JP4586286B2 - エポキシ樹脂組成物及び半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、成形性、耐半田クラック性に優れ、特に薄型半導体装置に好適な半導体封止用エポキシ樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
IC、LSI等の半導体素子の封止方法としてエポキシ樹脂組成物のトランスファー成形が低コスト、大量生産に適した方法として採用されており、信頼性の点でもエポキシ樹脂や硬化剤であるフェノール樹脂の改良により特性の向上が図られてきた。しかし、近年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向において、半導体の高集積化も年々進み、又半導体装置の表面実装化が増加する中で、半導体封止用エポキシ樹脂組成物への要求はますます厳しいものとなってきている。このため、従来からのエポキシ樹脂組成物では解決できない問題点もでてきている。
その最大の問題点は、表面実装の採用により、半導体装置が半田浸漬、或いはリフロー工程で急激に200℃以上の高温にさらされ、吸湿した水分が爆発的に気化する際の応力により、半導体装置にクラックが発生したり、半導体素子、リードフレーム、インナーリード上の各種メッキされた各接合部分、或いはLead On Chip構造の半導体装置では、ポリイミドテープ接着剤等と樹脂組成物の硬化物との各界面で、剥離が生じ信頼性が著しく低下する現象である。
【0003】
更に、近年半導体装置の薄型化に伴い、半導体装置中に占める樹脂硬化物の厚みが一段と薄くなってきており、例えば、64M、256MDRAM用の半導体装置は、1mm厚のTSOPが主流となりつつあり、耐半田クラック性の要求はますます強くなっている。又これら薄型半導体装置には、成形時の充填性が良好で、金線変形が少なく、半導体素子やリードフレームの変形(半導体素子のシフトやダイパッドシフトと呼ぶ)がない樹脂組成物が要求され、そのため樹脂組成物は、成形時の流動性に優れることが必要である。
半田処理による信頼性の低下の改良と、成形時の流動性向上を両立するために、樹脂組成物中の溶融シリカ粉末の充填量を増加させることで低吸湿化、高強度化、低熱膨張化を達成し耐半田性を向上させると共に、低溶融粘度の樹脂を使用して、成形時低粘度で高流動性を維持させる手法が提案されている。
この手法におけるエポキシ樹脂としては、特に常温では固体で、溶融時は粘度が極端に低下する結晶性のエポキシ樹脂があり、特にその代表的な例として、ビフェニル型エポキシ樹脂が広く使用され始めている。一方低粘度樹脂を用いた樹脂組成物では、成形時に金型のエアベント部から樹脂組成物が漏れ出てしまう現象、いわゆるバリの発生が著しく、このため流動性の向上とバリの低減との両立も大きな課題となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、薄型半導体装置での充填性が良好で、金線変形、チップシフトやダイパッドシフトの少ない、即ち成形時に高流動性の特徴を有し、かつ成形時にバリの発生が少なく、更に耐半田クラック性等の硬化物特性の良好な半導体封止用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いて半導体素子を封止してなる半導体装置を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
[1] (A)融点が70〜150℃の結晶性エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂中に30重量%以上含むエポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)溶融シリカ粉末、(D)ガラス球及び(E)硬化促進剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、(C)溶融シリカ粉末が全樹脂組成物中に45〜70重量%含まれ、全溶融シリカ粉末中の球状シリカ粉末が70重量%以上で、平均粒子径が10〜25μm、比表面積が2.5〜7.5m2/g、湿式篩法による粒度分布が150μm以上が0.5重量%以下、75μm以上が2重量%以下、45μm以上が25重量%以下であり、かつレーザー回折式粒度分布計による粒度分布が48μm以下が70重量%以上、24μm以下が40重量%以上、12μm以下が20重量%以上、6μm以下が10重量%以上であり、(D)ガラス球が全樹脂組成物中に15〜45重量%含まれ、ガラス球の平均粒子径が47〜57μm、湿式篩法による粒度分布が150μm以上が0.5重量%以下、75μm以上が2重量%以下、45μm以上75μm以下が85重量%以上であり、かつレーザー回折式粒度分布計による粒度分布が48μm以下が10重量%以下、24μm以下が3重量%以下であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[2] 融点が70〜150℃の結晶性エポキシ樹脂が、一般式(1)、一般式(2)又
は一般式(3)から選ばれる一種以上である第[1]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
【0006】
【化4】
(式中のR1は炭素数1〜6のアルキル基を表し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。mは0〜4の整数。)
【0007】
【化5】
(式中のR2は炭素数1〜6のアルキル基を表し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。mは0〜4の整数。R3は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基を表し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0008】
【化6】
(式中のR4は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基から選択される原子又は基を表し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。R5は炭素数1〜6のアルキル基を表し、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。mは0〜4の整数。)
【0009】
[3] 結晶性エポキシ樹脂が、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)、もしくは4,4’−ビス(2,3−ヒドロキシプロピルオキシ)−2,2’−ジメチル−5,5’−ジターシャリブチルジフェニルスルフィドのグリシジルエーテル化物、又は、3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、もしくは3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベンのグリシジルエーテル化物の3種から選ばれる1種以上と4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、もしくは4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベンのグリシジルエーテル化物の6種から選ばれる1種以上との混合物である第[1]項又は[2]項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物、
[4] 第[1]項、[2]項又は[3]項のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置、
である。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる結晶性エポキシ樹脂としては種々の構造のものがあるが、融点としては、70〜150℃が好ましい。70℃未満だと得られたエポキシ樹脂組成物にべたつき等が発生し作業性が悪化するので好ましくない。150℃を越えると、樹脂組成物の製造時に樹脂が十分に溶融せず均一分散しないので、この溶融混合物を用いた樹脂組成物の成形品は不均一となり、強度が各部分によって異なるために半導体装置の特性が低下するので好ましくない。
結晶性エポキシ樹脂の融点は、示差走査熱量計を用いて、常温から昇温速度5℃/分で昇温した結晶融解の吸熱ピークの頂点の温度を示す。
これらの条件を満たす結晶性エポキシ樹脂としては、前記した一般式(1)のビフェニル型エポキシ樹脂、一般式(2)のビスフェノール型エポキシ樹脂、一般式(3)のスチルベン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0011】
一般式(1)のビフェニル型エポキシ樹脂としては、例えば4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルビフェニル、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルビフェニル、又は4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラターシャリブチルビフェニル等(置換位置の異なる異性体を含む)のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
【0012】
一般式(2)のビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば4,4’−メチレンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,3,6−トリメチルフェノール)、4,4’−エチリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2−メチルフェノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス[2−(1−メチルエチル)フェノール]、又は4,4’−ビス(2,3−ヒドロキシプロピルオキシ)−2,2’−ジメチル−5,5’−ジターシャリブチルジフェニルスルフィド等のグリシジルエーテル化物が挙げられる。
【0013】
一般式(3)のスチルベン型エポキシ樹脂としては、例えば3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベン等(置換位置の異なる異性体を含む)のグリシジルエーテル化物が挙げられる。これらは混合して用いても良い。
【0014】
本発明に用いられる結晶性エポキシ樹脂と併用可能なエポキシ樹脂としては、1分子内に2個以上のエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指し、例えばオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等挙げられ、これらは単独でも混合して用いても良い。
本発明に用いられる結晶性エポキシ樹脂の配合割合は、全エポキシ樹脂中に30重量%以上が望ましい。30重量%未満だと、結晶性エポキシ樹脂の特徴である、成形時の高流動性が発現しないので好ましくない。
【0015】
本発明に用いられるフェノール樹脂としては、1分子内に2個以上のフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー及びポリマー全般を指し、例えばフェノールノボラック樹脂、フェニレン骨格又はジフェニレン骨格等を有するフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、ナフトール樹脂等が挙げられ、これらは単独でも混合して用いても良い。これらのフェノール樹脂は、分子量、軟化点、水酸基当量等に制限なく使用することができるが、軟化点110℃以下の比較的低粘度のフェノール樹脂が好ましい。軟化点が110℃を越えるとエポキシ樹脂の低粘度化の効果が薄れるので好ましくない。
又全エポキシ樹脂中のエポキシ基とフェノール樹脂のフェノール性水酸基の当量比については、エポキシ基数/フェノール性水酸基数=0.9〜1.5の範囲が好ましく、この範囲を外れると、樹脂組成物の硬化性の低下、或いは硬化物のガラス転移温度の低下、耐湿信頼性の低下等が生じるので好ましくない。
【0016】
本発明に用いられる溶融シリカ粉末及びガラス球は充填材として使用される。溶融シリカとしては、例えば火炎中に溶融された天然シリカ、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等を加水分解して得られる合成シリカを指す。又その形状・製法により球状シリカと破砕シリカに分類される。ガラス球としてはBaO−TiO2系ガラス、SiO−BaO−B2O3系ガラス、SiO−B2O3−Al2O3系ガラス等があり、融点がシリカより低いために加工しやすく、シリカに比較して粒径の揃った球状品を製造することが容易である。
一般に半導体封止樹脂組成物には溶融シリカ粉末が使用されるが、シリカの場合、融点が約1700度と高いため、45um以上の比較的大きな粒径では溶融が不十分となり、いびつな形状の粒子の割合が増加する。いびつな粒子の存在は樹脂組成物の成形時の溶融粘度を増加し、金型内の流動性を低下させる。流動性を高めるには広い粒度分布を持つ方が最密充填の点から望ましいが、溶融シリカでは、いびつな粒子による流動性低下を防止するため、45um以上の粒子の割合を少なくしている。一方、ガラスは700〜1200℃といったシリカより低温で溶融するため、45um以上でも球状化が容易である。ガラス球をシリカと併用することにより、シリカで不足している45um以上の粒度分布を補い、幅広い粒度分布を与えることにより、樹脂組成物の流動性を高めることが出来る。
本発明は、溶融シリカ粉末とガラス球の粒度分布とその配合比を特定の範囲内とすることにより、成形性の向上に大きな効果があることを見出したので、以下に詳細に説明する。
【0017】
本発明に用いられる溶融シリカ粉末は、全溶融シリカ粉末中の球状シリカ粉末が70重量%以上で、平均粒子径が10〜25μm、比表面積が2.5〜7.5m2/g、湿式篩法による粒度分布が150μm以上が0.5重量%以下、75μm以上が2重量%以下、45μm以上が25重量%以下であり、かつレーザー回折式粒度分布計による粒度分布が48μm以下が70重量%以上、24μm以下が40重量%以上、12μm以下が20重量%以上、6μm以下が10重量%以上のものである。
又本発明に用いられるガラス球は、平均粒子径が47〜57μm、湿式篩法による粒度分布が150μm以上が0.5重量%以下、75μm以上が2重量%以下、45μm以上75μm以下が85重量%以上であり、かつレーザー回折式粒度分布計による粒度分布が48μm以下が10重量%以下、24μm以下が3重量%以下のものである。
最近の薄型半導体装置は1mmから1.4mmの厚みが主流となり、半導体装置中に占める素子、リードフレームの合計厚み500〜800μmを差し引いた樹脂組成物の硬化物の厚さは、上下それぞれ100〜450μm程度となってきている。この薄い流路に樹脂組成物を充填していくためには、溶融シリカ粉末、ガラス球の最大粒子径が150μm以上のものが実質的に存在ないことが必要である。更に最近広く採用されつつあるLead On Chip構造のDRAM用TSOP半導体装置では、半導体素子とインナーリードとの間を50〜150μm厚のポリイミドテープで接着しており、この厚みのギャップを樹脂組成物で充填しないと可撓性の高いポリイミドテープが変形し、半導体素子がシフトし易くなる。半導体素子のシフトを防止するためには、粒子径75μm以上の溶融シリカ粉末の存在割合も極力少ないことが望ましい。
具体的には、粒子径150μm以上の粒子が全溶融シリカ粉末の0.5重量%と全ガラス球の0.5重量%を越えると、成形時に未充填が発生し好ましくない。又粒子径75μm以上の粒子が全溶融シリカ粉末の2重量%と全ガラス球の2重量%を越えると、チップシフトを生じ易くなり好ましくない。
【0018】
更に樹脂組成物の成形時の溶融粘度を低減し、金型内の流動性を高めるためには、粒子径が45μm以上の溶融シリカ粉末が、全溶融シリカ粉末中25重量%以下で、粒子径6μm以下の溶融シリカ粉末が、全溶融シリカ粉末中10重量%以上存在し、かつ全溶融シリカ粉末中に球状シリカ粉末を70重量%以上含み、全溶融シリカ粉末の平均粒子径を10〜25μm、比表面積が2.5〜7.5m2/gとし、ガラス球の平均粒子径が47〜57μm、湿式篩法による粒度分布が150μm以上が0.5重量%以下、75μm以上が2重量%以下、45μm以上75μm以下が85重量%以上であり、かつレーザー回折式粒度分布計による粒度分布が48μm以下が10重量%以下、24μm以下が3重量%以下のもので、溶融シリカ粉末が全樹脂組成物中に45〜70重量%含まれ、ガラス球が全樹脂組成物中に15〜45重量%含まれることが必要である。この範囲を外れると、樹脂組成物の流動性が低下し、半導体素子のシフト等の半導体装置内部の半導体素子の変形が起こる他、半導体素子を構成する各部材との濡れ性が低下するため、各部材と樹脂組成物の硬化物との界面の接着力が著しく低下したり、半導体装置の吸湿率が増大したりして、吸湿後の半田処理で界面剥離や半導体装置のクラックを生じ易くなり好ましくない。
ところで、金型のエアベント部のギャップ厚みが通常5〜15μmであるために粒子径が6μm以下の溶融シリカ粉末はこのエアベント部のギャップから流出し易く、このため成形品にバリが発生しやすいこととなる。
【0019】
バリの発生を防止するためには、このエアベント部のギャップからの溶融シリカ粉末及び樹脂成分の流出を防止することが必要であり、このためにはエアベント部のギャップに溶融シリカ粉末が密に充填して(最密充填と呼ぶ)、エアベントを塞ぐことが効果的である。即ち、エアベント部のギャップより粒子径の大きい大粒子径の粒子の充填の隙間を、中粒子径の粒子が充填し、更に、大粒子径と中粒子径による充填でなお残された隙間を、小粒子径の粒子が充填する最密充填モデルを形成することにより、小粒子径の粒子及び低粘度樹脂成分が成形圧によりエアベント部から流出するのを防止することができる。
この最密充填モデルを形成するためには、粒子径6μm以下の粒子が、全溶融シリカ粉末中10重量%以上存在する場合は、粒子径12μm以下の粒子が20重量%以上、粒子径24μm以下の粒子が40重量%以上、粒子径48μm以下の粒子が70重量%以上であることが必要である。この範囲を外れる粒子径分布の溶融シリカ粉末では、バリを効果的に防止できず、流動性も低下する。
本発明の溶融シリカ粉末、ガラス球の粒子径及び比表面積の測定方法としては、粒子径150μm以上、75μm以上、45μm以上の粒子の存在割合の測定には、湿式篩法による篩残粒子の重量測定法を、又粒子径48μm以下、24μm以下、12μm以下、6μm以下の粒子の存在割合及び平均粒径の測定には、レーザー回折式粒度分布計(シーラス社・製、モデル715)を、更に比表面積の測定には比表面積測定装置(ユアサアイオニクス社・製、MONOSORB)を用いた。本発明の溶融シリカ粉末及びガラス球の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布計(シーラス社・製、モデル715)での値である。
【0020】
本発明で用いられる硬化促進剤としては、前記エポキシ樹脂とフェノール樹脂との架橋反応を促進するものであればよく、例えば1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミジン系化合物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの硬化促進剤は単独でも混合して用いても差し支えない。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、(A)〜(E)成分の他、必要に応じて臭素化エポキシ樹脂、酸化アンチモン、リン化合物等の難燃剤、酸化ビスマス水和物等の無機イオン交換体、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤、シリコーンオイル、シリコーンゴム等の低応力剤、天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤、酸化防止剤等の各種添加剤を配合することができる。
本発明の樹脂組成物は、(A)〜(E)成分及びその他の添加剤等をミキサーを用いて常温混合し、ロール、ニーダー、押出機等の混練機で溶融混練し、冷却後粉砕する一般的な方法で得られる。
本発明の樹脂組成物を用いて、半導体素子等の電子部品を封止し、半導体装置を製造するには、トランスファーモールド、コンプレッションモールド、インジェクションモールド等の成形方法で成形硬化すればよい。
【0022】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
配合割合は重量部とする。
なお、表1に示す溶融シリカ粉末、ガラス球の粒度分布は、粒子径150μm以上、75μm以上、45μm以上の粒子の存在割合は、前記した湿式篩法(測定1という)により、又48μm以下、24μm以下、12μm以下、6μm以下の粒子の存在割合は、前記したレーザー回折式粒度分布計(測定2という)で測定した。更に比表面積は、前記比表面積測定装置を用いて測定した。
各成分をミキサーを用いて常温で混合した後、表面温度が90℃と45℃の2本ロールを用いて30回混練し、冷却後粉砕して、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0023】
評価方法
スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパイラルフロー測定用の金型を用いて、金型温度175℃、注入圧力70kg/cm2、硬化時間2分で測定した。単位はcm。
チップシフト量:32ピンのLead On Chip構造TSOP(パッケージサイズは10×21mm、厚み1.0mm、シリコンチップサイズは9×18mm、リードフレームは42アロイ製、チップとインナーリード間は厚み100μmのポリイミドテープで接着されている)を金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分でトランスファー成形を行った。成形品を樹脂組成物の注入方向に沿ってパッケージ中心で切断し、断面を観察することでチップ両端のパッケージ成形品下面からの距離を求め、その差をチップシフト量としてμm単位で表示した。
バリの長さ:チップシフト量評価で成形した32ピンTSOPパッケージに発生するバリの長さを測定し、mm単位で表示した。
耐半田クラック性:100ピンTQFP(パッケージサイズは14×14mm、厚み1.4mm、シリコンチップサイズは8.0×8.0mm、リードフレームは42アロイ製)を金型温度175℃、注入圧力75kg/cm2、硬化時間2分でトランスファー成形し、175℃、8時間で後硬化させた。得られた半導体パッケージを85℃、相対湿度85%の環境下で168時間放置し、その後240℃の半田槽に10秒間浸漬した。顕微鏡でパッケージを観察し、外部クラック[(クラック発生パッケージ数)/(全パッケージ数)×100]を%で表示した。又チップと樹脂組成物の硬化物との剥離面積の割合を超音波探傷装置を用いて測定し、剥離率[(剥離面積)/(チップ面積)×100]として、5個のパッケージの平均値を求め、%で表示した。
吸湿率:50mmφ、2mm厚の成形円盤を85℃、相対湿度85%の環境下に168時間し、処理前後の重量増加率により吸湿率を算出した。
【0024】
実施例2〜6、比較例1〜9
表1、表2に示す割合で各成分を配合し、実施例1と同様にして樹脂組成物を得て、実施例1と同様にして評価した。結果を表1、表2に示す。
なお、実施例2〜6、比較例1〜7で用いたエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の性状を以下に示す。
オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量196、軟化点62℃)
実施例4に用いた結晶性エポキシ樹脂は、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベンを主成分とする樹脂60重量%と4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−5−ターシャリブチル−2,3’,5’−トリメチルスチルベンを主成分とする樹脂40重量%との混合物である(エポキシ当量209、融点120℃、以下エポキシ樹脂Bという)。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【発明の効果】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いると、薄型半導体装置の充填性に優れ、かつバリの発生がなく、半導体装置の封止が可能となる。更にこれを用いて封止された半導体装置は、耐半田クラック性に優れている。
Claims (4)
- (A)融点が70〜150℃の結晶性エポキシ樹脂を全エポキシ樹脂中に30重量%以上含むエポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂、(C)溶融シリカ粉末、(D)ガラス球及び(E)硬化促進剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、(C)溶融シリカ粉末が全樹脂組成物中に45〜70重量%含まれ、全溶融シリカ粉末中の球状シリカ粉末が70重量%以上で、平均粒子径が10〜25μm、比表面積が2.5〜7.5m2/g、湿式篩法による粒度分布が150μm以上が0.5重量%以下、75μm以上が2重量%以下、45μm以上が25重量%以下であり、かつレーザー回折式粒度分布計による粒度分布が48μm以下が70重量%以上、24μm以下が40重量%以上、12μm以下が20重量%以上、6μm以下が10重量%以上であり、(D)ガラス球が全樹脂組成物中に15〜45重量%含まれ、ガラス球の平均粒子径が47〜57μm、湿式篩法による粒度分布が150μm以上が0.5重量%以下、75μm以上が2重量%以下、45μm以上75μm以下が85重量%以上であり、かつレーザー回折式粒度分布計による粒度分布が48μm以下が10重量%以下、24μm以下が3重量%以下であることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 融点が70〜150℃の結晶性エポキシ樹脂が、一般式(1)、一般式(2)又は一般式(3)から選ばれる一種以上である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 結晶性エポキシ樹脂が、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4’−(1−メチルエチリデン)ビス(2,6−ジメチルフェノール)、もしくは4,4’−ビス(2,3−ヒドロキシプロピルオキシ)−2,2’−ジメチル−5,5’−ジターシャリブチルジフェニルスルフィドのグリシジルエーテル化物、又は、3−ターシャリブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、もしくは3−ターシャリブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベンのグリシジルエーテル化物の3種から選ばれる1種以上と4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、もしくは4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジターシャリブチル−5,5’−ジメチルスチルベンのグリシジルエーテル化物の6種から選ばれる1種以上との混合物である請求項1、又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
- 請求項1、2又は3のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなることを特徴とする半導体装置。
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