JP6370072B2 - 電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 - Google Patents

電子写真感光体、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 Download PDF

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Description

本発明は、電子写真感光体、ならびに、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
プロセスカートリッジや電子写真装置に搭載される電子写真感光体として、有機光導電性物質(電荷発生物質)を含有する電子写真感光体が用いられている。この電子写真感光体は、成膜性が良く、塗料の塗工によって生産できるため、生産性が高いという利点を有している。電子写真感光体は、一般的に、支持体および支持体上に形成された感光層を有する。
感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層上に電荷輸送物質を含有する電荷輸送層を積層させた積層型感光層がよく用いられている。
近年、プロセスカートリッジや電子写真装置の小型化が求められており、そのため、より小型な電子写真感光体の提供が望まれている。電子写真感光体が円筒状の場合、電子写真感光体を小型化するための方法として小径化が挙げられる。電子写真感光体を小径化すると、支持体の曲率が大きくなることに伴い感光層(電荷輸送層)の曲率が大きくなるために、感光層(電荷輸送層)の内部応力が大きくなり、クラック等が発生しやすくなるという課題があった。
この課題に対して、電荷輸送層にシロキサン変性樹脂を含有させることで、内部応力を緩和する技術がある。特許文献1には、電荷輸送層にシロキサン変性ポリカーボネート樹脂を用いる方法が記載されている。特許文献2には、電荷輸送層にシロキサン変性ポリエステル樹脂を用いる方法が記載されている。
特開2011−1458号公報 特開2011−237498号公報
本発明者らが検討を行った結果、特許文献1または2に記載されたシロキサン変性樹脂を含有させた場合では、クラックは改善するものの、電荷輸送層中の電荷輸送物質が析出しやすくなる場合があることがわかった。電荷輸送物質が析出すると、高温高湿環境下におけて、電子写真感光体表面へのトナー融着という課題が生じやすくなる場合があり、さらなる改善の余地があることがわかった。
本発明の目的は、電荷輸送層にシロキサン変性樹脂を含有する電子写真感光体において、電荷輸送層のクラックおよび電荷輸送物質の析出を抑制する電子写真感光体を提供することにある。また、本発明の別の目的は、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
本発明は、支持体、該支持体上に形成された電荷発生層、および電荷発生層上に形成された電荷輸送層を有する電子写真感光体であって、該電荷輸送層が、式(1)’で示される末端構造および(A)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂A、および、式(1)’で示される末端構造および(B)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂Bからなる群より選択される少なくとも1つ、および電荷輸送物質を含有することを特徴とする電子写真感光体に関する。
式(1)’Ra〜Reは、それぞれ独立に、アルキル基、またはアリール基を示す。aは括弧内の構造の繰り返し数を示し、ポリカーボネート樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bに対するaの平均値は1以上500以下である。bは、0または1である。cは1以上10以下の整数である。
式(A)中、Zは、5〜8員環の置換シクロアルキリデン基を示し、該置換シクロアルキリデン基は、置換基として1〜3個のアルキル基を有する。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。
式(B)中、Zは、5〜8員環の置換シクロアルキリデン基を示し、該置換シクロアルキリデン基は、置換基として1〜3個のアルキル基を有する。R11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。Xは、下記式(2)〜(5)のいずれかで示される2価の基を示す。)
(式(2)〜(5)中、R41〜R60は、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基を示す。Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、置換もしくは無置換のアルキレン基を示す。)
また、本発明は、上記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジに関する。
また、本発明は、上記電子写真感光体、ならびに、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有する電子写真装置に関する。
本発明によれば、電荷輸送層にシロキサン変性樹脂を含有する電子写真感光体において、電荷輸送層のクラックおよび電荷輸送物質の析出を抑制する電子写真感光体を提供することができる。また、本発明によれば、上記電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す図である。 電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
本発明は、電子写真感光体の電荷輸送層が、ポリカーボネート樹脂A、およびポリエステル樹脂Bからなる群より選択される少なくとも1つ、および電荷輸送物質を含有することを特徴とする。ポリカーボネート樹脂Aは、下記式(1)で示される末端構造および下記式(A)で示される構造単位を有する。ポリエステル樹脂Bは、下記式(1)で示される末端構造および下記式(B)で示される構造単位を有する。
(以下、ポリカーボネート樹脂A、または、ポリエステル樹脂Bを、本発明のシロキサン変性樹脂とも称す。)
式(1)中、Vは2価の有機基を示す。Ra〜Reは、それぞれ独立に、アルキル基、またはアリール基を示す。aは括弧内の構造の繰り返し数を示し、ポリカーボネート樹脂A、またはポリエステル樹脂Bに対するaの平均値は1以上500以下である。
式(A)中、Zは、5〜8員環の置換シクロアルキリデン基を示し、該置換シクロアルキリデン基は、置換基として1〜3個のアルキル基を有する。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。
式(B)中、Zは、5〜8員環の置換シクロアルキリデン基を示し、該置換シクロアルキリデン基は、置換基として1〜3個のアルキル基を有する。R11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。Xは、下記式(2)〜(5)のいずれかで示される2価の基を示す。
式(2)〜(5)中、R41〜R60は、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基を示す。Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、置換もしくは無置換のアルキレン基を示す。
ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂Bを用いた場合に、電荷輸送層のクラックおよび電荷輸送物質の析出が抑制される理由について、本発明者らは以下のように推測している。
上記式(1)に示されるようなシロキサン構造を有さないポリカーボネート樹脂やポリエステル樹脂を用いて電荷輸送層を形成する場合、樹脂が固化する際、電荷輸送層の内部に応力が残留した状態になるものと考えられる。樹脂を含有する塗布液の塗膜を形成し、塗膜を加熱乾燥して、樹脂が固化して電荷輸送層を形成するまでの間に、膜の体積が減少する。これにより、電荷輸送層の内部に応力が残留しやすいと考えている。
また、電子写真感光体の支持体の直径が小さくなるにつれて、支持体の曲率が大きくなることに伴い電荷輸送層の曲率は大きくなる。電荷輸送層の曲率が大きいほど、膜厚方向に対して、塗膜が収縮する度合いが大きくなる。その結果として、クラックしやすくなるものと考えている。
そこで、シロキサン構造を有する樹脂を用いることで、クラックを抑制することができる。これは、シロキサン構造を有することで、塗膜中で樹脂が動きやすくなり、その結果、電荷輸送層の内部に残留する応力が緩和されると推測している。
しかしながら、本発明者らが検討した結果、本発明以外のシロキサン変性ポリカーボネート樹脂や本発明以外のシロキサン変性ポリエステル樹脂を用いた場合は、電荷輸送物質が析出しやすくなることがわかった。
一方、ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂Bは、ビスフェノール部位中央の脂肪族環(式(A)または式(B)中のZ、Zの部位)に、1〜3個のアルキル基を置換基として有するという特徴的な構造を持っている。
ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂Bが、上述の特徴的な構造を有することで、Z、Zの部位が、空間を押しのける体積を大きくしていると考えられる。それにより、ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂Bの樹脂内、樹脂間で、樹脂の構造単位の折り重なりが抑制されていると考えられる。その結果、ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂Bの分子の間に微小な空隙が生まれ、電荷輸送物質が入り込みやすくなっていると推測している。その結果、電荷輸送物質同士の凝集が抑制され、結果として、電荷輸送物質の析出が抑制されるものと考えている。
本発明の電子写真感光体は、支持体、支持体上に形成された電荷発生層および電荷発生層上に形成された電荷輸送層を有する。
図2は、電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。図2中、支持体101上に、下引き層102、電荷発生層104、電荷輸送層105がこの順に形成されている。
一般的な電子写真感光体として、円筒状の電子写真感光体が広く用いられるが、ベルト状、シート状などの形状とすることも可能である。
〔電荷輸送層〕
電荷輸送層には、ポリカーボネート樹脂Aおよびポリエステル樹脂Bからなる群より選択される少なくとも1つ、および電荷輸送物質を含有する。
ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂Bにおいて、上記式(1)中のVは、下記式(6)で示される2価の基であることが好ましい。
式(6)中、Arは、置換もしくは無置換のアリーレン基を示す。該置換アリーレン基の置換基は、フェノキシ基またはフェニルカルボニル基を示す。bは、0または1である。cは1以上10以下の整数である。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂A、およびポリエステル樹脂Bは、樹脂の片末端、または両末端に上記式(1)で示される末端構造を有する。上記式(1)で示される末端構造を樹脂の片末端に有する場合は、分子量調節剤(末端停止剤)を用いる。この分子量調節剤としては、フェノール、p−クミルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、安息香酸などが挙げられる。本発明においては、フェノール、p−tert−ブチルフェノールが好ましい。
上記式(1)で示される末端構造を樹脂の片末端に有する場合において、もう一方の片末端の構造(他の末端構造)は、下記に示される構造を有する。
以下に、式(1)示される末端構造の具体例を示す。
ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂Bにおいて、式(A)または式(B)中、ZおよびZは、置換シクロヘキシリデン基(6員環の置換シクロアルキリデン基)であることが好ましい。6員環が最も安定な配座を取ることで、ひずみエネルギーが小さくなり、分子の剛直性を緩和する効果があると推測している。Z、Zが、3員環と4員環および9員環以上のシクロアルキリデン環の場合、ひずみエネルギーが大きいために安定構造を取りにくくなることで分子の剛直になる。それにより、ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂Bの樹脂の分子間に電荷輸送物質が入り込みにくくなると考えられる。
また、式(A)および(B)中、1〜3個のアルキル基は、式(A)および(B)の2つの芳香環に結合する炭素原子Cに対して、Cを通る対称面の対称要素を有さないようなシクロアルキリデン基の置換位置に置換されていることが好ましい。対称面の対称要素は、アトキンス物理化学(上巻)第8版p.427−428で説明されている。面対称な鏡像の位置へ移動させる操作を反射と呼ぶが、対称面とは、その反射を定義する面(鏡面)σのことを表す点群の用語である。例えば、Zが、無置換のシクロヘキシリデン基の場合、Cのアキシャル(axial)を主軸として捉えると、Cのアキシャルとエクアトリアル(equatorial)を含む面が対称面σになる。
このことは、ポリカーボネート樹脂A、およびポリエステル樹脂Bの折り重なりの度合いと、電荷輸送物質との相溶性といった観点から好ましいと考えられる。上述のように1〜3個のアルキル基が置換されて、分子の対称性が低くなることで、ポリカーボネート樹脂A、およびポリエステル樹脂Bの構造単位がさらに折り重なりにくくなると推測される。また、電荷輸送物質との相溶性が高くなることで、電荷輸送物質の凝集や結晶化がより抑制され、電荷輸送層をより厚膜にしやすくなると考えられる。
以下に、式(A)および式(B)中のZ、Zの具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
より好ましくは、式(A)および式(B)中のZおよびZが、上記式(13−1)で示される2価の基である。式(13−1)で示される2価の基であると、電荷輸送物質の析出の抑制に優れる。
以下に、式(A)で示される構造単位の具体例を示す。
また、以下に、式(B)で示される構造単位の具体例を示す。
ポリカーボネート樹脂Aにおいて、式(A)で示される構造単位としては、好ましくは、(A−1)、(A−2)、(A−11)で示される構造単位である。ポリエステル樹脂Bにおいて、式(B)で示される構造単位として、好ましくは、(B−1)、(B−2)、(B−11)、(B−14)、(B−15)、(B−24)、(B−27)、(B−28)、(B−37)、(B−40)、(B−41)、(B−51)で示される構造単位である。中でも(A−1)、(B−1)、(B−14)、(B−27)、(B−40)に示す構造単位が特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂Bの全質量に対する式(1)で示される末端構造(シロキサン構造)の含有量は一般的な分析手法で解析可能である。以下に、分析手法の例を示す。
電子写真感光体の電荷輸送層を溶剤で溶解させた後、サイズ排除クロマトグラフィーや高速液体クロマトグラフィーのような各組成成分を分離回収可能な分取装置で、電荷輸送層に含有される種々の材料を分取する。分取されたポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂Bを、H−NMR測定による水素原子(樹脂を構成している水素原子)のピーク位置、およびピーク面積比による換算法によって構成材料構造、および含有量を確認することができる。それらの結果より、シロキサン構造の繰り返し数やモル比を算出し、含有量(質量比)に換算する。
本発明においても上記の手法を用いて、ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂B中に含有されるシロキサン構造の質量比を測定することが可能である。また、ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂B中に含有されるシロキサン構造の質量比は、重合時のシロキサン構造を含むモノマー単位の原材料の使用量と関係するため、目的のシロキサン構造の質量比とするために、原材料の使用量を調整する。
ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂B中のシロキサン構造の含有量は、ポリカーボネート樹脂A、またはポリエステル樹脂Bの全質量に対して1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂Bは、式(1)で示される末端構造と式(A)または式(B)で示される構造単位との共重合体である。その共重合形態は、ブロック共重合、ランダム共重合、交互共重合などのいずれの形態であってもよい。
ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂Bの重量平均分子量は、10,000以上150,000以下であることが好ましい。さらには、20,000以上100,000以下であることがより好ましい。
本発明において、樹脂の重量平均分子量とは、常法に従い、特開2007−79555号公報に記載の方法により測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
以下に、ポリカーボネート樹脂Aの合成例を示す。
上記ポリカーボネート樹脂Aは、特開平5−158249号公報、特開平10−182832号公報、特開2006−328416号公報および特開2008−195905号公報に記載の合成方法を用いて合成することが可能である。本発明においても同様の合成方法を用い、式(1)で示される末端構造、および式(A)で示される構造単位に応じた原材料を用いて表4の合成例に示すポリカーボネート樹脂Aを合成した。合成したポリカーボネート樹脂Aの重量平均分子量およびポリカーボネート樹脂A中の式(1)で示される末端構造の含有量(質量%)を表4に示す。
以下に、ポリエステル樹脂Bの合成例を示す。
上記ポリエステル樹脂Bは、特開平05−043670号公報、特開平08−234468号公報および特開2009−084556号公報に記載の合成方法を用いて合成することが可能である。本発明においても同様の合成方法を用い、式(1)で示される末端構造、および式(B)で示される構造単位に応じた原材料を用いて表5の合成例に示すポリエステル樹脂Bを合成した。合成したポリエステル樹脂Bの重量平均分子量およびポリエステル樹脂B中の式(1)で示される末端構造の含有量(質量%)を表5に示す。
電荷輸送層には、ポリカーボネート樹脂A、およびポリエステル樹脂Bからなる群より選択される少なくとも1つの他に、ポリカーボネート樹脂Cおよびポリエステル樹脂Dからなる群より選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。ポリカーボネート樹脂Cは、下記式(C)で示される構造単位を有する。ポリエステル樹脂Dは、下記式(D)で示される構造単位を有する。
式(C)中、R21〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。Yは、単結合、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、フェニルエチリデン基、5〜8員環の置換若しくは無置換のシクロアルキリデン基、または酸素原子を示す。該置換のシクロアルキリデン基は、置換基として1〜3個のアルキル基を有する。
式(D)中、R31〜R38は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。Yは、単結合、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、フェニルエチリデン基、5〜8員環の置換若しくは無置換のシクロアルキリデン基、または酸素原子を示す。該置換のシクロアルキリデン基は、置換基として1〜3個のアルキル基を有する。Xは、上記式(2)〜(5)のいずれかで示される2価の基を示す。)
耐摩耗性の観点から、ポリエステル樹脂Dは、式(D)中、Xが前記式(5)で示される2価の基であり、Yが酸素原子であることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂C、およびポリエステル樹脂Dにおいて、式(C)および式(D)中、YおよびYが、上記式(13−1)で示される2価の基であると、電荷輸送物質の析出の抑制に優れ、より好ましい。
以下に、式(C)で示される構造単位の具体例を示す。
また、以下に、式(D)で示される構造単位の具体例を示す。
表7中、式(D−1)のXの式(2)中のR41〜R44は、水素原子を示す。式(D−2)のXの式(4)中のR49〜R52は、水素原子を示す。式(D−3)、式(D−4)および式(D−5)のXの式(5)中のR53〜R60は、水素原子を示し、Yは、。
以下に、ポリカーボネート樹脂Cの合成例を示す。
以下に、ポリエステル樹脂Dの合成例を示す。
電荷輸送層には、ポリカーボネート樹脂A、ポリエステル樹脂B、ポリカーボネート樹脂C、ポリエステル樹脂Dの他に、以下に挙げる樹脂を用いても良い。例えば、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリスチレン樹脂、式(A)〜(D)のいずれかで示される構造単位以外の構造単位を有するポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
上記の樹脂は、それぞれ別個の樹脂として複数種類ブレンドして用いてもよいし、共重合体として用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。上記の樹脂の重量平均分子量は、10,000〜300,000の範囲であることが好ましく、50,000〜150,000の範囲がより好ましい。
電荷輸送層に含有される電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物、またはトリフェニルアミンなどが挙げられる。また、これらの化合物から誘導される基を主鎖または側鎖に有するポリマーも挙げられる。
本発明をより効果的に発現させるには、電荷輸送物質の分子量が、700以上1200以下であることが好ましい。
電荷輸送物質の中でも、下記式(S1)で示される化合物、又は、下記式(S2)で示される化合物であることが、電荷輸送物質の抑制の観点からより好ましい。
式中、Ar21及びAr22は、それぞれ独立にフェニル基又はメチル基で置換されているフェニル基を示す。
式中Ar23〜Ar28は、それぞれ独立にフェニル基又はメチル基で置換されているフェニル基を示す。
以下に、電荷輸送物質の例を示すが、これらに限定されるものではない。
電荷輸送層において、電荷輸送物質と結着樹脂との質量比率(電荷輸送物質/結着樹脂)は、10/5〜5/10の範囲であることが好ましく、10/8〜6/10の範囲であることがより好ましい。電荷輸送層の膜厚は、5μm以上40μm以下であることが好ましい。
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
また、ポリカーボネート樹脂Aまたはポリエステル樹脂B中の下記式(7)で示されるジオール化合物の含有量が、100ppm以下であることが好ましい。100ppm以下であると、トナーの融着の抑制が良好となる。
式(7)中、R71〜R78は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示し、Zは、5〜8員環の置換のシクロアルキリデン基を示し、該置換のシクロアルキリデン基は、置換基として1〜3個のアルキル基を有する。
これら、式(7)で示されるジオール化合物の含有量(残留量)が多い場合には、除去することが望ましい。除去方法としては、水またはイオン交換水による洗浄が好ましく、より優れた洗浄効果を得るには、加温された水またはイオン交換水による洗浄が好ましい。ただし、水またはイオン交換水を加温する場合には、樹脂の分解を抑制するため、30℃以上80℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましい。
また、電荷輸送層上には、導電性粒子または電荷輸送物質と結着樹脂とを含有する保護層(表面保護層)を設けてもよい。保護層には、潤滑剤などの添加剤をさらに含有させてもよい。また、保護層の結着樹脂自体に導電性や電荷輸送性を有させてもよく、その場合、保護層には、当該樹脂以外の導電性粒子や電荷輸送物質を含有させなくてもよい。また、保護層の結着樹脂は、熱可塑性樹脂でもよいし、熱、光、放射線(電子線など)などにより硬化させてなる硬化性樹脂であってもよい。
導電層、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層などの電子写真感光体を構成する各層を形成する方法としては、以下の方法が挙げられる。各層を構成する材料を溶剤に溶解および/または分散させて得られた塗布液を塗布して塗膜を形成し、塗膜を乾燥および/または硬化させることによって形成する方法が好ましい。塗布液を塗布する方法としては、例えば、浸漬塗布法(浸漬コーティング法)、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、スピンコーティング法、リング法などが挙げられる。これらの中でも、効率性および生産性の観点から、浸漬塗布法が好ましい。
〔支持体〕
支持体としては、導電性を有するもの(導電性支持体)が好ましく、例えば、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金などの金属または合金製の支持体を用いることができる。ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ガラスなどの絶縁性支持体上にアルミニウム、クロム、銀、金などの金属の薄膜を形成した支持体が挙げられる。また、絶縁支持体上に酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛などの導電性材料の薄膜や、銀ナノワイヤーを加えた導電性インクの薄膜を形成した支持体が挙げられる。
支持体の表面には、電気的特性の改善や干渉縞の抑制のため、陽極酸化などの電気化学的な処理や、湿式ホーニング処理、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
〔導電層〕
支持体と下引き層との間には、導電層を設けてもよい。
導電層は、導電性粒子を結着樹脂に分散させた導電層用塗布液の塗膜を支持体上に形成し、この塗膜を乾燥させることで得られる。導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラックや、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、銀のような金属粉や、導電性酸化亜鉛、酸化スズ、ITOのような金属酸化物粉体が挙げられる。
また、結着樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂が挙げられる。
導電層用塗布液の溶剤としては、例えば、エーテル系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素溶剤が挙げられる。導電層の膜厚は、0.2μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上35μm以下であることがより好ましく、さらには5μm以上30μm以下であることがより好ましい。
〔下引き層〕
支持体または導電層と電荷発生層との間には、下引き層を設けてもよい。
下引き層は、結着樹脂を含有する下引き層用塗布液の塗膜を形成し、この塗膜を乾燥させることで得られる。
下引き層の結着樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸類、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド酸樹脂などの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。また、ブチラール樹脂やアセタール樹脂、アルキッド樹脂などの重合性官能基を有する熱可塑性樹脂と、イソシアネート化合物などの重合性官能基を有するモノマーとを熱重合(硬化)させた架橋構造を持ったポリマーであってもよい。
下引き層の膜厚は、0.05μm以上40μm以下であることが好ましく、0.05μm以上7μm以下であることがより好ましく、さらには0.1μm以上2μm以下であることがより好ましい。
また、電荷発生層で発生した電荷が滞留しないようにするため、下引き層中に電子輸送物質または半導電性粒子を含有させてもよい。
〔電荷発生層〕
支持体、導電層、または下引き層上には、電荷発生層が設けられる。
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、アントラキノン誘導体、アントアントロン誘導体、ジベンズピレンキノン誘導体、ピラントロン誘導体、ビオラントロン誘導体、イソビオラントロン誘導体、インジゴ誘導体、チオインジゴ誘導体、フタロシアニン顔料、ビスベンズイミダゾール誘導体が挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料またはフタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニンが好ましい。
電荷発生層に用いられる結着樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンなどのビニル化合物の重合体および共重合体や、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましく、特に、ポリビニルアセタール樹脂がより好ましい。
電荷発生層において、電荷発生物質と結着樹脂との質量比率(電荷発生物質/結着樹脂)は、10/1〜1/10の範囲であることが好ましく、5/1〜1/5の範囲であることがより好ましい。電荷発生層の膜厚は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましい。電荷発生層用塗布液に用いられる溶剤は、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤または芳香族炭化水素溶剤などが挙げられる。
〔プロセスカートリッジおよび電子写真装置〕
図1に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図1において、円筒状の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。回転駆動される電子写真感光体1の表面(周面)は、帯電手段3(一次帯電手段:帯電ローラーなど)により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)からの露光(画像露光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、次いで現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。なお、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へ排出される。
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。次いで、前露光手段(不図示)からの前露光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図1に示すように、帯電手段3が帯電ローラーなどを用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
上記の電子写真感光体1、帯電手段3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段7などの構成要素のうち、複数のもの選択して容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成してもよい。そして、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図1では、電子写真感光体1と、帯電手段3、現像手段5およびクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化している。そして、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
〔トナー〕
本発明の電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジおよび電子写真装置に用いられるトナーは、球形に近いものが好ましい。すなわち、平均円形度0.93以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.99以下がより好ましい。この範囲であると、ポリエステル樹脂の機械的劣化の抑制と、トナーのクリーニング性との両立することが可能である。
また、トナーの体積平均粒径は、3〜10μmが好ましく、5〜8μmがより好ましい。
さらに、トナーの体積平均粒径を個数平均粒径で割った値は、1.0以上1.3以下が好ましく、1.0以上1.2以下がより好ましい。
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。実施例14及び実施例57は、何れも参考例である。
(実施例1)
長さ260.5mm、直径30mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。
次に、酸素欠損型酸化スズが被覆されている酸化チタン粒子214部、フェノール樹脂(商品名:プライオーフェンJ−325、大日本インキ化学工業(株)製、樹脂固形分:60質量%。)132部および1−メトキシ−2−プロパノール98部を、直径0.8mmのガラスビーズ450部を用いたサンドミルに入れ、回転数2000rpm、分散処理時間4.5時間、冷却水の設定温度18℃の条件で分散処理を行い、分散液を調製した。分散後、この分散液からメッシュ(目開き:150μm)でガラスビーズを取り除いた。ガラスビーズを取り除いた後の分散液中の金属酸化物粒子と結着樹脂の合計質量に対して10質量%になるように、シリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製、平均粒径2μm)を分散液に添加した。また、分散液中の金属酸化物粒子と結着樹脂の合計質量に対して0.01質量%になるように、レベリング剤としてのシリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング(株)製)を分散液に添加して撹拌することによって、導電層用塗布液を調製した。この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を30分間150℃で乾燥・熱硬化させることによって、膜厚が30μmの導電層を形成した。
次に、N−メトキシメチル化6−ナイロン樹脂(商品名:トレジンEF−30T、ナガセケムテックス(株)製)15部と共重合ナイロン樹脂(商品名:アミランCM8000、東レ(株)製)5部を、メタノール220部と1−ブタノール110部の混合溶剤に溶解し、下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を10分間100℃で乾燥させることによって、膜厚0.65μmの下引き層を形成した。
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)の27.3°にピークを有するY型オキシチタニウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)を用意した。このY型オキシチタニウムフタロシアニン結晶10部、ブチラール樹脂(商品名:エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)5部及びシクロヘキサノン260部を、直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、1.5時間分散処理した。次に、これに酢酸エチル240部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。この電荷発生層用塗布液を、下引き層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を10分間80℃で乾燥させることによって、膜厚が0.20μmの電荷発生層を形成した。
次に、下記式(CTM−1)で示されるアミン化合物(電荷輸送物質)16部、ポリカーボネート樹脂A(表4中のPC−A(1))1部、ポリカーボネート樹脂C(表6中のPC−C(1))20部およびテトラヒドロフラン75部とキシレン75部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を、電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を60分間125℃で乾燥させることによって、膜厚が20μmの電荷輸送層を形成した。
なお、ポリカーボネート樹脂A(PC−A(1))中の、式(7)で示されるジオール化合物の含有量は、以下のように測定した。このポリカーボネート樹脂Aをアセトニトリル中に10分間浸漬し、ポリカーボネート樹脂A中の残留物の抽出液を得た。その抽出液中に含まれるジオール化合物の含有量を、予め検量線を作製しておくことにより、ガスクロマトグラフィーを用いて測定した。測定の結果、60ppm含有していた。
以上のようにして、支持体上に導電層、下引き層、電荷発生層および電荷輸送層を有する電子写真感光体を製造した。
(クラック評価)
作製した電子写真感光体の電荷輸送層のクラック性を評価するため、ソルベントクラック試験を行う。試験方法を、以下に示す。まず、作製した電子写真感光体の表面にポリオキシエチレンアルキルアミン(5%水溶液)を塗布し、温度22.5度、湿度50%RHの環境下にて24時間保管する。続いて、電子写真感光体の電荷輸送層の表面を光学顕微鏡を用いて観察し、電荷輸送層のクラックの観察を行う。結果を表17に示す
クラック評価の基準は以下のとおりである。
A:電荷輸送層の表面に、クラックは観察されない。
B:電荷輸送層の表面100μm四方の領域で観察されるクラックの長さを合計した長さが、10μm未満である。
C:電荷輸送層の表面100μm四方の領域で観察されるクラックの長さ合計した長さが、10μm以上100μm未満である。
D:電荷輸送層の表面100μm四方の領域で観察されるクラックの長さ合計した長さが、100μm以上である。
(電荷輸送物質の析出評価)
作製した電子写真感光体の電荷輸送層の、電荷輸送物質の析出しやすさを評価する試験を、以下のように行う。まず、作製した電荷輸送層の表面にポリオキシエチレンアルキルアミン(5%水溶液)を塗布し、温度22.5度、湿度50%RHの環境下にて30分間保管する。続いて、電子写真感光体の表面をイオン交換水で洗浄することで電子写真感光体の表面から充分にポリオキシエチレンアルキルアミンを除去する。その後に、温度40度、湿度90%RHの環境下にて、30日間保管する。次いで、電子写真感光体を温度22.5度、湿度50%RHの環境に取り出し、該環境下で電荷輸送層の表面を光学顕微鏡を用いて観察し、電荷輸送物質の析出の観察を行う。結果を表17に示す
電荷輸送物質の析出の評価基準は、以下のとおりである。
A:電荷輸送物質の析出は観察されない。
B:電子写真感光体の表面100μm四方の領域で観察される電荷輸送物質の析出箇所の和が、1箇所以上5箇所未満である。
C:電子写真感光体の表面100μm四方の領域で観察される電荷輸送物質の析出箇所の和が、5箇所以上20箇所未満である。
D:電子写真感光体の表面100μm四方の領域で観察される電荷輸送物質の析出箇所の和が、20箇所以上である。
(トナー融着評価)
評価機として、ヒューレットパッカード(株)製のレーザービームプリンター(商品名:HP LaserJet Enterprise600 M603、プリント速度:A4縦60枚/分)を改造し、評価をする。該評価機の改造は、プリント速度をA4縦65枚/分となるように変更する。
温度33度、湿度85%RHの環境下にて、A4用紙を用い、2ドットライン/200ドットスペース(横線)画像の、1万枚連続出力試験を行う。連続出力試験に引き続き、同環境にて、全面露光による黒色画像(いわゆるベタ黒画像)を出力する。出力した黒色画像を目視し、黒色画像上にトナーが乗っていない領域(いわゆる白ポチもしくは白スジ)の有無を観察する。黒色画像上にトナーが乗っていない領域が、電子写真感光体の表面へのトナー融着に起因すること有無の判断は、該領域と電子写真感光体の表面に融着したトナーとの位置関係の対応を観察して行う。結果を表17に示す
トナー融着の評価基準は、以下のとおりである。
A:前記黒色画像上にトナーが乗っていない領域は存在しない。
B:前記黒色画像上にトナーが乗っていない領域が、電子写真感光体1周長の距離内に1箇所以上5箇所未満である。
C:前記黒色画像上にトナーが乗っていない領域が、電子写真感光体1周長の距離内に5箇所以上20箇所未満である。
D:前記黒色画像上にトナーが乗っていない領域が、電子写真感光体1周長の距離内に20箇所以上である。
(実施例2〜88)
実施例1において、ポリカーボネート樹脂A、ポリカーボネート樹脂Cおよび電荷輸送物質を表10、11に示すように変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造した。評価結果を表14に示す。表中、(CTM−2)、(CTM−3)は、以下の化学式で示される化合物である。
実施例42および実施例87の電荷輸送層の膜厚は、10μmであった。実施例43および実施例88の電荷輸送層の膜厚は、30μmであった。
実施例40で用いたポリカーボネート樹脂A(PC−A(1))中の、式(7)で示されるジオール化合物の含有量は、100ppmであった。実施例41で用いたポリカーボネート樹脂A(PC−A(1))中の、式(7)で示されるジオール化合物の含有量は、300ppmであった。実施例44で用いたポリエステル樹脂B中(PE−B(1))の、式(7)で示されるジオール化合物の含有量は、50ppmであった。実施例85で用いたポリエステル樹脂B(式PE−B(1))中の、式(7)で示されるジオール化合物の含有量は、100ppmであった。実施例86で用いたポリエステル樹脂B(式PE−B(1))中の、式(7)で示されるジオール化合物の含有量は、250ppmであった。
(実施例89)
実施例1において、長さ250mm、直径15mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)として用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造した。評価は、クラック評価および電荷輸送物質の析出評価を行った。評価結果を表14に示す。
(実施例90)
実施例44において、長さ250mm、直径15mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)として用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造した。評価は、クラック評価および電荷輸送物質の析出評価を行った。評価結果を表14に示す。
(比較例)
以下の比較例で用いたポリカーボネート樹脂E、ポリエステル樹脂Dの合成例を表12に示す。
(比較例1、2、410、12、13)
実施例1において、ポリカーボネート樹脂A、ポリカーボネート樹脂Cおよび電荷輸送物質を表13に示すように変更した以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造した。評価結果を表15に示す。
(比較例21)
比較例19において、長さ250mm、直径15mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)として用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造した。評価は、クラック評価および電荷輸送物質の析出評価を行った。評価結果を表15に示す。
(比較例22)
比較例20において、長さ250mm、直径15mmのアルミニウムシリンダー(JIS−A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)として用いた以外は、実施例1と同様に電子写真感光体を製造した。評価は、クラック評価および電荷輸送物質の析出評価を行った。評価結果を表15に示す。
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段(一次帯電手段)
4 露光光(画像露光光)
5 現像手段
6 転写手段(転写ローラーなど)
7 クリーニング手段(クリーニングブレードなど)
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
P 転写材(紙など)
101 支持体
102 下引き層
104 電荷発生層
105 電荷輸送層

Claims (13)

  1. 支持体、該支持体上に形成された電荷発生層、および電荷発生層上に形成された電荷輸送層を有する電子写真感光体であって、該電荷輸送層が、
    式(1)’で示される末端構造および(A)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂A、および、式(1)’で示される末端構造および(B)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂Bからなる群より選択される少なくとも1つ、および
    電荷輸送物質
    を含有することを特徴とする電子写真感光体。

    式(1)’Ra〜Reは、それぞれ独立に、アルキル基、またはアリール基を示す。aは括弧内の構造の繰り返し数を示し、ポリカーボネート樹脂A、またはポリエステル樹脂Bに対するaの平均値は1以上500以下である。bは、0または1である。cは1以上10以下の整数である。
    式(A)中、Zは、5〜8員環の置換シクロアルキリデン基を示し、該置換シクロアルキリデン基は、置換基として1〜3個のアルキル基を有する。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。
    式(B)中、Zは、5〜8員環の置換シクロアルキリデン基を示し、該置換シクロアルキリデン基は、置換基として1〜3個のアルキル基を有する。R11〜R18は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。Xは、下記式(2)〜(5)のいずれかで示される2価の基を示す。)

    (式(2)〜(5)中、R41〜R60は、それぞれ独立に、水素原子、またはアルキル基を示す。Yは、単結合、酸素原子、硫黄原子、置換もしくは無置換のアルキレン基を示す。)
  2. 前記式(A)および(B)中、ZおよびZが、置換シクロヘキシリデン基である請求項1に記載の電子写真感光体。
  3. 前記式(A)および(B)中、前記1〜3個のアルキル基が、前記式(A)および(B)の2つの芳香環に結合する炭素原子Cに対して、Cを通る対称面の対称要素を有さないように前記シクロアルキリデン基の置換位置に置換されている請求項1または2に記載の電子写真感光体。
  4. 前記式(A)および(B)中、前記1〜3個のアルキル基が、1〜3個のメチル基である請求項1から3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  5. 前記式(A)および前記式(B)中、前記ZおよびZが、下記式(13−1)で示される2価の基である請求項1から4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  6. 前記電荷輸送層が、さらに、
    下記式(C)で示される構造単位を有するポリカーボネート樹脂C、および下記式(D)で示される構造単位を有するポリエステル樹脂Dからなる群より選択される少なくとも1つ
    を含有する請求項1から5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。

    (式(C)中、R21〜R28は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、またはアリール基を示す。Yは、単結合、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、フェニルエチリデン基、5〜8員環の置換若しくは無置換のシクロアルキリデン基、または酸素原子を示す。該置換のシクロアルキリデン基は、置換基として1〜3個のアルキル基を有する。式(D)中、R31〜R38は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基またはアリール基を示す。Yは、単結合、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、フェニルエチリデン基、5〜8員環の置換若しくは無置換のシクロアルキリデン基、または酸素原子を示す。該置換のシクロアルキリデン基は、置換基として1〜3個のアルキル基を有する。Xは、前記式(2)〜(5)のいずれかで示される2価の基を示す。)
  7. 前記式(D)中、前記Xが前記式(5)で示される2価の基であり、前記Yが酸素原子である請求項6に記載の電子写真感光体。
  8. 前記式(C)および前記式(D)中、前記YおよびYが、下記式(13−1)で示される2価の基である請求項6または7に記載の電子写真感光体。
  9. 前記ポリカーボネート樹脂Cが、下記式(C−1)で示される構造単位、および下記式(C−2)で示される構造単位を有する請求項6から8のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  10. 前記ポリカーボネート樹脂Aまたは前記ポリエステル樹脂B中の下記式(7)で示されるジオール化合物の含有量が、前記ポリカーボネート樹脂Aまたは前記ポリエステル樹脂Bに対して100ppm以下である請求項1からのいずれか1項に記載の電子写真感光体。

    (式(7)中、R71〜R78は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を示し、Zは、5〜8員環の置換のシクロアルキリデン基を示し、該置換のシクロアルキリデン基は、置換基として1〜3個のアルキル基を有する。)
  11. 前記式(1)’で示される末端構造が、式(1−5)または式(1−6)であり、

    前記電荷輸送物質が、式(CTM−1)、式(CTM−2)、および式(CTM−3)から選択される少なくとも1つの化合物

    である請求項1から10のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
  12. 請求項1から11のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置に着脱自在であるプロセスカートリッジ。
  13. 請求項1から11のいずれか1項に記載の電子写真感光体、ならびに、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有する電子写真装置。
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