JP4562487B2 - 樹脂磁石組成物、その製造方法およびマグネットローラ - Google Patents

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Description

本発明は樹脂磁石組成物、その製造方法およびマグネットローラ(以下、単に夫々「組成物」、「製造方法」および「ローラ」とも称する)に関し、詳しくは、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の各種画像形成装置における現像ローラ等に用いられるマグネットローラ用途に有用な樹脂磁石組成物、その製造方法およびそれを用いたマグネットローラに関する。
一般に、磁性トナーを用いた画像形成装置においては、感光ドラム等の潜像保持体上の静電潜像を可視化するための現像ローラとして、マグネットローラが用いられている。マグネットローラは、回転するスリーブ内に一定の磁化パターンが着磁された状態で配置され、回転に伴って、磁化パターンに従い磁性トナーをスリーブ上に吸着し、搬送して潜像保持体上に飛翔させる、いわゆるジャンピング現象により、静電潜像の現像を行うものである。
マグネットローラは、通常、樹脂バインダーと磁性粉とを主成分とする樹脂磁石組成物を混練し、押出または射出成形することにより製造される(例えば、特許文献1参照)。従って、得られるマグネットローラの品質を良好に確保するためには、樹脂磁石組成物の品質特性を安定的に管理することが重要となる。かかる樹脂磁石組成物の重要な品質特性の一つとして、流動性があるが、組成物の流動性は環境の温湿度条件等に左右されやすいため、年間を通して流動性を一定レベルに維持管理することは非常に困難である。
この問題に対して、組成物の含有水分量を制御する技術が知られている。これは、樹脂バインダーの親水性を利用したものであり、特に、樹脂バインダーとして6−ナイロンを用いた場合に顕著な効果がある。具体的には、樹脂磁石組成物の含有水分量と流動性とが正の相関関係にあることから、高温多湿時期には組成物の十分な乾燥を行い、一方、低温乾燥時期においては逆に適度な加湿を行う手法であり、成形材料としての樹脂磁石組成物の品質安定化という課題に対し、最も低コストの技術であるといえる。
水分を含有させた樹脂磁石組成物に係る技術として、例えば、特許文献2には、磁性粉末と、所定の構造を有するポリアミド樹脂とを主成分とする樹脂結合型磁石において、水分を含有させることにより接着特性を向上させる技術が記載されている。また、この文献中には、樹脂結合型磁石に水分を含ませる方法として、樹脂結合型磁石を一定の温度と湿度に保った恒温恒湿槽中に一定時間放置する方法が例示されている。
特開昭61−158111号公報 特開2001−160505号公報(特許請求の範囲、[0037]等)
しかしながら、樹脂磁石組成物の製品成形性(量産性)のさらなる向上を図るためには、環境等の変動に伴う組成物の流動性の品質変動(バラツキ)を、現在以上に安定的に制御することが必要となる。
そこで本発明の目的は、環境等の変動に伴う流動性の品質変動をより安定的に制御することができ、これにより、得られるマグネットローラの品質を良好に確保することができる樹脂磁石組成物、その製造方法およびそれを用いたマグネットローラを提供することにある。
本発明者は、樹脂バインダーと磁性粉とを混合した後の樹脂磁石組成物全体の含有水分量ではなく、混合前の樹脂バインダーおよび磁性粉それぞれの含有水分量を所定に調整することで、得られる組成物の流動性を常に一定に制御することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の樹脂磁石組成物は、樹脂バインダーと磁性粉とを主成分とする樹脂磁石組成物において、前記樹脂バインダーと磁性粉とを混合する前の、該樹脂バインダーおよび磁性粉の含有水分量、それぞれ1500〜2500ppmおよび1000〜1500ppmであることを特徴とするものである。
また、本発明の樹脂磁石組成物の製造方法は、樹脂バインダーと磁性粉とを混合する混合工程を含む樹脂磁石組成物の製造方法において、前記混合工程直前の、前記樹脂バインダーの含有水分量を1500〜2500ppmに、かつ、前記磁性粉の含有水分量を1000〜1500ppmに、それぞれ調整することを特徴とするものである。
さらに、本発明のマグネットローラは、樹脂磁石組成物が成形されてなることを特徴とするものである。
本発明によれば、上記構成としたことで、環境等の変動に伴う流動性のバラツキを安定的に制御して、常に一定な流動性を有する樹脂磁石組成物を得ることができ、これにより、製品成形性(量産性)の向上を図ることが可能となった。従って、かかる本発明の樹脂磁石組成物を用いた本発明のマグネットローラは、バラツキが少なく、かつ、優れた品質特性を備えるものである。なお、本発明の技術は、従来技術と比較して極めて低コストである点でもメリットがある。
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明の樹脂磁石組成物は、樹脂バインダーと磁性粉とを主成分とするものであり、樹脂バインダーおよび磁性粉がそれぞれ、所定量の水分を含有する点に特徴を有する。樹脂バインダーおよび磁性粉のそれぞれの持込水分量は、配合物の混練時における可塑化の促進、即ち、樹脂成分の分子量の低分子量化に作用するため、これら各含有水分量を所定に規定することで、得られる樹脂磁石組成物の流動性を制御することが可能であり、これにより、従来の組成物自体の水分量を制御する手法に比して、さらに安定した一定の流動性を常に確保することが可能となるのである。
具体的には、樹脂バインダーが1500〜2500ppm、好適には1800〜2300ppmの水分を含有し、かつ、磁性粉が1000〜1500ppm、好適には1200〜1400ppmの水分を含有する。樹脂バインダーの含有水分量が1500ppm未満では、流動性の安定化効果がなく、一方、2500ppmを超えると可塑化が促進され過ぎて、組成物の量産性(ストランドが不安定化)および製品品質(強度低下)に支障が生ずる。また、磁性粉の含有水分量が1000ppm未満では流動性の安定化効果がなく、一方、1500ppmを超えると流動性は安定化するが、ブリッヂ現象が発生してしまい、作業性が悪化する。樹脂バインダーおよび磁性粉の含有水分量の調整は、製造時における制御と、その後の工程における空調制御により行うことができる。
本発明に用いる樹脂バインダーとしては、特に制限されず、ポリアミド樹脂(PA)、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET),ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体樹脂(EEA)、エポキシ樹脂、エチレンービニルアルコール共重合体樹脂(EVOH)、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン、ポリエチレン共重合体などのポリオレフィン、これらポリオレフィンの構造中に無水マレイン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、グリシジル基などの反応性を有する官能基を導入した変性ポリオレフィンなどが挙げられ、これらを単独または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。中でも好ましくはポリアミド樹脂であり、例えば、11−ナイロン、12−ナイロン、46−ナイロン、6−ナイロン、6,66−ナイロン、6,6T−ナイロン、610−ナイロン、612−ナイロン、66−ナイロン、66,6−ナイロン、6T−ナイロン、芳香族ポリアミド、非晶質ポリアミド、ポリアミドイミド等、各種のものを用いることができ、特には、6−ナイロンを用いる。
また、磁性粉としては、マグネットローラ等に用いられる樹脂磁石組成物において従来より慣用されている公知の磁性粉を用いることができる。具体的には例えば、Srフェライト、Baフェライト等のフェライト粉末や、Sm−Co合金、Nd−F−B合金、Ce−Co合金等の希土類系合金粉末などを例示することができ、これらを単独または2種以上で適宜組み合わせて用いることができる。中でも、好ましくはフェライトである。なお、磁性粉には、必要に応じ公知の前処理を施すことが可能であり、例えば、シラン系やチタン系、アルミニウム系等の公知のカップリング剤を用いて表面処理を施して、本発明に用いることができる。
組成物中における磁性粉の配合量は、要求される磁力の強さに応じて適宜選定することができ、特に制限されるものではない。通常は、組成物全体の70〜95重量%程度である。
本発明の樹脂磁石組成物には、樹脂バインダーおよび磁性粉に加えて、必要に応じマイカやタルク、ウィスカ、炭素繊維、ガラス繊維等の補強用充填材を添加することができる。特には、マイカまたはウィスカを用いることが好ましく、ウィスカとしては、炭化ケイ素、窒化ケイ素等からなる非酸化物系ウィスカ、ZnO、MgO、TiO2、SnO2、Al23等からなる金属酸化物系ウィスカ、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウム、塩基性硫酸マグネシウム等からなる複酸化物系ウィスカ等が挙げられるが、これらの中ではプラスチックとの複合化が容易な点より、複酸化物系ウィスカが特に好ましい。
これら充填材を用いる際のその配合割合としては、特に制限されるものではないが、通常は組成物全体の2〜32重量%、特には5〜20重量%程度である。また、本発明の組成物には、滑剤、安定剤、可塑剤、難燃剤等の、上記充填材以外の公知の添加材を適宜添加してもよい。
本発明の組成物は、上記樹脂バインダー、磁性粉および必要に応じ用いられる充填材等を、常法に従い混合分散し、溶融混練した後、ペレット状に成形することにより調製することができるが、樹脂バインダーと磁性粉とを混合する混合工程直前において、樹脂バインダーの含有水分量を1500〜2500ppmに、かつ、磁性粉の含有水分量を1000〜1500ppmに、それぞれ調整することが必要である。なお、配合(ミキシング)時に磁性粉に対しカップリング剤処理を施す場合には、温度110℃、10分程度の昇温処理を行う必要があるが、この過程で磁性粉の含有水分量が減少することはない。製造工程における溶融混練には、例えば、二軸混練押出機、KCK混練押出機などを用いることができる。
また、本発明のマグネットローラは、上記本発明の樹脂磁石組成物が成形されてなるものである。成形方法としては、射出成形法でも押出成形法でもよく、特に制限されるものではない。マグネットローラは、通常、樹脂磁石からなるローラ本体と、その両端部から突出するシャフト部とを具備した構造を有するが、この場合、金属等からなるシャフトを金型にセットして、その外周に上記組成物によりローラ本体を成形してもよく、また、シャフト部とローラ本体とを上記組成物で一体的に成形してもよい。さらに、ローラに高度で複雑な磁力特性が要求される場合などには、上記組成物を用いて複数の樹脂磁石片を成形し、これらを金属等からなるシャフトの外周に貼り合わせてローラ本体を形成してもよい。また、マグネットローラの着磁は、金型の周囲に磁場を形成して成形と同時に行ってもよく、また、成形後に公知の着磁機を用いて行ってもよい。
なお、本発明の樹脂磁石組成物は、上記本発明のマグネットローラの成形材料として好適に使用されるものであるが、その用途はこれに限定されるものではなく、種々の樹脂磁石成形物の成形材料として好適に使用することが可能である。
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
含有水分量を下記の表1、2中に示すようにそれぞれ調整した、樹脂バインダー(6−ナイロン、宇部興産(株)製、商品名 P1010)および磁性粉(異方性フェライト粉末、日本弁柄工業(株)製、商品名:NF−110)を用いて、フェライト含量89.0重量%の樹脂磁石組成物を、2種類の環境雰囲気で製造した。また、得られた組成物を用いて製品マグネットローラを成形した。製造プロセスは全て同一とした。
評価は、組成物および製品のそれぞれの量産性と品質特性(組成物については流動性(メルトフローレート(MFR))、製品ローラについては磁力連続性および強度)につき行った。その結果を、下記の表1、2中に併せて示す。表中、○:良好、△:一部不適、×:不適を、それぞれ示す。また、組成物の品質特性(流動性)および製品ローラの品質特性(強度)については、比較例1の高温多湿時の結果をそれぞれ80、100とする指数にて示した。数値が大なるほど、結果が良好である。
Figure 0004562487
Figure 0004562487
上記表1、2の結果から、樹脂バインダーおよび磁性粉の含有水分量を所定に規定した実施例の樹脂磁石組成物では、年間の季節変動の影響をほとんど受けずに安定した流動性を保持することができることがわかる。なお、流動性と製品ローラの強度とは二律背反の関係となるが、この程度の強度低下は製品として支障のないものである。

Claims (5)

  1. 樹脂バインダーと磁性粉とを主成分とする樹脂磁石組成物において、前記樹脂バインダーと磁性粉とを混合する前の、該樹脂バインダーおよび磁性粉の含有水分量、それぞれ1500〜2500ppmおよび1000〜1500ppmであることを特徴とする樹脂磁石組成物。
  2. 前記樹脂バインダーがポリアミド樹脂であり、かつ、前記磁性粉がフェライトである請求項1記載の樹脂磁石組成物。
  3. 樹脂バインダーと磁性粉とを混合する混合工程を含む樹脂磁石組成物の製造方法において、前記混合工程直前の、前記樹脂バインダーの含有水分量を1500〜2500ppmに、かつ、前記磁性粉の含有水分量を1000〜1500ppmに、それぞれ調整することを特徴とする樹脂磁石組成物の製造方法。
  4. 前記樹脂バインダーとしてポリアミド樹脂を用い、かつ、前記磁性粉としてフェライトを用いる請求項3記載の樹脂磁石組成物の製造方法。
  5. 請求項1または2記載の樹脂磁石組成物が成形されてなることを特徴とするマグネットローラ。
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