JP4554820B2 - 合成樹脂用添加剤及び合成樹脂組成物 - Google Patents

合成樹脂用添加剤及び合成樹脂組成物 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、合成樹脂用添加剤及び該添加剤を配合してなる合成樹脂組成物に関し、更に詳しくは、低い熱減量率と良好な分散性を有する合成樹脂用添加剤、及び該添加剤を配合してなる、劣化が極めて少なく、黄変等の変色がない優れた外観を有し、例えば合成樹脂フィルムにおいては、優れたブロッキング防止性能と透明性を有し、また合成繊維においては、優れた染色性を有する合成樹脂組成物に関する。
背景技術
合成樹脂は各種工業用途に広く利用されている。中でも工業的に製造されているポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)は優れた物理的、化学的特性を有しており、繊維、フィルム、その他の成形品として広く使用されている。例えばフィルム分野においては、オーディオテープ、ビデオテープ等の磁気テープ、コンデンサー用、写真用、包装用、OHP用、プリペイドカード用等に用いられている。
ポリエステルフィルムにおいては、その滑り性や耐削れ性がフィルムの製造工程及び各用途における加工工程の作業性の良否、さらにはその製品品質の良否を左右する大きな要因となっている。これら滑り性や耐削れ性が不十分な場合、例えばポリエステルフィルム表面に磁性層を塗布し、磁気テープとして用いる場合には、磁性層塗布時におけるコーティングロールとフィルム表面との摩擦が激しく、また、これによるフィルム表面の摩耗も激しく、極端な場合はフィルム表面へのしわ、擦傷等が発生する。また磁性層塗布後のフィルムをスリットしてオーディオ,ビデオ,またはコンピューター用テープ等に加工した後でも、リールやカセット等からの引出し、巻き上げその他の操作の際に、多くのガイド部、再生ヘッド等との間で摩耗が著しく生じ、擦傷、歪の発生、さらにはポリエステルフィルム表面の削れ等による白粉状物質を析出させる結果、磁気記録信号の欠落、即ちドロップアウトの大きな原因となることが多い。
従来、ポリエステルの摩擦係数を低下させる方法としては、ポリエステル中に無機微粒子を含有せしめ、成形品の表面に微細で適度な凹凸を与えて成形品の表面滑性を向上させる方法が数多く提案されているが、微粒子とポリエステルとの親和性が充分でなく、フィルムの透明性、耐摩耗性がいづれも満足すべきものではなかった。
また、ポリオレフィンを例示した場合、各種用途の工業製品として広く利用されており、特にポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムは各種の包装用材料として最も汎用されているものである。
この種のポリオレフィンフィルムは周知のように粘着性があるためブロッキングを起こし易く、そのためにフィルムの製造及び更にその高次加工における作業性を損なうのみならず、他方、そのフィルムを使用して例えば梱包や包装する場合には袋の口開き不良などのトラブルを生じ易い。従って、通常この種のフィルムは耐ブロッキング処理がなされており、ブロッキング防止剤としては微粉末珪酸、ゼオライト、炭酸カルシウム、あるいはカオリンクレーが代表的に知られ、かつ使用されている。
一方、ポリオレフィンフィルムの品質特性として透明性の優れていること、及び良好な耐スクラッチ性(例えば、フィルム相互の接触によるフィルム表面の傷付きにくさ)が要求されるが、この透明性、耐スクラッチ性、耐ブロッキング性とは相矛盾する品質特性であり、ポリオレフィンフィルムの耐ブロッキング性を良好化せしめるために多量のブロッキング防止剤を使用した場合、使用量の増加にともないポリオレフィンフィルムの耐スクラッチ性及び透明性が低下するという関係にあって、これら耐ブロッキング性、耐スクラッチ性及び透明性を共に効果的に満足しうるための改質用添加剤としては、従来の無機粉末はいずれも欠点があった。
例えば、従来から使用されているカオリンクレーは、粒子形状が板状構造を有しているため、ポリオレフィンフィルムのブロッキング防止剤として使用して、ポリオレフィンフィルム表面に充分な凹凸を形成することが出来ないため、多量に使用しないと良好な耐ブロッキング性を得ることが出来ず、その結果、透明性において不十分なポリオレフィンフィルムしか得られなかった。
同様に、微粉末珪酸を用いた場合、その基本粒子が極めて微小であるため、透明性及び耐スクラッチ性の観点からは良好なポリオレフィンフィルムが得られるものの、多量に使用してもポリオレフィンフィルム表面に充分な凹凸を形成することが出来ないため、ブロッキング防止機能の観点からは充分なポリオレフィンフィルムが得られなかった。
また、ゼオライト粉末を用いた場合、カオリンクレー,微粉末珪酸と比較し、比較的良好な透明性,耐ブロッキング性を有するポリオレフィンフィルムが得られるものの、耐スクラッチ性において良好なフィルムを得ることができず、さらにゼオライトは周知のように結晶水を有するために、合成樹脂の成形,フィルム化の際の加熱条件において、結晶水の離脱に伴う発泡現象がしばしば生じて欠陥商品を与えることがある。この欠陥はゼオライトを加熱処理していわゆるゼオライト水を除いて無水の活性化ゼオライトにした場合でも、この水は容易に再吸着してしまうので、実質的には、フィルム化工程における際に水の影響を除くことは不可能であった。
さらに又、炭酸カルシウムを使用した場合、炭酸カルシウムには結晶水が無いため結晶水の離脱に伴う発泡現象は皆無であるものの、炭酸カルシウムは元来凝集力が強く一次粒子が多数凝集した二次粗大粒子を形成しやすいため、良好な耐ブロッキング性、透明性及び耐スクラッチ性を共に具備するポリオレフィンフィルム用のブロッキング防止剤として改善すべき問題点があった。
また合成樹脂繊維においては、特に染色が困難であるポリエステル繊維の染色性改良を目的として、繊維表面に凹凸を形成させる検討が行われているが、染色性を重視すると繊維自体の強度が低下し、ポリエステル繊維本来の優れた物性を損なってしまうという問題があった。
発明の開示
本発明者等は、上記実情に鑑み、国際公開番号WO97/03119号及び国際公開番号WO98/29490号において、ポリエステル、ポリオレフィンに代表される合成樹脂、特にそのフィルム、繊維等に良好な耐ブロッキング性、耐スクラッチ性と良好な透明性を付与し、且つ合成樹脂との親和性が良好な合成樹脂添加剤と、該添加剤を配合する合成樹脂組成物に関し、特定の粒子組成、特定の粒子径と分散度、特定の比表面積内容を有する粒子が所期の目的の合成樹脂添加剤としての機能を有していること、さらに該合成樹脂添加剤を配合してなる合成樹脂組成物が所期の目的を具備するものであることを見いだした。
しかしながら、国際公開番号WO97/03119号及び国際公開番号WO98/29490号の粒子は、耐ブロッキング性、耐スクラッチ性と良好な透明性と共に、美しい外観を求められる合成樹脂組成物においては、熱減量が原因となり合成樹脂が劣化することから、黄変等の変色の問題を惹き起こす場合があり、使用を限定される場合があった。
本発明は、さらに鋭意研究の結果、国際公開番号WO97/03119号及び国際公開番号WO98/29490号の粒子に、さらにリン酸カルシウム化合物を担持させることにより、熱減量率を低く抑えることができ、合成樹脂の劣化が極めて少なく、黄変等の変色がない優れた外観を有し、また高い分散性を有するため、例えば合成樹脂フィルムにおいては、変色することなく、優れたブロッキング防止性能と、透明性を有し、また合成繊維においては、優れた紡糸性と、染色性を有する合成樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち本発明の第1は、花弁状多孔質構造を有する担体粒子(M)にリン酸カルシウム系化合物(R)を担持せしめてなり、下記の式(a)〜(h)を満足する複合体(MR)からなることを特徴とする合成樹脂用添加剤を内容とする。(a)0.1≦Dmr≦20(μm)
(b)1≦Dmr/Dm≦5
(c)0.5≦Tmr1≦5(重量%)
(d)0.01≦Tmr1/Tm1<1
(e)0.3≦Tmr2≦3(重量%)
(f)0.01≦Tmr2/Tm2<1
(g)1≦αmr≦5 但し、α=dmr50/Dmr
(h)0≦βmr≦2 但し、β=(dmr90−dmr10)/dmr50
但し、
Dmr:走査型電子顕微鏡(SEM)写真により測定した複合体(MR
)の平均粒子径(μm)
Dm:走査型電子顕微鏡(SEM)写真により測定した担体粒子(M)
の平均粒子径(μm)
Tmr1:複合体(MR)の500℃における熱減量率(重量%)
Tm1:担体粒子(M)の500℃における熱減量率(重量%)
Tmr2:複合体(MR)の200℃における熱減量率(重量%)
Tm2:担体粒子(M)の200℃における熱減量率(重量%)
αmr:複合体(MR)の分散係数
dm50:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定し
た担体粒子(M)の50%平均粒子径(μm)
dmr50:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定
した複合体(MR)の50%平均粒子径(μm)
βmr:複合体(MR)のシャープネス
dm90:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定し
た担体粒子(M)のふるい通過側累計90%粒子径(μm)
dmr90:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定
した複合体(MR)のふるい通過側累計90%粒子径(μ
m)
dm10:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定し
た担体粒子(M)のふるい通過側累計10%粒子径(μm)
dmr10:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定
した複合体(MR)のふるい通過側累計10%粒子径(μ
m)
本発明の第2は、上記合成樹脂用添加剤を配合してなることを特徴とする合成樹脂組成物を内容とする。
発明を実施するための最良の形態
本発明の合成樹脂用添加剤の最も重要な特徴は、花弁状多孔質構造を有する粒子(M)を担体とし、該担体にリン酸カルシウム系化合物(R)を担持せしめた複合体であって、特定の形態と熱減量率を有することを特徴とする合成樹脂用添加剤であることにある。
但し、本発明でいう担持とは、リン酸カルシウム系化合物(R)の微粒子が担体粒子(M)に吸着するか、又は、沈着析出化して結晶層を形成することを意味する。
本発明の合成樹脂用添加剤を構成する花弁状多孔質構造を有する担体粒子(M)は、例えば国際公開番号WO97/03119号又は国際公開番号WO98/29490号に記載された粒子であり、特定の形態と優れた分散性等を有する粒子である。該粒子は、合成樹脂フィルムに使用された場合、優れた耐スクラッチ性、耐ブロッキング性、透明性を付与する。本発明の合成樹脂用添加剤は、該粒子表面に該粒子の持つ特定の形態と、合成樹脂組成物に有効な特徴を維持したまま、リン酸カルシウム系化合物を該粒子表面に担持せしめた複合体で、かかる複合体とすることにより、熱減量率を低く抑えることが可能となり、合成樹脂の劣化、変色の問題の解消が可能となる。
国際公開番号WO97/03119号及び国際公開番号WO98/29490号の粒子は、下記のような特徴を有するものである。
(国際公開番号WO97/03119号の粒子)
粒子表面が、化学式Ca(PO(OH)である花弁状多孔質ヒドロキシアパタイトで被覆され、粒子重量に占める該花弁状多孔質ヒドロキシアパタイトの重量割合が5重量%以上であり、且つ下記の式(a)〜(d)を満足する粒子。
(a)0.1≦Dm≦20(μm)
(b)1≦αm≦5 但し α=d50/dm1
(c)0≦βm≦2 但し β=(d90−d10)/d50
(d)40/Dm≦Sm≦400
但し、
Dm:電子顕微鏡写真により測定した粒子の平均粒子径(μm)。
αm:分散係数
d50:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した
粒子の50%平均粒子径(μm)。
βm:シャープネス、粒度分布値で数値が小さいほど粒度の分布がシャ
ープ。
d90:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した
粒子のふるい通過側累計90%粒子径(μm)。
d10:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した
粒子のふるい通過側累計10%粒子径(μm)。
Sm:窒素吸着法によるBET比表面積(m/g)。
(国際公開番号WO98/29490号の粒子)
化学式Ca10(PO(OH)である花弁状多孔質構造を有するヒドロキシアパタイトで、且つ下記の式(a)〜(d)を満足することを特徴とする粒子。
(a)0.1≦Dm≦20(μm)
(b)1≦αm≦2.0 但し α=d50/dm2
(c)0≦βm≦1.7 但し β=(d90−d10)/d50
(d)50≦Sm≦400
但し、
Dm:電子顕微鏡写真により測定した粒子の平均粒子径(μm)
αm:分散係数
d50:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した
粒子の50%平均粒子径(μm)
βm:シャープネス
d90:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した
粒子のふるい通過側累計90%粒子径(μm)
d10:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定した
粒子のふるい通過側累計10%粒子径(μm)
Sm:窒素吸着法によるBET比表面積(m/g)
国際公開番号WO97/03119号及び国際公開番号WO98/29490号の粒子は、下記の反応条件の範囲で調製される。
例えば基体としての炭酸カルシウムの水懸濁液とリン酸の希釈水溶液をCa/Pの原子比率が33.3以下となる割合で水中で下記の混合条件で混合反応させた後、更に下記の熟成条件で熟成してリン酸カルシウム系化合物の水スラリーを得、脱水を行うか又は脱水せずに700℃以下の乾燥雰囲気下で乾燥後、解砕仕上げを行うことにより製造される。
(混合条件)
炭酸カルシウムの水懸濁液固形分濃度 1〜15重量%
燐酸の希釈水溶液濃度 1〜50重量%
混合攪拌羽根の周速 0.5〜50m/秒
混合時間 0.1〜150時間
混合系水懸濁液温度 0〜80℃
混合系の水懸濁液pH 5〜9
(熟成条件)
熟成系のCa濃度 0.4〜5重量%
熟成時間 0.1〜100時間
熟成系水懸濁液温度 20〜80℃
熟成系水懸濁液pH 6〜9
攪拌羽根の周速 0.5〜50m/秒
本発明における、複合体(MR)の一般的な製造方法としては、例えば、国際公開番号WO97/03119号又は国際公開番号WO98/29490号の粒子から選択された粒子を担体粒子(M)とし、この担体(M)の水懸濁液とアルカリ性カルシウム化合物水懸濁液を混合し、水溶性リン酸塩水溶液を滴下混合するか、もしくは担体粒子(M)水懸濁液中に、アルカリ性カルシウム化合物と水溶性リン酸塩水溶液を別々に滴下混合することにより、合成されたリン酸カルシウム系化合物(R)が、担体粒子(M)に担持された複合体(MR)が調製される。
ここで、粒度分布の測定方法を説明すると、合成した直後の水懸濁液を、1分間、超音波(US−300、日本精機製作所製)をかけ、前述した粒度分布計で測定する。この方法によれば、水懸濁液をエチレングリコール懸濁液に変更しても、または乾粉化したものもを水懸濁液にして測定しても、ほぼ同様の測定結果が得られる。
複合体(MR)の好ましい調製条件は、下記のとおりである。
(反応材料の濃度)
担体粒子(M)の水懸濁液固形分濃度:1〜50重量部(水100
(又はアルカリ性カルシウム化合物 重量部当り)
が混在した系の濃度)
水溶性リン酸塩水溶液の濃度:1〜400重量部(水100重量部
当り)
アルカリ性カルシウム化合物水懸濁液の濃度:1〜50重量部(水
100重量部当り)
(混合)
Ca/Pの原子比:1.5〜10
▲1▼反応温度 :20〜97℃
▲2▼滴下時間 :1〜600分
▲3▼リン酸カルシウム系化合物(R)の担持量:1〜10000重量
部〔担体粒子(M)
100重量部当り〕
▲4▼撹拌羽根周速 :0.5〜50(m/秒)
pH :6〜9
(熟成)
▲1▼温度 :20〜97℃
▲2▼pH :8〜10
▲3▼熟成時間 :0.1〜100時間
▲4▼攪拌羽根周速 :0.5〜50(m/秒)
具体的には、担体粒子(M)水懸濁液中に、あらかじめ所定量のアルカリ性カルシウム化合物を添加しておき、水溶性リン酸塩を所定量滴下混合し、リン酸カルシウム系化合物(R)を合成させ、本発明の複合体(MR)を調製する方法、担体粒子(M)水懸濁液中に、水溶性リン酸塩とアルカリ性化合物とを別々に、所定時間で滴下混合し、リン酸カルシウム系化合物を合成し、複合体(MR)を調製する方法等が挙げられる。前者の方は作業性がよく、また後者の方は合成状況を確認しながら調製できる利点がある。
このとき調整される各固形分濃度は特に限定されないが、前者の場合、担体粒子(M)とアルカリ性カルシウム化合物が混在した系の濃度が、水100重量部当たり、50重量部以下が好ましく、50〜1重量部がより好ましく、水溶性リン酸塩の濃度は、水100重量部当たり、400重量部以下が好ましく、400〜1重量部がより好ましい。一方、後者の場合、担体粒子(M)の濃度は、水100重量部当たり、50重量部が好ましく、50〜1重量部がより好ましく、アルカリ性カルシウム化合物の濃度は、水100重量部当たり50重量部以下が好ましく、50〜1重量部がより好ましく、また水溶性リン酸塩の濃度は、水100重量部当たり、400重量部以下が好ましく、400〜1重量部がより好ましい。上記範囲より多くなると、調製される複合体(MR)の分散性に支障をきたしやすい。
また、リン酸カルシウム系化合物(R)の、Ca/P比は、用途によって異なるため、特に限定されないが、通常1.5〜10、好ましくは1.6〜5、より好ましくは1.62〜2である。Ca/P比が1.5未満の場合、未反応のリン酸塩が増え、水洗等に手間がかかり、コスト高になりやすく、一方、10を越えると、炭酸カルシウムと、複合体とが別々に混在しやすく、粒子の均一性や分散性に悪影響を及ぼしやすい。
使用される水溶性リン酸塩としては、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム等が例示できる。これらは、単独で用いても、2種以上併用しても何ら差し支えない。
アルカリ性カルシウム化合物としては、炭酸カルシウムや(水)酸化カルシウムが挙げられ、pHが8〜10の炭酸カルシウムの方が、リン酸カルシウム系化合物(R)の生成速度、又は担体粒子(M)への沈着析出化による結晶層の生成度合いが良好なため使用しやすく、さらにSEMによる平均径が0.01〜5μm、好ましくは0.03〜1μm、さらに好ましくは、0.05〜0.5μmのコロイド状炭酸カルシウムが汎用性があり好適に使用される。
本発明の合成樹脂用添加剤を構成するリン酸カルシウム系化合物(R)は、熱安定性の高いものであれば特に限定されないが、結晶形態として、針状、柱状、板状などの形態をとるものが好適である。また、ヒドロキシアパタイトを主成分であることが好ましい。ヒドロキシアパタイト以外のリン酸カルシウム系化合物が多くなると、粒子の熱安定性が低くなり、本発明の目的とする合成樹脂用添加剤が得られにくい傾向がある。
本発明において、複合体(MR)のDmrは、0.1≦Dmr≦20(μm)であり、好ましくは、0.2≦Dmr≦10(μm)、より好ましくは、0.2≦Dmr≦5(μm)である。Dmrが0.1μm未満の場合、合成樹脂中の分散が容易でないばかりでなく、例えば、合成樹脂フィルム、繊維に使用した場合、十分なブロッキング防止効果が発揮されない。また、Dmrが20μmを越える場合、合成樹脂の透明性を損なうことになるばかりではなく、例えば合成樹脂フィルムに使用した場合、粗大突起の一因となる。
複合体(MR)のDmr/Dmは、1≦Dmr/Dm≦5であり、好ましくは、1≦Dmr/Dm≦2である。Dmr/Dmが1未満の場合、リン酸カルシウム系化合物(R)が担体粒子(M)に完全に担持し複合化せず、新規に粒子を形成し単独で存在するため、合成樹脂中の分散が容易でないばかりでなく、例えば、合成樹脂フィルム、繊維に使用した場合、十分なブロッキング防止効果が発揮されない。また、Dmr/Dmが5を越える場合、担体粒子(M)に担持されたリン酸カルシウム系化合物(R)がバインダーとなって、凝集を起こし、合成樹脂の透明性を損なうことになるばかりではなく、例えば合成樹脂フィルムに使用した場合、粗大突起の一因となる。
複合体(MR)のTmr1及びTmr2は、0.5≦Tmr1≦5(重量%)及び0.3≦Tmr2≦3(重量%)である。より好ましくは、0.5≦Tmr1≦4(重量%)及び0.3≦Tmr2≦2(重量%)である。
Tm1及びTm2がそれぞれ0.5重量%未満、0.3重量%未満の場合、担体粒子(M)の優れた粒度内容や多孔質構造が複合体(MR)に維持されず、例えば合成樹脂フィルムに使用した場合、良好な耐スクラッチ性と透明性が得られない。また、合成繊維に使用した場合、アンティスティック性が低く、良好な紡糸性が得られない。また、Tm1及びTm2がそれぞれ5重量%、3重量%を越える場合、熱減量率が大きく、劣化、変色の少ない合成樹脂組成物が得られない。
複合体(MR)のTmr1と担体粒子(M)のTm1との比、複合体(MR)のTmr2と担体粒子(M)のTm2との比は、それぞれ0.01≦Tmr1/Tm1<1、0.01≦Tmr2/Tm2<1である。Tmr1/Tm1及びTmr2/Tm2が0.01未満の場合、担体粒子(M)の優れた粒度内容や多孔質構造が複合体(MR)に維持されず、例えば合成樹脂フィルムに使用した場合、良好な耐スクラッチ性と透明性が得られない。また、合成繊維に使用した場合、アンティスティック性が低く、良好な紡糸性が得られない。またTmr1/Tm1及びTmr2/Tm2が1以上の場合、複合化しても、担体粒子(M)の熱減量が改善されず、劣化、変色の少ない合成樹脂組成物が得られない。また、Tmr1/Tm1=1及びTmr2/Tm2=1の場合、複合化ではなく、担体粒子(M)を粒子成長させただけに過ぎず、Tmr1/Tm1>1及びTmr2/Tm2>1の場合、複合化の際に担体粒子(M)よりも熱減量の大きいリン酸カルシウム系化合物が生成したと考えられる。
複合体(MR)のαmr及びβmrは、それぞれ1≦αmr≦5、0≦βmr≦2である。好ましくは、1≦αmr≦2、0≦βmr≦1.7、より好ましくは、1≦αmr≦1.5、0≦βmr≦1である。
αmrが5を越える場合、例えば合成樹脂フィルム分野においては、フィルム表面の凹凸の大きさが不均一となり、充分なブロッキング防止効果が得られない。また、αmrが1未満の場合、粒子の凝集が起こり、不均一になるので好ましくない。
βmrが2を越える場合、粒度分布がブロードになり、合成樹脂組成物にとって不必要な微小粒子や、合成樹脂フィルム表面の粗大突起の原因となる粗大粒子の含有率が多くなるため、十分なブロッキング防止効果と透明性を有する合成樹脂フィルム等の合成樹脂組成物が得られなくなる。
複合体(MR)に占めるCa/Pの原子比は特に限定されないが、例えば十分な耐スクラッチ性を有する合成樹脂フィルムを得るという観点から5.56以下が好ましく、3.33以下がさらに好ましく、1.85以下が最も好ましい。
Ca/Pの原子比が5.56を越えた場合、十分な耐スクラッチ性を有する合成樹脂フィルムが得られない傾向にある。また下限は、粒子の安定性を維持するという観点から、1.60程度が好ましい。
複合体(MR)のSmrは特に限定されないが、3≦Smr≦300(m/g)が好ましく、より好ましくは10≦Smr≦100(m/g)、さらに好ましくは、20≦Smr≦70(m/g)である。
Smrが3m/g未満の場合、例えば合成樹脂フィルムにおいて、良好な耐スクラッチ性が得られない傾向にあり、またSmrが300m/gを越えた場合、熱減量率が大きくなる場合があり、劣化、変色の少ない本発明の合成樹脂組成物が得られないことがある。
複合体(MR)のSmrと担体粒子(M)のSmとの比は特に限定されないが、0.01≦Smr/Sm<1が好ましい。Smr/Smが0.01未満の場合、例えば合成樹脂フィルムにおいて、良好な耐スクラッチ性が得られない傾向にある。
複合体(MR)のSmrとS1との比は特に限定されないが、3≦Smr/S1≦125が好ましく、さらに好ましくは、5≦Smr/S1≦100、最も好ましくは、3≦Smr/S1≦125である。Smr/S1が3未満の場合、例えば合成樹脂フィルムにおいて、良好な耐スクラッチ性が得られない傾向にあり、Smr/S1が125を越える場合、熱減量率が大きくなる場合があり、劣化、変色の少ない本発明の合成樹脂組成物が得られないことがある。
上記複合体(MR)からなる本発明の合成樹脂用添加剤は、各種合成樹脂に配合され樹脂組成物とされる。
本発明の合成樹脂用添加剤が配合される合成樹脂の種類は特に制限は無く、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸アミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が例示でき、また熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ケイ素樹脂等が例示できる。これらの中でも特にポリオレフィンや飽和ポリエステルのフィルム組成物及び繊維組成物に好適である。
ポリオレフィンとしては透明かつ結晶性の自己支持性フィルム形成能を有する物であれば、特に限定されるものではないが、例えば炭素数2〜12程度のα−オレフィンの結晶性単独重合体あるいは結晶性共重合体、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、エチレン−プロピレンランダムまたはブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキセン共重合体などを挙げることができる。中でも、ポリプロピレンやプロピレン過半重量のプロピレンと他のα−オレフィンとの重合体が好ましく、特にエチレン含量が0〜6重量%のプロピレン重合体が良い。
また、これらのポリオレフィンは結晶性であり、アイソタクティックインデックス(II)が通常40以上、中でも60以上、特に90以上のものが適する。更に、成形できる物である限り用いられるが、通常はメルトフローレート(MFR)が0.01〜100g/10分が好ましく、中でも0.1〜50g/10分がより好ましく、0.5〜10g/10分のものが更に好ましい。
本発明の合成樹脂組成物における合成樹脂用添加剤の使用量は、合成樹脂100重量部に対し、通常、0.001〜20重量部、好ましくは0.001〜10重量部、更に好ましくは0.01〜5である。0.001重量部未満では該添加剤の添加効果が不十分で、一方、20重量部を越えると該添加剤の分散性が低下する傾向があり、例えば合成樹脂フィルムにおいては、良好な耐スクラッチ性、透明性が得られない傾向があり、また合成繊維においては、良好な紡糸性が得られない傾向がある。
本発明の合成樹脂組成物に配合される他の成分については特に制限されないが、一般の合成樹脂に使用される他の添加剤、例えば顔料、染料、紫外線吸収剤、各種安定剤、酸化防止剤、遮光剤(例えばカーボンブラック、二酸化チタン等)、加工助剤、帯電防止剤、抗菌剤、脱臭剤、農薬、香料等各種添加剤の1種又は2種以上と併用できることはもちろん、本発明の合成樹脂用添加剤が高い比表面積と空隙率を持ち、優れた吸着、担持性能を有することから、これら各種添加剤を吸着又は担持させて使用することもできる。
例えば、抗菌剤としては、銀、銅、亜鉛等の無機系抗菌剤や、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム等の第4アンモニウム系、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系、ホルマリン、グリオキザール等のアルデヒド系、クレゾール、キシレノール等のフェノール系、ソルビン酸、安息香酸等のカルボン酸系、クロルヘキシジン、n−ドデシルグアニジンアセテート等のグアニジン系、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等のチアゾール系等が挙げられる。
脱臭剤としては、タンニン酸、ショウ脳油、テレピン油等、農薬としては、ジメチルフタレート、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、インダロン、ジメチルカーバイト、イルガビリン、PCP剤(ペンタクロルフェノール)、MEP剤(ジメチルチオホスフェート)、ECP剤(ジエチルジクロルフェニルチオホスフェート)等、紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、フェニルサリシレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
染料としては、アゾ染料、アントラキノン染料をはじめとし、インジゴイド染料、硫化染料、トリフェニルメタン染料等、香料としては、じゃ香、アビエス油、ベルガモット油、ボロアーズ油、ローズウッド油、ローズマリー油、オレンジフラワー油等の天然香料、アセト酢酸エチル、アネトール、アミルシナミックアルデヒド、イソ吉草酸エチル、イソアミルアセテート等の合成香料、ローズ系、ジャスミン系、リラ系等の調合香料等が挙げられる。
これらの添加量は特に制限はないが、本発明の合成樹脂組成物に配合される合成樹脂用添加剤粒子100重量部に対し、0.0001〜100重量部が好ましい。
また、必要に応じ他の組成のブロッキング防止剤、例えば合成球状シリカ、β,γ−アルミナ、珪酸アルミニウム、合成ゼオライト、酸化チタン、カオリン、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機粒子、また、花弁状構造を有しない非晶質リン酸カルシウム(略号ACP、化学式Ca(PO・nHO)、フッ素アパタイト(略号FAP、化学式Ca10(PO)、塩素アパタイト(略号CAP、化学式Ca10(POCl)、ヒドロキシアパタイト(略号HAP、化学式Ca10(PO(OH))、リン酸八カルシウム(略号OCP、化学式Ca(PO・5HO)、リン酸三カルシウム(略号TCP、化学式Ca(PO)、リン酸水素カルシウム(略号DCP、化学式CaHPO)、リン酸水素カルシウム二水和物(略号DCPD、化学式CaHPO・2HO)等を目的に応じて1種又は2種以上配合しても差し支えない。更に、シリコーン樹脂粒子、架橋アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、フッ素樹脂(テフロン)粒子、ポリイミド粒子等の有機高分子粒子等を本発明の添加剤と併用しても差し支えない。これらの添加量については特に制限はないが、通常0.01〜3重量部が好ましい。
本発明の合成樹脂用添加剤は、粒子の分散性,安定性等をさらに高めるために、シランカップリング剤やチタネートカップリング剤等のカップリング剤、脂肪酸、樹脂酸、アクリル酸,シュウ酸,クエン酸等の有機酸,酒石酸、フッ酸等の無機酸、それらのポリマー,それらの塩,又はそれらのエステル類等の表面処理剤、界面活性剤やヘキサメタリン酸ソーダ、ピロリン酸、ピロリン酸ソーダ、トリポリリン酸、トリポリリン酸ソーダ、トリメタリン酸、ハイポリリン酸等の縮合リン酸及びその塩を常法に従い表面処理しても差し支えない。
特に脂肪酸(塩)、脂肪酸エステルで表面処理したものは、良好な分散性を示す。脂肪酸としては、C=8以上のラウリン酸(C=12)、ミリスチン酸(C=14)、パルチミン酸(C=16)、ステアリン酸(C=18)等が挙げられる。それら脂肪酸の金属塩としては、Na、K、Li等のアルカリ金属、Al、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等が挙げられる。
脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアレート、ステアリン酸ラウレート、パルチミン酸ステアレート、パルチミン酸ラウレート等が挙げられ、また一価のアルコールから生成されるエステルのみならず、グリセリン等の多価アルコールから生成する脂肪酸エステルも挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いられる。また、不飽和度の高いものや、純度の低いものについては、表面処理することにより、同様の効果が得られるものの、表面処理剤自体の色がパウダーの白色度に悪影響を与える場合があるので、合成樹脂組成物の着色を好まない用途では、表面処理量はできるだけ低く抑える必要がある。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するか、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
参考例1〜4:花弁状多孔質構造を有する担体粒子(M)の調製
炭酸カルシウムの水懸濁液とリン酸の希釈水溶液を表1に記載の混合条件で混合させた後、表1に記載の熟成条件で熟成を行い、M1〜M4粒子の水スラリーを調製した。得られたM1〜M4の物性を表2に示す。表2より、M1、M2、M3粒子は、国際公開番号WO97/03119号及び国際公開番号WO98/29490号の条件を満足する粒子であり、本発明の合成樹脂用添加剤を構成する花弁状多孔質構造を有する担体粒子(M)として好ましいものである。M4については、上記公報に記載の条件を満足しておらず、本発明の合成樹脂用添加剤を構成する花弁状多孔質構造を有する担体粒子(M)として使用するには不適当なものである。
【表1】
Figure 0004554820
【表2】
Figure 0004554820
実施例1〜3
熟成終了後、表3の調製法に従い、参考例1〜3で得られた担体粒子M1〜M3の水スラリーを撹拌しながら炭酸カルシウム水懸濁液及び水溶性リン酸塩を別々に滴下混合し、熟成条件に従い撹拌を行いながら熟成し、担体粒子M1〜M3にリン酸カルシウム系化合物(R)を担持させた後、脱水、水洗、乾燥、解砕を行い、合成樹脂用添加剤である複合体(MR)E1〜E3を得た。これらの物性を表4に示す。
表4より、実施例1〜3の合成樹脂用添加剤である複合体(MR)粒子E1〜E3は、粒子の均一性、分散性を保持したまま、比表面積を制御することができ、熱減量率の抑制性を持つことが確認される。これは、水溶性リン酸塩と炭酸カルシウムのみが反応し、担体粒子(M)とは反応しなかったためと考えられる。また実施例1のように、担持量を最適にすることにより、担体粒子(M1)の平均径を保持した複合体(E1)を得ることが可能である。また、M1〜M3とE1〜E3のXRDの結果結晶形態は、どちらもヒドロキシアパタイトを主成分とするピークであったが、担体粒子M1〜M3よりも合成樹脂用添加剤である複合体(MR)粒子E1〜E3の方が、またE1からE3と担持量が増えるほど、結晶化度が向上していることが確認された。
第1図にM1、第2図にE1の各SEM写真(1万倍)を示す。
比較例1〜3
実施例1〜3と同様に、表3の調製法に従い、撹拌しながら炭酸カルシウム水懸濁液及び水溶性リン酸塩を別々に滴下混合し、熟成条件に従い撹拌を行いながら熟成し、担体粒子M1にリン酸カルシウム系化合物(R)を担持した後、脱水、水洗、乾燥、解砕を行い、比較例1,2,3の複合体(MR)粒子F1,F2,F3を得た。これらの物性を表4に示す。
【表3】
Figure 0004554820
【表4】
Figure 0004554820
実施例4〜6、比較例4〜9
実施例4,5,6は実施例1,2,3で得られたE1,E2,E3の粒子を、比較例4,5,6は、比較例1,2,3で得られたF1,F2,F3の粒子を、比較例7は参考例1で得られたM1の粒子を、比較例8は参考例4で得られたM4の粒子を、また比較例9は粒子を添加しないブランクとして下記の要領でポリプロピレン樹脂組成物を調製し、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得、その品質を評価した。結果を表5に示す。表5より、本発明の合成樹脂組成物は、優れたフィルム特性を有し、樹脂劣化による変色が極めて少ないことが確認される。(ポリオレフィンフィルムの製造)
メルトフローレートが1.9g/10分であるポリプロピレン樹脂100重量部に酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール 0.10重量部、イルガノックス1010(チバガイギー社の登録商標)0.02重量部、塩酸キャッチ剤としてステアリン酸カルシウム0.05重量部、及び上記各粒子を添加し、スーパーミキサーで混合後押し出し機でペレット化した。
このペレットを押し出し機を用いてシート状フィルムにし、縦方向5倍、横方向10倍に延伸して最終的に厚さ30μmの延伸フィルムを得た。延伸フィルムの一面には、コロナ放電処理を施した。
これらの二軸延伸フィルムについて、透明性、耐ブロッキング性及び耐スクラッチ性を測定した。
透明性はASTM−D−1003に準拠して、フィルムを4枚重ねて測定した。
耐ブロッキング性は、2枚のフィルムの接触面積が10mとなるように重ねて、2枚のガラス板の間におき、50g/cmの荷重をかけて40℃の雰囲気中に7日間放置後、ショッパー型試験機を用いて、引っ張り速度500mm/分にて引き剥して、その最大荷重を読みとって評価した。最大荷重が小さい程耐ブロッキング性が良好である。
耐スクラッチ性は、ガラス板上に二軸延伸フィルム1枚を固定し、他のフィルム1枚を接触面積が50cmの箱型状物に固定し、4kgの加重を掛けて、6回擦り、擦る前後の透明性で評価した。この値が小さいほど耐スクラッチ性が良好である。
b値は、ハンター型色差計による測定値で、この値が小さい程樹脂劣化による変色が小さいことを示す。
【表5】
Figure 0004554820
実施例7〜9、比較例10〜14
実施例7,8,9は実施例1,2,3で得られたE1,E2,E3の粒子の、比較例10,11,12は、比較例1,2,3で得られたF1,F2,F3の粒子の、比較例13は参考例1で得られたM1の粒子の、比較例14は参考例4で得られたM4の粒子の、各エチレングリコールスラリーをポリエステル化反応前に添加しポリエステル化反応を行い、樹脂100重量部に対し上記各粒子0.1重量部含有した極限粘度数(オルソクロロフェノール,35℃)0.62dl/gのポリエチレンテレフタレートを調製した。該ポリエチレンテレフタレートを160℃で乾燥した後290℃で溶融押し出し、40℃に保持したキャスティングドラム上に急冷固化せしめて未延伸フィルムを得た。引き続き、該未延伸フィルムを加熱ローラーで70℃に予熱した後、赤外線ヒーターで加熱しながら縦方向に3.6倍延伸した。続いて90℃の温度で横方向に4.0倍に延伸した後200℃で熱処理を行い、厚さ15μmの二軸配向フィルムを得た。
このようにして得られたフィルムの品質を、以下に示す方法で評価し、その結果を表6に示す。
表6より、粒子E1、E2、E3を含有した本発明の合成樹脂組成物は、優れたフィルム特性を有し、樹脂劣化による変色が極めて少ないことが確認される。
▲1▼フィルム表面粗さ(Ra)
中心線平均粗さ(Ra)としてJIS−B0601で定義される値であり、本発明では(株)小坂研究所の触針式表面粗さ計(SURFCORDER SF−30C)を用いて測定する。測定条件等は次の通りである。
(a)触針先端半径:2μm
(b)測定圧力:30mg
(c)カットオフ:0.25mm
(d)測定長:0.5mm
(e)同一試料について5回繰り返し測定し、最も大きい値を1つ除き、残り4つのデーターの平均値を表す。
▲2▼フィルムの摩擦係数(μk)
第3図に用いた装置を用いて下記のようにして測定する。第3図中、1は巻だしリール,2はテンションコントローラー,3,5,6,8,9及び11はフリーローラー,4はテンション検出機(入口),7はステンレス網SUS304製の固定棒(外径5mm),10はテンション検出機(出口),12はガイドローラー,13は巻取りリールをそれぞれ示す。
温度20℃,湿度60%の環境で、1/2インチ幅に裁断したフィルムを、7の固定棒(表面粗さ0.3μm)に角度θ=(152/180)πラジアン(152°)で接触させて毎分200cmの速さで移動(摩擦)させる。入口テンションT1が35gとなるようにテンションコントローラーを調製したときの出口テンション(T2:g)をフィルムが90m走行した後に出口テンション検出機で検出し、次式で走行摩耗係数μkを算出する。
μk=(2.303/θ)log(T2/T1)
=0.86log(T2/35)
▲3▼摩耗性評価−I
1/2インチ幅のフィルム表面を直径5mmのステンレス製固定ピン(表面粗さ0.58)に角度150°で接触させ、毎分2mの速さで約15cm程度往復移動,摩擦させる。(この時入側テンションT1を60gとする)。
この操作を繰り返し、往復40回測定後摩擦面に生じたスクラッチの程度を目視判定する。この時、スクラッチのほとんど生じないものをA、スクラッチの発生のわずかなものをB、スクラッチの発生がかなり多いものをC、スクラッチの発生が全面に多数生じたものをDと4段階に判定する。
▲4▼摩耗性評価−II
フィルムの走行面の削れ性を5段のミニスーパーカレンダーを使用して評価する。カレンダーはナイロンロールとスチールロールの5段カレンダーであり、処理温度は80℃、フィルムにかかる線圧は200kg/cm、フィルムスピードは50m/分で走行させる。走行フィルムは全長4000m走行させた時点でカレンダーのトップローラーに付着する汚れでフィルムの削れ性を評価する。
<4段階判定>
A:ナイロンロールの汚れ全く認められない。
B:ナイロンロールの汚れ殆ど認められない。
C:ナイロンロールの汚れがかなり認められる。
D:ナイロンロールの汚れが顕著に認められる。
▲5▼フィルム表面の粗大突起数
フィルム表面にアルミニウムを薄く蒸着した後、二光束干渉顕微鏡を用いて四重環以上の粗大突起数(測定面積1mm当りの個数)をカウントし、粗大突起数の多少により次のランク付けで表す。
1級:16個以上 2級:12〜15個
3級:8〜11個 4級:4〜7個
5級:0〜3個
▲6▼b値
ハンター型色差計による測定値で、この値が小さい程樹脂劣化による変色が小さいことを示す。
【表6】
Figure 0004554820
実施例10〜12、比較例15〜19
実施例10,11,12は実施例1,2,3で得られたE1,E2,E3の粒子を、比較例15,16,17は比較例1,2,3で得られたF1,F2,F3の粒子を、比較例18は参考例1で得られたM1の粒子を、比較例19は参考例4で得られたM4の粒子を用いて、下記の方法にてポリエステル繊維を製造した。
(ポリエステル繊維の製造方法)
テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールを原料とし、上記各粒子を生成ポリエステル100重量部に対して3重量部になるように添加し、常法により重合反応を行った後、チップ状で取り出しポリエチレンテレフタレートを得た。ポリエステル中での合成樹脂添加剤の分散性は良好であった。このポリエステルを押出成型機に供給し、290℃で紡糸を行い、得られた未延伸糸を75℃及び96℃の水浴中の二段で3倍に延伸し、繊維を得た。
これらの繊維を、3本引き揃えてマルチフィラメント糸とし、18ゲージの両面編機で編地を編成し、常法により精練、乾燥した後、これらの編地をDiamix BlackBG−FS13%owfで浴比1:30で130℃60分の染色を行った。次いで常法により還元洗浄、乾燥し、黒色織物である合成樹脂組成物を得た。
これらの合成樹脂組成物の染色性能を下記の方法にて評価した。評価結果を表7に示す。表7より、粒子E1〜E3を含有する本発明の合成樹脂組成物は、優れた染色性を有し、樹脂劣化による変色が極めて少ないことが確認される。また実施例10〜12のポリエステル繊維は製糸性においても良好であった。
(染色性能の評価方法)
▲1▼発色性の評価
デジタル測色色差計算機で合成樹脂組成物のL値を測定した。L値は、値が小さいほど濃色であることを示す。
▲2▼洗濯およびドライクリーニングによる変褪色の評価
JIS L0844及びL0860に定める方法で3回処理した後、処理前の織物と比較した色の変化を、JIS L0804に定める変退色用グレイスケールを用いて、等級を判定した。等級は5に近いものほど変色の少ないことを示す。
【表7】
Figure 0004554820
実施例13〜15、比較例20〜25
実施例13,14,15は実施例1,2,3で得られたE1,E2,E3の粒子を、比較例20,21,22は比較例1,2,3で得られたF1,F2,F3の粒子を、比較例23は参考例1で得られたM1の粒子を、比較例24は参考例4で得られたM4の粒子を、また比較例25は粒子を添加しないブランクとして下記の要領でポリアミドフィルムを得、その品質を評価した。結果を表8に示す。
表8より、粒子E1,E2,E3を含有した本発明の合成樹脂組成物は、優れたフィルム特性を有し、樹脂劣化による変色が極めて少ないことが確認される。(ポリアミドフィルムの製造)
ポリアミド系樹脂として、ε−カプロラクタムを主原料とするナイロン−6と、ポリアミド系樹脂100重量部に対して0.5重量部の上記各粒子をスーパーミキサーで混合後、260℃で溶融させた後、Tダイよりシート状に吐出させ、冷却ドラムにてキャストした。得られたフィルムを50℃に加熱し、長手方向に3.2倍、120℃横方向に4倍延伸して、厚み15μmのナイロン−6フィルムを得た。得られたフィルムは、製膜工程でコロナ放電処理を施した。
これらのポリアミドフィルムについて、透明性、耐ブロッキング性及び耐スクラッチ性を、上記ポリオレフィンフィルムの場合と同様の方法により測定した。
【表8】
Figure 0004554820
産業上の利用可能性
本発明の合成樹脂用添加剤は、優れた透明性と共に、耐スクラッチ性、耐ブロッキング防止機能を有し、樹脂劣化による変色が極めて少ない合成樹脂組成物及び染色性に優れた合成樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、参考例1で得られた担体粒子M1のSEM写真である。
第2図は、実施例1で得られた合成樹脂用添加剤である複合体粒子E1のSEM写真である。
第3図は、フィルムの摩擦係数を測定するための装置を示す概要図である。

Claims (8)

  1. 花弁状多孔質構造を有する担体粒子(M)にリン酸カルシウム系化合物(R)を担持せしめてなり、下記の式(a)〜(h)を満足する複合体(MR)からなることを特徴とする合成樹脂用添加剤。
    (a)0.1≦Dmr≦20(μm)
    (b)1≦Dmr/Dm≦5
    (c)0.5≦Tmr1≦5(重量%)
    (d)0.01≦Tmr1/Tm1<1
    (e)0.3≦Tmr2≦3(重量%)
    (f)0.01≦Tmr2/Tm2<1
    (g)1≦αmr≦5 但し、α=dmr50/Dmr
    (h)0≦βmr≦2 但し、β=(dmr90−dmr10)/dmr50
    但し、
    Dmr:走査型電子顕微鏡(SEM)写真により測定した複合体(MR
    )の平均粒子径(μm)
    Dm:走査型電子顕微鏡(SEM)写真により測定した担体粒子(M)
    の平均粒子径(μm)
    Tmr1:複合体(MR)の500℃における熱減量率(重量%)
    Tm1:担体粒子(M)の500℃における熱減量率(重量%)
    Tmr2:複合体(MR)の200℃における熱減量率(重量%)
    Tm2:担体粒子(M)の200℃における熱減量率(重量%)
    αmr:複合体(MR)の分散係数
    dm50:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定し
    た担体粒子(M)の50%平均粒子径(μm)
    dmr50:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定
    した複合体(MR)の50%平均粒子径(μm)
    βmr:複合体(MR)のシャープネス
    dm90:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定し
    た担体粒子(M)のふるい通過側累計90%粒子径(μm)
    dmr90:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定
    した複合体(MR)のふるい通過側累計90%粒子径(μ
    m)
    dm10:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定し
    た担体粒子(M)のふるい通過側累計10%粒子径(μm)
    dmr10:マイクロトラックFRAレーザー式粒度分布計により測定
    した複合体(MR)のふるい通過側累計10%粒子径(μ
    m)
  2. 複合体(MR)が、下記の式を満足する請求項1記載の合成樹脂用添加剤。
    (i)1≦αmr≦2 但し、α=dmr50/Dmr
    (j)0≦βmr≦1 但し、β=(dmr90−dmr10)/dmr50
  3. 複合体(MR)に占めるCa/Pの原子比が5.56以下である請求項1又は2記載の合成樹脂用添加剤。
  4. 複合体(MR)に占めるCa/Pの原子比が3.33以下である請求項1又は2記載の合成樹脂用添加剤。
  5. リン酸カルシウム系化合物(R)が化学式Ca10(PO・(OH)のヒドロキシアパタイトである請求項1〜4のいずれか1項に記載の合成樹脂添加剤。
  6. 担体粒子(M)と複合体(MR)が、下記の式を満足する請求項1〜5のいずれか1項に記載の合成樹脂用添加剤。
    (k)3≦Smr≦300(m/g)
    (l)0.01≦Smr/Sm<1
    (m)3≦Smr/Sl≦125
    但し、
    Smr:複合体(MR)の窒素吸着法によるBET比表面積(m/g

    Sm:担体粒子(M)の窒素吸着法によるBET比表面積(m/g)
    Sl:複合体(MR)の球換算における理論比表面積値(m/g)
    但し、理論比表面積値は、下記の計算式から算出される。
    (1/w)/(4πr/3)*4πr=3/wr(m/g)
    但し、
    w:粒子の真比重(JIS K5101に準する)
    r:走査型電子顕微鏡(SEM)写真で測定した平均粒子半径(
    μm)
  7. 請求項1〜6記載のいずれか1項に記載の合成樹脂用添加剤を配合してなることを特徴とする合成樹脂組成物。
  8. 合成樹脂組成物が合成樹脂フィルム又は合成樹脂繊維である請求項7記載の合成樹脂組成物。
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