JP4573637B2 - 往復動式作業工具 - Google Patents

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Description

本発明は、レシプロソー等の往復動式作業工具に関し、被加工材を切断作業する際の防振技術および切断技術に関する。
往復動式作業工具の一例として、特開2001−9632号公報(特許文献1)には電動式のレシプロソーの構成が開示されている。この先行技術に係るレシプロソーは、スライダに前後方向の往復直線運動を行わせる運動変換機構にカウンタウェイトを設定する構成を有する。このカウンタウェイトは、スライダの往復直線運動に伴って当該スライダの往復運動方向と逆向きに、すなわちスライダの往復運動の位相に対し180度位相がシフトした状態で往復動するよう構成され、これによってスライダが往復直線運動する際のレシプロソーの振動抑制を図っている。
また特開平06−79701号公報(特許文献2)に開示された電動式のレシプロソーは、モータの回転出力をスライダの前後方向への往復直線運動に変換する第1の運動変換機構と、モータの回転出力をスライダの上下方向への往復回動運動(揺動運動)に変換する第2の運動変換機構とを有する。かかる構成のレシプロソーによれば、スライダにて保持された切断工具としてのブレードに前後方向の往復直線運動に加えて上下方向の往復回動運動を行わせることによって、切断効率を向上することが可能とされる。
特許文献1に開示されたレシプロソーは、運動変換機構に制振用としてのカウンタウェイトを付加的に設定する関係で、当該カウンタウェイトの重量相当分だけ、電動工具自体の重量が増加してしまうことになり、この点において更なる改良の余地がある。他方、特許文献2に開示されたレシプロソーは、ブレードの作動機構として、ブレードに往復直線運動を行わせる第1の運動変換機構と、ブレードに上下方向の往復回動運動を行わせる第2の運動変換機構とを備える構成であるため、作動機構の構造が複雑化するとともにレシプロソー全体の重量が増大し、またこれらの機構を収容するハウジング全体も大型化することとなり、この点において更なる改良の余地がある。
特開2001−9632号公報 特開平06−79701号公報
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、往復動式作業工具の軽量化を図りつつ、ハンドグリップでの振動を低減させるとともに、切断効率を向上する上で有用な技術を提供することを目的とする。
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。
請求項1に記載の発明によれば、作業工具本体と、当該作業工具本体の先端領域に配置された切断工具と、作業工具本体内に配置され、切断工具に往復直線運動を行わせる作動機構と、作業工具本体における切断工具と反対側の後端部側に配置されたハンドグリップとを有する往復動式作業工具が構成される。本発明における「往復動式作業工具」としては、レシプロソー、ジグソー等のような木工、金工等といった各種被加工材の切断作業に用いられる作業工具が広く包含されるものとする。なお「切断工具」は、典型的には、薄い鋼鈑の縁に歯が連続して設けられたブレードがこれに該当する。
本発明によれば、ハンドグリップと作業工具本体とは、切断工具の往復直線運動方向と交差する方向に回動軸を介して相対回動自在に連接されており、ハンドグリップが作業者によって把持された状態において、切断工具は、作業工具本体に対して作動機構を介して往復直線運動を行いつつハンドグリップに対して当該作業工具本体とともに往復回動運動を行う構成とされる。作業者がハンドグリップを把持した状態において、切断工具が作業工具本体に対して往復直線運動するとき、作業工具本体に慣性力が作用する。この慣性力によって作業工具本体とともに切断工具は、ハンドグリップに対し回動軸を支点にした往復回動運動を行う。このように、切断工具が往復直線運動しつつ往復回動運動することによって、往復直線運動する際の切断工具の角度に変化が与えられることになり、この切断工具の角度変化によって切断効率が向上する。
また本発明においては、ハンドグリップに対し回動軸を介して作業工具本体を連接するという簡単な構成で切断工具の往復回動運動を可能としている。このため、切断工具に往復回転運動を行わせるべく、モータによって駆動される多数の機能部品の組み合わせからなる運動変換機構を採用している従来に比べて、構造の簡素化および軽量化を図ることができ、延いては往復動式作業工具の軽量化が達成されることになる。また作業工具本体を細身に設定することが可能となり、当該作業工具本体の先端領域を、ハンドグリップを把持する手とは反対側の手で把持して切断作業をする際の使い勝手が良好となる。
また本発明においては、ハンドグリップと作業工具本体との間には、ハンドグリップと作業工具本体との相対往復回動運動を弾発状に受けることによって作業工具本体からハンドグリップへの振動の入力を吸収する弾性体が介装された構成とされる。なお「弾性体」としては、ゴムやバネ等がこれに該当する。また「弾性体が介装される」態様としては、回動軸から離れた位置に配置される態様、回動軸線上に配置される態様、のいずれも好適に包含する。ハンドグリップと作業工具本体との間に介装された弾性体は、切断作業時において、作業工具本体に発生した振動のハンドグリップへの伝達を、当該弾性体の弾性変形によって吸収し低減する。このような弾性体による振動低減方式は、カウンタウェイトを用いる従来に比較し、往復動式作業工具の軽量化を図る上で有効となる。
このように、本発明によれば、構造を複雑化することなく、ハンドグリップでの振動を低減し、かつ切断効率を向上することが可能となった。
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の往復動式作業工具におけるハンドグリップは、作業工具本体に対して着脱自在に構成され、作業工具本体に着脱自在に装着される標準仕様のノーマルハンドグリップと交換可能とされている。本発明によれば、作業工具本体に対しハンドグリップを交換するのみで、高効率モードの往復動式作業工具と、標準効率モードの往復動式作業工具とに切換えることができる。
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の往復動式作業工具における弾性体は、回動軸から離れた位置に配置されるとともに、その弾発方向が当該回動軸を中心とする回動運動の接線方向に設定された構成とされる。被加工材の切断作業時において、作業工具本体に発生する振動は、切断工具の往復直線運動方向、つまり本体部を水平状態にして切断作業を遂行する場合であれば、前後方向の振動が他の方向の振動に比べて最も大きい。そしてこの前後方向の振動は、ハンドグリップに対して作業工具本体との連接部位である回動軸を支点とする回動運動として入力する。したがって、弾性体の弾発方向を前後方向の振動の入力方向に対応した当該回動軸を中心とする回動運動の接線方向に設定することで、ハンドグリップに入力する前後方向の振動を効率的に吸収することが可能となる。
(請求項4に記載の発明)
請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の往復動式作業工具において、ハンドグリップには、切断作業時に作業工具本体側からハンドグリップに入力する振動を抑制する動吸振器が設置された構成とされる。切断作業時に作業工具本体側に振動が発生したとき、当該作業工具本体側からハンドグリップに入力される振動に対して動吸振器による制振作用を付加することで、弾性体では吸収し切れないハンドグリップの振動を当該動吸振器によって更に制振し、ハンドグリップに関しての振動低減効果をより高めることができる。なお「動吸振器」は、典型的には、弾性要素による付勢力が作用した状態で切断工具の往復運動方向と同方向に直線運動可能とされたウェイトを有する構成とされる。動吸振器は、制振対象物に対して弾性要素さらには減衰要素を介して接続されたウェイトを介して制振対象物の振動を低減するための装置であり、切断工具による切断作業時に振動が生じる場合、弾性要素を介してウェイトが当該振動に対向状に動作することで制振作用を奏する。
(請求項5に記載の発明)
請求項5に記載の発明によれば、請求項4に記載の往復動式作業工具における弾性体または動吸振器の少なくとも一方は、切断工具の概ね往復直線運動線上に配置された構成とされる。弾性体が切断工具の概ね往復直線運動線上に配置される構成としたときは、作業工具本体側からハンドグリップへ入力される振動に対し、弾性体の振動吸収作用を合理的に発揮することが可能となる。また動吸振器が切断工具の概ね往復直線運動線上に配置される構成としたときは、当該動吸振器による制振作用を合理的に働かせることが可能となるとともに、当該動吸振器の作動に伴う無用な振動の発生が抑えられることとなり、有効な制振機能を奏することが可能となる。
本発明によれば、往復動式作業工具の軽量化を図りつつ、ハンドグリップでの振動を低減させるとともに、切断効率を向上する上で有用な技術が提供されることとなった。
以下、本発明の実施の形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施の形態では、図1に示すように往復動式作業工具の一例としてレシプロソー101を用いて説明する。図1に示すように、本実施の形態に係るレシプロソー101は、概括的に見て本体部103、本体部103から突出するスライダ107先端のチャック109に着脱自在に取り付けられて被加工材(便宜上特に図示しない)を切断作業するブレード111、本体部103におけるブレード111と反対側の後端部に着脱自在に装着されたハンドグリップ105を主体として構成されている。本体部103は、本発明における「作業工具本体」に対応し、ブレード111は本発明における「切断工具」に対応する。本体部103は、モータハウジング103aと、当該モータハウジング103aの前部に接合されるギアハウジング103bによって構成されている。なお説明の便宜上、ブレード111側を前側、ハンドグリップ105側を後側という。
本体部103を構成するモータハウジング103a内には、駆動モータ113が配設されている。駆動モータ113は、作業者がトリガスイッチ115を投入操作することで通電駆動され、これによってブレード111がスライダ107およびチャック109とともに長軸方向(前後方向)に直線状に往復運動し、被加工材を切断可能に構成される。スライダ107、チャック109およびブレード111によって可動部が構成される。スライダ107は、ギアハウジング103bに軸受108を介して長軸方向に往復動可能に支持されるとともに、ギアハウジング103b内に設けられた運動変換機構121を介してモータ軸117と接続されている。運動変換機構121は、本発明における「作動機構」に対応する。
運動変換機構121は、モータ軸117の回転運動をスライダ107の長軸方向への往復直線運動に変換する機構であり、ベベルギア123、クランクピン129、スライダブロック131を主体として構成されている。ベベルギア123は、モータ軸117のピニオン119と噛み合い係合されており、ギアハウジング103bに固定された固定軸125に軸受127を介して取り付けられ、水平面内での回転が可能とされる。ベベルギア123の上面側には、その回転中心から所定距離シフトした位置にクランクピン129が取り付けられている。クランクピン129は、下端側がベベルギア123に形成されたピン取付孔に圧入されて固定状に取り付けられ、上端側がスライダ107に形成されたスライダブロック131に対し軸受133を介して嵌装される。したがって、クランクピン129は、スライダ107に対し相対的に回転可能とされる。
スライダブロック131は、スライダ107の長軸方向と交差する方向に延びるガイド溝131aを有し、そのガイド溝131aに嵌装された軸受133を介してクランクピン129が相対的に移動可能とされる。したがって、固定軸125を中心とするクランクピン129の回転運動のうち、スライダ107の長軸方向と水平面内で交差する方向の動作成分については、ガイド溝131aに逃がされ、スライダ107の長軸方向への動作成分のみが当該スライダ107に伝達される構成とされている。すなわちスライダ107は、長軸方向にのみ往復動することが許容される構成とされている。なお本体部103の先端部には切断作業時において、作業者がハンドグリップ105を把持した状態で被加工材に向って押し付けるシュー106が設けられている。
レシプロソー101による被加工材の切断作業時には、本体部103に振動が発生することになるため、この振動がハンドグリップ105に伝達するのを低減するべく、本実施の形態では、当該ハンドグリップ105を下記の如く構成している。以下、ハンドグリップ105の構造および本体部103に対する装着構造につき、図1〜図3を参照して説明する。ハンドグリップ105は、側面視で概ねD字形に形成された、いわゆるD型ハンドグリップであり、概ね矩形断面の中空状に形成されるとともに前側上部領域には前面側を開放した開口部141が形成されている。そしてハンドグリップ105は、当該開口部141を、本体部103の後端部、すなわちモータハウジング103aの後端部に形成されたグリップ装着部143に嵌合することによって当該モータハウジング103aに装着される。
ハンドグリップ105は、スライダ107の軸線に平行な鉛直面を分割面とする左右の2分割構造とされ、分割された左右2部材105a,105b(図2および図3参照)を、開口部141を構成する領域がグリップ装着部143に被さるように、左右側方から突き合わせた状態で当該左右2部材105a,105bの周縁部における複数箇所を締結ネジ144(図1参照)によって互いに接合することで、当該グリップ装着部143に固定される。締結ネジ144による左右2部材105a、105bの接合を解除したときは、ハンドグリップ105をグリップ装着部143から外すことが可能となる。すなわち、ハンドグリップ105は、本体部103に対して着脱自在に構成されている。なお開口部141とグリップ装着部143との嵌合面間には、図1に示すように、相互に係合する凹凸状の係合部142が設けられ、この係合部142の係合によってハンドグリップ105は、本体部103から後方に抜け脱しないように抜け止めされている。
またハンドグリップ105は、前後に2分割されており、前側部分がモータハウジング103aに装着される固定部145aとされ、作業者によって把持される後側部分が可動グリップ部145bとされる。なお固定部145aのモータハウジング103aに対する取付けは、上段において説明した通りである。可動グリップ部145bは、その一端(下端)が固定部145aの一端(下端)に回動軸147を介して回動可能に連接され、他端(上端)が固定部145aの他端(上端)に圧縮コイルバネ149を介して弾発状に連接されている。圧縮コイルバネ149は、本発明における「弾性体」に対応する。上記のように構成することで可動グリップ部145bと本体部103とは、回動軸147を支点にして上下方向、すなわちブレード111の往復直線運動と交差する方向に相対回動運動が可能とされる。このように、固定部145aに対し、可動グリップ部145bが、その下端において回動軸147を介して回動自在に連接され、上端において圧縮コイルバネ149を介して連接される構成としたことで、いわゆる防振式ハンドグリップ105が構成される。
図2は固定部145aと可動グリップ部145bとの回動連接部を示す断面図である。図示のように、ハンドグリップ105の左側部材105aと右側部材105bが互いに突き合わせ状に接合され、また固定部145aの側面下端部が可動グリップ部145bの側面下端部に外側から被さるように配置されている。この状態で固定部145aの側面端部が可動グリップ部145bの側面端部にブッシュ147aを介して取付ネジ147bにて締め付けられ、これによって固定部145aと可動グリップ部145bが相互に回動自在に連接されている。ブッシュ147aと取付ネジ147bによって回動軸147が構成されている。
また図1に示すように、圧縮コイルバネ149は、回動軸147よりも前方位置であって、かつスライダ107の軸線上に配置されるとともに、その弾発方向が回動軸147を中心とする回動運動の接線方向に設定されている。すなわち、圧縮コイルバネ149は、ハンドグリップ105における固定部145aと可動グリップ部145bとの間に前下がりの傾斜状に配置されている。図3は圧縮コイルバネ149の取付部を示す断面図である。図1および図3に示すように、可動グリップ部145bの前面上部には、圧縮コイルバネ149を収容する円形の筒孔を有する角形の筒部151が形成されている。この筒部151は、前方に向って前下がりの傾斜状に突出し、固定部145aに形成された空間部153内に移動可能に嵌め込まれ、また当該筒部151の左右側面に設けられた円形の突起(ピン)151aが空間部153の内壁面側に形成されたガイド溝153aに摺動自在に嵌め込まれている。ガイド溝153aは、筒部151の傾斜方向に所定長さで延在し、当該ガイド溝153aの長さの範囲内で固定部145aと可動グリップ部145bとの相対円弧運動が許容される。なお圧縮コイルバネ149は、一端が筒部151の筒孔底面に当接され、他端が空間部153の底面に当接されている。
可動グリップ部145bの中空部内における圧縮コイルバネ149の後方位置には、当該可動グリップ部145bの振動を抑制する動吸振器161が設けられている。動吸振器161は、本体部103から可動グリップ部145bに入力するブレード111の往復直線運動方向(前後方向)の振動を抑えるべく配置される。動吸振器161は、スライダ107の長軸方向を長尺方向とするガイドロッド163、当該ガイドロッド163に軸方向に移動可能に取付けられたウェイト165、および当該ウェイト165の軸方向両端領域に配置された付勢バネ167によって構成される。付勢バネ167は、ウェイト165がガイドロッド163の長軸方向に移動する際に、可動グリップ部145b(ロッド取付部)との間で当該ウェイト165に弾発力を付与する。
また本実施の形態に係るレシプロソー101においては、上述した防振式のハンドグリップ105は、防振機能を有しない標準仕様のノーマルハンドグリップと交換可能とされている。図6には本体部103にノーマルハンドグリップ205が装着された構成のレシプロソー101が示されている。防振式のハンドグリップ105とノーマルハンドグリップ205との交換を可能とするべく、モータハウジング103aに対する取付構成については、共通とされている。すなわち、ノーマルハンドグリップ205は、スライダ107の軸線に平行な鉛直面を分割面とする左右の2分割構造とされる。そして分割された左右2部材205a,205b(一方の部材105aについては、その一部が外観で示されている)を、その前側上部がモータハウジング103aのグリップ装着部143に被さるように、左右側方から突き合わせられ、その状態で当該左右2部材205a,205bの周縁部における複数箇所が締結ネジ244によって互いに接合されている。これによって当該グリップ装着部143に対して着脱自在に装着される。
本実施の形態に係るレシプロソー101は上記のように構成される。次に当該レシプロソー101の作用および使用方法について説明する。図1に示すレシプロソー101におけるハンドグリップ105の可動グリップ部145bに設けられたトリガスイッチ115を作業者が投入すると、駆動モータ113が通電駆動され、モータ軸117、ピニオン119を介してベベルギア123が固定軸125を中心にして水平面内にて回転駆動される。ベベルギア123の回転に伴いクランクピン129が固定軸125を中心にして回転(偏心回転)すると、スライダブロック137を介してスライダ107が長軸方向(前後方向)に上死点と下死点との間を直線状に往復運動するため、当該スライダ107の先端のチャック109に取り付けられたブレード111が往復運動し、これにより被加工材の切断が可能とされる。
作業者は切断すべき被加工材にシュー106を押し付けた状態で、往復運動するブレード111によって被加工材を上側から下側に向って切断するが、このとき、本実施の形態では、可動グリップ部145bと固定部145aとを回動軸147によって回動自在に連接する構成のため、作業者が可動グリップ部145bを斜めに押し付けたような場合でも、こじることなく、円滑に動作させることができる。
さてブレード111の駆動時において、あるいはブレード111による被加工材の切断作業時において、レシプロソー101には振動が発生する。本実施の形態では、ハンドグリップ105を固定部145aと可動グリップ部145bとに分割し、当該可動グリップ部145bを、その下端において固定部145aに回動軸147を介して回動自在に連接するとともに、上端において圧縮コイルバネ149を介して弾発状に連接する構成としている。このため、本体部103側に発生した振動の可動グリップ部145bへの入力(伝達)を圧縮コイルバネ149の弾発力によって吸収し低減することが可能となる。圧縮コイルバネ149は、ブレード111の概ね往復動作線上に配置されるとともに、回動軸147を中心とする回動運動の接線方向に設定されているため、本体部103側からハンドグリップ105の可動グリップ部145bへ入力される前後方向の振動を効率的に吸収することができる。
本実施の形態において、図1に示す防振式のハンドグリップ105付きレシプロソー101と、図6に示す標準仕様(防振機能無し)のノーマルハンドグリップ205付きレシプロソー101とを用いて、ハンドグリップ105,205の前後、上下、左右の各方向および3軸合成につきそれぞれ振動を測定した。その結果、防振式のハンドグリップ105(可動グリップ部145b)は、ノーマルハンドグリップ205に比べると、上下方向を除いた前後方向、左右方向および3軸合成につき、それぞれ低い振動値であり、振動低減効果を認めることができた。なおこの振動低減効果については、無負荷時と負荷時とのいずれについても同様であり、また木工、金工のいずれについても同様の結果が得られている。すなわち、本実施の形態によれば、ハンドグリップ105につき、全体的として十分な振動低減効果を奏することができた。
また本実施の形態によれば、切断作業時において、スライダ107、チャック109とともにブレード111が長軸方向に上死点と下死点との間で往復直線運動するとき、当該ブレード111は本体部103とともに回動軸147を支点にした上下方向の回動運動を行う。すなわち、ブレード111が往復直線運動するとき、本体部103に慣性力が作用し、この慣性力を圧縮コイルバネ149が受けることで当該本体部103とともにブレード111が回動軸147を支点にして圧縮コイルバネ149を変形させつつ上下方向に往復回動運動を行う。その結果として、ブレード111は、往復直線運動と回動軸147を中心とした上下方向の往復回動運動が複合した運動、つまり切断方向(前後方向)につき円弧運動を行うことになり、このような円弧運動が行われることでブレード111が往復動作する際の当該ブレード111の角度が変化し、このブレード111の角度変化によって切断効率が向上されることになる。
スライダ107が上死点から下死点へと移動する際、つまりブレード111が後方(図1の左方)へ移動して被加工材を切るとき(引くとき)には、ブレード111の傾斜角度(水平軸線とスライダ107の軸線とのなす角度)は、徐々に大きくなる側(先端側が上になる姿勢)へと変化する。この角度変化は、ブレード111を直線状に移動させるときよりも被加工材の切断部位に当るブレード111の歯数が減ることになり、そのため、被加工材に対してブレード111の歯が食い込み易くなり、切断作用が高められる。一方、スライダ107が下死点から上死点へと移動する際(押すとき)には、ブレード111の傾斜角度は、徐々に小さくなる側へと変化する。図4にはスライダ107が下死点に移動したときのブレード111の傾斜角度θ1(例えば1度)が示され、図5にはスライダ107が上死点に移動したときのブレード111の傾斜角度θ2(例えば−0.5度)が示されている。このように、本実施の形態によれば、ブレード111が往復直線運動する際に、当該ブレード111に本体部103とともに上下方向の往復回動運動を行わせることでブレード111の傾斜角度を変化させ、これによって切断効率の向上を図ることができる。なおブレード111の角度変化は、切断時の負荷が増大するに伴い大きくなる傾向を示す。
本実施の形態に係るレシプロソー101は、ハンドグリップ105の取付構造を改良することによって、当該ハンドグリップ105の低振動化および切断効率の向上化を実現する構成であり、低振動化あるいは切断効率の向上化のために、ブレードの作動機構中に機能部品を追加設定する構成の従来方式とは異なり、構造の簡素化および軽量化を図ることができ、延いてはレシプロソー101の軽量化が達成されることになる。また本体部103を構成するモータハウジング103a、ギアハウジング103bにつき、これを細身に設定することが可能となり、本体部103の先端領域を、可動グリップ部145bを把持する手とは反対側の手で把持して切断作業をする際の使い勝手が良好となる。
また本実施の形態では、本体部103に対して防振式のハンドグリップ105と標準仕様のノーマルハンドグリップ205とをそれぞれ着脱自在となし、それら両ハンドグリップ105,205を交換可能としている。このため、高効率モードのレシプロソー101と、標準効率モードのレシプロソー101を提供できる。
また本実施の形態においては、ハンドグリップ105の可動グリップ部145bに動吸振器161を設置している。このため、圧縮コイルバネ149により取り切れない可動グリップ部145bの振動に対し当該可動グリップ部145bに設けられた動吸振器161が制振機能を奏する。すなわち、レシプロソー101の可動グリップ部145bを、所定の外力(振動)が作用する制振対象体として見立てた場合、当該制振対象体である可動グリップ部145bに対して、動吸振器161における制振要素であるウェイト165および付勢バネ167が協働して受動的な制振を行なう。これにより本実施の形態におけるレシプロソー101の振動が効果的に抑制されることとなる。またブレード111が往復運動するときの振動源の周波数が低く、圧縮コイルバネでは取れないが、動吸振器161によれば、これを取ることができる。かくして、動吸振器161を設置することで、可動グリップ部145bの振動をより低減化し、使い勝手の良好なレシプロソー101を提供することができる。この場合、動吸振器161がブレード111の往復動作線上に配置されているため、当該動吸振器161による制振作用を合理的に働かせることが可能となるとともに、当該動吸振器161の作動に伴う無用な振動の発生が抑えられることとなり、有効な制振機能を奏することが可能となる。
なお本実施の形態における弾性体としての圧縮コイルバネ149に変えてゴムを利用してもよい。また本実施の形態では、往復動式作業工具の一例としてレシプロソー101を用いて説明したが、切断工具が往復動して被加工材を切断作業する、例えばジグソー等にも広く適用することが可能である。またハンドグリップ105の形状については、実施の形態で説明した、いわゆるD形ハンドグリップに限定されるものではない。
本実施の形態に係る防振式のハンドグリップが装着されたレシプロソーの全体構成を示す断面図である。 固定部と可動グリップ部との回動連接部を示す断面図である。 図1のIII−III線断面図である。 スライダが下死点に移動したときのブレードの傾斜角度を示す図である。 スライダが上死点に移動したときのブレードの傾斜角度を示す図である。 ノーマルハンドグリップが装着されたレシプロソーの全体構成を示す断面図である。
符号の説明
101 レシプロソー(往復動式電動工具)
103 本体部(作業工具本体)
103a モータハウジング
103b ギアハウジング
105 ハンドグリップ
105a 左側部材
105b 右側部材
106 シュー
107 スライダ
108 軸受
109 チャック
111 ブレード(切断工具)
113 駆動モータ
115 トリガスイッチ
117 モータ軸
119 ピニオン
121 運動変換機構(作動機構)
123 ベベルギア
125 固定軸
127 軸受
129 クランクピン
131 スライダブロック
131a ガイド溝
133 軸受
141 開口部
142 係合部
143 グリップ装着部
144 締結ネジ
145a 固定部
145b 可動グリップ部
147 回動軸
147a ブッシュ
147b ネジ
151 筒部
151a 突起
153 空間部
153a ガイド溝
161 動吸振器
163 ガイドロッド
165 ウェイト
167 付勢バネ
205 ノーマルハンドグリップ
205a 左側部材
205b 右側部材
244 締結ネジ

Claims (5)

  1. 作業工具本体と、
    前記作業工具本体の先端領域に配置された切断工具と、
    前記作業工具本体内に収容され、前記切断工具に往復直線運動を行わせる作動機構と、
    前記作業工具本体における前記切断工具と反対側の後端部側に配置されたハンドグリップと、を有する往復動式作業工具であって、
    前記ハンドグリップと前記作業工具本体とは、前記切断工具の往復直線運動方向と交差する方向に回動軸を介して相対回動自在に連接されており、前記ハンドグリップが作業者によって把持された状態において、前記切断工具は、前記作業工具本体に対して前記作動機構を介して往復直線運動を行いつつ前記ハンドグリップに対して当該作業工具本体とともに往復回動運動を行う構成とされ、
    前記ハンドグリップと前記作業工具本体との間には、前記ハンドグリップと前記作業工具本体との相対往復回動運動を弾発状に受けることによって前記作業工具本体から前記ハンドグリップへの振動の入力を吸収する弾性体が介装されていることを特徴とする往復動式作業工具。
  2. 請求項1に記載の往復動式作業工具であって、
    前記ハンドグリップは、前記作業工具本体に対して着脱自在に構成され、当該作業工具本体に着脱自在に装着される標準仕様のノーマルハンドグリップと交換可能とされていることを特徴とする往復動式作業工具。
  3. 請求項1または2に記載の往復動式作業工具であって、
    前記弾性体は、前記回動軸から離れた位置に配置されるとともに、その弾発方向が当該回動軸を中心とする回動運動の接線方向に設定されていることを特徴とする往復動式作業工具。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の往復動式作業工具であって、
    前記ハンドグリップには、切断作業時に前記作業工具本体側から当該ハンドグリップに入力する振動を抑制する動吸振器が設置されていることを特徴とする往復作動式作業工具。
  5. 請求項4に記載の往復動式作業工具であって、
    前記弾性体または動吸振器の少なくとも一方は、前記切断工具の概ね往復直線運動線上に配置されていることを特徴とする往復動式作業工具。
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