JP4572534B2 - 静電駆動型半導体マイクロバルブ - Google Patents

静電駆動型半導体マイクロバルブ Download PDF

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Description

本発明は、半導体基板をマイクロマシンニング加工して形成した弁体基板を使用し、流体の流れを制御するマイクロバルブに関し、詳しくは静電気力により流体の流れる弁孔の開閉動作を行う静電駆動型半導体マイクロバルブに関するものである。
従来から、マイクロエレクトロニクス分野や医療機器用途等における流体制御部品として、シリコン等の半導体基板をマイクロマシンニング技術により微細構造加工してバルブ部材としてのマイクロ構造体を形成し、これを用いて流体の流通制御をできるようにしたマイクロバルブが各所で研究開発されている。一般にこの半導体マイクロバルブでは、バルブ部材に弁孔を開閉するための弁体が形成されており、前記弁孔を有する弁座基板部材と前記バルブ部材とを一体に組合せて構成し、前記バルブ部材に形成した弁体を前記弁座基板部材に対し変位動作させることにより前記弁孔を開閉して当該弁孔を流れる流体の流通を制御できるようになっている。この半導体マイクロバルブの弁開閉動作の駆動方式としては、いわゆるバイメタル原理を応用した熱駆動型と対向電極間に生じる静電気力を利用した静電駆動型がある。そのうち後者方式のものの一例として、例えば特許文献1に開示されたような半導体マイクロバルブである弁素子を挙げることができる。
この静電駆動型半導体マイクロバルブは、流体が通過するノズルが形成されたノズルプレートと、電極板と、この電極板を被覆する絶縁層と、前記ノズルを開閉するバルブ屈撓部分に一体的に形成されている可撓性で導電性のあるバルブビームから構成されている。前記電極板とこの電極板を被覆する絶縁層は、前記ノズルプレートに積層配置されており、前記バルブビームの屈撓部分は、前記電極板上の絶縁層に対して所定の間隔を保持した配置となっており、前記電極板と前記バルブビームとの間に電圧を印加することにより、静電気力に基づく吸引力によって前記電極板が前記バルブビームを吸引して、前記バルブが前記ノズルを閉止するようになっている(つまり、ノーマリーオープン型である)。
特開昭63−307959号公報
ところが、上述のような従来の静電駆動型半導体マイクロバルブにおいては、バルブビームの剛性のばらつきや、ノズルを通過する流体の圧力の変動によりバルブの浮上量が変化するため、流量ばらつきが発生するという問題点があった。
本発明は、上記従来技術の問題に鑑み、流体流量の良好な制御が可能な静電駆動型半導体マイクロバルブを提供することを目的とする。
上述の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、半導体基板からなり、中央領域に開口を有するフレームと、該フレームの開口内に配置された弁体部と、該弁体部と前記フレームとを連結し、前記弁体部が前記フレームに対し基板厚み方向に変位可能となる撓み性を有する薄肉のビームと、を備える弁体基板と、表面に開口する弁孔を有し、該弁孔に前記弁体部が一致するようにして前記フレームを表面に固定することにより前記弁体基板が搭載される弁座基板と、前記弁体基板の上面に搭載される第1基板と、を具備し、前記弁体基板は、前記弁体部における前記第1基板への対向面に可動電極層を有し、前記第1基板は、前記可動電極層に対向する表面に固定電極層を有し、前記可動電極層及び前記固定電極層の少なくとも一方の表面は、これら両電極層間の導通を防止するための絶縁層を有し、前記可動電極層と前記固定電極層との間には、所定量のギャップを有し、前記弁体部は、前記可動電極層及び前記固定電極層に電圧を印加しない状態では、前記弁孔をその接触圧により塞ぐようにして前記弁孔の開口周辺領域に接触して密着し、前記弁座基板の上表面には、前記弁孔の開口周縁部を前記密着する領域において囲むように、凹溝が形成されていることを特徴とする静電駆動型半導体マイクロバルブ。
なお、「前記可動電極層及び前記固定電極層に電圧を印加しない状態では、前記弁孔をその接触圧によって塞ぐようにして前記弁孔の開口周辺領域に接触して」とは、電圧が印加されず且つ前記弁孔に流体圧がかかっていない状況下(以下、初期状態と称する。)にあるときに前記弁体部が前記弁孔の開口周辺領域に接触していることを意味している。 また前記「接触圧」とは、この初期状態において前記弁体部が前記弁孔の開口周辺領域への接触する状態を保持するよう前記ビームの支持力でもって前記弁体部が前記弁孔の開口周辺領域に押付けられる比較的微小な圧力のことである。
また、本発明の請求項2に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、請求項1に記載の静電駆動型半導体マイクロバルブにおいて、前記ギャップを、前記第1基板と前記フレームとの間に設けた接合層で形成している。
また、本発明の請求項3に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、請求項1に記載の静電駆動型半導体マイクロバルブにおいて、前記ギャップを、前記弁体部における前記第1基板への対向面を前記フレームに比べて薄肉にして形成している。
また、本発明の請求項4に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、請求項1に記載の静電駆動型半導体マイクロバルブにおいて、前記ギャップを、前記第1基板における前記弁体部への対向面に凹所を設けて形成している。
また、本発明の請求項5に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の静電駆動型半導体マイクロバルブにおいて、前記第1基板が少なくとも前記フレームの開口部全面を覆うサイズである場合、前記第1基板、前記接合層、前記フレーム、前記弁座基板の少なくともいずれかに流入孔を備えている。
また、本発明の請求項6に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の静電駆動型半導体マイクロバルブにおいて、前記弁体部と前記弁座基板の対向面の少なくとも一方の接触部位の表面には、前記弁体部と前記弁座基板とが接触界面で固着するのを防止する微小突起を設けている。
また、本発明の請求項7に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の静電駆動型半導体マイクロバルブにおいて、前記可動電極層と電気的に接続する可動電極層用電極パッドを、前記フレームと前記弁座基板との接合面に設けている。
また、本発明の請求項8に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の静電駆動型半導体マイクロバルブにおいて、前記可動電極層と電気的に接続する可動電極層用電極パッドを、前記弁体基板と前記弁座基板の間に設けている。
また、本発明の請求項9に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、請求項8に記載の静電駆動型半導体マイクロバルブにおいて、前記弁体基板が支持層、中間酸化膜、活性層からなるSOI基板で構成され、前記弁体基板における前記第1基板との対向面に前記活性層を配置する場合に、前記活性層から前記支持層まで貫通する凹状導電層を設け、該凹状導電層にて、前記活性層と前記支持層と前記可動電極層側電極パッドとを電気的に接続している。
また、本発明の請求項10に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、請求項8に記載の静電駆動型半導体マイクロバルブにおいて、前記弁体基板が支持層、中間酸化膜、活性層からなるSOI基板で構成され、前記弁体基板における前記第1基板との対向面に前記活性層を配置する場合に、前記フレームにおける前記弁体部への対向面には、前記活性層と前記支持層とを電気的に接続する導電層を設け、該導電層にて前記活性層と前記支持層とを電気的に接続している。
また、本発明の請求項11に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の静電駆動型半導体マイクロバルブにおいて、前記固定電極層と電気的に接続する固定電極層用電極パッドを、前記弁体基板と前記第1基板の間に設けている。
また、本発明の請求項12に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、請求項5に記載の静電駆動型半導体マイクロバルブにおいて、前記第1基板が厚み方向に貫通する前記流入孔を備える場合、前記第1基板における前記弁体基板の非対向面に、前記可動電極層と電気的に接続する可動電極層用パッドと前記固定電極層と電気的に接続された固定電極層用パッドの少なくとも一方の電極層用パッドを備えている。
このような構成の静電駆動型半導体マイクロバルブは、中央領域に開口を有するフレームとフレームの開口内に配置された弁体部と弁体部とフレームとを連結し、弁体部がフレームに対し基板厚み方向に変位可能となる撓み性を有する薄肉のビームを備える弁体基板と、表面に開口する弁孔を有し弁孔に弁体部が一致するようにしてフレームを表面に固定することにより弁体基板が搭載される弁座基板と、弁体基板の上面に搭載される第1基板を備え、弁体部における第1基板への対向面に可動電極層を設け、第1基板における可動電極層に対向する表面に固定電極層を設け、可動電極層及び固定電極層の少なくとも一方の表面には、これら両電極層間の導通を防止するための絶縁層を設けるとともに、可動電極層と固定電極層との間には、所定量のギャップを設けて、可動電極層及び固定電極層に電圧を印加しない状態では、弁体部が弁孔をその接触圧により塞ぐようにして弁孔の開口周辺領域に接触して密着し、前記弁座基板の上表面には、前記弁孔の開口周縁部を前記密着する領域において囲むように、凹溝が形成されていることで、弁孔を閉じる瞬間及び開放する瞬間における弁体部の下面と弁座基板との界面でのエア逃がしが行えるため、開閉応答性が比較的良好に確保され、流体流量の良好な制御が可能なノーマリークローズ型の構成を実現することができる。
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において、同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。図1(a)は、静電駆動型半導体マイクロバルブを示すA−A断面(図1(c)参照)における断面図であり、図1(b)は、概略斜視図であり、図1(c)は、概略上面図(第1基板、接合層、絶縁層、可動電極を除いた状態)である。また、図2は、本実施形態の静電駆動型半導体マイクロバルブの変形形態を示す断面図である。
本実施形態における静電駆動型半導体マイクロバルブは、図1に示すように、半導体基板よりなる弁体基板1と、弁座基板2と、第1基板3とを備えた構成である。なお、静電駆動型半導体マイクロバルブの上下方向は、実際の使用状態での方位性に依存するため一義的に規定できないが、本実施形態の記述では説明の便宜上、図1(a)に示すように、弁座基板2の配置側を下側、第1基板3の配置側を上側というように上下方向を規定するものとする。
弁体基板1は、シリコン基板をマイクロマシンニング加工することにより形成されたいわゆるMEMS構造体であって、例えば、基板主面の中央領域に略正方形に開口を有するとともに上下方向(基板厚み方向)から見た外形の平面視も矩形状に形成されたフレーム11と、フレーム11の開口内に配置された弁体部12と、弁体部12とフレーム11を連結し弁体部12がフレーム11に対し上下方向に変位可能となる撓み性を有する薄肉のビーム13とを備えた構成である。なお、本実施形態においては、弁体基板1は、例えば、4本のビーム13を有し、各ビーム13は、フレーム11内の各辺から延出して略卍状をなすよう配置されている。
弁座基板2は、例えば、ガラス基板で構成され、上(表)面に開口する弁孔21を有し、弁孔21に弁体部12が一致するようにしてフレーム11を表面に固定することによって弁体基板1が搭載される構成である。また、第1基板3は、例えば、ガラス基板で構成され、弁体基板1の上面に搭載される。なお、本実施形態においては、図1(b)に示すように、第1基板3は、流体の流れを確保するために、フレーム11上面を全面覆う必要はない。また、弁座基板2の上表面には、図1(a)に示すように、弁孔21の開口周縁部を囲むように例えば、凹溝22が形成されている。
ここで、弁体基板1は、弁体部12における第1基板3への対向面に可動電極4を有しており、第1基板3は、可動電極4に対向する表面に固定電極5を有している。また、本実施形態においては、可動電極4における固定電極5との対向面は、絶縁層6を備えており、可動電極4と固定電極5との間には勿論、絶縁層6と固定電極5との間にも、所定量のギャップを設けている。なお、可動電極4及び固定電極5の少なくとも一方の表面に、これら両電極4、5間の導通を防止するための絶縁層が形成されていればよい。
フレーム11と弁座基板2との接合は、例えば、陽極接合にて行い、フレーム11と第1基板3との接合は、接合層7を介して行う。この場合、接合層7を設けることで、絶縁層6と固定電極5との間のギャップが形成されている。なお、弁体基板1と第1基板3との接合を陽極接合にて行う場合、陽極接合用の電極がそのまま接合層7になる。なお、接合層7がシリコンペースト等の接着剤であってもよく、この場合、接着剤の量を加減して接合層7の厚みを決定することができる。
可動電極4、固定電極5の材料は、例えばAlやCrの薄膜を用いる。また、絶縁層6の材料は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、高誘電体薄膜であるチタン酸ストロンチウム(STO)やチタン酸バリウム(BTO)を用いる。また、シリコン基板からなる弁体基板1に可動電極4を形成する方法の一例として、イオン注入等によって基板表面を高濃度状態(例えば、約1020cm-3程度)にし、そのまま電極として用いる方法を挙げることができる。
ここで、静電駆動型半導体マイクロバルブの動作について以下に説明する。静電駆動型半導体マイクロバルブは、可動電極4と固定電極5間に電圧を印加しない初期状態では、弁体部12が弁孔21をその接触圧によって塞ぐように弁孔21の開口周辺領域に接触、つまり非接着状態にて接触させるような構成であり、バルブを開状態にするには、可動電極4と固定電極5と間に電圧を印加し、弁体部12に働く流体の圧力に打ち勝つだけの静電引力を発生させて、弁体部12を固定電極5側に引寄せる構成である。
なお、静電駆動型半導体マイクロバルブは、弁孔21が閉じている状態において弁体部12の下面と弁座基板2とが広い面積で密着するような構成になっていると、弁体部12の下面と弁座基板2との界面でのエア抜きができなくなりやすく、例えばダンパー効果によりバルブの開閉応答性が悪くなる恐れがある。しかしながら、弁座基板2に上述の凹溝22を設けることで、弁孔21を閉じる瞬間及び開放する瞬間における前述の界面でのエア逃がしが行えるため、静電駆動型半導体マイクロバルブの開閉応答性が比較的良好に確保される。
本実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、弁体部12における第1基板3への対向面に可動電極4を設け、第1基板3における可動電極4に対向する表面に固定電極5を設け、可動電極4及び固定電極5の少なくとも一方の表面には、これら両電極4、5間の導通を防止するための絶縁層6を設けるとともに、絶縁層6と固定電極5との間には、所定量のギャップを設けて、可動電極4及び固定電極5の間に電圧を印加しない状態では、弁体部12が弁孔21をその接触圧により塞ぐようにして弁孔21の開口周辺領域に接触させるようにすることで、流体流量の良好な制御が可能なノーマリークローズ型の構成を実現することができる。
また、静電駆動型半導体マイクロバルブは、絶縁層6と固定電極5との間のギャップ内に弁体部12の変位する範囲を限定した構成にすることにより、過剰な変位による薄肉であるビーム13の破損を防ぐことができ、更に、バルブ開時のギャップ量も一律に規定できるため、流体流量のばらつきを低減することが可能となる。
なお、図2には、本実施形態における静電駆動型半導体マイクロバルブの変形形態を示している。第1の変形形態は、図2(a)に示すように、静電駆動型半導体マイクロバルブは、例えば、弁体部12の上面をエッチング加工し、フレーム11面よりも低い形状とすることで、弁体部12における第1基板3への対向面をフレーム11に比べて薄肉にし、可動電極4と固定電極5との間のギャップは勿論、絶縁層6と固定電極5との間のギャップを形成する構成である。この場合、図1に示すような構成の静電駆動型半導体マイクロバルブより接合層7を薄く設けるだけでよい。
また、第2の変形形態は、図2(b)に示すように、静電駆動型半導体マイクロバルブは、第1基板3における弁体部12への対向面に凹部31を設けて、絶縁層6と固定電極5との間のギャップを形成する構成である。この場合、図1に示すような構成の静電駆動型半導体マイクロバルブより接合層7を薄く設けるだけでよい。なお、凹部31は、弁体部12の変位にともない弁体部12が接触することのないような、例えば図2(b)に示すように弁体部12の形状にあわせた所望の凹形状であればよい。
また、第3の変形形態は、図2(c)に示すように、図1に示す静電駆動型半導体マイクロバルブが弁体部12と弁座基板2の対向面の弁体部12側における接触部位の表面に弁体部12と弁座基板2とが接触界面で固着するのを防止する微小突起8を備えた構成である。弁体部12と弁孔21との相対面は、通常いずれも鏡面若しくはそれに近い状態となり、スティッキング(つまり、固着)現象が発生し易くなるが、微小突起8により、弁体部12と弁座基板2との接触界面中に介在するような、水分に起因する固着力を低減させ、スティッキング現象の発生を抑制することで信頼性の高いバルブの動作が実現できる。なお、微小突起8の突出高は、余り大きすぎると接触界面から流体の好ましくないリークを生じるので、接触界面からの流体リーク量が許容範囲に納まるように高さ設計する必要がある。
なお、微小突起8の形成方法は、例えば、弁体部12のウエハ全面を酸化しておき、フォト工程によって微小突起形成部分以外の酸化膜を選択的にエッチング除去する方法等により行う。微小突起8は、弁体部12と一体化していなくても、別途形成して後、所望箇所に接着するような構成であっても勿論よい。なお、微小突起8は、弁体部12と弁座基板2の対向面の少なくとも一方の接触部位の表面に形成されていればよい。
(第2実施形態)
次に、第1実施形態において第1基板3が少なくともフレーム11の開口部全面を覆うサイズであるような実施形態を、本発明の第2実施形態として図3乃至図5に基づいて説明する。図3(a)は、静電駆動型半導体マイクロバルブを示す断面図であり、図3(b)は、概略斜視図である。また、図4(a)〜(d)は、本実施形態の静電駆動型半導体マイクロバルブの変形形態を示す断面図である。また、図5は、静電駆動型半導体マイクロバルブの実装形態を示す断面図の例(図5(a)は、図4(c)に対応する一例であり、図5(b)は、図4(d)に対応する一例)である。
図3に示すように、本実施形態において第1実施形態との相違点は、図1において第1基板3がフレーム11上面の全面覆い、静電駆動型半導体マイクロバルブが第1基板3とフレーム11との間に接合層7を備え、その接合層7の一部を除去して流体が出入りする微小な流入孔9(9a)を備えた点である。つまり、本実施形態においては、流体の出入りが可能な箇所は、流入孔9(9a)と弁孔21のみである。
また、本実施形態の静電駆動型半導体マイクロバルブの第1の変形形態は、図4(a)に示すように、図2(a)において第1基板3がフレーム11の開口部全面を覆い、接合層7の一部を除去し、フレーム11の一部をエッチング等により除去して微小な流入孔9(9b)を備えた点が、第2の変形形態は、図4(b)に示すように、図2(b)において第1基板3がフレーム11の開口部全面を覆い、第1基板3に設けた凹部31を基板の周辺部まで延設して微小な流入孔9(9c)を備えた点が、第3の変形形態は、図4(c)に示すように、図1において第1基板3がフレーム11の開口部全面を覆い、第1基板3に対して上下方向(厚み方向)に貫通する微小な流入孔9(9d)を備えた点が、第4の変形形態は、図4(d)に示すように、図1において第1基板3がフレーム11の開口部全面を覆い、弁座基板2に対して上下方向(厚み方向)に貫通する微小な流入孔9(9e)を備えた点が第1実施形態と相違する点である。
本実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、第1基板3が少なくともフレーム11の開口部全面を覆うサイズである場合、第1基板3、接合層7、フレーム11、弁座基板2の少なくともいずれかに微小な流入孔9を設けることで、弁体部12の変位する領域が略閉空間となる。これにより入力(流入)側の圧力と略閉空間の圧力に差が生じ、結果として略閉空間と流出側との圧力差が縮小されることになり、バルブの駆動に必要な発生力が小さくて済むので、駆動電圧の低減がはかれる。
ここで、静電駆動型半導体マイクロバルブの実装形態は、例えば、図5(a)に示すように、弁孔21に連通する導通孔51を備えた実装用基板50a(例えば、パッケージ)に図4(c)に示した静電駆動型半導体マイクロバルブの弁座基板2側を接着し、第1基板3側から静電駆動型半導体マイクロバルブを覆いかぶせるような例えば蓋50bを設けた構成を例示することができる。なお、蓋50bは、導通孔52を備えている。この場合、静電駆動型半導体マイクロバルブは、導通孔52から流入孔9dへ流体を導入し、弁孔21から導通孔51へ流体を流出させる。
この場合、静電駆動型半導体マイクロバルブは、平常時で弁体部12と弁座基板2とが接触した状態であるため、入力側である流入孔9dから流体導入よる圧力が印加された場合でも、圧力が弁体部12を弁座基板に押し付ける方向に働き、逆止弁的な動作をするため、ノーマリクローズ(つまり、常時閉)型のバルブとして機能する。なお、バルブを開状態にするには、可動電極4と固定電極5と間に電圧を印加し、弁体部12に働く圧力に打ち勝つだけの静電引力を発生させて、弁体部12を固定電極5側に引寄せることにより実現できる。第1実施形態において示した静電駆動型半導体マイクロバルブに対しても勿論同様の効果を奏する。
また、静電駆動型半導体マイクロバルブの他の実装形態としては、例えば、図5(b)に示すように、弁孔21に連通する導通孔53と弁座基板2に設けた流通孔9eに連通する導通孔54を備えた実装用基板50c(例えば、パッケージ)に図4(d)に示した静電駆動型半導体マイクロバルブの弁座基板2側を接着した構成を例示することができる。
この場合、静電駆動型半導体マイクロバルブは、流体の滞留空間がバルブの内部、つまり弁体基板1と第1基板3との間の空間だけに略限定されるので、デッドボリュームを低減する構成となる。
ここで、更に、可動電極4及び固定電極5の取り出し構造に対する実施形態を、第3実施形態乃至第8実施形態として以下に示す。図6乃至図11は、静電駆動型半導体マイクロバルブを示す断面図である。
(第3実施形態)
まず、弁体基板1と第1基板3の間に可動電極用電極パッド40と固定電極用電極パッド50を設けた実施形態を、本発明の第3実施形態として図6に基づいて説明する。
本実施形態においては、第1実施形態に示した静電駆動型半導体マイクロバルブを基本構成にして、図6(a)に示すように、接合層7をAl等の電極で構成し、固定電極5を可動電極4に対向する表面部分だけから更にフレーム11の一端部まで延設し、弁体基板1における第1基板3の対向面に絶縁層6を設けた構成である。なお、この絶縁層6は、図6(a)に示すように、弁体基板1表面と電気的接続させるためにフレーム11の一部には設けていない。
可動電極4と電気的に接続する可動電極用電極パッド40は、前述した絶縁層6を設けていない箇所を含む接合層7を用いて構成する。また、固定電極5と電気的に接続する固定電極用電極パッド50は、可動電極用電極パッド40と電気的に分離された接合層7の他の部分を用いて固定電極5と電気的に接続して構成する。ここで、第1基板3は、可動電極用電極パッド40、固定電極用電極パッド50を上面に露出させるために、図6(a)に示すように、フレーム11部分の全面を覆うような構成ではない。
本実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、弁体基板1と第1基板3との間の接合層7を可動電極用電極パッド40、固定電極用電極パッド50と兼ねる構成とすることで、工数減により製造コストの削減をはかることができる。
なお、静電駆動型半導体マイクロバルブは、図6(b)に示すように、図6(a)とは弁体基板1の上下方向を逆転させ構成であってもよい。この場合、可動電極4の面積をより大きくとることができるので、静電駆動型半導体マイクロバルブは、低電圧での駆動には有利な構成である。
(第4実施形態)
また、図6(b)に示した静電駆動型半導体マイクロバルブの変形形態でとして、弁体基板1と弁座基板2の間に可動電極用電極パッド40を設けた実施形態を、本発明の第4実施形態として図7に基づいて説明する。
本実施形態においては、Al等の金属からなる導電性の接合層71を弁座基板2におけるフレーム11の対向面に形成し、図7に示すように、この接合層71の一部上面が露出するようにフレーム11と接合することで、静電駆動型半導体マイクロバルブが、この接合層71を可動電極用電極パッド40を兼用する構成である。なお、固定電極用電極パッド50の構成は、第3実施形態にて説明した構成と同様のため説明は省略する。
本実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、弁体基板1と弁座基板2の間の接合層71を可動電極用電極パッド40と兼ね、弁体基板1と第1基板3との間の接合層7を固定電極用電極パッド50と兼ねる構成とすることで、工数減により製造コストの削減をはかることができる。
(第5実施形態)
また、第4実施形態の更なる変形形態である実施形態を、本発明の第5実施形態として図8に基づいて説明する。
本実施形態においては、静電駆動型半導体マイクロバルブは、図8に示すように、フレーム11と弁座基板2との間に設けたAl等の金属からなる導電性の接合層71と、弁孔21を介して弁座基板2の上下(表裏)が電気的に導通するAl、Au、Cr等の材料からなる金属配線72を備え、接合層71と金属配線72とを電気的に接続することにより、この金属配線72の弁座基板2下面(裏面)の箇所を可動電極用電極パッド40として用い、弁座基板2の弁体基板1との接合面とは反対面に可動電極用電極パッド40を取り出す構成である。なお、金属配線72と可動電極用電極パッド40とは各々別途形成しそれらを電気的に接続するようにした構成であってもよい。
本実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、可動電極用電極パッド40をバルブチップの下面(裏面)側に取り出すことができるので、表面実装によりパッケージの小型化や低背化が可能とする。また、可動電極用電極パッド40のためにチップの面積を割く必要がないため、チップの小型化及び製造コストの削減をはかることができる。
(第6実施形態)
また、第5実施形態において弁体基板にSOI(Silicon On Insulator)基板を用いた構成の実施形態を、本発明の第6実施形態として図9に基づいて説明する。
本実施形態と第5実施形態と異なる点は、弁体基板1が活性層101、中間酸化膜102、支持層103からなるSOI基板であり、弁体基板1における第1基板3との対向面に活性層101を配置して、活性層101から支持層103まで貫通し導電性を有する例えば凹状導電層73を設けた点である。
本実施形態において、静電駆動型半導体マイクロバルブは、凹状導電層73が例えば導電性の膜であり、凹状導電層73にて活性層101と支持層103とを電気的に接続し活性層101、支持層103を導通させ、弁体基板1内を通じて可動電極4を可動電極用電極パッド40まで引き出した構成である。
本実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、弁体基板1にSOI基板を採用することができ、薄肉のビーム13厚を精度よく均一に作ることができる。また、このことにより、サンプル間ばらつきを低減させる効果や、チップ内のビーム13厚の不均一性に起因する弁体部12、ビーム13の傾きを低減してバルブ動作を安定化させる等の効果が生まれる。
(第7実施形態)
また、第5実施形態において弁体基板1にSOI基板を用いた他の構成の実施形態を、本発明の第7実施形態として図10に基づいて説明する。
本実施形態と第6実施形態と異なる点は、弁体基板1が活性層101、中間酸化膜102、支持層103からなるSOI基板であり、弁体基板1における第1基板3との対向面に活性層101を配置して、フレーム11における弁体部12への対向面には、活性層101と支持層103とを電気的に接続する導電性を有する導電層74を設けた点である。なお、図10に示すように、本実施形態においては、ビーム13にもAl、Au、Cr等の導電層75を設け、弁体部12にも導電層を設けてこの導電層の第1基板に面する側を用いて可動電極4を形成する。なお、導電層74、75、弁体部12に設ける導電層は、同一の導電層として弁体基板1に一括して同時に形成してもよい。
本実施形態において、静電駆動型半導体マイクロバルブは、導電層74が例えば導電性の膜であり、導電層74にて活性層101と支持層103とを電気的に接続し活性層101、支持層103を導通させ、フレーム11の壁面を通じて可動電極4を可動電極用電極パッド40まで引き出した構成である。
本実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、弁体基板1にSOI基板を採用することができ、薄肉のビーム13厚を精度よく均一に作ることができる。また、このことにより、サンプル間ばらつきを低減させる効果や、チップ内のビーム13厚の不均一性に起因する弁体部12、ビーム13の傾きを低減してバルブ動作を安定化させる等の効果が生まれる。また、活性層101と支持層103との接続部の面積を大きく取ることができるので、接続部の断線の危険性を低減し、信頼性を高めることができる。
(第8実施形態)
最後に、その他の実施形態を、本発明の第8実施形態として図11に基づいて説明する。
本実施形態においては、静電駆動型半導体マイクロバルブは、第1基板3が図4(c)に示したような厚み方向に貫通する流入孔9dを備えており、第1基板3における弁体基板1の非対向面、つまり、第1基板3の上面に、可動電極用電極パッド40と固定電極用電極パッド50を備えた構成である。
静電駆動型半導体マイクロバルブは、フレーム11と弁座基板2との間には第3実施形態等に示したAl等の電極等の接合層7を備え、第1基板の上下(表裏)には、流入孔9dを介して電気的に導通するようにAl等の材料からなる金属配線76が形成されており、金属配線76と接合層7とを電気的に接続することにより可動電極用電極パッド40を第1基板3における弁体基板1の非対向面、つまり、第1基板3の上面に取り出した構成となっている。
また、固定電極5についても、可動電極4と同様に、第1基板3の上下には流入孔9dを介して電気的に導通するようにAl等の材料からなる金属配線77を形成し、固定電極5と金属配線77とを電気的に接続することにより、静電駆動型半導体マイクロバルブが固定電極用電極パッド50を第1基板3の上面に取り出した構成となっている。
本実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブは、可動電極用電極パッド40、固定電極用電極パッド50を第1基板3の上面(表面)側に取り出すことができるので、チップ表面側を下にしてパッケージに表面実装することにより、パッケージの小型化、低背化、及びチップの小型化及び製造コスト削減をはかることができる。
ここで、第2実施形態乃至第8実施形態において、静電駆動型半導体マイクロバルブが弁体部12と弁座基板2の対向面の少なくとも一方の接触部位の表面に、弁体部12と弁座基板2とが接触界面で固着するのを防止する微小突起を備えた構成であっても勿論よい。
なお、図2乃至図11に示す静電駆動型半導体マイクロバルブの断面図は、図1でのA-A断面に相当する箇所における断面図である。
本発明の第1実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブを示す説明図である。 本発明の第1実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブの変形形態を示す断面図である。 本発明の第2実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブを示す説明図である。 本発明の第2実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブの変形形態を示す断面図である。 本発明の第2実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブの実装形態を示す断面図である。 本発明の第3実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブを示す断面図である。 本発明の第4実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブを示す断面図である。 本発明の第5実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブを示す断面図である。 本発明の第6実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブを示す断面図である。 本発明の第7実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブを示す断面図である。 本発明の第8実施形態に係る静電駆動型半導体マイクロバルブを示す断面図である。
符号の説明
1 弁体基板
2 弁座基板
3 第1基板
4 可動電極
5 固定電極
6 絶縁層
7、71 接合層
8 微小突起
9 流入孔
11 フレーム
12 弁体部
13 ビーム
21 弁孔
22 凹溝
31 凹部
40 可動電極用電極パッド
50 固定電極用電極パッド
72 金属配線
73 凹状導電層
74 導電層
75 導電層
76、77 金属配線
77 金属配線

Claims (12)

  1. 半導体基板からなり、中央領域に開口を有するフレームと、該フレームの開口内に配置された弁体部と、該弁体部と前記フレームとを連結し、前記弁体部が前記フレームに対し基板厚み方向に変位可能となる撓み性を有する薄肉のビームと、を備える弁体基板と、
    表面に開口する弁孔を有し、該弁孔に前記弁体部が一致するようにして前記フレームを表面に固定することにより前記弁体基板が搭載される弁座基板と、
    前記弁体基板の上面に搭載される第1基板と、
    を具備し、
    前記弁体基板は、前記弁体部における前記第1基板への対向面に可動電極層を有し、
    前記第1基板は、前記可動電極層に対向する表面に固定電極層を有し、
    前記可動電極層及び前記固定電極層の少なくとも一方の表面は、これら両電極層間の導通を防止するための絶縁層を有し、
    前記可動電極層と前記固定電極層との間には、所定量のギャップを有し、
    前記弁体部は、前記可動電極層及び前記固定電極層に電圧を印加しない状態では、前記弁孔をその接触圧により塞ぐようにして前記弁孔の開口周辺領域に接触して密着し、
    前記弁座基板の上表面には、前記弁孔の開口周縁部を前記密着する領域において囲むように、凹溝が形成されていることを特徴とする静電駆動型半導体マイクロバルブ。
  2. 前記ギャップを、前記第1基板と前記フレームとの間に設けた接合層で形成した請求項1に記載の静電駆動型半導体マイクロバルブ。
  3. 前記ギャップを、前記弁体部における前記第1基板への対向面を前記フレームに比べて薄肉にして形成した請求項1に記載の静電駆動型半導体マイクロバルブ。
  4. 前記ギャップを、前記第1基板における前記弁体部への対向面に凹所を設けて形成した請求項1に記載の静電駆動型半導体マイクロバルブ。
  5. 前記第1基板が少なくとも前記フレームの開口部全面を覆うサイズである場合、
    前記第1基板、前記接合層、前記フレーム、前記弁座基板の少なくともいずれかに流入孔を備えた請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の静電駆動型半導体マイクロバルブ。
  6. 前記弁体部と前記弁座基板の対向面の少なくとも一方の接触部位の表面には、前記弁体部と前記弁座基板とが接触界面で固着するのを防止する微小突起を設けた請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の静電駆動型半導体マイクロバルブ。
  7. 前記可動電極層と電気的に接続する可動電極層用電極パッドを、前記フレームと前記弁座基板との接合面に設けた請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の静電駆動型半導体マイクロバルブ。
  8. 前記可動電極層と電気的に接続する可動電極層用電極パッドを、前記弁体基板と前記弁座基板の間に設けた請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の静電駆動型半導体マイクロバルブ。
  9. 前記弁体基板が支持層、中間酸化膜、活性層からなるSOI基板で構成され、前記弁体基板における前記第1基板との対向面に前記活性層を配置する場合に、前記活性層から前記支持層まで貫通する凹状導電層を設け、該凹状導電層にて、前記活性層と前記支持層と前記可動電極層側電極パッドとを電気的に接続した請求項8に記載の静電駆動型半導体マイクロバルブ。
  10. 前記弁体基板が支持層、中間酸化膜、活性層からなるSOI基板で構成され、前記弁体基板における前記第1基板との対向面に前記活性層を配置する場合に、前記フレームにおける前記弁体部への対向面には、前記活性層と前記支持層とを電気的に接続する導電層を設け、該導電層にて前記活性層と前記支持層とを電気的に接続した請求項8に記載の静電駆動型半導体マイクロバルブ。
  11. 前記固定電極層と電気的に接続する固定電極層用電極パッドを、前記弁体基板と前記第1基板の間に設けた請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の静電駆動型半導体マイクロバルブ。
  12. 前記第1基板が厚み方向に貫通する前記流入孔を備える場合、前記第1基板における前記弁体基板の非対向面に、前記可動電極層と電気的に接続する可動電極層用パッドと前記固定電極層と電気的に接続された固定電極層用パッドの少なくとも一方の電極層用パッドを備えた請求項5に記載の静電駆動型半導体マイクロバルブ。
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