JP4577488B2 - ゴルフボールの製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、フラーレン又はその誘導体は特殊な分子形状を有することから、通常用いられる添加剤と比べて媒体中に均一に微分散させることが困難な場合が多い。
添加剤がゴルフボール用材料中で均一に微分散していない場合には、ゴルフボールの連続打撃耐久性等が低下するおそれが生じる。上記フラーレン又はその誘導体をゴルフボール用材料中に、より良好に微分散させる手段が求められていた。
請求項1:
コアと、コアを被覆する1層又は複数層のカバーとを備えたゴルフボールの製造方法において、前記コアが、シス−1,4−ポリブタジエン100質量部に対し、α,β−モノエチレン不飽和カルボン酸又はその金属イオン中和物から選ばれる1種を単独で又は2種以上を混合したものを10質量部以上60質量部以下、充填剤を5質量部以上30質量部以下、過酸化物を0.5質量部以上5質量部以下それぞれ配合してなるゴム組成物を加硫して形成されるものであり、前記カバーを構成する少なくとも1層が(A)アイオノマー樹脂または熱可塑性ポリウレタンと(B)フラーレンとを含むカバー材組成物にて形成されると共に、前記カバー材組成物にて前記カバーを構成する少なくとも1層を形成する工程が、前記(B)成分を前記(A)成分中に均一に分散させる均一分散工程を含み、該均一分散工程が、前記(A)成分の溶融状態の下、前記(B)成分と、末端がアミノ基により変性されたスチレン系エラストマーとを混合してマスターバッチを作製する工程と、その後前記マスターバッチを前記(A)成分に混合する工程とを含むことを特徴とするゴルフボールの製造方法。
請求項2:
前記(A)アイオノマー樹脂または熱可塑性ポリウレタンに(B)フラーレンが均一に分散したカバー材組成物にて前記カバーを構成する少なくとも1層を形成する工程が、前記均一分散工程を経て得られたカバー材組成物を射出成型する工程を含む請求項1記載のゴルフボールの製造方法。
本発明のゴルフボールは、コアと、コアを被覆する1層又は複数層のカバーとを備えたゴルフボールにおいて、前記カバーを構成する少なくとも1層が、(A)熱可塑性樹脂に(B)フラーレンが均一に分散したカバー材組成物にて形成されることを特徴とするゴルフボールである。ここで、本発明において「均一である」とは、前記(B)成分を前記(A)成分に配合した場合に、前記(B)成分が0.7mm以下、好ましくは0.45mm以下の粒径で前記(A)成分中に分散していること、より好ましくは前記(B)成分が(A)成分中に溶解していることを意味するものであり、その判定手法としては、前記(A)成分及び前記(B)成分の混合物について加圧成形により直径約180mmのプレスケーキを作製した場合に、0.7mmより大きな粒径の前記(B)成分が目視により確認されなければ「均一である」と判定する。
(a−1)成分又は(a−2)成分に含まれる不飽和カルボン酸の含量としては、通常4質量%以上、好ましくは6質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、上限として通常30質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。不飽和カルボン酸含量が少なすぎると、剛性・反発性が小さくなって、ゴルフボールの飛び性能が低下する場合がある。一方、不飽和カルボン酸含量が多すぎると、柔軟性が不十分となる場合がある。
また、(a−3)成分又は(a−4)成分に含まれる不飽和カルボン酸の含量としては、通常4質量%以上、好ましくは6質量%以上、より好ましくは8質量%以上、上限として通常15質量%以下、好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。不飽和カルボン酸含有量が少なすぎると、反発性が低下する場合があり、不飽和カルボン酸含有量が多すぎると、加工性が低下する場合がある。
ここで、酸基を中和する金属イオンとしては、例えば、Na+、K+、Li+、Zn++、Cu++、Mg++、Ca++、Co++、Ni++、Pb++等を挙げることができ、中でもLi+、Na+、Mg++、Ca++、Zn++を好適に用いることができる。中和の際には、例えば上記金属イオンのギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物及びアルコキシド等の化合物を用いることができる。
前記高分子ポリオール化合物としては、特に限定されるものではないが、ポリエステル系ポリオール、ポリオール系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、コポリエステル系ポリオール、及びポリカーボネート系ポリオール等を挙げることができる。
また、これら高分子ポリオール化合物の数平均分子量としては、通常600〜5000、好ましくは1000〜3000である。
また、上記(b)熱可塑性ポリウレタンの比重としては、通常1.0〜1.3(g/cm3)、より好ましくは1.1〜1.25(g/cm3)である。
このようなフラーレンとしては市販品を用いることができ、例えばフロンティアカーボン社製C60、混合フラーレン、水酸化フラーレン、水素化フラーレン、多孔質フラーレン、フロンティアブラックや、東京化成(株)製のフラーレンC60、C70、ストレム・ケミカルズ社(Strem Chemicals, Inc.)製のフラーレンC84、ジョンソン・マティ社(Johnson Matthey Company)製のfullerene powder, hydroxylated, C60(OH)n(n=20〜28)等が挙げられる。
ここで、本発明において「有機溶媒に溶解または懸濁」とは、有機溶媒中に前記(B)成分が溶け込み均一な溶液を作っているか、或いは有機溶媒中に前記(B)成分の微細粒子が分散した懸濁液を作った状態を意味するものであり、その判定手法としては、上記有機溶媒に前記(B)成分を混合して30分経過後に粒子の沈降の有無を目視により確認し、粒子の沈降が生じていなければ「有機溶媒に溶解または懸濁」しているものと判定する。
ここで、上記(B)成分の有機溶媒中の濃度としては通常0.1mg/ml以上、好ましくは1mg/ml以上、より好ましくは2mg/ml以上、上限として通常100mg/ml以下、好ましくは80mg/ml以下、より好ましくは50mg/ml以下である。上記(B)成分の有機溶媒中の濃度が0.1mg/ml未満であると、作業性が低下する場合があり、一方100mg/mlを超えると、分散性が低下する場合がある。
このような前記(A)成分が溶融した状態下で行われる混合工程においては、二軸押出機、単軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混合機、中でも二軸押出機を好適に使用することができ、溶融状態の(A)成分に上記溶液を混合することができる。
ニーダー、バンバリーミキサー等の混合機を用いて前記(A)成分と前記(B)成分とを混合するときの混合機の設定温度、或いは、二軸押出機や単軸押出機を用いて前記(A)成分と前記(B)成分とを混合する場合における、溶融状態の前記(A)成分に溶液又は懸濁液状態の(B)成分を添加する部分の二軸押出機や単軸押出機の設定温度としては、通常150℃以下、好ましくは120℃以下である。前記(B)成分を有機溶媒に溶解または懸濁させた状態で溶融状態の前記(A)成分に高温で混合すること自体は、通常は危険で行なわないと当業者は考えるが、上記のような温度設定をすることにより、比較的安全に両者を混合することが可能である。
なお、前記(B)成分を有機溶媒に溶解または懸濁させて前記(A)成分に混合した後、溶媒を揮発させる方法としては、常圧で加熱して揮発させても良いし、前記二軸押出機等の混合機にベント口を設置し、減圧脱気を行なっても良い。
ここで、上記(B)成分と上記スチレン系エラストマーとの配合比としては、((B)成分)/(極性ポリマー)(質量比)の値として通常1/99〜99/1、好ましくは5/95〜15/85である。
このような前記(A)成分が溶融した状態下で行われる混合工程においては、上記と同様に、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混合機、中でも二軸押出機、単軸押出機を好適に使用することができる。
なお、本発明において二軸押出機又は単軸押出機を用いる場合には、粒径の大きな前記(B)成分や、前記(B)成分製造時に発生した副生成物や不純物等を除去するために、押出機内にはスクリーンメッシュを設置することが好ましい。このようなスクリーンメッシュとしては、90メッシュ以上、好ましくは120メッシュ以上のスクリーンメッシュを用いることが好適である。
これらの添加剤の配合量としては、特に限定されるものではないが、上記(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対し、通常0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜30質量部、更に好ましくは1〜6質量部である。添加剤の配合量が大きすぎると、(B)成分の均一な分散状態が実現されず、耐久性が低下する場合があり、添加剤の配合量が小さすぎると、添加剤の効果が得られない場合がある。
このような射出成型を行なう場合には、射出成型機に前記(A)成分と、有機溶媒に溶解或いは懸濁した前記(B)成分又は極性ポリマーと混合した前記(B)成分とを、予め混合した後に射出成型機に投入しても良いし、両者を予め混合することなく別々の投入口或いは同じ投入口より同時に投入してもよい。このような射出成型を行なうことにより、製造コストの削減と、前記(B)成分の前記(A)成分への良好な分散状態とが同時に達成されるため好適である。
また、上記コアの980N(100kg)荷重負荷時のたわみ量としては、通常2.0mm以上、好ましくは2.5mm以上、より好ましくは2.8mm以上、更に好ましくは3.2mm以上、上限として通常6.0mm以下、好ましくは5.5mm以下、より好ましくは5.0mm以下、更に好ましくは4.5mm以下である。変形量が少なすぎると打感が悪くなると共に、特にドライバーなどのボールに大変形が生じるロングショット時にスピンが増えすぎて飛ばなくなる場合があり、軟らかすぎると、打感が鈍くなると共に、反発が十分でなくなり飛ばなくなる場合や、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなる場合がある。
なお、上記コアの直径としては通常25mm以上、好ましくは36mm以上、上限として通常40mm以下、好ましくは39mm以下、更に好ましくは38mm以下である。
上記カバー材組成物にて形成されるカバー層は、カバー層の一部又は全部のいずれであってもよく、本発明のゴルフボールは、糸巻きゴルフボール(カバーが単層又は2層以上の多層構造のいずれも含む)、ツーピースソリッドゴルフボール、スリーピースソリッドゴルフボール、マルチピースソリッドゴルフボール等いずれのゴルフボールとしてもよい。
更に、本発明のゴルフボールにおいて、最外層カバーの表面には多数のディンプルを形成することができ、更にカバー上には下地処理、スタンプ、塗装等種々の処理を行なうことができる。
また、本発明のゴルフボールの初速度は、通常76.4m/s以上、好ましくは76.6m/s以上、更に好ましくは76.8m/s以上、上限として通常77.7m/s以下となるように製造される。初速度が低すぎると飛距離が出なくなる場合があり、初速度が大きすぎるとR&A(USGA)にて定められているゴルフボールの規格外となってしまう。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
下記表1のコア配合、加硫方法にて、No.1及びNo.2のソリッドコアを作成した。また、作成したソリッドコアにつき、100kg荷重時の変形量(mm)を測定した。また、比重、重量(g)、外径(mm)をそれぞれ測定した。また、初速度(m/s)は、USGA(R&A)の測定方法に準拠して測定した。
ダイナロン4630Pとフラーレンとを9:1の重量比で混合し、ラボプラストミルを用いて120℃,5分間攪拌してフラーレンマスターバッチを作製した。各実施例につき、下記表2に示す配合に従い秤量したアイオノマー樹脂又は熱可塑性ポリウレタンエラストマーを主材としたカバー材料について、最高温度200℃に設定した二軸押出機(30mmφ,L/D=32)を用いて10kg/hの速度で混練してカバー材を得た。その後、モールド内に配置した表1のコアNo.1又はコアNo.2に上記のカバー材を射出成形してツーピースゴルフボールを得た。
[参考例]
フラーレンをトルエン溶媒中に10mg/mlの濃度で溶解した溶液を作製した。下記表2に示す配合に従い秤量したアイオノマー樹脂を主材としたカバー材料について、最高温度200℃に設定した二軸押出機(30mmφ,L/D=32)を用いて10kg/hの速度で混練してカバー材を得た。これを参考例とした。
なお、他の原料とは別に上記の溶液を添加し、溶液添加部位の押出機の設定温度を80℃に設定した。また、溶媒を気化して減圧脱気した。その後、モールド内に配置した表1のコアNo.1に上記カバー材を射出成形してツーピースゴルフボールを得た。
下記表2に示す配合に従い秤量したカバー材料について、最高温度200℃に設定した二軸押出機(30mmφ,L/D=32)を用いて10kg/hの速度で混練してカバー材を得た。その後、モールド内に配置した表1のコアNo.1又はコアNo.2に上記カバー材を射出成形してツーピースゴルフボールを得た。
均一性
カバー材料を混合し、加圧成形して直径180mmのプレスケーキを作製し、0.7mmより大きな(B)成分,フラーレン成分が目視により確認された場合、均一ではないと判定し、確認されなければ均一であると判定した。
外径及び重量
ボール製品の外径(mm)及び重量(g)をそれぞれ測定した。
硬度
ボール製品に対して100kg荷重時の変形量(mm)を測定した。数値が大きいほど軟らかいことを示す。
表面硬度
ASTM D2240又はJIS K−7311試験法により硬度計測した。
初速度
初速度(m/s)は、USGA(R&A)の測定方法に準拠して測定した。
耐久性
入射速度43m/sで鉄板に向けてボールを繰り返し発射し、破壊するまでの打撃回数を調べ、下記基準により耐久性を評価した。
○ 100回以上
× 100回未満
C60=60%,C70=25%、その他の高次フラーレン
※ダイナロン4630P
スチレン系熱可塑性エラストマー
※ハイミラン1605
三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸共重合体のナトリウムイオン中和物
※ハイミラン1706
三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸共重合体の亜鉛イオン中和物
Claims (2)
- コアと、コアを被覆する1層又は複数層のカバーとを備えたゴルフボールの製造方法において、前記コアが、シス−1,4−ポリブタジエン100質量部に対し、α,β−モノエチレン不飽和カルボン酸又はその金属イオン中和物から選ばれる1種を単独で又は2種以上を混合したものを10質量部以上60質量部以下、充填剤を5質量部以上30質量部以下、過酸化物を0.5質量部以上5質量部以下それぞれ配合してなるゴム組成物を加硫して形成されるものであり、前記カバーを構成する少なくとも1層が(A)アイオノマー樹脂または熱可塑性ポリウレタンと(B)フラーレンとを含むカバー材組成物にて形成されると共に、前記カバー材組成物にて前記カバーを構成する少なくとも1層を形成する工程が、前記(B)成分を前記(A)成分中に均一に分散させる均一分散工程を含み、該均一分散工程が、前記(A)成分の溶融状態の下、前記(B)成分と、末端がアミノ基により変性されたスチレン系エラストマーとを混合してマスターバッチを作製する工程と、その後前記マスターバッチを前記(A)成分に混合する工程とを含むことを特徴とするゴルフボールの製造方法。
- 前記(A)アイオノマー樹脂または熱可塑性ポリウレタンに(B)フラーレンが均一に分散したカバー材組成物にて前記カバーを構成する少なくとも1層を形成する工程が、前記均一分散工程を経て得られたカバー材組成物を射出成型する工程を含む請求項1記載のゴルフボールの製造方法。
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