JP4573455B2 - 高電圧パルス発生装置及び露光用放電励起ガスレーザ装置 - Google Patents

高電圧パルス発生装置及び露光用放電励起ガスレーザ装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高電圧パルス発生装置及び露光用放電励起ガスレーザ装置に関し、更に詳細には、エネルギー移行効率が高く、コンパクトで、繰り返し周波数の高いArFエキシマレーザ装置やフッ素レーザ装置等に使用される高電圧パルス発生装置及び露光用放電励起ガスレーザ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、その製造用の投影露光装置においては解像力の向上が要請されている。
このため、露光用光源から放出される露光光の短波長化が進められており、半導体露光用光源として、従来の水銀ランプから波長248nmのKrFエキシマレーザ装置が用いられている。さらに、次世代の半導体露光用光源として、波長193nmのArFエキシマレーザ装置及び波長157nmのフッ素レーザ装置等の紫外線を放出するガスレーザ装置が有力である。
KrFエキシマレーザ装置においては、フッ素(F2 )ガス、クリプトン(Kr)ガス及びバッファーガスとしてのネオン(Ne)等の希ガスからなる混合ガス、ArFエキシマレーザ装置においては、フッ素(F2 )ガス、アルゴン(Ar)ガス及びバッファーガスとしてのネオン(Ne)等の希ガスからなる混合ガス、フッ素レーザ装置においては、フッ素(F2 )ガス及びバッファーガスとしてヘリウム(He)等の希ガスからなる混合ガスであるレーザガスが数百kPaで封入されたレーザチェンバの内部で放電を発生させることにより、レーザ媒質であるレーザガスが励起される。
【0003】
以下、従来のKrFエキシマレーザ装置、ArFエキシマレーザ装置、フッ素レーザ装置における高電圧発生回路について説明する。
(1)KrFエキシマレーザ装置の高電圧パルス発生装置
KrFエキシマレーザ装置において、上記したようにレーザチェンバ内で放電を発生させレーザガスを励起させるための高電圧パルス発生装置の例を図に示す。
の高電圧パルス発生装置は、可飽和リアクトルからなる3個の磁気スイッチSR1、SR2、SR3を用いた2段の磁気パルス圧縮回路からなる。
磁気スイッチSR1はIGBT等の半導体スイッチング素子である固体スイッチSWでのスイッチングロスの低減用のものであり、磁気アシストとも呼ばれる。第1の磁気スイッチSR2と第2の磁気スイッチSR3により2段の磁気パルス圧縮回路を構成している。
【0004】
に従って回路の構成と動作を以下に説明する。
まず、高電圧電源HVの電圧が所定の値Vinに調整され、主コンデンサC0が充電される。このとき、固体スイッチSWはオフになっている。主コンデンサC0の充電が完了し、固体スイッチSWがオンとなったとき、固体スイッチSW両端にかかる電圧は主に磁気スイッチSR1の両端にかかる。磁気スイッチSR1の両端にかかる主コンデンサC0の充電電圧V0の時間積分値が磁気スイッチSR1の特性で決まる限界値に達すると、磁気スイッチSR1が飽和して磁気スイッチが入り、主コンデンサC0、磁気スイッチSR1、インダクタンスLL 、昇圧トランスTr1の1次側、固体スイッチSWのループに電流が流れる。
同時に、昇圧トランスTr1の2次側、コンデンサC1のループに電流が流れ、主コンデンサC0に蓄えられた電荷が移行してコンデンサC1に充電される。 なお、ここでは、回路ループのインダクタンスとコンデンサC0の寄生インダクタンスを合成したものをインダクタンスLL として表している。また、主コンデンサC0、磁気スイッチSR1、インダクタンスLL 、昇圧トランスTr1の1次側、固体スイッチSWがなすループをパルス発生回路、昇圧トランスTr1の2次側、コンデンサC1のループを昇圧回路と呼ぶことにする。
【0005】
この後、コンデンサC1における電圧V1の時間積分値が磁気スイッチSR2の特性で決まる限界値に達すると、磁気スイッチSR2が飽和して磁気スイッチSR2が動作し、コンデンサC1、コンデンサC2、磁気スイッチSR2のループに電流が流れ、コンデンサC1に蓄えられた電荷が移行してコンデンサC2に充電される。
さらにこの後、コンデンサC2における電圧V2の時間積分値が磁気スイッチSR3の特性で決まる限界値に達すると、磁気スイッチSR3が飽和して磁気スイッチSR3が動作し、コンデンサC2、ピーキングコンデンサCp、磁気スイッチSR3のループに電流が流れ、コンデンサC2に蓄えられた電荷が移行してピーキングコンデンサCpが充電される。
予備電離のためのコロナ放電は、第1電極11が挿入されている誘電体チューブ12と第2電極13とが接触している個所を基点として誘電体チューブ12の外周面に発生するが、ピーキングコンデンサCpの充電が進むにつれてその電圧Vpが上昇し、Vpが所定の電圧になるとコロナ予備電離部の誘電体チューブ12表面にコロナ放電が発生する。
【0006】
このコロナ放電によって誘電体チューブ12の表面に紫外線が発生し、主放電電極E、E間のレーザ媒質であるレーザガスが予備電離される。ピーキングコンデンサCpの充電がさらに進むにつれて、ピーキングコンデンサCpの電圧Vpが上昇し、この電圧Vpがある値(ブレークダウン電圧)Vbに達すると、主放電電極E、E間のレーザガスが絶縁破壊されて主放電が開始し、この主放電によりレーザ媒質が励起され、レーザ光が発生する。
この後、主放電によりピーキングコンデンサCpの電圧が急速に低下し、やがて充電開始前の状態に戻る。このような放電動作が固体スイッチSWのスイッチング動作によって繰り返し行なわれることにより、所定の繰り返し周波数でのパルスレーザ発振が行われる。ここで、磁気スイッチSR2、SR3及びコンデンサC1、C2で構成される各段の容量移行型回路のインダクタンスを後段に行くにつれて小さくなるように設定することにより、各段を流れる電流パルスのパルス幅が順次狭くなるようなパルス圧縮動作が行われ、主放電電極E、E間に短パルスの強い放電が実現される。
【0007】
上記回路において、回路パラメータの具体例は以下の通りである。
(a) 主コンデンサC0からコンデンサC1に電荷が移行する時間(すなわち、パルス発生回路、昇圧回路を流れる電流パルスの1/2周期)t0 は、C1=(np /ns 2 ・C0 であるとき、次の(1)式となる。
ここで、SR1(sat)は磁気スイッチSR1が飽和したときのインダクタンスである。数値例としてはt0 =2μsである。
(b) 固体スイッチSWを流れる最大電流Ipは次の(2)式となる。
【0008】
【数1】
Figure 0004573455
【0009】
(c) 繰返し周波数は2kHzである。
(d) 入力エネルギーEinは3〜4Jである。
(e) ピーキングコンデンサCpへのエネルギー移行時間tr(Cp)(磁気パルス圧縮回路の最終段のコンデンサC2からピーキングコンデンサCpへの電荷の移行時間)は、135nsである。
【0010】
(2)ArFエキシマレーザ装置の高電圧パルス発生装置
ArFエキシマレーザ装置において、上記したようにレーザチェンバ内で放電を発生させレーザガスを励起させるための高電圧パルス発生装置の例を図に示す。
KrFエキシマレーザ装置の高電圧パルス発生装置例との相違点は、スイッチが2個並列に接続されている点(SW1,SW2)、及び、磁気パルス圧縮回路(MPC)が3段(コンデンサC3、磁気スイッチSR4が追加)となった点である。尚、基本的な回路動作は、KrFエキシマレーザ装置の高電圧パルス発生装置例と同様である。
ArFエキシマレーザ装置が放出するレーザ光の波長は、KrFエキシマレーザ装置が放出するレーザ光の波長より短く、放電空間に投入するエネルギーは、KrFエキシマレーザ装置よりArFエキシマレーザ装置の方が大きい。
また、次世代の露光用光源として期待されるArFエキシマレーザ装置は、スループットの増大や、露光量の安定化のため、KrFエキシマレーザ装置よりも高繰返し発振(例えば、繰返し周波数4kHz以上)が期待される。放電空間に投入エネルギーが大きくするには、入力エネルギーEinを大きくする必要がある。ArFエキシマレーザ装置の入力エネルギーEinの数値は、例えば、4.5J以上(具体的には、4.5〜6J)である。よって、コンデンサC0の容量は大きくなり、その結果、最大電流IPが大きくなる。
【0011】
ここで、図において、スイッチSW2を2個並列としたのは以下の理由による。
最大電流IPが大きくなった分だけスイッチにかかる負荷も大きくなる。また、高繰返し発振化のため、スイッチにおける発熱量も増加することになる。そこで、スイッチを2個並列にした回路を構成することにより、最大電流IPを分流することによって、各固体スイッチSW1、SW2への負荷を低減している。
また、図において磁気パルス圧縮回路を3段としたのは、以下の理由による。
4kHz以上の高繰返し化が要請されていること、レーザ媒質がArFエキシマレーザ用レーザガスとなったことにより、ピーキングコンデンサCpへのエネルー移行時間tr(Cp)(磁気パルス圧縮回路の最終段のコンデンサC3からピーキングコンデンサCpへの電荷の移行時間)を短くする必要がある。(例えば、tr(Cp)≦100ns)
Cpへの充電時間が短くない場合、すなわち、主放電電極E、Eへ加えられる電圧の立上りが早くない場合、放電開始電圧Vbが小さいうちに主放電電極E、E間で放電が発生するのでレーザ出力が小さくなる。
また、ピーキングコンデンサCpに移行しきれない余剰電流が磁気パルス圧縮回路の最終段のコンデンサ(図ではコンデンサC3)から放電空間へ流れ込むが、この余剰電流はレーザ発振に寄与しない。よって、放電パルスの後半部で電界集中等により放電が不均一となって次回のパルス放電に悪影響を及ぼす履歴が残る。
【0012】
先に述べたように、ArFエキシマレーザ装置においては、投入エネルギーが大きくこの余剰電流の影響もKrFエキシマレーザ装置よりも大きくなるので、Cpへの充電時間をより短くする必要がある。
また、繰返し周波数が高くなるとパルス間隔が短くなるので、前回のパルス放電の履歴の影響を受けないようにするには、Cpへの充電時間をできるだけ短くする必要がある。
一方、主コンデンサC0に高電圧電源HVから印加される電圧の値が、KrFエキシマレーザ装置の場合と同様、Vinであるとき、投入エネルギーEinが、例えば、3〜4Jから4.5〜6Jへと大きくなった分、主コンデンサC0の容量をより大きくする必要がある。
したがって、前記(1)式から明らかなように、主コンデンサC0からコンデンサC1に電荷が移行する時間t0 が大きくなる。
具体的な数値例としては、例えば、t0 =2.5μsである。すなわち、主コンデンサC0からコンデンサC1に電荷が移行する時間t0 が大きくなる一方で、磁気パルス圧縮回路の最終段のコンデンサC3からピーキングコンデンサCpへの電荷の移行時間tr(Cp)を短くしなければならないので、磁気パルス圧縮回路の圧縮比を大きくする必要がある。
圧縮比を大きくするには、各磁気スイッチを構成する可飽和リアクトルのコアへの巻き数を減らし、コアの断面積を大きくする必要がある。
【0013】
に示したKrFエキシマレーザ装置の場合のように、2段の磁気パルス圧縮回路の場合、パルス圧縮のための段数が少ないので、各段での圧縮比が大きくなる。そのため、上記したように各磁気スイッチを構成する可飽和リアクトルのコアへの巻き数が減って、コアの断面積が大きくなる。
一方、図に示す高電圧パルス発生装置のように、3段の磁気パルス圧縮回路の場合、パルス圧縮のための段数が2段より多いので、各段での圧縮比が2段の場合と比較して小さくてすみ、各磁気スイッチを構成する可飽和リアクトルのコアの断面積も2段の場合と比較して小さくてよい。
しかしながら段数が1段増えるので、磁気スイッチとコンデンサの分だけ(図の磁気スイッチSR4とコンデンサC3)、2段のときと比較すると大型化する。
【0014】
2段の磁気パルス圧縮回路と3段の磁気パルス圧縮回路とを比較すると次のようになる。
(a) 圧縮比を大きくするため可飽和リアクトルのコアが大型化すると、コアでの損失が大きくなり電荷の移行効率が下がる。上記したように、2段の磁気パルス圧縮回路の場合、各段での圧縮比が3段の場合と比較して大きく、コアも大型化する。よって、1段あたりの移行効率は、2段の磁気パルス圧縮回路の方が3段の磁気パルス圧縮回路よりも低い。
(b) 電荷の移行効率を低下させる損失の要因である可飽和リアクトルのコアの数は3段の磁気パルス圧縮回路の方が多いので、コアの大きさが仮に同じならば、3段の磁気パルス圧縮回路の方が2段のものと比べて、主コンデンサC0からピーキングコンデンサCpへの電荷の移行効率は低くなる。
(c) 上記したように、パルス発生部でt0 =2.5μsのとき、tr(Cp)が100ns以下となるようにパルス圧縮する場合は、圧縮比が大きいので、2段の磁気パルス圧縮回路の各段の可飽和リアクトルのコアの断面積が大きくなり、コアの数が少ないにもかかわらず、主コンデンサC0からピーキングコンデンサCpへの電荷の移行効率は、2段の磁気パルス圧縮回路の方が、3段の磁気パルス圧縮回路より低下した。よって、この例では、4kHz以上の高繰返しArFエキシマレーザにおける磁気パルス圧縮回路を3段とした。
【0015】
(3)フッ素レーザ装置の高電圧パルス発生装置
フッ素レーザ装置の高電圧パルス発生装置例も図と同じである。
フッ素レーザ装置が放出するレーザ光の波長は、ArFエキシマレーザ装置、KrFエキシマレーザ装置が放出するレーザ光の波長よりさらに短く、放電空間に投入するエネルギーは、さらに大きくなる。フッ素レーザ装置の入力エネルギーEinの数値は、例えば、7J以上である。
よって、コンデンサC0の容量は大きくなり、その結果、最大電流IPが大きくなる。また、ArFエキシマレーザ装置と同様、フッ素レーザ装置もスループットの増大や、露光量の安定化のため、高繰返し発振(例えば、繰返し周波数4kHz以上)が期待される。
したがって、ピーキングコンデンサCpへのエネルギー移行時間tr(Cp)(磁気パルス圧縮回路の最終段のコンデンサC3からピーキングコンデンサCpへの電荷の移行時間)も、ArFエキシマレーザ装置の場合〔例えば、tr(Cp)≦100ns〕と同様、もしくは、それより短くする必要がある。
一方、主コンデンサC0に高電圧電源HVから印加される電圧の値が、KrFエキシマレーザ装置、ArFエキシマレーザ装置の場合と同様、Vinであるとき、投入エネルギーEinが3〜4J(KrFエキシマレーザ装置の場合の例)から7J以上へと大きくなった分、主コンデンサC0の容量をより大きくする必要がある。
よって、前記(1)式から明らかなように、主コンデンサC0からコンデンサC1に電荷が移行する時間t0 が大きくなる。
【0016】
具体的な数値例としては、例えば、t0 =3.0nsである。ArFエキシマレーザ装置のより圧縮比が大きくなる上記のような条件では、2段の磁気パルス圧縮回路では対応できず、3段の磁気パルス圧縮回路を採用することになる。この場合、ArFエキシマレーザ装置のときより各段での圧縮比が大きくなるので、各磁気スイッチを構成する可飽和リアクトルのコアへの巻き数が減って、コアの断面積が大きくなる。さらに、2段のときと比較すると、段数が1段増えるので、磁気スイッチとコンデンサの分だけ(図の磁気スイッチSR4とコンデンサC3)2段のときと比較すると大型化する。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、ArFエキシマレーザ装置、フッ素レーザ装置の高電圧パルス発生装置は、繰返し周波数の増大という要請に答え、かつ、投入エネルギーの増大およびピーキングコンデンサの立上り速度の増大に対応するためには、磁気パルス圧縮回路の圧縮比を増大する必要がある。
圧縮比を増大させるには、上記したように2つの方法がある。
一つは、磁気パルス圧縮回路の段数は増大させず(例えば、2段)、各段での圧縮比を増大させる方法である。すなわち、各磁気スイッチを構成する可飽和リアクトルのコアへの巻き数を減らして、コアの断面積が大きくする。
もう一つは、磁気パルス圧縮回路の各段の圧縮比はそのままか、あまり増大させず(例えばKrFエキシマレーザ装置のときと同程度)、段数を増やす方法である。
前者の方法では、可飽和リアクトルのコアの断面積が増大するので、磁気パルス圧縮回路が大型化する。
一方、後者の方法では、各段の圧縮比は増大しないので各段個別には大型化しないが、段数が増える分、磁気スイッチとコンデンサのセットの数が増大するので、結局、磁気パルス圧縮回路が大型化する。いずれにしても磁気パルス圧縮回路が大型化することにより、メンテナンスも大掛かりなものとなり、また、磁気パルス圧縮回路そのものの材料コストが増加する。
本発明は以上のような事情に鑑み成されたものであって、その目的は、エネルギーの移行効率が高く、かつ、コンパクトで、繰返し周波数の高い高電圧パルス発生装置および該高電圧パルス発生装置を用いた露光用放電励起ガスレーザ装置を提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明においては、上記課題を次のようにして解決する。
(1)高電圧パルス発生装置において、高電圧に充電される主コンデンサと、可飽和リアクトルからなる磁気アシストと、スイッチ手段とが昇圧トランスの1次側に直列に接続され、上記昇圧トランスの2次側にコンデンサが接続された回路要素を複数設ける。
そして、複数の昇圧トランスの一次側に接続された上記スイッチ手段を同時にオンオフするように構成し、上記複数の昇圧トランスのコアと上記複数の磁気アシストのコアとを共通化し、該複数の昇圧トランスの2次側に接続された各コンデンサを並列に接続し、上記コンデンサの出力端に磁気スイッチを接続して磁気パルス圧縮回路の初段を形成する。さらに上記磁気パルス圧縮回路の初段の出力端にコンデンサと磁気スイッチからなる磁気パルス圧縮回路のパルス圧縮段を少なくとも1つ接続し、この磁気パルス圧縮回路の最終段より高電圧パルスを出力する。
)上記(1)の高電圧パルス発生装置を、パルス放電により励起可能なレーザガスが密封されたレーザチェンバーと、このレーザチェンバー内に配置した繰返しパルス放電を行う一対のレーザ放電電極と、上記一対のレーザ放電電極に並列に接続されたピーキングコンデンサとを有し、高繰返し発振を行う露光用放電励起ガスレーザ装置に適用し、上記一対のレーザ放電電極に高電圧パルスを印加する。
上記(2)において、上記複数の回路要素を構成する各主コンデンサへ投入されるエネルギーの総和が4.0J以上であって、高繰返し発振周波数が4kHz以上であり、上記高電圧パルス発生装置の最終段のコンデンサから上記ピーキングコンデンサへの電荷の移行時間が100ns以下である露光用放電励起ガスレーザ装置に適用する。
【0019】
本発明においては、高電圧パルス発生装置を上記(1)のように構成したので磁気パルス圧縮回路の圧縮比を大きくしなくても、繰返し周波数の増大、投入エネルギーの増大およびピーキングコンデンサの立上り速度の増大という要請に対応することができる。
また、各磁気スイッチを構成する可飽和リアクトルのコアの断面積を小型化し、電荷の移行効率が上げることができる。さらに、2段の磁気パルス圧縮回路を採用することが可能となり、小型化・低コスト化が可能となる。
また、並列接続したパルス発生回路の昇圧トランスのコアを共通化することにより、レーザ装置の効率を向上させることができ、また装置の小型化を図ることができる。
またさらに、複数の磁気アシストのコアを共通化することにより、複数設けた磁気アシストのコアのばらつき、スイッチ手段の動作にばらつきがあっても、複数の磁気アシストの動作タイミングを一致させることができる。このため、複数の磁気アシストに流れる電流パルスを一致させることが可能となり、次段の磁気スイッチのコアが大型化することがない。
また、上記(1)の高電圧パルス発生装置を、パルス放電により励起可能なレーザガスが密封されたレーザチェンバーと、このレーザチェンバー内に配置した繰返しパルス放電を行う一対のレーザ放電電極と、上記一対のレーザ放電電極に並列に接続されたピーキングコンデンサとを有する露光用放電励起ガスレーザ装置に適用することにより、高繰り返し発振が可能でコンパクトな露光用放電励起ガスレーザ装置を得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(1)実施例1
ArFエキシマレーザ装置、フッ素レーザ装置に適用される本発明の第1の実施例の高電圧パルス発生装置の構成を図1に示す。
図1に示す高電圧パルス発生装置は、パルス放電により励起可能なレーザガスが密封されたレーザチェンバーと、このレーザチェンバー内に配置した繰返しパルス放電を行う一対のレーザ放電電極と、上記一対のレーザ放電電極に並列に接続されたピーキングコンデンサとを有するArFエキシマレーザ装置、フッ素レーザ装置等の、入力エネルギーが大きく高繰り返し周波数の露光用放電励起ガスレーザ装置に適用され、上記レーザ放電電極に高繰り返しの高電圧パルスを印加して、レーザチェンバ内で放電を発生させレーザガスを励起させるものである。
図1において、前記図に示したものと同一のものには同一の符号が付されており、図1が図と異なる部分は、主コンデンサC0、磁気スイッチSR1、固体スイッチSW、昇圧トランスTr1、コンデンサC1からなる回路構成を、複数(図1では2個)並列に接続するとともに、2個の昇圧トランスのコアを共通化した点である。
すなわち、図1に示す第1の実施例は、主コンデンサC01、磁気スイッチ(磁気アシスト)SR11および固体スイッチSW1を昇圧トランスTr1の1次側に直列接続し、昇圧トランスTr1の2次側に並列にコンデンサC11を接続した回路構成Ci1(パルス発生回路と昇圧回路)と、主コンデンサC02、磁気スイッチ(磁気アシスト)SR12を、固体スイッチSW2を昇圧トランスTr2の1次側に直列接続し、昇圧トランスTr2の2次側に並列にコンデンサC12を接続した回路構成Ci2(パルス発生回路と昇圧回路)とを設け、コンデンサC11の出力側とコンデンサC12の出力側で並列に接続するとともに、昇圧トランスTr1とTr2のコアを共通化したものである。
【0021】
次に、図1に従って回路の動作を説明する。
まず、高電圧電源HVの電圧が所定の値Vinに調整され、主コンデンサC01並びに主コンデンサC02が充電される。このとき、固体スイッチSW1並びに固体スイッチSW2はオフになっている。
主コンデンサC01並びに主コンデンサC02の充電が完了し、固体スイッチSW1、SW2がオンとなったとき、固体スイッチSW1の両端にかかる電圧は主に磁気スイッチSR11の両端にかかるように移る。また、固体スイッチSW2の両端にかかる電圧は主に磁気スイッチSR12の両端にかかるように移る。
磁気スイッチSR11の両端にかかる主コンデンサC01の充電電圧Vinの時間積分値が磁気スイッチSR11の特性で決まる限界値に達すると、磁気スイッチSR11が飽和して磁気スイッチが入り、主コンデンサC01、磁気スイッチSR11、インダクタンスLL1、昇圧トランスTr1の1次側、固体スイッチSW1のループに電流が流れる。
同時に、昇圧トランスTr1の2次側、コンデンサC11のループに電流が流れ、主コンデンサC01に蓄えられた電荷が移行してコンデンサC11に充電される。なお、ここでは、回路ループのインダクタンスとコンデンサC01の寄生インダクタンスを合成したものをインダクタンスLL1として表している。
【0022】
一方、同時のタイミングで磁気スイッチSR12の両端にかかる主コンデンサC02の充電電圧Vinの時間積分値が磁気スイッチSR12の特性で決まる限界値に達すると、磁気スイッチSR12が飽和して磁気スイッチが入り、主コンデンサC02、磁気スイッチSR12、インダクタンスLL2、昇圧トランスTr2の1次側、固体スイッチSW2のループに電流が流れる。
同時に、昇圧トランスTr2の2次側、コンデンサC12のループに電流が流れ、主コンデンサC02に蓄えられた電荷が移行してコンデンサC12に充電される。ここでは、回路ループのインダクタンスとコンデンサC02の寄生インダクタンスを合成したものを、上記と同様にインダクタンスLL2として表している。
並列に接続されている、コンデンサC11を含む回路構成Ci1と、コンデンサC12を含む回路構成Ci2とは、回路パラメータが等しいように設計されている。よって、コンデンサC11、コンデンサC12における電圧V1の時間積分値は等しくなる。
この時間積分値が磁気スイッチSR2の特性で決まる限界値に達すると、磁気スイッチSR2が飽和して磁気スイッチが入り、コンデンサC11、コンデンサC2、磁気スイッチSR2のループおよびコンデンサC12、コンデンサC2、磁気スイッチSR2のループに電流が流れ、コンデンサC11およびコンデンサC12に蓄えられた電荷が移行してコンデンサC2に充電される。
その後の動作は、前記図で説明したKrFエキシマレーザ装置の高電圧パルス発生装置と同様である。
【0023】
本実施例の高電圧パルス発生装置の特徴は以下の通りである。
(a) 主コンデンサC01からコンデンサC11に電荷が移行する際、流れる電流の1/2周期t011、及び、主コンデンサC02からコンデンサC12に電荷が移行する際、流れる電流の1/2周期t022は、
C11=(np /ns 2 ・C01
C12=(np /ns 2 ・C02
であるとき、以下の(3)式、(4)式となる。
【0024】
【数2】
Figure 0004573455
【0025】
ここで、SR11(sat)、SR12(sat)は、磁気スイッチSR11、SR12が飽和したときのインダクタンスである。
(b) コンデンサC11とコンデンサC12は並列に接続されているので、コンデンサC11、C12に移行した電荷は全てコンデンサC2に移行する。よって、主コンデンサC01、C02の容量は図の従来の高電圧パルス発生装置における主コンデンサC0の容量の1/2でよい。すなわち、以下の通りになる。
C01=(1/2)・C0
C02=(1/2)・C0
(c) また、上記の通り主コンデンサC01、C02の容量が従来より小さくなったので、主コンデンサC01、C02の寄生インダクタンスも従来より小さくなる。すなわち、以下の通りとなる。
L1<LL
L2<LL
(d) 以上により、図の従来の高電圧パルス発生装置における主コンデンサC0からコンデンサC1に電荷が移行する際、流れる電流の1/2周期t0 と、主コンデンサC01からコンデンサC11に電荷が移行する際、流れる電流の1/2周期t01とを比較すると、以下の(5)〜(7)式のようになる。ここで、SR11(sat)は磁気スイッチSR11が飽和したときのインダクタンス、SR12(sat)は磁気スイッチSR12が飽和したときのインダクタンスであるとし、SR11(sat)=SR12(sat)=SR1(sat)とする。
【0026】
【数3】
Figure 0004573455
【0027】
また、同様に、主コンデンサC02からコンデンサC12に電荷が移行する際、流れる電流の1/2周期t02とを比較すると、以下の(8)〜(10)式のようになる。
【0028】
【数4】
Figure 0004573455
【0029】
以上のように磁気パルス圧縮回路の初段のコンデンサC11、C12への電荷(エネルギー)の移行時間は、図の従来の高電圧パルス発生装置における磁気圧縮回路の初段のコンデンサC1への電荷(エネルギー)の移行時間より短くなる。
よって、磁気パルス圧縮回路で圧縮する前の電流パルスの周期が従来より短くなるので、磁気パルス圧縮回路の圧縮比を小さくすることができる。
そのため、各磁気スイッチを構成する可飽和リアクトルのコアの断面積を大きくすることなく、2段の磁気パルス圧縮回路でパルス圧縮をすることができる。また、コアの断面積が小さくなった分、電荷の移行効率も高くなる。
また、当然ながら、3段の磁気パルス圧縮回路より段数が少ないので小型化・低コスト化が可能となり、また電荷の移行効率も3段の時期パルス圧縮回路よりも高くなる。
【0030】
本実施例の高電圧パルス発生装置を、下記条件において、ArFエキシマレーザ装置、フッ素レーザ装置に適用したところ以下の結果を得た。
条件(1)投入エネルギーEin
ArFエキシマレーザ装置:4.5〜6J
フッ素レーザ装置:7J以上
条件(2)繰返し周波数
両装置とも4kHz
結果:コンデンサC11、C12への移行時間:両装置とも1.2μs以下
:ピーキングコンデンサCpへの移行時間tr(Cp):両装置とも80ns以下
上記したように、KrFエキシマレーザ装置と比べてArFエキシマレーザ装置、フッ素レーザ装置は、4kHz以上の高繰返しが要請される。また、投入エネルギーEinも4J以上と大きくなり、主コンデンサC0の容量をより大きくすることによりそれに対応している。よって、主コンデンサC0からコンデンサC1に電荷が移行する時間t0 が大きくなるが、その一方で、ピーキングコンデンサCpへのエネルギー移行時間tr(Cp)の高速化(80ns以下)が必要とされる。
このようなArFエキシマレーザ装置、フッ素レーザ装置に、本実施例の高電圧発生回路を適用すると、上記したように、主コンデンサC0からコンデンサC11、C12への移行時間が1.2μs以下と短くできる。すなわち、磁気パルス圧縮回路で圧縮する前の電流パルスの周期を短くすることができる。よって、磁気パルス圧縮回路の圧縮比を大きくする必要がないので、各磁気スイッチを構成する可飽和リアクトルのコアの断面積も従来と比べ小型になって、コアでの損失が小さくなり電荷の移行効率が上がる。
また、2段の磁気パルス圧縮回路を採用することが可能となり、小型化・低コスト化が可能となる。
【0031】
本実施例においては、並列に接続されるパルス発生回路において、昇圧トランスTr1、Tr2のコアを共通化している。
昇圧トランスのコアを共通化することにより、以下の効果が得られる。
昇圧トランスのコアを分離した場合は、昇圧トランスを2個(Tr1,Tr2)使用するので、トランスのコアでの損失が大きくなるが、昇圧トランスを共通化すれば、使用するコアが1個で済むので、昇圧トランスのコアを共通化しない場合と比較して、損失が少なくなる。すなわち、レーザ装置の効率を向上させることができる。また、コアが1個で済むので、装置の小型化を図ることができる。
なお、性能面では、昇圧トランスを分離した場合は、パルス発生回路それぞれに昇圧トランスがあるので、固体スイッチSW1と昇圧トランスTr1と磁気スイッチSR11の実装時の配線、配置等を、回路ループのインダクタンスが最小となるように行うことができる。同様に、固体スイッチSW2と昇圧トランスTr2と磁気スイッチSR12の実装時の配線、配置等を、回路ループのインダクタンスが最小となるように行うことができる。すなわち、インダクタンスLL1、インダクタンスLL2を小さくすることができ、パルス発生回路における電流パルスの1/2周期t01、t02が短くなる。
一方、昇圧トランスを共通化した場合は、1つの昇圧トランスTr1に、固体スイッチSW1、磁気スイッチSR11、固体スイッチSW2、磁気スイッチSR12を実装することになるので、回路ループのインダクタンスが最小となるように、配線、配置等を行うことが昇圧トランスを分離した場合に比べ、難しくなる。
すなわち、昇圧トランスを分離した場合と比べると、インダクタンスLL1、インダクタンスLL2を小さくすることができず、パルス発生回路における電流パルスの1/2周期t01、t02が若干長くなる。このため、磁気パルス圧縮回路の圧縮比が同じである場合、昇圧トランスを分離した場合の方が、ピーキングコンデンサCpへのエネルギー移行時間tr(Cp)(磁気パルス圧縮回路の最終段のコンデンサC3からピーキングコンデンサCpへの電荷の移行時間)を短くすることができる。
以上のように、昇圧トランスのコアを共通化することにより、レーザ装置の効率を向上させることができ、また、装置の小型化を図ることができが、性能面では、ピーキングコンデンサCpへのエネルギー移行時間tr(Cp)が長くなる可能性がある。しかし、この性能面での問題は、回路配置を工夫することにより、改善を図ることが可能である。
【0032】
(2)実施例2
図2に本発明の第2の実施例の高電圧パルス発生装置の構成を示す。本実施例の高電圧パルス発生装置も、第1の実施例と同様、高繰返し発振を行うArFエキシマレーザ装置、フッ素レーザ装置に適用され、上記レーザ放電電極に高繰り返しの高電圧パルスを印加して、レーザチェンバ内で放電を発生させレーザガスを励起させるものである。
本実施例と前記図1に示した第1の実施例との違いは、並列に接続されるパルス発生回路において、固体スイッチSW1、SW2のスイッチングロスの低減用の磁気スイッチのコアを共通化(図2の磁気スイッチSR1)した点にある。なお、本実施例においては、昇圧トランスTr1,Tr2のコアを共通化していないが、第1の実施例と同様に、昇圧トランスTr1,Tr2のコアを共通化してもよい。
図1に示した第1の実施例において、同時にON、OFF動作するよう設計されている固体スイッチSW1、SW2の動作にバラツキがあり、また、磁気スイッチSR11、SR12の可飽和リアクトルのコアにバラツキがある場合を考える。
【0033】
図3に、第1の実施例において固体スイッチSW1が固体スイッチSW2より早く動作し、また、飽和時に磁気スイッチSR11が磁気スイッチSR12より早く動作する場合の波形を示す。
図3(a)において、一点鎖線は、固体スイッチSW1にかかる電圧を、実線は磁気スイッチSR11を流れる電流波形を示す。図3(b)において、一点鎖線は、固体スイッチSW2にかかる電圧を、実線は磁気スイッチSR12を流れる電流波形を示す。図3(c)は、図1において、磁気パルス圧縮回路の初段にかかる電流波形、すなわち、磁気スイッチSR11を流れる電流の波形と磁気スイッチSR12に流れる電流の波形が合成された電流波形を示す。
【0034】
図3(a)は、固体スイッチSW1がON後、固体スイッチSW1にかかる電圧が急激に降下し、固体スイッチSW1がONの時点から時間T1後に電流パルスが発生することを示している。ここで、電流パルスの1/2周期はt01である。図3(b)は、固体スイッチSW1がONの時点から時間td1だけ遅れて固体スイッチSW2がONして固体スイッチSR2にかかる電圧が急激に降下すること、および、固体スイッチSW2がONの時点から、時間T2後に電流パルスが発生することを示している。ここで、電流パルスの1/2周期はt02でありt02=t01である。
なお、この例では上記時間T2は時間T1より長く、その差はtd2である。
上記時間td1は、固体スイッチSW1、SW2をドライブするドライブ回路のバラツキにより発生する時間である。また、上記時間td2は、磁気スイッチSR11、SR12にかかる電圧の時間積分値のバラツキにより発生する時間である。
図3(c)に示すように、磁気パルス圧縮回路の初段にかかる電流の1/2周期はt01+td1+td2(=t02+td1+td2)となり、t01(=t02)より増加する。よって、このようなジッタを考慮した分だけ磁気パルス圧縮回路の次段の可飽和リアクトルのコアが大型化する。
【0035】
一方、図2に示す高電圧パルス発生装置について考える。
図2では、各パルス発生回路における固体スイッチSW1、SW2の動作のバラツキはあり得るが、磁気スイッチSR1が共通のため、第1の実施例のような、コアのばらつきの影響は生じない。図4に、第2の実施例において固体スイッチSW1が固体スイッチSW2より早く動作する場合の波形を示す。
図4(a)において、一点鎖線は、固体スイッチSW1にかかる電圧を、実線は磁気スイッチSR1を流れる電流波形を示す。
図4(b)において、一点鎖線は、固体スイッチSW2にかかる電圧を、実線は磁気スイッチSR1を流れる電流波形を示す。
図4(c)は、図4において、磁気パルス圧縮回路の初段にかかる電流波形、すなわち、磁気スイッチSR1を流れる電流の電流波形を示す。
【0036】
図4(a)は、固体スイッチSW1がON後、固体スイッチSW1にかかる電圧が急激に降下し、固体スイッチSW1がONの時点から時間T1後に電流パルスが発生することを示している。ここで、電流パルスの1/2周期はt01である。
図4(b)は、固体スイッチSW1がONの時点から時間td1だけ遅れて固体スイッチSW2がONすること、また、先に固体スイッチSW1がONしたので、固体スイッチSW2にかかる電圧が固体スイッチSW2がONする時点まで上昇して、その後、固体スイッチSW2がONした後、急激に降下すること、さらに、固体スイッチSW1がONの時点から時間T1後に電流パルスが発生することを示している。ここで、電流パルスの1/2周期はt02でありt02=t01である。
すなわち、並列に接続されるパルス発生回路において、固体スイッチSW1、SW2のスイッチングロスの低減用の磁気スイッチSR1を共通化したので、磁気スイッチSR1は、先にONした固体スイッチSW1によって動作を開始する。
このため、固体スイッチSW2のON動作の遅れは、磁気スイッチSR1の動作に影響を与えない。さらに上記したように、磁気スイッチSR1が共通のため、コアのばらつきの影響は生じない。したがって、図4(c)に示すように、磁気パルス圧縮回路の初段にかかる電流の1/2周期はt01(=t02)となる。
すなわち、本実施例によれば、固体スイッチSW1、SW2のジッタ分を考慮しなくてよい。
【0037】
なお、図2の高電圧パルス発生装置において、以下に示す図5のように、固体スイッチSW1、SW2にそれぞれ並列にコンデンサCsを接続するのが望ましい。
上記した図4(b)に示したとおり、例えば、固体スイッチSW1がONの時点から時間td1だけ遅れて固体スイッチSW2がONする場合、固体スイッチSW2にかかる電圧は固体スイッチSW2がONする時点まで上昇して、その後、固体スイッチSW2がONした後、急激に降下する。ここで、時間td1が長くなると、固体スイッチSW2にかかる電圧が大きくなり、場合によっては、固体スイッチSW2の耐圧を超えてしまう恐れがある。
そこで、固体スイッチSW1、SW2にそれぞれ並列にコンデンサCsを接続する。これにより、時間td1が長くなっても、図6(b)に示すように、固体スイッチSW2にかかる電圧の上昇スピードが緩やかになり、電圧が固体スイッチSW2の耐圧を超えてしまう前に固体スイッチSW2がONして急激に降下する。
このため、固体スイッチSW2が保護される。固体スイッチSW2が先にONした場合には、固体スイッチSW1が同様に保護される。
【0039】
また、前記第1、第2の実施例では、主コンデンサ、磁気スイッチ(磁気アシスト)、固体スイッチが昇圧トランスの1次側に直列接続された回路を2回路並列に接続しているが、本発明はこれに限るものではなく、入力エネルギーEinの増大、ピーキングコンデンサCpへの移行時間tr(Cp)の短縮化に応じて、3回路以上並列接続することも可能である。
さらに、主コンデンサ、磁気スイッチ(磁気アシスト)、固体スイッチが昇圧トランスの1次側に直列接続された回路を2回路並列に接続するにあたって、磁気スイッチ(磁気アシスト)のコアを共通化した例を第2の実施例で示したが、入力エネルギーEinの増大、ピーキングコンデンサCpへの移行時間tr(Cp)の短縮化に応じて、上記構成の並列2回路を1ユニットの回路として、このユニットを複数並列に接続してもよい。
に上記並列2回路を1ユニットの回路として、このユニットを複数並列に接続した回路例を示す。
の回路は、昇圧トランスTr1,Tr2のコアを共通化した前記図2に示した高電圧パルス発生装置を並列接続したものであり、その動作は前記図2に示したものと同じである。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)主コンデンサ、磁気スイッチ(磁気アシスト)、固体スイッチが昇圧トランスの1次側に直列接続された回路を複数並列に接続したので、投入エネルギーの増大という要請に対し、所定の充電電圧のとき、主コンデンサの容量を大きくしなくとも対応することが可能となる。
そのため、磁気パルス圧縮回路で圧縮する前の電流パルスの周期を短くすることが可能となった。さらに、磁気パルス圧縮回路の圧縮比を大きくしなくても、繰返し周波数の増大、投入エネルギーの増大およびピーキングコンデンサの立上り速度の増大という要請に対応することができる。
また、上記したように、磁気パルス圧縮回路の圧縮比を大きくする必要がないので、各磁気スイッチを構成する可飽和リアクトルのコアの断面積も従来と比べ小型になって、コアでの損失が小さくなり電荷の移行効率が上がった。
さらに、2段の磁気パルス圧縮回路を採用することが可能となり、小型化・低コスト化が可能となる。
(2)並列接続したパルス発生回路の昇圧トランスのコアを共通化したので、昇圧トランスのコアを共通化しない場合と比較して、損失が少なくすることができ、レーザ装置の効率を向上させることができる。また、コアが1個で済むので、装置の小型化を図ることができる。
(3)並列回路に設けた複数の磁気アシストのコアを共通化することにより、複数設けた磁気アシストのコアのばらつき、スイッチ手段の動作にばらつきがあっても、複数の磁気アシストの動作タイミングを一致させることができる。このため、複数の磁気アシストに流れる電流パルスを一致させることが可能となり、次段の磁気スイッチのコアが大型化することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施例の高電圧パルス発生装置の構成を示す図である。
【図2】 本発明の第2の実施例の高電圧パルス発生装置の構成を示す図である。
【図3】 第1の実施例において固体スイッチSW1が固体スイッチSW2より早く動作する場合の波形例を示す図である。
【図4】 第2の実施例において固体スイッチSW1が固体スイッチSW2より早く動作する場合の波形例を示す図である。
【図5】 第2の実施例において固体スイッチSW1、SW2にそれぞれ並列にコンデンサCsを接続した場合を示す図である。
【図6】 固体スイッチSW1、SW2にそれぞれ並列にコンデンサCsを接続した場合の波形例を示す図である。
【図】 並列2回路を1ユニットの回路として、このユニットを複数並列に接続した回路例を示す図である。
【図】 KrFエキシマレーザ装置における高電圧パルス発生装置の回路例を示す図である。
【図】 ArFエキシマレーザ装置における高電圧パルス発生装置の回路例を示す図である。
【符号の説明】
HV 高電圧電源
SW,SW1,SW2 固体スイッチ
SR1〜SR4 磁気スイッチ
SR11,SR12 磁気スイッチ
L ,LL1〜LL4 インダクタンス
Tr1,Tr2 昇圧トランス
C0 主コンデンサ
Cp ピーキングコンデンサ
C1〜C3,Cc コンデンサ
C11〜C14 コンデンサ
C01〜C04 コンデンサ
E,E 主放電電極
11 第1電極
12 誘電体チューブ
13 第2電極

Claims (3)

  1. 高電圧に充電される主コンデンサと、可飽和リアクトルからなる磁気アシストと、スイッチ手段とが昇圧トランスの1次側に直列に接続され、
    上記昇圧トランスの2次側にコンデンサが接続された回路要素を複数有し、複数の昇圧トランスの一次側に接続された上記スイッチ手段は同時にオンオフするように構成され
    上記複数の昇圧トランスのコアと上記複数の磁気アシストのコアが共通化され、該複数の昇圧トランスの2次側に接続された各コンデンサが並列に接続されており、
    上記コンデンサの出力端に磁気スイッチが接続されて磁気パルス圧縮回路の初段を形成し、
    さらに上記磁気パルス圧縮回路の初段の出力端にコンデンサと磁気スイッチからなる磁気パルス圧縮回路のパルス圧縮段が少なくとも1つ接続されていて、この磁気パルス圧縮回路の最終段より高電圧パルスを出力する
    ことを特徴とする高電圧パルス発生装置。
  2. パルス放電により励起可能なレーザガスが密封されたレーザチェンバーと、
    このレーザチェンバー内に配置されており、請求項1に記載の高電圧パルス発生装置の出力端に接続されて繰返しパルス放電を行う一対のレーザ放電電極と、
    上記一対のレーザ放電電極に並列に接続されたピーキングコンデンサとを有し、高繰返し発振を行う露光用放電励起ガスレーザ装置。
  3. 上記複数の回路要素を構成する各主コンデンサへ投入されるエネルギーの総和が4.0J以上であって、
    高繰返し発振周波数が4kHz以上であり、
    上記高電圧パルス発生装置の最終段のコンデンサから上記ピーキングコンデンサへの電荷の移行時間が100ns以下である
    ことを特徴とする請求項の露光用放電励起ガスレーザ装置。
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