヨークとから構成される磁気回路と、この磁気回路に固定されたフレームと、このフレームに固定された振動板と、この振動板の内周に設けられたボビンに巻装したボイスコイルと、このボイスコイルのボビンに固定されたセンターキャップと、このセンターキャップの中心に固定されたシャフトと、前記磁気回路の中心部に設けられた貫通孔に固定され、かつ前記センターポール上の漏洩磁束が最大になる位置に配置され、前記シャフトと嵌合する軸受と、前記シャフトと軸受の隙間に注入した磁性流体を備えたものであり、磁性流体によりシャフトと軸受の摺動音を抑え、ローリング現象もなくかつ歪みも少ない優れたスピーカが得られるといった作用を有する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1の発明において、軸受に磁性流体のたまり部を設けたもので、磁性流体を一定量、留める事が可能で経年変化の少ないスピーカが得られるといった作用を有する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1の発明において、軸受を自己潤滑性樹脂材料で構成したもので、シャフトと軸受の摺動音を長時間抑える作用を有する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1の発明において、シャフトを非磁性体金属材料で構成したもので、スムーズな上下振動が得られるといった作用を有する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1の発明において、シャフトを磁性体金属材料で構成したもので、電磁制動効果により振動に対するダンピングを抑えるという作用を有する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1の発明において、シャフトの直径を1mmから3mmの範囲内としたもので、振動系の重量増加による音圧の低下を最小限にする作用を有する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1の発明において、シャフトと軸受のクリアランスを0.008〜0.015mmの範囲内としたもので、摺動音の発生を最小とする作用を有する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1の発明において、磁性流体の粘度の制御によって、スピーカの共振のするどさ(Q)を制御できるといった作用を有する。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項1の発明において、センターポールの貫通孔を多孔性材料で封止する構成としたもので、通気性を確保しながら、外部からの異物の混入を防止出来るといった作用を有する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図12を用いて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明のスピーカの実施の形態1を説明するための構造断面図である。図2は同実施の形態1における要部断面図である。図3は同実施の形態1における特性図である。
【0018】
図1において、1はリング状の上ヨーク、2はリング状のマグネット、3はセンターポール4と連結された下ヨーク、5はセンターポール4に固定された軸受、6は上ヨーク1に固定されたフレーム、7aは振動板10の内周に固定されたボイスコイルであり、コイルが巻かれたボビン7bが振動板10の内周に接合されている。8はボイスコイル7aの内周に固定されたセンターキャップであり、ボビンの上端を塞ぐように接合されている。9はセンターキャップ8の中心部に固定されたシャフト、11は振動板10の外周に設けられ、フレーム6に固定されるエッジ、12はシャフト9と軸受5の隙間に注入された磁性流体である。図2はセンターポール4の上面から距離Xにおける場所での磁束密度を観測した様子を表し、図3はその測定結果である。
【0019】
本実施の形態1では、センターポール4の上面から1mmの位置での磁束密度が最大になる。この位置に軸受5を配置することにより磁性流体12がこの場所にとどまり、シャフト9の振幅によって磁性流体12が飛散るような現象も発生しない。ここで、軸受5はセンターポール4の中心に設けた貫通孔4aに配置されており、その軸受5にシャフト9が貫通している。
【0020】
図4は本実施の形態1で構成されたスピーカの周波数対音圧、歪み特性を示すものであり、あきらかに第2高調波歪(曲線b)、第3高調波歪(曲線c)ともに従来のスピーカのものよりも大幅に低減している。
【0021】
このような構成により、ダンパーを用いず、摺動音の発生もない優れた特性のスピーカが実現できる。
【0022】
実施の形態1において、軸受5の構造を図5に示すように上端面に行くにしたがって広げ、その部分を磁性流体のたまり部5aとして、小径部5bを軸受として構成することで、ある一定量の磁性流体12を注入可能で、かつ製造上も磁性流体12が注入しやすくなり、作業効率が向上する。
【0023】
実施の形態1において、軸受5の材質を自己潤滑性樹脂材料で構成することで、シャフト9と軸受5の摩擦が増大しても自己潤滑性樹脂から油成分がにじみ出し、摺動音を抑えることができる。
【0024】
実施の形態1において、シャフト9の材質を非磁性体金属材料で構成することで、センターポール4周辺の漏洩磁束に影響されることなく、スムーズな上下振動が可能である。
【0025】
実施の形態1において、シャフト9の材質を磁性体金属で構成するとき、図6に示すように、センターポール4の貫通孔4aへの磁性体金属のシャフト9の挿入量が重要となる。シャフト9を徐々に挿入した場合に、シャフト9にかかる磁気応力をシミュレーションする。その結果が図7である。ある距離Yの位置でシャフト9に磁気応力のかからない点が存在し、この位置の上下方向ともある程度、対照な応力がかかっていることがわかる。すなわち実施の形態1において、磁性体金属のシャフト9を用いる場合、センターポール4の上面から貫通孔4a内部に向かって7mmの位置で応力がゼロになり、この位置でシャフト9は磁気的に平衡し、この位置にとどまる。この位置を基準に振動系が上下に振幅できる構成にすれば、振動系が振幅した際、大振幅になるほど磁気的な応力がかかり、いわゆる電磁制動効果によりダンピングが得られる。
【0026】
実施の形態1において、シャフト9の直径を1mmから3mmの範囲内に設定することで、この寸法内であれば振動系重量の増加が最小限に抑えられ音圧の著しい低下を招くことなく高性能なスピーカが実現できる。
【0027】
実施の形態1において、軸受5とシャフト9のクリアランスを0.008〜0.015mmの範囲内に設定することで、この寸法内であれば長期振動や温度サイクルによる摺動音の増加がなく、信頼性の高いスピーカが実現できる。
【0028】
実施の形態1において、シャフト9と軸受5の隙間に注入する磁性流体12の粘度を変えることで、スピーカの低減特性を制御することができる。図8に示す周波数対音圧特性は、それぞれAは2000cps、Bは1000cPs、Cは500cpsの粘度の磁性流体12を使用した場合の周波数特性であり、磁性流体12の粘度を変えてスピーカの低減特性を制御している。以上のように磁性流体の粘度によって低減のQが制御可能である。
【0029】
実施の形態1において、図9に示すように、センターポール4の貫通孔4aの下端面に外部から異物(例えば鉄粉など)が混入しないよう、多孔性材料よりなる封口材13を固着し、貫通孔を封止する。このように多孔性材料は、無数の微小孔があり、これによって通気性を確保し、スピーカの特性に影響を与えずに外部からの異物の混入が防止できる。
【0030】
(実施の形態2)
図10は本発明のスピーカの実施の形態2を説明するための断面図である。図10において、1はリング状の上ヨーク、2はリング状のマグネット、3はセンターポール4と連結された下ヨーク、5はセンターポール4に固定された軸受、6は上ヨーク1に固定されたフレーム、7aは振動板10の内周に固定されたボイスコイルであり、コイルが巻かれたボビンが振動板10の内周に接合されている。8はボイスコイル7aの内周に固定されたセンターキャップであり、ボビンの上端を塞ぐように接合されている。9はセンターキャップ8の中心部に固定されたシャフト、11は振動板10の外周に設けられ、フレーム6に固定されるエッジ、14は軸受5の隙間に注入された潤滑剤であり、上軸受ピース5cと下軸受ピース5dが所定の隙間を保つように軸受5が構成され、その軸受5はセンターポール4の中心に設けた貫通孔4aに配置されており、その軸受5にシャフト9が貫通している。
【0031】
本実施の形態2においては、実施の形態1と同様に第2高調波歪、第3高調波歪ともに従来のスピーカよりも大幅に低減することができる。
【0032】
このような構成により、ダンパーを用いず、摺動音の発生もない優れた特性のスピーカが実現できる。
【0033】
実施の形態2において、軸受5の材質を自己潤滑性樹脂材料で構成することで、シャフト9と軸受5の摩擦が増大しても自己潤滑性樹脂から油成分がにじみ出し、摺動音を抑えることができる。
【0034】
実施の形態2において、シャフト9の材質を非磁性体金属材料で構成することで、センターポール4周辺の漏洩磁束に影響されることなく、スムーズな上下振動が可能である。
【0035】
実施の形態2において、シャフト9の材質を磁性体金属で構成するとき、図6に示すように、実施の形態1と同様にセンターポール4の貫通孔4aへの磁性体金属のシャフト9の挿入量が重要となる。シャフト9を徐々に挿入した場合に、シャフト9にかかる磁気応力をシミュレーションする。その結果が図7である。ある距離Yの位置でシャフト9に磁気応力のかからない点が存在し、この位置の上下方向ともある程度、対照な応力がかかっていることがわかる。すなわち実施の形態2において、磁性体金属のシャフト9を用いる場合、センターポール4の上面から貫通孔4a内部に向かって7mmの位置で応力がゼロになり、この位置でシャフト9は磁気的に平衡し、この位置にとどまる。この位置を基準に振動系が上下に振幅できる構成にすれば、振動系が振幅した際、大振幅になるほど磁気的な応力がかかり、いわゆる電磁制動効果によりダンピングが得られる。
【0036】
実施の形態2において、シャフト9の直径を1mmから3mmの範囲内に設定することで、この寸法内であれば振動系重量の増加が最小限に抑えられ音圧の著しい低下を招くことなく高性能なスピーカが実現できる。
【0037】
実施の形態2において、軸受5とシャフト9のクリアランスを0.008〜0.015mmの範囲内に設定することで、この寸法内であれば長期振動や温度サイクルによる摺動音の増加がなく、信頼性の高いスピーカが実現できる。
【0038】
実施の形態2において、センターポール4の貫通孔4aの下端面に外部から異物(例えば鉄粉など)が混入しないよう、多孔性材料よりなる封口材13を固着し、貫通孔を封止する。このように多孔性材料は、無数の微小孔があり、これによって通気性を確保し、スピーカの特性に影響を与えずに外部からの異物の混入が防止できる。
【0039】
実施の形態2において、図11の断面図に示すように、2つの軸受5を精度良く保持、固定するために円筒形金属15で保持する構造としたもので、この2つの軸受5に隙間を設けてここに潤滑剤14を注入する。このように2つの軸受5と潤滑剤14をあらかじめ注入した複合部品とすることで、軸受の精度が維持でき、かつスピーカの組み立て工数も削減できる。
【0040】
実施の形態2において、シリコン系潤滑剤を用いることで、経年変化及び温度変化などで摺動音が発生しない優れたスピーカを実現できる。また、フッソ系潤滑剤を用いても同様の効果が得られる。
【0041】
(実施の形態3)
図12は本発明の実施の形態3を説明する組立図である。本発明の実施の形態3は、実施の形態1において、振動板10、エッジ11、シャフト9が固定されたセンターキャップ8、振動板10の内周に固定され、センターキャップが内周に固定されたボイスコイル7aから構成される振動系組立品16と、上ヨーク1、マグネット2、下ヨーク3及びフレーム6を固定し、さらに軸受5を固定した界磁部部品17とを用意し、センターポール4に固定した軸受5をガイドにフレーム6にエッジ11を固着する。
【0042】
従来、ボイスコイルをセンターポール4の中心部に固定するためには、図13に示すようなスペーサ18を使用していた。従来の工法では、スペーサ18でセンターポール4にボイスコイルボビン7bを固定し、ボイスコイルボビン7bと振動板10の内周面を、フレーム6にエッジ11をそれぞれ接着し、乾燥後にスペーサ18を抜いてセンターキャップ8を装着し、その後にセンターキャップを接着する方式であったため、軸受5の中心とシャフト9の位置がずれる可能性があった。
【0043】
この実施の形態3による工法では、それぞれの組立部品の精度がある程度確保でき、最終的にセンターポールとの位置関係がシャフト9と軸受5により決定されるので、高精度でかつ少ない工数でスピーカが製造できる。
【0044】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4は、実施の形態2において、実施の形態3と同様の組立方式を用いるもので、実施の形態3と同様の効果が得られる。
【0045】
【発明の効果】
以上のように本発明によるスピーカは、ローリング現象がなく、摺動音も発生しない低歪みの優れた特性を有するスピーカを実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のスピーカの実施の形態1を説明するための断面図
【図2】 同センターポールからの距離を説明するための断面図
【図3】 同センターポールからの距離X点での磁束密度変化を説明するための特性図
【図4】 同実施の形態1におけるスピーカの特性図
【図5】 同実施の形態1に使用する軸受の断面図
【図6】 同実施の形態1を説明するための断面図
【図7】 同シャフトが受ける磁気応力を説明するための特性図
【図8】 同実施の形態1を説明するための特性図
【図9】 同実施の形態1を説明するための断面図
【図10】 本発明のスピーカの実施の形態2を説明するための断面図
【図11】 同実施の形態2に使用する軸受の断面図
【図12】 本発明の実施の形態3におけるスピーカ製造法を説明するための組立斜視図
【図13】 従来のスピーカの組立てに使用するスペーサの斜視図
【図14】 同スピーカの断面図
【図15】 従来のスピーカの特性図
【符号の説明】
1 上ヨーク
2 マグネット
3 下ヨーク
4 センターポール
5 軸受
6 フレーム
7a ボイスコイル
7b ボイスコイルボビン
8 センターキャップ
9 シャフト
10 振動板
11 エッジ
12 磁性流体
13 封口材
14 潤滑剤
15 円筒形金属
16 振動系組立部品
17 界磁部組立部品
18 スペーサ
19 ダンパー
Claims (9)
- リング状の上ヨークと、リング状のマグネットと、センターポールと連結された下ヨークとから構成される磁気回路と、この磁気回路に固定されたフレームと、このフレームに固定された振動板と、この振動板の内周に設けられたボビンに巻装したボイスコイルと、このボビンに固定されたセンターキャップと、このセンターキャップの中心に固定されたシャフトと、前記磁気回路の中心部に設けられた貫通孔に固定され、かつ前記センターポール上の漏洩磁束が最大になる位置に配置され、前記シャフトと嵌合する軸受と、前記シャフトと前記軸受の隙間に注入した磁性流体を備えたスピーカ。
- 軸受に磁性流体のたまり部を設けた請求項1記載のスピーカ。
- 軸受を自己潤滑性樹脂材料で構成した請求項1記載のスピーカ。
- シャフトを非磁性体金属材料で構成した請求項1記載のスピーカ。
- シャフトを磁性体金属材料で構成した請求項1記載のスピーカ。
- シャフトの直径を1mmから3mmの範囲内とした請求項1記載のスピーカ。
- シャフトと軸受のクリアランスを0.008〜0.015mmの範囲内とした請求項1記載のスピーカ。
- 磁性流体の粘度により、スピーカのQを制御するよう構成した請求項1記載のスピーカ。
- センターポールの貫通孔を多孔性材料で封止した請求項1記載のスピーカ。
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