JP4577807B2 - ポリエステル系トナー - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる乾式トナーとして有用であり、特に、両面印刷時の2度目の印刷時における加熱定着部での非オフセット性が良好であるポリエステル系トナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真印刷方法および静電荷現像方法においては、感光体上に形成された静電荷像が帯電したトナーによって現像され、これが紙等の上に定着され画像が得られる。定着方式としては、現像によって得られたトナー像を加圧および加熱されたローラーを用いるヒートローラー方式等を挙げることができる。優れた画像を得るためには、トナーの帯電安定性や定着性が優れる必要がある。また、装置は発熱体である定着部を有するため、装置内の温度は高くなりやすいが、これによって、トナーがブロッキングしないことも必要である。
【0003】
また、最近では、コピーの消費量が増し、印刷の継続時間が長くなる傾向があるため、トナーの帯電安定性の向上が求められている。さらに、紙の消費を抑えるために両面印刷が行われるようになってきていることから、トナーには、2度の熱履歴を受けても加熱ローラーに付着しないような性能(両面印刷時における非オフセット性)も求められている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
トナーが加熱ローラーに付着しないようにするためには、例えば、架橋したバインダー樹脂を使用する等の対策が考えられるが、定着したトナーの強度と弾性が不足しているために、両面印刷時における非オフセット性は満足できるものではない。
また、定着性と環境性の観点から、バインダー樹脂にはポリエステル系樹脂を使用することが望まれているが、これまでのポリエステル系樹脂を使用したトナーでは、この問題点は解決されていないのが現状である。
【0005】
本発明の目的は、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる乾式トナーとして有用であり、両面印刷時に加熱定着部での非オフセット性が良好であるポリエステル系トナーを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、ワックス成分を含有した特定の架橋ポリエステル樹脂と特定の非架橋ポリエステル樹脂をバインダー樹脂として使用し、さらに、これを含有するトナーの熱特性を特定することによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、メチルエチルケトン不溶分が1〜60質量%、軟化温度Tendが195〜235℃、ガラス転移温度Tgが65〜72℃であるとともに、ポリエチレンワックス及び/又はポリプロピレンワックスを重合時に1〜10質量%添加した架橋ポリエステル樹脂(A)50〜90質量%と、軟化温度Tendが120℃以下であり、ガラス転移温度Tgが45〜55℃である非架橋ポリエステル樹脂(B)10〜50質量%とからなるバインダー樹脂を含有し、軟化温度Tendが130〜180℃であり、ガラス転移温度Tgが58〜68℃であることを特徴とするポリエステル系トナーに関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のトナーに用いられる架橋ポリエステル樹脂(A)は、両面印刷時におけるトナーの非オフセット性を良好とするために必要な成分であり、メチルエチルケトン不溶分が1〜60質量%、軟化温度Tendが195〜235℃、ガラス転移温度Tgが65〜72℃であるとともに、ポリエチレンワックス及び/又はポリプロピレンワックスを1〜10質量%含有する必要があり、全バインダー樹脂の50〜90質量%である必要がある。
【0009】
これは、(A)成分のメチルエチルケトン不溶分が1質量%未満であると、得られるトナーの非オフセット性が不良となる傾向にあり、60質量%を超えると、トナーの定着性が不良となる傾向にあるためである。好ましいメチルエチルケトン不溶分の下限値は5質量%であり、好ましい上限値は55質量%である。
【0010】
また、(A)成分の軟化温度Tendが195℃未満であると、得られるトナーの非オフセット性が不良となる傾向にあり、235℃を超えると、トナーの定着性が不良となる傾向にあるためである。好ましい軟化温度Tendの下限値は200℃であり、好ましい上限値は230℃である。
【0011】
さらに、ガラス転移温度Tgが65℃未満であると、得られるトナーの耐久性が不良となる傾向にあり、72℃を超えるとトナーの定着性が不良となる傾向にあるためである。好ましいガラス転移温度Tgの下限値は66℃以上であり、好ましい上限値は70℃である。
【0012】
本発明においては、(A)成分中にポリエチレンワックス及び/又はポリプロピレンワックスを含有させることによって、トナーの非オフセット性を向上させることができるものであるが、含有量が1質量%未満であると、トナーの非オフセット性が不充分となる傾向にあり、10質量%を超えると、トナーの耐久性が不良となる傾向にある。好ましいポリエチレンワックス及び/又はポリプロピレンワックスの含有量の下限値は1.5質量%であり、好ましい上限値は9質量%である。
【0013】
本発明で使用するポリエチレンワックス及び/又はポリプロピレンワックスの数平均分子量Mnは、500〜10000の範囲であることが好ましい。これは、数平均分子量Mnを500以上とすることによって、トナーの非オフセット性をより良好なものとすることができる傾向にあるためである。より好ましくは、1500以上である。また、数平均分子量Mnを10000以下とすることによって、トナーの定着性をより良好なものとすることができる傾向にあるためである。より好ましくは、9000以下である。
【0014】
(A)成分へのポリエチレンワックス及び/又はポリプロピレンワックスは、(A)成分の重合時に添加する。
【0015】
また、(A)成分が全バインダー樹脂の50質量%未満であると、得られるトナーの非オフセット性が不良となる傾向にあり、90質量%を超えると、トナーの定着性が不良となる傾向にあるためである。好ましい使用量の下限値は55質量%であり、好ましい上限値は85重量%である。
【0016】
本発明のトナーに用いられる非架橋ポリエステル樹脂(B)は、メチルエチルケトン不溶分を含まない樹脂であって、得られるトナーの定着性を良好とするために必要な成分であり、その軟化温度Tendは120℃以下であり、ガラス転移温度Tgは45〜55℃である必要があり、全バインダー樹脂の10〜50質量%である必要がある。
【0017】
これは、(B)成分の軟化温度Tendが120℃を超えると、トナーの定着性が不良となる傾向にあるためである、好ましくは110℃以下である。
【0018】
また、(B)成分のガラス転移温度Tgが45℃未満であると、得られるトナーの耐久性が不良となる傾向にあり、55℃を超えるとトナーの定着性が不良となる傾向にあるためである。好ましいガラス転移温度Tgの下限値は48℃であり、好ましい上限値は53℃である。
【0019】
さらに、(B)成分が全バインダー樹脂の10質量%未満であると、得られるトナーの定着性が不良となる傾向にあり、50質量%を超えると、トナーの非オフセット性が不良となる傾向にあるためである。好ましい使用量の下限値は15質量%であり、好ましい上限値は45質量%である。
【0020】
本発明で使用される(A)成分は、架橋剤を用いて得られるものであり、3価以上の多価カルボン酸成分および/または多価アルコール成分を使用して得られる樹脂や、イソシアネート等の成分を使用して得られる樹脂である。
【0021】
架橋剤として有用な3価以上の多価カルボン酸成分としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボンン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸およびそれらの酸無水物等を挙げることができる。
【0022】
また、3価以上の多価アルコール成分としては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等を挙げることができる。
これらは、それぞれ単独で用いても良く、複数組み合わせて用いても良い。
【0023】
本発明のトナーにおいて、(A)成分及び(B)成分に用いられる2価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、セバシン酸、イソデシル琥珀酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、及びそれらのモノメチルエステル、モノエチルエステル、ジメチルエステル、ジエチルエステルなどやそれらの酸無水物を挙げることができる。これらはそれぞれ単独で用いても良く、複数組み合わせて用いても良い。
【0024】
本発明のトナーにおいて、(A)成分及び(B)成分に用いられるアルコール成分には、芳香族ジオール成分が含まれているのが好ましく、(A)成分及び(B)成分のいずれにも含まれているのが特に好ましい。
【0025】
芳香族ジオール成分としては、例えば、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等を挙げることができる。これらは、それぞれ単独または2種以上を混合して用いることができる。芳香族ジオール成分はポリエステル樹脂のガラス転移温度を上げる効果があるため、得られるトナーの耐ブロッキング性を向上させることができる。特に、2.1≦n≦8であるポリオキシプロピレン(n)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2.0≦n≦3.0であるポリオキシエチレン(n)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0026】
本発明のトナーにおいて、(A)成分及び(B)成分に用いられる、芳香族ジオール成分以外のジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
(A)成分及び(B)成分は、エステル化反応またはエステル交換反応と、縮合反応とを含む通常のポリエステル樹脂の製造方法により得ることができるものであり、製造時にはポリエステル重合触媒が通常用いられる。重合触媒としては、例えば、三酸化アンチモン、ジブチル錫オキサイド、テトラブチルチタネート、酢酸亜鉛等の金属化合物を挙げることができる。
【0028】
本発明のトナーには、帯電量の調整および帯電安定性の付与を目的として荷電制御剤を使用することができる。トナーを負極性にする荷電制御剤としては、例えば、含金属モノアゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、4級アンモニウム塩、ニトロイミダーゾール誘導体等を挙げることができ、中でも含金属モノアゾ染料が好ましい。これらは複数組み合わせて用いても良い。これらの負極性を示す荷電制御剤の使用量は、トナー中に0.1〜3重量%、特に0.4〜2.5重量%であるのが好ましい。
【0029】
トナーを正極性にする荷電制御剤としては、例えば、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体を挙げることができ、中でもニグロシン染料が好ましい。これらは複数組み合わせて用いても良い。これらの正極性を示す荷電制御剤の使用量は、トナー中に0.1〜5重量%、特に0.4〜4.5重量%であるのが好ましい。さらに、必要に応じて、上述した負極性の荷電制御剤と正極性の荷電制御剤とを複数組み合わせて使用しても良い。
【0030】
本発明のトナーには、ヒートローラーとの離型性を良好とし、非オフセット性を改善する目的で離型剤が使用することができる。離型剤としては、例えば、ポリオレフィン、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル、部分ケン化脂肪酸エステル、高級脂肪酸、高級アルコール、パラフィンワックス、アミドワックス、多価アルコールエステル、シリコーンワニス、脂肪族フロオロカーボン、シリコンオイル等が挙げられ、1種以上を適宜選択して使用することができる。これらの離型剤の使用量は、トナー中に8重量%以下、特に6重量%以下であるのが好ましい。
【0031】
本発明のトナーには、着色剤を使用することができる。着色剤としては、例えば、有彩色の染料や、カーボンブラック、カーボンブラックの表面を樹脂で被覆しているグラフト化カーボンブラック等の顔料を挙げることができる。本発明においては、着色剤として公知のものは通常全て使用可能であり、特に限定されるものではない。着色剤の使用量は、トナー中に0.1〜10重量%、特に0.5〜8重量%であるのが好ましい。
【0032】
本発明のトナーには、流動性向上剤を使用することができる。流動性向上剤としては、例えば、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、窒化ケイ素等を挙げることができ、中でもシリカの微粉末が特に好ましい。これら流動性向上剤の使用量は、トナー中0.05〜0.7重量%、特に0.1〜0.6重量%であるのが好ましい。
【0033】
本発明のトナーには、さらに必要に応じての上記以外の添加剤を使用することができる。
【0034】
本発明のトナーを得るための混練工程においては、用いられる樹脂の軟化温度を基準にして混練を行うことが重要であり、それにより樹脂が溶融し、添加剤等の分散が安定して得られる。
【0035】
本発明のトナーは、架橋ポリエステル樹脂(A)と非架橋ポリエステル樹脂(B)とからなるバインダー樹脂を用い、これとその他の必要な成分とをブレンドすることによって得られるものであり、得られるトナーの軟化温度Tendが130〜180℃であり、ガラス転移温度Tgが58〜68℃である必要がある。
【0036】
これは、トナーの軟化温度Tendが130℃未満である場合は、非オフセット性が不良となる傾向にあり、180℃を超えると、トナーの定着性が不良となる傾向にあるためである。好ましいトナーの軟化温度Tendの下限値は140℃であり、好ましい上限値は170℃である。
【0037】
また、トナーのガラス転移温度Tgが58℃未満である場合は、耐久性が不良となる傾向にある、68℃を超えると、トナーの定着性が不良となる傾向にあるためである。好ましいガラス転移温度Tgの下限値は60℃であり、好ましい上限値は66℃である。
【0038】
本発明のトナーの平均粒径は、5〜15μmであるのが好ましい。この範囲の粒径を有するトナーは、画像安定性に優れる傾向にある。特に好ましくは、6〜13μmである。
【0039】
【実施例】
以下に実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例に示した樹脂の評価方法を以下に示す。
【0040】
(評価基準)
(1)軟化温度Tend
島津製作所(株)製フローテスターCFT−500を用いて、1mmφ×1mmのノズル、荷重98N(10kgf)、昇温速度6℃/minの等速昇温下で、サンプル2.0gが全量流出したときの温度を測定した。
【0041】
(2)ガラス転移温度Tg
示差走差熱量計を用いて、昇温速度5℃/minにおけるチャートのベースラインと吸熱カーブの接線との交点からの測定した。
【0042】
(3)MEK不溶分
50gのメチルエチルケトン(MEK)にサンプル0.5gを添加し、室温で72時間保持した後に、これを重量を測定したセライトを敷き詰めたろ過フィルターでろ過し、ろ過したフィルターごと不溶分を乾燥し、その重量を測定してろ過後のサンプルの重量を求め、全サンプルの重量との比から不溶分(%)を算出することにより行った。
【0043】
(4)非オフセット性の評価法
ローラー速度100mm/sに設定した温度可変のプリンターを用い、両面印刷をして非オフセット性の評価を行った。また、2回目の定着時に定着ローラーにトナーが移行するときの温度をオフセット発生温度と定め、以下の基準により非オフセット性を判定した。
◎:オフセット発生温度230℃以上の優れたトナー
○:オフセット発生温度220℃の良好なトナー
△:オフセット発生温度200℃の使用可能なトナー
×:オフセット発生温度200℃未満の使用不可のトナー
【0044】
(5)定着性の評価
非オフセット性の評価と同じ条件で1回目の印刷での定着性の評価を行い、反射濃度系で測定した定着率が80%を超える温度を最低定着温度として、以下の基準により定着性を判定した。
◎:最低定着温度130℃の優れたトナー
○:最低定着温度140℃の良好なトナー
△:最低定着温度150℃の使用可能なトナー
×:最低定着温度160℃の使用不可のトナー
【0045】
(6)耐久性
上記の評価方法で用いたプリンターを用い、定着温度180℃で印刷して、耐久性試験を行った。なお、試験では、トナーがカートリッジ内に滞在するようにしながらトナーの固着の程度を観察し、トナーが固着する印刷枚数を基準にして耐久性を評価した。
◎:印刷枚数10000枚以上でも固着しない優れたトナー
○:印刷枚数8000枚以上10000枚未満で固着する良好なトナー
△:印刷枚数5000枚以上8000枚未満で固着する実用可能なトナー
×:印刷枚数が5000枚未満で固着する使用不可のトナー
【0046】
[架橋ポリエステル樹脂(1)]
表1、表2に示される仕込み組成のモノマーと、全酸成分に対して500ppmの三酸化アンチモンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。ついで、撹拌回転数120rpm、反応系内温度が260℃の条件で、エステル化反応を行った。エステル化反応は、水が留出しなくなった時点で終了させた。
【0047】
さらに、反応系内温度を230℃に保ち、表3に記載した量のWAXを反応容器に投入し、約30分混合分散を行った(ただし、樹脂J1についてはWAXを用いなかった)。そして、反応容器内の真空度を約40分かけ約20mmHg/分の割合で、1.0mmHg以下となるよう減圧し、反応系からジオール成分を留出させ、樹脂が所望の軟化温度となるまで縮合反応を行った。ジオール成分が留出しはじめてから約2時間後、反応系内の粘度が徐々に上昇しはじめ、所望の軟化温度に相当する粘度となった時点で反応系を常圧に戻し、加熱を停止した後、反応物を窒素により加圧して約2時間かけて取り出し、2時間かけて徐々に冷却し、樹脂A1〜K1を得た。
【0048】
このようにして得られた樹脂A1〜K1を液体ガスクロマトグラフィーにより組成分析した結果、表1、表2に示した樹脂組成となっていた。また、樹脂の特性値を表3に示す。
【0049】
【表1】
Figure 0004577807
【0050】
【表2】
Figure 0004577807
【0051】
【表3】
Figure 0004577807
【0052】
[非架橋ポリエステル樹脂(2)]
表4に示される仕込み組成のモノマーと、全酸成分に対して5000ppmのジブチル錫オキサイドを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。ついで、撹拌回転数120rpm、反応系内温度260℃の条件で、エステル化反応を行った。
エステル化反応は、水が留出しなくなった時点で終了させた。
【0053】
さらに、反応系内温度を240℃に保ち、反応容器内の真空度を約40分かけ約20mmHg/分の割合でて1.0mmHg以下となるよう減圧し、反応系から水を留出させ、樹脂が所望の軟化温度となるまで縮合反応を行った。所望の軟化温度となった時点で反応系を常圧に戻し、加熱を停止したのち、反応物を窒素により加圧して約1時間かけて取り出し、徐々に冷却し、樹脂A2〜G2を得た。
【0054】
このようにして得られた樹脂A2〜G2を液体ガスクロマトグラフィーにより組成分析した結果、表4に示した樹脂組成となっていた。また、樹脂の特性値を表5に示す。
【0055】
【表4】
Figure 0004577807
【0056】
【表5】
Figure 0004577807
【0057】
[実施例1〜7]
表1〜表5に示したポリエステル樹脂を表6に示す組み合わせと割合(質量%)で用いてトナーを製造した。表6の配合の樹脂94質量部、カーボンブラック(三菱化学社製#44)5質量部、および負帯電性の荷電制御剤(オリエント化学社製S−34)1質量部をヘンシェルミキサーで30分間混合し、得られた混合物を2軸混練機(内温180℃)で溶融混練した。混練物を冷却した後、これをジェットミル微粉砕機で微粉砕し、分級機を用いて平均粒径を7μmの微粉末を得た。得られた微粉末に対して、0.25質量%のシリカ(日本アエロジル社製R−972)を加え、ヘンシェルミキサーで混合して付着させ、トナー1〜7を得た。得られたトナーの熱的特性を表6に示す。
【0058】
次に、得られたトナーに対して前述の評価方法を用いてトナーの特性評価を行った。これらのトナーの評価結果を表6に示す。
【0059】
【表6】
Figure 0004577807
【0060】
表6からわかるように、両面印刷時の非オフセット性に関しては、実施例3、5が特に優れていた。実施例1はやや劣っていたが実用可能なレベルであった。
定着性に関しては、実施例1〜3及び6〜7が特に優れていた。実施例5はやや劣っていたが実用可能なレベルであった。また、耐久性に関しては、実施例3〜5及び7が特に優れていた。実施例1はやや劣っていたが実用可能なレベルであった。
【0061】
[比較例1〜9]
表1〜表5に示したポリエステル樹脂を表7に示す組み合わせと割合(質量%)とする以外は、実施例と同一の条件下で処理してトナー8〜15を得た。得られたトナーの熱的特性を表7に示す。
また、樹脂I1とD2を表−7で示す割合で用い、全樹脂量を92質量部、カーボンブラック(三菱化学社製#44)を5質量部、負帯電性の荷電制御剤(オリエント化学社製S−34)1質量部、そして分子量が3000で樹脂E1に使用したPPWAXを2質量部使用し、ヘンシェルミキサーで30分間混合した。
次いで得られた混合物を2軸混練機で溶融混練した。溶融混練は内温を180℃に設定して行った。混練後、冷却しトナー魂を得、ジェットミル微粉砕機で微粉砕し、分級機でトナーの粒径を整え、粒径を7μmとした。得られた微粉末に対して、0.25質量%のシリカ(日本アエロジル社製、R−972)を加え、ヘンシェルミキサーで混合し付着させ、最終的にトナー16を得た。
【0062】
また、実施例と同一の条件で得られたトナーの特性評価を行った。その結果を表7に示す。
【0063】
【表7】
Figure 0004577807
【0064】
表7からわかるように、本発明の条件を満たさないトナー8〜16は、トナー特性が劣っており、実用レベルではなかった。
【0065】
【発明の効果】
以上に述べてきたように、本発明のポリエステル系トナーは、定着性と耐久性が良好であり、かつ、両面印刷時の非オフセット性にも優れており、静電記録法や静電印刷法等における静電荷像や磁気潜像の現像のための乾式トナーとして極めて有用である。

Claims (1)

  1. メチルエチルケトン不溶分が1〜60質量%、軟化温度Tendが195〜235℃、ガラス転移温度Tgが65〜72℃であるとともに、ポリエチレンワックス及び/又はポリプロピレンワックスを重合時に1〜10質量%添加した架橋ポリエステル樹脂(A)50〜90質量%と、軟化温度Tendが120℃以下であり、ガラス転移温度Tgが45〜55℃である非架橋ポリエステル樹脂(B)10〜50質量%とからなるバインダー樹脂を含有し、軟化温度Tendが130〜180℃であり、ガラス転移温度Tgが58〜68℃であることを特徴とするポリエステル系トナー。
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