JP4580092B2 - 非常用電源設備用の過給式エンジン - Google Patents
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Description
本発明は、発電機を駆動するエンジン本体から排出される排ガスにて駆動されて過給する過給機と、
前記エンジン本体への燃料の供給量を調節する燃料供給量調節手段と、
前記エンジン本体の回転状態を検出する回転状態検出手段と、
その回転状態検出手段の検出情報に基づいて、前記エンジン本体の回転状態が目標回転状態になるように前記燃料供給量調節手段を制御する制御手段が設けられた非常用電源設備用過給式エンジンに関する。
【0002】
【従来の技術】
かかる過給式エンジンは、駆動対象の発電機が非常用である場合のように、過給式エンジンを起動させて発電機を駆動して給電するときに、エンジン本体に対する負荷が急増すると、従来では、下記のような理由により、エンジン本体を適正に運転できなくなって、エンジン本体が停止するので、所望の負荷に至るまで、エンジン本体の運転に影響を与えない程度の小さい増大幅にて段階的に負荷を増大させていた。ちなみに、過給式エンジンを起動させて給電する場合は、エンジン本体の回転速度を定格回転速度に上昇させる起動運転を実行後、負荷をかけ始めることになる。
即ち、負荷が急増すると、エンジン本体の回転状態が低下することにより、過給機の排ガスタービンに供給される排ガス量が減少して過給能力が低下することとなって、エンジン本体へ供給される燃料が減少して、更なる回転状態の低下を招き、適正に運転できなくなるのである。
【0003】
特に、過給式エンジンを起動させて給電する場合、起動運転直後は、エンジン本体から排出される排ガスを過給機の排ガスタービンに導く排ガス経路は温度が低いため、排ガスが排ガスタービンに達するまでの間に排ガスからエネルギが奪われる量が多いので、排ガスタービンを駆動させる力が弱くなって、負荷の増大に対してエンジン本体の回転状態が低下し易く、特に、負荷増大幅を小さくする必要があった。
【0004】
又、省燃費並びに低NOx化を図るために、エンジン本体が、理論空気量よりも多い燃焼用空気にて燃料を燃焼させる希薄燃焼式に構成される場合があるが、希薄燃焼式の場合、理論空気量の燃焼用空気にて燃料を燃焼させる一般のものに比べて、負荷の増大に対してエンジン本体の回転状態が低下し易いので、特に、負荷増大幅を小さくする必要があった。
【0005】
上記の如き、負荷を一度に増大可能な幅を大きくすることができないという問題を解決するために、従来、エンジン本体の動力を減速機に伝達するように構成した過給機式エンジンにおいて、減速機の回転出力により駆動されて空気を圧縮し、過給機の駆動を補助するために過給機のコンプレッサに圧縮した空気を供給する空気圧縮機を備えたものが提案されている(例えば、特開2000−204957号公報参照)。この従来の過給式エンジンでは、空気圧縮機から圧縮空気を直接に過給機のコンプレッサに供給する場合と、空気圧縮機からの圧縮空気を蓄えるサージタンクを備えて、空気圧縮機から圧縮空気をサージタンクを介して過給機のコンプレッサに供給する場合がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の如き、空気圧縮機を備えた従来の過給式エンジンでは、過給機の駆動を補助するときは、空気圧縮機から圧縮空気を直接に過給機のコンプレッサに供給する場合、及び、空気圧縮機から圧縮空気をサージタンクを介してコンプレッサに供給する場合のいずれの場合でも、エンジン本体のエネルギを用いるものであるため、過給機の駆動を十分に補助することができなかった。従って、依然として、負荷を一度に増大可能な幅を大きくすることができないという欠点が残されており、負荷を増大させるときには、所望の負荷に至るまで小さい増大幅にて段階的に負荷を増大させる必要があるため、所望の負荷をかけることができるまでに長い時間を要するという問題があった。
又、この従来の過給式エンジンでは、過給機の駆動を補助するに当たっては、圧縮空気を過給機のコンプレッサに供給して、過給機のコンプレッサの駆動を補助する構成であるので、燃料と燃焼用空気とが予混合された予混合燃料を過給機にて過給する予混合過給タイプのものにおいては、燃料と燃焼用空気との混合比を調節し難く、過給する予混合燃料の混合比を適正に維持し難いという問題もあった。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、過給式エンジンにおいて、所望の負荷をかけることができるまでに要する時間を短縮して運転できるようにすることにあり、他の目的は、予混合過給タイプの過給式エンジンにおいて、燃料と燃焼用空気との混合比を適正に維持した状態で予混合燃料を過給できながら、所望の負荷をかけることができるまでに要する時間を短縮して運転できるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
〔請求項1記載の発明〕
請求項1に記載の特徴構成は、前記過給機の駆動を補助する補助駆動手段が、駆動補助のときには前記エンジン本体から出力されるエネルギを用いずに作動するように設けられ、
前記制御手段は、前記回転状態検出手段の検出情報に基づいて、前記エンジン本体の回転状態を前記目標回転状態に維持するのを補助するように、前記補助駆動手段を駆動補助を行う作動状態と停止状態とに切り換えるように構成され、
前記過給機が、燃料と燃焼用空気とが予混合された予混合燃料を過給するように構成され、
前記燃料供給量調節手段が、前記エンジン本体への予混合燃料の供給量を調節するように構成され、
前記補助駆動手段が、圧縮気体を前記過給機における排ガスタービンに供給することにより、前記排ガスタービンの駆動を補助するように構成され、且つ、前記排ガスタービンの駆動を補助するための構成として、気体としての窒素を圧縮状態で貯蔵する気体貯蔵部を備えて、その気体貯蔵部から圧縮気体としての圧縮窒素ガスを減圧弁にて減圧して前記排ガスタービンに供給することにより、前記排ガスタービンの駆動を補助するように構成されていることにある。
請求項1に記載の特徴構成によれば、制御手段によって、回転状態検出手段の検出情報に基づいて、エンジン本体の回転状態を目標回転状態に維持するのを補助するように、補助駆動手段が駆動補助を行う作動状態と停止状態とに切り換えられるので、負荷が増大して、エンジン本体の回転状態が低下傾向になると、補助駆動手段が作動状態に切り換えられて、補助駆動手段によって過給機の駆動が補助されて、過給能力が向上し、エンジン本体の回転状態が目標回転状態に戻される。
又、過給機の駆動を補助する補助駆動手段が、駆動補助のときにはエンジン本体から出力されるエネルギを用いずに作動するように設けられているので、過給機の駆動を補助するために、エンジン本体からのエネルギが消費されることが無いことから、エンジン本体からのエネルギの全てを負荷に与えながら、過給機の駆動を十分に補助することができる。
つまり、負荷が増大して、エンジン本体の回転状態が低下傾向になったときに、過給機の駆動が補助されて、エンジン本体の回転状態を目標回転状態に維持するのが補助され、しかも、エンジン本体の回転状態を目標回転状態に維持するのを補助するために、過給機の駆動を補助するに当たっては、エンジン本体からのエネルギを用いないようにして、過給機の駆動を十分に補助することができるようにしてあるので、負荷を増大させるときには、一度に増大させることができる幅を従来に比べて効果的に大きくすることができる。
従って、所望の負荷をかけることができるまでに要する時間を短縮して運転できるようになった。
【0009】
また、請求項1に記載の特徴構成によれば、過給機によって、燃料と燃焼用空気とが予混合された予混合燃料がエンジン本体に過給され、補助駆動手段によって、過給機の排ガスタービンの駆動が補助される。
すなわち、負荷が増大して、エンジン本体の回転状態が低下傾向になると、補助駆動手段が作動状態に切り換えられて、補助駆動手段によって過給機の排ガスタービンの駆動が補助されるので、エンジン本体に予混合燃料を過給する過給能力が向上して、エンジン本体の回転状態が目標回転状態に戻され、しかも、排ガスタービンの駆動の補助が、エンジン本体からのエネルギを用いずに行われる。
つまり、エンジン本体から排出される排ガスにて過給機を駆動し、その過給機にて予混合燃料をエンジン本体に過給するようにして、エンジン本体の出力を向上させた予混合過給タイプにおいて、負荷が増大して、エンジン本体の回転状態が低下傾向になったときに、エンジン本体の回転状態を目標回転状態に維持するのを補助するに当たって、排ガスタービンの駆動を補助することによって予混合燃料の過給能力を向上するようにしてあるので、燃料と燃焼用空気との混合比を適正に維持した状態で、エンジン本体に予混合燃料を過給できるようにしながら、負荷を増大させるときには、一度に増大させることができる幅を大きくすることができる。
しかも、エンジン本体の回転状態を目標回転状態に維持するのを補助するために、排ガスタービンの駆動を補助するに当たっては、エンジン本体からのエネルギを用いないようにして、エンジン本体からの出力のすべてを負荷に投入できるようにしてあるので、負荷を増大させるときには、一度に増大させることができる幅を更に大きくすることができる。
従って、予混合過給タイプの過給式エンジンにおいて、燃料と燃焼用空気との混合比を適正に維持した状態で予混合燃料を過給できながら、所望の負荷をかけることができるまでに要する時間を短縮して運転できるようになった。
【0010】
また、請求項1に記載の特徴構成によれば、圧縮気体が過給機における排ガスタービンに供給されて、圧縮気体の圧力エネルギによって排ガスタービンの回転駆動が補助されることになる。
ちなみに、補助駆動手段は、電動モータをクラッチを介して排ガスタービンに連結することにより構成することができるが、この場合は、圧縮気体を排ガスタービンに供給するように構成する場合に比べて、可動部分が多くなり、構成が複雑となる。
従って、可動部分が少ない簡単な構成にて補助駆動手段を構成することができるので、本願発明の実施コストを低減することができる。
【0011】
また、請求項1に記載の特徴構成によれば、気体としての窒素を圧縮状態で貯蔵する気体貯蔵部が、排ガスタービンの駆動を補助するために専用に備えられて、その専用の気体貯蔵部から圧縮気体としての圧縮窒素ガスが過給機における排ガスタービンに供給されて、圧縮気体としての圧縮窒素ガスの圧力エネルギによって排ガスタービンの回転駆動が補助されることになる。
気体貯蔵部としては、例えば、ガスボンベを用いることができ、そのガスボンベに、窒素ガスを圧縮状態で貯蔵しておく。
従って、圧縮気体供給用の設備(例えば、工場内の機械に圧縮空気を供給すべく工場内に配管されている圧縮空気配管)が設けられていない場所にも、過給式エンジンを設置することができるので、設置場所の制約を無くすことができるという効果を奏する。
【0012】
〔請求項2記載の発明〕
請求項2に記載の特徴構成は、前記回転状態検出手段が前記エンジン本体の回転速度を検出するように構成され、
前記制御手段が、前記回転状態検出手段の検出情報に基づいて、前記エンジン本体の回転速度が目標回転速度になるように前記燃料供給量調節手段を制御し、且つ、前記エンジン本体の回転速度を前記目標回転速度に維持するのを補助するように、前記補助駆動手段を前記作動状態と前記停止状態とに切り換えるように構成されていることにある。
請求項2に記載の特徴構成によれば、負荷の変動に対応して、制御手段によって、回転状態検出手段の検出情報に基づいて、エンジン本体の回転速度が目標回転速度になるように燃料供給量調節手段が制御され、且つ、エンジン本体の回転速度を目標回転速度に維持するのを補助するように、補助駆動手段が作動状態と停止状態とに切り換えられるので、エンジン本体は、その回転速度が目標回転速度になるように運転される。
つまり、エンジン本体にて発電機を駆動する場合は、負荷の変動に対応して、エンジン本体の回転速度が目標回転速度になるように運転することになるが、そのような場合において、一度に大きい増大幅にて負荷を増大させても、エンジン本体の回転速度が目標回転速度になるように運転することができる。
しかも、過給機の過給能力はエンジン本体の回転速度の変化により変化し易いことから、エンジン本体の回転状態として回転速度を検出して、その回転速度の検出情報に基づいて、エンジン本体の回転速度を目標回転速度に維持するのを補助するように、補助駆動手段を作動状態と停止状態とに切り換えることにより、的確に過給機の駆動を補助して、エンジン本体に適正に過給できるようにして、エンジン本体の回転速度を的確に目標回転速度に維持することができる。
従って、所望の負荷をかけることができるまでに要する時間を短縮できるようにしながら、発電機を適正に駆動することができるようになった。
【0013】
〔請求項3記載の発明〕
請求項3に記載の特徴構成は、前記エンジン本体が、理論空気量よりも多い燃焼用空気にて燃料を燃焼させる希薄燃焼式にて構成され、
前記制御手段が、前記回転状態検出手段の検出情報に基づいて、前記エンジン本体の回転速度を前記目標回転速度としての定格回転速度に維持するように前記燃料供給量調節手段を制御し、且つ、前記エンジン本体の回転速度を前記定格回転速度に維持するのを補助するように、前記補助駆動手段を前記作動状態と前記停止状態とに切り換えるように構成され、
前記エンジン本体にて発電機を駆動することにある。
請求項3に記載の特徴構成によれば、負荷の変動に対応して、制御手段によって、回転状態検出手段の検出情報に基づいて、希薄燃焼式に構成されたエンジン本体の回転速度を定格回転速度に維持するように燃料供給量調節手段が制御され、且つ、エンジン本体の回転速度を定格回転速度に維持するのを補助するように、補助駆動手段が作動状態と停止状態とに切り換えられる状態で、エンジン本体が運転され、そのエンジン本体によって、発電機が一定の回転速度に維持されるように駆動される。
ところで、希薄燃焼式に構成されたエンジン本体は、一般のものに比べて、省燃費及び低NOx化を図れるものの、負荷の増大に対してエンジン本体の回転速度が低下し易いものであるが、このような希薄燃焼式のエンジン本体を用いたものにおいて、本発明を採用することにより、負荷の増大に対してエンジン本体の回転速度を目標回転速度に維持する作用を、特に効果的に発揮させることができるのである。
本請求項3は上記の請求項2に合わせて実施するものであり、請求項2によれば、エンジン本体の回転速度を検出して、その回転速度の検出情報に基づいて、エンジン本体の回転速度を目標回転速度に維持するのを補助するように、補助駆動手段を作動状態と停止状態とに切り換えることにより、エンジン本体の回転速度を的確に目標回転速度に維持することができる。
従って、省燃費及び低NOx化の利点を生かすと共に、所望の負荷をかけることができるまでに要する時間を短縮できるようにしながら、発電機を適正に駆動することができるようになった。
例えば、エンジン本体にて発電機を駆動して給電している通常の運転中に、負荷を増大させるときは、一挙に増大させることができる、又は、段階的に増大させるにしても、その増大幅を大きくすることができるようになり、短時間で所望の負荷をかけることができる。
又、駆動対象の発電機が非常用である場合は、停電時に、過給式エンジンを起動後、短時間で所望の負荷をかけることができるようになり、非常用電源としての実用性を向上することができるようになった。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて、過給式エンジンを非常用電源設備用に用いた場合の実施形態を説明する。
図1に示すように、非常用電源設備は、過給式エンジンEと、その過給式エンジンEにて駆動される発電機30と、その発電機30から負荷Lに供給される電力量を調節する給電量調節器31と、その給電量調節器31の作動を制御する給電制御器32とを備えて構成してあり、商用電源からの電力供給が停止する停電時に、過給式エンジンEが自動的に起動されて、発電機30が駆動され、負荷Lに給電されるように構成してある。
【0015】
図1に示すように、過給式エンジンEは予混合過給タイプに構成し、都市ガス等のガス燃料と燃焼用空気とが予混合された予混合燃料にて駆動されるエンジン本体1と、そのエンジン本体1から排出される排ガスにて駆動されて、エンジン本体1に予混合燃料を過給する過給機Tと、エンジン本体1への予混合燃料の供給量を調節する燃料供給量調節手段Vと、エンジン本体1の回転状態を検出する回転状態検出手段としての回転速度センサ15と、その回転速度センサ15の検出情報に基づいて、エンジン本体1の回転速度を目標回転速度としての定格回転速度に維持するように燃料供給量調節手段Vを制御する制御手段としてのエンジン制御器18を備えて構成してある。
【0016】
そして、本発明においては、過給機Tの排ガスタービン3の駆動を補助する補助駆動手段としての補助駆動部Aを、駆動補助のときにはエンジン本体1から出力されるエネルギを用いずに作動するように設け、エンジン制御器18は、回転速度センサ15の検出情報に基づいて、エンジン本体1の回転速度を定格回転速度に維持するのを補助するように、補助駆動部Aを駆動補助を行う作動状態と停止状態とに切り換えるように構成してある。
【0017】
過給機Tは、排ガスタービン3とコンプレッサ2とを軸4にて連動連結して、排ガスタービン3にてコンプレッサ2を駆動するように構成してある。
コンプレッサ2の吸気作用により吸気される空気と、ガス燃料路7を通じて加圧状態で供給されるガス燃料との混合比を調節する混合弁6を設け、その混合弁6にて混合された予混合燃料が、予混合燃料供給路5を通じてコンプレッサ2の吸気口に吸気され、コンプレッサ2の吐出口から吐出される圧縮予混合燃料が過給路8を通じて、エンジン本体1に供給され、並びに、エンジン本体1から排出される排ガスが、排ガス路9を通じて排ガスタービン3の給気口に供給され、排ガスタービン3から排出される排ガスが、煙道10を通じて排出されるように構成してある。
つまり、エンジン本体1から排出される排ガスにて排ガスタービン3が駆動されると共に、その排ガスタービン3に連動連結されたコンプレッサ2が駆動され、そのコンプレッサ2によって、混合弁6にて混合された予混合燃料が吸気、圧縮され、圧縮された予混合燃料が過給路8を通じてエンジン本体1に供給される。
【0018】
設定空燃比を、空気比λが例えば1.7程度になるように設定し、混合弁6にて、空燃比を設定空燃比に調節して希薄予混合燃料を生成して、エンジン本体1に供給する。エンジン本体1は、理論空気量よりも多い燃焼用空気にてガス燃料を燃焼させる希薄燃焼式に構成してある。
【0019】
コンプレッサ2をバイパスする状態で、バイパス路11を吸気路5と過給路8とに接続し、過給路8においてバイパス路11との接続箇所よりも下流側の箇所に、スロットルバルブ12を設け、並びに、バイパス路11にバイパス路開閉弁13を設けてある。又、過給路8においてバイパス路11との接続箇所よりも上流側の箇所には、インタークーラ14を設けてある。
エンジン本体1の回転速度を検出する回転速度センサ15を設け、過給路8におけるスロットルバルブ12よりも下流側の箇所において、エンジン本体1に供給される予混合燃料の圧力を検出する圧力センサ16を設けてある。
図1中の17は、エンジン本体1を始動させるセルモータである。
【0020】
補助駆動部Aについて説明を加える。補助駆動部Aは、窒素ガスを高圧(例えば、11768kP(Gauge)程度)にて貯蔵する気体貯蔵部としての複数のガスボンベ21と、複数のガスボンベ21に接続された補助駆動用ガス路22と、その補助駆動用ガス路22に設けた減圧弁23及び補助駆動ガス断続用開閉弁24を備えて構成し、補助駆動用ガス路22を排ガス路9に接続してある。そして、補助駆動ガス断続用開閉弁24を開弁することにより、ガスボンベ21の圧縮窒素ガスを減圧弁23にて減圧し(例えば、588〜785kP(Gauge)程度)、そのように減圧した圧縮窒素ガスを排ガスタービン3に供給することにより、排ガスタービン3の駆動を補助し、補助駆動ガス断続用開閉弁24を閉弁することにより、排ガスタービン3への圧縮窒素ガスを停止して、排ガスタービン3の駆動の補助を停止するように構成してある。
【0021】
つまり、補助駆動部Aは、ガスボンベ21に貯蔵されている圧縮窒素ガスを過給機Tにおける排ガスタービン3に供給することにより、排ガスタービン3の駆動を補助するよう構成して、駆動補助のときにはエンジン本体1から出力されるエネルギを用いずに作動するよう設けてある。
又、補助駆動ガス断続用開閉弁24を開弁する状態が、補助駆動を行う作動状態に相当し、補助駆動ガス断続用開閉弁24を閉弁する状態が、補助駆動を停止する停止状態に相当する。
【0022】
エンジン制御器18には、回転速度センサ15及び圧力センサ16夫々の検出情報が入力され、又、エンジン制御器18は、混合弁6、スロットルバルブ12、バイパス路開閉弁13及び補助駆動ガス断続用開閉弁24夫々の作動を制御するように構成してある。
説明を加えると、エンジン制御器18は、後述する給電制御器32からのエンジン起動指令に基づいて、エンジン本体1を起動させる起動制御を開始すると共に、回転速度センサ15の検出回転速度が定格回転速度(例えば、1500rpm)に達して、検出回転速度が定格回転速度に維持される状態が起動確認用設定時間(例えば、5秒間)の間継続することによって、エンジン本体1の起動完了を判別すると共に、起動完了を判別したときには、給電制御器32に対して、負荷接続指令を送信する。
起動制御は、周知であるので、詳細な説明は省略するが、セルモータ17及び点火プラグ(図示省略)を作動させると共に、スロットルバルブ12を開弁して、エンジン本体1に予混合燃料を供給して、燃料を着火、燃焼させて、エンジン本体1を作動させる。
【0023】
又、エンジン制御器18は、起動完了を判別すると、回転速度センサ15の検出情報に基づいて、エンジン本体1の回転速度を定格回転速度に維持するように燃料供給量調節手段Vを制御するエンジン運転制御を開始し、このエンジン運転制御は、給電制御器32からのエンジン停止指令があるまで継続し、エンジン停止指令があると、スロットルバルブ12を閉弁して、エンジン本体1への予混合燃料の供給を停止して、エンジン本体1を停止させる停止制御を実行する。
【0024】
そして、エンジン制御器18は、エンジン運転制御の継続中は、回転速度センサ15の検出情報に基づいて、過給機Tの駆動を補助する必要がある状態(以下、アシスト必要状態と称する場合がある)か、アシスト必要状態でないかを判別し、アシスト必要状態と判別したときは、補助駆動ガス断続用開閉弁21を開弁して、補助駆動部Aを作動状態に切り換え、アシスト必要状態でないと判別すると、補助駆動ガス断続用開閉弁21を閉弁する。
【0025】
アシスト必要状態は、回転速度センサ15にて検出される検出回転速度が定格回転速度から低下するときの低下率(例えば、検出回転速度の微分値)が設定低下率以上となる状態のときや、検出回転速度が定格回転速度よりも低くて、定格回転速度と検出回転速度との差がアシスト用設定偏差以上になる状態のときに、判別する。
【0026】
エンジン運転制御は、設定空燃比になるように混合弁6の作動を制御すると共に、回転速度センサ15の検出情報に基づいて、エンジン本体1の回転速度を定格回転速度に維持するように、スロットルバルブ12の開度を調節する。具体的には、回転速度センサ15の検出情報に基づいて、PID制御にて、スロットルバルブ12の開度を求め、求めた開度になるように、スロットルバルブ12の開度を調節する。
更に、エンジン運転制御においては、圧力センサ16の検出情報に基づいて、予混合燃料の圧力を設定圧力に維持するように、バイパス路開閉弁13を開閉制御する。つまり、圧力センサ16の検出圧力が設定圧力よりも高くなると、バイパス路開閉弁13を開弁して、圧力センサ16の検出圧力が設定圧力にまで低下すると、バイパス路開閉弁13を閉弁するように制御して、エンジン本体1に供給される予混合燃料の圧力を設定圧力に維持するようにしてある。
従って、燃料供給量調節手段Vは、スロットルバルブ12及びバイパス路開閉弁13にて構成してある。
【0027】
給電制御器32は、商用電源(図示せず)からの負荷Lに対する給電が停止した停電状態、及び、給電が復帰した復帰状態を検出すると共に、停電状態を検出すると、エンジン制御器18に対して、過給式エンジンの起動を指令するエンジン起動指令を送信し、復帰状態を検出すると、エンジン制御器18に対して、過給式エンジンを停止するエンジン停止指令を送信するように構成してある。
又、給電制御器32は、商用電源から電力が供給されている平常時は、発電機30と負荷Lとの接続を遮断し、エンジン制御器18から負荷接続指令が送信されるのに伴って、発電機30から負荷Lに対して給電を開始すると共に、給電量を調節するように給電量調節器31の作動を制御するように構成してある。例えば、定格出力が1000kWの場合、負荷接続指令が送信されると、400kWの負荷を投入し、その後、10秒程度経過すると、合計で700Wの負荷を投入するように、給電量調節器31の作動を制御する。
【0028】
次に、図2に示すフローチャートに基づいて、エンジン制御器18の制御動作について説明する。
先ず、エンジン起動指令の有無を判別し、エンジン起動指令が有ると、起動制御を開始し、エンジンの起動完了を判別するまで、起動制御を継続して、エンジンを起動させる(ステップ#1〜#3) 。
起動が完了すると、給電制御器32に対して負荷接続指令を送信すると共に、エンジン運転制御を開始し、このエンジン運転制御は、給電制御器32からエンジン停止指令が有るまで継続するが、そのエンジン運転制御の実行中においては、アシスト必要状態か、アシスト必要状態でないかを判別し、アシスト必要状態と判別したときは、補助駆動ガス断続用開閉弁21を開弁して、補助駆動部Aを作動状態に切り換え、アシスト必要状態でないと判別したときは、補助駆動ガス断続用開閉弁21を閉弁して、停止状態に切り換える(ステップ#4〜#8) 。
給電制御器32からエンジン停止指令が有ると、停止制御を実行して、リターンする(ステップ#9、#10) 。
【0029】
従って、アシスト必要状態でないと判別すると、補助駆動ガス断続用開閉弁21を閉弁して、補助駆動部Aを停止状態に切り換えることにより、検出回転速度が定格回転速度を下回る状態のときに、排ガスタービン3の駆動補助を停止するようにしてあるので、エンジン本体1の回転速度がオーバーシュートするのを防止して、エンジン本体1の回転速度を精度良く定格回転速度に維持することができる。
【0030】
次に、上述の如き制御構成にて運転して、本発明による過給式エンジンの性能を検証した結果を、図3に基づいて説明する。尚、検証試験に用いた過給式エンジンの定格出力は1000kWであり、エンジン本体1は、空気比λが1.7程度の希薄予混合燃料を用いる希薄燃焼式である。図3において、(イ)は、起動時からのエンジン本体1の回転速度の経時変化を示し、(ロ)は、負荷投入量の経時変化を示し(負荷の値は、発電機の出力の計測値である)、(ハ)は、回転速度を定格回転速度に維持するのを補助するように、補助駆動ガス断続用開閉弁24を開閉制御した結果を示し、(イ)、(ロ)及び(ハ)は、互いに時間軸を一致させてある。又、(ハ)において、縦軸の「 0」 は、補助駆動ガス断続用開閉弁24の閉弁状態を示し、「1」 は補助駆動ガス断続用開閉弁24の開弁状態を示す。
【0031】
図3の(イ)に示すように、時間軸0の時点から20数秒前の時点で、エンジン本体1が起動され、回転速度センサ15の回転速度センサ15の検出回転速度が定格回転速度(例えば、1500rpm)に達し、検出回転速度が定格回転速度に維持される状態が起動確認用設定時間(例えば、5秒間) の間継続した時点、即ち、時間軸0の時点で起動の完了が判別される。
図3の(ロ)に示すように、起動の完了が判別された時間軸0の時点において、400kWの負荷を投入し、その約10秒後、合計で700kWの負荷を投入するように、給電制御器32によって、給電量調節器31の作動が制御される。
図3の(ハ)は、上述のように負荷が投入されたときに、エンジン本体1の回転速度を定格回転速度に維持するように、補助駆動ガス断続用開閉弁24が開閉制御される状態を示す。
【0032】
尚、負荷投入後、時間が経過するのに伴って、エンジン本体1の回転速度のハンチングが小さくなり、負荷投入後、約100秒経過すると、アシスト必要状態が判別されなくなって、以降は、排ガスタービン3の駆動を補助することなく運転が可能となっている。
【0033】
つまり、本発明による過給式エンジンを用いることにより、起動後、約30秒程度で、定格負荷の70%に相当する負荷を投入することが可能になった。
ちなみに、排ガスタービンの駆動を補助しない過給式エンジンを用いる場合は、定格負荷の70%に相当する負荷を投入できるまでに、5分間程度を要していた。
【0034】
〔別実施形態〕
次に別実施形態を説明する。
【0037】
(イ) 上記の実施形態においては、目標回転速度を定格回転速度として、エンジン本体1の回転速度を定格回転速度に維持するように運転する場合について例示したが、負荷に応じて目標回転速度を変更設定するように構成して、エンジン本体1の回転速度が目標回転速度になるように運転するようにしても良い。
【0038】
(ロ) 上記の実施形態においては、回転状態検出手段の具体構成として、エンジン本体1の回転状態として回転速度を検出する回転速度センサ15を設ける場合について例示したが、回転状態検出手段の具体構成として、例えば、エンジン本体1の出力軸のトルクを検出するトルクセンサを設けても良い。この場合、エンジン制御器18は、トルクセンサの検出情報に基づいて、エンジン本体1のトルクが目標トルクになるように燃料供給量調節手段Vを制御し、且つ、エンジン本体1のトルクを前記目標トルクに維持するのを補助するように、補助駆動部Aを作動状態と停止状態とに切り換えるように構成する。
【0039】
(ハ) 上記の実施形態において設けたバイパス路11及びバイパス路開閉弁13は省略可能であり、この場合は、燃料供給量調節手段Vは、スロットルバルブ12のみにて構成されることになる。
【0040】
(ニ) 上記の実施形態においては、本発明を予混合過給タイプの過給式エンジンに適用する場合について例示したが、本発明は、予混合過給タイプ以外の各種過給式エンジンにも適用することができる。
例えば、過給機Tにて、燃焼用空気を圧縮し、その圧縮燃焼用空気に燃料を混合させて、その混合燃料をエンジン本体1に供給するタイプにも適用することができる。この場合は、図1において、混合弁6を、過給路8におけるスロットルバルブ12よりも上流側の箇所に設けると共に、その混合弁6にガス燃料路7を接続して、この混合弁6にて、燃焼用空気とガス燃料との混合比を調節することになる。
あるいは、過給機Tにて、燃焼用空気をエンジン本体1に過給し、燃料を直接、エンジン本体1に噴射するタイプにも適用することができる。
【0041】
(ホ) 上記の実施形態においては、エンジン本体1を希薄燃焼式に構成する場合について例示したが、エンジン本体1は希薄燃焼式に限定されるものではなく、空気比λが1程度の予混合燃料で燃焼させるように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】過給式エンジンを用いた非常用電源設備の系統図
【図2】過給式エンジンの制御動作のフローチャートを示す図
【図3】過給式エンジンの制御動作のタイムチャートを示す図
【符号の説明】
1 エンジン本体
3 排ガスタービン
15 回転状態検出手段
18 制御手段
21 気体貯蔵部
30 発電機
A 補助駆動手段
T 過給機
V 燃料供給量調節手段
Claims (3)
- 発電機を駆動するエンジン本体から排出される排ガスにて駆動されて過給する過給機と、
前記エンジン本体への燃料の供給量を調節する燃料供給量調節手段と、
前記エンジン本体の回転状態を検出する回転状態検出手段と、
その回転状態検出手段の検出情報に基づいて、前記エンジン本体の回転状態が目標回転状態になるように前記燃料供給量調節手段を制御する制御手段が設けられた非常用電源設備用の過給式エンジンであって、
前記過給機の駆動を補助する補助駆動手段が、駆動補助のときには前記エンジン本体から出力されるエネルギを用いずに作動するように設けられ、
前記制御手段は、前記回転状態検出手段の検出情報に基づいて、前記エンジン本体の回転状態を前記目標回転状態に維持するのを補助するように、前記補助駆動手段を駆動補助を行う作動状態と停止状態とに切り換えるように構成され、
前記過給機が、燃料と燃焼用空気とが予混合された予混合燃料を過給するように構成され、
前記燃料供給量調節手段が、前記エンジン本体への予混合燃料の供給量を調節するように構成され、
前記補助駆動手段が、圧縮気体を前記過給機における排ガスタービンに供給することにより、前記排ガスタービンの駆動を補助するように構成され、且つ、前記排ガスタービンの駆動を補助するための構成として、気体としての窒素を圧縮状態で貯蔵する気体貯蔵部を備えて、その気体貯蔵部から圧縮気体としての圧縮窒素ガスを減圧弁にて減圧して前記排ガスタービンに供給することにより、前記排ガスタービンの駆動を補助するように構成されている非常用電源設備用の過給式エンジン。 - 前記回転状態検出手段が前記エンジン本体の回転速度を検出するように構成され、
前記制御手段が、前記回転状態検出手段の検出情報に基づいて、前記エンジン本体の回転速度が目標回転速度になるように前記燃料供給量調節手段を制御し、且つ、前記エンジン本体の回転速度を前記目標回転速度に維持するのを補助するように、前記補助駆動手段を前記作動状態と前記停止状態とに切り換えるように構成されている請求項1記載の非常用電源設備用の過給式エンジン。 - 前記エンジン本体が、理論空気量よりも多い燃焼用空気にて燃料を燃焼させる希薄燃焼式にて構成され、
前記制御手段が、前記回転状態検出手段の検出情報に基づいて、前記エンジン本体の回転速度を前記目標回転速度としての定格回転速度に維持するように前記燃料供給量調節手段を制御し、且つ、前記エンジン本体の回転速度を前記定格回転速度に維持するのを補助するように、前記補助駆動手段を前記作動状態と前記停止状態とに切り換えるように構成されている請求項2記載の非常用電源設備用の過給式エンジン。
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