JP4601772B2 - (メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法ならびにこれらの製造方法 - Google Patents

(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法ならびにこれらの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法ならびにこれらの製造方法に関し、より詳細には、ニトロソ化合物を重合防止剤として使用し、該重合防止剤を塔底側から供給して蒸留することを特徴とする(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法、ならびに該重合防止方法を製造工程に含む(メタ)アクリル酸およびそのエステルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリル酸やメタクリル酸等の易重合性化合物は、工業的な製造原料であり大規模なプラントで大量に生産される化学物質である。例えば、(メタ)アクリル酸を例に取れば、該易重合性化合物は、プロピレン、イソブチレン、イソブチレン、t−ブタノール、メチル−t−ブチルエーテル、アクロレインなどの接触気相酸化反応によって製造されるが、該接触気相酸化反応によって得られた反応ガス中には、目的物たる(メタ)アクリル酸の他の副生物等が混在する。例えば、該反応によって主として非凝縮性の気体すなわち未変換プロピレン、イソブチレン、アクロレインや沸点がアクリル酸の沸点よりも低い水蒸気、未変換アクロレインなどの低沸点有機化合物、副反応で生じるホルムアルデヒド、酢酸等の不純物、沸点がアクリル酸の沸点よりも高い無水マレイン酸、フルフラール、ベンズアルデヒド、安息香酸、アクリル酸二量体等の高沸点化合物が発生する。このため、この反応ガスを精製して目的物を製造するには、上記反応ガスを水または重質溶媒で向流洗浄して吸収し、次いでこれを蒸留塔に供給して精製することが一般的である。
【0003】
一方、(メタ)アクリル酸およびそのエステルはその構造から、極めて重合し易い性質を持つ化合物である。しかも、(メタ)アクリル酸の蒸留工程などは、気相部と液相部とが混在する系を構成するため、蒸留塔内の液相部と気相部との双方に対してその重合を効果的に抑制し、長時間の安定な連続運転を可能とする必要がある。一般にはこのような重合の発生を防止するために、種々の重合防止剤が単独あるいは数種組み合わされてモノマー中に添加され、該製造工程での重合物の発生を防止している。
【0004】
例えば、特開平9−95465号公報には、ニトロソ化合物の1種であるN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンまたはその塩を用いてビニル化合物の重合を防止するに当たり、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンまたはその塩と共に、銅塩を存在させることを特徴とするビニル化合物の重合防止方法が開示されている。該方法によれば、両化合物を同時にまたは別個に蒸留工程に導入することで、アクリル酸やメタクリル酸の重合を効果的に防止し、その製造プロセスを長時間にわたり安定して運転することができるとしている。実施例では、アクリル酸にジブチルジチオカルバミン酸銅とN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンとを溶解させた後に還流操作を行い、重合物の発生を観察している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平9−95465号公報に記載される方法は、銅塩を必須の成分として使用するため、銅塩を含む使用水等が環境中に放出されるため、これを処理する手段が新たに必要となり不利である。
【0006】
また、(メタ)アクリル酸などの重合を効果的に防止しようとすれば、重合防止剤の使用量を増加すればよいが、これではこれら(メタ)アクリル酸等の重合操作の段階で重合防止剤を除去する工程が必要となり、不利である。
【0007】
また、プロピレン等の接触気相酸化によって合成された(メタ)アクリル酸に含まれる酢酸、低級アルデヒドなどの低沸点物質と、フルフラール、無水マレイン酸等の高沸点物質が副生成物を精製分離するために、(メタ)アクリル酸含有溶液を、蒸留、放散、抽出、晶析等の方法を行っているが、より一層の製造工程の簡略化が求められる。例えば、酢酸分離塔数を減少したり蒸留工程を減少しようとすれば、蒸留条件を厳しくする必要が生ずる。製造工程の簡略化は、社会的な要請であるが、このためには各精製工程で現在よりも過酷な蒸留条件を必要とすることになり、精製分離条件が過酷になれば各精製工程で重合物がより発生しやすくなる。一方、重合物が発生すれば連続運転が不可能となり、また精製塔における重合物の除去作業をより困難なものとする。
【0008】
このような現状から、(メタ)アクリル酸などの易重合性物質の製造方法において、精製塔において気相、液相の双方における重合物の発生を効果的に防止し、本来必要とされる連続運転を達成できる(メタ)アクリル酸やそのエステルの重合防止方法やこれらの製造方法が望まれる。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ニトロソ化合物の重合防止機能について詳細に検討した結果、例えばN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンまたはその塩が蒸留工程に添加された後に少なくとも一部が分解すること、該分解産物には重合抑制作用を有するものと重合促進作用を有するものとが混在すること、および該化合物を蒸留塔へ導入する際に特定個所から供給することで、該気相での重合防止効果を促進でき、かつ重合促進物質の効果を抑制できること見出し本発明を完成させた。すなわち、上記目的は、下記(1)〜(8)によって達成される。
【0010】
(1) ニトロソ化合物を用いて(メタ)アクリル酸およびそのエステルを精製塔で精製する際に、該ニトロソ化合物を精製塔の塔底側を基点として総理論段数の70%の位置以下から供給することを特徴とする、(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法。
【0011】
(2) 該ニトロソ化合物が、溶媒に溶解したものである、上記(1)記載の(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法。
【0012】
(3) 該ニトロソ化合物が、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンまたはその塩である、上記(1)または(2)記載の(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法。
【0013】
(4) 該N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンの塩が、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩である、上記(3)記載の(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法。
【0014】
(5) 更に、N−オキシル化合物を精製塔に導入することを特徴とする、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法。
【0015】
(6) N−オキシル化合物に、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物と、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物とを共存させることを特徴とする、上記(5)記載の(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法。
【0016】
(7) N−オキシル化合物を精製塔の原料供給段より上部から導入することを特徴とする、上記(5)または(6)記載の(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法。
【0017】
(8) 上記(1)〜(7)のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法を製造工程に含むことを特徴とする、(メタ)アクリル酸またはそのエステルの製造方法。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の第一は、ニトロソ化合物を用いて(メタ)アクリル酸およびそのエステルを精製塔で精製する際に、該ニトロソ化合物を精製塔の塔底側を基点として総理論段数の70%の位置以下から供給することを特徴とする、(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法である。
【0019】
上記のごとく、本発明者らは、ニトロソ化合物が(メタ)アクリル酸などの蒸留工程で分解することを見出したが、精製塔の塔底側から該化合物を導入すると精製塔内の環境中で分解産物の内のガス成分が気相の(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合を防止する作用を発揮することがわかった。特に、精製塔の塔底側から該ニトロソ化合物を供給すると、精製塔の環境中で分解して得られた該ガス成分が、精製塔内を上昇しつつガス状で存在する(メタ)アクリル酸と容易に混合することができ、これによってより効果的にこれら化合物の重合を防止することができる。
【0020】
なお、本発明においては、「精製」には、蒸留、放散が含まれる。ここに、「蒸留」とは、溶液をその沸点まで加熱し含まれる揮発性成分を分離する方法であり、「放散」とは、放散ガスを供給して溶液中に溶解する気体または蒸気を気相に移す方法をいうものとする。以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明の(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法は、(メタ)アクリル酸およびそのエステルを精製する際に、精製塔内で発生する重合を防止するものである。従って、精製塔としてはその名称にかかわらず、(メタ)アクリル酸およびそのエステルの製造工程で使用され、(メタ)アクリル酸およびそのエステルを精製し、または製造する目的で使用される装置を広く含み、蒸留塔、放散塔、共沸分離塔、脱水塔、酢酸分離塔、軽沸物分離塔、高沸物分離塔などが含まれる。
【0022】
これらの精製塔における(メタ)アクリル酸およびそのエステル精製条件は、(メタ)アクリル酸およびエステル体を精製し、または製造する従来公知の条件に適用できる。ただし、本発明はこれに限られるものではない。
【0023】
本発明で使用するニトロソ化合物としては特に制限はなく、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、p−ニトロソフェノール、N−ニトロソジフェニルアミンおよびこれらのアンモニウム塩が挙げられる。これらは1種を単独で併用するほか、2種以上を用いてもよい。特に、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンおよびそのアンモニウム塩が好ましい。精製塔内の条件で該化合物が分解した後に、ガス成分の易重合性物質に対する重合抑制効果に特に優れるからである。
【0024】
本発明では、これを精製塔の塔底側から供給する。ここに本明細書における「精製塔の塔底側を基点として総理論段数の70%の位置以下」とは、精製塔における総理論段数の70%以下の位置の精製塔内およびこれに付属する配管、付属機器の全てを意味する。従って、総理論段数の70%以下の位置であれば、精製塔内の気相部、塔底液を含み、更に精製塔に付属するリボイラや該リボイラに導入しまたはリボイラから導出するための配管も含むものとする。従って、精製塔の塔底部に薄膜蒸発器が付属する場合は、該薄膜蒸発器や該薄膜蒸発器に導入しまたは薄膜蒸発器から導出するための配管も本願におけるニトロソ化合物の供給位置に含まれる。より好ましくは総理論段数の30%以下、より好ましくは10%以下の位置である。なお、特に、ニトロソ化合物と後記するN−オキシル化合物とを併用する場合には、精製塔の塔底側を基点として総理論段数の50〜70%の位置から投与すると、液相および気相における重合防止効果に優れる。
【0025】
本発明において精製塔の塔底側を基点として総理論段数の70%の位置以下からニトロソ化合物を供給することとしたのは、上記のごとくガス状の分解産物が気相中で易重合性物質の重合防止作用を奏する一方、不揮発性の分解産物の中には重合を促進する作用を有するものも存在することを見出したからである。精製塔内には、トレー、充填物、液分散板、フラッシュ・フィ−ド液分散板、1次液分散板、コレクタ−、蒸気分散板、パッキング・サポ−ト、充填層抑板などの蒸留塔内装物が存在するため、ニトロソ化合物の分解産物であって不揮発性の成分がこれら内装物に付着すると、該内装物表面における(メタ)アクリル酸などの重合を促進するおそれがある。この点、精製塔の塔底側を基点として総理論段数の70%の位置以下であれば、気相中で有効に易重合性ガスの重合を防止できると共に、内装物表面で発生する重合促進の副作用も許容できる範囲となる。
【0026】
このような該ニトロソ化合物は、これを溶媒に溶解したものを精製塔に投与することが好ましい。具体的には、適当な溶剤、好ましくは反応系に仕込む溶剤や、水などの原料供給液中に含まれる成分と同種の溶剤に該ニトロソ化合物を溶かして液状にしたものを精製塔の塔底側を基点として総理論段数の70%の位置以下から供給する。該ニトロソ化合物を溶解するために使用する溶媒は、精製塔内条件やニトロソ化合物の溶媒に対する溶解性や分解性などの化学的、物理的性質によって適宜選択すればよい。溶媒の例としては,水、アルコール、炭化水素、ケトン、エステル、酸等が挙げられる。ニトロソ化合物がN−ニトロソフェニルヒドロシルアミンのアンモニウム塩の場合は、溶媒中での安定性を考慮すると水が最も好ましく、酸は好ましくない。なお、この位置内に原料供給段が含まれる場合には、原料供給溶液中に該ニトロソ化合物含有溶液を混合し、または原料供給溶液にニトロソ化合物を溶解させて精製塔に導入してもよい。また、精製塔に貫通させたニトロソ化合物供給口から該ニトロソ化合物含有溶液を流入、滴下または噴霧して導入してもよい。
【0027】
本発明で精製塔に添加されるニトロソ化合物の供給量としては特に制限されるものではないが、該化合物は精製塔内で分解するため、分解前の物質で換算すれば、塔底液中の該ニトロソ化合物濃度が0.0005〜0.05質量%、好ましくは0.001〜0.01質量%の範囲である。0.0005質量%を下回ると重合防止効果が十分でないからである。なお、該ニトロソ化合物は精製塔の条件で少なくともその一部が分解し、分解産物の種類によっては(メタ)アクリル酸などの重合を促進する場合がある。従って、該塔底液中のニトロソ化合物濃度を0.05質量%以下とすることで、該重合を抑制することができる。
【0028】
なお、本発明では、ニトロソ化合物に加え、N−オキシル化合物、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物、フェノール化合物、銅塩、マンガン塩等の公知の重合防止剤を併用することができる。上記のごとく、ニトロソ化合物の分解産物によっては重合を促進する場合があるため、他の重合防止剤を併用することで特に液相における(メタ)アクリル酸などの重合を防止することができる。
【0029】
本発明で用いられるN−オキシル化合物については特に制限はなく、一般にビニル化合物に重合防止剤として知られているN−オキシル化合物であればいずれも用いることができる。これらのなかでも、下記式(1)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル類:
【0030】
【化1】
Figure 0004601772
【0031】
(ただし、式中、R1はCHOH、CHCH2OH、CHCH2CH2OH、CHOCH2OH、CHOCH2CH2OH、CHCOOH、またはC=Oを示し、R2はHまたはCH2OHを示す)が好適に用いられる。N−オキシル化合物であれば特に限定されずに用いることができるが、良好な重合防止効果を与え得る2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル、4,4’,4”−トリス−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル)フォスファイトのうち1種または2種以上を用いることが好ましい。特に、N−オキシル化合物として2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル、または4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシルを用いた場合には、成分中に金属を含まなくても安定剤系となるため、安定剤による設備の金属腐食の恐れがなくなり、廃液の処理も容易になる。
【0032】
本発明で使用されるN−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物の代表例としては、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどを挙げることができる。これらN−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物は単独でも、あるいは2種以上混合しても用いることができる。
【0033】
本発明で使用される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物の具体例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。なお、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物や2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物は、市販されるN−オキシル化合物製品中に不純物として含有される場合があるが、このような場合には市販のN−オキシル化合物の使用によって、併せてN−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物や2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物を併用したことになる。
【0034】
本発明では、特にニトロソ化合物と共にN−オキシル化合物、更に加えてN−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物や2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物を併用することが好ましい。これらの化合物は、特に液相において(メタ)アクリル酸やこれらのエステルの重合抑制効果に優れるため、全体として精製塔内の気液両相の重合を相乗的に抑制することができるからである。
【0035】
このようなニトロソ化合物にN−オキシル化合物を併用する場合において、特にN−オキシル化合物を精製塔の原料供給段より上部から導入することが好ましい。本発明において「供給段より上部」には、精製塔に付属させたコンデンサーや留出液が油水相に分離する際に使用される貯槽等から供給する場合も含まれ、特に好ましくは塔頂部、コンデンサー内、貯槽またはコンデンサーや貯槽の還流液中から供給することである。これらの重合防止剤を精製塔に供給した際に、最も効果的に重合防止作用を発揮させるには、(1)重合防止剤が液相中で十分な溶解性を示す必要があり、(2)しかも塔内位置によって組成が異なる精製塔の中で、該組成を維持しつつ重合防止剤を供給するには塔内組成に最も類似した液組成で添加すること、(3)および重合防止を目的とする液相に最も効果的に混合できる重合防止剤位置であることなどが求められる。
【0036】
N−オキシル化合物は粉末であるため、これを精製塔内に供給するには溶剤に溶解した後に投入することが好ましく、例えば、精製塔内に供給する溶媒の一部を用いて該化合物を含有する溶液を調製することが好ましい。このような重合防止剤含有溶液の投入位置としては、該溶液中の溶媒濃度と精製塔内の該溶媒濃度とが類似する範囲を選択すれば、塔内組成を変化させずに済む点で好ましい。精製塔内における蒸留条件、放散条件等によってこの条件は一義的に適宜できるものでないが、N−オキシル化合物の場合には、原料供給段より上部であれば重合防止効果に優れる。
【0037】
なお、N−オキシル化合物は溶媒に溶解させて供給するほか、固化した状態で、または気化した状態で精製塔に供給してもよい。
【0038】
例えば、溶解した状態で作用させる方法としては、適当な溶剤に重合禁止剤を溶かして液状にしたものを、精製塔の塔頂部から供給するほか、精製塔に付属するコンデンサーや貯槽に供給してもよい。コンデンサーのタイプ等によっては、重合禁止剤を含む溶液をコンデンサー内部に仕込んでおいて、これにガス状の留出物を吹き込むあるいは液化した留出物を流し込むようにして溶解させるようにしてもよい。このようにすれば、コンデンサー内の重合も有効に防止することができる。
【0039】
また、固化した状態で作用させる方法としては、粉末状の重合禁止剤を、精製塔の塔頂部やコンデンサー内部から散布して降らせる。
【0040】
更に、気化した状態で作用させる方法としては、重合禁止剤を気化または昇華したものを、精製塔とコンデンサーとを連通する配管経路内に供給して混合させてもよい。
【0041】
なお、上記重合禁止剤を溶解することのできる溶剤としては、上記のように生成等内に供給される溶媒や付属したコンデンサーからの還流液であることが好ましく、例えば、精製塔に供給する溶媒として、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、n−ヘキサン、ヘプタン等、これらの混合物が挙げられる。これらの溶媒は精製塔内の条件で異なるため、実際に使用する溶媒に基づいて最も好ましい重合防止剤溶解溶媒を選択する。なお、精製塔で使用する溶媒を用いれば、易重合性物質と重合防止剤との混合に優れ、かつ塔内組成を維持できる点でも好ましい。なお、異なる溶媒を使用するとこれらを別途回収する必要があり、また、反応系への還流によって分離する場合には反応系の制御管理が複雑化するため、不利となる。
【0042】
本発明で更に併用可能なフェノール化合物としては、ハイドロキノン、メトキノン(p−メトキシフェノール)を挙げることができる。メトキノンは、特にN−オキシル化合物およびフェノチアジン化合物と組合せて使用した際の重合防止効果がハイドロキノンより優れているため好ましい。また、これらのフェノール化合物は2種を併用してもよい。
【0043】
フェノチアジン化合物としては、フェノチアジン、ビス−(α−メチルベンジル)フェノチアジン、3,7−ジオクチルフェノチアジン、ビス−(α−ジメチルベンジル)フェノチアジン等を挙げることができ、これらの中でも特にフェノチアジンが好適に使用される。これらのフェノチアジン化合物は2種以上を併用してもよい。
【0044】
一方、金属化合物塩は腐食作用があること、および使用後に環境中に放出する際に分離するなどして、環境の保全を確保する必要があるが、本発明において併用してもよい。
【0045】
例えば、銅塩としては特に制限されず、無機塩、有機塩のいずれであってもよく、様々なものを用いることができる。例えばジアルキルジチオカルバミン酸銅、酢酸銅、ナフテン酸銅、アクリル酸銅、硫酸銅、硝酸銅、塩化銅などが挙げられる。これらの銅塩は一価、二価のいずれのものも用いることができる。上記銅塩の中では、効果などの点からジアルキルジチオカルバミン酸銅が好ましい。
【0046】
ジアルキルジチオカルバミン酸銅としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジプロピルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、ジペンチルジチオカルバミン酸銅、ジヘキシルジチオカルバミン酸銅、ジフェニルジチオカルバミン酸銅、メチルエチルジチオカルバミン酸銅、メチルプロピルジチオカルバミン酸銅、メチルブチルジチオカルバミン酸銅、メチルペンチルジチオカルバミン酸銅、メチルヘキシルジチオカルバミン酸銅、メチルフェニルジチオカルバミン酸銅、エチルプロピルジチオカルバミン酸銅、エチルブチルジチオカルバミン酸銅、エチルペンチルジチオカルバミン酸銅、エチルヘキシルジチオカルバミン酸銅、エチルフェニルジチオカルバミン酸銅、プロピルブチルジチオカルバミン酸銅、プロピルペンチルジチオカルバミン酸銅、プロピルヘキシルジチオカルバミン酸銅、プロピルフェニルジチオカルバミン酸銅、ブチルペンチルジチオカルバミン酸銅、ブチルヘキシルジチオカルバミン酸銅、ブチルフェニルジチオカルバミン酸銅、ペンチルヘキシルジチオカルバミン酸銅、ペンチルフェニルジチオカルバミン酸銅、ヘキシルフェニルジチオカルバミン酸銅などが挙げられる。これらのジアルキルジチオカルバミン酸銅は、一価の銅塩であってもよく、二価の銅塩であってもよい。これらの中で、効果及び入手しやすいなどの点からジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅及びジブチルジチオカルバミン酸銅が好ましく、特にジブチルジチオカルバミン酸銅が好適である。
【0047】
マンガン塩化合物としては、ジアルキルジチオカルバミン酸マンガン(アルキル基はメチル、エチル、プロピル、ブチルのいずれかで、同一であっても異なっていても良い)、ジフェニルジチオカルバミン酸マンガン、蟻酸マンガン、酢酸マンガン、オクタン酸マンガン、ナフテン酸マンガン、過マンガン酸マンガン、エチレンジアミン四酢酸のマンガン塩等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。なお、マンガン塩化合物は単独では重合防止効果が比較的低いが、本発明においてN−オキシル化合物またはN−オキシル化合物とさらに他の重合防止剤と併用することによって、著しい重合防止効果を発現することが明らかとなった。また、銅塩は腐食作用があるが、マンガン塩を添加すると該腐食作用を抑制することができる点でも好ましい。
【0048】
なお、本発明では、フェノール化合物、銅塩、マンガン塩を精製塔に供給するには、N−オキシル化合物と同様に、精製塔の原料供給段より上部から導入することが好ましい。該化合物の溶媒中への溶解性の観点から、N−オキシル化合物を添加する場合と同様に、易重合性化合物との混合が容易で精製塔内の組成を変化させずに精製操作を継続することができるからである。これらは、併用する重合防止剤を全て同一の供給場所から投入してもよいし、それぞれ異なる供給場所から投入してもよい。更に、供給時期についても特に制限されるものではない。従って、例えば、N−オキシル化合物を塔頂から供給する一方、マンガン塩を精製塔の中段から供給することもできる。有機溶媒に難溶なマンガン塩を使用する場合に、精製塔の塔頂側の有機溶媒濃度が高い場合には、塔中段付近から供給することで塔内組成を変化させることが少ないからである。従って、マンガン塩が有機溶媒に易溶であり水に難溶である場合には、精製塔の塔頂部から供給すれば、効率的な重合防止効果を得ることができる。いずれにしても、添加する重合防止剤の溶媒への溶解性、精製塔内環境特に塔内組成等を勘案して最も最適な供給場所選択する。
【0049】
なお、本発明で使用する重合防止剤がそれ自体で液体である場合には、塔内組成と相互溶解性が十分でない場合においても、塔内構造物を経由して移動するのに粘度や反応性などの点で障害がなければ、塔頂からの供給が可能である。
【0050】
本発明の重合防止方法は、ビニル化合物の中でも特に重合しやすい(メタ)アクリル酸およびそのエステルに好適に用いることができる。アクリル酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が適用対象として挙げられ、メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が適用対象として挙げられる。
【0051】
重合防止方法としては、例えば、接触気相酸化反応で(メタ)アクリル酸を製造する場合に関して説明すれば、(メタ)アクリル酸の精留塔、(メタ)アクリル酸と溶剤の分離塔、(メタ)アクリル酸と酢酸等の軽沸分との分離塔等の諸蒸留工程、アクロレインやメタクロレイン等の軽沸分のストリッパー等の蒸留操作を含む諸工程において、上記重合防止剤を(メタ)アクリル酸と共存させれば良い。
【0052】
ニトロソ化合物以外の重合防止剤の量は操作条件に応じて適宜調整され、特に限定はされないが、用いられる重合防止剤の総量を(メタ)アクリル酸およびそのエステルの蒸発蒸気量に対して3〜1500ppm(重量基準)とするのが好ましい。個々の重合防止剤の好ましい使用量は、N−オキシル化合物はモノマーの蒸発蒸気量に対し1〜500ppm、マンガン塩化合物、あるいは銅塩化合物はモノマーの蒸発蒸気量に対し1〜200ppm、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物、あるいはニトロソ化合物の場合は1〜500ppmである。
【0053】
ここでいう蒸発蒸気量とは、蒸留塔のリボイラーに加えられた熱量に応じて、リボイラーで発生するモノマーの蒸気の総量を意味する。モノマー蒸気の総量は計算で容易に算出することができる。重合防止剤の投入基準を決定する上で重要な因子となる数字である。
【0054】
なお、本発明では、重合防止剤として分子状酸素を精製塔内に供給してもよく、この分子状酸素の供給方法としてはエアーバブリング等により、(メタ)アクリル酸およびそのエステルに直接混入させてもよいし、あるいは、他の溶媒に溶け込んだ状態で(メタ)アクリル酸およびそのエステルに間接的に混入させてもよい。なお、精製塔やストリッパーの塔底および/またはリボイラーからガス状で送り込めばエアーバブリングが簡単に製造工程に組み込める。分子状酸素は、(メタ)アクリル酸またはそのエステルの蒸発蒸気量に対して0.1〜1.0容量%程度投入することが望ましい。
【0055】
本発明の第二は、上記記載の(メタ)アクリル酸およびそのエステルの重合防止方法を製造工程に含むことを特徴とする、(メタ)アクリル酸またはそのエステルの製造方法である。
【0056】
(メタ)アクリル酸およびそのエステルは連続して製造され、一般には接触気相酸化反応器に続く、捕集塔、脱水塔、軽沸物分離塔、高沸物分離塔、酢酸分離塔、エステル反応器、脱水塔などと称される各種の精製工程を経て製造される。
【0057】
これらの工程で使用される精製塔の条件は、その前後に連続する精製塔の条件によってもことなり、一義的に定義することはできない。しかしながら、本発明では特に(メタ)アクリル酸を水系溶媒で捕集した(メタ)アクリル酸含有溶液から水を除去する共沸脱水塔、またはこれに加えてアルデヒドや酢酸などの低沸点物質を分離する低沸分離塔において本発明の重合防止方法を行うことが好ましい。これらは、一般に最も(メタ)アクリル酸等の重合が発生しやすいため、該化合物製造工程で律速となる工程であり、特に本発明が有効である。
【0058】
本発明の重合防止方法を少なくとも一部に含む(メタ)アクリル酸の製造方法では、精製塔における重合物の発生を防止して長期連続運転を可能とできるばかりでなく、製品の収率を向上させることができる。この点で、本発明の(メタ)アクリル酸およびそのエステルの製造方法においては、製造工程で使用される各精製塔においてそれぞれ上記本発明の重合防止方法が適用されることが好ましい。
【0059】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0060】
(実施例1)
プロピレンと分子状酸素含有ガスとを接触気相反応器10に供給して接触気相酸化して得たアクリル酸含有ガスを、アクリル酸捕集塔20に導入し、水と接触させてアクリル酸を水溶液中に捕集した。このアクリル酸含有溶液には不純物としてアクロレインが含まれていた。該アクリル酸含有溶液をアクロレイン放散塔30に導入し、アクロレインを放散させ、水30質量%、酢酸3.0質量%を含むアクリル酸水溶液を得た。
【0061】
このアクリル酸水溶液を段数50段、段間隔147mmのステンレス製シーブトレーを備え、塔頂部に留出管および還流液供給管、中央部段に原料供給管および重合防止剤投入管、塔底部に塔底液抜き出し管および重合防止剤投入管を備えた内径105mmの共沸分離塔40に導入し、共沸溶剤としてトルエンを用いてアクリル酸溶液の蒸留を行った。
【0062】
使用した重合防止剤の量は、アクリル酸蒸発蒸気量に対して、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル100ppm、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン20ppm、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン20ppm、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩10ppmであった。N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩は、水に溶解させた後に共沸脱水塔40の塔底から供給した。その他の重合防止剤は、いずれも還流液に溶解させた後に塔頂から供給した。また、アクリル酸蒸発蒸気量に対して0.3容量%の分子状酸素を塔底部に供給した。なお、ここにいうアクリル酸蒸発蒸気量とは、共沸脱水塔40のリボイラー42から加えられた熱量に相当して塔底から蒸発するモノマーの蒸気の総量を意味する。
【0063】
定常運転時における運転状態は、共沸分離塔40の塔頂温度50℃、塔底温度105℃、塔頂圧力170hPa、還流比(単位時間当たりの還流液の全モル数/単位時間当たりの留出液の全モル数)1.20、アクリル酸水溶液供給量9.0リットル/時であった。塔底より抜き出される液は、アクリル酸97質量%、水0.02質量%、その他2.98質量%を含んでいた。
【0064】
上記の条件で共沸分離塔40を30日間連続運転したところ、常に安定した状態が得られ、運転停止後、蒸留塔内の点検を行った結果においても、塔内に少量の重合物が認められたのみであり、更に運転の継続が可能であった。
【0065】
(実施例2)
実施例1において、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩の水溶液の投入位置を塔底から,塔底側を基点として総理論段数の25%の位置に変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行った。
【0066】
この条件で共沸分離塔40を30日間連続運転したところ、実施例1と同様の分離状態が得られ、運転停止後、蒸留塔内の点検を行った結果においても重合物の発生は殆ど認められなかった。
【0067】
(実施例3)
実施例1において、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩の水溶液の投入位置を塔底から,塔底側を基点として総理論段数の60%の位置に変更した以外は、実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行った。
【0068】
この条件で共沸分離塔40を30日間連続運転したところ、実施例1と同様の分離状態が得られ、運転停止後、蒸留塔内の点検を行った結果においても重合物の発生は全く認められなかった。
【0069】
参考例4)
実施例1において、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジノオキシル、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよび4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを使用しない代わりに、ジブチルジチオカルバミン酸銅30ppm、酢酸マンガン30ppm、ハイドロキノン100ppm、フェノチアジン100ppmを使用し、ジブチルジチオカルバミン酸銅およびフェノチアジンは還流液で溶解させて塔頂から、酢酸マンガンおよびハイドロキノンは水に溶解させて20段から塔内に供給した以外は、実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行った。
【0070】
この条件で共沸分離塔40を30日間連続運転したところ、実施例1と同様の分離状態が得られ、運転停止後、蒸留塔内の点検を行った結果においても重合物の発生は全く認められなかった。
【0071】
参考例5)
参考例4において、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩の水溶液の投入位置を塔底から,塔底側を基点として総理論段数の60%の位置に変更した以外は、参考例4と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行った。
【0072】
この条件で共沸分離塔40を30日間連続運転したところ、参考例4と同様の分離状態が得られ、運転停止後、蒸留塔内の点検を行った結果においても塔内に少量の重合物が認められたのみであり、更に運転の継続が可能であった。
【0073】
参考例6)
参考例4において、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩の水溶液の投入位置を塔底から,塔底側を基点として総理論段数の25%の位置に変更した以外は、参考例4と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行った。
【0074】
この条件で共沸分離塔40を30日間連続運転したところ、参考例4と同様の分離状態が得られ、運転停止後、蒸留塔内の点検を行った結果においても重合物の発生は殆ど認められなかった。
【0075】
(比較例1)
実施例1において、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩の水溶液の投入位置を塔底から塔頂に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行った。
【0076】
この条件で共沸分離塔40の連続運転を行ったところ、稼動当初は実施例1と同様の分離状態が得られていたが、稼動開始後5日目より塔内の圧損失が認められ6日目には運転を継続することが困難になった。運転を停止し、蒸留塔の解体点検を行ったところ、塔内に多量の重合物の発生を認めた。
【0077】
(比較例2)
参考例4において、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩の水溶液の投入位置を塔底から、塔頂に変更した以外は参考例4と同様にしてアクリル酸水溶液の共沸蒸留運転を行った。
【0078】
この条件で共沸分離塔40を30日間連続運転したところ、稼動当初は参考例4と同様の分離状態が得られていたが、稼動開始後7日目より塔内の圧損失が認められ8日目には運転を継続することが困難になった。運転を停止し、蒸留塔の解体点検を行ったところ、塔内に多量の重合物の発生を認めた。
【0079】
【発明の効果】
本発明によれば、ニトロソ化合物を総理論段数の70%の位置以下から供給すると、該化合物が蒸留塔内で分解し、その結果得られたガス成分が精製塔内の気相に存在する易重合性物質の重合を有効に防止することができる。また、更にN−オキシル化合物などを併用すると、特に液相中に存在する易重合性物質の重合を抑制できる。易重合性物質としては、精製塔内で気液量相を構成する(メタ)アクリル酸およびそのエステルである。
【0080】
本発明の重合防止方法を実施して(メタ)アクリル酸およびそのエステルを製造すれば、その製造工程において重合物の発生を抑制して連続運転を可能とすると共に、製品の収率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、アクリル酸の製造工程を示す概略フロー図である。
【符号の説明】
1…プロピレン、
10…反応器、
20…アクリル酸捕集塔、
21…アクリル酸捕集液、
30…アクロレイン分離塔、
40…共沸脱水塔、
41…貯槽、
42…リボイラー、
50…高沸分離塔、
51…アクリル酸。

Claims (7)

  1. ニトロソ化合物を用いて(メタ)アクリル酸またはそのエステルを精製塔で精製する際に、該ニトロソ化合物を精製塔の塔底側を基点として総理論段数の50〜70%の位置から供給し、さらにN−オキシル化合物を精製塔に導入することを特徴とする、(メタ)アクリル酸またはそのエステルの重合防止方法。
  2. 該ニトロソ化合物が、溶媒に溶解したものである、請求項1記載の(メタ)アクリル酸またはそのエステルの重合防止方法。
  3. 該ニトロソ化合物が、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンまたはその塩である、請求項1または2記載の(メタ)アクリル酸またはそのエステルの重合防止方法。
  4. 該N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンの塩が、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩である、請求項3記載の(メタ)アクリル酸またはそのエステルの重合防止方法。
  5. N−オキシル化合物に、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物と、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン化合物とを共存させることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル酸またはそのエステルの重合防止方法。
  6. N−オキシル化合物を精製塔の原料供給段より上部から導入することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル酸またはそのエステルの重合防止方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の(メタ)アクリル酸またはそのエステルの重合防止方法を製造工程に含むことを特徴とする、(メタ)アクリル酸またはそのエステルの製造方法。
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