JP4593808B2 - 多層配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は多層配線基板に関し、より詳細には混成集積回路装置や半導体素子を収容する半導体素子収納用パッケージ等に使用される多層配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、混成集積回路装置や半導体素子収納用パッケージ等に使用される多層配線基板としては、配線導体を高密度に形成することを目的として、基板上に薄膜の絶縁層と導体層とから成る多層配線部を形成した多層配線基板が採用されていた。
【0003】
かかる多層配線基板は、酸化アルミニウム質焼結体等から成る基板の上面に、スピンコート法等によって形成されるポリイミド樹脂等から成る薄膜の絶縁層と、銅等の主導体層とその上下にクロムやニッケル等のバリア導体層とで構成され、めっき法や蒸着法等の薄膜形成技術およびフォトリソグラフィー技術を採用することによって形成される多層膜の主導体層とを交互に多層に積層させた構造を有している。
【0004】
しかしながら、スピンコート法によってポリイミド樹脂から成る絶縁層を形成した場合、所望の厚みに絶縁層を形成するには多数回に分けてポリイミド樹脂の前駆体を塗布し、このポリイミド樹脂の前駆体をポリイミド化させるキュア工程が必要となるため、製造工程が長くなるという問題点があった。
【0005】
また、ポリイミド樹脂の前駆体に含まれる成分によって主導体層の銅が腐食されることを防止するため、さらにはポリイミド樹脂のキュア工程で300℃以上の高温に長時間さらされ主導体層の銅が酸化することを防止するため、導体層の構成としては銅等の主導体層とその上下にクロムやニッケルやチタン等のバリア導体層とが必要になり、上下のバリア導体層を加工する製造工程が長くなるという問題点があった。
【0006】
そこでポリイミド樹脂等から成り、上面に導体層が形成された複数の絶縁フィルム層をビスマレイミド系樹脂等から成る絶縁性接着剤層で接着して多層に積層した多層配線基板が採用されてきている。
【0007】
かかる多層配線基板の形成は、まず絶縁フィルムに絶縁性接着剤をドクターブレード法等を用いて塗布し乾燥させたものを準備し、上面にめっき法や銅箔転写法で導体層を形成した基板や下層の絶縁フィルム層の上面に絶縁性接着剤層が配されるようにこの絶縁フィルム層を積み重ね、これを加熱プレス装置を用いて加熱加圧し接着することにより行なわれる。
【0008】
この多層配線基板によれば、ポリイミド樹脂の前駆体をポリイミド化させるキュア工程を削減することができ、さらに導体層のバリア導体層が不要になるため製造工程の短い多層配線基板となる。
【0009】
しかしながら、この多層配線基板では導体層と絶縁フィルム層の接着強度を確保するために導体層や絶縁フィルム層の上下面を処理液により化学的に粗化していた。このため導体層や絶縁フィルム層の上下面は凹凸を有する粗面になり、細線な配線を形成すべき導体層においては、その凹凸の形成工程でオーバーエッチングを起こし消失することがあり導体層の細線化ができなくなるという問題点があった。
【0010】
そこで、有機樹脂から成り、上面に導体層が形成された複数の絶縁フィルム層を、カップリング剤層を介して絶縁性接着剤層で接着して多層に積層した多層配線基板が採用されてきている。
【0011】
この多層配線基板によれば、導体層の上面を凹凸に粗化することなく導体層と絶縁フィルム層の接着強度が得られるため、導体層における配線の細線化ができるようになった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、カップリング剤層を用いた多層配線基板においては、導体層の形成時やチップ部品の実装時の加熱処理により絶縁フィルム層間においてカップリング剤層の一部が蒸発し、絶縁フィルム層の膨れが発生するという問題点があった。
【0013】
また、絶縁フィルム層の上面はその上面に形成される導体層との接着強度を強固とするために凹凸を有する粗面にしている。このため、より一層の細線化の要求に対しては、絶縁フィルム層の上面の凹凸によって細線な導体層が断線することがあり十分に応えることができないという問題点があった。
【0014】
本発明は上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加熱処理による絶縁フィルム層の膨れが発生しない、絶縁フィルム層の接着強度が強固で、高密度配線の可能な多層配線基板を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層配線基板は、基板上に、有機樹脂から成り、上面に導体層が形成された複数の絶縁フィルム層を、絶縁性接着剤層で接着して多層に積層した多層配線基板であって、導体層が下地導体層および主導体層から成るとともに、この主導体層の上面および主導体層が形成された部位以外の絶縁フィルム層の上面に厚みが5分子層厚み以下のカップリング剤層を形成したことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の多層配線基板は、上記の構成において、前記下地導体層をクロムまたはクロムを主成分とする合金で、前記主導体層を銅または銅を主成分とする合金で、前記絶縁フィルム層をポリイミド樹脂で、前記絶縁性接着剤層をポリイミドシロキサン樹脂で、前記カップリング剤層をイソプロピルトリN−アミノエチルアミノエチルチタネートで形成したことを特徴とするものである。
【0017】
本発明の多層配線基板によれば、主導体層の上面および主導体層が形成された部位以外の絶縁フィルム層の上面にカップリング剤層を5分子層厚み以下に形成してあるため、カップリング剤層は分子の配列の乱れが小さく、主導体層およびカップリング剤層の分子同士が効率良く結合して均一で強固な層を形成し、孤立したカップリング剤の分子が発生しない。その結果、カップリング剤層の耐熱性が向上し、加熱工程でのカップリング剤層の蒸発がなくなり、主導体層と絶縁性接着剤層とがカップリング剤層によって強固に接着される。また、下層の絶縁フィルム層と絶縁性接着剤層との接着強度もより強固になり、加熱処理での絶縁フィルム層の膨れが生じなくなる。さらに、高温高湿バイアス試験等の耐環境試験においても同一面内の導体層の間に生じるマイグレーション等の発生が防止され耐環境信頼性が向上する。
【0018】
また、導体層は下地導体層および主導体層から構成されているため、主導体層は回路配線として良好な電気伝導性のよいもの、また下地導体層は絶縁フィルム層との接着強度が強固なものを必要とされる機能に応じて採用することができる。このため絶縁フィルム層と主導体層との接着強度を強固なものとすることができるとともに、絶縁フィルム層の上面を凹凸に粗化する必要がなくなり、細線な導体層を形成しても断線が発生することがなくなる。
【0019】
これにより、加熱処理により絶縁フィルム層の膨れが生じることがない、絶縁フィルム層の接着強度が強固な、高密度配線の可能な多層配線基板を得ることができる。
【0020】
さらに、本発明の多層配線基板によれば、下地導体層をクロムまたはクロムを主成分とする合金で、主導体層を銅または銅を主成分とする合金で、絶縁フィルム層をポリイミド樹脂で、絶縁性接着剤層をポリイミドシロキサン樹脂で、カップリング剤層をイソプロピルトリN−アミノエチルアミノエチルチタネートで形成した場合には、イソプロピルトリN−アミノエチルアミノエチルチタネートは銅・ポリイミド樹脂・ポリイミドシロキサン樹脂との濡れ性がよく強固に結合しやすく、また、分子構造的に耐熱性が高いため、それぞれの層間の接着強度が強固になるとともにより高温の加熱処理にも対応することができる。その結果、カップリング剤層の耐熱性が向上し、より高温の加熱処理でも絶縁フィルム層間におけるカップリング剤層の蒸発がなくなり、主導体層と絶縁性接着剤層とがカップリング剤層によって強固に接着される。
【0021】
また、クロムはポリイミド樹脂と化学的な結合を作るため、絶縁フィルム層の上面が平滑であっても接着強度が強固となる。このため絶縁フィルム層の上面の凹凸が不要になり、細線な導体層を形成しても断線が発生することがなくなるとともに、細線な主導体層を絶縁フィルム層により強固に接着することができる。
【0022】
これにより、より高温の加熱処理によっても絶縁フィルム層の膨れが生じることがない、絶縁フィルム層および導体層の接着強度がより一層強固で高密度配線が可能な多層配線基板を得ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0024】
図1は本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図であり、図2はその導体層の一部を示す要部拡大断面図である。
【0025】
これらの図において、1は基板、2は多層配線部、3は導体層、4は絶縁フィルム層、5は絶縁性接着剤層、6はカップリング剤層、7は主導体層、8は下地導体層である。
【0026】
基板1は、その上面に導体層3が形成された複数の絶縁フィルム層4を絶縁性接着剤層5で接着して多層に積層した多層配線部2が配設されており、この多層配線部2を支持する支持部材として機能する。
【0027】
基板1は、酸化アルミニウム質焼結体やムライト質焼結体等の酸化物系セラミックス、あるいは表面に酸化物膜を有する窒化アルミニウム質焼結体や炭化珪素質焼結体等の非酸化物系セラミックス、さらにはガラス繊維から成る基材にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ樹脂やガラス繊維から成る基材にビスマレイミドトリアジン樹脂を含浸させたもの等の電気絶縁材料で形成されている。
【0028】
例えば、酸化アルミニウム質焼結体で形成されている場合には、アルミナ・シリカ・カルシア・マグネシア等の原料粉末に適当な有機溶剤・溶媒を添加混合して泥漿状となすとともにこれを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を形成し、しかる後、このセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施し、所定形状となすとともに高温(約1600℃)で焼成することによって、あるいはアルミナ等の原料粉末に適当な有機溶剤・溶媒を添加混合して原料粉末を調製するとともにこの原料粉末をプレス成形機によって所定形状に成形し、最後にこの成形体を高温(約1600℃)で焼成することによって製作される。また、ガラスエポキシ樹脂から成る場合は、例えばガラス繊維から成る基材にエポキシ樹脂の前駆体を含浸させ、このエポキシ樹脂の前駆体を所定の温度で熱硬化させることによって製作される。
【0029】
基板1の上面に配設されている多層配線部2の導体層3は電気信号を伝達するための伝達路として機能し、絶縁フィルム層4は上下に位置する導体層3を電気的に絶縁する機能を有している。さらに、絶縁フィルム層4・絶縁性接着剤層5・カップリング剤層6にはレーザ等で加工した貫通孔が形成されており、この貫通孔内にも上側の導体層3を延在させることにより、絶縁フィルム層4を挟んで上下に位置する導体層3の各々を電気的に接続する接続路が形成される。
【0030】
多層配線部2の絶縁層は、絶縁フィルム層4と絶縁性接着剤層5とから構成され、絶縁フィルム層4はポリイミド樹脂・エポキシ樹脂・ポリフェニレンサルファイド樹脂・ポリキノリン樹脂・ポリフェニレンエーテル樹脂等から成る。また、絶縁性接着剤層5はポリアミドイミド樹脂・ポリイミドシロキサン樹脂・ビスマレイミド系樹脂・エポキシ樹脂等から成る。
【0031】
多層配線部2の絶縁層は、例えば、絶縁フィルム層4がポリイミド樹脂で絶縁性接着剤層5がポリイミドシロキサン樹脂の場合には、以下のように形成する。まず12.5〜50μm程度の厚みの絶縁フィルムであるポリイミド樹脂に絶縁性接着剤であるポリイミドシロキサン樹脂をドクターブレード法等を用いて乾燥厚みで5〜20μm程度に塗布し乾燥させたものを準備する。次に、この絶縁フィルム層4をカップリング剤層6の形成された主導体層7や下層の絶縁フィルム層4の上面に間に絶縁性接着剤層5が配されるように積み重ねる。そして、これを加熱プレス装置を用いて加熱加圧し接着する。
【0032】
各絶縁フィルム層4の上面および貫通孔内に配設される主導体層7は、銅・金・銀・アルミニウムおよびそれらを主成分とする合金等の低抵抗金属材料を用い、スパッタリング法・蒸着法・めっき法等の薄膜形成技術およびエッチング加工技術を採用することによって形成される。また、下地導体層8はクロム・ニッケル・モリブデン・チタン・タンタル・タングステンおよびそれらを主成分とする合金等の金属材料を用い、スパッタリング法・蒸着法等の薄膜形成技術およびエッチング加工技術を採用することによって形成される。
【0033】
例えば、その主導体層7と下地導体層8は、まず広面積に主導体層7として銅を、銅層の下層に下地導体層8(密着金属層)としてクロムを被着させて導体層を形成する。次にこの上に所望のパターンにフォトレジストを形成し、このフォトレジストをマスクにして主導体層7および下地導体層8の不要部分をエッチングによって除去することで所望のパターンに加工される。
【0034】
主導体層7の上面にはカップリング剤層6を形成する。このカップリング剤層6は主導体層7と絶縁性接着剤層5との接着強度を強固とし、加熱処理における接着強度の改良層として機能する。
【0035】
このカップリング剤層6はN−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・γ−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・ビニルトリエトキシシラン・ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン・γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン・N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン・γ−クロロプロピルトリメトキシシラン・γ−アミノプロピルトリエトキシシラン・イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート・イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート・ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート・イソプロピルトリN−アミノエチルアミノエチルチタネート・イソプロピルトリオクタノイルチタネート・イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート・イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート・アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等から成る。カップリング剤層6を形成する方法としてはスピンコート法・浸漬法等であってもよいが、膜の均一性を高めるためにはLB膜法を用いて形成するのがよい。
【0036】
LB膜法を用いてカップリング剤層6を形成する場合は、例えば、面圧を一定に保った状態で液面にカップリング剤を所望の厚みに分散させ、その膜面に対し垂直に主導体層7の形成された基板1を浸漬し、そのままゆっくりと引き上げることで基板1の全面にカップリング剤層6が均一な厚みに形成される。
【0037】
このとき、カップリング剤層6の厚みが5分子層厚みより厚くなると、カップリング剤層6は分子の配列の乱れが大きくなり、孤立するカップリング剤の分子が増加し、加熱処理により絶縁フィルム層4間でカップリング剤層6の一部が蒸発し絶縁フィルム層4の膨れが生じやすくなる傾向があるため、カップリング剤層6の厚みは5分子層厚み以下としておくのがよい。
【0038】
ちなみにカップリング剤の1分子の大きさは2nm程度であり、5分子層厚みでは10nm程度に形成されていることになる。また、このカップリング剤層6の厚みが均一に5分子層厚みとならない場合であっても、カップリング剤層6の中の特に1・3・5分子層厚みの部分の占有率が60%以上であれば接着強度の改善効果がある。
【0039】
さらに、絶縁フィルム層4の主導体層7が形成された部位以外の上面にもカップリング剤層6を形成しており、下層の絶縁フィルム層4と絶縁性接着剤層5との接着強度もより強固になり、加熱処理での絶縁フィルム層4の膨れが生じない。さらに、高温高湿バイアス試験等の耐環境試験においても同一面内の導体層3の間に生じるマイグレーション等の発生が防止され耐環境信頼性が向上する。
【0040】
このとき、カップリング剤層6の厚みが5分子層厚みより厚くなると、カップリング剤層6は分子の配列の乱れが大きくなり、孤立するカップリング剤の分子が増加し、加熱処理により絶縁フィルム層4間においてカップリング剤層6の一部が蒸発し絶縁フィルム層4の膨れが生じやすくなる傾向があるため、カップリング剤層6の厚みは5分子層厚み以下としておくのがよい。
【0041】
また、絶縁フィルム層4の上に形成するカップリング剤層6は、主導体層7の上面に形成したものと同じものでもよいが、接着される材料の組み合わせにより異なる種類のカップリング剤に変更してもよい。
【0042】
さらに、主導体層7・下地導体層8・絶縁フィルム層4・絶縁性接着剤層5の材料の組合せは多層配線基板に要求される仕様や特性に応じて適宜選択すればよいが、中でも主導体層7を銅で下地導体層8をクロムで絶縁フィルム層4をポリイミド樹脂で絶縁性接着剤層5をポリイミドシロキサン樹脂でカップリング剤層6をイソプロピルトリN−アミノエチルアミノエチルチタネートで形成しておくと、イソプロピルトリN−アミノエチルアミノエチルチタネートは銅・ポリイミド樹脂・ポリイミドシロキサン樹脂との濡れ性がよく強固に結合しやすく、また、イソプロピルトリN−アミノエチルアミノエチルチタネートは分子構造的に耐熱性が高いため、それぞれの層間の接着強度が強固になるとともにより高温の加熱処理にも対応することができる。
【0043】
これにより、より高温の加熱処理によっても絶縁フィルム層4の膨れが生じることがない、絶縁フィルム層4の接着強度がより一層強固な多層配線基板となる。
【0044】
なお、絶縁フィルム層4の最上層の主導体層7には、チップ部品の実装性および耐環境性の点から、主導体層7が銅層からなる場合にはその上にめっき法によりニッケル層や金層を形成するとよい。
【0045】
かくして、本発明の多層配線基板によれば、混成集積回路装置や半導体素子を収容する半導体素子収納用パッケージ等に使用され、基板1の上面に配設させた多層配線部2の上に半導体素子や容量素子・抵抗器等の電子部品を搭載実装し、電子部品の各電極を導体層3に電気的に接続することによって半導体装置や電子装置等として利用されることとなる。
【0046】
なお、本発明は上記の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0047】
例えば、上述の例においてはカップリング剤層6を形成する方法としてはLB膜法を用いた例を示したが、浸漬法を用いる場合であれば、導体層3の形成された基板1をカップリング剤溶液に浸漬した後さらに溶剤で洗浄することによって、所望の厚みのカップリング剤層6を形成することができる。
【0048】
【発明の効果】
以上のように、本発明の多層配線基板によれば、主導体層の上面および主導体層が形成された部位以外の絶縁フィルム層の上面にカップリング剤層を5分子層厚み以下に形成してあるため、カップリング剤層は分子の配列の乱れが小さく、主導体層およびカップリング剤層の分子同士が効率良く結合して均一で強固な層を形成し、孤立したカップリング剤の分子が発生しない。その結果、カップリング剤層の耐熱性が向上し、加熱工程でのカップリング剤層の蒸発がなくなり、主導体層と絶縁性接着剤層とがカップリング剤層によって強固に接着される。また、下層の絶縁フィルム層と絶縁性接着剤層との接着強度もより強固になり、加熱処理での絶縁フィルム層の膨れが生じなくなる。さらに、高温高湿バイアス試験等の耐環境試験においても同一面内の導体層の間に生じるマイグレーション等の発生が防止され耐環境信頼性が向上する。
【0049】
また、導体層は下地導体層および主導体層から構成されているため、主導体層は回路配線として良好な電気伝導性のよいもの、また下地導体層は絶縁フィルム層との接着強度が強固なものを必要とされる機能に応じて採用することができる。このため絶縁フィルム層と主導体層との接着強度を強固なものとすることができるとともに、絶縁フィルム層の上面を凹凸に粗化する必要がなくなり、細線な導体層を形成しても断線が発生することがなくなる。
【0050】
これにより、加熱処理により絶縁フィルム層の膨れが生じることがない、絶縁フィルム層の接着強度が強固な、高密度配線の可能な多層配線基板を得ることができる。
【0051】
さらに、本発明の多層配線基板によれば、下地導体層をクロムまたはクロムを主成分とする合金で、主導体層を銅または銅を主成分とする合金で、絶縁フィルム層をポリイミド樹脂で、絶縁性接着剤層をポリイミドシロキサン樹脂で、カップリング剤層をイソプロピルトリN−アミノエチルアミノエチルチタネートで形成した場合には、イソプロピルトリN−アミノエチルアミノエチルチタネートは銅・ポリイミド樹脂・ポリイミドシロキサン樹脂との濡れ性がよく強固に結合しやすく、また、分子構造的に耐熱性が高いため、それぞれの層間の接着強度が強固になるとともにより高温の加熱処理にも対応することができる。その結果、カップリング剤層の耐熱性が向上し、より高温の加熱処理でも絶縁フィルム層間におけるカップリング剤層の蒸発がなくなり、主導体層と絶縁性接着剤層とがカップリング剤層によって強固に接着される。
【0052】
また、クロムはポリイミド樹脂と化学的な結合を作るため、絶縁フィルム層の上面が平滑であっても接着強度が強固となる。このため絶縁フィルム層の上面の凹凸が不要になり、細線な導体層を形成しても断線が発生することがなくなるとともに、細線な主導体層を絶縁フィルム層により強固に接着することができる。
【0053】
これにより、より高温の加熱処理によっても絶縁フィルム層の膨れが生じることがない、絶縁フィルム層および導体層の接着強度がより一層強固で高密度配線が可能な多層配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の多層配線基板における導体層の一部を示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1・・・・基板
2・・・・多層配線部
3・・・・導体層
4・・・・絶縁フィルム層
5・・・・絶縁性接着剤層
6・・・・カップリング剤層
7・・・・主導体層
8・・・・下地導体層
Claims (2)
- 基板上に、有機樹脂から成り、上面に導体層が形成された複数の絶縁フィルム層を、絶縁性接着剤層で接着して多層に積層した多層配線基板であって、前記導体層が下地導体層および主導体層から成るとともに、該主導体層の上面および該主導体層が形成された部位以外の前記絶縁フィルム層の上面に厚みが5分子層厚み以下のカップリング剤層を形成したことを特徴とする多層配線基板。
- 前記下地導体層をクロムまたはクロムを主成分とする合金で、前記主導体層を銅または銅を主成分とする合金で、前記絶縁フィルム層をポリイミド樹脂で、前記絶縁性接着剤層をポリイミドシロキサン樹脂で、前記カップリング剤層をイソプロピルトリN−アミノエチルアミノエチルチタネートで形成したことを特徴とする請求項1記載の多層配線基板。
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