JP4573445B2 - 無電解銅メッキ液組成物及び無電解銅メッキ方法 - Google Patents

無電解銅メッキ液組成物及び無電解銅メッキ方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は無電解銅めっき方法及びそのめっき液組成物に関する。更に詳細には、本発明は水素発生の無い高品質な無電解銅めっき方法及びそのめっき液組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
無電解銅めっきは導体又は不導体などの基板表面のめっき方法として広く使用されている。特に、最近はプリント配線板や半導体デバイスの多層配線などのような電子部品の製造に重要性が増大している。
【0003】
従来の銅の無電解めっき方法によれば、硫酸銅を含む溶液に、銅の還元剤としてホルムアルデヒドを添加したものをめっき浴として使用する。この場合、次の反応により銅が析出する。
Cu2++2HCHO+4OH→Cu+2HCOO+2HO+H
【0004】
前記の反応式から明らかなように、銅めっきの進行に伴い、水素ガスが発生する。そのため、基板上にめっきされた銅膜中に水素ガスが取り込まれ、ボイドが形成されるため、めっき品質を低下させることがあった。このような水素ガスの銅膜中への取り込によるボイド形成は半導体デバイスの多層配線など精密で極微細な銅めっき膜を形成する時に非常に大きな問題となる。
【0005】
また、ホルムアルデヒドを使用する無電解銅めっき方法では、下記の反応式で示されるような望ましからざる副反応が生起する。
2HCHO+OH→CHOH+HCOO (a)
2Cu2++HCHO+5OH→CuO+HCOO+3HO (b)
(a)式はメタノールと蟻酸が生成するホルムアルデヒドの不均化反応であり、(b)式の反応では銅イオンが金属銅に還元されずに1価の銅(亜酸化銅CuO)が生成する。亜酸化銅CuOが生成すると下記の反応式で示される不均化反応で溶液内に銅が析出し、めっき浴の安定性が低下する。
CuO+HO→Cu+Cu2++2OH (c)
【0006】
更に、従来の無電解銅めっき方法では、銅イオンの還元剤としてホルムアルデヒドが使用されてきたが、ホルムアルデヒドは安価で取り扱いが容易であるという利点が有る反面、蒸気圧が高く、環境や人体に悪影響を及ぼす危険性が指摘されている。従って、作業環境及び衛生上の観点から、ホルムアルデヒドを使用しない無電解銅めっき方法の開発が強く求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ホルムアルデヒドを使用しない、かつ水素ガスの発生しない新規な無電解銅めっき方法及びそのめっき液組成物を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、クエン酸塩、エチレンジアミン、硫酸銅、硫酸第1鉄及び塩化ナトリウムを含有するめっき液組成物により解決される。前記めっき液組成物は浴pH5.5〜8、浴温度30〜70℃で使用することが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のめっき液組成物では、金属塩錯体として鉄(II)及びそれを優先的に錯化する錯化剤の組合せを用い、これを還元剤とすることにより、水素発生が無く、環境問題が少なく、かつ被めっき基板への化学的影響の少ない中性無電解銅めっきが可能となる。
【0010】
硫酸銅及びその錯化剤はめっき浴を使用するpH領域で、めっき金属となる銅イオンの安定した供給源になる。2価の鉄塩及びそれを優先的に錯化する錯化剤は、錯体を形成することによりその平衡電位を下げ、銅錯体の平衡電位よりも低い電位となることで銅の還元剤として働くことができる。めっき浴は鉄(II)錯体が還元力をもつpH範囲で使用することが好ましい。
【0011】
本発明のめっき液組成物において、クエン酸塩(例えば、ナトリウム塩)は鉄(II)の錯化剤として使用される。鉄(II)がクエン酸塩により錯化されると、鉄(II)の電位が低下する。クエン酸塩による鉄(II)の錯化により、鉄(II)錯体の電位を銅錯体の電位よりも低くすると、銅めっきが可能となる。クエン酸塩の一般的な配合量は0.1モル/リットルである。
【0012】
本発明のめっき液組成物において、エチレンジアミンは銅の錯化剤として使用される。エチレンジアミンの一般的な配合量は1.2モル/リットルである。
【0013】
本発明のめっき液組成物において、銅めっきの元となる硫酸銅の一般的な配合量は0.1モル/リットルである。
【0014】
本発明のめっき液組成物において使用される2価の鉄塩は例えば、硫酸塩(FeSO)であることが好ましい。塩化物塩(例えば、FeCl)も使用できるが、すべてを塩化物で構成するとめっきが成長しないだけでなく、銅板を浸漬した場合には銅板が溶解してしまうなどの理由により硫酸塩の方が好ましい。硫酸鉄の配合量は0.03モル/リットル〜0.1モル/リットルの範囲内である。硫酸鉄の配合量が0.03モル/リットル未満の場合、めっきが析出しないなどの不都合が起こるので好ましくない。一方、硫酸鉄の配合量が0.1モル/リットル超の場合、めっき液の分解などの不都合が生じる。硫酸鉄の好ましい配合量は0.03モル/リットル〜0.05モル/リットルの範囲内である。
【0015】
本発明のめっき液組成物は前記成分の他に、塩化ナトリウム(NaCl)を更に含有することができる。めっき浴中に塩化ナトリウムが存在すると、めっき中に銅微粒子が生成することを抑制することができる。塩化ナトリウムの配合量は0.3モル/リットル〜1.2モル/リットルの範囲内である。塩化ナトリウムの配合量が0.3モル/リットル未満の場合、銅微粒子の生成抑制効果が得られない。一方、塩化ナトリウムの配合量が1.2モル/リットル超の場合、めっきが成長しないなどの不都合が生じる。塩化ナトリウムの好ましい配合量は0.6モル/リットル〜1.2モル/リットルの範囲内である。
【0016】
本発明のめっき液組成物を用いた無電解銅めっきは、めっき浴pHを5.5〜8に調整して行うことが好ましい。めっき浴のpH調整は、例えば、めっき浴に硫酸を添加することにより行うことができる。めっき浴のpHが5.5未満になると、めっき膜は形成されなくなる。一方、めっき浴のpHが8超になるとめっき液が分解するなどの不都合が生じるので好ましくない。めっき浴の好ましいpH範囲は5.5〜7.0である。一層好ましいめっき浴のpH範囲は6.5〜7.0である。
【0017】
本発明のめっき液組成物を用いた無電解銅めっきは、一般的に、めっき浴の温度を30℃〜70℃の範囲内に維持して行われる。めっき浴の温度が30℃未満ではめっき膜は形成されない。めっき浴の温度が70℃超になると、やはりめっき膜が十分に形成されないなどの不都合が生じるので好ましくない。好ましいめっき浴の温度範囲は50℃〜60℃である。
【0018】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に例証する。
実施例1
次の組成でめっき浴を建浴した。
クエン酸3ナトリウム 0.1モル/リットル
エチレンジアミン 1.2モル/リットル
硫酸銅 0.1モル/リットル
硫酸第1鉄 0.03モル/リットル
塩化ナトリウム 1.2モル/リットル
得られた溶液を60℃に加温し、それに所定量の硫酸を添加することによりめっき浴のpHを6.5に調整した。このめっき浴に、ニッケルめっきした銅板(1×1cm)を浸漬した。銅が全面に析出し、1時間後には厚さ0.9μmの銅めっき膜が成長した。めっき処理中に水素ガスの発生は認められなかった。その後、3時間後の膜厚は2.0μm程度まで成長した。
【0019】
実施例2〜4及び比較例1
めっき浴のpHを5.5(実施例2)、6.0(実施例3)、7.0(実施例4)及び5.0(比較例1)に調整したこと以外は実施例1と同じめっき条件で無電解銅めっきを行った。何れの場合も、めっき処理中に水素ガスの発生は認められなかった。
【0020】
実施例1〜4及び比較例1における無電解銅めっきについて、浸漬時間と銅めっき膜厚との関係を図1に示す。浴温が60℃の場合、pH値は6.5であることが好ましいことが理解できる。
【0021】
実施例5
次の組成でめっき浴を建浴した。
クエン酸3ナトリウム 0.1モル/リットル
エチレンジアミン 1.2モル/リットル
硫酸銅 0.1モル/リットル
硫酸第1鉄 0.03モル/リットル
塩化ナトリウム 1.2モル/リットル
得られた溶液に所定量の硫酸を添加することによりめっき浴のpHを6.0に調整した。このpH6.0のめっき浴を加熱し、めっき浴の温度を50℃に加温した。このめっき浴に、ニッケルめっきした銅板(1×1cm)を浸漬した。銅が全面に析出し、1時間後には厚さ0.9μmの銅めっき膜が成長した。めっき処理中に水素ガスの発生は認められなかった。その後、3時間後の膜厚は1.4μm程度まで成長した。
【0022】
実施例6〜8及び比較例2〜3
めっき浴の温度を30℃(実施例6)、60℃(実施例7)、70℃(実施例8)、80℃(比較例2)及び90℃(比較例3)にそれぞれ調整したこと以外は実施例5と同じめっき条件で無電解銅めっきを行った。何れの場合も、めっき処理中に水素ガスの発生は認められなかった。
【0023】
実施例5〜8及び比較例2〜3における無電解銅めっきについて、浸漬時間と銅めっき膜厚との関係を図2に示す。めっき浴のpH値が6.0の場合、50℃でめっき膜の形成が最も速くなることが理解できる。
【0024】
実施例9
実施例1で使用されたものと同じ組成のめっき浴を実施例1と同じ条件で使用し、事前に表面がエッチング処理されたABS樹脂基板に通常の触媒化処理をした後、前記めっき浴に基板を浸漬した。60分後に約1μmのめっき膜が連続膜として成長した。
【0025】
実施例10
実施例1〜9で得られた各めっき膜の表面に、常法に従ってテープを貼着し、テープテストを行った。その結果、何れのめっき膜も基板から剥離されず、基板に対する十分な密着性が確認された。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、無電解銅めっきにおいて水素発生がないため、異常析出、ピット及びボイドの発生が無く、また析出銅被膜が水素を吸蔵しないため、被膜物性に優れる。更に、本発明の無電解銅めっき浴は中性めっき浴のため、被めっき基板の材質選択性が広がる。また、めっき浴成分に揮発性成分が含まれていないため、めっき作業環境に優れる。更に、本発明のめっき浴成分として安価な鉄塩を使用するため、コバルトのような希少金属や高価な還元剤を使用する従来技術に比べて、めっきコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】めっき浴温度60℃における、めっき浴pHと銅めっき膜厚との関係を示す特性図である。
【図2】めっき浴pH6における、めっき浴温度と銅めっき膜厚との関係を示す特性図である。

Claims (2)

  1. クエン酸塩、エチレンジアミン、硫酸銅、硫酸第1鉄及び塩化ナトリウムを含有する、
    ことを特徴とする無電解銅メッキ浴組成物。
  2. (a)クエン酸塩、エチレンジアミン、硫酸銅、硫酸第1鉄及び塩化ナトリウムを混合してめっき液を作製するステップと、
    (b)前記めっき液のpHを5.5〜8に調整するステップと、
    (c)前記めっき液の温度を30℃〜70℃に加温するステップと、
    (d)前記めっき液に被めっき基板を浸漬し、該基板の表面の少なくとも一部分に銅めっき膜を鍍着させるステップとからなる、
    ことを特徴とする無電解銅めっき方法。
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