JP3192953B2 - 半導体封止用エポキシ樹脂成形材料及びその製造方法 - Google Patents

半導体封止用エポキシ樹脂成形材料及びその製造方法

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JP3192953B2 JP34157995A JP34157995A JP3192953B2 JP 3192953 B2 JP3192953 B2 JP 3192953B2 JP 34157995 A JP34157995 A JP 34157995A JP 34157995 A JP34157995 A JP 34157995A JP 3192953 B2 JP3192953 B2 JP 3192953B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成形性、半田耐熱
性に優れた半導体封止用エポキシ樹脂成形材料及びその
製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】IC、LSI等の半導体素子の封止方法
としてエポキシ樹脂成形材料のトランスファー成形によ
る方法が低コスト、大量生産に適した方法として採用さ
れ、信頼性の面でもエポキシ樹脂や硬化剤であるフェノ
ール樹脂の改良により向上が図られてきた。しかし、近
年の電子機器の小型化、軽量化、高性能化の市場動向に
おいて、半導体の高集積化も年々進み、また半導体パッ
ケージの表面実装化が促進されるなかで、半導体封止材
料への要求は益々厳しいものとなってきている。このた
め、従来からの封止材料では解決できない問題点もでて
きている。その最大の問題点は、半導体パッケージの表
面実装の採用によりパッケージが半田浸漬、あるいはリ
フロー工程で急激に200℃以上の高温にさらされ、こ
のためにパッケージが割れたり、チップ、リードフレー
ム、インナーリード上の各種メッキされた接合部分、あ
るいはLOC構造のパッケージの場合はポリイミドテー
プ接着剤などと封止樹脂との各界面で剥離が生じて信頼
性が著しく低下する現象である。
【0003】さらに、近年パッケージの薄型化に伴い、
パッケージ中に占める半導体封止材料の厚みが一段と薄
くなってきており、64M,256MDRAM用のパッ
ケージは1mm厚のTSOPが主流となりつつある。こ
れら薄型パッケージでは封止材料の成形時の金型内の流
動性が優れていること、また成形後の強度が大きいこと
が特に必要となる。半田処理による信頼性不良を改良す
るために、エポキシ樹脂成形材料は低溶融粘度の樹脂を
使用し、溶融シリカの充填量を増加させることで、成形
時の溶融成形材料が低粘度で高流動性を維持したまま低
吸湿化、高強度化、低熱膨張化を達成し半田耐熱性を向
上させる手法が一般的となりつつある。エポキシ樹脂と
しては、特に常温で固体で、溶融時の粘度が極端に低下
する結晶性のエポキシ樹脂が広く使用され始めている
(特開平5−175364、特開平5−343570、
特開平6−80763各号公報等)。
【0004】溶融シリカを高充填するためには球状の溶
融シリカを用い、またその粒度分布を可能な限り広くす
ることが封止材料の成形時流動性を向上するための有効
な手段であることは良く知られている。ところが、球状
溶融シリカはその表面が平滑であるため、成形硬化後の
材料強度が低下し、半田耐熱性もそれに伴い低下する。
また、溶融シリカ粉末の充填量を増大させるために低粘
度のエポキシ樹脂やフェノール樹脂硬化剤を用いる場合
は、その硬化物の強度が低下する傾向が顕著でありその
改良が必要となる。特にTSOPに代表される薄型パッ
ケージでは、強度低下は成形時の離型の際のランナー折
れやパッケージの欠け等成形性不良の原因となり、また
半田処理時のパッケージクラック発生など信頼性低下を
招く。硬化物の強度を改良するためには、球状シリカと
エポキシ樹脂、硬化剤樹脂との接着力の向上が必要であ
り、このためシランカップリング剤による溶融シリカの
表面処理が必須である。ところが、溶融シリカと樹脂成
分との接着性を向上させる高い活性をもつシランカップ
リング剤を処理に用いると溶融シリカ粉末の凝集が起こ
り易くなる。また、溶融シリカ粉末の粒径が微細な粒子
ほど凝集が起こり易いが、成形時の流動性確保のために
は微細粒子の存在は必要不可欠である。この凝集粒子が
成形時に金型のパッケージ充填口(ゲート)を塞ぐため
充填不良が発生する。特にTSOP等の薄型パッケージ
ではゲート径が小さいため、僅かの凝集物の生成でも未
充填の発生する割合が大きくなり製造歩留まりを低下さ
せている。
【0005】一方、シランカップリング剤はリードフレ
ーム、チップ、ポリイミド、各種メッキ面との接着性を
向上させる効果を有することも良く知られている(特開
昭62−116688号公報)。ところが、この目的の
ためのシランカップリング剤はシリカ表面に作用すると
各種接着界面上に効率的に移行することが困難となるた
め十分な目的を達成することができない。このため強度
向上と接着性向上の両立のため、シランカップリング剤
の溶融シリカ粉末への表面処理とシランカップリング剤
の添加混合を併用する方式も既に提案されている(特開
昭63−43919号公報)。しかし、両者を両立する
ための最適のシランカップリング剤の組み合わせ及び上
記シリカの凝集を防止する製造方法は確立されていない
のが現状であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、溶融シリカ
粉末をシランカップリング剤で表面処理することによ
り、各種界面の接着力を向上させ、成形時未充填の原因
である溶融シリカ粉末の凝集物を低減し、かつ効果的に
硬化物の強度向上を図った半導体封止用エポキシ樹脂成
形材料及びその製造方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、(A)融点が
50〜150℃で、かつ1分子中にエポキシ基を2個以
上有する結晶性エポキシ樹脂を総エポキシ樹脂中に70
重量%以上含むエポキシ樹脂、(B)150℃での溶融
粘度が5ポイズ以下のフェノール樹脂硬化剤、(C)硬
化促進剤、(D)総樹脂組成物中にアミノ基含有シラン
カップリング剤で表面処理された溶融シリカ粉末を76
〜94重量%含み、(E)エポキシ基含有シランカップ
リング剤及び/またはメルカプト基含有シランカップリ
ング剤を必須成分とする半導体封止用エポキシ樹脂成形
材料において、(D)成分の溶融シリカ粉末の表面を処
理したアミノ基含有シランカップリング剤と(E)成分
のシランカップリング剤との重量比が20/80〜80
/20の範囲にあることを特徴とする半導体封止用エポ
キシ樹脂成形材料であり、また溶融シリカ粉末をあらか
じめアミノ基含有シランカップリング剤で表面処理し、
その際に加水分解により生成されるアルコール成分の残
存量を10重量%以下にし、粒径150μm以上の粒子
含有率が0.5重量%以下、粒径75μm以上の粒子含
有率が5%以下となるように篩分し、次いで該(D)溶
融シリカ粉末を76〜94重量%含み、(A)融点が5
0〜150℃で、かつ1分子にエポキシ基を2個以上有
する結晶性エポキシ樹脂を総エポキシ樹脂中に70重量
%以上含むエポキシ樹脂、(B)150℃での溶融粘度
が5ポイズ以下のフェノール樹脂硬化剤、(C)硬化促
進剤、及び(E)エポキシ基含有シランカップリング剤
及び/またはメルカプト基含有シランカップリング剤を
必須成分とする各成分と共に添加、混合することを特徴
とする半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法で
ある。
【0008】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いられる(A)成分のエポキシ樹脂は融点が
50〜150℃であり、かつ1分子中にエポキシ基を2
個以上有する結晶性エポキシ樹脂を総エポキシ樹脂中に
70重量%以上含むエポキシ樹脂である。結晶性エポキ
シ樹脂は融点以下では固形であるが、融点を越える温度
では溶融し、極めて低粘度の液状物となるため、エポキ
シ樹脂成形材料中の溶融シリカの含有量を多くしても成
形時の溶融粘度が低く、流動性に優れ、薄型パッケージ
金型キャビティへの充填性に優れ、また素子の金線変形
やリードフレームの変形を防止することができる。しか
しながら、融点が50℃未満であるとエポキシ樹脂成形
材料を製造するため他の成分と混合する際に粘度が下が
り混練作業性が悪く、また得られる成形材料もブロッキ
ング、固結等を生じ易く生産性に劣る。一方、融点が1
50℃を越えるとエポキシ樹脂成形材料を加熱混練する
際にエポキシ樹脂を溶融するために高温が必要になり、
そのため混練中に反応が進行し、成形時の流動性が低下
してしまう。融点は示差走査型熱量計による結晶融解時
の吸熱ピークを昇温速度5℃/minで測定する。
【0009】この結晶性エポキシ樹脂の例として、3,
3’,5,5’ーテトラメチルビフェノールジグリシジ
ルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチルビスフ
ェノールFジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグ
リシジルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル
エーテルジグリシジルエーテル、スチルベン骨格を有す
る各種誘導体のエポキシ化物などが挙げられるが、これ
らに限定されるものではない。この結晶性エポキシ樹脂
の使用量は、総エポキシ樹脂量の70重量%以上の使用
が望ましい。70重量%未満ではエポキシ樹脂の溶融粘
度の低減効果が十分でなく、成形時の流動性が低下して
しまう。この結晶性エポキシと併用可能なエポキシ樹脂
とはエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマ
ー全般を指し、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹
脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフ
タレン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキ
シ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール類のエポ
キシ化樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるもの
ではない。また、これらのエポキシ樹脂は単独もしくは
併用しても差し支えない。
【0010】本発明の(B)成分であるフェノール樹脂
硬化剤は、150℃での溶融粘度が5ポイズ以下である
ことを特徴とし、溶融粘度が150℃で5ポイズを越え
ると、得られるエポキシ樹脂成形材料の溶融粘度が上昇
するために成形時の流動性が低下し、金型内の成形品の
未充填や金線変形、リードフレーム変形(いわゆるパッ
ドシフト)が発生する。本発明でのフェノール樹脂の1
50℃での溶融粘度の測定には、ICI粘度計を用い
る。(B)成分のフェノール樹脂硬化剤としては、エポ
キシ樹脂と硬化反応を行い架橋構造を形成することがで
きるフェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマ
ー、ポリマー全般を指し、具体的には、フェノールノボ
ラック樹脂、キシリレン変性フェノール樹脂、テルペン
変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノ
ール樹脂、ビスフェノールA、トリフェノールメタン等
が例示されるが、これらに限定されるものではない。こ
れらのフェノール樹脂硬化剤も単独もしくは併用で用い
ることが可能である。また、各種フェノール樹脂硬化剤
を併用した場合の150℃で5ポイズ以下という溶融粘
度は、それぞれ単独のフェノール樹脂の溶融粘度の値を
指すものでなく、使用した全てのフェノール樹脂の溶融
混合物の溶融粘度を指す。半田耐熱性の点から特に効果
のあるフェノール樹脂硬化剤としては、特にp−もしく
はm−キシリレン構造で変性されたフェノール樹脂であ
り、通常はフェノールとp−キシリレングリコールジメ
チルエーテル、或いはm−キシリレングリコールジメチ
ルエーテルとの重縮合反応により合成される。この構造
のフェノール樹脂は通常のフェノールノボラック樹脂に
比べ、熱時の低弾性率化、リードフレーム、チップ等基
材との高密着性、低吸水などの特長を有し、半田浸漬時
の熱応力の低減とパッケージクラック発生の防止に効果
的である。
【0011】(C)成分の硬化促進剤としては前記エポ
キシ樹脂とフェノール樹脂硬化剤との架橋反応の触媒と
なり得るものを指し、具体的には1,8−ジアザビシク
ロ(5,4,0)ウンデセン−7等のアミジン系化合
物、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォ
ニウム・テトラフェニルボレート塩等の有機リン系化合
物、2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物等
が例示できるがこれらに限定されるものではない。これ
らの硬化促進剤は単独であっても、また併用しても差し
支えない。
【0012】(D)成分のあらかじめアミノ基含有シラ
ンカップリング剤で表面処理された溶融シリカ粉末で用
いられる溶融シリカ粉末は破砕状、球状のどちらでも使
用可能であるが、シリカ含有量を高め、かつエポキシ樹
脂成形材料の溶融粘度の上昇を抑えるためには球状シリ
カを主に用いる方が好ましい。さらに球状シリカの配合
量を高めるためには、球状シリカの粒度分布をより広く
とるよう調整することが望ましい。溶融シリカ粉末の配
合量は成形性と半田耐熱性とのバランスから総エポキシ
樹脂成形材料中に76〜94重量%含有することが望ま
しい。溶融シリカの配合量が76重量%未満であると、
半田耐熱性が不十分であり、一方94重量%を越える
と、溶融粘度の低い樹脂を用いても成形時の流動性が低
下して、金型内の成形品の未充填や金線変形、リードフ
レーム変形(いわゆるパッドシフト)が発生する。
【0013】処理に用いられるシランカップリング剤は
アミノ基含有シランカップリング剤が成形材料硬化物の
強度向上には必須である。具体的には、γ−アミノプロ
ピルトリエトキシシラン,N−フェニル−γ−アミノプ
ロピルトリメトキシシラン、N,N−ジエチル−γ−ア
ミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピル
メチルジエトキシシラン、p−アミノフェニルトリメト
キシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピ
ルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−ア
ミノプロピルメチルジメトキシシラン等が例示できる
が、これらに限定されるものではない。また、処理に際
し他のカップリング剤も必要に応じて併用が可能である
が、硬化物の強度を向上する効果を達成するためには、
処理に用いるカップリング剤成分の全体に対し75重量
%以上がアミノ基含有シランカップリング剤であること
が望ましい。併用されるシランカップリング剤としては
エポキシ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含
有シランカップリング剤、ビニル基含有シランカップリ
ング剤、アルキル基含有シランカップリング剤等を適宜
配合が可能である。
【0014】溶融シリカ粉末をアミノ基含有シランカッ
プリング剤であらかじめ処理するに際しては、溶融シリ
カ粉末をヘンシェルミキサー等の撹拌機中で撹拌しなが
ら下シランカップリング剤を噴霧するとか、あるいはボ
ールミルで溶融シリカ粉末とシランカップリング剤を混
合する等通常の方法で可能である。ここで云うあらかじ
め表面処理するとは、溶融シリカ粉末をアミノ基含有シ
ランカップリング剤で処理して、両者の間の反応が実質
的に終了した後に上記処理された溶融シリカ粉末に他の
成分を配合、混合することを指す。
【0015】アミノ基含有シランカップリング剤は高活
性なため溶融シリカと比較的低温、短時間で反応する。
このため表面をアミノ基含有シランカップリング剤で処
理された溶融シリカ粉末同士の間で反応が進行し、粒子
間で接着・固化し、硬い凝集粒子が発生する。これらの
凝集粒子は前述したように、成形材料が成形時に金型に
流動・充填する際にゲート口を塞ぎ充填不良の原因とな
る。粒子の凝集を防止することはアミノ基含有シランカ
ップリング剤の処理方法の改良では困難であり、このた
め凝集物を篩分して除去することが必要である。しか
し、アミノ基含有シランカップリング剤と溶融シリカ粉
末との反応が実質的に終了していない時点で篩分しても
篩分後に更に凝集が発生する。また、上記反応が終了し
ていない時点でエポキシ樹脂成形材料の他の成分を配合
すると、アミノ基含有シランカップリング剤が樹脂組成
物中に移行し、エポキシ樹脂とフェノール樹脂硬化剤と
の反応を室温もしくは低温の成形材料保存状態でも促進
するため、成形時の流動性が低下する等のいわゆる保存
性の不良を発生する。
【0016】さらに、(E)成分であるエポキシ基含有
シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップ
リング剤は半導体パッケージ中の各構成成分とエポキシ
樹脂成形材料との界面の接着性向上のために配合されて
いるが、上記溶融シリカ粉末とアミノ基含有シランカッ
プリング剤との反応が終了していない時点で(E)成分
のシランカップリング剤を添加するとこれらがシリカ表
面に被覆或いは吸着され、アミノ基含有シランカップリ
ング剤に置き換わって反応し、目標とする硬化物強度が
得られない上に各種界面での接着性向上も効果が低減す
る。従ってアミノ基含有シランカップリング剤と溶融シ
リカ粉末との反応の終了を測定することが、あらかじめ
表面処理したシリカを有効に用いるためには必須であ
る。このため、種々の方法を検討したところ、定量が簡
便で、しかも処理溶融シリカの凝集との相関や各界面の
接着力との相関が極めて良好に得られる方法として、溶
融シリカ粉末の表面処理に用いられるシランカップリン
グ剤から生成するアルコール成分の残存率を測定するこ
とを見いだした。溶融シリカ粉末の表面処理に用いられ
るシランカップリング剤から生成するアルコール成分と
は、シランカップリング剤のアルコキシ基が加水分解し
て発生するアルコールのことである。一旦加水分解によ
りシラノール基に変化したシランカップリング剤成分は
極めて容易に溶融シリカ表面のSiOH基と縮合反応し
てカップリング剤残基が溶融シリカ表面に結合する。一
方発生したアルコール成分は溶融シリカに吸着されるこ
となく、容易に揮発する。このため処理シリカを加熱す
ることで発生するアルコールを例えばガスクロマトグラ
フで定量すれば未反応のシランカップリング剤成分が定
量できる。加熱条件は未反応シランカップリング剤と溶
融シリカ表面とが反応する温度であればよく、一般には
短時間の測定を考慮して150℃以上であれば充分であ
る。
【0017】シランカップリング剤に生成するアルコー
ル成分の残存量とは、全てのアルコキシ基が反応したと
きに発生するアルコールの重量に対する処理溶融シリカ
から発生する分析で得られたアルコールの重量の比を指
す。γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(分子量2
21)を例に挙げると、この化合物1モルからは3モル
のエタノール(分子量46)が発生する。すなわち溶融
シリカ粉末の処理に使用した上記シランカップリング剤
が221gとすれば、すべてのエトキシ基が反応すると
138gのエタノールが発生する。仮に処理シリカの残
存エタノールを測定したところ6.9gと定量されたと
したら、この残存量は5.0重量%で表される。残存量
が10重量%を越えるとこの処理シリカを篩分しても、
更に時間の経過により凝集粒子の発生が起こる。またア
ルコール残量が10重量%を越える処理シリカに他の組
成物を配合して成形材料を調製しても、成形材料硬化物
の強度低下やパッケージ構成成分との接着力低下を起こ
す。残存量は好ましくは5重量%以下が本発明の目的を
更に効果的に達成できる。残存量を10重量%以下とす
るためには処理溶融シリカ粉末を適当な温度で一定時間
放置すれば良い。アミノ基含有シランカップリング剤
は、比較的低温かつ短時間でシランカップリング剤と溶
融シリカ粉末とが反応するため、処理条件としては25
℃では約2日、80℃では約4時間、100℃では約1
時間、120℃では約30分間で充分である。溶融シリ
カ粉末を処理したシランカップリング剤から生成するア
ルコール成分の残存量が10重量%以下になってから処
理溶融シリカ粉末から凝集粒子を除去するため篩分を行
う。薄型の半導体パッケージを封止し、これに良好な充
填性を付与するには粒径150μm以上の粒子を0.5
重量%以下、及び粒径75μm以上の粒子を5重量%以
下とすることが好ましい。このためには一例として目開
き140μmのメッシュで処理シリカを篩分するのが適
当である。
【0018】(E)成分のエポキシ基含有シランカップ
リング剤としては、具体的にはγ−グリシドキシプロピ
ルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリ
エトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエ
トキシシラン、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)
エチルトリメトキシシラン等が例示される。またメルカ
プト基含有シランカップリング剤としてはγ−メルカプ
トプロピルトリメトキシシランが代表として挙げられ
る。また、上記エポキシ基含有シランカップリング剤と
メルカプト基含有シランカップリング剤は併用が可能で
あり、更に他のシランカップリング剤との併用も可能で
ある。併用可能な他のシランカップリング剤としては、
(D)成分で例示した各種アミノ基含有シランカップリ
ング剤、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキ
シプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプ
ロピルトリエトキシシラン等が例示されるがこの限りで
はない。
【0019】エポキシ基含有シランカップリング剤及び
メルカプト基含有シランカップリング剤はリードフレー
ム、銀メッキをはじめとする各種メッキ面、シリコンチ
ップ、シリコンチップ表面上のポリイミド被覆面、LO
C構造パッケージで使用されるポリイミドテープ接着剤
等のパッケージ構成成分とエポキシ樹脂成形材料との各
界面での接着力向上に有効である。そのため他のシラン
カップリング剤と併用する場合には(E)成分のエポキ
シ基含有シランカップリング剤とメルカプト基含有シラ
ンカップリング剤のうち少なくとも一方のシランカップ
リング剤は全シランカップリング剤の50重量%以上、
好ましくは70重量%以上が必要である。50重量%未
満では各種界面に対する接着力向上の効果が得られな
い。(D)成分の溶融シリカ粉末の表面処理に用いられ
るアミノ基含有シランカップリング剤の量と(E)成分
のエポキシ基含有又はメルカプト基含有シランカップリ
ング剤の量の重量比は20/80〜80/20の範囲で
用いられる。(D)成分で用いられるアミノ基含有シラ
ンカップリング剤が20未満であると強度向上の効果が
得られず、また80を越えると各種の界面での接着力向
上への効果が得られず、また常温での保存で粘度上昇が
著しく保存性が低下する。
【0020】本発明の半導体封止用エポキシ樹脂成形材
料は(A)から(E)までの成分以外にも必要に応じて
臭素化エポキシ樹脂、三酸化アンチモン等の難燃剤、カ
ーボンブラックに代表される着色剤、天然ワックス及び
合成ワックス等の離型剤、シリコーンオイル等の低応力
添加剤が適宜配合可能である。配合に際しては(E)成
分のシランカップリング剤は、(D)成分のあらかじめ
アミノ基含有シランカップリング剤で表面処理された溶
融シリカ粉末及び他の配合物と同時に混合することがで
きる。(D)成分の処理シリカがアミノ基含有シランカ
ップリング剤から生成するアルコール成分の残存率が1
0重量%以下までになり充分反応が進んだ段階であれ
ば、(E)成分のシランカップリング剤が溶融シリカ粉
末の表面に反応、あるいは吸着されることがないため硬
化物の強度低下を引き起こさず、また溶融シリカの凝集
の発生を防止できる。更に成形時に効率的に各種界面に
移行できるため接着力の向上を実現できる。成形材料化
するに際しては、加熱ニーダや熱ロールにより全組成物
を加熱混練し、続いて冷却、粉砕することで目的とする
半導体封止用エポキシ樹脂成形材料が得られる。
【0021】
【実施例】以下、本発明を実施例で具体的に説明する。 《実施例1》平均粒径15μm,比表面積が8.5m2
/g、粒径75μm以上の粒子の含有量が1.5重量%
の球状溶融シリカ粉末860gをヘンシェルミキサーに
投入し、60rpmの回転速度で撹拌下、γ−アミノプ
ロピルトリエトキシシラン5gを溶融シリカの表面上に
噴霧した。撹拌を15分間続けた後、溶融シリカ粉末を
取り出し、恒温槽で100℃、1時間熱処理を行った。
得られた処理溶融シリカ粉末をパージ&トラップ装置で
175℃、15分間ヘリウムガスで揮発分を追い出しな
がら加熱した。このとき発生した揮発分を−80℃でト
ラップし、トラップした成分を急速加熱してGC/MS
(ガススペクトル−質量分析装置)を用いて揮発分の定
性及び定量を行った。発生したエタノールは処理溶融シ
リカ粉末に対し重量で50ppmであり、これは処理し
たγ−アミノプロピルトリエトキシシランから生成する
エタノールの1.4重量%に相当する。得られた処理溶
融シリカ粉末を目開き140μmのメッシュを用いて篩
分した。メッシュ上には篩分前の4.8重量%の粒子が
残存した。篩分後の処理溶融シリカ粉末の75μm以上
の粒子含有率は2.2重量%、150μm以上の粒子含
有率は0.01重量%以下であった。また篩分から30
日後に測定した粒度では、75μm以上の粒子含有率は
1.9重量%、150μm以上の粒子含有率は0.01
重量%以下であり、経時変化は認められなかった。篩分
後の処理溶融シリカ粉末(以後、処理シリカ1と呼ぶ)
を用いて、以下の配合で成形材料を作製した。全配合原
料をミキサーにより混合した後表面温度が90℃と45
℃の2本ロールを用いて30回混練し、得られた混練物
シートを冷却後粉砕して、成形材料とした。得られた成
形材料の特性を以下の方法で評価をした。評価した特性
を表1に示す。
【0022】 (配合) ・3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル: 油化シェルエポキシ(株)製 商品名YX−4000 融点103℃、 4.2重量部 ・p−キシリレン変性フェノール樹脂硬化剤: 三井東圧(株)製 商品名XL225−3L、150℃の溶融粘度2.3ポイズ 4.3重量部 ・1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU): 0.2重量部 ・処理シリカ1: 86.0重量部 ・γーグリシドキシプロピルトリメトキシシラン: 0.5重量部 ・三酸化アンチモン: 1.0重量部 ・臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂: 1.0重量部 ・カルナバワックス: 0.5重量部 ・カーボンブラック: 0.3重量部
【0023】《評価方法》 ・スパイラルフロー:EMMI−1−66に準じたスパ
イラルフロー測定用の金型を用いて、金型温175℃、
注入圧力70kg/cm2 、硬化時間2分で測定した。 ・保存性:成形材料を25℃の恒温槽で一定時間放置し
た後スパイラルフローを測定した。初期値の90%のス
パイラルフローになった恒温槽放置日数を示す。 ・成形性:100ピンTQFPパッケージ(パッケージ
サイズは,14×14mm、厚み1.0mm,シリコン
チップはサイズ8.0×8.0mmで、表面に3μm厚
ポリイミドの被覆膜が形成されている、リードフレーム
は鉄/ニッケル合金(42アロイ)、内部リードの金線
ボンディング部分に銀メッキ)を175℃の金型温度、
75kg/cm2 の射出圧力で2分間トランスファー成
形を行った。成形品の充填性を評価し、未充填パッケー
ジ数/全成形パッケージ数の割合を%表示で表した。 ・半田耐熱性:上記100ピンTQFPを175℃で8
時間で後硬化し、成形品パッケージを85℃、85%R
Hの環境下で72時間放置し、その後240℃の半田槽
に10秒間浸漬した。顕微鏡でパッケージを観察し、外
部クラック数をクラック発生パッケージ数/全パッケー
ジ数の%表示で表した。 ・接着性:また、超音波探傷装置を用いてパッケージ内
の各界面の接着状態を観察した。接着性としてチップ上
のポリイミド被覆膜と成形材料との界面、及び内部リー
ドの銀メッキ部分と成形材料との界面の接着状態を示
す。
【0024】《実施例2〜4、比較例1〜5》実施例1
の溶融シリカ粉末860gを用いて、表面処理に用いた
シランカップリング剤及び処理条件を表2のように変更
させ、更に実施例1と同条件で篩分して処理シリカ2〜
9を得た。実施例1の配合のうち、処理シリカのみを変
更して、実施例1と同様に混合・混練して成形材料を得
た。配合及び特性を表1及び表2に示す。 《比較例6》実施例1においてシリカの表面処理を行っ
たあとに篩分を実施しなかったこと以外は実施例1と全
く同様な配合、処理条件で処理シリカ10(表3)を得
た。実施例1と同様の配合、製造条件で成形材料を調製
した。配合及び特性を表2に示す。 《実施例5〜9、比較例7〜9》実施例1の処理シリカ
1を用いて、表1の配合で、実施例1と同様に混合・混
練して成形材料を得た。配合及び特性を表1及び表2に
示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】なお、表1及び表2に示すエポキシ樹脂
[式(1)、式(2)]及びフェノール樹脂[式
(3)]を以下に示す。
【化1】
【0029】
【発明の効果】本発明により得られた半導体封止用エポ
キシ樹脂成形材料を用いて、半導体装置を成形する際、
成形性に優れ、その成形品の半導体装置を半田処理して
もクラックや界面剥離のないものが得られた。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // H01L 23/29 H01L 23/30 R 23/31 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 59/62 C08L 63/00 - 63/10 C08K 9/04 C08K 3/36 C08K 5/541 - 5/544 H01L 23/29

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)融点が50〜150℃で、かつ1
    分子中にエポキシ基を2個以上有する結晶性エポキシ樹
    脂を総エポキシ樹脂中に70重量%以上含むエポキシ樹
    脂、(B)150℃での溶融粘度が5ポイズ以下のフェ
    ノール樹脂硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)総樹脂成
    形材料中にアミノ基含有シランカップリング剤で表面処
    理された溶融シリカ粉末を76〜94重量%含み、
    (E)エポキシ基含有シランカップリング剤及び/また
    はメルカプト基含有シランカップリング剤を必須成分と
    する半導体封止用エポキシ樹脂成形材料において、
    (D)成分の溶融シリカ粉末の表面を処理したアミノ基
    含有シランカップリング剤と(E)成分のシランカップ
    リング剤との重量比が20/80〜80/20の範囲に
    あることを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂成形材
    料。
  2. 【請求項2】 溶融シリカ粉末をあらかじめアミノ基含
    有シランカップリング剤で表面処理し、その際に加水分
    解により生成されるアルコール成分の残存量を10重量
    %以下にし、粒径150μm以上の粒子含有率が0.5
    重量%以下、粒径75μm以上の粒子含有系が5%以下
    となるように篩分し、次いで該(D)溶融シリカ粉末、
    (A)エポキシ樹脂、(B)フェノール樹脂硬化剤、
    (C)硬化促進剤、及び(E)エポキシ基含有シランカ
    ップリング剤及び/またはメルカプト基含有シランカッ
    プリング剤からなる成分を混合することを特徴とする
    求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造
    方法。
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