JP4581160B2 - リン含有水の処理方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明はリン含有水の処理方法に係り、特に、リン含有水にカルシウム化合物を添加してリン含有水中のリンをカルシウム塩として固液分離するに当り、固液分離により得られた汚泥の一部を返送してカルシウムイオンの存在下、リン含有水に添加する方法において、少ないカルシウム化合物の使用量にてリン含有水中のリンを効率的に除去して高水質処理水を得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、リン含有水の処理方法として、リン含有水に鉄化合物、アルミニウム化合物又はカルシウム化合物を添加してリン含有水中のリンを難溶性の鉄塩、アルミニウム塩又はカルシウム塩として析出させ、析出物を凝集沈殿させて固液分離する方法がある。この方法のうち、鉄化合物、アルミニウム化合物を用いる方法では、鉄化合物やアルミニウム化合物が比較的高価である上に、大量の汚泥が発生することから、カルシウム化合物による処理方法が広く採用されている。
【0003】
しかしながら、カルシウム化合物を用いる方法でも、多量のカルシウム化合物を必要とし、従って発生する汚泥量が多く、また、pH10以上の強アルカリ性で実施する必要があることから、スケール生成や分離水の中和が必要であるといった問題があった。即ち、リン含有水にカルシウム化合物を添加すると、リン含有水中のリンはCa5(PO4)3OHの形で沈殿するが、この反応を生起させるためにはpH10以上の強アルカリ性とする必要がある。
【0004】
このpHの問題を解決し、pH7.5〜11の比較的低いpHでの反応を可能とするために、従来、固液分離により得られた汚泥の一部をカルシウム化合物と混合して原水であるリン含有水に添加することにより、反応をpH7.5〜11で行う方法が提案されている(特開平8−224587号公報)。
【0005】
この方法であれば、分離汚泥にカルシウム化合物を添加混合してリン含有水に添加する、即ち、汚泥をリン含有水と接触させる前に予めカルシウム化合物と混合して汚泥表面にカルシウム化合物を吸着させることにより、リン含有水のリンを汚泥表面で反応させるようにして生成したカルシウム塩を汚泥表面に強く吸着させることで、処理pHを低減すると共に、凝集性、沈降性に優れた汚泥を得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開平8−224587号公報の方法によれば、pH7.5〜11の中性に近いpH領域での処理が可能となるが、処理の安定性やカルシウム化合物使用量の低減の面で十分な効果が得られない場合があり、更なる改善が求められている。
【0007】
本発明はこのような問題点を解決し、リン含有水にカルシウム化合物を添加してリン含有水中のリンをカルシウム塩として固液分離するリン含有水の処理方法において、少ないカルシウム化合物添加量で効果的にリンを除去して高水質処理水を安定かつ効率的に得る方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のリン含有水の処理方法は、リン含有水にカルシウム化合物を添加して、リン含有水中のリンをカルシウム塩として固液分離するリン含有水の処理方法であって、固液分離により得られた汚泥の一部を返送してカルシウムイオンの存在下、リン含有水に添加し、固液分離により得られた汚泥の残部を系外へ引き抜くリン含有水の処理方法において、返送する汚泥にカルシウム化合物を添加すると共にpHを7〜12とし、系内の汚泥の滞留時間が7〜50日となるように、1日当りの系外への該引き抜き汚泥の量を、系全体に保有される汚泥の1/7〜1/50とすることを特徴とする。
【0009】
即ち、本発明者らは、リン含有水の処理におけるリンの除去効率の向上について鋭意検討を重ねた結果、返送される汚泥の性状が、リンの除去効率に大きく影響することを知見した。
【0010】
即ち、固液分離された汚泥は、リン含有水との接触で表面にリンが付着したものであるが、この汚泥をカルシウムイオンの存在下でpH7〜12に維持すると、汚泥表面に吸着されているリンがカルシウムイオンとの反応でリン吸着能の高いリン酸カルシウム種として安定化する。このように汚泥表面に吸着されたリンが安定化することにより、汚泥表面は更にリンが吸着され易い状態となる。このようにリンの吸着能力が高められた汚泥を原水であるリン含有水に添加混合することにより、リン含有水中のリンを効率的に吸着除去することが可能となる。
【0011】
なお、汚泥表面のリンのより一層の安定化ないしリン吸着能のより一層の向上のためには、系内の汚泥の滞留時間が重要であり、汚泥の系内滞留時間が5日以上となるように調整することが望ましい。このような滞留時間を確保するためには、1日当りの系外への引き抜き汚泥量を、系全体に保有される汚泥の1/7〜1/50とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明のリン含有水の処理方法の実施の形態を示す系統図である。
【0014】
図中、1は反応槽、2は凝集槽、3は沈殿槽、4は汚泥調整槽である。なお、以下において、沈殿槽3で固液分離された汚泥を「分離汚泥」、分離汚泥のうち系外へ引き抜く汚泥を「引き抜き汚泥」、分離汚泥のうち汚泥調整槽4へ送給する汚泥を「返送汚泥」、汚泥調整槽4内でpH条件などの調整が行われる汚泥を「調整槽内汚泥」、反応槽1に添加される汚泥を「改質汚泥」とそれぞれ称す。
【0015】
この方法では、原水(リン含有水)を反応槽1に導入して後述の改質汚泥と混合して原水中のリンを改質汚泥に吸着させた後、凝集槽2にて凝集剤を添加して凝集処理し、凝集処理液を沈殿槽3で固液分離し、分離水を処理水として取り出す。一方、分離汚泥のうちの一部を返送汚泥として汚泥調整槽4に送給し、残部は引き抜き汚泥として系外へ抜き出す。返送汚泥は、汚泥調整槽4内において必要に応じpH調整やカルシウム化合物の添加を行い、得られた改質汚泥が反応槽1に供給される。
【0016】
本発明において、原水となるリン含有水の種類及びそのリン濃度には特に制限はなく、本発明は、リン酸又はリン酸塩を数ppmから数重量%までの範囲で含有する幅広い廃水、例えば、リン酸製造工場廃水、肥料工場廃水、食品添加剤工場廃水、金属表面処理工場廃水、半導体部品製造工場廃水等の工場廃水の他、一般家庭排水や農業排水、下水処理排水等に適用することができる。
【0017】
また、本発明においてカルシウム化合物の添加場所には特に制限はなく、反応槽1あるいは汚泥調整槽4などで添加すればよいが、特に汚泥調整槽4に添加し、調整槽内汚泥と混合するのが好ましい。添加するカルシウム化合物としても水溶性のものであれば特に制限はなく、例えば、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウムやカーバイト滓等の1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
本発明においては、汚泥調整槽4内の調整槽内汚泥をpH7〜12に維持するが、このpHが12を超えると必要とするカルシウム化合物量が多くなり、薬剤コストの高騰、生成汚泥の増加につながる。このpHが7未満であると得られる改質汚泥のリン吸着能力が低くなり、処理水水質が悪化する。従って、調整槽内汚泥はpH7〜12、好ましくは7.5〜9.0に維持する。
【0019】
前述の如く、この汚泥調整槽4においてカルシウム化合物を添加する場合に用いるカルシウム化合物としては、水酸化カルシウム、塩化カルシウム等の種々のカルシウム化合物を用いることができる。カルシウム化合物として塩化カルシウム等のアルカリ性ではないカルシウム化合物を用いた場合には、必要に応じて水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ剤を併用してpH調整を行う。
【0020】
このカルシウム化合物の添加量は、上記pH範囲において、返送汚泥に吸着されているリンの当モル以上が必要であり、系内に炭酸塩や重炭酸塩が多いほど、また、上述の如く、調整pHが高いほど、必要とするカルシウム化合物量が多くなる。
【0021】
汚泥調整槽4内の汚泥の滞留時間、即ち、調整槽内汚泥をpH7〜12、好ましくは7.5〜9.0に維持する時間は、0.5時間以上、特に2〜12時間程度が適当である。この時間が短か過ぎると返送汚泥表面のリンとカルシウムイオンとの反応が十分に進行しないのでなるべく長くするとよいが、長過ぎると汚泥調整槽4の容量が増大する。
【0022】
汚泥調整槽4からの改質汚泥は、反応槽1に送給され、原水中のリンを効率的に吸着除去する。この反応槽1のpH条件は5.5以上であれば良く、特に制限はない。また、反応槽1の滞留時間は、このリンの吸着に十分な時間、通常5分以上が必要である。この滞留時間は長いほどリンの除去率が向上するが、過度に長いと反応槽1の容量が増大するため、通常は5〜30分程度とされる。
【0023】
反応槽1の反応処理液は凝集槽2にて凝集処理されるが、ここで使用される凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、尿素−ホルマリン樹脂などのノニオン性高分子凝集剤、ポリアミノアルキルメタクリレート、ポリエチレンイミン、ハロゲン化ポリジアリルアンモニウム、キトサンなどのカチオン性高分子凝集剤、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、部分スルホメチル化ポリアクリルアミド、ポリ(2−アクリルアミド)−2−メチルプロパン硫酸塩などのアニオン性高分子凝集剤等の高分子凝集剤を使用することができる。これらの高分子凝集剤の中で、ノニオン性高分子凝集剤及びアニオン性高分子凝集剤は凝集効果に優れているので、特に好適に使用することができる。これらの高分子凝集剤の添加量は、通常の場合、0.5〜5mg/L程度である。
【0024】
凝集槽2の凝集処理液は沈殿槽3で固液分離され、分離水は処理水として取り出され、放流されるか次工程で処理される。
【0025】
一方、分離汚泥は一部が返送汚泥として汚泥調整槽4に送給され、残部は余剰汚泥として引き抜かれる。
【0026】
なお、通常の場合、この返送汚泥の返送率は、原水に対して5〜200%程度であり、一方で、改質汚泥に対するリンの吸着量は改質汚泥中のリン酸カルシウムの0.05〜1重量%程度である。従って、原水中のリンに対して、十分なリン酸カルシウム量が供給されるように、反応槽1に供給する改質汚泥量、即ち、汚泥調整槽4へ返送される返送汚泥量を調整することが重要である。
【0027】
ところで、本発明では、前述の如く、調整槽内汚泥をpH7〜12、好ましくはpH7.5〜9.0に維持することで、改質汚泥のリン吸着能力を高めることに特徴を有するが、このリン吸着能力を十分に高めるためには、系内の汚泥の滞留時間が重要であり、この滞留時間を7〜50日間とする。この理由の詳細は明確ではないが、返送汚泥に吸着されたリンがカルシウムイオンと反応してリン吸着能の高いリン酸カルシウム種となるのに、5日以上の時間が必要なためと推定される。
【0028】
しかして、このような滞留時間を確保するために1日当りの引き抜き汚泥量を系全体に保有されている汚泥の1/7〜1/50とする。
【0029】
なお、図1に示す方法は本発明の実施の形態の一例であって、本発明はその要旨を超えない限り、図示の方法に何ら限定されるものではない。
【0030】
例えば、凝集槽2は必ずしも必要とされず、反応槽1から沈殿槽3への移送配管に凝集剤を直接注入しても良い。また、本発明では、汚泥を返送することで、凝集性に優れた汚泥を得ることができることから、このような凝集処理を省略しても良い。しかし、生成汚泥のフロック化の促進のためには反応槽と沈殿槽との間に汚泥調整槽又は凝集槽を設けるのが好ましい。
【0031】
また、前述の如く、カルシウム化合物は例えば反応槽1に添加してもよい。
【0032】
さらに、固液分離手段としては、沈殿槽の他、遠心分離機、加圧浮上槽や膜分離装置を用いても良いが、本発明で得られる汚泥は沈降性が極めて良好なものであるため、固液分離手段としては沈殿槽又は膜分離装置が好ましく、沈殿槽の場合、水面積負荷0.5〜20m/hrで処理するのが好ましい。
【0033】
【実施例】
以下に実施例、比較例及び参考例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0034】
実施例1
下水を処理している活性汚泥法の処理水(pH7.1,リン酸濃度1.9mg/L)を原水として処理を行った。まず、この原水に水酸化カルシウムをpHが10になるよう添加した後、凝集剤としてポリアクリルアミド部分加水分解物を0.5mg/L添加して凝集沈殿処理した。これを繰り返して、生成した汚泥を集め、これを10L容量の汚泥調整槽に投入した。このとき、汚泥の濃度は15g/L、pHは9.2であった。この汚泥を2週間、ゆっくり攪拌し続けた。2週間後、この汚泥を5L容量の反応槽に導入し、同時にこの反応槽中に原水を10L/hrの速度で通水した。この反応槽の処理水を50L容量の沈殿槽に導入して固液分離し、分離汚泥を上記汚泥調整槽に導入すると共に、この汚泥調整槽に塩化カルシウムを添加し、水酸化ナトリウムを添加してpHが9になるよう調整した。この汚泥調整槽からの流出汚泥(改質汚泥)を2.5L/hrの速度で反応槽に送給し、この処理を継続した。
【0035】
この運転を2ヶ月継続したところ、処理水のpHは8.0、リン濃度は0.15mg/Lとなった。また、この時、汚泥調整槽の汚泥濃度は14g/Lで汚泥調整槽内の汚泥の滞留時間は2時間であった。なお、1日当りの引き抜き汚泥量は、系全体の保有汚泥量の1/20とし、系内の汚泥の滞留時間は20日とした。この処理に必要とされた塩化カルシウム量は、カルシウムとして原水1L当り5mgであった。
【0036】
実施例2〜4、比較例1,2
実施例1において、汚泥調整槽内のpHが表1に示すpHとなるように、カルシウムの添加量や中和剤の添加量を調整したこと以外は同様にして処理を行った。
【0037】
このときのカルシウムの必要添加量、処理水のpH及びリン濃度を、実施例の結果と共に表1に示す。
【0038】
表1より、汚泥調整槽4内のpHを7〜12に維持することにより、少ないカルシウム化合物添加量で高水質処理水を得ることができることがわかる。
【0039】
【表1】
【0040】
参考例1
実施例1において、引き抜き汚泥流量を変えることにより、系内の汚泥の滞留時間を4日としたこと以外は同様にして処理を行ったところ、カルシウムの必要添加量はカルシウムとして5mg/Lであったが、得られた処理水はpH8.0、リン濃度0.88mg/Lであり、実施例1の場合よりも水質が低下することが確認された。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明のリン含有水の処理方法によれば、リン含有水にカルシウム化合物を添加してリン含有水中のリンをカルシウム塩として固液分離するリン含有水の処理方法において、少ないカルシウム化合物添加量で効果的にリンを除去して高水質処理水を安定かつ効率的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリン含有水の処理方法の実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
1 反応槽
2 凝集槽
3 沈殿槽
4 汚泥調整槽
Claims (2)
- リン含有水にカルシウム化合物を添加して、リン含有水中のリンをカルシウム塩として固液分離するリン含有水の処理方法であって、固液分離により得られた汚泥の一部を返送してカルシウムイオンの存在下、リン含有水に添加し、固液分離により得られた汚泥の残部を系外へ引き抜くリン含有水の処理方法において、
返送する汚泥にカルシウム化合物を添加すると共にpHを7〜12とし、
系内の汚泥の滞留時間が7〜50日となるように、1日当りの系外への該引き抜き汚泥の量を、系全体に保有される汚泥の1/7〜1/50とすることを特徴とするリン含有水の処理方法。 - 請求項1において、返送する汚泥のpHを7.5〜9.0とすることを特徴とするリン含有水の処理方法。
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