以下、添付の図面に基づいて、本発明の一実施形態に係るテープカートリッジについて説明すると共に、テープカートリッジを分解するテープカートリッジ分解治具について説明する。このテープカートリッジは、印刷に供される印刷テープ及びインクリボンを着脱可能に収納した2分割構造のカートリッジケースで外殻を構成されたものであり、再利用に供することができるように、カートリッジケースを損傷することなく分離可能に構成されたものである。また、テープカートリッジ分解治具は、このテープカートリッジを分解するための専用の治具である。以下の説明では、先ず、テープカートリッジを収容する印刷装置から簡単に説明する。
図1および図2は、それぞれ本発明の実施形態における印刷装置の全体斜視図および開蓋状態の全体斜視図である。両図に表すように、印刷装置1は、装置ケース2により外殻を形成されて、装置ケース2の前部上面には文字等の入力手段となるキーボード3と、後部上面に取り付けられた開閉自在な開閉蓋6と、開閉蓋6右部の窓に臨んで文字等の情報を視認可能に表示するディスプレイ4と、装置ケース2左側面に形成され装置外部と連通する排出口10と、装置ケース2の左部にテープカートリッジ20を着脱自在に収納する装着部5とで構成されている。この印刷装置1は、テープカートリッジ20を介して印刷テープTに、所望の文字や図形などを印刷すると共に、テープの印刷済み部分を所定の長さに切断して、ラベルを作製するものである。
この印刷装置1をユーザーが使用する場合には、先ず開閉蓋6を開けて、テープカートリッジ20を貫通して形成されたヘッド開口23を装着部5のヘッドユニット7に案内して、テープカートリッジ20を装着部5に装着し、開閉蓋6を閉じる。次に、ディスプレイ4により入力・編集結果を確認しながらキーボード3により所望の文字等の印刷情報を入力して、テープカートリッジ20にて供給される印刷テープTに印刷を指示する。内部機構8およびヘッドユニット7のサーマルヘッド11により、印刷テープTへの印刷が行われる。印刷が行われた印刷テープTの印刷済み部分は、排出口10から随時装置ケース2外部に送り出され、一方、印刷が行われたインクリボンRの印刷済み部分は、テープカートリッジ20内で巻取り収容される。そして、印刷が完了した時点で、ユーザーが、図示しないカットボタンを押すことで、印刷テープTが所望の長さに切断され、所望のラベルが作成される。
次に、図3、図4および図5に基づいて、テープカートリッジについて詳細に説明する。テープカートリッジ20は、上ケース40と下ケース50とからなるカートリッジケース21により、その外殻が形成されており、カートリッジケース21の内部は、幅狭のテープ収容部30と幅広のリボン収容部31とで構成されている。
テープ収容部30には、印刷テープTと、印刷テープTを巻回したテープコア35とからなるテープアッセンブリ32が収容されている。リボン収容部31には、インクリボンRと、インクリボンRを繰り出す繰出しコア36と、インクリボンRを巻き取る巻取コア37とからなるリボンアッセンブリ33が収容されていると共に、プラテンゴムを巻装した中空円筒状のプラテン34が収容されている。そして、これらテープコア35、繰出しコア36、巻取コア37およびプラテン34は、上ケース40及び下ケース50に形成された軸突起や嵌合孔に回転自在に軸支され、また図5の分割状態から上下を反転させると、これら収容部品(34,35,36,37)は、軸突起や嵌合孔から外れて自由落下するようになっている。
リボン収容部31の図示左部に位置して、下ケース50には、サーマルヘッド11が臨む下ヘッド開口53が形成され、また上ケース40には、下ヘッド開口53に対応して上ヘッド開口43が形成されている。また、下ヘッド開口53の縁部には、平面視略「C」字状のガイド壁59が突出形成されている。
テープコア35に巻き回されている印刷テープTは、テープコア35から繰り出されてプラテン34に至る。また、繰出しコア36から送られてくるインクリボンRは、プラテン34(サーマルヘッド11)を経てガイド壁59の外周面に沿って周回して巻取コア37に巻き取られるようになっている。これにより、インクリボンRおよび印刷テープTは、プラテン34の位置で重なって併走し、インクリボンRのインクが文字形に引き剥がされ印刷テープTに転写される。印刷が行われた印刷テープTの印刷済み部分は、カートリッジケース21の送出しスリット39を通過して、印刷装置1の排出口10から随時装置ケース2外部に送り出される。
次に、カートリッジケース21の接合形態について詳述する。本実施形態のカートリッジケース21では、上ケース40と下ケース50との2分割構造で構成され、上ケース40と下ケース50とが相互の接合端面同士を突き合わせるようにして接合されている。すなわち、上ケース40は、天壁部41と上周壁部42(接合部)とで一体に形成され、また下ケース50は、底壁部51と下周壁部52(接合部)とで一体に形成されている。上ケース40と下ケース50とは、この上周壁部42の端面と下周壁部52の端面とを突き合わせるようにして接合されている。
上ケース40には、3個の係合ピン45と6個の圧入ピン44と2個のフック46とが形成され、下ケース50には、これらそれぞれに対応して3個の係合孔55と6個の貫通孔54と2個のフック受け部56とが形成されている。すなわち、各係合ピン45が対応する係合孔55に係合して上ケース40と下ケース50との位置決めがなされ、各圧入ピン44が対応する貫通孔54に圧入して上ケース40と下ケース50とが接合され、各フック46が対応するフック受け部56に係止して、上ケース40と下ケース50とが耐衝撃性をもって接合されている。
3個の係合ピン45のうち2個の係合ピン45は、上ケース40の左右に、他の1個は、上ヘッド開口43の縁部に配設され、いずれも上ケース40の天壁部41に一体にかつ突出して形成されている。また、係合孔55は、この係合ピン45に対応して下ケース50の下周壁部52に2個およびガイド壁59に1個の計3個形成されている。係合ピン45は、略円柱状に形成され、かつその先端部は、係合孔55への挿入をガイドすべくテーパー形状に形成されている。また、係合孔55は、係合ピン45の長さに対応した深さを有し、かつ係合ピン45との締め代を0として形成され、係合ピン45が無理なく係合するようになっている。
6個の圧入ピン44は、上ケース40の上周壁部42の端面に5個と、上ヘッド開口43の縁部に1個とが分散するように突出すると共に、上ケース40と一体に形成されている。また、6個の貫通孔54は、この圧入ピン44に対応して下ケース50の下周壁部52の端面に5個と、ガイド壁59に1個とが下ケース50と一体に形成されている。より具体的には、圧入ピン44および貫通孔54は、テープ収容部30の後部に左右一対の2個と、リボン収容部31の右部の後部と前部とに2個と、リボン収容部31の中部に1個と、リボン収容部31の左部に1個配置されている。
圧入ピン44は、係合ピン45と同様に、略円柱状に形成され、かつその先端部がテーパーの形状に形成されている。ただし、圧入ピン44は、係合ピン45に比して、太径に形成されている。また、貫通孔54は、下ケース50を軸方向に貫通しており、底壁部51の裏側に開口している。したがって、貫通孔54は、下ケース50の下周壁部52を上下方向に貫通している。また、各圧入ピン44の軸方向と各貫通孔54の軸方向とは、一致している。
また、圧入ピン44の径は、貫通孔54の径よりもわずかに大きく形成され、圧入ピン44と貫通孔54とは、締め代を0.08mm±0.02程度として形成されている。したがって、貫通孔54に圧入ピン44を嵌合する際には、係合ピン45を係合孔55の位置に合わせて上下両ケース40,50の位置決めをした状態で、圧入ピン44を貫通孔54に圧入して、圧入ピン44を貫通孔54に嵌め合わせる。
これにより、圧入ピン44自体がわずかに変形し貫通孔54に強く密着して、上ケース40と下ケース50との間を強く締結すると共に、上ケース40と下ケース50とが落下衝撃では分離しない状態となる。そして、カートリッジケース21は、圧入ピン44が貫通孔54に圧入された状態では、下ケース50の底壁部51の裏側から見ると上ケース40から延在している圧入ピン44の先端が貫通孔54の途中で止まった状態となって接合されている。
一方で、カートリッジケース21は、この圧入ピン44の先端部が下ケース50の底壁部51の裏側から貫通孔54を通じて押されることで圧入ピン44と貫通孔54との締付力が解除されるようになっている。すなわち、圧入ピン44を圧入方向と反対方向から貫通孔54を通じて押すことによって、圧入ピン44と貫通孔54とのはめあいがゆるみ、カートリッジケース21は、上ケース40と下ケース50とに分離される構成となっている。
2個のフック46およびフック受け部56は、バランスを考慮してリボン収容部31の右部と左部とに離して配設されている。フック46は、上ケース40に一体に、かつ上周壁部42の端面に突出して形成され、またフック受け部56は、下ケース50の下周壁部52の一部を切り欠くことで形成されている。これにより、インクリボンRの皺・よじれ等の原因となるリボン収容部31での上下両ケース40,50の浮きが防止されている。以下に、図6ないし図10を参照して、フック46およびフック受け部56、ならびにフック受け部56に隣接して設けたフック外れ防止壁70について順を追って説明する。
図6に表すように、フック46は、上ケース40の上周壁部42の端面に突出したばね性を有するフックばね部60と、フックばね部60の先端部に形成した外向きのフック係止部61とで一体に形成されている。フック係止部61は、フック受け部56に直接接触して掛け止めされるフック掛止め面62と、係止動作をガイドするフック傾斜面63とを有している。フック46は、外力によりフックばね部60のばね性に抗してたわみ、フック受け部56とフック外れ防止壁70との間に挟入するようになっている。
図7ないし図10に表すように、フック受け部56は、下ケース50の下周壁部52をその上端部をブリッジ状に残し、下端まで略フック幅をもって方形に切り欠くことにより形成され、そのブリッジ状部分の下端面に、フック46が係止する受け部掛止め面72(図9参照)が形成されている。また、図8に表すように、フック受け部56は、そのブリッジ状部分の上端面(下周壁部52の端面)が略フック幅に面取りされて係止ガイド面73を形成している。
上ケース40の下ケース50への圧入動作に伴って、フック46がフック受け部56に接触すると、フック係止部61のフック傾斜面63がフック受け部56の係止ガイド面73にガイドされ、貫通孔54の軸方向に直交するフック掛止め面62と受け部掛止め面72とが直接接触して係わり合い、フック46はフック受け部56に係止する。また、詳細は後述するが、実施形態のテープカートリッジ分解治具80では、フック46のフック係止部61に解除力を作用させるようになっており、このとき、後述のフック外し駒123の駒傾斜面153とフック傾斜面63とが関わり合い、フック46に抜け方向の分力が作用するようになっている。
フック外れ防止壁70は、フック受け部56の背面側にフック46が挿入されるわずかな間隙を存して、下ケース50に一体に立設され、リボン収容部31の右部と左部とに計2個(70a、70b)配設されている。フック外れ防止壁70は、図8および図10に表すように、フック46の係止解除側である背面側に下ケース50の底壁部51から片持ち形状で下周壁部52と同一高さに立設されている。フック外れ防止壁70は、薄肉に形成されているため、ばね性を有しており、フック受け部56とのわずかな間隙は、上ケース40のフック46が下ケース50のフック受け部56に係止する際に、フック係止部61が辛うじて挟入するような寸法で、フック46のフック係止部61の大きさよりもわずかに小さく形成されている。
図11は、図3のA−A線断面図である。上ケース40のフック46は、下ケース50のフック受け部56とフック外れ防止壁70(70b)とに挟持されている。すなわち、上ケース40と下ケース50とが、係合孔55に係合する係合ピン45の係合動作および貫通孔54に圧入する圧入ピン44の圧入動作に同期して、上ケース40のフック46は、下ケース50のフック受け部56とフック外れ防止壁70との間隙に挟入してフック受け部56に係止する。
この際に、フック46は、フック係止部61でフック外れ防止壁70をその背面側にたわませながら、フック傾斜面63によりフック受け部56に案内されて、フック受け部56とフック外れ防止壁70との間隙に挟入していき、フック掛止め面62と受け部掛止め面72とが相互に接触して係わり合い、フックばね部60をフック受け部56とフック外れ防止壁70とに挟持された状態となる。したがって、強い落下衝撃等により、フック46がフック外れ防止壁70側にたわんでも、自由状態のフック外れ防止壁70がさらなるたわみを阻止するため、フック46が強い落下衝撃によりフック受け部56から係止解除することを阻止されるようになっている。
したがって、テープカートリッジ20は、圧入ピン44による圧入とフック46による係止とでカートリッジケース21の上ケース40と下ケース50とが強く接合されて保持されることとなる。この場合、カートリッジケース21は、最低でも10回は分離可能となるよう、圧入ピン44およびフック46が分離過程で損傷しないように構成されている。また、カートリッジケース21は、75cm程度(机の高さ)の高さからの落下衝撃に対して、上ケース40と下ケース50とに分離されない構成となっている。
一方で、フック受け部56とフック外れ防止壁70とに挟持されているフック46は、フック係止部61をフック外れ防止壁70に対し押圧されることで、フックばね部60がフック外れ防止壁70側に付勢してたわむのに従って、フック外れ防止壁70もその背面方向に付勢してたわみ、フック受け部56とフック外れ防止壁70との間にわずかな空隙が生じる。そして、フック係止部61がフック受け部56とフック外れ防止壁70との間を通過することで、フック受け部56に対するフック46による係止は完全に解除されるようになっている。
また、図10に表すように、リボン収容部31の左部に位置するフック外れ防止壁70bは、下ヘッド開口53側の壁面が下ヘッド開口53に対し波形状に形成されている。これにより、左部のフック外れ防止壁70bと下ヘッド開口53との間を通過してリボン巻取コア37に巻き取られていくインクリボンRは、この波形状の壁面を有するフック外れ防止壁70bとの接触面積が小さくなり、長期保存に対する、フック外れ防止壁70bの壁面とのくっつきを防止されている。さらに、左部のフック外れ防止壁70bは、インクリボンRがフック46と接触することを防止している。すなわち、左部のフック外れ防止壁70bにより、インクリボンRは、巻き取り収容される際にフック46と接触することが防止されると共に、フック受け部56に対するフック46の係止を解除する際にフック46がその背面側にたわんで接触することを防止される。
なお、フック46を上ケース40に、フック受け部56を下ケース50に形成するのに代えて、フック46を下ケース50に、フック受け部56を上ケース40に形成して、上ケース40と下ケース50とを係止してもよい。また、フック外れ防止壁70を下ケース50に形成するのに代えて、上ケース40に形成してもよく、フック46とフック外れ防止壁70とを同側のケースに形成してもよい。さらに、圧入ピン44の数は、任意の個数であってもよく、本実施形態のように6個に限定するものでない。
また、カートリッジケース21は、図3および図4に表すように、テープ収容部30にラベルテープ溝38が形成されている。ラベルテープ溝38は、上周壁部42と下周壁部52とに形成されていると共に、上ケース40の天壁部41の表面を横断して形成されている。図3に表すように、テープカートリッジ20は、剥離可能なラベルテープ22がラベルテープ溝38に貼着され、上下両ケース40,50がテープ収容部30で封止されて、より一層上ケース40と下ケース50とが接合される。また、ラベルテープ溝38を設けることで、ラベルテープ22がカートリッジケース21に貼着された際に生じるカートリッジケース21の輪郭の凹凸を無くすことができるため、テープカートリッジ20の印刷装置1への脱着頻度等によっても、ラベルテープ22が容易に剥離することを防止している。
またさらに、カートリッジケース21は、後述するテープカートリッジ分解治具80を使用する際に必要な形状に形成されている。図3および図4に表すように、カートリッジケース21の下ケース50の下周壁部52には、上ケース40の上周壁部42に対し、その輪郭が相対的に凸となる4個の引掛り部49が前後左右に分散して形成されている。具体的には、引掛り部49は、上ケース40の凹部47と下ケース50の治具受け部57とからなる。
上ケース40の凹部47は、圧入ピン44の軸方向に上ケース40の上周壁部42の下端(天壁部41)から上端に対し窪んで形成されている。下ケース50の治具受け部57は、上ケース40の凹部47に対応して下周壁部52の端面が山型状に厚肉に形成されている(図10参照)。したがって、カートリッジケース21自体にその輪郭が凸となる部分が生じないため、印刷装置1の装着部5に着脱する際に、引掛り部49が装置側につかえる支障を生ずることがない。そして、テープカートリッジ20は、カートリッジケース21の上下を逆にした状態、すなわち上ケース40を下側にした状態で、引掛り部49を介してテープカートリッジ分解治具80にセットされる。
次に、上記のテープカートリッジ20を分解するためのテープカートリッジ分解治具80について説明する。このテープカートリッジ分解治具80は、カートリッジケース21に圧入している圧入ピン44を白化・損傷することなく、圧入ピン44を貫通孔54から押し出すと共に、この圧入解除の動作に併行して、フック受け部56に対するフック46の係止を解除して、カートリッジケース21を上ケース40と下ケース50とに分離するものである。
図12、図13および図14に表すように、テープカートリッジ分解治具80は、テープカートリッジ20を分解するための力を付与するハンドプレス90(移動手段)と、ハンドプレス90に装着して付与された力をテープカートリッジ20に作用させてこれを分解する治具本体100とで構成されている。
ハンドプレス90は、板状の台座91と、台座91に立設した支柱フレーム92と、支柱フレーム92から台座91の前方に向かって水平に突出したガイドアーム93と、ガイドアーム93の高さ位置を調整するアジャストボルト94と、ガイドアーム93の挿通孔81に挿通して上下方向に移動自在な加圧ヘッド95と、加圧ヘッド95を上下方向に移動させる操作レバー96と、操作レバー96と加圧ヘッド95とを連結するトグルリンク97とで構成されている。このハンドプレス90は、トグルリンク97(トグル機構)により、操作レバー96による僅少の力を増幅し、加圧ヘッド95に非常に大きな下方向への力を出すようになっている。
トグルリンク97は、上部がリンク支持部85を介して加圧ヘッド95の上部に連結し、下部がグリップ98を有する操作レバー96の下部に連結している。操作レバー96は、レバー支持部99を回動軸として回動操作され、トグルリンク97を上下移動させると共に、トグルリンク97を介して加圧ヘッド95を上下動させる。なお、加圧ヘッド95の下動は、操作レバー96によるが、上動は加圧ヘッド95に巻回したコイルばね84のばね力による。
ガイドアーム93の挿通孔81は、ガイドアーム93に形成した凹溝と、凹溝の開口部分を閉塞するように設けた覆い板82とで断面方形に形成されている。加圧ヘッド95は、挿通孔81に対応して断面方形に形成され、下端部には、治具本体100の可動部101を装着するための装着穴83が形成されている。
このように形成されたハンドプレス90には、加圧ヘッド95の下端部に治具本体100の可動部101がセットされ、台座91に治具本体100の固定部102がセットされる。そして、操作レバー96の下方向への回動操作により、治具本体100の可動部101を下降させて、固定部102にセットされるテープカートリッジ20に下方向への大きな力を作用させると同時に、下方向に直交する方向(以下、横方向)の力を作用させて、カートリッジケース21を上ケース40と下ケース50とに分離するようになっている。
治具本体100は、ハンドプレス90に固定されて上下動する可動部101と、これを受ける固定部102とからなる。図12および図13に表すように、治具本体100は、ハンドプレス90の加圧ヘッド95にセットされた可動部101側の押出し手段110と、ハンドプレス90の台座91にセットされた固定部102側のセット手段111と、押出し手段110の下部に位置しテープカートリッジ20のフック46による係止を解除する可動部101側のフック解除手段112とで構成されている。
この治具本体100は、セット手段111により、上ケース40を下側にした状態でテープカートリッジ20の下ケース50の底壁部51の裏側を押出し手段110に臨ませて下ケース50のみを保持し、ハンドプレス90から下方向への力を伝えられる押出し手段110により圧入ピン44を貫通孔54から押し出す動作に連動させて、フック解除手段112によりカートリッジケース21のフック受け部56に対するフック46の係止を解除するものである。
押出し手段110は、前述した貫通孔54に対応する6個の押出しピン115と、押出しピン115を植設した押出しプレート116と、押出しプレート116上部に位置する連結部117とからなり、ハンドプレス90の回動操作に従って、上下方向に移動自在に構成されている。連結部117は、上端部がハンドプレス90の加圧ヘッド95の装着穴83に装着され、下端部に押出しプレート116が固定されている。押出しプレート116は、セット手段111にセットされたテープカートリッジ20の貫通孔54に対応した位置に、6個の押出しピン115を植設するための6個の植設穴が形成されている。
各押出しピン115は、各植設穴を介して押出しプレート116に植設されている。各押出しピン115は、貫通孔54の軸方向と平行に所定の長さを有して形成され、セット手段111にセットされたテープカートリッジ20の各貫通孔54に押し込まれるようになっている。また、押出しピン115は、金属製の材料で形成され、その径が貫通孔54の径よりもやや小径に形成され、貫通孔54に円滑に挿入されるようになっている。なお、各押出しピン115の軸方向と貫通孔54の軸方向とは、一致しており、したがって圧入ピン44の軸方向とも一致している。
図12の仮想線で表すように、ハンドプレス90の操作レバー96の下方向への回動操作で、加圧ヘッド95が下降し、押出し手段110は、下方向へと水平状態を維持して下降する。そして、各押出しピン115は、下降して、セット手段111にセットされたテープカートリッジ20の各貫通孔54に挿入し、各圧入ピン44の先端部に同時に当接し、これを押し出すようになっている。
図15は、テープカートリッジ20がセット手段111にセットされた状態を表し、図16は、その分解斜視図である。セット手段111は、その内周面でテープカートリッジ20の外形をガイドする位置決めブロック120と、位置決めブロック120の下側に配設され下ケース50のみを保持する保持ブロック121と、保持ブロック121の下側に配設されハンドプレス90の台座91に固定されるベースプレート122(図12参照)とからなる。
位置決めブロック120は、内側にテープカートリッジ20の嵌合開口135を構成する4個のブロック部(案内ブロック片)からなっており、図15および図16示右部の摺動溝136を有する第1案内ブロック部131と、左部の第2案内ブロック部132と、後部の摺動溝136を有する第3案内ブロック部133と、前部の第4案内ブロック部134とで分割して形成されている。
第1案内ブロック部131ないし第4案内ブロック部134は、テープカートリッジ20の外形(上周壁部42および下周壁部52)をガイドして、テープカートリッジ20の前後左右方向を規制するように形成されている。すなわち、テープカートリッジ20は、左右方向を第1案内ブロック部131と第2案内ブロック部132とで、また前後方向を第3案内ブロック部133と第4案内ブロック部134とで移動を規制されるようになっている。
また、第1案内ブロック部131および第3案内ブロック部133には、テープカートリッジ20のフック46に対応した位置にそれぞれ摺動溝136が形成されている。摺動溝136は、第1・第3各案内ブロック部131,133において上面に形成した凹溝に蓋体137(図14参照)を設けて構成した方形断面の溝であり、第1・第3各案内ブロック部131,133をそれぞれ水平に横断するように配設されている。そして、この各摺動溝136には、後述するフック外し駒123がスライド自在に挿入されている。また、第1案内ブロック部131ないし第4案内ブロック部134は、下側に位置する保持ブロック121にそれぞれ載置されている。
保持ブロック121は、位置決めブロック120と同様に、内側にテープカートリッジ20の抜け落ち開口145を構成する3個のブロック部(支持ブロック片)からなっており、図16右部のL字断面を有する第1支持ブロック部141と、左部のL字断面を有する第2支持ブロック部142と、後部の連結支持ブロック部143とで分割して形成されている。
第1支持ブロック部141は、テープカートリッジ20の右部の外形に合った形状に形成され、テープカートリッジ20のテープ収容部30右部側を保持する引掛け部148を有して形成され、また同様に、第2支持ブロック部142は、テープカートリッジ20の左部の外形に合った形状に形成され、テープカートリッジ20のテープ収容部30左部側を保持する引掛け部148を有して形成され、連結支持ブロック部143は、テープカートリッジ20の後部の外形に合った形状に形成され、テープカートリッジ20のリボン収容部31側を保持する2個の引掛け部148が形成されている。
各引掛け部148は、テープカートリッジ20の上ケース40の各凹部47に対応して凸に形成され、上側から上ケース40の抜け落ち開口145への挿入を許容する。すなわち、引掛け部148は、上ケース40の抜け落ち開口145への挿入を許容すると共に、その上面が下ケース50の治具受け部57に当接して下ケース50のみを非抜け落ち状態に保持するようになっている。したがって、テープカートリッジ20は、位置決めブロック120により前後左右の移動を規制されると共に、保持ブロック121により、上ケース40の上下移動を可能とされ、下ケース50のみを保持された状態でセット手段111にセットされるようになっている。
ベースプレート122は、図12および図13に表すように、ハンドプレス90の台座91の上面に着座した状態で、台座91にボルト止めされ、上面にて保持ブロック121及び位置決めブロック120を順に支持している。保持ブロック121の第1・第2各支持ブロック部141,142および連結支持ブロック部143は、六角穴付きボルト126でベースプレート122に個々に固定されている。保持ブロック121の各支持ブロック部141,142,143には、六角穴付きボルト126が挿通するばか穴が形成され、これら各支持ブロック部141,142,143は、相互に微小間隙を存して対峙し上記の抜け落ち開口145を構成している。
そして、六角穴付きボルト126の径に比して、ばか穴の径は十分に太径に形成され、各支持ブロック部141,142,143は、相互の微小間隔の範囲内で、位置調整可能に構成されている。これにより、テープカートリッジ20(カートリッジケース21)の製造上の誤差(ロット毎)を吸収して、テープカートリッジ20を適切に保持ブロック121にセットできるようになっている。
また、保持ブロック121とベースプレート122との関係と同様に、位置決めブロック120の各案内ブロック部131,132,133,134は、個々に保持ブロック121に固定される。すなわち、第1案内ブロック部131および第2案内ブロック部132は、第1支持ブロック部141および第2支持ブロック部142に、第3案内ブロック部133は、連結支持ブロック部143に、第4案内ブロック部134は、第1支持ブロック部141の一端および第2支持ブロック部142の一端に、六角穴付きボルト126で個々に固定されている。
位置決めブロック120の各案内ブロック部131,132,133,134には、六角穴付きボルト126が挿通するばか穴が形成され、これら各案内ブロック部131,132,133,134は、相互に微小間隙を存して対峙し上記の嵌合開口135を構成している。すなわち、第3案内ブロック部133および第4案内ブロック部134間に前後部を挟まれる第1案内ブロック部131および第2案内ブロック部132は、第3案内ブロック部133および第4案内ブロック部134間の対峙距離よりもわずかに小さく形成されている。そして、六角穴付きボルト126の径に比して、ばか穴の径は十分に太径に形成され、各案内ブロック部131,132,133,134は、相互の微小間隔の範囲内で、位置調整可能に構成されている。
これにより、テープカートリッジ20(カートリッジケース21)の製造上の誤差(ロット毎)を吸収して、テープカートリッジ20を適切に位置決めブロック120にセットできるようになっている。したがって、テープカートリッジ20をセット手段111に確実にセットすることができる。
テープカートリッジ20の2個のフック46に対応して、フック解除手段112が2個配設されている。図13に表すように、フック解除手段112は、位置決めブロック120に装着したフック外し駒123と、押出し手段110の下部に固定した駒作動部材124とで構成され、フック外し駒123と駒作動部材124との相互作用により、テープカートリッジ20のフック46による係止を解除する。
フック外し駒123は、角柱状に形成した駒本体150と、駒本体150の先端部に形成した楔形の楔形部151と、駒本体150の尾端部に設けられ駒作動部材124に係合する案内ピン152とを有している(図17、図18参照)。案内ピン152は、駒本体150の尾端部を水平に貫通し、駒本体150から突出した両突出部位が後述するカムスリット163(傾面カム)に係合するようになっている。フック外し駒123は、セット手段111にセットされたテープカートリッジ20のフック46を押圧してこれを係止解除する解除位置と解除位置から後方に退避する退避位置との間で、摺動溝136に進退自在に装着されている。
各駒作動部材124は、図12、図13および図17に表すように、押出しプレート116の下部に下向きに取り付けられ、固定部材160と固定部材160から下垂した部材本体161とでL字形に一体に形成されている。部材本体161は、前後中間部にフック外し駒123を上下方向に摺動自在に挟み込む案内溝162を有して二股に形成され、かつ左右中間部に案内溝162と断面十字状に交差すると共に、フック外し駒123を進退させるためのカムスリット163が形成されている。
カムスリット163は、上方から下方に対し鉛直方向に延び、その中間位置で傾斜して、さらに下端まで延びている。そして、このカムスリット163には、上記のフック外し駒123の案内ピン152が係合している。すなわち、駒作動部材124のカムスリット163とフック外し駒123との案内ピン152とは、駒作動部材124の上下動をフック外し駒123の横方向の進退動に変換するカム機構129の動作変更機構を構成している。
図12の仮想線で表すように、操作レバー96の下方向への回動操作により、押出し手段110が下降すると共に、押出し手段110に連結した駒作動部材124が下降することで、カム作用により、フック外し駒123は、横方向内側に水平に進動し、セット手段111に保持されたテープカートリッジ20のフック係止部61に楔形部151が当接し、フック46のフック受け部56に対する係止状態を解除可能にするようになっている。
なお、フック外し駒123が必要以上に横方向内側に移動して、フック46を必要以上に押圧してフック46を損傷させないように、駒作動部材124のカムスリット163におけるカム曲線は、その傾斜量とフック46を押圧する力のバランスとが保たれて形成されている。より具体的には、押出しプレート116が下降すると、押出しピン115および駒作動部材124が水平に下降し、フック外し駒123は、カム曲線に従って摺動溝136を横方向内側に摺動していき、フック外し駒123がフック係止部61に当接し、フック46をその背面方向(横方向)に押圧してフック受け部56とフック外れ防止壁70との間隙を広げ、フック受け部56に対するフック46の係止を解除可能な状態とする。
そして、各押出しピン115が、各貫通孔54に圧入している各圧入ピン44を同時に押圧する際に、さらに下降する各押出しピン115に同期して、駒作動部材124も下降することとなるが、この際に、フック外し駒123がさらに摺動して、フック係止部61をさらに押圧しないように、駒作動部材124のカムスリット163は、その中間位置(カム曲線の終了位置)から上方に対し鉛直に延びている。
図18は、フック46による係止とフック外し駒123との関係を表した図である。フック外し駒123は、カム機構129により横方向内側に移動してフック外し駒123の楔形部151がフック係止部61を押圧する。すなわち、楔形部151の駒傾斜面153とフック係止部61のフック傾斜面63とが関わり合い、図18(b)に表すように、フック46には横方向に斜する方向の解除力が作用する。すなわち、フック46には、解除方向の解除力に加え、抜け方向の分力が作用することとなる。
そして、フック46は、フック掛止め面62が受け部掛止め面72を滑動して、フックばね部60がフック外れ防止壁70側にたわみ、フック外れ防止壁70もこれに付勢してその背面側にたわみ、フック外れ防止壁70とフック受け部56との間に空隙が生じ、フック係止部61がフック受け部56とフック外れ防止壁70との間を通過できるようになる。
このように、フック外し駒123の先端に楔形部151を設けることにより、フック46による係止を解除する際に、フック46をその背面側に垂直に(横方向に)押圧するだけでなく、下方向(抜け方向)への解除力も作用させることができる。したがって、フック46に分力を作用させることができるため、フック係止部61のフック受け部56からの係止解除を適切に行うことができると共に、フック係止部61をフック外れ防止壁70とフック受け部56との間に挟入することができる。
したがって、テープカートリッジ分解治具80は、操作レバー96からの力をハンドプレス90によって下方向への力に変換して、セット手段111にセットされたテープカートリッジ20に対し、押出し手段110により下方向への力を作用させると共に、フック解除手段112のカム機構129により下方向への力を横方向の力に変換することができ、さらにフック外し駒123の楔形部151により横方向の力を斜め下方向へと作用させることを一動作で行うことができ、圧入ピン44の圧入解除およびフック46の係止解除を行う。
以上のような構成のテープカートリッジ分解治具80を使用して、テープカートリッジ20を分解する際には、先ずラベルテープ22を剥がす。そして、上ケース40を下側にした状態でセット手段111の位置決めブロック120に外形をガイドさせながら保持ブロック121にテープカートリッジ20をセットして、下ケース50のみを保持した状態とし、ハンドプレス90を下方向に回動操作して、押出し手段110の押出しピン115を下降させてテープカートリッジ20の貫通孔54から圧入ピン44を押し出す。
これにより、各圧入ピン44が、各貫通孔54から押し出されることと同時に、フック46がフック受け部56とフック外れ防止壁70との間をすり抜け、下ケース50は、セット手段111の引掛け部148に保持されて貫通孔54に押出しピン115が挿通した状態となり、上ケース40は、ベースプレート122に落下し、カートリッジケース21は、上ケース40と下ケース50とに分離する。
そして、印刷テープT等を交換して、上ケース40と下ケース50とを再度接合して、ラベルテープ22が上ケース40及び下ケース50の分離履歴を記載した状態でカートリッジケース21に貼着され、再利用された新たなテープカートリッジ20が提供される。
ところで、6個の押出しピン115は、6個の圧入ピン44に同時に当接して押圧するため、カートリッジケース21に大きな曲げ応力を生じさせず、カートリッジケース21を損傷することは無い。
また、押出しピン115が上ケース40の圧入ピン44を押し出す際には、上ケース40に下方向への力が作用するだけでなく、圧入ピン44が貫通孔54に締め代を有して上ケース40と下ケース50とは接合しているため、下ケース50にも下方向への力が作用する。このとき、下ケース50は、テープカートリッジ分解治具80の引掛り部49で依然として保持されることとなるが、この場合に、下ケース50の治具受け部57が他の端面に比べて厚肉に形成されているため、十分な強度を持たせることができ、下周壁部52の端面の損傷を防止することができる。
なお、テープカートリッジ20のヘッド開口23右部に引掛り部49をさらに形成し(図3等において符号の表示は、省略)、またこの引掛り部49に対応して、テープカートリッジ分解治具80のセット手段111の保持ブロック121に引掛け部148をさらに形成してもよい。より具体的には、テープカートリッジ20は、下ケース50のガイド壁59に治具受け部57を形成され、上ケース40の上ヘッド開口43右部に凹部47を形成されて、テープカートリッジ分解治具80にセットされるときに、その中央部にても下ケース50のみが保持されるようにしてもよい。
また、本実施形態に係るテープカートリッジ分解治具80において、セット手段111を押出し手段110に対して上下方向へ移動自在としてもよく、押出し手段110による下方向への押圧動作に併行して、セット手段111を上方向へと移動させてもよい。
1 印刷装置、20 テープカートリッジ、21 カートリッジケース、30 テープ収容部、31 リボン収容部、32 テープアッセンブリ、33 リボンアッセンブリ、36 繰出しコア、37 巻取コア、40 上ケース、44 圧入ピン、45 係合ピン、46 フック、47 凹部、49 引掛り部、50 下ケース、59 ガイド壁、54 貫通孔、55 係合孔、56 フック受け部、57 治具受け部、70 フック外れ防止壁、T 印刷テープ、R インクリボン