JP4556332B2 - 自動車用ホース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車用ホースに関するものであり、詳しくはガソリン燃料ホース、燃料電池車用ホース(メタノール燃料ホース、水素燃料ホース)、エンジン冷却系ホース(ラジエーターホース、ヒーターホース等)、クーラー用冷媒輸送ホース等の自動車用ホース(以下、単に「ホース」と略す場合もある。)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ガソリン燃料ホース等の自動車用ホースとしては、低コスト化のため、例えば、ポリアミド樹脂層(内層)の外周面にエチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)層(中間層)が形成され、さらにその外周面にエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)を基材とするゴム層(外層)が形成されたホースが用いられている。なお、EVOH層(中間層)とゴム層(外層)の界面には接着剤が塗布されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のホースは、EVOH層(中間層)の外周面に接着剤を塗布し、その上にゴム層(外層)を形成しているため、接着剤の塗布むら等により、EVOH層とゴム層との接着力が不充分で、シール性に劣るという問題がある。また、接着剤の塗布工程が必要であるため、製造工程が複雑でコストも高くなるとともに、接着剤のポットライフの心配や濃度管理等が必要になり、安定生産性に劣るという問題もある。さらには、接着剤の希釈溶媒としてトルエン等の有機溶媒を使用するため、環境汚染等の問題もある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、EVOH層とゴム層との界面に接着剤を塗布することなく、EVOH層とゴム層との接着性に優れたホースの提供をその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の自動車用ホースは、下記の(A)〜(D)を必須成分とするゴム組成物からなるゴム層と、エチレン−ビニルアルコールコポリマーによって形成された層との積層構造を有するという構成をとる。
(A)エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体およびエチレン−プロピレン共重合体の少なくとも一方からなるゴム。
(B)過酸化物加硫剤。
(C)下記の一般式(1)、一般式(2)および一般式(3)からなる群から選ばれた少なくとも一つの変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂。
【化5】
【化6】
【化7】
(D)下記の一般式(4)で表されるホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物。
【化8】
【0006】
すなわち、本発明者らは、EVOH層とゴム層との界面に接着剤を塗布することなく、EVOH層とゴム層との接着性に優れたホースを得るべく鋭意研究を重ねた。そして、ゴム層用材料であるゴム組成物中に接着剤成分を練り込むことを想起し、接着性に優れたゴムと接着剤成分との組み合わせについて研究開発を続けた結果、ゴム材料の中でも比較的コストが安いEPDMおよびエチレン−プロピレン共重合体(以下「EPM」と略す)に着目し、これに特定の接着剤成分(特定の変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂と、特定のホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物)を練り込み、これを過酸化物加硫剤を用いて加硫すると、EVOH層との優れた接着力が得られることを見いだし、本発明に到達した。なお、特殊なゴム組成物からなるゴム層が、EVOH層との優れた接着力を有する理由は、以下のように推測される。上記特定の変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂は主に接着剤として作用するとともに、上記特定のホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物は主に接着助剤として作用し、上記特定の変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂が、特定のホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物からCH2Oを供与され、これがEVOHと共有結合することにより、接着力が向上するものと思われる。例えば、下記の一般式(C)で表される構造を有する変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂が、ホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物からCH2Oを供与され、下記の一般式(C′)で表される構造となり、これがEVOHと共有結合して強固に接着するものと思われる。
【0007】
【化9】
【0008】
【化10】
【0009】
また、上記特定の変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(C)と、特定のホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(D)との配合比を、所定の範囲に設定すると、ゴム層とEVOH層との接着力が向上する。
【0010】
さらに、特定の変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(C)の特定のゴム(A)に対する配合割合を所定の範囲に設定すると、ゴム層とEVOH層との接着力が向上する。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0012】
本発明のホースとしては、例えば、図1に示すように、ポリアミド樹脂層1の外周面にEVOH層2が形成され、さらにこのEVOH層2の外周面に特殊なゴム組成物からなるゴム層3が形成されたホースがあげられる。このような構成のホースは、ガソリン燃料ホース等の自動車用ホースとして好適に用いられる。
【0013】
上記ポリアミド樹脂層1用材料であるポリアミド樹脂としては、脂肪族系、芳香族系等特に限定するものではなく、例えば、ラクタムの重合物、ジアミンとジカルボン酸の縮合物、アミノ酸の重合物、これらの共重合体およびブレンド物等があげられる。具体的には、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6とナイロン66との共重合体またはこれら2種類以上のブレンド体等が好適に用いられる。
【0014】
上記EVOH層2用材料であるEVOHとしては、特に限定はないが、通常、ASTM D 1238、190℃、2.16kgにおけるメルトフローレート〔MFR〕(日本名称:メルトインデックス)が1〜10g/10分、好ましくは1〜6g/10分の範囲のものが用いられる。
【0015】
上記ゴム層3用材料である特殊なゴム組成物は、特定のゴム(A成分)と、過酸化物加硫剤(B成分)と、特定の変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(C成分)と、特定のホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(D成分)とを用いて得ることができる。
【0016】
上記特定のゴム(A成分)としては、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)およびエチレン−プロピレン共重合体(EPM)の少なくとも一方が用いられる。上記EPDMは、ゴム組成物の基材として用いられるものであれば特に限定するものではないが、ヨウ素価が6〜30の範囲、エチレン比率が48〜70重量%の範囲のものが好ましく、特に好ましくはヨウ素価が10〜24の範囲、エチレン比率が50〜60重量%の範囲のものである。
【0017】
上記EPDMに含まれるジエン系モノマー(第3成分)としては、特に限定はないが、炭素数5〜20のジエン系モノマーが好ましく、具体的には、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン(DCP)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン等があげられる。これらジエン系モノマー(第3成分)のなかでも、ジシクロペンタジエン(DCP)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が好ましい。
【0018】
上記特定のゴム(A成分)とともに用いられる過酸化物加硫剤(B成分)としては、例えば、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルペルオキシヘキサン、n−ブチル−4,4′−ジ−t−ブチルペルオキシバレレート、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキシン−3等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、臭気が問題ない点で、ジ−t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼンが好適に用いられる。
【0019】
上記過酸化物加硫剤(B成分)の配合割合は、上記特定のゴム(A成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して、1.5〜20部の範囲が好ましい。すなわち、B成分が1.5部未満であると、架橋が不充分で、ホースの強度に劣り、逆にB成分が20部を超えると、硬くなりすぎ、ホースの柔軟性に劣る傾向がみられるからである。
【0020】
上記A成分およびB成分とともに用いられる特定の変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(C成分)としては、主に接着剤として作用し、蒸散性、吸湿性、ゴムとの相溶性に優れる点で、下記の一般式(1)〜(3)で表されるものが用いられる。このなかでも、下記の一般式(1)で表されるものが特に好ましい。
【0021】
【化11】
【0022】
【化12】
【0023】
【化13】
【0024】
上記C成分の配合割合は、上記特定のゴム(A成分)100部に対して、0.1〜10部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜5部である。すなわち、C成分が0.1部未満であると、EVOH層との接着性に劣り、逆にC成分が10部を超えると、コストアップにつながるからである。
【0025】
上記A〜C成分とともに用いられる特定のホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(D成分)としては、主に接着助剤として作用し、蒸散性、吸湿性、ゴムとの相溶性に優れる点で、下記の一般式(4)で表されるものが用いられる。
【0026】
【化14】
【0027】
そして、上記D成分のなかでも、上記一般式(4)で表される化合物の混合物が好ましく、n=1の化合物が43〜44重量%、n=2の化合物が27〜30重量%、n=3の化合物が26〜30重量%の混合物が特に好ましい。
【0028】
また、上記C成分と、D成分との配合比は、重量比で、C成分/D成分=1/0.5〜1/2の範囲が好ましく、特に好ましくはC成分/D成分=1/0.77〜1/1.5である。すなわち、D成分の重量比が0.5未満であると、ゴム層の引張強さ(TB)や伸び(EB)等が若干悪くなる傾向がみられ、逆にD成分の重量比が2を超えると、接着性が飽和し接着力が安定するため、それ以上D成分の重量比を高くしても、コストアップにつながるのみで、それ以上の効果は期待できないからである。
【0029】
なお、上記特殊なゴム組成物には、上記A〜D成分に加えて、カーボンブラック、プロセスオイル等を配合することが好ましい。
【0030】
また、上記特殊なゴム組成物には、上記各成分に加えて、老化防止剤、加工助剤、架橋促進剤、白色充填剤、反応性モノマー、発泡剤等を必要に応じて適宜配合しても差し支えない。
【0031】
上記特殊なゴム組成物は、上記A〜D成分および必要に応じてその他の成分を配合し、これをロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより調製することができる。
【0032】
そして、前記図1に示したホースは、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、ポリアミド樹脂とEVOHとを共押し出し成形してポリアミド樹脂層1の外周面にEVOH層2を形成する。続いて、上記特殊なゴム組成物を押し出し成形した後、加硫を行いゴム層3を形成することにより、目的とするホースを製造することができる。
【0033】
なお、前記図1に示したホースは、上記の製法に限定されるものではなく、ポリアミド樹脂からなるポリアミド樹脂層1と、EVOH層2と、特殊なゴム組成物からなるゴム層3を共押し出し成形することも可能である。
【0034】
このようにして得られるホース各層の厚みは、ホースの用途にもより異なるが、ポリアミド樹脂層1の厚みは、通常、0.1〜1.5mmであり、好ましくは0.3〜1.0mmであり、EVOH層2の厚みは、通常、0.1〜1.0mmであり、好ましくは0.2〜0.7mmであり、ゴム層3の厚みは、通常、0.5〜4.0mmであり、好ましくは1.0〜3.0mmである。また、ホースの内径は、用途によって異なるが、通常、2〜60mmであり、好ましくは4〜50mmである。
【0035】
本発明のホースは、前記図1に示したような、ポリアミド樹脂層1とEVOH層2とゴム層3の3層構造に限定されるものではなく、EVOH層とゴム層の積層構造を有するものであれば、どのような構成であっても差し支えない。例えば、図2に示すように、ポリオレフィン系樹脂層21の外周面に接着層22が形成され、上記接着層22の外周面にEVOH層2が形成され、さらに上記EVOH層2の外周面にゴム層3が形成されたホースがあげられる。
【0036】
上記ポリオレフィン系樹脂層21用材料としては、特に限定はなく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリブテン等があげられる。これらのなかでも、耐熱性の点で、ポリプロピレンが好適に用いられる。
【0037】
また、上記接着層22用材料としては、特に限定はなく、例えば、酸変性ポリプロピレン、酸変性ポリエチレン、アミン変性ポリプロピレン、アミン変性ポリエチレン、シラン変性ポリプロピレン、シラン変性ポリエチレン等の変性物や接着させる基材のブレンド物等があげられる。
【0038】
そして、上記図2に示したホースは、例えば、ポリオレフィン系樹脂層21用材料と接着層22用材料とEVOHとを三層共押し出し成形して、ポリオレフィン系樹脂層21の外周面に接着層22が形成され、上記接着層22の外周面にEVOH層2が形成されてなるホースを作製する。続いて、上記特殊なゴム組成物を押し出し成形した後、加硫を行いゴム層3を形成することにより、目的とするホースを製造することができる。
【0039】
また、本発明のホースのさらに他の例としては、例えば、図3に示すように、前記図2に示したホースのゴム層3の外周面に補強層31が形成され、さらにその外周面に汎用ゴム層32が形成されたホースがあげられる。
【0040】
上記補強層31用材料としては、例えば、ビニロン糸、ポリアミド糸(ナイロン)糸、アラミド糸、ポリエチレンテレフタレート(PET)糸、ワイヤー等があげられる。
【0041】
上記汎用ゴム層32用材料としては、例えば、EPDM、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Cl−IIR,Br−IIR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム、クロロプレンゴム(CR)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、フッ素ゴム等の汎用ゴムがあげられる。これらのなかでも、比較的安価である点で、EPDMが好適に用いられる。
【0042】
そして、上記図3に示したホースは、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、前記図2と同様にして、ポリオレフィン系樹脂層21の外周面に接着層22が形成され、上記接着層22の外周面にEVOH層2が形成され、さらに上記EVOH層2の外周面にゴム層3が形成されてなるホースを作製する。つぎに、上記ゴム層3の外周面にビニロン糸等を編み組みして補強層31を形成する。続いて、上記補強層31の外周面にEPDM等の汎用ゴムを押し出し成形した後、加硫を行い汎用ゴム層32を形成することにより、目的とするホースを製造することができる。
【0043】
本発明のホースは、各層の構成を適宜選択することにより、ガソリン燃料ホース、燃料電池車用ホース(メタノール燃料ホース、水素燃料ホース)、自動車等の車両におけるエンジンとラジエータとの接続に用いられるラジエーターホースやエンジンとヒーターコアとの接続に用いられるヒーターホース等のエンジン冷却系ホース、クーラー用冷媒輸送ホースとして好適に用いることができる。なお、EPDMは耐ガソリン性に劣るため、ガソリン燃料ホースとして使用する場合は、特殊なゴム組成物からなるゴム層は内層以外の層(例えば、外層)として用いることが望ましい。
【0044】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0045】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示すゴム組成物を調製した。
【0046】
〔ゴム組成物A〕
特定のゴム(A成分)として、EPDM(住友化学工業社製、エスプレン501A)〔ヨウ素価:12、エチレン比率:50重量%、ムーニー粘度(ML1+4 100℃):43〕100部と、カーボンブラック(東海カーボン社製、シーストSO)100部と、プロセスオイル(出光興産社製、ダイアナプロセスPW−380)60部と、過酸化物加硫剤(B成分)としてジ−t−ブチルペルオキシ−ジイソプロピルベンゼン(日本油脂社製、ペロキシモンF−40)4.2部と、C成分として前記一般式(1)で表される変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(住友化学工業社製、スミカノール620)1部と、D成分としてホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(住友化学工業社製、スミカノール507A)0.77部とを配合し、ロールを用いて混練して、ゴム組成物を調製した。
【0047】
〔ゴム組成物B〕
スミカノール620の配合割合を5部に、スミカノール507Aの配合割合を3.85部にそれぞれ変更した。それ以外は、ゴム組成物Aと同様にして、ゴム組成物を調製した。
【0048】
〔ゴム組成物C〕
スミカノール620の配合割合を10部に、スミカノール507Aの配合割合を3.85部にそれぞれ変更した。それ以外は、ゴム組成物Aと同様にして、ゴム組成物を調製した。
【0049】
〔ゴム組成物D〕
スミカノール507Aの配合割合を0.5部に変更する以外は、ゴム組成物Aと同様にして、ゴム組成物を調製した。
【0050】
〔ゴム組成物E〕
スミカノール507Aの配合割合を2部に変更する以外は、ゴム組成物Aと同様にして、ゴム組成物を調製した。
【0051】
〔ゴム組成物F〕
スミカノール620の配合割合を0.1部に、スミカノール507Aの配合割合を0.05部にそれぞれ変更した。それ以外は、ゴム組成物Aと同様にして、ゴム組成物を調製した。
【0052】
〔ゴム組成物G〕
EPDM(住友化学工業社製、エスプレン501A)に代えて、EPM(住友化学工業社製、エスプレン201)を用いる以外は、ゴム組成物Aと同様にして、ゴム組成物を調製した。
【0053】
〔ゴム組成物a〕
スミカノール620およびスミカノール507Aをいずれも配合しなかった。それ以外は、ゴム組成物Aと同様にして、ゴム組成物を調製した。
【0054】
〔ゴム組成物b〕
スミカノール507Aを配合しない以外は、ゴム組成物Aと同様にして、ゴム組成物を調製した。
【0055】
〔ゴム組成物c〕
スミカノール620を配合しないとともに、スミカノール507Aの配合割合を1部に変更した。それ以外は、ゴム組成物Aと同様にして、ゴム組成物を調製した。
【0056】
〔ゴム組成物d〕
過酸化物加硫剤(B成分)4.2部に代えて、加硫促進剤であるテトラメチルチウラムジスルフィド(三新化学社製、サンセラーTT)0.75部と、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(三新化学社製、サンセラーPZ)0.75部と、メルカプトベンゾチアゾール(三新化学社製、サンセラーM)0.5部と、硫黄(加硫剤)1.5部とを配合した。それ以外は、ゴム組成物Aと同様にして、ゴム組成物を調製した。
【0057】
つぎに、上記ゴム組成物を用いて、以下のようにしてホースを製造した。
【0058】
【実施例1】
まず、ポリアミド6を押し出し成形してポリアミド樹脂層(内径6mm、厚み0.8mm)を形成した。つぎに、EVOH(クラレ社製、エバールEP−F101、MFR=1.3g/10分)を上記ポリアミド樹脂層上に押し出し成形して、EVOH層(厚み0.2mm)を形成した。ついで、その表面にゴム組成物Aを押し出し成形し、160℃で45分間加硫してゴム層(厚み2mm)を形成することにより、目的とするホース(図1参照)を製造した。
【0059】
【実施例2〜7、比較例1〜5】
外層用材料であるゴム組成物を、後記の表1および表2に示すゴム組成物に変更する以外は、実施例1と同様にして、ホースを製造した。なお、比較例2については、EVOH層の表面に接着剤(ゴム系接着剤)を塗布した後、ゴム層を形成した。
【0060】
【実施例8】
まず、ポリオレフィン系樹脂層用材料であるポリプロピレン(住友化学工業社製、ノーブレン)と、接着層用材料である酸変性ポリプロピレン(三井化学社製、アドマーQF500)と、EVOH(クラレ社製、エバールEP−F101、MFR=1.3g/10分)とを三層共押し出し成形して、ポリオレフィン系樹脂層(内径25mm、厚み0.5mm)の外周面に接着層(厚み0.1mm)が形成され、上記接着層の外周面にEVOH層(厚み0.5mm)が形成されてなるホースを作製した。ついで、その表面にゴム組成物Aを押し出し成形し、150℃で60分間加硫してゴム層(厚み4mm)を形成することにより、目的とするホース(図2参照)を製造した。
【0061】
【実施例9】
実施例8と同様にして、ポリオレフィン系樹脂層(内径25mm、厚み0.5mm)の外周面に接着層(厚み0.1mm)が形成され、上記接着層の外周面にEVOH層(厚み0.5mm)が形成され、さらに上記EVOH層の外周面にゴム層(厚み4mm)が形成されてなるホース(図2参照)を製造した。つぎに、上記ゴム層の外周面に太さ1670dtexのビニロン糸(クラレ社製、ビニロン♯7903)を編み組みして補強層を形成した。ついで、その表面にEPDM(住友化学工業社製、エスプレン501A)を押し出し成形し、150℃で60分間加硫して汎用ゴム層(厚み2mm)を形成することにより、目的とするホース(図3参照)を製造した。
【0062】
このようにして得られた実施例品および比較例品のホースを用いて、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表1および表2に併せて示した。なお、ゴム組成物の引張強さ(TB)、伸び(EB)も併せて示した。
【0063】
〔引張強さ(TB)、伸び(EB)〕
上記ゴム組成物を160℃で45分間プレス加硫して、厚み2mmの加硫ゴムシートを作製した。ついで、JIS 5号ダンベルを打ち抜き、JIS K 6301に準じて、引張強さ(TB)および伸び(EB)を評価した。なお、引張強さ(TB)および伸び(EB)については、値が大きい程良好である。
【0064】
〔接着性〕
上記ホースから接着評価用試料(幅20mm、長さ100mm)を切り出し、これを引張試験機(JIS B 7721)に取り付けて、ゴム層側を固定してEVOH層側を毎分50mmの速度で引張り、接着力(kg/25mm)を評価した。また、その際にゴム層とEVOH層の剥離状態も目視により観察し、ゴム層が破壊したものを○、界面が剥離したものを×として評価した。
【0065】
〔総合評価〕
ゴム層とEVOH層との界面への接着剤の塗布が不要で、かつ、ゴム層とEVOH層との接着力に優れるものを○、ゴム層とEVOH層との界面に接着剤を塗布したにもかかわらず、ゴム層とEVOH層との接着力に劣るもの、あるいはゴム層とEVOH層との界面への接着剤の塗布が不要であるがゴム層とEVOH層との接着力に劣るものを×として、総合評価した。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
上記結果から、全実施例品のホースは、特定の変性レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂(C成分)と、特定のホルムアルデヒド・メラミン重合物のメチル化物(D成分)とを併用してなる特殊なゴム組成物を用いているため、ゴム層とEVOH層との接着力が極めて高いことがわかる。なお、実施例8品および9品のホースは、実施例1品と同様の結果であった。
【0069】
これに対して、比較例1品のホースは、接着剤成分を含有しないゴム組成物aを用いているため、接着力が極めて低いことがわかる。比較例2品のホースは、EVOH層とゴム層の界面に接着剤を塗布しているが、実施例品のホースに比べて、接着力が低く、界面剥離が生じることがわかる。比較例3品のホースは、C成分のみを配合し、D成分を配合していないゴム組成物bを用いているため、接着力が低く、界面剥離が生じることがわかる。比較例4品のホースは、D成分のみを配合し、C成分を配合していないゴム組成物cを用いているため、接着力が低く、界面剥離が生じることがわかる。比較例5品のホースは、接着剤成分を含有しているが、過酸化物加硫剤ではなく硫黄系加硫剤を含有するゴム組成物を用いているため、接着力が低く、界面剥離が生じることがわかる。この理由は、硫黄系加硫剤は過酸化物加硫剤に比べて加硫速度が速く、EVOH層と接着する前にゴム層自身が加硫するため、接着力に劣るものと推測される。
【0070】
【発明の効果】
以上のように、本発明のホースは、特殊なゴム組成物からなるゴム層と、EVOH層との積層構造を有し、ゴム層自身が接着性を備えるため、ゴム層とEVOH層の界面に接着剤を塗布しなくても、ゴム層とEVOH層との接着性に優れている。また、接着剤の塗布工程が不要(いわゆる接着剤レス)であるため、接着剤のポットライフの心配や濃度管理等も不要で、安定生産性に優れるとともに、接着剤の希釈溶媒である有機溶媒を使用することもないため、環境汚染等の問題もない。さらに、従来の硫黄加硫系ではなく、過酸化物加硫剤を用いて加硫するものであるため、酸化亜鉛の配合を不要化(亜鉛フリー化)することができ、例えば、ゴム層をホース内層として用いた場合でも、ホース目詰まりやシール部での液洩れ等のホース不具合を解消することができる。
【0071】
そして、上記(C)と(D)との配合比を、所定の範囲に設定すると、ゴム層とEVOH層との接着力が向上する。
【0072】
さらに、上記(C)の特定のゴム(A)に対する配合割合を所定の範囲に設定すると、ゴム層とEVOH層との接着力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のホースの一例を示す断面斜視図である。
【図2】 本発明のホースの他の例を示す斜視図である。
【図3】 本発明のホースのさらに他の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 ポリアミド樹脂層
2 EVOH層
3 ゴム層
Claims (7)
- 上記(C)と(D)との重量混合比が、(C)/(D)=1/0.5〜1/2の範囲に設定されている請求項1記載の自動車用ホース。
- 上記(C)の配合割合が、上記(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲に設定されている請求項1または2記載の自動車用ホース。
- 上記(D)が、上記一般式(4)で表される化合物の混合物であり、各化合物の混合割合が、n=1の化合物が43〜44重量%、n=2の化合物が27〜30重量%、n=3の化合物が26〜30重量%の範囲である請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車用ホース。
- ポリオレフィン系樹脂層の外周面に接着層が形成され、上記接着層の外周面に、上記エチレン−ビニルアルコールコポリマーによって形成された層が形成され、さらにその外周面に、上記(A)〜(D)を必須成分とするゴム組成物からなるゴム層が形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動車用ホース。
- ポリオレフィン系樹脂層の外周面に接着層が形成され、上記接着層の外周面に、上記エチレン−ビニルアルコールコポリマーによって形成された層が形成され、さらにその外周面に、上記(A)〜(D)を必須成分とするゴム組成物からなるゴム層が形成され、さらにその外周面に補強層が形成され、さらにその外周面にゴム層が形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動車用ホース。
- 上記自動車用ホースが、ガソリン燃料ホース、燃料電池車用ホース、エンジン冷却系ホースまたはクーラー用冷媒輸送ホースである請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動車用ホース。
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