本発明の電子写真感光体は、上述のとおり、導電性支持体上に、支持体側から、電荷発生層と、電荷輸送層とをこの順に積層した電子写真感光体において、電荷輸送層が下記式(1)で示される構造単位を含有するポリアリレート樹脂と、電荷輸送材料と、フッ素原子含有樹脂微粒子とを含有することを特徴とする電子写真感光体である。
(式(1)中、R111〜R118及びR211〜R218は、それぞれ独立に、水素、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、又は炭素数1〜3のアルコキシ基を示し、
Xは、単結合、酸素原子、硫黄原子、又は下記式(2a)
(式(2a)中、R311及びR312は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、フッ化アルキル基、アルコキシ基、又はアリール基を示し、これらの他、R311及びR312は、R311とR312とが結合して形成されるシクロアルキリデン基、又はフルオレニリデン基を示す。)
で示される構造を有する2価の基を示す。)
上述の式(1)中、R111〜R118及びR211〜R218のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。なかでも、R111〜R118及びR211〜R218は、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基が好ましい。
上述の式(2a)中、R311及びR312のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。フッ化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。なかでも、R311及びR312は、メチル基が好ましい。
また、上述の式(2a)中のR311及びR312とが結合して形成されるシクロアルキリデン基としては、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基などが挙げられる。これらのなかでも、シクロヘキシリデン基が好ましい。
以下に、上述の式(1)で示される繰り返し構造単位の具体例を示す。
本発明の電子写真感光体は、電荷輸送層に上述の式(1)で示される繰り返し構造式を有するポリアリレート樹脂と、フッ素原子含有樹脂微粒子とを含有する。このフッ素原子含有樹脂微粒子の分散性及び樹脂強度の観点から、上述の式(1)で示される構造単位は、ポリアリレート樹脂中の全構造単位中、50モル%以上100モル%以下であることが好ましい。また、70モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、100%であることが最も好ましい。
また、本発明の電子写真感光体の電荷輸送層に用いられる上述の式(1)で示される構造単位を有するポリアリレート樹脂は、上述の式(1)で示される構造単位を有すればよく、単独重合体であっても共重合体であってもよい。特に、共重合体である場合、上述の式(1)で示される構造単位と、この構造単位とは異なり上述の式(1)から選択された上述の式(1)で示される構造単位とを有する共重合体であってもよい。また、上述の式(1)で示される構造単位と、他の2価のカルボン酸及び2価の有機残基よりなる構造単位とを有する共重合体であってもよい。共重合体である場合、その重合形態は、ブロック共重合、ランダム共重合といった任意の重合形態でもよく、ランダム共重合形態であることが好ましい。
また、本発明中での、上述の式(1)で示される構造単位と、この構造単位とは異なり上述の式(1)から選択された構造単位、又は他の2価のカルボン酸及び2価の有機残基よりなる構造単位とを有する共重合ポリアリレート樹脂のモル比換算での共重合比がA:Bという記載は、上述の式(1)に示されるジカルボン酸エステル部位を(1−C)、ビスフェノール部位を(1−B)、上述の式(1)から選択された構造単位と異なる上述の式(1)で示される構造単位、又は他の2価のカルボン酸及び2価の有機残基よりなる構造単位に示されるジカルボン酸エステル部位を(3−C)、ビスフェノール部位を(3−B)とした場合、モル比換算でジカルボン酸エステル部位(1−C):(3−C)がA:Bであり、モル比換算でビスフェノール部位(1−B):(3−B)がA:Bであることを意味する。
上述の他の2価のカルボン酸及び2価の有機残基よりなる構造単位に用いられる2価カルボン酸の例としては、芳香族二価カルボン酸類、直鎖脂肪族二価カルボン酸類、環状脂肪族二価カルボン酸類テレフタル酸等が挙げられる。芳香族二価カルボン酸類としては、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。直鎖脂肪族二価カルボン酸類としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカニ酸が挙げられる。環状脂肪族二価カルボン酸類としては、シクロへキシレンジカルボン酸が挙げられる。なかでも、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。2価の有機残基としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)や2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールC)といったビスフェノール類、4,4’−ヒドロキシビフェニルといったビフェノール類などが挙げられる。以下、これら他の2価のカルボン酸及び2価の有機残基よりなる繰り返し構造単位の構造例を示す。
本発明の電子写真感光体の電荷輸送層に用いられる上述の式(1)で示される構造単位を有するポリアリレート樹脂は、上述のとおり、重量平均分子量が80000以上のものである。上述の式(1)で示される構造単位を有するポリアリレート樹脂のうち、重量平均分子量が80000未満のものは、機械的強度が低く、電子写真感光体の耐久性の向上に不十分である。さらには、重量平均分子量が90000以上であることが好ましい。
一方、上述の式(1)で示される構造単位を有するポリアリレート樹脂の分子量が大きすぎると、これを含有する塗布液の塗布性が悪くなる場合があるため、上述の式(1)で示される構造単位を有するポリアリレート樹脂の重量平均分子量は300000以下であることが好ましく、特には200000以下であることがより好ましい。
本発明の電子写真感光体の電荷輸送層に用いられるフッ素原子含有樹脂微粒子としては、四フッ化エチレン樹脂、三フッ化塩化エチレン樹脂、四フッ化エチレン六フッ化エチレンプロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、二フッ化二塩化エチレン樹脂及びこれらの共重合樹脂などの粒子が挙げられる。なかでも、特に四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)粒子が好ましい。
また、粒径は体積平均粒径で0.05〜0.50μmであることが好ましく、0.10〜0.40μmであることがより好ましい。
フッ素原子含有樹脂微粒子を電荷輸送層中に均一に含有させるために、フッ素原子含有樹脂微粒子をホモジナイザー、ラインミキサー、ウルトラディスパーサー、ホモミキサー、液衝突型高速分散機及び超音波分散機などの各種乳化機や分散機、ミキサーなどの混合装置を用いて分散することができる。
この際、粒径を好ましい大きさにコントロールする点で、式(11)及び(12)で示されるジオルガノポリシロキサン樹脂を分散剤として用い、フッ素原子含有樹脂微粒子とバインダー樹脂とを混合して、あらかじめ分散することが好ましい。
式(11)及び(12)で示されるジオルガノポリシロキサンとは、下記式(11)で示される繰り返し構造単位αと、下記式(12)で示される繰り返し構造単位βとを有し、重量平均分子量が10000〜1000000であるものである。
上述の式(11)、(12)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、置換又は無置換の1価の炭化水素基を示す。また、B11は、パーフルオロアルキル基を有する1価の有機基を示す。D11は、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基、置換又は無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基、置換又は無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基、及び炭素原子数12以上の1価の有機基からなる群より選択される1価の基を示す。
また、上述のジオルガノポリシロキサンは、下記式(13)で示される繰り返し構造単位γをさらに有してもよい。
式(13)中、R13及びR14は、それぞれ独立に、置換又は無置換の1価の炭化水素基を示す。
また、上述のジオルガノポリシロキサンの末端基としては、例えば、下記式(14)で示される構造を有する末端基I、下記式(15)で示される構造を有する末端基IIが挙げられる。
E11− ・・・(14)
式(14)、(15)中、R15及びR16は、それぞれ独立に、置換又は無置換の1価の炭化水素基を示す。E11及びE12は、それぞれ独立に、置換又は無置換の1価の炭化水素基、パーフルオロアルキル基を有する1価の有機基、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基、置換又は無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基、置換又は無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基、及び炭素原子数12以上の1価の有機基からなる群より選択される1価の基を示す。ただし、式(14)中のE11は、ジオルガノポリシロキサンが有する繰り返し構造単位の主鎖(−Si−O−)中のSiと結合し、上述の式(15)中のSiはジオルガノポリシロキサンが有する繰り返し構造単位の主鎖(−Si−O−)中のOと結合する。
本発明において、有機基とは、置換又は無置換の炭化水素基を意味する。また、炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルケニル基などが挙げられる。
上述のR11〜R16の1価の炭化水素基としては、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアルケニル基、置換又は無置換のアリール基、置換又は無置換のアリールアルケニル基などが挙げられる。これらの基の炭素原子数は1〜30であることが好ましく、特にはメチル基、フェニル基がより好ましい。
上述のB11のパーフルオロアルキル基を有する1価の有機基は、下記式(2)で示される構造を有する1価の基であることが好ましい。
上述の式(2)中、R21は、アルキレン基又はアルキレンオキシアルキレン基を示し、aは、3以上の整数を示す。
上述のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基などが挙げられる。上述の記アルキレンオキシアルキレン基としては、エチレンオキシエチレン基、エチレンオキシプロピレン基、プロピレンオキシプロピレン基などが挙げられる。
上述のD11の重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基は、下記式(3)で示される構造を有する1価の基であることが好ましい。
上述の式(3)中、R31は、置換又は無置換の2価の炭化水素基を示す。R32及びR33は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示す。W31は、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を示す。R34は、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、bは、0又は1を示す。
上述の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基が挙げられ、炭素原子数1〜10であることが好ましい。上述のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。上述のアリール基としては、無置換であることが好ましく、フェニル基などが挙げられる。
上述のD11の置換又は無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基は、下記式(4)で示される構造を有する1価の基であることが好ましい。
式(4)中、R41及びR42は、それぞれ独立に、置換又は無置換の2価の炭化水素基を示す。R43は、水素原子、又は、置換若しくは無置換の1価の炭化水素基を示す。cは、0又は1を示し、dは、1以上300以下の整数を示す。
上述の2価の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などのアルキレン基や、フェニレン基などのアリーレン基などが挙げられる。上述の1価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基や、フェニル基などのアリール基などが挙げられる。上述のdは、5以上であることが好ましい。
上述のD11の置換又は無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基は、下記式(5)で示される構造を有する1価の基であることが好ましい。
上述の式(5)中、R51は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、又は酸素原子を示し、R52〜R56は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアリール基を示し、eは、3以上の整数を示す。
上述のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基などが挙げられる。アルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基などが挙げられる。上述のアルキル基としては、メチル基、エチル基などが挙げられる。上述のアリール基としては、フェニル基などが挙げられる。上述のeは、5以上であることが好ましい。
上述のD11の炭素原子数12以上の1価の有機基としては、n−ドデシル基、n−テトラドデシル基、n−ヘキサデシル基及びn−オクタデシル基などのアルキル基が挙げられる。上述の炭素原子数は、100以下であることが好ましい。
上述の各基が有してもよい置換基としては、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子や、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基や、フェニル基などのアリール基などが挙げられる。
上述のジオルガノポリシロキサンにおける式(11)で示される繰り返し構造単位αの数(平均)は、1〜1000であることが好ましく、10〜200であることがより好ましい。
上述のジオルガノポリシロキサンにおける式(12)で示される繰り返し構造単位βの数(平均)は、1〜1000であることが好ましく、5〜100であることがより好ましい。
上述のジオルガノポリシロキサンにおける式(13)で示される繰り返し構造単位γの数(平均)は、0〜1000であることが好ましく、100〜200であることがより好ましい。
上述のジオルガノポリシロキサンが有する繰り返し構造単位は、式(11)で示される繰り返し構造単位αと、式(12)で示される繰り返し構造単位βとのみであることが好ましい。また、上述のジオルガノポリシロキサンが有する繰り返し構造単位は、式(11)で示される繰り返し構造単位αと、式(12)で示される繰り返し構造単位βと、式(13)で示される繰り返し構造単位γとのみであることが好ましい。
上述のジオルガノポリシロキサンにおける式(11)で示される繰り返し構造単位αと、式(12)で示される繰り返し構造単位βと、式(13)で示される繰り返し構造単位γとの和(平均)は、2〜2000であることが好ましい。また、この値は、5〜1000であることがより好ましく、20〜500であることがより一層好ましい。
上述の式(11)で示される繰り返し構造単位αの数が2以上の場合、複数のR11は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよく、複数のB11は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよい。
上述の式(12)で示される繰り返し構造単位βの数が2以上の場合、複数のR12は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよく、複数のD11は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよい。D11は、上述のとおり、重合度3以上の置換又は無置換のポリスチレン鎖を有する1価の有機基、置換又は無置換のアルキレンオキシ基を有する1価の有機基、置換又は無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基、及び炭素原子数12以上の1価の有機基のいずれかである。D11が複数の場合は、少なくとも1個のD11は、置換又は無置換のシロキサン鎖を有する1価の有機基であることが好ましい。
上述の式(13)で示される繰り返し構造単位γの数が2以上の場合、複数のR13は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよく、複数のR14は同一の基であっても異なる2種以上の基であってもよい。
同様のことが、上述の式(3)中のR32及びR33、上述の式(4)のR42、上述の式(5)のR52及びR53についてもいえる。
以下に、本発明に用いられるジオルガノポリシロキサンの具体例を示す。ただし、これらに限定されない。また、下記ジオルガノポリシロキサン(1−1)〜(1−23)は、いずれも、末端基として上述の式(14)で示される構造を有する末端基I(E11:メチル基)、下記式(15)で示される構造を有する末端基II(E12、R15、R16:メチル基)を有する。なお、(1−1)〜(1−23)に示した構造のうち、特に記していない末端置換基は、いずれも直鎖である。
これらの中では、(1−1)、(1−4)、(1−5)、(1−7)、(1−10)、(1−14)、(1−15)、(1−22)が好ましく、(1−1)、(1−4)がより好ましい。
また、本発明に用いられるジオルガノポリシロキサンの重量平均分子量は、10000〜200000であることが好ましく、10000〜100000であることがより好ましく、20000〜40000であることがより一層好ましい。
本発明の電子写真感光体におけるジオルガノポリシロキサンの含有量は、フッ素原子含有樹脂微粒子を所望の分散粒径にするために最低限必要な量であることが好ましい。分散剤の含有量が多いほどキャリアトラップの原因となり繰り返し使用時の電位変動を生じやすくなる。一方、少なすぎると、十分な分散状態が得られず、フッ素原子含有樹脂微粒子の耐摩耗性の効果が得られなくなるため、通常、特許文献6に開示されているように、フッ素原子含有樹脂微粒子100質量部に対して、0.1質量部以上の分散剤が必要である。
ところが、本発明の場合は、使用するバインダーの構造について、式(1)の比率が50%以上のポリアリレート樹脂であれば、フッ素原子含有樹脂微粒子の分散性が良好である。また、分散剤の量が、フッ素原子含有樹脂微粒子100質量部に対して、0.1質量部未満であっても良好な分散が可能である。さらに式(1)のみの構造からなるポリアリレート樹脂であれば、分散剤を使用しなくても良好な分散状態が得られる。
また、あらかじめジオルガノポリシロキサンと、フッ素原子含有樹脂微粒子と、少なくとも式(1)で示されるポリアリレート樹脂を含むバインダー樹脂とで分散する場合、より良い分散状態を得るために、フッ素原子含有樹脂微粒子の質量部に対してバインダー樹脂の質量部を等量以上にすることが好ましく、1.5倍量以上にすることがより好ましい。
表面層におけるフッ素原子含有樹脂微粒子の含有量は、表面層の全体100質量部に対して、0.5〜30質量部が好ましい。0.5質量部未満では、耐摩耗性の効果が少ない。30質量部を超えると、光の透過性の低下、散乱などが生じて電子写真特性に悪影響を与える。
本発明の電子写真感光体の電荷輸送層に用いられる式(1)で示される構造単位を有するポリアリレート樹脂は、ジカルボン酸エステルと水酸基を有する化合物とのエステル交換法によって合成することが可能である。また、ジカルボン酸ハライドなどの2価の酸ハロゲン化物とビスフェノールなどの水酸基を有する化合物との重合反応によっても合成することも可能である。重量平均分子量が上述の範囲のポリアリレート樹脂を製造する場合、後者の合成方法によって合成することが好ましい。
(合成例1)
以下に、合成例として、ポリアリレート樹脂中の全構造単位中、モル比換算で100%が上記式(B1−2)で示される繰り返し構造単位であるポリアリレート樹脂の合成方法を示す。
下記式(1−2−1)で示される構造を有するジフェニルエーテルジカルボン酸クロライドを、ジクロロメタンに溶解させ、酸クロライド溶液を調製した。
また、上記酸クロライド溶液とは別に、下記式(1−2−2)で示される構造を有する2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを10%水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた。これに、重合触媒としてトリブチルベンジルアンモニウムクロライドを添加して攪拌し、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン溶液を調製した。
次に、酸クロライド溶液を2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン溶液に攪拌しながら加え、重合を開始した。重合は、反応温度を25℃以下に保ち、攪拌しながら、3時間行った。
その後、酢酸の添加により重合反応を終了させ、水相が中性になるまで水での洗浄を繰り返した。
洗浄後、攪拌下のメタノールに滴下して、重合物を沈殿させ、この重合物を真空乾燥させて、上述の式(B1−2)で示される構造単位であるポリアリレート樹脂を得た。このポリアリレート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、重量平均分子量(Mw)とも記する)は、130000であった。
(合成例2)
以下に、合成例として、ポリアリレート樹脂中の全構造単位中、モル比換算で70%が上述の式(B1−2)で示される構造単位であり、30%が上述の式(B3−9)で示される構造単位であるポリアリレート樹脂の合成方法を示す。
下記式(1−2−1)で示される構造を有するジフェニルエーテルジカルボン酸クロライドと、下記式(3−9−1)で示されるテレフタル酸クロライドとをモル比7:3で混合した。これにジクロロメタンに溶解させ、ジフェニルエーテルジカルボン酸クロライドとテレフタル酸クロライドとの混合溶液(以下、酸クロライド混合溶液という。)を調製した。
また、上記酸クロライド混合溶液とは別に、下記式(1−2−2)で示される構造を有する2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンと、下記式(3−9−2)で示されるテトラメチルビフェノールとをモル比7:3で混合した。
これを10%水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、これに、重合触媒としてトリブチルベンジルアンモニウムクロライドを添加して攪拌し、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンとテトラメチルビフェノールとの混合溶液を調製した。
次に、酸クロライド混合溶液を2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンとテトラメチルビフェノールとの混合溶液に攪拌しながら加え、重合を開始した。重合は、反応温度を25℃以下に保ち、攪拌しながら、3時間行った。
その後、酢酸を添加して重合反応を終了させ、水相が中性になるまで水での洗浄を繰り返した。
洗浄後、攪拌下のメタノールに滴下して、重合物を沈殿させ、この重合物を真空乾燥させて、ポリアリレート樹脂中の全構造単位中、モル比換算で70%が上記式(B1−2)で示される構造単位であり、30%が上記式(B3−9)で示される構造単位であるポリアリレート樹脂を得た。このポリアリレート樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量Mwは、130000であった。
本発明において、樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量は、常法に従い、以下のようにして測定した。
すなわち、測定対象樹脂をテトラヒドロフラン中に入れ、数時間放置した後、振盪しながら測定対象樹脂とテトラヒドロフランとよく混合し(測定対象樹脂の合一体がなくなるまで混合し)、さらに12時間以上静置した。
その後、東ソー(株)製のサンプル処理フィルターマイショリディスクH−25−5を通過させたものをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)用試料とした。
次に、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフランを毎分1mLの流速で流し、GPC用試料を10μL注入して、測定対象樹脂の重量平均分子量を測定した。カラムには、東ソー(株)製のカラムTSKgel SuperHM−Mを用いた。
測定対象樹脂の重量平均分子量の測定にあたっては、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から、測定対象樹脂の分子量分布を算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料には、分子量が800〜2000000の単分散ポリスチレン(アルドリッチ社製)を10点用いた。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
本発明の樹脂で共重合である樹脂の共重合比の確認は、一般的な手法である樹脂の1H−NMR測定による樹脂を構成している水素のピーク面積比による換算法を行うことで共重合比の確認を行った。
次に、本発明の電子写真感光体の構成について説明する。
上述のとおり、本発明の電子写真感光体は、支持体、この支持体上に設けられた電荷発生物質を含有する電荷発生層と電荷輸送材料を含有する電荷輸送層とを有する、いわゆる積層型(機能分離型)の感光体である。つまり、本発明による電子写真感光体は、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層の順に積層した順層型感光層を有する。
支持体としては、導電性を有していればよく(導電性支持体)、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスなどの金属製(合金製)の支持体を用いることができる。また、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化インジウム−酸化スズ合金などを真空蒸着によって被膜形成した層を有する上記金属製支持体やプラスチック製支持体を用いることもできる。また、カーボンブラック、酸化スズ粒子、酸化チタン粒子、銀粒子などの導電性粒子を適当な結着樹脂と共にプラスチックや紙に含浸した支持体や、導電性結着樹脂を有するプラスチック製の支持体などを用いることもできる。また、支持体の形状としては、円筒状、ベルト状などが挙げられるが、円筒状が好ましい。
また、支持体の表面は、レーザー光などの散乱による干渉縞の防止などを目的として、切削処理、粗面化処理、アルマイト処理などを施してもよい。
支持体と、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)又は後述の中間層との間には、レーザー光などの散乱による干渉縞の防止や、支持体の傷の被覆を目的とした導電層を設けてもよい。
導電層は、カーボンブラック、金属粒子、金属酸化物粒子などの導電性粒子を結着樹脂に分散させて形成することができる。
導電層の膜厚は1〜40μmであることが好ましく、2〜20μmであることがより好ましい。
また、支持体又は導電層と、感光層(電荷発生層、電荷輸送層)との間には、バリア機能や接着機能を有する中間層を設けてもよい。中間層は、感光層の接着性改良、塗工性改良、支持体からの電荷注入性改良、感光層の電気的破壊に対する保護などのために形成される。
中間層は、アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エチルセルロース樹脂、エチレン−アクリル酸コポリマー、エポキシ樹脂、カゼイン樹脂、シリコーン樹脂、ゼラチン樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ユリア樹脂などの樹脂や、酸化アルミニウムなどの材料を用いて形成することができる。
中間層の膜厚は0.05〜5μmであることが好ましく、特には0.3〜1μmであることがより好ましい。
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷発生物質としては、例えば、モノアゾ、ジスアゾ、トリスアゾなどのアゾ顔料や、金属フタロシアニン、非金属フタロシアニンなどのフタロシアニン顔料や、インジゴ、チオインジゴなどのインジゴ顔料や、ペリレン酸無水物、ペリレン酸イミドなどのペリレン顔料や、アンスラキノン、ピレンキノン、ジベンズピレンキノンなどの多環キノン顔料や、スクワリリウム色素や、ピリリウム塩及びチアピリリウム塩や、トリフェニルメタン色素や、セレン、セレン−テルル、アモルファスシリコンなどの無機物質や、キナクリドン顔料や、アズレニウム塩顔料や、キノシアニンなどのシアニン染料や、アントアントロン顔料や、ピラントロン顔料や、キサンテン色素や、キノンイミン色素や、スチリル色素や、硫化カドミウムや、酸化亜鉛などが挙げられる。これら電荷発生物質は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
感光層が積層型感光層である場合であって、電荷発生層が電子写真感光体の表面層でない場合、電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、スチレン−ブタジエンコポリマー、ポリアミド、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、ベンザール樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂などが挙げられる。特には、ブチラール樹脂などが好ましい。これらは単独、混合又は共重合体として1種又は2種以上用いることができる。
電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂及び溶剤と共に分散して得られる電荷発生層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。分散方法としては、ホモジナイザー、超音波分散機、ボールミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、アトライター、液衝突型高速分散機などを用いた方法が挙げられる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は、1:0.3〜1:4(質量比)の範囲が好ましい。
電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、使用する結着樹脂や電荷発生物質の溶解性や分散安定性から選択されるが、有機溶剤としてはアルコール、スルホキシド、ケトン、エーテル、エステル、脂肪族ハロゲン化炭化水素、芳香族化合物などが挙げられる。
電荷発生層の膜厚は5μm以下であることが好ましく、特には0.1〜2μmであることがより好ましい。
また、電荷発生層には、種々の増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。
本発明の電子写真感光体に用いられる電荷輸送材料としては、例えば、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリールメタン化合物などが挙げられる。これら電荷輸送材料は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。
電荷輸送層には、結着樹脂として、少なくとも、上記式(1)で示される構造単位を有するポリアリレート樹脂が用いられる。本発明の効果を損なわない範囲で、以下に例示する他の樹脂を併用することもできる。その場合、電荷輸送層における上記式(1)で示されるポリアリレート樹脂の割合は、電荷輸送層に含有される結着樹脂の全質量に対して50質量%以上であることが好ましい。さらには70重量%以上であることがより好ましい。併用可能な樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、アリル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、ブチラール樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、メタクリル樹脂、ユリア樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂などが挙げられる。特に、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂などが好ましい。これらは単独、混合又は共重合体として1種又は2種以上用いることができる。
電荷輸送層は、電荷輸送材料と結着樹脂とを溶剤に溶解して得られる電荷輸送層用塗布液を塗布し、これを乾燥させることによって形成することができる。電荷輸送材料と結着樹脂との割合は、2:1〜1:3(質量比)の範囲が好ましい。
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル、クロロベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン原子で置換された炭化水素などが用いられる。
電荷輸送層の膜厚は5〜40μmであることが好ましく、特には10〜35μmであることがより好ましい。
また、電荷輸送層には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤などを必要に応じて添加することもできる。
図1は、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図1において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
回転駆動される電子写真感光体1の表面は、帯電手段(一次帯電手段:帯電ローラーなど)3により、正又は負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(図示せず)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして、電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材供給手段(図示せず)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して給送された転写材(紙など)Pに順次転写されていく。
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化され、さらに前露光手段(図示せず)からの前露光光(図示せず)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図1に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上述の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、転写手段6及びクリーニング手段7などの構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成してもよい。また、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図2では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
図2は、本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えたフルカラー電子写真装置(インライン方式)の概略構成の一例を示す。
図2において、1Y、1M、1C、1Kは円筒状の電子写真感光体(第1色〜第4色用電子写真感光体)であり、それぞれ軸2Y、2M、2C、2Kを中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。
回転駆動される第1色用電子写真感光体1Yの表面は、第1色用帯電手段(一次帯電手段:帯電ローラーなど)3Yにより、正又は負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(図示せず)から出力される露光光(画像露光光)4Yを受ける。露光光4Yは、目的のカラー画像の第1色成分像(例えばイエロー成分像)に対応した露光光である。こうして第1色用電子写真感光体1Yの表面に、目的のカラー画像の第1色成分像に対応した第1色成分静電潜像(イエロー成分静電潜像)が順次形成されていく。
張架ローラー12によって張架された転写材搬送部材(転写材搬送ベルト)14は、矢印方向に第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kとほぼ同じ周速度(例えば第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kの周速度に対して97〜103%)で回転駆動される。また、転写材供給手段17から給送された転写材(紙など)Pは、転写材搬送部材14に静電的に担持(吸着)され、第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kと転写材搬送部材との間(当接部)に順次搬送される。
第1色用電子写真感光体1Yの表面に形成された第1色成分静電潜像は、第1色用現像手段5Yのトナーにより現像されて第1色トナー画像(イエロートナー画像)となる。次いで、第1色用電子写真感光体1Yの表面に形成担持されている第1色トナー画像が、第1色用転写手段(転写ローラーなど)6Yからの転写バイアスによって、第1色用電子写真感光体1Yと第1色用転写手段6Yとの間を通過する転写材搬送部材14に担持された転写材Pに順次転写されていく。
第1色トナー画像転写後の第1色用電子写真感光体1Yの表面は、第1色用クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7Yによって転写残トナーの除去を受けて清浄面化された後、繰り返し第1色トナー画像形成に使用される。
第1色用電子写真感光体1Y、第1色用帯電手段3Y、第1色成分像に対応した露光光4Yを出力する第1色用露光手段、第1色用現像手段5Y及び第1色用転写手段6Yをまとめて第1色用画像形成部と称する。
以下、それぞれの色についても、上述の第1色の場合と同様である。つまり、第2色用画像形成部は、第2色用電子写真感光体1M、第2色用帯電手段3M、第2色成分像に対応した露光光4Mを出力する第2色用露光手段、第2色用現像手段5M及び第2色用転写手段6Mを有する。また、第3色用画像形成部は、第3色用電子写真感光体1C、第3色用帯電手段3C、第3色成分像に対応した露光光4Cを出力する第3色用露光手段、第3色用現像手段5C及び第3色用転写手段6Cを有する。さらに、第4色用画像形成部は、第1色用電子写真感光体1K、第4色用帯電手段3K、第4色成分像に対応した露光光4Kを出力する第4色用露光手段、第4色用現像手段5K及び第4色用転写手段6Kを有する。これら、第2色用画像形成部、第3色用画像形成部及び第4色用画像形成部の動作は、第1色用画像形成部の動作と同様である。つまり、転写材搬送部材14に担持され、第1色トナー画像が転写された転写材Pに、第2色トナー画像(マゼンタトナー画像)、第3色トナー画像(シアントナー画像)、第4色トナー画像(ブラックトナー画像)が順次転写されていく。こうして転写材搬送部材14に担持された転写材Pに目的のカラー画像に対応した合成トナー画像が形成される。
合成トナー画像が形成された転写材Pは、転写材搬送部材14の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることによりフルカラー画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。
また、第1色〜第4色用クリーニング手段7Y、7M、7C、7Kによる転写残トナー除去後の第1色〜第4色用電子写真感光体1Y、1M、1C、1Kの表面を、前露光手段からの前露光光により除電処理してもよい。また、図2に示すように、第1色〜第4色用帯電手段3Y、3M、3C、3Kが帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上述の電子写真感光体、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段などの構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成してもよい。また、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図2では、画像形成部ごとに、電子写真感光体と、帯電手段、現像手段及びクリーニング手段とを一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段(図示せず)を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9Y、9M、9C、9Kとしている。
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、これらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。また、「Mw」は「ポリスチレン換算重量平均分子量」を意味する。
(実施例1−1)
直径30mm、長さ357mmのアルミニウムシリンダーを支持体とした。
次に、以下の成分を用いて、導電層用塗布液を調製した。
SnO2コート処理硫酸バリウム(導電性粒子) 10部
酸化チタン(抵抗調節用顔料) 2部
フェノール樹脂(結着樹脂) 6部
シリコーンオイル(レベリング剤) 0.001部
メタノール4部/メトキシプロパノール16部の混合溶剤
この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、30分間140℃で熱硬化させて、膜厚が15μmの導電層を形成した。
次に、N−メトキシメチル化ナイロン3部及び共重合ナイロン3部をメタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶剤に溶解させて、中間層用塗布液を調製した。
この中間層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、10分間100℃で乾燥させて、膜厚が0.7μmの中間層を形成した。
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.5°、9.9°、16.3°、18.6°、25.1°及び28.3°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン(電荷発生物質)10部をシクロヘキサノン250部にポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部を溶解させた液に加え、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下1時間分散し、分散後、酢酸エチル250部を加えて、電荷発生層用塗布液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を中間層上に浸漬塗布し、10分間100℃で乾燥させて、膜厚が0.26μmの電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送層を形成するために電荷輸送層の塗料を調製した。
まず、ポリアリレート樹脂として上記式(B1−1)で示される繰り返し単位を有するポリアリレート樹脂(Mw=80000)10部をモノクロロベンゼン100部に溶解した。これに、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子(ルブロンL−2:ダイキン工業(株)社製)5部、上記式(1−4)で示されるジオルガノポリシロキサン0.004部を添加した。この混合物を液衝突分散機(ナノマイザー、分散圧600bar)を用い3回分散して、フッ素原子含有樹脂微粒子分散液を調製した。分散したフッ素原子含有樹脂微粒子は、テトラヒドロフラン中において、溶媒粘度0.51cP、溶媒密度0.89g/cm3、サンプル密度2.17g/cm3として粒度分布測定器(CAPA700:堀場製作所製)を用いて測定したところ、体積平均粒径として0.18μmであった。
次に、下記式で示されるCTM−1/CTM−2/ポリアリレート樹脂/ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子/ジオルガノポリシロキサン/溶剤の比が、最終比率で9/1/10/2.5/0.002/80となるように、塗料を調製した。
ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子は、先に分散したフッ素原子含有樹脂微粒子分散液を用いた。なお、溶媒は、最終比率でモノクロロベンゼン/ジメトキシメタン=7/3になるように調製した。この塗料を浸漬塗布法で先の電荷輸送層の上に塗布し、120℃で1時間乾燥して、膜厚30μmの電荷輸送層を形成した。
次に、評価について説明する。
評価機として、キヤノン(株)製複写機GP−40をレーザー光源の光量が調節できるように改造して用いた。この装置のプロセスは、以下の(1)〜(3)である。
(1)電子写真感光体に接触配置された帯電部材から直流及び交流電圧を印加して感光体を帯電するプロセス
(2)780nmレーザー光によるデジタル露光
(3)反転現像
なお、この機のプロセススピードは、210mm/秒であり、複写速度は、A4横40枚/分である。評価用の感光体を装着して、まず初期電位を測定した。電子写真感光体の表面電位の測定は、電子写真感光体上端より180mmの位置に電位測定用プローブが位置するように固定された冶具と現像器とを交換して、現像器位置で行った。暗部電位はVd=−700Vに設定し、明部電位はVl=−200Vとなるように光量を調節した。さらに、A4サイズの普通紙を1枚複写するごとに1度停止する間欠モード(10秒/枚の複写間隔)とした。このモードで、印字比率4%の画像を23℃/55%RHの雰囲気環境において30,000枚の複写を行い、電位の測定をした。
その後、文字画像及び反射濃度D=0.4(Macbeth反射濃度計RD914にて、zero ajust value=0.06、caliblation ajust value=1.73)の中間調画像の複写を行った。中間調画像については、画像中の任意の20点について反射濃度を測定し、最大濃度/最小濃度の差を画像濃度ムラとした。初期と30,000枚繰り返し複写後に表面電位を測定し、明部電位の差(ΔVl)を調べた。なお、ΔVlは、(30,000枚後の明部電位の絶対値)−(初期の明部電位の絶対値)とする。また、耐久前の膜厚と耐久後の膜厚の差から摩耗量を求めた。その際の膜厚の測定は、フィッシャー(株)製膜厚測定機 フィッシャーMMS 渦電流法プローブEAW3.3で行った。
(実施例1−2)
実施例1−1において、ジオルガノポリシロキサンを用いなかった以外は実施例1−1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。
(実施例1−3〜1−28、比較例1−1〜1−4)
実施例1−1において、電荷輸送層の結着樹脂を表35及び表36に示すとおりにした以外は、実施例1−1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表37に示す。
(実施例1−29)
実施例1−1において、ジオルガノポリシロキサン(1−4)の替わりに、ジオルガノポリシロキサン(1−1)を用いた以外は、実施例1−1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表37に示す。
なお、表35及び表36中の(C−1)は下記に示す構造の樹脂である。
(実施例1−30)
実施例1−1において、電荷輸送層の電荷輸送材料をCTM−1/CTM−2に代えて、CTM−3/CTM−1/ポリアリレート樹脂/ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子/ジオルガノポリシロキサン/溶剤の比が、最終比率で6/2/10/2.5/0.002/80になるように塗料を調製した以外は、実施例1−1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表37に示す。
(比較例1−5)
実施例1−1において、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子を用いなかった以外は、実施例1−1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表37に示す。
(比較例1−6)
実施例1−1において、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子とジオルガノポリシロキサンを用いなかった以外は、実施例1−1と同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表37に示す。
(参考例1−1)
比較例1−3において、CTM−1/CTM−2/ポリアリレート樹脂/ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子/ジオルガノポリシロキサン/溶剤の比が、最終比率で9/1/10/2.5/0.25/80になるように、塗料を調製した以外は、比較例1−3と
同様にして電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表37に示す。
表37に示したように、実施例では感光体の摩耗量が少なく、かつ良好な画像が得られた。比較例1−1〜1−4では、本発明以外の樹脂バインダーを用いているため、実施例と同量のジオルガノポリシロキサン量では、十分な分散状態が得られなかった。また、比較例1−1〜1−4では、フッ素原子含有樹脂微粒子の耐摩耗性向上の効果が得られていないばかりか、電荷輸送層中において露光光を散乱させてしまい、特に中間調画像では濃度不均一(ムラ)が強調されたガサツキ画像となってしまった。
比較例1−1〜1−4の本発明に用いられる樹脂を用いた系でも、参考例1−1のように、ジオルガノポリシロキサンの量を増やせば、良好な分散状態が得られ、良好な複写画像が得られる。ただし、耐久による明部電位の上昇が大きくなり、やはり本発明の構成の感光体には特性的には劣ってしまう。
言い換えれば、本発明の電子写真感光体はフッ素原子含有樹脂微粒子とバインダーとの相溶性が特異的に良好であるため、他の樹脂との組み合わせに比べ少量のジオルガノポリシロキサン量で良好な分散ができ、耐久による明部電位の上昇もないことから、フッ素原子含有樹脂微粒子の機能をより効果的に発現できたといえる。
また、比較例1−5、1−6では、フッ素原子含有樹脂微粒子が添加されていないため、良好な画像が得られたものの、実施例に比較して摩耗量が多く、耐久性の面で実施例の感光体に劣る感光体となった。
(実施例2−1)
アルミニウム板を支持体とした。
次に、N−メトキシメチル化ナイロン3部及び共重合ナイロン3部をメタノール65部/n−ブタノール30部の混合溶剤に溶解させて、中間層用塗布液を調製した。
この中間層用塗布液を支持体上にマイヤーバーで塗布し、10分間100℃で乾燥させて、膜厚が0.7μmの中間層を形成した。
次に、下記式(CGM−1)で示される構造を有するアゾ顔料(電荷発生物質)20部及びブチラール樹脂(ブチラール化度65mol%)10部をテトラヒドロフラン400部に加えた。これを、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で23±3℃雰囲気下20時間分散して、電荷発生層用塗布液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を中間層上にマイヤーバーで塗布し、10分間100℃で乾燥させて、膜厚が0.4μmの電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送層を形成するために電荷輸送層の塗料を調製した。
まず、ポリアリレート樹脂として上記式(B1−1)で示される繰り返し単位を有するポリアリレート樹脂(Mw=70000)10部をモノクロロベンゼン100部に溶解した。これに、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子(ルブロンL−2:ダイキン工業(株)社製)5部、上記式(1−4)で示されるジオルガノポリシロキサン0.004部を添加した。この混合物を液衝突分散機(ナノマイザー、分散圧600bar)を用い3回分散して、フッ素原子含有樹脂微粒子分散液を調製した。分散したフッ素原含有樹脂微粒子は、テトラヒドロフラン中において、溶媒粘度0.51cP、溶媒密度0.89g/cm3、サンプル密度2.17g/cm3として粒度分布測定器(CAPA700:堀場製作所製)を用いて測定した。その結果、体積平均粒径は、0.18μmであった。
次に、下記式で示されるCTM−4/ポリアリレート樹脂/ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子/ジオルガノポリシロキサン/溶剤の比が、最終比率で8/10/2.5/0.002/80になるように、塗料を調製した。
ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子は、先に分散したフッ素原子含有樹脂微粒子分散液を用いた。なお、溶媒は最終比率でモノクロロベンゼン/ジメトキシメタン=7/3になるように調製した。この塗料を浸漬塗布法で先の電荷輸送層の上に塗布し、120℃で1時間乾燥して、膜厚28μmの電荷輸送層を形成した。
次に、評価について説明する。
評価装置としては、(株)川口電気製作所製静電複写紙試験装置EPA−8100を用いた。
コロナ帯電器で電子写真感光体の表面電位が−600V(暗部電位)になるように帯電させた。次に、LEDで波長400nm、430nm、450nmの光を照射(露光)して、表面電位が−300V(明部電位)まで減衰するのに必要な光量を測定し、半減露光感度(E1/2)をそれぞれの波長で算出した。
結果を表39に示す。なお、表39中、波長400nmの光に対する感度をE1/2(400)とし、波長430nmの光に対する感度をE1/2(430)とし、波長450nmの光に対する感度をE1/2(450)としている。
(実施例2−2〜2−27、比較例2−1〜2−4)
実施例2−1において、電荷輸送層の結着樹脂を表38及び表39に示すとおりにした以外は、実施例2−1と同様にして電荷輸送層が表面層である電子写真感光体を作製し、評価した。結果を表40に示す。
表38中、(C−1)は、下記に示す構造の樹脂である。
実施例と比較例との比較より、本発明の構造単位の樹脂を使用しても、短波長域の像露光を使用した場合に特性が良好であり、本発明の感光体が、短波長域像露光を使用した電子写真感光体に適していることを示している。特に実施例と、比較例2−1、2−3又は比較例2−4との比較により、電荷輸送層に使用する樹脂構造にテレフタル酸構造を有する従来の樹脂を含有する電子写真感光体との比較では、本発明の電子写真感光体が著しく特性良化していることが示された。