JP4599488B2 - 多層プリント配線板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビルドアップ配線層を備える多層プリント配線板に関し、とくに、層間樹脂絶縁層内に形成された導体回路間に、コンデンサー機能を有する誘電体層を形成した多層プリント配線板を提案する。
【0002】
【従来の技術】
近年、信号の高周波数化に伴ない、パッケージ基板の材料特性として低誘電率、低誘電正接であることが求められており、そのため、パッケージ基板の材料は、セラミックから樹脂へとその主流が移りつつある。
このような背景の下、樹脂基板を用いたプリント配線板に関する技術としては、例えば、特公平4−55555号公報に開示されたものがある。この文献においては、内層導体回路形成がされたガラスエポキシ基板上にエポキシアクリレートを用いて層間樹脂絶縁層を形成し、続いて、フォトリソグラフィーの手法を用いてバイアホール形成用開口を設け、その表面を粗化処理し、めっきレジストを設けた後、めっき処理によって外層導体回路およびバイアホールを形成する方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、エポキシアクリレートなどの樹脂からなる層間樹脂絶縁層は、導体である導体回路との密着性を確保するために、その表面ならびに導体回路の表面を粗化しなければならない。このため、高周波数の信号を伝搬させると、表皮効果により、粗化された導体回路の表面部分のみを伝搬し、その表面の凹凸に起因して信号にノイズが生じてしまうという問題がある。この問題は、セラミック基板に比べて低誘電率および低誘電正接を持つ樹脂基板を使用する場合に、特に顕著であった。
【0004】
また、樹脂基板は、導体基板やセラミック基板に比べて放熱性が悪いために蓄熱しやすく、その結果、導体回路を構成する銅イオンの拡散速度が高くなり、マイグレーションを引き起こして層間絶縁が破壊されるという問題があった。
そこで、上述したような問題点を解決するために、樹脂などの基板の片面に樹脂をスピンコートなどで塗布形成し、その樹脂層上に導体パターンとの密着性を向上させ得る金属( クロム、ニッケル、チタン等) を設ける技術が特開平7-45948 号公報や特開平7-94865 号公報において、提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ICを載置するプリント配線板のサイズをより小さくして、そのようなプリント配線板を搭載した携帯電話等の装置全体の小型化が強く要望されている状況においては、ICチップ以外の抵抗やコンデンサーなどの電子部品を搭載するエリアが小さいので、プリント配線板上にそれらの電子部品を実装することはますます困難になってきている。
本発明は、従来技術が抱える上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、ビルドアップ配線層内にコンデンサー機能を有する誘電体層を形成した多層プリント配線板を提供することにある。
本発明の他の目的は、このような多層プリント配線板を有利に製造できる方法を提案することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記目的の実現に向け鋭意研究した結果、以下のような内容を要旨構成とする発明に想到した。
(1)すなわち、本発明の多層プリント配線板は、絶縁基板上に、導体層と層間樹脂絶縁層とが交互に積層され、隣接する内層の導体回路と外層の導体回路とが、それらの間に設けた層間樹脂絶縁層に形成されたビアホールにて接続されたビルドアップ配線層が形成されてなる多層プリント配線板において、
前記層間樹脂絶縁層内の前記ビアホールが形成されていない箇所に中間導体層を設け、前記層間樹脂絶縁層のうち前記内層の導体回路と中間導体層との間に、少なくとも高誘電性材料を含む誘電性物質を充填してなる誘電体層が形成されるとともに、前記層間樹脂絶縁層のうち前記外層の導体回路と中間導体層との間に、前記誘電体層の真上に位置してめっき充填してなる他のビアホールが形成され、さらに、
前記層間樹脂絶縁層上に、前記ビアホール、前記他のビアホールおよび前記外層の導体回路を被覆する他の層間樹脂絶縁層が形成されているとともに、前記他のビアホールの真上に位置して前記他の層間樹脂絶縁層にめっき充填してなるさらに他のビアホールが形成されていることを特徴とする多層プリント配線板である。
また、前記さらに他のビアホール上には半田バンプが形成されていることが望ましい。
また、前記他のビアホールに接触する外層の導体回路は、前記層間樹脂絶縁層の表面に形成されている無電解めっき膜と、その無電解めっき膜上に形成された電解めっき膜とから形成されていることが望ましい。
また、前記誘電体層に接触する内層の導体回路の表面は、粗化されていることが望ましい。
また、前記さらに他のビアホールは、前記他の層間樹脂絶縁層の表面から前記他のビアホールに達する開口の側壁に形成されている無電解めっき膜と、前記開口を完全に閉塞するように充填された電解めっき膜とから形成されていることが望ましい。
さらに、上記高誘電性材料は、BaTiO3を代表とするペロブスカイト化合物からなる高誘電性材料またはそれとエポキシ、ポリフェニレンエーテル(PPE
)、ポリイミド等の有機材料との混合体から形成されることが望ましい。
【0007】
(2)また、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、絶縁基板上に、導体層と層間樹脂絶縁層とが交互に積層され、隣接する内層の導体回路と外層の導体回路とが、それらの間に設けた層間樹脂絶縁層に形成されたビアホールにて接続されたビルドアップ配線層が形成されてなる多層プリント配線板の製造に当たって、その製造工程中に、少なくとも下記(1)〜(8)の工程、すなわち、
(1)第1の樹脂絶縁層上に内層の導体回路を形成する工程、
(2) 前記第1の樹脂絶縁層上に前記内層の導体回路を覆って第2の樹脂絶縁層を形成する工程、
(3)前記第2の樹脂絶縁層の表面から前記内層の導体回路に達する開口を形成し、その開口内に、少なくとも高誘電性材料を含む誘電性物質を充填して、誘電体層を形成する工程、
(4)前記第2の樹脂絶縁層の表面に、前記誘電体層を覆う箇所のみに中間導体層を形成する工程、
(5)前記第2の樹脂絶縁層上に前記中間導体層を覆って、第3の樹脂絶縁層を形成する工程、
(6)前記第3の樹脂絶縁層の表面から前記内層の導体回路に達する開口を形成するとともに、前記第3の樹脂絶縁層の表面から前記中間導体層に達する開口を前記誘電体層の真上に位置して形成し、それらの開口内にそれぞれめっき充填して前記ビアホールおよび他のビアホールを形成するとともに、外層の導体回路を形成する工程、
(7)前記第3の樹脂絶縁層上に前記ビアホール、前記他のビアホールおよび前記外層の導体回路を覆って第4の樹脂絶縁層を形成する工程、
(8)前記第4の樹脂絶縁層の表面から前記他のビアホールに達する開口を形成し、その開口内にめっき充填してさらに他のビアホールを形成する工程、
を含むことを含むことを特徴とする。
【0008】
上記多層プリント配線板の製造方法において、誘電体層は、BaTiO3を代表とするペロブスカイト化合物からなる高誘電性材料またはそれとエポキシ、ポリフェニレンエーテル(PPE )、ポリイミド等の有機材料との混合体から形成されることが望ましい。
さらに、上記誘電体層は、スパッタ法、蒸着法、CVD法、印刷法、フィルムラミネート法、ロールコータを用いた方法、スピンコータを用いた方法、またはカーテンコータを用いた方法のいずれかの方法で形成されることが望ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の多層プリント配線板は、ビルドアップ配線層内の樹脂絶縁層内に形成された隣接する内層の導体回路と外層の導体回路との間に中間導体層を設け、内層の導体回路と中間導体層との間に少なくとも高誘電性材料を含む誘電性物質を充填してなるコンデンサー機能を有する誘電体層が形成されているとともに、外層の導体回路と中間導体層との間に、誘電体層の真上に位置してめっき充填してなるビアホールが形成され、さらにビアホールに対応する外層の導体回路の真上にはめっき充填してなる他のビアホールが形成されていることを特徴とする。
このような構成によれば、高周波領域における電源動作が安定な多層プリント配線板を得ることができる。
【0010】
上記多層プリント配線板において、上記誘電体層は、BaTiO3を代表とするペロブスカイト化合物からなる高誘電性材料またはそれとエポキシ、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド等の有機材料との混合体から形成されることが望ましい。その理由は、安定した誘電率を得ることができるからである。
また、誘電層の表面積および厚みは、それぞれ1962.5μm2以上および0.05 〜50μmであることが望ましい。その理由は、大きな容量を得るためであり、厚みに下限を設けたのは、層間での絶縁破壊を防止するためである。
【0011】
上記誘電体層を形成する方法としては、スパッタ法、蒸着法、CVD法、印刷法、フィルムラミネート法、ロールコータを用いた方法、スピンコータを用いた方法、またはカーテンコータを用いた方法があり、コストの観点からロールコータを用いた方法が最も好ましい。
【0012】
以下、本発明の多層プリント配線板を製造する一方法について説明する。
(1) まず、樹脂基板の表面に内層導体回路としての銅パターンを形成した配線基板を作製する。
樹脂基板としては、無機繊維を有する樹脂基板が望ましく、具体的には、ガラス布エポキシ基板、ガラス布ポリイミド基板、ガラス布ビスマレイミド−トリアジン樹脂基板およびガラス布フッ素樹脂基板から選ばれる少なくとも1種以上がよい。
この樹脂基板への内層導体回路のパターン形成は、樹脂基板両面に銅箔を張った銅張積層板をエッチング処理して行う。
また、この基板にドリルで貫通孔を明け、貫通孔の壁面および銅箔表面に無電解めっき処理を施してスルーホールを形成する。無電解めっきとしては、銅めっきがよい。なお、フッ素樹脂基板のようにめっきのつきまわりが悪い基板の場合は、有機金属ナトリウムからなる前処理液(商品名:テトラエッチ)による処理、プラズマ処理などの表面改質を行う。
【0013】
次に、内層導体回路のパターンの厚付けのために電解めっき処理を行う。この電解めっきとしては銅めっきがよい。
なお、スルーホール内壁および電解めっき膜表面を粗化処理してもよい。粗化処理としては、黒化(酸化)−還元処理、有機酸と第二銅錯体の混合水溶液によるスプレー処理、あるいは銅−ニッケル−リン針状合金めっきによる処理などがある。
また、必要に応じてスルーホール内に導電ペーストを充填し、この導電ペーストを覆う導体層を無電解めっきもしくは電解めっきにて形成することもできる。
【0014】
(2) 前記(1) で作製した配線基板の両面に樹脂絶縁層を形成する。この樹脂絶縁層は、多層プリント配線板の層間樹脂絶縁層として機能する。
この樹脂絶縁層は、未硬化液(未硬化の樹脂)を塗布したり、フィルム状の樹脂を熱圧してラミネートすることにより形成される。
【0015】
(3) 次に、この樹脂絶縁層表面から内層の導体回路パターンに達する開口をレーザ照射によって形成する。この開口は、後述するような隣接する2つの導体層間に誘電体層を形成するためのもので、使用されるレーザ光は、炭酸ガスレーザ、紫外線レーザ、エキシマレーザあるいはUVレーザなどがある。
そして、炭酸ガスレーザ光にて穴明けした場合はデスミア処理を行う。このデスミア処理は、クロム酸、過マンガン酸塩などの水溶液からなる酸化剤を使用して行うことができ、また、酸素プラズマ、CF4 と酸素の混合プラズマやコロナ放電などで処理してもよい。
また、低圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することにより、表面改質することもできる。
特にCF4 と酸素の混合プラズマは、樹脂表面に、水酸基やカルボニル基などの親水性基を導入することができ、後のCVDやPVD処理がしやすいため、有利である。
【0016】
(4) 前記(3) であけた誘電体層形成のための開口内に、少なくとも高誘電性材料を含んだ誘電物質を充填して、内層の導体回路パターンにオーム性接触するような誘電体層を形成する。
ここで、高誘電性材料としては、ペロブスカイト化合物を代表するBaTiO3が最適であり、その他にPZT 、PLZTあるいはBST を用いることもできる。さらに、二成分系または三成分系のペロブスカイト化合物を用いることもできる。
さらに、前記高誘電性材料とエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂またはポリフェニレンエーテル樹脂等との混合体から、誘電層を形成することもできる。
このような混合体としては、BaTiO3とエポキシ樹脂、BaTiO3とポリイミド樹脂、BaTiO3とポリフェニレンエーテル樹脂との組み合わせから選ばれるいずれかが好ましい。
【0017】
上記誘電層の形成は、大容量を得るためにはBaTiO3が好適であり、製造コストの点からは、BaTiO3とエポキシ樹脂との混合体が好適である。
また、誘電性ペーストとしては、高誘電性材料と熱硬化性樹脂との混合物が望ましい。
【0018】
上記誘電体層は、高誘電性材料を含んだ誘電性ペーストを印刷法等によって開口内に充填する方法や、高誘電性材料をスパッタリング法、蒸着法、CVD法等を用いて開口内に直接的に形成される。誘電体セラミックスの薄膜によって誘電体層を形成する場合には、スパッタリング法や蒸着法のようなPVD法が有利である。
【0019】
(5)次に、誘電体層が露出する樹脂絶縁層の表面に、PVD法、CVD法あるいはめっき法によって、銅からなる導体層を形成し、適切なエッチング処理によって、誘電体層を覆う箇所のみにおいて誘電体層にオーム性接触するような導体層(中間導体層)を形成する。
PVD法としては、スパッタリング、イオンビームスパタリングなどの蒸着法が具体的に挙げられる。また、CVD法としては、アリルシクロペンタジフェニルパラジウム、ジメチルゴールドアセチルアセテート、スズテトラメチルアクリロニトリル、ジコバルトオクタカルボニルアクリロニトリルなどの有機金属(MO)を供給材料とするPE−CVD(Plasma Enhanced CVD)などが具体的に挙げられる。
【0020】
(6)前記(5)で形成した中間導体層を覆って、前記(2)と同様の方法で樹脂絶縁層を形成する。この樹脂絶縁層は、未硬化液(未硬化の樹脂)を塗布したり、フィルム状の樹脂を熱圧してラミネートすることにより形成される。
(7)さらに、前記(6)で形成した樹脂絶縁層の表面から、上記(1)で形成した内層の導体回路に達する開口を設けるとともに、上記(5)で形成した中間導体層に達する開口を設ける。これらの開口は、上記(3)の処理と同様なレーザ照射によって形成するが、開口径とその深さに応じて適切なレーザ照射条件を採用する。前者は、内層の導体回路と電気的接続されるビアホール形成用の開口であり、後者は、誘電体層と電気的接続されるビアホール形成用の開口である。
【0021】
(8) ついで、前記(6) で形成した樹脂絶縁層表面および前記(7) で形成した開口の内壁面に、スパッタリングによって薄い導体層を設ける。この導体層としては、上記(5) の工程で形成された導体層との密着性や酸化防止、あるいは電解めっきの導電層としての機能を損なうことのない点を考慮して、銅層をスパッタリングにより設けるのが望ましい。薄付け導体層の厚みは、1μm以下であることが望ましい。
さらに、上記スパッタリングによる導体層上に、同種の無電解めっき層を形成してもよい。この無電解めっきとしては、銅めっきが最適であり、その厚みは、0.1 〜3μmの範囲であることが望ましい。その理由としては、後に行う電解めっきの導電層としての機能を損なうことなく、エッチング除去できるからである。
【0022】
(9) 次に、前記(8) で形成した導体層上にめっきレジストを形成する。
このめっきレジストは、感光性ドライフィルムをラミネートして露光、現像処理して形成される。
(10) さらに、前記(6) にて得られた導体層をめっきリードとする電解めっき処理を行って導体層を厚付けして、外層の導体回路を形成するとともに、ビアホール形成用の開口をそれぞれめっき充填する。電解めっき層の厚さは、5〜30μmがよい。
(11) 前記(10)でおける電解めっき処理の後、めっきレジストを剥離させる。
(12) さらに必要に応じて、外層の導体回路表面に、銅層を、めっき法、PVD法あるいはCVD法で形成し、さらに前記 (2)〜(11)の工程を繰り返すことにより多層化したプリント配線板を製造する。
【0023】
なお、以上の説明では、導体回路の形成方法としてセミアディティブ法を採用したが、フルアディティブ法を採用することもできる。
このフルアディティブ法では、樹脂絶縁層表面にCVDあるいはPVD処理にて薄い導体層を形成した後、感光性ドライフィルムをラミネートするか、または液状の感光性樹脂を塗布し、露光、現像処理してめっきレジストを設け、無電解めっき処理を施して厚付け導体層を形成して、導体回路を形成する。
あるいは、樹脂絶縁層表面にめっきレジストを形成した後、CVDあるいはPVD処理にて薄い導体層を設け、さらにめっきレジスト表面に付着したこの導体層を研磨などで除去するか、めっきレジストそのものを除去し、この導体層を触媒として無電解めっきを行い、導体回路を形成することもできる。
【0024】
以下、実施例をもとに詳述する。
【実施例】
(実施例1)
(1) BT(ビズマレイミドトリアジン)樹脂からなる厚さ 0.8mmの基板1の両面に18μmの銅箔2がラミネートされているBTレジン銅張積層板(三菱ガス化学製、商品名:HL830-0.8T12D )を出発材料とした(図1(a) 参照)。
まず、この銅張積層板をドリル削孔し(図1(b) 参照)、次いでパラジウム−スズコロイドを付着させ、下記組成の無電解めっき水溶液で下記条件にて無電解めっきを施し、基板全面に 0.7μmの無電解めっき膜を形成した。
【0025】
〔無電解めっき水溶液〕
EDTA 150 g/l
硫酸銅 20 g/l
HCHO 30 ml/l
NaOH 40 g/l
α、α’−ビピリジル 80 mg/l
PEG 0.1 g/l
〔無電解めっき条件〕
70℃の液温度で30分
【0026】
さらに、下記組成の電解めっき水溶液で下記条件にて電解銅めっきを施し、厚さ15μmの電解銅めっき膜を形成した(図1(c) 参照)。
【0027】
(2) 全面に無電解めっき膜および電解めっき膜からなる導体層(スルーホール3を含む)を形成した基板を、水洗いし、乾燥した後、酸化浴(黒化浴)として、NaOH(20g/l)、NaClO2(50g/l)、Na3PO4(15.0g/l)の水溶液を用い、還元浴として、NaOH( 2.7g/l)、NaBH4( 1.0g/l)の水溶液を用いた酸化還元処理に供し、導体層およびスルーホール全表面に粗化層4を設けた。
【0028】
(3) 次に、銅粒子を含む導電ペースト5をスクリーン印刷により、スルーホール3内に充填し、乾燥、硬化させた。そして、導体上面の粗化層4およびスルーホール3からはみ出した導電ペースト5を、#400 のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により除去し、さらにこのベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行い、基板表面を平坦化した(図1(e) 参照)。
【0029】
(4) 前記(3) で平坦化した基板表面に、常法に従ってパラジウムコロイド触媒を付与してから無電解めっきを施すことにより、厚さ 0.6μmの無電解銅めっき膜6を形成した(図1(f) 参照)。
【0030】
(5) ついで、以下の条件で電解銅めっきを施し、厚さ15μmの電解銅めっき膜7を形成し、導体回路9となる部分の厚付け、およびスルーホール3に充填された導電ペースト5を覆う導体層(ふためっき層)10となる部分を形成した。
【0031】
(6) 導体回路9および導体層10となる部分を形成した基板の両面に、市販の感光性ドライフィルムを張りつけ、マスクを載置して、 100mJ/cm2 で露光、 0.8%炭酸水素ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのエッチングレジスト8を形成した(図2(a) 参照)。
【0032】
(7) そして、エッチングレジスト8を形成していない部分のめっき膜を、硫酸と過酸化水素の混合液を用いるエッチングにて溶解除去し、さらに、めっきレジスト8を5%KOH で剥離除去して、独立した導体回路9(以下、この導体回路を「内層導体回路」という。)および導電ぺースト5を覆う導体層10(以下、この導体層のことを単に「ふためっき層」という。)を形成した( 図2(b) 参照) 。
【0033】
(8) 次に、内層導体回路9およびふためっき層10の側面を含む全表面に、銅−ニッケル−リン合金からなる厚さ 2.5μmの粗化層11を形成し、さらにこの粗化層11の表面に厚さ 0.3μmのSn層を設けた(図2(c) 参照)。
その形成方法は以下のようである。即ち、基板を酸性脱脂してソフトエッチングし、次いで、塩化パラジウムと有機酸からなる触媒溶液で処理して、パラジウム触媒を付与し、この触媒を活性化した後、硫酸銅8g/l、硫酸ニッケル 0.6g/l、クエン酸15g/l、次亜リン酸ナトリウム29g/l、ホウ酸31g/l、界面活性剤(日信化学工業製、サーフィノール465 ) 0.1g/lの水溶液からなるpH=9の無電解めっき浴にてめっきを施し、内層導体回路9およびふためっき層10の全表面に銅−ニッケル−リン合金の粗化層11を設けた。
【0034】
(9) 基板の両面に、厚さ50μmの熱硬化型ポリオレフィン樹脂シート(住友3M製、商品名:1592)を温度50〜180 ℃まで昇温しながら圧力10kg/cm2 で加熱プレスして積層し、ポリオレフィン系樹脂からなる層間樹脂絶縁層12を設けた。
【0035】
(10) ついで、波長10.4μmの炭酸ガスレーザにて、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂絶縁層12に直径80μm、深さ50μmの誘電層形成用の開口14を設けた(図2(d) 参照)。
上記開口14を形成する炭酸ガスレーザの照射条件は、、パルスエネルギーが8〜13mJ、パルス幅が10-12 〜10-4s、パルス間隔が1ms以上、ショット数が10〜100 である。
さらに、CF4 および酸素混合気体のプラズマ処理により、デスミアおよびポリオレフィン系樹脂絶縁層表面の改質を行った。この改質により、表面には、OH基やカルボニル基、COOH基などの親水性基が確認された。
なお、酸素プラズマ処理条件は、電力 800W、 500mTorr、20分間である。
【0036】
(11) さらに、誘電層形成用の開口14内に、ポリフェニレンエーテル(PPE)にBaTiO3を75%配合した誘電性ペーストを、ロールコータを用いた方法で充填して、粗化層11を介して内層導体回路9と接触するように誘電体層15を形成する(図2(e) 参照)。
(12) 次に、銅をターゲットにしたスパッタリングを、気圧 0.6Pa、温度80℃、電力200 W、時間5分間の条件で行って、前記(11)にて形成された誘電体層15の表面と、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂絶縁層12の表面に銅スパッタ層を形成する。このように形成された銅スパッタ層の厚さは 0.1μmであった。
なお、スパッタリング装置としては、日本真空技術株式会社製のSV−4540を使用した。
【0037】
(13)前記(12)で形成した銅スパッタ層にエッチング処理を施して、図2(e)及び図3(a)に示すように、誘電体層15に対応する位置に、即ち、誘電体層を覆う箇所のみに導体層16(以下、この導体層を「中間導体層16」という。)を形成する。
(14)さらに、前記(9)の処理と同様に、前記(13)において形成された中間導体層16を覆って、厚さ50μmの熱硬化型ポリオレフィン樹脂シート(住友3M製、商品名:1592)を温度50〜180 ℃まで昇温しながら圧力10kg/cm2で加熱プレスして積層し、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂絶縁層17を設けた(図3(参照)。
【0038】
(15) ついで、前記(10)と同様の方法で、波長10.4μmの炭酸ガスレーザにて、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂絶縁層17の表面から中間導体層16に達する直径80μm、深さ50μmのビアホール形成用の開口18と、同じく樹脂絶縁層17表面からスルーホール上のふためっき層10に達する直径80μm、深さ100μm程度のビアホール形成用の開口19を設けた(図3(b)参照)。
【0039】
さらに、CF4 および酸素混合気体のプラズマ処理により、デスミアおよびポリオレフィン系樹脂絶縁層表面の改質を行った。この改質により、表面には、OH基やカルボニル基、COOH基などの親水性基が確認された。
なお、酸素プラズマ処理条件は、電力 800W、 500mTorr、20分間である。
(16) 次に、銅をターゲットにしたスパッタリングを、気圧 0.6Pa、温度80℃、電力200 W、時間5分間の条件で行って、前記樹脂絶縁層17の表面、開口18および開口19の内壁面に銅スパッタ層20を形成する。このように形成された銅スパッタ層20の厚さは 0.1μmであった(図3(c) 参照)。
なお、スパッタリング装置としては、日本真空技術株式会社製のSV−4540を使用した。
【0040】
(17) さらに、銅スパッタ層20上に、感光性ドライフィルムを張りつけ、フォトマスクフィルムを載置して、100mJ /cm2 で露光、0.8 %炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのめっきレジスト21を設けた。
さらに、上記(1) の処理にしたがって電解銅めっきを施して、厚さ15μmの電解銅めっき膜22を形成し、外層導体回路を厚付けするとともに、バイアホール形成用開口18および19内にめっき充填を行った(図3(d) 参照)。
【0041】
(18)そしてさらに、めっきレジスト21を5%KOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト21下の銅スパッタ層20を硝酸および硫酸/過酸化水素混合液を用いたエッチングにて溶解除去し、電解銅めっき膜22と銅スパッタ層20とからなる外層導体回路24、スルーホール上のふためっき層10に接続されるビアホール25および中間導体層16に接続されるビアホール26を形成するとともに、内層導体回路9と中間導体層16との間にコンデンサー機能を有する誘電体層15を形成した(図3(e)参照)。
(19)さらに、前記(8)〜(10)および(12)〜(18)の処理を繰り返すことにより、外層導体回路24およびビアホール26の上にそれぞれビアホール27が形成されるとともに、ビアホール27を充填した電解銅めっき層と同一面内に最外層の導体回路28が形成された多層プリント配線板を得た(図4(a)参照)。
【0042】
(20) 一方、DMDGに溶解させた60重量%のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量4000)を 46.67g、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル製、エピコート1001)15.0g、イミダゾール硬化剤(四国化成製、2E4MZ-CN)1.6 g、感光性モノマーである多価アクリルモノマー(日本化薬製、R604 )3g、同じく多価アクリルモノマー(共栄社化学製、DPE6A ) 1.5g、分散系消泡剤(サンノプコ社製、S−65)0.71gを混合し、さらにこの混合物に対して光開始剤としてのベンゾフェノン(関東化学製)を2g、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学製)を 0.2g加えて、粘度を25℃で 2.0Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物を得た。
なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器、 DVL-B型)で 60rpmの場合はローターNo.4、6rpm の場合はローターNo.3によった。
【0043】
(21) 前記(19)で得られた多層配線基板を、垂直に立てた状態でロールコーターの一対の塗布用ロール間に挟み、ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布した。
(22) 次いで、70℃で20分間、70℃で30分間の乾燥処理をそれぞれ行った後、1000mJ/cm2 の紫外線で露光し、DMTG現像処理した。
さらに、80℃で1時間、 100℃で1時間、 120℃で1時間、 150℃で3時間の条件でそれぞれ加熱処理し、バイアホール、ランド、格子状の電源層の上面の一部が開口した(開口径 200μm)ソルダーレジスト層(厚み20μm)30を形成した。
【0044】
(23) 次に、ソルダーレジスト層30を形成した基板を、塩化ニッケル30g/l、次亜リン酸ナトリウム10g/l、クエン酸ナトリウム10g/lの水溶液からなるpH=5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層31を形成した。さらに、その基板を、シアン化金カリウム2g/l、塩化アンモニウム75g/l、クエン酸ナトリウム50g/l、次亜リン酸ナトリウム10g/lの水溶液からなる無電解金めっき液に93℃の条件で23秒間浸漬して、ニッケルめっき層31上に厚さ0.03μmの金めっき層32を形成した。
【0045】
(24) そして、ソルダーレジスト層30の開口部に、はんだペーストを印刷して 200℃でリフローすることによりはんだバンプ33を形成し、はんだバンプ33を有するプリント配線板を製造した(図4(b) 参照)。
【0046】
上記実施例によって製造されたプリント配線板について、形成された誘電層の容量を調べた結果、500 穴で750pF の容量が確認され、温度に対する安定性も良好であることが確認された。
【0047】
【発明の効果】
本発明の多層プリント配線板によれば、ビルドアップ配線層内の隣接する導体回路間に中間導体回路を設け、その中間導体回路と隣接する導体回路のいずれかとの間に、少なくとも高誘電性材料を含む誘電体層を形成して、配線層内にコンデンサー機能を付与することができるので、高周波領域での優れた電源安定性を得ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a) 〜(f) は、本発明にかかる多層プリント配線板の製造工程の一部を示す図である。
【図2】 (a) 〜(e) は、本発明にかかる多層プリント配線板の製造工程の一部を示す図である。
【図3】 (a) 〜(e) は、本発明にかかる多層プリント配線板の製造工程の一部を示す図である。
【図4 】 (a) および(b) は、本発明にかかる多層プリント配線板の製造工程の一部を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 銅箔
3 スルーホール
4、11 粗化層
5 充填材
7、18 電解銅めっき
8 エッチングレジスト
9 導体回路( 内層導体回路)
10 導体層
12 樹脂絶縁層(ポリオレフィン系樹脂層)
14 誘電体層形成用開口
15 誘電体層
16 中間導体回路
17 樹脂絶縁層(ポリオレフィン系樹脂層)
18、19 ビアホール形成用開口
20 銅スパッタ層
21 めっきレジスト
22 電解銅めっき
24 導体回路(外層導体回路)
25、26、27 ビアホール
28 導体回路(外層導体回路)
30 ソルダーレジスト層
31 ニッケルめっき層
32 金めっき層
33 はんだバンプ
Claims (9)
- 絶縁基板上に、導体層と層間樹脂絶縁層とが交互に積層され、隣接する内層の導体回路と外層の導体回路とが、それらの間に設けた層間樹脂絶縁層に形成されたビアホールにて接続されたビルドアップ配線層が形成されてなる多層プリント配線板において、
前記層間樹脂絶縁層内の前記ビアホールが形成されていない箇所に中間導体層を設け、前記層間樹脂絶縁層のうち前記内層の導体回路と中間導体層との間に、少なくとも高誘電性材料を含む誘電性物質を充填してなる誘電体層が形成されるとともに、前記層間樹脂絶縁層のうち前記外層の導体回路と中間導体層との間に、前記誘電体層の真上に位置してめっき充填してなる他のビアホールが形成され、さらに、
前記層間樹脂絶縁層上に、前記ビアホール、前記他のビアホールおよび前記外層の導体回路を被覆する他の層間樹脂絶縁層が形成されているとともに、前記他のビアホールの真上に位置して前記他の層間樹脂絶縁層にめっき充填してなるさらに他のビアホールが形成されていることを特徴とする多層プリント配線板。 - 前記さらに他のビアホール上に半田バンプが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板。
- 前記他のビアホールに接触する外層の導体回路は、前記層間樹脂絶縁層の表面に形成されている無電解めっき膜と、その無電解めっき膜上に形成された電解めっき膜とから形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多層プリント配線板。
- 前記誘電体層に接触する内層の導体回路の表面は、粗化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の多層プリント配線板。
- 前記さらに他のビアホールは、前記他の層間樹脂絶縁層の表面から前記他のビアホールに達する開口の側壁に形成されている無電解めっき膜と、前記開口を完全に閉塞するように充填された電解めっき膜とから形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多層プリント配線板。
- 上記誘電体層は、BaTiO3を代表とするペロブスカイト化合物からなる高誘電性材料またはそれとエポキシ、ポリフェニレンエーテル(PPE
)、ポリイミド等の有機材料との混合体から形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の多層プリント配線板。 - 絶縁基板上に、導体層と層間樹脂絶縁層とが交互に積層され、隣接する内層の導体回路と外層の導体回路とが、それらの間に設けた層間樹脂絶縁層に形成されたビアホールにて接続されたビルドアップ配線層が形成されてなる多層プリント配線板の製造に当たって、その製造工程中に、少なくとも下記(1)〜(8)の工程、すなわち、
(1)第1の樹脂絶縁層上に内層の導体回路を形成する工程、
(2) 前記第1の樹脂絶縁層上に前記内層の導体回路を覆って第2の樹脂絶縁層を形成する工程、
(3)前記第2の樹脂絶縁層の表面から前記内層の導体回路に達する開口を形成し、その開口内に、少なくとも高誘電性材料を含む誘電性物質を充填して、誘電体層を形成する工程、
(4)前記第2の樹脂絶縁層の表面に、前記誘電体層を覆う箇所のみに中間導体層を形成する工程、
(5)前記第2の樹脂絶縁層上に前記中間導体層を覆って、第3の樹脂絶縁層を形成する工程、
(6)前記第3の樹脂絶縁層の表面から前記内層の導体回路に達する開口を形成するとともに、前記第3の樹脂絶縁層の表面から前記中間導体層に達する開口を前記誘電体層の真上に位置して形成し、それらの開口内にそれぞれめっき充填して前記ビアホールおよび他のビアホールを形成するとともに、外層の導体回路を形成する工程、
(7)前記第3の樹脂絶縁層上に前記ビアホール、前記他のビアホールおよび前記外層の導体回路を覆って第4の樹脂絶縁層を形成する工程、
(8)前記第4の樹脂絶縁層の表面から前記他のビアホールに達する開口を形成し、その開口内にめっき充填してさらに他のビアホールを形成する工程、
を含むことを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。 - 上記誘電体層は、BaTiO3を代表とするペロブスカイト化合物からなる高誘電性材料またはそれとエポキシ、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド等の有機材料との混合体から形成されることを特徴とする請求項7に記載の多層プリント配線板の製造方法。
- 上記誘電体層は、スパッタ法、蒸着法、CVD法、印刷法、フィルムラミネート法、ロールコータを用いた方法、スピンコータを用いた方法、またはカーテンコータを用いた方法のいずれかの方法で形成されることを特徴とする請求項7または8に記載の多層プリント配線板の製造方法。
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