JP2006125245A - 動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法,内燃機関の駆動装置 - Google Patents
動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法,内燃機関の駆動装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 冷間時に内燃機関からの動力を受ける発電機が上限回転数を超えて駆動されるのを抑制する。
【解決手段】 冷間時に空気密度が高いためにエンジン22から想定されるパワーよりも大きなパワーが出力されることによりエンジン22からの反力をモータMG1で受け止めきれないとき、モータMG1の回転数に基づいて回転数が小さいときには応答が遅いスロットル開度を小さくし、回転数が大きくなると吸排気タイミングを遅角させ、さらに回転数が大きくなると応答が早い点火時期を遅角させることにより、エンジン22から出力されるパワーを小さくする。これにより、変更する運転パラメータの応答速度に拘わらずモータMG1が上限回転数を超えて駆動されるのを抑制できると共に点火時期を遅角させる頻度を少なくして点火時期の遅角に伴うエンジン22の排気温度の上昇により浄化用触媒に不具合が生じるのを抑制できる。
【選択図】 図1
【解決手段】 冷間時に空気密度が高いためにエンジン22から想定されるパワーよりも大きなパワーが出力されることによりエンジン22からの反力をモータMG1で受け止めきれないとき、モータMG1の回転数に基づいて回転数が小さいときには応答が遅いスロットル開度を小さくし、回転数が大きくなると吸排気タイミングを遅角させ、さらに回転数が大きくなると応答が早い点火時期を遅角させることにより、エンジン22から出力されるパワーを小さくする。これにより、変更する運転パラメータの応答速度に拘わらずモータMG1が上限回転数を超えて駆動されるのを抑制できると共に点火時期を遅角させる頻度を少なくして点火時期の遅角に伴うエンジン22の排気温度の上昇により浄化用触媒に不具合が生じるのを抑制できる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、駆動軸に動力を出力する動力出力装置およびこれを搭載し前記駆動軸に車軸が接続されて走行する自動車並びに動力出力装置の制御方法,内燃機関の駆動装置に関する。
従来、この種の動力出力装置としては、プラネタリギヤのサンギヤ,キャリア,リングギヤにそれぞれ発電機,エンジン,駆動輪に連結された駆動軸が接続されると共に駆動軸に電動機が接続されたハイブリッド自動車に搭載されたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開平10−295003号公報
上述の動力出力装置では、反力を発電機で受け止めることによりエンジンからの動力を駆動軸に出力することができるが、この際、発電機がその上限回転数を超えて駆動される場合が生じる。例えば、冷間時では空気密度が高くなるからエンジンからは想定されるパワーよりも高いパワーが出力される。このため、発電機がエンジンから出力されるパワーを受け止めきれずに回転数が上昇し、発電機が上限回転数を超える場合がある。比較的応答が早い点火時期を遅角させれば発電機が上限回転数を超える前にエンジンから出力されるパワーを迅速に小さくすることができるが、点火時期を遅角させるとエンジンからの排気を浄化する浄化用触媒が高温の状態となるから、遅角の頻度によっては浄化用触媒に不具合が生じてしまう。
本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法は、冷間時などに内燃機関からの動力を受ける電力動力入出力手段の回転子が上限回転数を超えて駆動されるのをより適切に抑制することを目的の一つとする。また、本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法は、内燃機関からの排気を浄化する浄化用触媒に悪影響を与えることなく冷間時などに内燃機関からの動力を受ける電力動力入出力手段の回転子が上限回転数を超えて駆動されるのを抑制することを目的の一つとする。本発明の内燃機関の駆動装置は、内燃機関から出力されるパワーを想定されるパワーにより適切に近づけることを目的の一つとする。また、本発明の内燃機関の駆動装置は、内燃機関からの排気を浄化する浄化用触媒に悪影響を与えることなく内燃機関から出力されるパワーを想定されるパワーに近づけることを目的の一つとする。
本発明の動力出力装置およびこれを搭載する自動車並びに動力出力装置の制御方法,内燃機関の駆動装置は、上述の目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明の動力出力装置は、
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され、該内燃機関の出力軸の回転と該駆動軸の回転とに基づいて回転する回転子を有し、電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段と、
前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、
通常時には前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関と前記電力動力入出力手段とを制御し、前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう制御すると前記電力動力入出力手段が最大発電の近傍で運転される非通常時には該電力動力入出力手段の回転子の回転数に基づいて該内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータのうちから選択した運転パラメータを変更することにより該内燃機関から出力される動力が小さくなるよう該内燃機関と該電力動力入出力手段とを制御する制御手段と
を備えることを要旨とする。
駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され、該内燃機関の出力軸の回転と該駆動軸の回転とに基づいて回転する回転子を有し、電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段と、
前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、
通常時には前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関と前記電力動力入出力手段とを制御し、前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう制御すると前記電力動力入出力手段が最大発電の近傍で運転される非通常時には該電力動力入出力手段の回転子の回転数に基づいて該内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータのうちから選択した運転パラメータを変更することにより該内燃機関から出力される動力が小さくなるよう該内燃機関と該電力動力入出力手段とを制御する制御手段と
を備えることを要旨とする。
この本発明の動力出力装置では、通常時には目標運転ポイントで内燃機関が運転されるよう内燃機関と電力動力入出力手段とを制御し、目標運転ポイントで内燃機関が運転されるよう制御すると電力動力入出力手段が最大発電の近傍で運転される非通常時には電力動力入出力手段の回転子の回転数に基づいて内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータのうちから選択した運転パラメータを変更することにより内燃機関から出力される動力が小さくなるよう内燃機関と電力動力入出力手段とを制御する。電力動力入出力手段の回転子の回転数に応じて適切な運転パラメータを選択してこれを変更するから電力動力入出力手段の回転子が上限回転数を超えて駆動されるのをより適切に抑制することができる。
こうした本発明の動力出力装置において、前記制御手段は、前記非通常時には、前記複数の運転パラメータのうち前記電力動力入出力手段の回転子の回転数が低いほど応答の遅い運転パラメータを優先して変更することにより前記内燃機関から出力される動力が小さくなるよう制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、内燃機関の運転パラメータの応答の速度に拘わらず電力動力入出力手段の回転子がその上限回転数を超えて駆動されるのを抑制することができる。
また、本発明の動力出力装置において、前記複数の運転パラメータは、スロットル開度,吸排気タイミング,点火時期の少なくとも一つを含むものとすることもできる。
さらに、本発明の動力出力装置において、前記複数の運転パラメータは、点火時期を含み、前記制御手段は、前記非通常時には、前記電力動力入出力手段の回転子の回転数が第1の回転数以上のときには少なくとも前記点火時期を遅角することにより前記内燃機関から出力される動力が小さくなるよう制御し、前記電力動力入出力手段の回転子の回転数が前記第1の回転数よりも低い第2の回転数以上のときには前記複数の運転パラメータのうち前記点火時期以外の運転パラメータを変更することにより前記内燃機関から出力される動力が小さくなるよう制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、点火時期を遅角させる頻度を少なくできるから、点火時期を遅角させることによって浄化用触媒に不具合が生じるのを抑制することができる。この態様の本発明の動力出力装置において、前記内燃機関の排気系に取り付けられた排気浄化用触媒の温度を検出する触媒温度検出手段を備え、前記制御手段は、前記検出された排気浄化用触媒の温度に基づいて前記点火時期を遅角することにより前記内燃機関から出力される動力が小さなるよう制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、浄化用触媒に不具合が生じるのをより確実に抑制することができる。この場合、前記制御手段は、前記検出された排気浄化用触媒の温度に基づいて遅角量および/または遅角可能時間を設定し、該設定した遅角量および/または遅角可能時間の範囲内で前記点火時期を遅角することにより前記内燃機関から出力される動力が小さくなるよう制御する手段であるものとすることもできる。
また、本発明の動力出力装置において、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機を備え、前記制御手段は、要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する手段であるものとすることもできる。この態様の本発明の動力出力装置において、前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の回転軸の3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の1軸に動力を入出力させる3軸式の動力入出力手段と、前記第3の回転軸に動力を入出力可能な発電機とを備える手段であるものとすることもできるし、前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸に接続された第1の回転子と前記駆動軸に接続された第2の回転子とを有し、該第1の回転子と該第2の回転子との電磁的な作用により両回転子を相対的に回転させる対回転子電動機であるものとすることもできる。
本発明の自動車は、
上述した各態様のいずれかの本発明の動力出力装置、即ち、基本的には、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、内燃機関と、該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され、該内燃機関の出力軸の回転と該駆動軸の回転とに基づいて回転する回転子を有し、電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段と、前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、通常時には前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関と前記電力動力入出力手段とを制御し、前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう制御すると前記電力動力入出力手段が最大発電の近傍で運転される非通常時には該電力動力入出力手段の回転子の回転数に基づいて該内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータのうちから選択した運転パラメータを変更することにより該内燃機関から出力される動力が小さくなるよう該内燃機関と該電力動力入出力手段とを制御する制御手段とを備える動力出力装置を搭載し、前記駆動軸が車軸に接続されて走行する
ことを要旨とする。
上述した各態様のいずれかの本発明の動力出力装置、即ち、基本的には、駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、内燃機関と、該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され、該内燃機関の出力軸の回転と該駆動軸の回転とに基づいて回転する回転子を有し、電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段と、前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、通常時には前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関と前記電力動力入出力手段とを制御し、前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう制御すると前記電力動力入出力手段が最大発電の近傍で運転される非通常時には該電力動力入出力手段の回転子の回転数に基づいて該内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータのうちから選択した運転パラメータを変更することにより該内燃機関から出力される動力が小さくなるよう該内燃機関と該電力動力入出力手段とを制御する制御手段とを備える動力出力装置を搭載し、前記駆動軸が車軸に接続されて走行する
ことを要旨とする。
この本発明の自動車では、上述した各態様のいずれかの本発明の動力出力装置を搭載するから、本発明の動力出力装置が奏する効果と同様の効果、例えば、冷間時などに内燃機関の動力を受ける電力動力入出力手段の回転子が上限回転数を超えて駆動されるのをより適切に抑制することができる効果や内燃機関の運転パラメータの応答の速度に拘わらず電力動力入出力手段の回転子がその上限回転数を超えて駆動されるのを抑制することができる効果,触媒浄化装置に不具合が生じるのを抑制しながら電力動力入出力手段の回転子がその上限回転数を超えて駆動されるのを抑制することができる効果などを奏することができる。
本発明の動力出力装置の制御方法は、
内燃機関と、該内燃機関の出力軸と駆動軸とに接続され該内燃機関の出力軸の回転と該駆動軸の回転とに基づいて回転する回転子を有し電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
前記内燃機関の目標運転ポイントが設定されたとき、通常時には前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関と前記電力動力入出力手段とを制御し、前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう制御すると前記電力動力入出力手段が最大発電の近傍で運転される非通常時には該電力動力入出力手段の回転子の回転数に基づいて該内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータのうちから選択した運転パラメータを変更することにより該内燃機関から出力される動力が小さくなるよう該内燃機関と該電力動力入出力手段とを制御する
ことを要旨とする。
内燃機関と、該内燃機関の出力軸と駆動軸とに接続され該内燃機関の出力軸の回転と該駆動軸の回転とに基づいて回転する回転子を有し電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
前記内燃機関の目標運転ポイントが設定されたとき、通常時には前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関と前記電力動力入出力手段とを制御し、前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう制御すると前記電力動力入出力手段が最大発電の近傍で運転される非通常時には該電力動力入出力手段の回転子の回転数に基づいて該内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータのうちから選択した運転パラメータを変更することにより該内燃機関から出力される動力が小さくなるよう該内燃機関と該電力動力入出力手段とを制御する
ことを要旨とする。
この本発明の動力出力装置の制御方法によれば、通常時には目標運転ポイントで内燃機関が運転されるよう内燃機関と電力動力入出力手段とを制御し、目標運転ポイントで内燃機関が運転されるよう制御すると電力動力入出力手段が最大発電の近傍で運転される非通常時には電力動力入出力手段の回転子の回転数に基づいて内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータのうちから選択した運転パラメータを変更することにより内燃機関から出力される動力が小さくなるよう内燃機関と電力動力入出力手段とを制御する。電力動力入出力手段の回転子の回転数に応じて適切な運転パラメータを選択してこれを変更するから電力動力入出力手段の回転子が上限回転数を超えて駆動されるのをより適切に抑制することができる。
本発明の内燃機関の駆動装置は、
内燃機関の駆動装置であって、
前記内燃機関の排気系に取り付けられた排気浄化用触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、
前記内燃機関から出力すべき目標動力を設定する目標動力設定手段と、
通常時には前記設定された目標動力が前記内燃機関から出力されるよう該内燃機関を制御し、前記内燃機関から出力される動力が前記設定された目標動力よりも大きくなる非通常時には少なくとも点火時期を含む該内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータを前記検出された排気浄化用触媒の温度に基づいて変更することにより該内燃機関から出力される動力が小さくなるよう該内燃機関を制御する制御手段と
を備えることを要旨とする。
内燃機関の駆動装置であって、
前記内燃機関の排気系に取り付けられた排気浄化用触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、
前記内燃機関から出力すべき目標動力を設定する目標動力設定手段と、
通常時には前記設定された目標動力が前記内燃機関から出力されるよう該内燃機関を制御し、前記内燃機関から出力される動力が前記設定された目標動力よりも大きくなる非通常時には少なくとも点火時期を含む該内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータを前記検出された排気浄化用触媒の温度に基づいて変更することにより該内燃機関から出力される動力が小さくなるよう該内燃機関を制御する制御手段と
を備えることを要旨とする。
この本発明の内燃機関の駆動装置では、通常時には目標動力が内燃機関から出力されるよう内燃機関を制御し、内燃機関から出力される動力が目標動力よりも大きくなる非通常時には少なくとも点火時期を含む内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータを排気浄化用触媒の温度に基づいて変更することにより内燃機関から出力される動力が小さくなるよう内燃機関を制御する。従って、浄化用触媒に不具合が生じるのを抑制しながら内燃機関から出力される動力を想定される動力に近づけることができる。
こうした本発明の内燃機関の駆動装置において、前記制御手段は、前記検出された排気浄化用触媒の温度に基づいて遅角量および/または遅角可能時間を設定し、該設定した遅角量および/または遅角可能時間の範囲内で前記点火時期を遅角すると共に他の運転パラメータを変更することにより前記内燃機関から出力される動力が小さくなるよう制御する手段であるものとすることもできる。こうすれば、浄化用触媒に不具合が生じるのをより確実に抑制することができる。
また、本発明の内燃機関の駆動装置において、前記複数の運転パラメータは、更に、スロットル開度,吸排気タイミングの少なくとも一つを含むものとすることもできる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態としての動力出力装置を搭載したハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、ハイブリッド自動車20が搭載するエンジン22の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、動力出力装置全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関として構成されており、図2に示すように、エアクリーナ122により清浄された空気をスロットルバルブ124を介して吸入すると共に燃料噴射弁126からガソリンを噴射することにより空気とガソリンとを混合し、これを吸気バルブ128を介して燃料室に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、そのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト26の回転運動に変換する。エンジン22からの排気は、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC),窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化用触媒134aを内蔵する浄化装置134を介して外気へ排出される。
エンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により制御されている。エンジンECU24には、エンジン22の状態を検出する種々のセンサからの信号が図示しない入力ポートを介して入力されている。例えば、エンジンECU24には、クランクシャフト26の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランクポジションやエンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温,燃焼室へ吸排気を行なう吸気バルブ128や排気バルブを開閉するカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカムポジション,スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルポジションセンサ146からのスロットルポジション,燃焼室内に吸入される空気の量を検出するエアフローメータ148からの吸入空気量,浄化装置134内の浄化用触媒134aの温度を検出する温度センサ149からの触媒温度Tcなどが入力ポートを介して入力されている。また、エンジンECU24からは、エンジン22を駆動するための種々の制御信号が図示しない出力ポート介して出力されている。例えば、エンジンECU24からは、燃料噴射弁126への駆動信号やスロットルバルブ124のポジションを調節するスロットルモータ136への駆動信号,イグナイタと一体化されたイグニッションコイル138への制御信号,吸気バルブ128の開閉タイミングの変更可能な可変バルブタイミング機構150への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。また、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータを出力する。
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図3は、実施例のハイブリッド自動車20のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば、8msec毎)に繰り返し実行される。
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の残容量SOC,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,触媒温度Tcなどのデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて計算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。残容量SOCは、電流センサにより検出されたバッテリ50の充放電電流の積算値に基づいて演算されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。入出力制限Win,Woutは、残容量SOCや電池温度などに基づいて設定されたものバッテリECU52から通信により入力するものとした。触媒温度Tcは、温度センサ149により検出されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22から出力すべき要求パワーPe*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図4に要求トルク設定用のマップの一例を示す。また、要求パワーPe*は、要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50の充放電要求パワーPb*と損失Lossとの和により計算されたものを設定するものとした。ここで、充放電要求パワーPb*は、残容量SOCやアクセル開度Accに基づいて設定することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じることにより求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ることにより求めたりすることができる。
要求パワーPe*を設定すると、この要求パワーPe*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS120)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインとエンジン要求パワーPe*とに基づいて目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定することにより行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例および目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図5に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインとエンジン要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると、次に、目標スロットル開度TH*と目標バルブタイミングVVT*と目標点火時期Ea*とを設定する(ステップS130)。ここで、目標スロットル開度TH*と目標バルブタイミングVVT*と目標点火時期Ea*は、実施例では、目標回転数Ne*と目標トルクTe*の運転ポイントでエンジン22を効率よく運転できるスロットル開度THとバルブタイミングVVTと点火時期Eaとを予め求めてマップとして記憶しておき、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とが与えられたときにマップから対応するスロットル開度THとバルブタイミングVVTと点火時期Eaとをそれぞれ目標スロットル開度TH*と目標バルブタイミングVVT*と目標点火時期Ea*とに設定することにより行なうものとした。
そして、設定したエンジン22の目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(=Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρ(=サンギヤ31の歯数/リングギヤ32の歯数)とに基づいて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて次式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS140)。動力分配統合機構30の各回転要素の回転数とトルクの力学的な関係を示す共線図を図6に示す。図中、左のS軸はサンギヤ31の回転数を示し、C軸はキャリア34の回転数を示し、R軸はリングギヤ32(リングギヤ軸32a)の回転数Nrを示す。前述したように、サンギヤ31の回転数はモータMG1の回転数Nm1でありキャリア34の回転数はエンジン22の回転数Neであるから、モータMG1の目標回転数Nm1*はリングギヤ軸32aの回転数Nrとエンジン22の目標回転数Ne*と動力分配統合機構30のギヤ比ρとに基づいて式(1)により計算することができる。したがって、モータMG1が目標回転数Nm1*で回転するようトルク指令Tm1*を設定してモータMG1を駆動制御することにより、エンジン22を目標回転数Ne*で回転させることができる。ここで、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「KP」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「KI」は積分項のゲインである。なお、図6におけるR軸上の2つの太線矢印は、エンジン22を目標回転数Ne*および目標トルクTe*の運転ポイントで定常運転したときにエンジン22から出力されるトルクTe*がリングギヤ軸32aに伝達されるトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2*がリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。
Nm1*=(Ne*・(1+ρ)-Nm2/Gr)/ρ …(1)
Tm1*=前回Tm1*+KP(Nm1*-Nm1)+KI∫(Nm1*-Nm1)dt …(2)
Tm1*=前回Tm1*+KP(Nm1*-Nm1)+KI∫(Nm1*-Nm1)dt …(2)
モータMG1の目標回転数Nm1*とトルク指令Tm1*とを計算すると、前回このルーチンで設定されたトルク指令Tm1*(前回Tm1*)と入力した回転数Nm1とを乗じてモータMG1の発電パワーPm1を計算すると共に入力した回転数Nm1からステップS140で設定した目標回転数Nm1*を減じて回転差ΔNm1を計算して(ステップS150)、発電パワーPm1が所定パワーPrefよりも大きいか否か(ステップS160)、回転差ΔNm1が所定回転差Nrefよりも大きいか否かを判定する(ステップS170)。ここで、所定パワーPrefは、モータMG1が可能な最大発電パワーよりも若干小さい値として予め定められた閾値であり、所定回転差Nrefは、モータMG1のトルク指令Tm1*が小さくなる方向(発電用のパワーが大きくなる方向)に変更されたのを判定するための閾値である。発電パワーPm1が所定パワーPrefよりも大きく且つ回転差ΔNm1が所定回転差Nrefよりも大きいと判定されると、例えば冷間時に空気密度が高いためにエンジン22から出力されるパワーが要求パワーPe*よりも大きくなってエンジン22からの反力をモータMG1で受け止めきれない状態と判断し、図7に例示するエンジンパワー制限処理を実行すると共に(ステップS190)、設定したトルク指令Tm1*と定格値などからモータMG1から出力できるトルクの下限として定められたトルク制限Tm1minとのうち大きい方をモータMG1のトルク指令Tm1*に再設定する(ステップS200)。発電パワーPm1が所定パワーPref以下と判定されたり、回転差ΔNm1が所定回転差Nref以下と判定されると、フラグFを値0に設定して(ステップS180)、次の処理に進む。なお、フラグFについては後述する。以下、本ルーチンの説明を一旦中断して図7に例示するエンジンパワー制限処理について説明する。
エンジンパワー制限処理が実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、エンジン22から出力されるパワーを小さくするためにエンジンECU24に対して通常時よりも所定開度ΔTH(例えば、5度)だけ小さくした目標スロットル開度TH*でスロットルモータ136を制御するようスロットル開度の変更指示を行ない(ステップS300)、モータMG1の回転数Nm1と所定回転数N1とを比較する(ステップS310)。ここで、所定回転数N1は、スロットル開度を通常時よりも小さくしてもその応答が比較的遅いためにエンジン22から出力されるパワーの低下が遅れてモータMG1が上限回転数で駆動されるおそれがあるかを判定するためのものであり、スロットル開度の変化に対するエンジン22の応答特性やモータMG1の上限回転数などにより定められる。回転数Nm1が所定回転数N1以下のときには、そのまま処理を終了し、回転数Nm1が所定回転数N1よりも大きいときには、スロットル開度を小さくしてもモータMG1が上限回転数で駆動されるおそれがあると判断し、目標スロットル開度TH*よりも応答が早い目標バルブタイミングVVT*を所定角度ΔVVT(例えば、10度)だけ遅角させたタイミングを新たな目標バルブタイミングVVT*に再設定する(ステップS320)。
そして、モータMG1の回転数Nm1と所定回転数N2とを比較する(ステップS330)。ここで、所定回転数N2は、目標スロットル開度TH*よりも応答が早い目標バルブタイミングVVT*を遅角させてもその応答速度ではエンジン22から出力されるパワーの低下が遅れてモータMG1が上限回転数で駆動されるおそれがあるかを判定するためのものであり、吸気タイミングの変化に対するエンジン22の応答特性やモータMG1の上限回転数などにより定められる。なお、所定回転数N2は、所定回転数N1よりも高い回転数で且つモータMG1の上限回転数よりも低い回転数に定められることは言うまでもない。回転数Nm1が所定回転数N2以下のときには、そのまま処理を終了する。
一方、回転数Nm1が所定回転数N2よりも大きいときには、点火時期が遅角された状態にあるかを示すフラグFの値を調べ(ステップS340)、フラグFが値0のときには、フラグFを値1に設定すると共に(ステップS350)、浄化用触媒134aの触媒温度Tcに基づいて目標点火時期Ea*を遅角させる際の遅角量ΔEaと実行可能時間TEaとを設定し(ステップS360)、設定した遅角量ΔEaだけ図3のステップS130で設定した目標点火時期Ea*を遅角させた点火時期を新たな目標点火時期Ea*に再設定して(ステップS370)、処理を終了する。このように、エンジン22からの反力をモータMG1で受けきれなくなると、エンジン22から出力されるパワーを小さくするために、モータMG1の回転数Nm1が所定回転数N1以下では、目標スロットル開度TH*を小さくし、回転数Nm1が所定回転数N1を超えると、さらにスロットル開度よりも応答が早い目標バルブタイミングVVT*を遅角させ、回転数Nm1が所定回転数N2を超えると、さらに応答が最も早い目標点火時期Ea*を遅角させるのである。これにより、目標スロットル開度TH*や目標バルブタイミングVVT*,目標点火時期Ea*の各応答速度に拘わらずモータMG1が上限回転数を超えて駆動される前にエンジン22から出力されるパワーを小さくすることができる。また、これにより、目標点火時期Ea*を遅角させる頻度を少なくし、さらに、目標点火時期Ea*を遅角させる際にその遅角量を遅角量ΔEaに限定することにより、高温の排気が浄化用触媒134aに供給されるのを抑制するから、浄化用触媒134aに不具合が生じるのを抑制することができる。ここで、遅角量ΔEaと実行可能時間TEaは、実施例では、それぞれ触媒温度Tcと遅角量ΔEaとの関係および触媒温度Tcと実行可能時間TEaとの関係を予め求めてマップとしてROM74に記憶しておき、触媒温度Tcが与えられるとマップから対応する遅角量ΔEaと実行可能時間TEaとを導出することにより設定するものとした。触媒温度Tcと遅角量ΔEaとの関係の一例を図8に、触媒温度Tcと実行可能時間TEaとの関係の一例を図9に示す。
その後、エンジンパワー制限処理が繰り返されて、ステップS340でフラグFが値1と判定されると、目標点火時期Ea*を遅角させてから実行可能時間TEaが経過したか否かを判定し(ステップS380)、実行可能時間TEaが経過していないと判定されたときには、ステップS370に移って目標点火時期Ea*が遅角された状態を維持し、実行可能時間TEaが経過したと判定されたときには、これ以上目標点火時期Ea*を遅角させた状態を継続すると浄化用触媒134aに不具合が生じるおそれがあると判断し、図3のステップS130で設定した目標点火時期Ea*を遅角させないことにより目標点火時期Ea*の遅角を解除すると共にステップS320で再設定した目標バルブタイミングVVT*から更に所定角度ΔVVT2(例えば、5度)だけ遅角させて目標バルブタイミングVVT*を設定し直して(ステップS390)、処理を終了する。これにより、点火時期の遅角が長時間継続されることによって浄化用触媒134aに不具合が生じるのを抑制している。
図3の駆動制御ルーチンに戻って、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとに基づいて要求トルクTr*をリングギヤ軸32aに作用させるためにモータMG2から出力すべきトルクとしての仮モータトルクTm2tmpを次式(3)により計算すると共に(ステップS210)、バッテリ50の入出力制限Win,WoutとモータMG1のトルク指令Tm1*と現在のモータMG1の回転数Nm1とモータMG2の回転数Nm2とに基づいて次式(4)および次式(5)によりモータMG2から出力してもよいトルクの下限,上限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを計算し(ステップS220)、仮モータトルクTm2tmpとトルク制限Tm2maxとのうち小さい方とトルク制限Tm2minとを比較し、両者のうち大きい方をモータMG2のトルク指令Tm2*に設定する(ステップS230)。これにより、トルク指令Tm2*を、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で制限したトルクとして設定することができる。
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr …(3)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(5)
Tm2min=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(4)
Tm2max=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 …(5)
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,目標バルブタイミングVVT*,目標点火時期Ea*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*と目標バルブタイミングVVT*と目標点火時期Ea*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS240)、本ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*と目標バルブタイミングVVT*と目標点火時期Ea*を受信したエンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのクランクポジションに基づいてイグニッションコイル138への制御信号のタイミングを目標点火時期Ea*とすると共に可変バルブタイミング機構150における吸気タイミングを目標バルブタイミングVVT*としてエンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*の運転ポイントで運転されるよう吸入空気量調節制御や燃料噴射制御,点火制御などを行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、冷間時などにエンジン22から想定されるパワーよりも大きなパワーが出力されることによりエンジン22からの反力をモータMG1で受け止めきれないときには、モータMG1の回転数Nm1に基づいて目標スロットル開度TH*,目標バルブタイミングVVT*,目標点火時期Ea*の各応答速度を考慮して各運転パラメータを変更してエンジン22から出力されるパワーを小さくするから、モータMG1がその上限回転数で駆動されるのを適切に抑制することができる。しかも、モータMG1の回転数Nm1が所定回転数N2以下のときには目標スロットル開度TH*や目標バルブタイミングVVT*を変更し、回転数Nm1が所定回転数N2を超えたときに限って目標点火時期Ea*を遅角するから、目標点火時期Ea*を遅角させる頻度を少なくでき、浄化用触媒134aに不具合が生じるのを抑制することができる。さらに、触媒温度Tcに基づいて遅角量ΔEaと実行可能時間TEaとを設定し、この遅角量ΔEaと実行可能時間TEaの範囲内で目標点火時期Eaを遅角させるから、浄化用触媒134aに不具合が生じるのをより確実に抑制することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG1の回転数Nm1に基づいて目標スロットル開度TH*と目標バルブタイミングVVT*と目標点火時期Ea*とを変更することによりエンジン22から出力されるパワーを小さくするものとしたが、目標バルブタイミングVVT*を変更しないものとしてもよいし、目標スロットル開度TH*を変更しないものとしてもよい。前者の場合、可変バルブタイミング機構150を備えない自動車にも適用することができる。また、エンジン22から出力されるパワーを小さくできれば他の如何なる運転パラメータを変更するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、浄化用触媒134aの触媒温度Tcに基づいて遅角量ΔEaと実行可能時間TEaとを設定し、設定した遅角量ΔEaと実行可能時間TEaの範囲内で点火時期を遅角させるものとしたが、遅角量ΔEaと実行可能時間TEaのうち一方のみを設定して点火時期を遅角させるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、触媒温度Tcを温度センサ149により直接検出するものとしたが、エンジン22の排気を温度を検出することによりこの排気の温度から触媒温度Tcを推定するものとしてもよいし、エンジン22の運転状態から触媒温度Tcを推定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図10の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図10における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ332と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ334とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機330を備えるものとしてもよい。
以上、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、自動車産業に利用可能である。
20,220,320 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、122 エアクリーナ、124 スロットルバブル、126 燃料噴射弁、128 吸気バルブ、130 点火プラグ、132 ピストン、134 浄化装置、134a 浄化用触媒、136 スロットルモータ、138 イグニッションコイル、140 クランクポジションセンサ、142 温度センサ、144 カムポジションセンサ、146 スロットルポジションセンサ、148 エアフローメータ、149 温度センサ、150 可変バルブタイミング機構、330 対ロータ電動機、332 インナーロータ 334 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。
Claims (14)
- 駆動軸に動力を出力する動力出力装置であって、
内燃機関と、
該内燃機関の出力軸と前記駆動軸とに接続され、該内燃機関の出力軸の回転と該駆動軸の回転とに基づいて回転する回転子を有し、電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段と、
前記内燃機関の目標運転ポイントを設定する目標運転ポイント設定手段と、
通常時には前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関と前記電力動力入出力手段とを制御し、前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう制御すると前記電力動力入出力手段が最大発電の近傍で運転される非通常時には該電力動力入出力手段の回転子の回転数に基づいて該内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータのうちから選択した運転パラメータを変更することにより該内燃機関から出力される動力が小さくなるよう該内燃機関と該電力動力入出力手段とを制御する制御手段と
を備える動力出力装置。 - 前記制御手段は、前記非通常時には、前記複数の運転パラメータのうち前記電力動力入出力手段の回転子の回転数が低いほど応答の遅い運転パラメータを優先して変更することにより前記内燃機関から出力される動力が小さくなるよう制御する手段である請求項1記載の動力出力装置。
- 前記複数の運転パラメータは、スロットル開度,吸排気タイミング,点火時期の少なくとも一つを含む請求項1または2記載の動力出力装置。
- 請求項1ないし3いずれか記載の動力出力装置であって、
前記複数の運転パラメータは、点火時期を含み、
前記制御手段は、前記非通常時には、前記電力動力入出力手段の回転子の回転数が第1の回転数以上のときには少なくとも前記点火時期を遅角することにより前記内燃機関から出力される動力が小さくなるよう制御し、前記電力動力入出力手段の回転子の回転数が前記第1の回転数よりも低い第2の回転数以上のときには前記複数の運転パラメータのうち前記点火時期以外の運転パラメータを変更することにより前記内燃機関から出力される動力が小さくなるよう制御する手段である
動力出力装置。 - 請求項4記載の動力出力装置であって、
前記内燃機関の排気系に取り付けられた排気浄化用触媒の温度を検出する触媒温度検出手段を備え、
前記制御手段は、前記検出された排気浄化用触媒の温度に基づいて前記点火時期を遅角することにより前記内燃機関から出力される動力が小さなるよう制御する手段である
動力出力装置。 - 前記制御手段は、前記検出された排気浄化用触媒の温度に基づいて遅角量および/または遅角可能時間を設定し、該設定した遅角量および/または遅角可能時間の範囲内で前記点火時期を遅角することにより前記内燃機関から出力される動力が小さくなるよう制御する手段である請求項5記載の動力出力装置。
- 請求項1ないし6いずれか記載の動力出力装置であって、
前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機を備え、
前記制御手段は、要求動力に基づく動力が前記駆動軸に出力されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する手段である
動力出力装置。 - 前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸と前記駆動軸と第3の回転軸の3軸に接続され、該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の1軸に動力を入出力させる3軸式の動力入出力手段と、前記第3の回転軸に動力を入出力可能な発電機とを備える手段である請求項1ないし7いずれか記載の動力出力装置。
- 前記電力動力入出力手段は、前記内燃機関の出力軸に接続された第1の回転子と前記駆動軸に接続された第2の回転子とを有し、該第1の回転子と該第2の回転子との電磁的な作用により両回転子を相対的に回転させる対回転子電動機である請求項1ないし7いずれか記載の動力出力装置。
- 請求項1ないし9いずれか記載の動力出力装置を搭載し、前記駆動軸が車軸に接続されて走行する自動車。
- 内燃機関と、該内燃機関の出力軸と駆動軸とに接続され該内燃機関の出力軸の回転と該駆動軸の回転とに基づいて回転する回転子を有し電力と動力の入出力を伴って該内燃機関からの動力の少なくとも一部を該駆動軸に出力可能な電力動力入出力手段と、を備える動力出力装置の制御方法であって、
前記内燃機関の目標運転ポイントが設定されたとき、通常時には前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう該内燃機関と前記電力動力入出力手段とを制御し、前記設定された目標運転ポイントで前記内燃機関が運転されるよう制御すると前記電力動力入出力手段が最大発電の近傍で運転される非通常時には該電力動力入出力手段の回転子の回転数に基づいて該内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータのうちから選択した運転パラメータを変更することにより該内燃機関から出力される動力が小さくなるよう該内燃機関と該電力動力入出力手段とを制御する
動力出力装置の制御方法。 - 内燃機関の駆動装置であって、
前記内燃機関の排気系に取り付けられた排気浄化用触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、
前記内燃機関から出力すべき目標動力を設定する目標動力設定手段と、
通常時には前記設定された目標動力が前記内燃機関から出力されるよう該内燃機関を制御し、前記内燃機関から出力される動力が前記設定された目標動力よりも大きくなる非通常時には少なくとも点火時期を含む該内燃機関の運転に関する複数の運転パラメータを前記検出された排気浄化用触媒の温度に基づいて変更することにより該内燃機関から出力される動力が小さくなるよう該内燃機関を制御する制御手段と
を備える内燃機関の駆動装置。 - 前記制御手段は、前記検出された排気浄化用触媒の温度に基づいて遅角量および/または遅角可能時間を設定し、該設定した遅角量および/または遅角可能時間の範囲内で前記点火時期を遅角すると共に他の運転パラメータを変更することにより前記内燃機関から出力される動力が小さくなるよう制御する手段である請求項12記載の内燃機関の駆動装置。
- 前記複数の運転パラメータは、更に、スロットル開度,吸排気タイミングの少なくとも一つを含む請求項12または13載の内燃機関の駆動装置。
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