JP4584492B2 - ラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品、日用品、薬品等を保管するためのラミネートチューブ容器の口頭部に用いられる、通路閉鎖用材原反に関し、特にラミネートチューブ容器の内容物の品質を保存するための優れた機能を有する通路閉鎖材用原反に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、その利便性及び意匠性等の利点を有することから、使用されるプラスチック系チューブ容器は増加傾向にある。このようなプラスチック系チューブ容器の中でも、特にラミネートチューブ容器は、平板の積層原反を筒状に加工して胴体部を形成するという製造方法が特徴であり、歯磨き、絵の具等の日用品のみならず、医薬品、化粧品、接着剤等の工業用品の分野にまで広く用いられている。なぜなら、ラミネートチューブ容器は、押し出し成形法やブロー成形法によって胴体部を形成する他のプラスチック系チューブ容器と異なり、アルミニウム箔や無機酸化物蒸着フィルム等の無機系高バリヤー材を自由に使用できる大きな利点があるためであり、その内容物保護性が高く評価されているためである。
【0003】
上記のようなラミネートチューブ容器は、口頭部を閉鎖して密封容器として用いられることも多い。しかし、ラミネートチューブの胴体部の優位性に対して、その容器の口頭部は、圧縮成形法又は射出成形法により形成されるため一般にはポリエチレンの単層構造からなり、バリヤー性は期待できない。そこで、口頭部を閉鎖したラミネートチューブ容器全体のバリヤー性を向上させるために、口頭部の内側に、図2に示すような、積層シートを打ち抜き・絞り加工して得たカップ状の閉鎖材を装着し、容器の肩部を多層にすると共に容器の口を塞ぐことによってバリヤー性を高め、収容物の変質を防止する方法が知られている。このカップ状の通路閉鎖材をラミネートチューブ容器に組み込むときは、図3に示すように、ラミネートチューブ胴体部3に口頭部2が接着された容器の、さらに口頭部内側に通路閉鎖材1が組み込まれる。
【0004】
しかし、上記の方法に用いる閉鎖材としては、収容物が多様に変化する状況に鑑み、その全てに対応できる十分な特性のものが未だ得られていない。特に、閉鎖材を形成するための原反については、適切な素材の選択や層構成等の原反の設計や製造時の機械調整が困難であった。ラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反を設計する際は、原反が次のような点を満たすことが要求されている。
(1)絞り加工性を有すること、すなわち平板状の原反から3次元形状に絞り加工する際、”破れ”が生じないこと。
(2)易開封性を有すること、すなわち、(1)を満たすと共にキャップと一体に形成されている開封用針で容易に開封できること。
(3)耐内容物性を有すること、すなわち内容物に含まれる腐食成分に対して耐久性があること、特に積層シート中に金属箔がある場合には金属箔が保護されていること。
さらに、上記の3点に加えて、口頭部内面との熱溶着性、安全衛生性、絞り加工後の形状安定性等が実使用上の基本的条件として満たされていることが求められる。
【0005】
特公平7‐98544号及び特公平5‐86750号公報では、耐内容物性を改善した閉鎖材用原反の構成が開示されている。これら公報では、アルミニウム箔の内側の層に特殊な接着性樹脂を使用して内容物による侵食を防止しているが、これらの原反は絞り加工性に問題があり、改善の余地があった。
【0006】
また、実開平7‐28064号公報では、耐内容物性に加えて絞り加工性を改善するため、アルミニウム箔の両面を2軸延伸ポリオレフィン系樹脂フィルムで補強した閉鎖材用原反が開示されている。しかし、商業生産が可能な程度に絞り加工性は向上し、破れの発生率は低下したものの、原反の品質に十分な信頼性がなく、製造時の歩留まりがよくなかった。さらに、製造時に精密な機械的調整が必要であり、工程管理も非常に煩雑で、コスト高となっていた。加えて、ラミネートチューブ容器の口頭部との接着性も十分でなく、さらなる改良が必要であった。
【0007】
特開平10−181755号公報では、さらなる絞り加工性の向上を目的とした閉鎖材用原反が開示されている。この原反は、アルミニウム箔の両面を2軸延伸ポリエステル系樹脂フィルム、特にポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムで覆うことによって、製造時に精密な機械調整をしなくとも、比較的簡単な工程で均一な製品を得ることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のPETフィルムを用いた従来技術では、PETフィルムが強靭である反面物理的衝撃によって微細なクラック又はピンホールを生じやすく、クラックから浸透した内容物がアルミニウム箔と反応して変質劣化を生じるという問題があった。さらに、PETフィルムは酸性物質には強いがアルカリ性物質には侵され易く耐内容物性が未だ十分ではなかった。
【0009】
そこで、PETフィルムを内容物から保護するため、ポリエチレンフィルムとして直鎖状低密度ポリエチレン(L‐LDPE)を用いたところ、開封の際にこのL‐LDPEフィルムが伸びて、キャップと一体の開封用針では十分に開封できないという問題が生じた。しかも、浸透性の強い内容物によってはPETフィルムを十分に保護できず、PETフィルムが侵食されるという問題が依然として残る場合があった。
【0010】
そこで、本発明は、絞り加工性、易開封性及び耐内容物性を十分に満たすラミネートチューブ容器の閉鎖材用原反を提供することを目的とする。さらに、本発明は、物理的衝撃に強く、耐アルカリ性を有するラミネートチューブ容器の閉鎖材用原反を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の問題を解決するために様々なフィルムの組み合わせを鋭意検討した結果、次のようなラミネート容器の通路閉鎖材用原反を完成した。すなわち、本発明によれば、ラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反であって、
外気に接する側のポリオレフィン系樹脂フィルムと、
第1の2軸延伸ポリエステルフィルムと、
金属箔と、
第2の2軸延伸ポリエステルフィルムと、
内容物に接する側の、ポリアミドフィルムを間に挟んだポリオレフィン系樹脂フィルムを共押出し延伸したフィルムと、をそれぞれ接着層を介して積層してなるラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反が提供される。
【0012】
以下に本発明の原反の構成を詳しく説明する。まず、外気に触れる最外層は、ポリオレフィン系樹脂フィルムを用いる。ポリオレフィン系樹脂フィルムは、絞り加工において特に最外層に必要とされる伸びと破れ難さを有している。最外層は、上述のように、外気に触れると同時にラミネートチューブ容器の口頭部内面に接着される。そこで、口頭部はポリエチレンで形成されることが多いため、口頭部内面との熱溶着性がよいことから、ポリオレフィン系樹脂としてポリエチレンを用いることが好ましい。さらに、ポリエチレンのうちでも直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)は、特に優れた絞り加工性を有しているため、好ましく用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、ラミネートチューブ容器の口頭部内面の樹脂とのヒートシール適性があるものであればいずれを用いてもよく、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(CPP)フィルム等が用いられる。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂フィルムの下(ラミネートチューブ容器の内側)には、第1の2軸延伸ポリエステルフィルム、金属箔、第2の2軸延伸ポリエステルフィルムをこの順に積層する。第1及び第2の2軸延伸ポリエステルフィルムは、金属箔を補強し、かつ金属箔を中心にして内外の強度バランスを整える重要な役割を果たしている。本発明の通路閉鎖材用原反は、これらの2軸延伸ポリエステルフィルムによって、実生産に十分に適応できる絞り加工性を得ることができる。ポリエステルとしては、入手のし易さや強靭であること等の理由からPETが好ましいが、この他にポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなども使用することができる。金属箔としては、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔等、の一般箔、又は、JIS 8079材等の合金箔を使用することができるが、入手し易さや価格、伸びのよさ等の点からアルミニウム箔及びアルミニウム合金箔が特に好ましい。
【0014】
本発明の通路閉鎖材用原反では、ラミネートチューブ容器に装着したときに内容物と接する最内層に、ポリオレフィン系樹脂フィルムでポリアミドフィルムを挟んだ3層構造のフィルムを共押出し、延伸して配置する。このとき、実質的な最内層であるポリオレフィン系樹脂は、化学的に不活性であると共に亀裂に強く、絞り加工時の破れを防止する。一方、ポリオレフィン系樹脂の間に挟まれているポリアミドは、PET等のポリエステルに比べて柔軟で絞り加工時にピンホールが発生することはなく、さらにアルカリ性物質に対する耐久性が強いため内容物を選ばない。
【0015】
さらに、この3層構造のフィルム(3層フィルム)を共押出し延伸することによって、このフィルムの機械的強度がより強くなり絞り加工時の破れを確実に防止でき、かつ、内容物の浸透に対するバリヤー効果も向上させることができる。絞り加工時に破れ難くする一方で、開封の際には閉鎖材の切り裂き性がよくなければならないが、延伸することで、無延伸のフィルムと比較して伸度が低いため針で切り裂き易くなる。また、3層構造のフィルムは共押出の後2軸延伸をしてもよい。2軸延伸すると開封の際に2方向に切り裂かれることになるので、従来の閉鎖材に比べて易開封性は格段に向上することが分かった。3層フィルム全体の厚さは15〜60μmが好ましく、より好ましくは20〜30μmである。このうち、中央のポリアミドフィルムは8μm以上が好ましく、より好ましくは9〜15μmである。3層フィルムは、通常それぞれの層の間にごく薄い接着性樹脂の層を設けて積層し、形成される。
【0016】
3層構造のフィルムに用いるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレンが好ましく、上述のような理由から特に直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。ポリアミドとしては、内容物の浸透に対するバリヤー性が高く、耐アルカリ性が強いため、特にナイロン(Ny)が好ましい。ナイロンとしては、例えば6−ナイロン、66−ナイロン、11ナイロン、MXD6ナイロン等を使用することができる。
【0017】
本発明の閉鎖材用原反を製造するには、各層を接着剤を介してドライラミネート法により積層することが好ましいが、ポリオレフィン系樹脂フィルムについてはこのフィルム上(例えばPET面)にアンカーコート剤を塗布し、樹脂を押出する押出ラミネート法でもよい。また、各層の厚さは、ポリオレフィン系樹脂フィルムについては25〜60μmが好ましく、特に30〜40μmが好ましい。第1及び第2のポリエステルフィルムは12〜25μmが好ましいが、12μmで十分な効果を生じる。金属箔は、20〜70μmが好ましく、特に好ましくは40〜60μmである。3層フィルムの好ましい厚さは上述の通りである。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0019】
[実施例]
本実施例では、まず、アルミニウム箔(住軽アルミ箔(株)製ベスパ、厚み50μm)の両面に接着剤を介して2軸延伸PETフィルム(東洋紡績(株)製E5200、厚み12μm)をそれぞれ積層した。次に、片側のPET面にはL−LDPE/Ny/L−LDPEの3層共押出フィルム(グンゼ(株)製HEPTAX−B 総厚み20μm、各層の厚み5/10/5μm)を、また、反対側のPET面にはL−LDPEフィルム(東セロ(株)製TUX−TC、厚み30μm)をそれぞれ接着剤を介してドライラミネート法により積層した。このようにして、本発明のラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反を製造した。接着剤としては2液反応型ウレタン系接着剤を用いた。図1に示すように、作製した通路閉鎖材用原反10の層構成は、外気に触れる側から、L−LDPEフィルム11/2軸延伸PETフィルム12/アルミニウム箔13/2軸延伸PETフィルム14/L−LDPEフィルム15/Nyフィルム16/L−LDPEフィルム17であり、内側のL−LDPEフィルム15/Nyフィルム16/L−LDPEフィルム17は、3層構成の共押出2軸延伸フィルム18を形成している。
【0020】
[絞り加工適性試験]
上述のように作製した閉鎖材用原反について、次のような絞り加工適性試験を行った。絞り加工時の金型圧力と原反の張力を3段階に変化させ、それぞれの条件でカップ状の通路閉鎖材を形成し、形成した通路閉鎖材の破れの有無を目視で確認した。条件及び評価基準は以下の通りである。絞り加工条件は強及び弱の2段階とし、条件1が通常製造時の条件である。評価結果は、後述する比較例の結果と共に以下の表1に示した。
絞り加工条件
条件1 通常設定(抑制)
金型圧力 弱 原反張力 弱
条件2 過酷設定
金型圧力 強 原反張力 弱
条件3 最過酷設定
金型圧力 強 原反張力 強
評価基準
◎ 破れが全くない
△ 頻度は少ないが、軽度の破れが確認される
× 目視で確認できる明確な破れ有り
【0021】
[易開封性試験]
次に、上述の絞り加工適性試験で破れなく形成された条件1のカップ状通路閉鎖材を用いてラミネートチューブ容器を製造した。容器には表2に示すような7種類の内容物をそれぞれ充填し、室温50℃の環境下で3ヶ月間保存した。内容物のうち、染毛剤及び接着剤はアルカリ性であった。その後、容器のキャップに形成されている開封用針で開封し、閉鎖材の状態を目視で評価した。評価基準は、以下の通りとした。評価結果は、後述する比較例の結果と共に以下の表2に示した。
評価基準
◎ 開封に全く問題なし
○ 開封は問題なくできるが、デラミネーションが認められる
△ 開封できるが、デラミネーションの影響で穴が小さい
× 孔が開かない
【0022】
[比較例]
本比較例では、上記の実施例で用いた最内層の3層構成のフィルムの代わりに厚さ30μmのL‐LDPEフィルムを用いた以外は、実施例と同様にして通路閉鎖材用原反を作製した。すなわち、層構成が、L−LDPE/2軸延伸PET/Al/2軸延伸PET/L−LDPEの原反を上記の実施例と同様に製造した。最内層に用いたL−LDEフィルムは最外層のフィルムと同一物を使用した。次いで、実施例と同様の絞り加工適性試験、及び、絞り加工時に破れのなかった条件1のカップ状通路閉鎖材について易開封性試験を行った。各試験の評価結果は、それぞれ以下の表1及び表2に示した。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
上記の表1の結果から、絞り加工適性試験において比較例では条件2及び3の場合に破れが生じたが、実施例で製造した本発明の通路閉鎖材用原反の場合は全ての条件で破れが発生することはなかった。したがって、本発明の原反は従来に比べて強靭であり絞り加工性が格段に向上したことが確認された。
【0026】
また、表2の結果から、比較例で製造した閉鎖材は特にアルカリ性の内容物の場合に侵食が見られ、容易に開封することができなかったが、実施例で製造した閉鎖材は全ての種類の内容物に対して、ほとんど侵食が見られなかっただけでなく針で容易に開封することができた。このことから、本発明の原反は3ヶ月間の保存においてアルカリ性内容物に対して耐久性があり、かつ、切り裂き性も向上したことが分かった。
【0027】
【発明の効果】
本発明のラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反は、強靭でかつ引っ張りに強く、絞り加工時に破れを生じることがない。一方で、開封用針で開封する際の切り裂き性が改善され、容易に開封することができる。さらに、内容物がアルカリ性である場合にも優れた耐久性を示し、内容物を選ばずどのような用途のラミネート容器にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で作製した通路閉鎖材用原反の層構成を示す図である。
【図2】ラミネートチューブ容器に用いるカップ状に成形された通路閉鎖材の斜視図である。
【図3】カップ状通路閉鎖材を接着したラミネートチューブ容器を示す部分断面図である。
【符号の説明】
1 カップ状通路閉鎖材
2 口頭部
3 ラミネートチューブ胴体部
10 通路閉鎖材用原反
11 L‐LDPEフィルム
12 2軸延伸PETフィルム
13 アルミニウム箔
14 2軸延伸PETフィルム
15 L‐LDPEフィルム
16 ナイロンフィルム
17 L‐LDPEフィルム
18 3層構成の共押出2軸延伸フィルム
Claims (6)
- ラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反であって、
外気に接する側のポリオレフィン系樹脂フィルムと、
第1の2軸延伸ポリエステルフィルムと、
金属箔と、
第2の2軸延伸ポリエステルフィルムと、
内容物に接する側の、ポリアミドフィルムを間に挟んだポリオレフィン系樹脂フィルムを共押出し延伸したフィルムと、をそれぞれ接着層を介して積層してなるラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反。 - 上記第1又は第2の2軸延伸ポリエステルフィルムが2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである請求項1に記載のラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反。
- 上記外気に接する側のポリオレフィン系樹脂フィルムが直鎖状低密度ポリエチレンフィルムである請求項1又は2に記載のラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反。
- 上記ポリアミドフィルムがナイロンフィルムである請求項1〜3のいずれか一項に記載のラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反。
- 上記ポリアミドフィルムを間に挟んだポリオレフィン系樹脂フィルムが、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムである請求項1〜4のいずれか一項に記載のラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反。
- 上記ポリアミドフィルムを間に挟んだポリオレフィン系樹脂フィルムを共押出し延伸したフィルムが、共押出し2軸延伸したフィルムである請求項1〜5のいずれか一項に記載のラミネートチューブ容器の通路閉鎖材用原反。
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