JP4940991B2 - パワートレーンの制御装置、制御方法、その方法を実現させるプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体 - Google Patents

パワートレーンの制御装置、制御方法、その方法を実現させるプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体 Download PDF

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Description

本発明は、パワートレーンの制御装置、制御方法、その方法を実現させるプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体に関し、特に、減速時にエンジン回転数を減少させる技術に関する。
従来より、エンジンおよび回転電機を駆動源に有するハイブリッド車が知られている。このようなハイブリッド車においては、車両の走行状態に応じてエンジンおよび回転電機が使い分けられる。たとえば、高速走行時などにおいては主にエンジンを用いて走行し、中低速走行時などにおいては主に回転電機を用いて走行する。このようなハイブリッド車の一つに、回転電機に連結される回転要素とエンジンに連結される回転要素とを有する差動機構を搭載したものがある。
特開2004−153946号公報(特許文献1)は、主動力源と第1モータ(回転電機)と第2モータと出力部材との4要素が、共線図上で第1モータ、主動力源、出力部材、第2モータの回転速度順になるように連結された歯車機構(差動機構)を有するハイブリッド駆動系を搭載したハイブリッド車のモータ過回転防止制御装置を開示する。このモータ過回転防止制御装置は、主動力源の動作点が最適エネルギ効率線上にくるように変速比を設定し、この変速比設定に基づいて算出された第1モータと第2モータの回転速度のうち、一方のモータの回転速度が過回転と判断された場合、主動力源回転数指令値を補正することでモータの回転速度を下げるモータ過回転防止制御部を含む。
この公報に記載のモータ過回転防止制御装置によれば、モータの回転速度が過回転と判断された場合、主動力源回転数指令値を補正することでモータの回転速度が下げられる。これにより、モータ回転速度が過回転すると予測される場合、主動力源の回転数補正により、モータの過回転を未然に防止することができる。
特開2004−153946号公報
ところで、差動機構の特性から、共線図においてエンジンに隣接する2つ回転要素のうちの一方の回転数が減少すると、他方が増大する。したがって、回転電機の回転数は、車両の急減速時においてエンジン回転数が変化しない場合においても過剰になり得る。しかしながら、特開2004−153946号公報においては、車両の急減速時について何等考慮されていない。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、車両の急減速時において回転電機の回転数が過剰に大きくならないようにすることができるパワートレーンの制御装置、制御方法、その方法を実現させるプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体を提供することである。
第1の発明に係るパワートレーンの制御装置は、回転電機に連結される第1の回転要素、車輪にトルクを伝達する第2の回転要素およびエンジンに連結される第3の回転要素を有する差動機構を備えたパワートレーンの制御装置である。この制御装置は、第2の回転要素の回転数を検出するための手段と、第2の回転要素の回転数の減少率がしきい値より大きい場合、小さい場合に比べて、エンジンの回転数を制限するように制御するための制御手段とを含む。第6の発明に係るパワートレーンの制御方法は、第1の発明に係るパワートレーンの制御装置と同様の要件を備える。
第1または第6の発明によると、車輪にトルクを伝達する第2の回転要素の回転数が検出される。第2の回転要素の回転数の減少率がしきい値より大きい場合、小さい場合に比べて、エンジンの回転数が制限される。第1の回転要素は、差動機構の3つの回転要素のうちの一つであることから、第1の回転要素の回転数は、第3の回転要素、すなわちエンジンの回転数に応じて変化する。したがって、エンジンの回転数を制限すると、第1の回転要素の回転数が制限される。これにより、第1の回転要素が連結された回転電機の回転数が過剰に大きくならないようにすることができる。そのため、車両の急減速時において回転電機の回転数が過剰に大きくならないようにすることができるパワートレーンの制御装置もしくは制御方法を提供することができる。
第2の発明に係るパワートレーンの制御装置は、第1の発明の構成に加え、回転電機の回転数が第1の回転数以下になるように制御するための手段をさらに含む。制御手段は、回転電機の回転数が第1の回転数よりも小さい第2の回転数以下になるように制御することにより、エンジンの回転数を制限するように制御するための手段を含む。第7の発明に係るパワートレーンの制御方法は、第2の発明に係るパワートレーンの制御装置と同様の要件を備える。
第2または第7の発明によると、回転電機の回転数が第1の回転数以下になるように制御される。第2の回転要素の回転数の減少率がしきい値より大きい場合、回転電機の回転数が第1の回転数よりも小さい第2の回転数以下になるように制御することにより、エンジンの回転数が制限される。これにより、第1の回転要素が連結された回転電機の回転数が過剰に大きくならないようにすることができる。
第3の発明に係るパワートレーンの制御装置においては、第1の発明の構成に加え、制御手段は、エンジンにおける燃料噴射を停止することによりエンジンの回転数を制限するように制御するための手段を含む。第8の発明に係るパワートレーンの制御方法は、第3の発明に係るパワートレーンの制御装置と同様の要件を備える。
第3または第8の発明によると、エンジンにおける燃料噴射を停止することによりエンジンの回転数が制限される。これにより、第1の回転要素が連結された回転電機の回転数が過剰に大きくならないようにすることができる。
第4の発明に係るパワートレーンの制御装置においては、第1の発明の構成に加え、制御手段は、エンジンにおける点火時期を遅角することによりエンジンの回転数を制限するように制御するための手段を含む。第9の発明に係るパワートレーンの制御方法は、第4の発明に係るパワートレーンの制御装置と同様の要件を備える。
第4または第9の発明によると、エンジンにおける点火時期を遅角することによりエンジンの回転数が制限される。これにより、第1の回転要素が連結された回転電機の回転数が過剰に大きくならないようにすることができる。
第5の発明に係るパワートレーンの制御装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加え、しきい値は、第2の回転要素の回転数が小さいほど、より小さくなるように定められる。第10の発明に係るパワートレーンの制御方法は、第5の発明に係るパワートレーンの制御装置と同様の要件を備える。
第5または第10の発明によると、差動機構においては、第1の回転要素の回転数は、第2の回転要素の回転数が小さいほどより大きくなり得るため、第2の回転要素の回転数と比較されるしきい値は、第2の回転要素の回転数が小さいほど、より小さくなるように定められる。これにより、第1の回転要素の回転数が大きいほど、エンジンの回転数を制限し易くすることができる。そのため、車両の急減速時において回転電機の回転数が過剰に大きくならないようにすることができる。
第11の発明に係るプログラムは、第6〜10のいずれかの発明に係る制御方法をコンピュータに実現させるプログラムであって、第12の発明に係る記録媒体は、第6〜10のいずれかの発明に係る制御方法をコンピュータに実現させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
第11または第12の発明によると、コンピュータ(汎用でも専用でもよい)を用いて、第6〜10のいずれかの発明に係るパワートレーンの制御方法を実現することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る制御装置を搭載したハイブリッド車について説明する。このハイブリッド車は、FR(Front engine Rear drive)車両である。なお、FR以外の車両であってもよい。
ハイブリッド車は、駆動源としてのハイブリッドシステム100と、オートマチックトランスミッション400と、プロペラシャフト500と、デファレンシャルギヤ600と、後輪700と、ECU(Electronic Control Unit)800とを含む。本実施の形態に係る制御装置は、たとえばECU800のROM(Read Only Memory)802に記録されたプログラムを実行することにより実現される。
なお、ECU800は、複数のECUに分割するようにしてもよい。また、ECU800により実行されるプログラムをCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などの記録媒体に記録して市場に流通させてもよい。
このハイブリッド車のパワートレーンは、ハイブリッドシステム100とオートマチックトランスミッション400とを含む。ハイブリッドシステム100のエンジン200は、インジェクタ202から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。
オートマチックトランスミッション400は、ハイブリッドシステム100の出力軸に連結される。オートマチックトランスミッション400から出力された駆動力は、プロペラシャフト500およびデファレンシャルギヤ600を介して、左右の後輪700に伝達される。
ECU800には、シフトレバー804のポジションスイッチ806と、アクセルペダル808のアクセル開度センサ810と、ブレーキペダル812のストロークセンサ814と、電子スロットルバルブ816のスロットル開度センサ818と、エンジン回転数センサ820と、入力軸回転数センサ822と、出力軸回転数センサ824と、油温センサ826と、水温センサ828とがハーネスなどを介して接続されている。
シフトレバー804の位置(ポジション)は、ポジションスイッチ806により検出され、検出結果を表す信号がECU800に送信される。シフトレバー804の位置に対応して、オートマチックトランスミッション400における変速が自動で行なわれる。
アクセル開度センサ810は、アクセルペダル808の開度を検出し、検出結果を表す信号をECU800に送信する。ストロークセンサ814は、ブレーキペダル812の操作量(運転者がブレーキペダル812を踏む量)を検出し、検出結果を表す信号をECU800に送信する。
スロットル開度センサ818は、アクチュエータにより開度が調整される電子スロットルバルブ816の開度を検出し、検出結果を表す信号をECU800に送信する。電子スロットルバルブ816により、エンジン200に吸入される空気量(エンジン200の出力)が調整される。
なお、電子スロットルバルブ816の代わりにもしくは加えて、吸気バルブ(図示せず)や排気バルブ(図示せず)のリフト量や開閉する位相を変更することにより、エンジン200に吸入される空気量を調整するようにしてもよい。
エンジン回転数センサ820は、エンジン200の出力軸(クランクシャフト)の回転数(エンジン回転数NE)を検出し、検出結果を表す信号をECU800に送信する。入力軸回転数センサ822は、オートマチックトランスミッション400の入力軸回転数NIを検出し、検出結果を表す信号をECU800に送信する。出力軸回転数センサ824は、オートマチックトランスミッション400の出力軸回転数NOを検出し、検出結果を表す信号をECU800に送信する。
オートマチックトランスミッション400の出力軸回転数NOからハイブリッド車の車速が算出される。なお、車速を算出する方法については、周知の一般的な技術を利用すればよいため、ここではその詳細な説明は繰返さない。
油温センサ826は、オートマチックトランスミッション400の作動や潤滑に用いられるオイル(ATF:Automatic Transmission Fluid)の温度(油温)を検出し、検出結果を表す信号をECU800に送信する。
水温センサ828は、エンジン200の冷却水の温度(水温)を検出し、検出結果を表わす信号をECU800に送信する。
ECU800は、ポジションスイッチ806、アクセル開度センサ810、ストロークセンサ814、スロットル開度センサ818、エンジン回転数センサ820、入力軸回転数センサ822、出力軸回転数センサ824、油温センサ826、水温センサ828などから送られてきた信号、ROM802に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の走行状態となるように、機器類を制御する。
図2を参照して、ハイブリッドシステム100およびオートマチックトランスミッション400についてさらに説明する。
ハイブリッドシステム100は、エンジン200と、動力分割機構310と、第1MG(Motor Generator)311と、第2MG312とを含む。動力分割機構310は、入力軸302に入力されたエンジン200の出力を第1MG311および出力軸304に分割する。動力分割機構310は、プラネタリギヤ320から構成される。
プラネタリギヤ320は、サンギヤ322、ピニオンギヤ324、ピニオンギヤ324を自転および公転可能に支持するキャリア326、ピニオンギヤ324を介してサンギヤ322と噛み合うリングギヤ328を含む。
動力分割機構310において、キャリア326は入力軸302すなわちエンジン200に連結される。サンギヤ322は第1MG311に連結される。リングギヤ328は出力軸304に連結される。リングギヤ328のトルクが後輪700に伝達される。
動力分割機構310は、サンギヤ322、キャリア326、リングギヤ328が相対的に回転することにより差動装置として機能する。動力分割機構310の差動機能により、エンジン200の出力が第1MG311と出力軸304とに分配される。
分配されたエンジン200の出力の一部を用いて第1MG311が発電したり、第1MG311が発電した電力を用いて第2MG312が回転駆動したりすることにより、動力分割機構310は、無段変速機として機能する。
第1MG311および第2MG312は、三相交流回転電機である。第1MG311は、動力分割機構310のサンギヤ322に連結される。第2MG312は、ロータが出力軸304と一体的に回転するように設けられる。
第1MG311および第2MG312は、たとえばアクセル開度および車速などから算出されるオートマチックトランスミッション400の目標出力トルクを満足し、かつエンジン200において最適な燃費を実現するように制御される。
第1MG311の回転数、第2MG312の回転数およびエンジン回転数NEは、図3に示すように、共線図において直線で結ばれる関係になる。したがって、図3において破線で示すように、第2MG312の回転数が減少する際にエンジン回転数NEが減少しないと、第1MG311の回転数が上昇する。
図2に戻って、オートマチックトランスミッション400は、車体に取り付けられる非回転部材としてのケース402内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸404と、出力回転部材としての出力軸406とを含む。
入力軸404は、動力分割機構310の出力軸304に連結される。したがって、オートマチックトランスミッション400の入力軸回転数NIと動力分割機構310の出力軸回転数、すなわちリングギヤ328の回転数NRとは同じである。
オートマチックトランスミッション400は、シングルピニオン型の第1プラネタリギヤ(P1)410および第2プラネタリギヤ(P2)420と、C1クラッチ431、C2クラッチ432、C3クラッチ433、B1ブレーキ441およびB2ブレーキ442の5つの摩擦係合要素とを含む。
さらに、オートマチックトランスミッション400は、ワンウェイクラッチ(F)450を含む、ワンウェイクラッチ(F)450は、インナーレース452とアウターレース454との相対的な回転を一方向について許容し、逆方向について規制する。なお、本実施の形態において、ワンウェイクラッチ(F)450の係合状態とは、インナーレース452とアウターレース454との相対的な回転が規制された状態を意味する。
第1プラネタリギヤ(P1)410は、サンギヤ(S1)412と、キャリア(CA1)414と、リングギヤ(R1)416とを含む。サンギヤ(S1)412は、C3クラッチ433の係合により入力軸404と連結される。また、サンギヤ(S1)412は、B1ブレーキ441の係合によりケース402に固定される。
キャリア(CA1)414は、C2クラッチ432の係合により入力軸404と連結される。また、キャリア(CA1)414は、B2ブレーキ442もしくはワンウェイクラッチ(F)450の係合によりケース402に固定される。リングギヤ(R1)416は、出力軸406に連結される。
第2プラネタリギヤ(P2)420は、サンギヤ(S2)422と、キャリア(CA2)424と、リングギヤ(R2)426とを含む。サンギヤ(S2)422は、C1クラッチ431の係合により入力軸404と連結される。
キャリア(CA2)424は、出力軸406に連結される。リングギヤ(R2)426は、第1プラネタリギヤ(P1)410のキャリア(CA1)414に連結される。したがって、リングギヤ(R2)426は、B2ブレーキ442もしくはワンウェイクラッチ(F)450の係合によりケース402に固定される。
オートマチックトランスミッション400の摩擦係合要素を予め定められた組合わせで係合することにより、オートマチックトランスミッション400において所望のギヤ段が形成される。
本実施の形態においては、車両の駆動時(駆動源の駆動力による走行時)において、C1クラッチ431およびワンウェイクラッチ(F)450の係合により、1速ギヤ段が形成される。車両の被駆動時において、C1クラッチ431およびB2ブレーキ442の係合により、1速ギヤ段が形成される。
C1クラッチ431およびB1ブレーキ441の係合により、2速ギヤ段が形成される。C1クラッチ431およびC2クラッチ432の係合により、3速ギヤ段が形成される。オートマチックトランスミッション400における変速は、たとえば変速線図に基づいて行なわれる。
オートマチックトランスミッション400においてギヤ段が形成された状態では、動力分割機構310のリングギヤ328からオートマチックトランスミッション400に入力されるトルク(ハイブリッドシステム100の出力トルク)が駆動輪である後輪700に伝達される。
オートマチックトランスミッション400のニュートラル状態においては、全ての摩擦係合要素が解放状態にされる。ニュートラル状態では、動力分割機構310のリングギヤ328から後輪700へのトルクの伝達が遮断される。
C1クラッチ431、C2クラッチ432、C3クラッチ433、B1ブレーキ441およびB2ブレーキ442は、油圧により作動する。本実施の形態において、ハイブリッド車には、図4に示すように、各摩擦係合要素に対して油圧を給排してその係合・解放の制御を行なう油圧制御装置900が設けられる。
この油圧制御装置900は、機械式オイルポンプ910と電動オイルポンプ920と、これらのオイルポンプ910,920で発生させた油圧をライン圧に調圧するとともに、そのライン圧を元圧として調圧した油圧を各摩擦係合要素に対して給排し、かつ適宜の箇所に潤滑のためのオイルを供給する油圧回路930とを含む。
機械式オイルポンプ910は、エンジン200によって駆動されて油圧を発生するポンプである。機械式オイルポンプ910は、キャリア326と同軸上に配置され、エンジン200からトルクを受けて動作するようになっている。すなわち、キャリア326が回転することにより機械式オイルポンプ910が駆動せしめられて、油圧が発生する。
これに対して電動オイルポンプ920は、モータ(図示せず)によって駆動されるポンプである。電動オイルポンプ920は、ケース402の外部などの適宜の箇所に取り付けられる。電動オイルポンプ920は、所望の油圧を発生するように、ECU800により制御される。たとえば、電動オイルポンプ920の回転数等がフィードバック制御される。
電動オイルポンプ920の回転数は、回転数センサ830により検出され、検出結果を表す信号がECU800に送信される。また、電動オイルポンプ920からの吐出圧は、油圧センサ832により検出され、検出結果を表す信号がECU800に送信される。電動オイルポンプ920は、DC/DCコンバータ940を介してバッテリ942から供給される電力により作動する。
油圧回路930は、複数のソレノイドバルブや切換バルブあるいは調圧バルブ(それぞれ図示せず)を備え、調圧や油圧の給排を電気的に制御できるように構成されている。その制御は、ECU800により行なわれる。
なお、各オイルポンプ910,920の吐出側には、それぞれのオイルポンプ910,920の吐出圧で開き、これとは反対方向には閉じる逆止弁912,922が設けられ、かつ油圧回路930に対してこれらのオイルポンプ910,920は互いに並列に接続されている。また、ライン圧を調圧するバルブ(図示せず)は、吐出量を増大させてライン圧を高くし、これとは反対に吐出量を減じてライン圧を低くする二つの状態にライン圧を制御するように構成されている。
図5を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU800の機能について説明する。なお、以下に説明するECU800の機能はハードウェアにより実現するようにしてもよく、ソフトウェアにより実現するようにしてもよい。
ECU800は、リングギヤ回転数検出部840と、急減速判断部842と、第1制御部844と、第2制御部846とを含む。
リングギヤ回転数検出部840は、入力軸回転数センサ822から送信された信号に基づいて、オートマチックトランスミッション400の入力軸回転数、すなわち、動力分割機構310のリングギヤ328の回転数NRを検出する。
急減速判断部842は、車速が急減したか否かを判断する。図6に示すように、リングギヤ328の回転数NRが小さいほどより小さくなるように定められるしきい値よりも、リングギヤ328の回転数NRの減少率が大きい場合、車速が急減したと判断される。
第1制御部844は、第1MG311の回転数に関する通常制御を実行する。通常制御においては、図7に示すように、第1MG311の回転数が下限値NSL(1)以上、上限値NSH(1)以下になるように第1MG311、第2MG312およびエンジン200が制御される。また、リングギヤ328の回転数NRとキャリア326の回転数との差、すなわち相対回転数PINが下限値PINL(1)以上、上限値PINH(1)以下になるように、第1MG311、第2MG312およびエンジン200が制御される。
第2制御部846は、車速が急減したと判断された場合、すなわちリングギヤ328の回転数NRの減少率がしきい値より大きい場合、エンジン200の負荷率(吸入空気量)の制限処理を実行する。
負荷率の制限処理においては、図8に示すように、第1MG311の回転数が下限値NSL(2)以上、上限値NSH(2)以下になるように第1MG311、第2MG312およびエンジン200が制御される。また、リングギヤ328の回転数NRとキャリア326の回転数との相対回転数PINが下限値PINL(2)以上、上限値PINH(2)以下になるように、第1MG311、第2MG312およびエンジン200が制御される。
第1MG311の回転数の下限値NSL(2)は、下限値NSL(1)より大きい。第1MG311の回転数の上限値NSH(2)は、上限値NSH(1)よりも小さい。同様に、相対回転数PINの下限値PINL(2)は、下限値PINL(1)より大きい。相対回転数PINの上限値PINH(2)は、上限値PINH(1)より小さい。
また、負荷率の制限処理においては、図9に示すように、リングギヤ328の回転数NRが大きいほど小さくなるように定められる上限値KLH以下になるように、エンジン200の負荷率、すなわち吸入空気量が制御される。
すなわち、第1MG311の回転数が上限値NSH(2)以下になり、かつリングギヤ328の回転数NRとキャリア326の回転数との相対回転数PINが上限値PINH(2)以下になるように、エンジン200の負荷率が上限値KLH以下に制限される。したがって、リングギヤ328の回転数NRの減少率がしきい値より大きい場合は、小さい場合に比べて、エンジン200の回転数が制限される。
図10を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU800が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、以下に説明するプログラムは予め定められた周期で繰り返し実行される。
ステップ(以下、ステップをSと略す)100にて、ECU800は、アクセル開度センサ810から送信された信号に基づいて、アクセル開度を検出する。S110にて、ECU800は、ストロークセンサ814から送信された信号に基づいて、ブレーキペダル812のストローク量を検出する。
S120にて、ECU800は、入力軸回転数センサ822から送信された信号に基づいて、オートマチックトランスミッション400の入力軸回転数、すなわち、動力分割機構310のリングギヤ328の回転数NRを検出する。
S130にて、ECU800は、アクセル操作およびブレーキ操作がともになされ、かつ車速が急減したか否かを判断する。たとえば、アクセル開度がしきい値以上であると、アクセル操作がなされたと判断される。同様に、ブレーキペダル812のストローク量がしきい値以上であると、ブレーキ操作がなされたと判断される。
アクセル操作およびブレーキ操作がともになされ、かつ車速が急減すると(S130にてYES)、処理はS140に移される。もしそうでないと(S130にてNO)、処理はS150に移される。
S140にて、ECU800は、エンジン200の負荷率を上限値KLH以下にする制限処理を実行する。すなわち、ECU800は、第1MG311の回転数が下限値NSL(2)以上、上限値NSH(2)以下になるように、かつリングギヤ328の回転数NRとキャリア326の回転数との相対回転数PINが下限値PINL(2)以上、上限値PINH(2)以下になるように、第1MG311、第2MG312およびエンジン200を制御する。
S150にて、ECU800は、第1MG311の回転数に関して通常制御を実行する。すなわち、ECU800は、第1MG311の回転数が下限値NSL(1)以上、上限値NSH(1)以下になるように、かつリングギヤ328の回転数NRとキャリア326の回転数との相対回転数PINが下限値PINL(1)以上、上限値PINH(1)以下になるように、第1MG311、第2MG312およびエンジン200を制御する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるECU800が実行するプログラムの制御構造について説明する。
車両の走行中、アクセル開度が検出され(S100)、ブレーキペダル812のストローク量が検出される(S110)。さらに、オートマチックトランスミッション400の入力軸回転数、すなわち、動力分割機構310のリングギヤ328の回転数NRが検出される(S120)。
アクセル操作およびブレーキ操作の少なくとも何れか一方がなされていなかったり、車速が急減していないと(S130にてNO)、第1MG311の回転数に関して通常制御が実行される。
すなわち、第1MG311の回転数が下限値NSL(1)以上、上限値NSH(1)以下になるように、かつリングギヤ328の回転数NRとキャリア326の回転数との相対回転数PINが下限値PINL(1)以上、上限値PINH(1)以下になるように、第1MG311、第2MG312およびエンジン200が制御される(S150)。
ところで、エンジン回転数NEが低下せずに車速、すなわちリングギヤ328の回転数が急減すると、図11において破線で示すように、第1MG311の回転数が急増する。そのため、第1MG311の発電電力値が急増し得る。第1MG311の発電電力値が必要以上に大きくなると、ハイブリッド車における電気系統に悪影響を与え得る。そのため、第1MG311の発電電力値が制限される。第1MG311の発電電力値が制限されることにより、第1MG311の回転数を低下させる方向へのトルクが小さくなる。その結果、第1MG311の回転数が過剰になるまでさらに増大し得る。
そこで、アクセル操作およびブレーキ操作がともになされ、かつ車速が急減すると(S130にてYES)、すなわち、エンジン回転数NEが低下せずにリングギヤ328の回転数が急減すると、エンジン200の負荷率を上限値KLH以下にする制限処理が実行される(S140)。
すなわち、第1MG311の回転数が下限値NSL(2)以上、上限値NSH(2)以下になるように、かつリングギヤ328の回転数NRとキャリア326の回転数との相対回転数PINが下限値PINL(2)以上、上限値PINH(2)以下になるように、第1MG311、第2MG312およびエンジン200が制御される。
これにより、エンジン200の負荷率が既に上限値KLHを超えている場合には、たとえばスロットルバルブ816のスロットル開度を小さくすることにより吸入空気量を小さくすることができる。そのため、図11において一点鎖線で示すように、エンジン回転数NEを低下せしめることができる。その結果、第1MG311の回転数を低下して、過剰にならないようにすることができる。
また、エンジン200の負荷率が上限値KLH以下である場合には、エンジン200の負荷率が上限値KLHを超えないようにすることができる。そのため、エンジン200の負荷率を早めに制限して、第1MG311の回転数が過剰にならないようにすることができる。
以上のように、本実施の形態に係る制御装置であるECUによれば、車速、すなわち動力分割機構のリングギヤの回転数が急減すると、エンジンの負荷率の制限処理が実行される。負荷率の制御処理においては、第1MGの回転数が上限値NSH(2)以下になり、かつリングギヤの回転数NRとキャリアの回転数との相対回転数PINが上限値PINH(2)以下になるように、エンジンの負荷率が上限値KLH以下に制限される。これにより、エンジン回転数NEを制限することができる。そのため、第1MGの回転数が過剰にならないようにすることができる。
<第2の実施の形態>
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、フューエルカット(エンジン200における燃料噴射の停止)を実行することにより、エンジン回転数NEを制限する点で、前述の第1の実施の形態と相違する。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、ここではそれらの詳細な説明は繰返さない。
図12を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU800の機能について説明する。なお、前述の第1の実施の形態における機能と同じ機能については、同じ番号を付してある。したがって、ここではそれらの詳細に説明は繰返さない。
ECU800は、リングギヤ回転数検出部840と、急減速判断部842とに加えて、フューエルカット部850を含む。フューエルカット部850は、車速が急減したと判断された場合、すなわちリングギヤ328の回転数NRの減少率がしきい値より大きい場合、エンジン回転数NEを制限するために、フューエルカットを実行する。フューエルカットを実行することによりインジェクタ202からの燃料噴射が停止されて、エンジン回転数NEが低下される。
図13を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU800が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、以下に説明するプログラムは、予め定められた周期で繰り返し実行される。また、前述の第1の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、それらの詳細な説明はここでは繰返さない。
S200にて、ECU800は、フューエルカットを実行する。このようにしても、前述の第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
<第3の実施の形態>
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、エンジン200における点火時期を遅角することにより、エンジン回転数NEを制限する点で、前述の第1の実施の形態と相違する。その他の構造については、前述の第1の実施の形態と同じである。それらについての機能も同じである。したがって、ここではそれらの詳細な説明は繰返さない。
図14を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU800の機能について説明する。なお、前述の第1の実施の形態における機能と同じ機能については、同じ番号を付してある。したがって、ここではそれらの詳細に説明は繰返さない。
ECU800は、リングギヤ回転数検出部840と、急減速判断部842とに加えて、遅角部860を含む。遅角部860は、車速が急減したと判断された場合、すなわちリングギヤ328の回転数NRの減少率がしきい値より大きい場合、エンジン回転数NEを制限するために、エンジン200における点火時期を遅角する。点火時期を遅角することにより、エンジン200の出力が低下して、エンジン回転数NEが低下される。
図15を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるECU800が実行するプログラムの制御構造について説明する。なお、以下に説明するプログラムは、予め定められた周期で繰り返し実行される。また、前述の第1の実施の形態と同じ処理については、同じステップ番号を付してある。したがって、それらの詳細な説明はここでは繰返さない。
S300にて、ECU800は、点火時期を遅角する。このようにしても、前述の第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の実施の形態に係る制御装置であるECUを搭載したハイブリッド車を示す概略構成図である。 ハイブリッドシステムおよびオートマチックトランスミッションを示す図である。 動力分割機構の共線図を示す図(その1)である。 油圧制御装置を示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係る制御装置であるECUの機能ブロック図である。 リングギヤの回転数NSとリングギヤの回転数NSの減少率とから定まるしきい値を示す図である。 MG1の回転数の下限値および上限値などを示す図(その1)である。 MG1の回転数の下限値および上限値などを示す図(その2)である。 負荷率の上限値KLHを示す図である。 本発明の第1の実施の形態に係る制御装置であるECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 動力分割機構の共線図を示す図(その2)である。 本発明の第2の実施の形態に係る制御装置であるECUの機能ブロック図である。 本発明の第2の実施の形態に係る制御装置であるECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態に係る制御装置であるECUの機能ブロック図である。 本発明の第3の実施の形態に係る制御装置であるECUが実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。
符号の説明
100 ハイブリッドシステム、200 エンジン、310 動力分割機構、311 第1MG、312 第2MG、320 プラネタリギヤ、322 サンギヤ、324 ピニオンギヤ、326 キャリア、328 リングギヤ、400 オートマチックトランスミッション、404 入力軸、406 出力軸、431 C1クラッチ、432 C2クラッチ、433 C3クラッチ、441 B1ブレーキ、442 B2ブレーキ、450 ワンウェイクラッチ(F)、800 ECU、802 ROM、804 シフトレバー、806 ポジションスイッチ、808 アクセルペダル、810 アクセル開度センサ、812 ブレーキペダル、814 ストロークセンサ、816 電子スロットルバルブ、818 スロットル開度センサ、820 エンジン回転数センサ、822 入力軸回転数センサ、824 出力軸回転数センサ、826 油温センサ、828 水温センサ、830 回転数センサ、832 油圧センサ、840 リングギヤ回転数検出部、842 急減速判断部、844 第1制御部、846 第2制御部、850 フューエルカット部、860 遅角部。

Claims (12)

  1. 回転電機に連結される第1の回転要素、車輪にトルクを伝達する第2の回転要素およびエンジンに連結される第3の回転要素を有する差動機構を備えたパワートレーンの制御装置であって、
    前記第2の回転要素の回転数を検出するための手段と、
    アクセル操作とブレーキ操作がともになされた場合に、前記第2の回転要素の回転数の減少率がしきい値より大きいときには前記第2の回転要素の回転数の減少率が前記しきい値より小さいときに比べて前記エンジンの回転数を制限するように制御するための制御手段とを含む、パワートレーンの制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記アクセル操作と前記ブレーキ操作がともになされていないか、または、前記第2の回転要素の回転数の減少率がしきい値より大きいときには、前記回転電機の回転数が第1の回転数以下になるように前記回転電機および前記エンジンを制御し、
    前記制御手段は、前記アクセル操作と前記ブレーキ操作がともになされた場合に、前記第2の回転要素の回転数の減少率が前記しきい値より小さいときには、前記回転電機の回転数が前記第1の回転数よりも小さい第2の回転数以下になるように前記回転電機および前記エンジンを制御する、請求項1に記載のパワートレーンの制御装置。
  3. 前記制御手段は、前記エンジンにおける燃料噴射を停止することにより前記エンジンの回転数を制限するように制御するための手段を含む、請求項1に記載のパワートレーンの制御装置。
  4. 前記制御手段は、前記エンジンにおける点火時期を遅角することにより前記エンジンの回転数を制限するように制御するための手段を含む、請求項1に記載のパワートレーンの制御装置。
  5. 前記しきい値は、前記第2の回転要素の回転数が小さいほど、より小さくなるように定められる、請求項1〜4のいずれかに記載のパワートレーンの制御装置。
  6. 回転電機に連結される第1の回転要素、車輪にトルクを伝達する第2の回転要素およびエンジンに連結される第3の回転要素を有する差動機構を備えたパワートレーンの制御方法であって、
    前記第2の回転要素の回転数を検出するステップと、
    アクセル操作とブレーキ操作がともになされた場合に、前記第2の回転要素の回転数の減少率がしきい値より大きいときには前記第2の回転要素の回転数の減少率が前記しきい値より小さいときに比べて、前記エンジンの回転数を制限するように制御するステップとを含む、パワートレーンの制御方法。
  7. 前記エンジンの回転数を制限するように制御するステップは、前記アクセル操作と前記ブレーキ操作がともになされていないか、または、前記第2の回転要素の回転数の減少率がしきい値より大きいときには、前記回転電機の回転数が第1の回転数以下になるように前記回転電機および前記エンジンを制御し、
    前記エンジンの回転数を制限するように制御するステップは、前記アクセル操作と前記ブレーキ操作がともになされた場合に、前記第2の回転要素の回転数の減少率が前記しきい値より小さいときには、前記回転電機の回転数が前記第1の回転数よりも小さい第2の回転数以下になるように前記回転電機および前記エンジンを制御する、請求項6に記載のパワートレーンの制御方法。
  8. 前記エンジンの回転数を制限するように制御するステップは、前記エンジンにおける燃料噴射を停止することにより前記エンジンの回転数を制限するように制御するステップを含む、請求項6に記載のパワートレーンの制御方法。
  9. 前記エンジンの回転数を制限するように制御するステップは、前記エンジンにおける点火時期を遅角することにより前記エンジンの回転数を制限するように制御するステップを含む、請求項6に記載のパワートレーンの制御方法。
  10. 前記しきい値は、前記第2の回転要素の回転数が小さいほど、より小さくなるように定められる、請求項6〜9のいずれかに記載のパワートレーンの制御方法。
  11. 請求項6〜10のいずれかに記載の制御方法をコンピュータに実現させるプログラム。
  12. 請求項6〜10のいずれかに記載の制御方法をコンピュータに実現させるプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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