JP4595242B2 - 車両用エンジンの制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンが停止させられる過程でそのエンジンの再始動要求があったときに、そのエンジンを好適に再始動させるようにした車両用エンジンの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エコラン車両(エコノミーランイングシステム搭載車両)、モータ走行とエンジン走行とが切換られるハイブリッド車両などにおいて、所定の停止条件が成立したときにエンジンを停止させた後、所定の復帰(始動)条件が成立したときにエンジンを再始動させるようにした車両用エンジンの制御装置が知られている。たとえば、特開2000−130208号公報に記載されている車両用エンジンの制御装置がそれである。このような制御装置においては、所定の始動条件が成立してエンジンを再始動させたとき、そのエンジンの始動状態が良好ではないときには、エンジンの吸入空気量が増大させられることにより、エンジンの再始動性が高められる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、所定の停止条件が成立するとエンジンを停止させるようにした車両では、車両の加速操作応答性を高めるために、アクセルペダルの踏み込みに応答して速やかに再始動させることが望まれる。しかしながら、エンジンの回転速度が低下していく途中であるエンジンの停止途中においてたとえばアクセルペダルの踏込み操作に基づくエンジン始動要求が発生した場合には、イナーシャや負圧のばらつきが大きいことなどのために、一律にクランキングトルクを付与しただけでは始動が不安定となり迅速且つ確実な始動性が得られない場合があった。特に、エンジン停止時においてエンジン回転速度を強制的に引き下げて速やかにエンジンを停止させる制御が行われる場合には、そのような制御のためのイナーシャトルクも加えられるので、一層上記の不都合が顕著となっていた。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、たとえエンジンの停止途中においてエンジン始動要求が発生した場合でも、確実に且つ速やかにエンジンを始動できる車両用エンジンの制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、所定の停止条件でエンジンを停止させるためのエンジンの停止要求後からエンジン回転速度が低下していく途中の期間であるエンジン停止途中においてエンジンの再始動要求が発生した場合、所定の復帰条件でエンジンを再始動させる車両用エンジンの制御装置であって、前記エンジンの吸気管の圧力が小さいほど該エンジンの再始動時の吸入空気量を増大させる再始動制御手段を、含むことにある。
【0006】
【発明の効果】
このような車両用エンジンの制御装置においては、所定の停止条件でエンジンを停止させるためのエンジン停止要求後からエンジン回転速度が低下していく途中の期間であるエンジン停止途中においてエンジンの再始動要求が発生した場合に、再始動制御手段により、エンジンの吸気管の圧力が小さい(低い、すなわち負圧大)ほどそのエンジンの再始動時の吸入空気量が増大させられることから、エンジン停止途中において吸気管内負圧が残っているときに再始動要求があった場合でもそれに見合うように吸入空気量が増大させられるので、エンジンの再始動性が高められるとともに、迅速な再始動が得られる。すなわち、吸気管内圧力が低いほど換言すれば負圧が大きい程エンジンのクランキング抵抗が大きくなることから、スロットル開度を大きくして吸入空気量を増大させることで、吸気管内圧力が大気圧に接近させられてクランキング抵抗が小さくされるので、エンジンの再始動性が高められるのである。
【0007】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記再始動制御手段は、前記エンジン停止途中のエンジン停止判定後からの再始動までの時間が短いほどそのエンジンの再始動時の吸入空気量を増大させるものである。このようにすれば、エンジン停止からの再始動までの時間が短くそのエンジンの吸気管内圧が低いときほどエンジンの再始動時の吸入空気量を増大させるので、停止途中のエンジンの再始動性が高められるとともに、迅速な再始動が得られる。
【0008】
また、好適には、前記エンジンの停止要求時には、そのエンジンの負荷を増大させてその回転速度を強制的に低下させる回転速度強制低下手段を備えたものである。このようにすれば、エンジンの停止要求時においてエンジンが速やかに停止させられるので、エンジンの排気ガス中の有害ガスの発生量が好適に抑制される。また、エンジン停止時の筒内圧が速やかに低くされるので、再始動性が高められる。
【0009】
また、好適には、前記エンジンの回転速度が予め設定された停止判定回転速度を下回ったときにそのエンジンの停止が判定されるものである。このようにすれば、エンジンの回転速度が停止判定回転速度を下回ったときにエンジンの停止判定が行われるので、再始動性が確保できる範囲で停止判定回転速度を決定することにより、速やかにエンジン停止判定を行い速やかに再始動を実施することができる。
【0010】
また、好適には、前記エンジン停止途中の前記エンジンの停止判定後からの経過時間が予め設定された判定値を超えたときは前記再始動制御手段による吸入空気量の増大制御が終了させられるものである。このようにすれば、エンジンの停止からの経過時間が判定値を超えたときにはエンジンの吸気管の筒内圧が大気圧に近い値に復帰しているので、吸入空気量の不要な増大制御の実施が好適に防止される。
【0011】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明が適用されたハイブリッド車両のハイブリッド制御装置10を説明する概略構成図であり、図2は図1のハイブリッド車両の動力伝達系すなわち変速機12を含む動力伝達装置(駆動装置)の構成を説明する骨子図である。
【0012】
図1および図2において、ハイブリッド車両の動力伝達系は、供給された燃料の燃焼でその供給量に応じた大きさの動力すなわち出力トルクを発生する内燃機関であるエンジン14、電動機および発電機として機能するフロントモータジェネレータ(以下、FMGという)16、およびダブルピニオン型の遊星歯車装置18を備えて構成されており、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両などに横置きに搭載されて使用される。遊星歯車装置18のサンギヤ18sにはエンジン14が連結され、キャリア18cにはモータジェネレータ16が連結され、リングギヤ18rは第1ブレーキB1を介してケース20に連結されるようになっている。また、キャリア18cは第1クラッチC1を介して変速機12の入力軸22に連結され、リングギヤ18rは第2クラッチC2を介して入力軸22に連結されるようになっている。上記エンジン14およびFMG16はハイブリッド車両の原動機として機能し、遊星歯車装置18は歯車式差動装置であって動力の合成分配機構として機能している。
【0013】
上記クラッチC1、C2および第1ブレーキB1は、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられるバンド式或いは湿式多板式の油圧式摩擦係合装置であり、たとえば図3に示す油圧制御回路24から供給される作動油によって摩擦係合させられるようになっている。図3は、油圧制御回路24の要部を示す図であり、図示しない電動ポンプを含む電動式油圧発生装置26で発生させられた元圧PCが、マニュアルバルブ28を介してシフトレバー30(図1参照)のシフトポジションに応じて各クラッチC1、C2、ブレーキB1へ供給されるようになっている。シフトレバー30は、運転者によって操作されるシフト操作部材で、本実施例では「B」、「D」、「N」、「R」、「P」の5つのシフトポジションに選択操作されるようになっており、マニュアルバルブ28はケーブルやリンク等を介してシフトレバー30に連結され、そのシフトレバー30の操作に従って機械的に切り換えられるようになっている。
【0014】
「B」ポジションは、前進走行時に変速機12のダウンシフトなどにより比較的大きな動力源ブレーキが発生させられるシフトポジションで、「D」ポジションは前進走行するシフトポジションであり、これ等のシフトポジションでは出力ポート28aからクラッチC1およびC2へ元圧PCが供給される。第1クラッチC1へは、シャトル弁31を介して元圧PCが供給されるようになっている。「N」ポジションは動力源からの動力伝達を遮断するシフトポジションで、「R」ポジションは後進走行するシフトポジションで、「P」ポジションは動力源からの動力伝達を遮断するとともに図示しないパーキングロック装置により機械的に駆動輪の回転を阻止するシフトポジションであり、これ等のシフトポジションでは出力ポート28bから第1ブレーキB1へ元圧PCが供給される。出力ポート28bから出力された元圧PCは戻しポート28cへも入力され、上記「R」ポジションでは、その戻しポート28cから出力ポート28dを経てシャトル弁31から第1クラッチC1へ元圧PCが供給されるようになっている。
【0015】
クラッチC1、C2、およびブレーキB1には、それぞれコントロール弁32、34、36が設けられ、それ等の油圧PC1、PC2、PB1が制御されるようになっている。クラッチC1の油圧PC1についてはON−OFF弁38によって調圧され、クラッチC2およびブレーキB1についてはリニアソレノイド弁40によってそれぞれの係合圧PC2およびPB1が調圧されるようになっている。
【0016】
そして、上記クラッチC1、C2、およびブレーキB1の作動状態に応じて、図4に示す各走行モードが成立させられる。すなわち、「B」ポジションまたは「D」ポジションでは、「ETCモード」、「直結モード」、「モータ走行モード(前進)」の何れかが成立させられ、「ETCモード」では、第2クラッチC2を係合するとともに第1クラッチC1および第1ブレーキB1を開放した状態、言い換えればサンギヤ18s、キャリア18c、およびリングギヤ18rが相対回転可能な状態で、エンジン14およびFMG16を共に作動させてサンギヤ18sおよびキャリア18cにトルクを加え、リングギヤ18rを回転させて車両を前進走行させる。「直結モード」では、クラッチC1、C2を係合するとともに第1ブレーキB1を開放した状態で、エンジン14を作動させて車両を前進走行させる。「直結モード」ではまた、バッテリ42(図1参照)の蓄電量(残容量)SOCに応じて、FMG16を力行制御するとともにその分だけエンジントルクを削減したり、FMG16を発電制御するとともにその分だけエンジントルクを増加させたりすることにより、蓄電量SOCを例えば充放電効率が優れた適正な範囲内に保持するようになっている。また、「モータ走行モード(前進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放させることにより、エンジン14を切り離した状態でFMG16だけで車両を駆動して前進走行させる。上記第2クラッチC2は、「直結モード」から「モータ走行モード」への切換時に解放させられて、エンジン14を動力伝達系から切り離すものであるので、エンジン14と駆動輪52或いは変速機12との間で動力を伝達し或いは遮断する動力伝達開閉装置として機能している。
【0017】
図5は、上記前進モードにおける遊星歯車装置18の作動状態を示す共線図であり、縦軸「S」はサンギヤ18sの回転速度、縦軸「R」はリングギヤ18rの回転速度、縦軸「C」はキャリア18cの回転速度を表しているとともに、それ等の間隔はギヤ比ρ(=サンギヤ18sの歯数/リングギヤ18rの歯数)によって定まる。具体的には、「S」と「C」の間隔を1とすると、「R」と「C」の間隔がρになり、本実施例ではρが0.6程度である。また、(a) のETCモードにおけるトルク比は、エンジントルクTe:CVT入力軸トルクTin:モータトルクTm=ρ:1:1−ρであり、モータトルクTmはエンジントルクTeより小さくて済むとともに、定常状態ではそれ等のモータトルクTmおよびエンジントルクTeを加算したトルクがCVT入力軸トルクTinになる。CVTは無段変速機の意味であり、本実施例では変速機12としてベルト式無段変速機が設けられている。
【0018】
図4に戻って、「N」ポジションまたは「P」ポジションでは、「ニュートラル」または「充電・Eng始動モード」の何れかが成立させられ、「ニュートラル」ではクラッチC1、C2および第1ブレーキB1の何れも開放する。「充電・Eng始動モード」では、クラッチC1、C2を開放するとともに第1ブレーキB1を係合し、FMG16を逆回転させてエンジン14を始動したり、エンジン14により遊星歯車装置18を介してFMG16を回転駆動するとともに発電制御することにより、電気エネルギーを発生させてバッテリ42を充電したりする。
【0019】
「R」ポジションでは、「モータ走行モード(後進)」または「フリクション走行モード」が成立させられ、「モータ走行モード(後進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、FMG16を逆方向へ回転駆動してキャリア18c、更には入力軸22を逆回転させることにより車両を後進走行させる。「フリクション走行モード」は、上記「モータ走行モード(後進)」での後進走行時にアシスト要求が出た場合に実行されるもので、エンジン14を始動してサンギヤ18sを正方向へ回転させるとともに、そのサンギヤ18sの回転に伴ってリングギヤ18rが正方向へ回転させられている状態で、第1ブレーキB1をスリップ係合させてそのリングギヤ18rの回転を制限することにより、キャリア18cに逆方向の回転力を作用させて後進走行をアシストするものである。
【0020】
前記変速機12はベルト式無段変速機であり、その出力軸44からカウンタ歯車46を経て差動歯車装置48のリングギヤ50に動力が伝達され、その差動歯車装置48により左右の駆動輪(本実施例では前輪)52に動力が分配される。変速機12は、一対の可変プーリ12a、12bを備えており、油圧シリンダによってV溝幅が変更されることにより変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout )が連続的に変化させられるとともに、ベルト張力が調整されるようになっている。前記油圧制御回路24は、変速機12の変速比γやベルト張力を制御するための回路を備えており、共通の電動式油圧発生装置26から作動油が供給される。油圧制御回路24の作動油はまた、オイルパンに蓄積されて遊星歯車装置18や差動装置48を潤滑するとともに、一部がFMG16に供給されて、FMG16のハウジング内を流通したりハウジングに形成された冷却通路を流通したりハウジングに接して流通したりすることにより、そのFMG16を冷却するようになっている。
【0021】
本実施例のハイブリッド制御装置10において、ハイブリッド用電子制御装置(以下、HVECUという)60は、CPU、RAM、ROM等を備えていて、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を実行することにより、電子スロットルECU62、エンジンECU64、M/GECU66、T/MECU68、前記油圧制御回路24のON−OFF弁38、リニアソレノイド弁40、エンジン14のスタータなどとして機能するスタータモータジェネレータ(以下、SMGという)70などを制御する。電子スロットルECU62はエンジン14の電子スロットル弁72の開度を図示しないアクチュエータを用いて制御するものである。エンジンECU64はエンジン14の燃料噴射量や可変バルブタイミング機構、点火時期などによりエンジン出力を制御するものである。M/GECU66はインバータ74を介してFMG16の力行トルクや回生制動トルク等を制御するものである。T/MECU68は変速機12の変速比γやベルト張力などを制御するものである。上記SMG70は電動機および発電機として機能するものであってエンジン14に作動的に連結されており、ベルト或いはチェーンなどの動力伝達装置を介してエンジン14のクランクシャフトに連結されている。
【0022】
上記HVECU60には、アクセル操作量センサ76からアクセル操作部材としてのアクセルペダル78の操作量θacを表す信号が供給されるとともに、シフトポジションセンサ80からシフトレバー30のシフトポジションを表す信号が供給される。また、エンジン回転速度センサ82、モータ回転速度センサ84、入力軸回転速度センサ86、出力軸回転速度センサ88、CVT油温センサ90から、それぞれエンジン回転速度(回転数)Ne、モータ回転速度(回転数)Nm、入力軸回転速度(入力軸22の回転速度)Nin、出力軸回転速度(出力軸44の回転速度)Nout 、油圧制御回路24の作動油の温度THCVT を表す信号がそれぞれ供給される。出力軸回転速度Nout は車速Vに対応する。この他、バッテリ42の蓄電量SOCなど、運転状態を表す種々の信号が供給されるようになっている。蓄電量SOCは単にバッテリ電圧であっても良いが、充放電量を逐次積算して求めるようにしても良い。上記アクセル操作量θacは運転者の出力要求量に相当するものであり、前記電子スロットル弁72の開度は基本的にはそのアクセル操作量θacに応じて制御される。
【0023】
図6は、上記ハイブリット用電子制御装置であるHVECU60の制御機能の要部すなわちエンジン停止途中において始動要求が発生した場合にそのエンジン14を確実に再始動させる制御機能を説明する機能ブロック線図である。図6において、エンジン停止要求判定手段100は、エンジン14を停止させるためのエンジン停止要求が出されたか否かを、たとえばアクセルペダルのオフ操作に基づいて、或いは「ETCモード」または「直結モード」から「モータ走行モード」への切換判断があったことなどに基づいて判定する。スタータMG制御手段102は、上記エンジン停止要求判定手段100によりエンジン停止要求が出されたと判定された場合は、排気ガス中の有害ガスを抑制するために、SMG70で発電させることによりエンジン14の負荷を高めることにより速やかに或いは強制的にエンジン回転速度Neを低下させる。このときのスタータMG制御手段102は、エンジン回転速度を強制的に低下させる回転速度強制低下手段として機能している。
【0024】
エンジン停止途中再始動要求判定手段104は、上記エンジン14が停止させられる途中において、そのエンジン14の再始動要求があったか否かを、たとえばエンジン回転速度Neおよびアクセルペダルの踏込み操作などに基づいて、或いは「モータ走行モード」から「ETCモード」または「モータ走行モード」から「直結モード」への切換判断に基づいて判定する。再始動許可条件判定手段106は、エンジン14の再始動許可条件が成立したか否かを、エンジン回転速度Neがたとえば800乃至200r.p.m の範囲に定められた再始動禁止領域外にあるか否かすなわちその再始動禁止領域(期間)の下限値Nminより下の領域内にあるか否かに基づいて判定する。この下限値Nminは、エンジン14の吸気管内圧が十分に大気圧に接近し負圧が低下してそのばらつきが小さくなりエンジン14の再始動を行っても差し使えない状態を示すので、再始動制御に関してエンジン14の停止を判定するためにも用いられる。
【0025】
上記スタータMG制御手段102は、上記再始動許可条件判定手段106によりエンジン14の再始動が許可されたと判定され、且つ上記エンジン停止途中再始動要求判定手段104によりエンジン停止途中に再始動要求があったと判定された場合は、エンジン14を始動させるためにそのクランク軸をSMG70を電動機として用いて回転駆動する。同時に、再始動トルク制御手段116は、再始動トルク算出手段108により算出された再始動トルクTe(=TeB+TeA)を得るための吸入空気量すなわち吸入混合気量となるように、電子スロットル72を作動させそのスロットル開度を増加させる。この再始動トルクは、エンジン14が完爆したときに発生するトルクであり、大きくなるほど吸気管内圧が低く(負圧大)ても始動が容易にできる。
【0026】
上記再始動トルク算出手段108は、たとえば図7に示す予め記憶された関係から実際の車速V(km/h)に基づいて基本始動トルクTeBを算出する基本始動トルク算出手段110と、たとえば図8に示す予め記憶された関係から実際の再始動許可時すなわちエンジン停止判定時からの経過時間tELおよびエンジン冷却水温TWに基づいて補正始動トルクTeAを算出する補正始動トルク算出手段112とを備え、基本始動トルクTeBから補正始動トルクTeAだけ増量させた始動トルクTeを算出して出力する。上記図7に示す関係は、車速Vが増加するほど基本始動トルクTeBが増加するように予め求められたものである。上記図8に示す関係は、エンジン14のクランク軸の回転抵抗に対抗してそのクランク軸を回転駆動できるように、経過時間tELが増加するほどおよびエンジン冷却水温TWが上昇するほど補正始動トルクTeAが減少するように予め求められたものである。
【0027】
経過時間判定手段114は、上記再始動許可時すなわちエンジン停止判定時からの経過時間tELがたとえば1秒程度の値に予め設定された増大禁止時間T1を超えたか否かを判定する。上記補正始動トルク算出手段112は、この経過時間判定手段114により経過時間tELが上記増大禁止時間T1を超えたことが判定された場合は、補正始動トルクTeAを零として増大補正が実行されないようにする。上記増大禁止時間T1は、エンジン14の停止指令(停止開始)直後においてその筒内圧が残っている時間に相当するように予め実験的に求められたものである。上記再始動許可条件判定手段106、再始動トルク算出手段108、再始動トルク制御手段116などは、エンジン14を確実に且つ速やかに再始動させるための再始動制御手段118に対応している。
【0028】
図9は、上記ハイブリット用電子制御装置であるHVECU60の制御作動の要部すなわちエンジン停止要求によるエンジン停止途中にエンジン始動要求があったときの再始動制御作動を説明するフローチャートである。この図9の制御ルーチンは、たとえばアクセルペダルのオフ操作に基づいて、或いは「ETCモード」または「直結モード」から「モータ走行モード」への切換判断があったことなどに基づいて図10のt1時点に示すようにエンジン停止要求がされ、エンジン14の停止が開始させられた状態で実行される。この状態では、エンジン14の回転を速やかに停止させるためにSMG70の発電モードを用いてエンジン14の負荷が増大させられる。
【0029】
前記エンジン停止途中再始動要求判定手段104に対応するステップ(以下、ステップを省略する)SA1では、エンジン14の停止途中において再始動要求があるか否かが判断される。図10のt2時点はこの状態を示している。このSA1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、SA2において、エンジン14が完爆状態でないか否かがその回転速度Neがたとえば800r.p.mを下まわることに基づいて判断される。このSA2の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、前記再始動許可条件判定手段106に対応するSA3において、再始動許可条件が成立した否かが、エンジン回転速度Neが再始動禁止領域(800〜200r.p.m)内にないか否かすなわちエンジン回転速度Neが再始動禁止領域の下限値(200r.p.m)を下まわるか否かに基づいて判断される。このSA3の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、前記基本始動トルク算出手段110に対応するSA4において、図7に示す関係から実際の車速Vに基づいて基本始動トルクTeBが算出される。図10のt3時点はこの状態を示している。次いで、前記経過時間判定手段114に対応するSA5において、エンジン回転速度Neが再始動禁止領域の下限値(200r.p.m)を下まわってからの経過時間tELが予め設定された増大禁止時間T1内であるか否かが判断される。このSA5の判断が否定される場合はSA7が直接実行されて補正始動トルクTeAなしで再始動させられるが、肯定される場合は、前記補正始動トルク算出手段112に対応するSA6において、図8に示す関係から実際の再始動許可時すなわちエンジン停止判定時からの経過時間tELおよびエンジン冷却水温TWに基づいて補正始動トルクTeAが算出される。この補正始動トルクTeAは経過時間tELに応じて減少させられる。そして、前記再始動トルク制御手段116に対応するSA7において、再始動トルクTe(=基本始動トルクTeB+ 補正始動トルクTeA)を出力させるための吸入空気量となるように電子スロットル72が開かれた後、本ルーチンが終了させられる。以上の制御ルーチンが繰り返し実行されるうち、上記経過時間tELが予め設定された増大期間T1を超えると、上記SA5の判断が否定されるので本ルーチンが終了させられる。図10のt4時点はこの状態を示している。この場合、SA6が実行されないので、SA7の始動トルクTeは基本始動トルクTeBと等しくなる。なお、図10の実線は再起動要求がない場合を示し、1点鎖線は再始動要求が始動禁止期間内にあった場合を示している。
【0030】
上述のように、本実施例の車両用エンジンの制御装置においては、再始動制御手段118により、エンジン14の吸気管内圧力が大気圧よりも低いほどすなわち負圧が大であるほどそのエンジン14の再始動時の吸入空気量が増大させられることから、エンジン停止途中において吸気管内圧に負圧が残っているときに再始動要求があった場合でもその負圧の大きさに見合うように吸入空気量が増大させられるので、エンジン14の再始動性が高められるとともに、迅速な再始動が得られる。すなわち、エンジン14の吸気管内負圧が大きいほどクランキング抵抗が大きいことから、再始動時にはその負圧の大きさに応じて吸入空気量を多くするようにスロットル開度が大きくされるので、クランキング抵抗が小さくされて再始動性が高められるのである。
【0031】
また、本実施例によれば、再始動制御手段118は、エンジン回転速度Neが200r.p.mを下回るエンジン停止判定から再始動までの時間が短いほどそのエンジン14の再始動時の吸入空気量を増大させるものであることから、エンジン停止からの再始動までの時間が短くそのエンジンの筒内圧が高いときほどエンジン14の再始動時の吸入空気量を増大させるので、停止途中のエンジン14の再始動性が高められるとともに、迅速な再始動が得られる。
【0032】
また、本実施例によれば、エンジン14の停止要求時には、そのエンジン14の負荷を増大させてその回転速度Neを強制的に低下させる回転速度強制低下手段(スタータMG制御手段102)を備えたものであることから、エンジン14の停止要求時においてエンジン14が速やかに停止させられるので、エンジン14の排気ガス中の有害ガスの発生量が好適に抑制される。また、エンジン停止時の筒内圧が速やかに低くされるので、再始動性が高められる。
【0033】
また、本実施例によれば、エンジン14の回転速度Neが予め設定された停止判定回転速度すなわちその再始動禁止領域の下限値Nminを下回ったときにそのエンジン14の停止が判定されることから、再始動性が確保できる範囲で停止判定回転速度を決定することにより、速やかにエンジン停止判定を行い速やかに再始動を実施することができる。
【0034】
また、本実施例によれば、エンジン14の停止からの経過時間tELが予め設定された判定値すなわち増大期間T1を超えたときは前記再始動トルク制御手段116による吸入空気量の増大制御が終了させられるものである。エンジン14の停止からの経過時間tELが上記判定値T1を超えたときにはエンジン14の筒内圧が大気圧に近い値に復帰しているので、吸入空気量の不要な増大制御の実施が好適に防止される。
【0035】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【0036】
たとえば、前述の実施例では、エンジン14およびFMG16を選択的に原動機として用いるハイブリッド車両であったが、動力が不要であるときにエンジン14を停止させ且つ再発進時或いは再加速時にエンジン14を始動させるエコラン車両(エコノミーランイングシステム搭載車両)であっても差し支えない。
【0037】
また、前述の実施例では、エンジン14のクランク軸がSMG70によって回転駆動されることにより始動させられるものであったが、図4の充電、エンジン始動モードのようにクラッチC1、C2が開放され且つブレーキB1が係合させられた状態でFMG16により始動させられてもよい。
【0038】
また、前述の実施例の車両は、エンジン14の停止要求時にそのエンジン14の負荷を増大させてその回転速度Neを強制的に低下させる回転速度強制低下手段(スタータMG制御手段102)を備えたものであったが、その回転速度強制低下手段は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0039】
なお、上述したのはあくまでも本発明の一実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたハイブリッド車両に備えられた制御装置を概略説明する図である。
【図2】図1のハイブリッド車両の動力伝達系の構成を説明する骨子図である。
【図3】図1の油圧制御回路の一部を示す回路図である。
【図4】図1のハイブリッド駆動制御装置において成立させられる幾つかの走行モードと、クラッチおよびブレーキの作動状態との関係を説明する図である。
【図5】図4のETCモード、直結モード、およびモータ走行モード(前進)における遊星歯車装置の各回転要素の回転速度の関係を示す共線図である。
【図6】図1のHVECTの制御機能の要部すなわちエンジン停止途中の再始動制御機能を説明するブロック部である。
【図7】図6において基本始動トルクを求めるために用いられる予め記憶された関係を示す図である。
【図8】図6において補正始動トルクを求めるために用いられる予め記憶された関係を示す図である。
【図9】図1のHVECTの制御作動の要部すなわちエンジン停止途中の再始動制御作動を説明するフローチャートである。
【図10】図1のHVECTの制御作動の要部すなわちエンジン停止途中の再始動制御作動を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
10:ハイブリッド制御装置
14:エンジン
60:HVECU(ハイブリッド用電子制御装置)
70:スタータ用モータジェネレータ(SMG、電動機、発電機)
100:エンジン停止要求判定手段
102:スタータMG制御手段
104:エンジン停止途中の再始動要求判定手段
106:再始動許可条件判定手段
108:再始動トルク算出手段
110:基本始動トルク算出手段
112:補正始動トルク算出手段
114:経過時間判定手段
116:再始動トルク制御手段
Claims (6)
- 所定の停止条件でエンジンを停止させるための該エンジンの停止要求後からエンジン回転速度が低下していく途中の期間であるエンジン停止途中においてエンジンの再始動要求が発生した場合、エンジンを再始動させる車両用エンジンの制御装置であって、
前記エンジンの吸気管の圧力が小さいほど該エンジンの再始動時の吸入空気量を増大させる再始動制御手段を、含むことを特徴とする車両用エンジンの制御装置。 - 前記再始動制御手段は、前記エンジン停止途中のエンジン停止判定後からの再始動までの時間が短いほど該エンジンの再始動時の吸入空気量を増大させるものである請求項1の車両用エンジンの制御装置。
- 前記エンジンの停止要求時には、該エンジンの負荷を増大させてその回転速度を強制的に低下させる回転速度強制低下手段を備えたものである請求項1または2の車両用エンジンの制御装置。
- 前記エンジンの回転速度が予め設定された停止判定回転速度を下回ったときに該エンジンの停止が判定されるものである請求項1乃至3のいずれか1の車両用エンジンの制御装置。
- 前記エンジン停止途中の前記エンジンの停止判定後からの経過時間が予め設定された判定値を超えたときは前記再始動制御手段による吸入空気量の増大制御が終了させられるものである請求項1乃至3のいずれか1の車両用エンジンの制御装置。
- 前記再始動制御手段は、前記エンジンの吸気管に設けられたスロットル弁開度を増大させることによって前記再始動時の吸入空気量を増大させるものである請求項1の車両用エンジンの制御装置。
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