JP4106864B2 - 車両の制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両の制御装置に係り、特に、低温時の潤滑油の粘性抵抗や各部のクリアランス不足に起因する動力伝達機構の動力損失を低減する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
モータの駆動力を動力伝達機構を介して車輪に伝達して走行する電気自動車において、(a) バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段と、(b) 動力伝達機構の潤滑油の温度を検出する油温検出手段と、(c) 動力伝達機構の潤滑油を加熱する加熱手段と、(d) その加熱手段を作動制御する加熱制御手段とを備え、(e) その加熱制御手段は、前記蓄電量検出手段が所定の蓄電量を検出し、且つ前記油温検出手段が所定値以下の油温を検出した場合に、前記加熱手段を作動させて潤滑油を加熱することにより、低温時の潤滑油の粘性抵抗やクリアランス不足などによる動力損失を低減する技術が、特開平9−4431号公報に記載されており、加熱手段としてヒータが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このように潤滑油の加熱だけのためにヒータを設けると、部品点数や組付工数が増えてコストが高くなるという問題があった。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、ヒータ等の加熱手段を別途設けることなく低温時の潤滑油の粘性抵抗やクリアランス不足などに起因する動力伝達機構の動力損失を低減することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、第1発明は、回転機の作動に伴って発せられる熱で動力伝達機構の作動用または潤滑用の液体が暖められる構造の車両の制御装置において、前記液体の温度が低い場合に前記回転機の発熱が増大するようにその回転機を作動させる発熱促進手段を設けたことを特徴とする。
【0006】
第2発明は、第1発明の車両の制御装置において、(a) 燃料の燃焼によって動力を発生するエンジンと、(b) そのエンジンおよび前記回転機の動力を合成または分配して駆動輪側へ伝達する合成分配機構と、(c) 前記動力伝達機構として前記合成分配機構と駆動輪との間に配設された変速機と、を有し、(d) その変速機の変速比を変更するための作動油が前記液体で、前記回転機の冷却用に用いられて暖められるようになっていることを特徴とする。
【0007】
第3発明は、第1発明または第2発明の車両の制御装置において、(a) 前記回転機は、バッテリから電気エネルギーが供給されることにより電動機として機能するとともに、回転駆動されることにより発電してそのバッテリを充電する発電機としても機能するモータジェネレータで、(b) 前記発熱促進手段は、前記バッテリの蓄電量が所定値以下の場合は前記モータジェネレータの発電作動を促進し、その蓄電量が所定値以上の場合は該モータジェネレータの力行作動を促進するものであることを特徴とする。
【0008】
【発明の効果】
このような車両の制御装置においては、動力伝達機構の作動用または潤滑用の液体の温度が低い場合に、発熱促進手段によって発熱が増大するように回転機が作動させられるため、その回転機の発熱で液体の温度が速やかに上昇させられ、低温時の潤滑油の粘性抵抗や各部のクリアランス不足に起因する動力伝達機構の動力損失が低減されて伝達効率が高くなる。しかも、電動機および/または発電機として機能する回転機の作動に伴う発熱を利用して液体を暖めるため、ヒータ等の加熱手段を別途設ける場合に比較してコストが低減される。
【0009】
なお、回転機の発熱は、例えばコイル部における銅損(ジュール熱)や回転部の機械損(摩擦熱)、ロータ部における鉄損などに基づくもので、一般にトルクが大きくなる程発熱量も多くなる。
【0010】
また、第3発明では、回転機としてモータジェネレータを備えているとともに、バッテリの蓄電量が所定値以下の場合はモータジェネレータの発電作動を促進する一方、蓄電量が所定値以上の場合はモータジェネレータの力行作動を促進するため、バッテリの蓄電量を常に適正な状態に維持しつつモータジェネレータの作動促進によって動力伝達機構の液体の温度を上昇させることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
ここで、本発明は回転機が走行用の電動機である電気自動車や、回転機が発電機でエンジンによって走行するエンジン車両、走行用駆動源として回転機およびエンジンを搭載しているハイブリッド車両など、回転機および動力伝達機構を備えている種々の車両に適用され得る。回転機は、電気エネルギーで作動する電動機であっても良いし、エンジンなどで回転駆動されることによって発電する発電機、或いはそれ等の電動機および発電機の両方の機能を有するモータジェネレータであっても良く、基本的に液体の加熱以外の目的で配設され、走行用駆動源や発電機として用いられる。
【0012】
動力伝達機構は、変速比を変更可能な無段変速機や有段変速機、或いは前後進切換装置、合成分配機構など、動力伝達を行う種々の装置が対象で、作動用の液体は、例えば変速機の変速比を変更する可変プーリのシリンダやクラッチ、ブレーキ等の流体アクチュエータに供給される作動油などで、ポンプなどで圧送される。また、潤滑用の液体は、ポンプで汲み上げられて潤滑部位へ強制的に送給されたり、オイルパンなどに蓄積されて潤滑部位である歯車などの一部が浸漬されたりする潤滑油などで、上記作動油を兼ねているものでも良い。それ等の作動油や潤滑油の温度が低いと、粘性抵抗が大きくなって回転部分の回転抵抗が増大したり、各部の収縮によりクリアランスか小さくなって回転部分の摩擦が増大したりして、動力損失が増大する可能性がある。
【0013】
上記液体を回転機による発熱で暖める手法は、例えば回転機の冷却用流体として上記作動油や潤滑油を用いるようにすることが望ましく、ポンプなどで汲み上げた液体を回転機へ送給するとともにオイルパンなどへ戻すように構成すれば良いが、液体を蓄積するオイルパンに隣接して回転機を配設するだけでも良いなど、種々の態様を採用できる。
【0014】
発熱促進手段は、例えば回転機の作動頻度(電動機や発電機としての作動時間)が多くなるように回転機を作動させる運転領域を広くしたり、回転機の作動トルク(力行トルクや発電トルク)を大きくしたり、エンジン走行中に回転機を力行制御するとともにその分だけエンジントルクを削減したり、エンジン走行中に回転機を発電制御するとともにその分だけエンジントルクを増加させたりするなど、回転機の作動を活発にして発熱量を増大させることが望ましいが、発熱量が大きい動作点(回転速度およびトルク)で回転機を作動させるようにしても良いなど、回転機の発熱量を増大させる種々の手法を採用できる。
【0015】
第2発明の合成分配機構としては、遊星歯車装置などの歯車式差動装置が好適に用いられる。第3発明で蓄電量を判定する所定値は一定値でも良いが、ハンチングを防止するために所定範囲でヒステリシスを設けることが望ましい。
【0016】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用されたハイブリッド駆動制御装置10を説明する概略構成図で、図2は変速機12を含む骨子図であり、このハイブリッド駆動制御装置10は、燃料の燃焼で動力を発生するエンジン14、電動機および発電機として用いられるモータジェネレータ16、およびダブルピニオン型の遊星歯車装置18を備えて構成されており、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両などに横置きに搭載されて使用される。遊星歯車装置18のサンギヤ18sにはエンジン14が連結され、キャリア18cにはモータジェネレータ16が連結され、リングギヤ18rは第1ブレーキB1を介してケース20に連結されるようになっている。また、キャリア18cは第1クラッチC1を介して変速機12の入力軸22に連結され、リングギヤ18rは第2クラッチC2を介して入力軸22に連結されるようになっている。変速機12は動力伝達機構に相当し、エンジン14は内燃機関に相当し、モータジェネレータ16は回転機に相当し、遊星歯車装置18は歯車式差動装置で合成分配機構に相当する。
【0017】
上記クラッチC1、C2および第1ブレーキB1は、何れも油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる湿式多板式の油圧式摩擦係合装置で、油圧制御回路24から供給される作動油によって摩擦係合させられるようになっている。図3は、油圧制御回路24の要部を示す図で、電動ポンプを含む電動式油圧発生装置26で発生させられた元圧PCが、マニュアルバルブ28を介してシフトレバー30(図1参照)のシフトポジションに応じて各クラッチC1、C2、ブレーキB1へ供給されるようになっている。シフトレバー30は、運転者によって操作されるシフト操作部材で、本実施例では「B」、「D」、「N」、「R」、「P」の5つのシフトポジションに選択操作されるようになっており、マニュアルバルブ28はケーブルやリンク等を介してシフトレバー30に連結され、そのシフトレバー30の操作に従って機械的に切り換えられるようになっている。
【0018】
「B」ポジションは、前進走行時に変速機12のダウンシフトなどにより比較的大きな動力源ブレーキが発生させられるシフトポジションで、「D」ポジションは前進走行するシフトポジションであり、これ等のシフトポジションでは出力ポート28aからクラッチC1およびC2へ元圧PCが供給される。第1クラッチC1へは、シャトル弁31を介して元圧PCが供給されるようになっている。「N」ポジションは動力源からの動力伝達を遮断するシフトポジションで、「R」ポジションは後進走行するシフトポジションで、「P」ポジションは動力源からの動力伝達を遮断するとともに図示しないパーキングロック装置により機械的に駆動輪の回転を阻止するシフトポジションであり、これ等のシフトポジションでは出力ポート28bから第1ブレーキB1へ元圧PCが供給される。出力ポート28bから出力された元圧PCは戻しポート28cへも入力され、上記「R」ポジションでは、その戻しポート28cから出力ポート28dを経てシャトル弁31から第1クラッチC1へ元圧PCが供給されるようになっている。
【0019】
クラッチC1、C2、およびブレーキB1には、それぞれコントロール弁32、34、36が設けられ、それ等の油圧PC1、PC2、PB1が制御されるようになっている。クラッチC1の油圧PC1についてはON−OFF弁38によって調圧され、クラッチC2およびブレーキB1についてはリニアソレノイド弁40によって調圧されるようになっている。
【0020】
そして、上記クラッチC1、C2、およびブレーキB1の作動状態に応じて、図4に示す各走行モードが成立させられる。すなわち、「B」ポジションまたは「D」ポジションでは、「ETCモード」、「直結モード」、「モータ走行モード(前進)」の何れかが成立させられ、「ETCモード」では、第2クラッチC2を係合するとともに第1クラッチC1および第1ブレーキB1を開放した状態、言い換えればサンギヤ18s、キャリア18c、およびリングギヤ18rが相対回転可能な状態で、エンジン14およびモータジェネレータ16を共に作動させてサンギヤ18sおよびキャリア18cにトルクを加え、リングギヤ18rを回転させて車両を前進走行させる。「直結モード」では、クラッチC1、C2を係合するとともに第1ブレーキB1を開放した状態で、エンジン14を作動させて車両を前進走行させる。「直結モード」ではまた、バッテリ42(図1参照)の蓄電量(残容量)SOCに応じて、モータジェネレータ16を力行制御するとともにその分だけエンジントルクを削減したり、モータジェネレータ16を発電制御するとともにその分だけエンジントルクを増加させたりすることにより、蓄電量SOCを例えば充放電効率が優れた適正な範囲内に保持するようになっている。また、「モータ走行モード(前進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16を作動させて車両を前進走行させる。「モータ走行モード(前進)」ではまた、アクセルOFF時などにモータジェネレータ16を回生制御することにより、車両の運動エネルギーで発電してバッテリ42を充電するとともに車両に制動力を作用させることができる。
【0021】
図5は、上記前進モードにおける遊星歯車装置18の作動状態を示す共線図で、「S」はサンギヤ18s、「R」はリングギヤ18r、「C」はキャリア18cを表しているとともに、それ等の間隔はギヤ比ρ(=サンギヤ18sの歯数/リングギヤ18rの歯数)によって定まる。具体的には、「S」と「C」の間隔を1とすると、「R」と「C」の間隔がρになり、本実施例ではρが0.6程度である。また、(a) のETCモードにおけるトルク比は、エンジントルクTe:CVT入力軸トルクTin:モータトルクTm=ρ:1:1−ρであり、モータトルクTmはエンジントルクTeより小さくて済むとともに、定常状態ではそれ等のモータトルクTmおよびエンジントルクTeを加算したトルクがCVT入力軸トルクTinになる。CVTは無段変速機の意味であり、本実施例では変速機12としてベルト式無段変速機が設けられている。
【0022】
図4に戻って、「N」ポジションまたは「P」ポジションでは、「ニュートラル」または「充電・Eng始動モード」の何れかが成立させられ、「ニュートラル」ではクラッチC1、C2および第1ブレーキB1の何れも開放する。「充電・Eng始動モード」では、クラッチC1、C2を開放するとともに第1ブレーキB1を係合し、モータジェネレータ16を逆回転させてエンジン14を始動したり、エンジン14により遊星歯車装置18を介してモータジェネレータ16を回転駆動するとともに発電制御することにより、電気エネルギーを発生させてバッテリ42を充電したりする。
【0023】
「R」ポジションでは、「モータ走行モード(後進)」または「フリクション走行モード」が成立させられ、「モータ走行モード(後進)」では、第1クラッチC1を係合するとともに第2クラッチC2および第1ブレーキB1を開放した状態で、モータジェネレータ16を逆方向へ回転駆動してキャリア18c、更には入力軸22を逆回転させることにより車両を後進走行させる。「フリクション走行モード」は、上記「モータ走行モード(後進)」での後進走行時にアシスト要求が出た場合に実行されるもので、エンジン14を始動してサンギヤ18sを正方向へ回転させるとともに、そのサンギヤ18sの回転に伴ってリングギヤ18rが正方向へ回転させられている状態で、第1ブレーキB1をスリップ係合させてそのリングギヤ18rの回転を制限することにより、キャリア18cに逆方向の回転力を作用させて後進走行をアシストするものである。
【0024】
前記変速機12はベルト式無段変速機で、その出力軸44からカウンタ歯車46を経て差動装置48のリングギヤ50に動力が伝達され、その差動装置48により左右の駆動輪(本実施例では前輪)52に動力が分配される。変速機12は、一対の可変プーリ12a、12bを備えており、油圧シリンダによってV溝幅が変更されることにより変速比γ(=入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout )が連続的に変化させられるとともに、ベルト張力が調整されるようになっている。前記油圧制御回路24は、変速機12の変速比γやベルト張力を制御するための回路を備えており、共通の電動式油圧発生装置26から作動油が供給される。油圧制御回路24の作動油はまた、オイルパンに蓄積されて遊星歯車装置18や差動装置48を潤滑するとともに、一部がモータジェネレータ16に供給されて、モータジェネレータ16のハウジング内を流通したりハウジングに形成された冷却通路を流通したりハウジングに接して流通したりすることにより、そのモータジェネレータ16を冷却するようになっている。
【0025】
本実施例のハイブリッド駆動制御装置10は、図1に示すHVECU60によって制御されるようになっている。HVECU60は、CPU、RAM、ROM等を備えていて、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を実行することにより、電子スロットルECU62、エンジンECU64、M/GECU66、T/MECU68、前記油圧制御回路24のON−OFF弁38、リニアソレノイド弁40、エンジン14のスタータ70などを制御する。電子スロットルECU62はエンジン14の電子スロットル弁72を開閉制御するもので、エンジンECU64はエンジン14の燃料噴射量や可変バルブタイミング機構、点火時期などによりエンジン出力を制御するもので、M/GECU66はインバータ74を介してモータジェネレータ16の力行トルクや回生制動トルク等を制御するもので、T/MECU68は変速機12の変速比γやベルト張力などを制御するものである。スタータ70はモータジェネレータで、ベルト或いはチェーンなどの動力伝達装置を介してエンジン14のクランクシャフトに連結されている。
【0026】
上記HVECU60には、アクセル操作量センサ76からアクセル操作部材としてのアクセルペダル78の操作量θacを表す信号が供給されるとともに、シフトポジションセンサ80からシフトレバー30のシフトポジションを表す信号が供給される。また、エンジン回転速度センサ82、モータ回転速度センサ84、入力軸回転速度センサ86、出力軸回転速度センサ88、CVT油温センサ90から、それぞれエンジン回転速度(回転数)Ne、モータ回転速度(回転数)Nm、入力軸回転速度(入力軸22の回転速度)Nin、出力軸回転速度(出力軸44の回転速度)Nout 、油圧制御回路24の作動油の温度THCVT を表す信号がそれぞれ供給される。出力軸回転速度Nout は車速Vに対応する。この他、バッテリ42の蓄電量SOCなど、運転状態を表す種々の信号が供給されるようになっている。蓄電量SOCは単にバッテリ電圧であっても良いが、充放電量を逐次積算して求めるようにしても良い。アクセル操作量θacは運転者の出力要求量に相当する。
【0027】
図6は、バッテリ42の蓄電量SOCを例えば充放電効率が優れた適正な範囲内に保持するように、前進走行時の「直結モード」および「モータ走行モード(前進)」の運転領域を変更したり、「直結モード」でモータジェネレータ16の力行制御或いは発電制御を実施したりするSOC制御の作動を説明するフローチャートで、HVECU60の信号処理により所定のサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0028】
図6のステップS1では蓄電量SOCを読み込み、ステップS2では蓄電量SOCに応じて充放電要求値spchgを算出する。図7は、ステップS2の信号処理を具体的に説明するフローチャートで、ステップR1では、CVT油温センサ90から供給される作動油温度THCVT が予め定められた下限値THmin 以下か否かを判断し、THCVT ≦THmin であればステップR3以下を実行するが、下限値THmin よりも高い場合はステップR2で蓄電量SOCをパラメータとする標準マップに従って充放電要求値spchgを設定する。下限値THmin は、作動油の粘性抵抗や各部のクリアランス不足に起因して変速機12などの動力伝達機構の動力損失が大きくなる低温度で、作動油の粘性特性などに応じて予め一定値(例えば60℃程度)が設定されている。また、標準マップは、例えば図8に実線で示すように、バッテリ42の充放電効率が優れている蓄電量範囲SOC1〜SOC2(例えば60%〜70%)で充放電要求値spchgが充電側最大値spchgmin から放電側最大値spchgmax まで徐変するように定められている。なお、正(+)の充放電要求値spchgは放電要求を意味し、負(−)の充放電要求値spchgは充電要求を意味する。
【0029】
作動油温度THCVT が下限値THmin 以下の低温時に実行するステップR3では、蓄電量SOCが所定の判定値SOC* 以下か否かを判断し、判定値SOC* 以下であればステップR4で充電要求を上乗せする一方、判定値SOC* より大きい場合はステップR5で放電要求を上乗せする。判定値SOC* は、例えば図8において充放電要求値spchgが「0」になる一定の蓄電量(約65%)であっても良いが、ハンチングを防止するために一点鎖線で示すようにヒステリシスを設けることが望ましい。例えば、充電側のステップR4の実行時には、蓄電量SOCがSOC2を越えるまでステップR4を維持し、SOC2を越えたら放電側のステップR5へ移行する一方、放電側のステップR5の実行時には、蓄電量SOCがSOC1を下回るまでステップR5を維持し、SOC1を下回ったら充電側のステップR4へ移行するのである。移行する蓄電量SOCの値は適宜設定される。また、充電側のステップR4では、例えば図8に一点鎖線で示すように充放電要求値spchgを一律に充電側最大値spchgmin とし、放電側のステップR5では充放電要求値spchgを一律に放電側最大値spchgmax とするが、少なくとも標準マップよりも大きな値が設定されるようになっておれば良い。
【0030】
図6に戻って、ステップS3では充電要求か否か、すなわちステップS2で求めた充放電要求値spchgが負(−)か否かを判断し、負(−)の場合はステップS4で「直結モード」の運転領域をその充放電要求値spchgの大きさに応じて拡大する。すなわち、充放電要求値spchgがマイナス側に大きい程、言い換えれば充電要求が大きい程、「直結モード」の運転領域をより大きくする。エンジン14を駆動源として走行する「直結モード」の運転領域は、一般に車速Vやアクセル操作量θacが大きい高負荷側に設定されるが、ステップS4が実行されることにより、その「直結モード」の運転領域が低負荷側へ拡大され、モータジェネレータ16を駆動源として走行する「モータ走行モード(前進)」の運転領域がその分だけ縮小されて、蓄電量SOCが比較的少ないバッテリ42の消費が節減される。
【0031】
次のステップS5では、「直結モード」か否かを判断し、「直結モード」であれば、ステップS6でモータジェネレータ16を発電制御する指令をM/GECU66へ出力してバッテリ42を充電するとともに、その分だけエンジン14のトルクを増大させる指令をエンジンECU64や電子スロットルECU62へ出力する。このモータジェネレータ16の発電制御における発電トルクは、充放電要求値spchgの大きさに応じて設定され、充放電要求値spchgがマイナス側に大きい程、言い換えれば充電要求が大きい程、大きな発電トルクで発電制御が行われて、バッテリ42が速やかに充電される。
【0032】
前記ステップS3の判断がNOの場合、すなわち充放電要求値spchgが負(−)でない場合は、ステップS7で放電要求か否か、すなわち充放電要求値spchgが正(+)か否かを判断する。そして、正(+)であれば、ステップS8で「モータ走行モード(前進)」の運転領域をその充放電要求値spchgの大きさに応じて拡大する。すなわち、充放電要求値spchgがプラス側に大きい程、言い換えれば放電要求が大きい程、「モータ走行モード(前進)」の運転領域をより大きくする。モータジェネレータ16を駆動源として走行する「モータ走行モード(前進)」の運転領域は、一般に車速Vやアクセル操作量θacが小さい低負荷側に設定されるが、ステップS8が実行されることにより、その「モータ走行モード(前進)」の運転領域が高負荷側へ拡大され、エンジン14を駆動源として走行する「直結モード」の運転領域がその分だけ縮小されて、蓄電量SOCが比較的多いバッテリ42の消費が促進される。
【0033】
次のステップS9では、「直結モード」か否かを判断し、「直結モード」であれば、ステップS10でモータジェネレータ16を力行制御する指令をM/GECU66へ出力してバッテリ42を消費するとともに、その分だけエンジン14のトルクを削減する指令をエンジンECU64や電子スロットルECU62へ出力する。このモータジェネレータ16の力行制御における力行トルクは、充放電要求値spchgの大きさに応じて設定され、充放電要求値spchgがプラス側に大きい程、言い換えれば放電要求が大きい程、大きな力行トルクで力行制御が行われて、バッテリ42が速やかに放電される。
【0034】
このように、本実施例では変速機12の変速制御などを行う油圧制御回路24の作動油温度THCVT が下限値THmin 以下の場合には、充放電要求値spchgが蓄電量SOCに応じて充電側最大値spchgmin (ステップR4)または放電側最大値spchgmax (ステップR5)とされ、その充放電要求値spchgの値に応じて、「直結モード」および「モータ走行モード(前進)」の運転領域が変更されるとともに、充電要求時にはステップS6で「直結モード」の走行時にモータジェネレータ16の発電制御が行われる一方、放電要求時にはステップS10で「直結モード」の走行時にモータジェネレータ16の力行制御が行われる。このため、モータジェネレータ16の作動頻度(電動機や発電機としての作動時間)が多くなるとともに、発電トルクや力行トルクも充放電要求値spchgの値に応じて大きくなり、モータジェネレータ16の作動に伴う発熱量が増大して、その冷却にも使用される作動油の温度THCVT が速やかに上昇させられ、低温時の作動油の粘性抵抗や各部のクリアランス不足に起因する動力伝達機構の動力損失が低減されて伝達効率が高くなる。
【0035】
また、本実施例では電動機および発電機として用いられるモータジェネレータ16の作動に伴う発熱を利用して作動油を暖めるため、ヒータ等の加熱手段を別途設ける場合に比較してコストが低減される。
【0036】
また、バッテリ42の蓄電量SOCが少ない場合、すなわち充放電要求値spchgが負(−)の充電要求時には、ステップS4における「直結モード」の運転領域の拡大と合わせてステップS6のモータジェネレータ16の発電作動が促進(頻度およびトルクの増大)される一方、蓄電量SOCが多い場合、すなわち充放電要求値spchgが正(+)の放電要求時には、ステップS8における「モータ走行モード(前進)」の運転領域の拡大およびステップS10により、モータジェネレータ16の力行作動が促進(頻度およびトルクの増大)されるため、バッテリ42の蓄電量SOCを常に適正な状態に維持しつつモータジェネレータ16の作動促進によって変速機12を含む動力伝達機構の作動油温度THCVT を上昇させることができる。
【0037】
本実施例では、油圧制御回路24の作動油が、モータジェネレータ16の作動に伴って発せられる熱で暖められる液体に相当し、HVECU60による一連の信号処理のうち図7のステップR1、R3、R4、R5を実行する部分が発熱促進手段として機能している。
【0038】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたハイブリッド駆動制御装置を説明する概略構成図である。
【図2】図1のハイブリッド駆動制御装置の動力伝達系を示す骨子図である。
【図3】図1の油圧制御回路の一部を示す回路図である。
【図4】図1のハイブリッド駆動制御装置において成立させられる幾つかの走行モードと、クラッチおよびブレーキの作動状態との関係を説明する図である。
【図5】図4のETCモード、直結モード、およびモータ走行モード(前進)における遊星歯車装置の各回転要素の回転速度の関係を示す共線図である。
【図6】バッテリの蓄電量を適正な範囲内に保持するためのSOC制御の作動を説明するフローチャートである。
【図7】図6におけるステップS2の内容を具体的に説明するフローチャートである。
【図8】図7のステップR2、R4、またはR5で設定される充放電要求値spchgと蓄電量SOCとの関係を示す図である。
【符号の説明】
10:ハイブリッド駆動制御装置 12:変速機(動力伝達機構) 14:エンジン 16:モータジェネレータ(回転機) 18:遊星歯車装置(合成分配機構) 42:バッテリ 60:HVECU 90:CVT油温センサ
ステップR1、R3、R4:R5:発熱促進手段

Claims (3)

  1. 回転機の作動に伴って発せられる熱で動力伝達機構の作動用または潤滑用の液体が暖められる構造の車両の制御装置において、
    前記液体の温度が低い場合に前記回転機の発熱が増大するように該回転機を作動させる発熱促進手段を設けた
    ことを特徴とする車両の制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の制御装置において、
    燃料の燃焼によって動力を発生するエンジンと、
    該エンジンおよび前記回転機の動力を合成または分配して駆動輪側へ伝達する合成分配機構と、
    前記動力伝達機構として前記合成分配機構と駆動輪との間に配設された変速機と、
    を有し、該変速機の変速比を変更するための作動油が前記液体で、前記回転機の冷却用に用いられて暖められるようになっている
    ことを特徴とする車両の制御装置。
  3. 請求項1または2に記載の車両の制御装置において、
    前記回転機は、バッテリから電気エネルギーが供給されることにより電動機として機能するとともに、回転駆動されることにより発電して該バッテリを充電する発電機としても機能するモータジェネレータで、
    前記発熱促進手段は、前記バッテリの蓄電量が所定値以下の場合は前記モータジェネレータの発電作動を促進し、該蓄電量が所定値以上の場合は該モータジェネレータの力行作動を促進するものである
    ことを特徴とする車両の制御装置。
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