JP4543449B2 - 光学系駆動装置用部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は成形時の流動性に優れ、かつ得られた成形品の制振性、耐衝撃性、耐摩耗性が改良された光学系駆動装置用部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテルなどの熱可塑性樹脂は、その優れた諸特性を生かし、射出成形材料として機械機構部品、電気電子部品、自動車部品などの幅広い分野に利用されつつある。その中でも特にポリカーボネートはその特性から近年用途の拡大、消費量の拡大傾向を示している。拡大しつつある用途の一つに光学系駆動装置用部品があるが、その小型化、一体化などの成形品への要求が技術の進歩と共に高くなり、結果としてより複雑な形状のものが要求され、そのため流動性向上が望まれるようになってきた。また、光学系駆動装置用部品は振動や衝撃に弱く、これを支持する光学系支持部品には制振性が要求され、その制振性が製品の性能を左右するため、特に重要視されるようになっている。また光学系駆動装置用部品は、その駆動時に駆動軸との間で摩耗を受ける。特に軸受け部ではその傾向が大きく、部品の薄肉化、小型化に伴い、摩耗による強度低下や性能低下が問題となり耐摩耗性が求められている。
【0003】
そこで分子鎖の平行な配列を特徴とする光学異方性の液晶性ポリマーが優れた流動性と機械的性質を有する点で注目され、ポリカーボネートの流動性および機械特性を向上させるために数々のアロイ化技術が検討されている。これらのアロイ化技術は例えば、特開平5−70700号公報、特開平5−112709号公報、特開平7−331051号公報などに開示されている。特開平5−70700号公報は、液晶性樹脂の液晶開始温度より低い温度で成形可能な熱可塑性樹脂と液晶性樹脂からなり、組成物を伸張させることなどにより液晶性樹脂の分散粒子を配向させ物性を改良した熱可塑性樹脂組成物に関するものである。また、特開平5−112709号公報は、熱可塑性樹脂より高い融点を有する液晶性樹脂を配合して分散粒子を配向させ、再成形品の強度、剛性低下を低減した熱可塑性樹脂組成物に関するものである。また、特開平7−331051号公報は、フェノール性水酸基末端量の多いポリカーボネート樹脂に難燃剤と液晶性樹脂を配合し、難燃特性を改良した熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【0004】
電気電子部品用途に関しては特開平9−193293号公報や特開平9−228058号公報で開示されているが、これらは熱可塑性樹脂組成物に液晶性ポリエステルを配合した熱可塑性樹脂組成物に実用に耐えうるメッキ接着力を有する金属層を形成した樹脂成形品に関するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
確かに上記の方法で成形方法を種々工夫することにより強度・剛性等は向上する。しかし、特開平5−70700号公報および特開平7−331051号公報は、成形条件の工夫により、若干流動性および機械特性が向上するが十分とはいえず、逆に得られた成形品は異方性が大きくなる。また、特開平9−193293号公報や特開平9−228058号公報は、流動性や曲げ弾性率は確かに改良されるが、液晶性樹脂の添加量することによって耐衝撃性が低下し、ウェルド強度も著しく低くなる。
【0006】
このように、これらの公知例においては、その特性が十分でないことから光学系駆動装置用部品として用いることは検討されていない。
【0007】
本発明はかかる問題点を解決し、成形時の流動性、制振性、耐衝撃性、耐摩耗性に優れる光学系駆動装置用部品の取得を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は(1)ポリカーボネート系樹脂(A)100重量部に対して液晶性ポリエステル(B)0.5〜100重量部を含有してなる樹脂組成物100重量部に対し、充填材0.5〜300重量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物からなる光学系駆動装置用部品であって、該熱可塑性樹脂組成物からASTM D256に従って作成したアイゾット衝撃強度測定用1/8インチバーの中心部を流れ方向に切削して得られた切片をTEMにより観察したときの、該液晶性ポリエステルの分散粒子50個について測定して算出した数平均分散径(長径)が0.8〜3μmであり、かつ数平均アスペクト比(長径/短径)が3未満であることを特徴とする光学系駆動装置用部品、(2)液晶性ポリエステル(B)が下記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)からなる液晶性ポリエステルであることを特徴とする上記(1)記載の光学系駆動装置用部品
【化1】
(ただし式中のR1は
【化2】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【化3】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子、または塩素原子を示す。)、
(3)光学系駆動装置用部品がCD、MD、DVD、CD−ROM、DVD−ROM、MOおよびPDから選ばれた光学系駆動装置の(軸受け部を有する)光学系取り付けブロック、スライドベース、対物レンズ保持体、対物レンズ保持体固定部材、ガイドホルダ、補強板、ラック、(2軸)アクチュエーター、(2軸)アクチュエーターベース、ボビンおよびカラーから選ばれた1つである上記(1)または(2)記載の光学系駆動装置用部品を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いるポリカーボネート系樹脂(A)とは、カーボネート結合を有する樹脂であり、例えば芳香族二価フェノール系化合物とホスゲン、または炭酸ジエステルとを反応させることにより得られる熱可塑性樹脂が挙げられる。 ポリカーボネートの末端基量については特に規定されないが、本発明の効果をより発現させるためには、フェノール性末端基(EP)と非フェノール性末端基(EN)の当量比(EP)/(EN)が1/19以下であるポリカーボネート系樹脂(A)を用いることが好ましく、より好ましくは1/40以下であり、さらに好ましくは1/70以下である。
【0010】
また、ポリカーボネート系樹脂(A)は、メチレンクロライド中1.0g/dlの濃度で20℃で測定した対数粘度が0.2〜3.0dl/g、特に0.3〜1.5dl/gの範囲ものが好ましく用いられる。ここで二価フェノール系化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が使用でき、これら単独あるいは混合物として使用することができる。
【0011】
ポリカーボネート系樹脂(A)の末端基の測定は、ポリカーボネート系樹脂(A)を酢酸酸性塩化メチレンに溶解し、四塩化チタンを加え、生成した赤色錯体を546nmで測光定量して行える。
【0012】
また、ポリカーボネート系樹脂(A)は、その他の特性を付与させるために、その一部(通常ポリカーボネート系樹脂(A)成分の85重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは50重量%以下)を他の樹脂に置きかえることが可能であり、他の樹脂の具体例としてはABS樹脂やPBT樹脂、PET樹脂などの非液晶性ポリエステル樹脂があげられる。
【0013】
本発明で用いられる液晶性ポリエステル(B)とは、溶融時に異方性を形成し得るポリマーである。
【0014】
本発明でいう液晶性ポリエステルとは、異方性溶融相を形成するポリエステルであり、例えば芳香族オキシカルボニル単位、芳香族ジオキシ単位、芳香族ジカルボニル単位、エチレンジオキシ単位などから選ばれた構造単位からなる異方性溶融相を形成するポリエステルが挙げられる。
【0015】
芳香族オキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位、芳香族ジオキシ単位としては、例えば、4,4´−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルなどから生成した構造単位、芳香族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’ジフェニルエーテルジカルボン酸などから生成した構造単位が挙げられる。
【0016】
液晶性ポリエステルの具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物および/または脂肪族ジカルボン酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸およびイソフタル酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニルから生成した構造単位、テレフタル酸および/またはセバシン酸から生成した構造単位から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸から生成した液晶性ポリエステルなどが挙げられる。
【0017】
異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルの好ましい例としては、エチレンジオキシ単位を含む液晶性樹脂(B)であり、下記(I)、(II)、(III) および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステル、または、(I)、(III) および(IV)の構造単位からなる異方性溶融相を形成する液晶性ポリエステルなどがより好ましく挙げられる。なかでも特に(I)、(II)、(III)および(IV)の構造単位からなる液晶性ポリエステルが好ましい。
【0018】
【化1】
【0019】
(ただし式中のR1は
【0020】
【化2】
【0021】
から選ばれた1種以上の基を示し、R2は
【0022】
【化3】
【0023】
から選ばれた1種以上の基を示す。ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す。)
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。これらのうちR1が
【0024】
【化4】
【0025】
であり、R2が
【0026】
【化5】
【0027】
であるものが特に好ましい。
【0028】
本発明に好ましく使用できる液晶性ポリエステルは、上記構造単位(I)、(III)、(IV)からなる共重合体および上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体であり、上記構造単位(I)、(II)、(III)および(IV)の共重合量は任意である。しかし、本発明の特性を発揮させるためには次の共重合量であることが好ましい。
【0029】
すなわち、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)からなる共重合体の場合は、上記構造単位(I)および(II)の合計は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して30〜95モル%が好ましく、40〜92モル%がより好ましい。また、構造単位(III)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して70〜5モル%が好ましく、60〜8モル%がより好ましい。また、構造単位(I)と(II)のモル比[(I)/(II)]は好ましくは75/25〜95/5であり、より好ましくは78/22〜93/7である。また、構造単位(IV)は構造単位(II)および(III)の合計と実質的に等モルであることが好ましい。
【0030】
一方、上記構造単位(III) を含まない場合は流動性の点から上記構造単位(I)は構造単位(I)および(II)の合計に対して40〜90モル%であることが好ましく、60〜88モル%であることが特に好ましく、構造単位(IV)は構造単位(II)と実質的に等モルであることが好ましい。
【0032】
上記の好ましく用いることができる液晶性ポリエステルは、上記構造単位(I)〜(IV)を構成する成分以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロルハイドロキノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,4’−ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族、脂環式ジオールおよびm−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノ安息香酸などを液晶性を損なわない程度の範囲でさらに共重合せしめることができる。
【0033】
本発明で使用する液晶性ポリエステル(B)は、ペンタフルオロフェノール中で対数粘度を測定することが可能である。その際、0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で0.5〜15.0dl/gが好ましく、1.0〜3.0dl/gが特に好ましい。
【0034】
また、本発明における液晶性ポリエステル(B)の溶融粘度は0.5〜200Pa・sが好ましく、特に1〜100Pa・sがより好ましい。また、流動性により優れた組成物を得ようとする場合には、溶融粘度を50Pa・s以下とすることが好ましい。
【0035】
なお、この溶融粘度は融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
【0036】
ここで、融点(Tm)とは示差熱量測定において、重合を完了したポリマを室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1 )の観測後、Tm1 +20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却した後、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm2 )を指す。
【0037】
液晶性ポリエステル(B)の融点は、特に限定されないが、本発明の効果が発現する液晶性ポリエステル(B)の数平均分散径の範囲内のものを得るためには、ポリカーボネート系樹脂(A)への分散性の点から好ましくは340℃以下、より好ましくは320℃以下である。
【0038】
本発明において使用する上記液晶性ポリエステルの製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。
【0039】
例えば、上記液晶性ポリエステルの製造において、次の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸および4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のジアシル化物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステルおよび4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物と2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に所定量のジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれジフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(5)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(1)または(2)の方法により液晶性ポリエステルを製造する方法。
(6)ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルのポリマー、オリゴマーまたはビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートなど芳香族ジカルボン酸のビス(β−ヒドロキシエチル)エステルの存在下で(2)または(3)の方法により液晶性ポリエステルを製造する方法。
【0040】
液晶性ポリエステルの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
【0041】
本発明で用いるポリカーボネート系樹脂(A)100重量部に対する液晶性ポリエステル(B)の配合量は0.5〜100重量部であり、好ましくは3〜60重量部、より好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは5〜30重量部である。
【0042】
液晶性ポリエステル(B)の添加量が少なすぎる場合、流動性が良好に発揮されず制振性の向上効果も充分に得られない。逆に添加量が多すぎる場合、異物効果が大きくなるためと推察されるが、成形品の耐衝撃性が低下する傾向にある。
【0043】
本発明において、ポリカーボネート系樹脂(A)中に分散する液晶性ポリエステル(B)の分散粒子の数平均分散径が本発明の効果である成形時の流動性、成形品の耐衝撃性、制振性、耐摩耗性を発現するためには特に重要であり、0.8〜3μmの範囲であることが必須であり、好ましくは1〜2μmである。
【0044】
また、ポリカーボネート系樹脂(A)中に分散する液晶性ポリエステル(B)の分散形状については、特に限定されないが、球状もしくは楕円球状であることが好ましい。また、衝撃強度などの特性について、より効果を発現するために、粒子の数平均アスペクト比(長径/短径)は3未満であり、好ましくは1.05〜2.7であり、特に好ましくは1.1〜2.5である。
【0045】
ポリカーボネート系樹脂(A)中の液晶性ポリエステル(B)の分散粒子の数平均分散径および数平均アスペクト比の測定方法は、光学系駆動装置用熱可塑性樹脂組成物からASTM D256に従って作成したアイゾット衝撃強度測定用1/8インチバーの中心部を粒子の配向方向に切削して得られた切片を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、分散粒子50個の平均値をそれぞれ数平均分散径および数平均アスペクト比として求められる。なお、分散粒子径は長径方向で評価する。また、アスペクト比は、各粒子について求めた後、分散粒子50個について平均値を算出した。
【0046】
本発明において光学系駆動装置用部品の機械強度その他の特性を付与するために充填剤を使用することが可能であり、特に限定されるものではないが、繊維状、板状、粉末状、粒状など非繊維状の充填剤を使用することができる。具体的には例えば、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカーなどの繊維状、ウィスカー状充填剤、マイカ、タルク、カオリン、シリカ、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスマイクロバルーン、クレー、二硫化モリブデン、ワラステナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、ポリリン酸カルシウム、グラファイトなどの粉状、粒状あるいは板状の充填剤が挙げられる。上記充填剤中、ガラス繊維や炭素繊維が好ましく使用され、より好ましくはガラス繊維である。炭素繊維はPAN系またはピッチ系の炭素繊維であり、一般に樹脂の強化用に用いられているものならば特に限定はなく、例えば長繊維タイプや短繊維タイプのチョプドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。
【0047】
また、上記の充填剤は2種以上を併用して使用することもできる。なお、本発明に使用する上記の充填剤はその表面を公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤で処理して用いることもできる。
【0048】
また、ガラス繊維はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被覆あるいは集束されていてもよい。
【0049】
上記の充填剤の添加量は(A)成分と(B)成分を含有してなる樹脂組成物100重量部に対し、0.5〜300重量部であり、好ましくは10〜200重量部であり、特に好ましくは15〜100重量部である。
【0050】
また、本発明の光学系駆動装置用部品の成形に用いられる熱可塑性樹脂組成物には、難燃性およびその他の特性を付与する目的で燐系化合物を添加することができる。燐系化合物とは、燐を含有する有機または無機化合物であれば特に制限はなく、例えば赤燐、ポリ燐酸アンモニウム、ポリホスファゼン、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィンオキシドなどが挙げられる。中でも赤燐、芳香族ホスフェートが好ましく使用することができる。赤燐を添加した場合には、難燃性の他に長期耐熱性が改善され、芳香族ホスフェートを添加した場合には、難燃性の他に流動性が若干改善される。
【0051】
本発明に用いる赤燐は、そのままでは不安定であり、また、水に徐々に溶解したり、水と徐々に反応する性質を有するので、これを防止する処理を施したものが好ましく用いられる。このような赤燐の処理方法としては、特開平5−229806号公報に記載の赤燐の粉砕を行わず、赤燐表面に水や酸素との反応性が高い破砕面を形成させずに赤燐を微粒子化する方法、赤燐に水酸化アルミニウムまたは水酸化マグネシウムを微量添加して赤燐の酸化を触媒的に抑制する方法、赤燐をパラフィンやワックスで被覆し、水分との接触を抑制する方法、ε−カプロラクタムやトリオキサンと混合することにより安定化させる方法、赤燐をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法、赤燐を銅、ニッケル、銀、鉄、アルミニウムおよびチタンなどの金属塩の水溶液で処理して、赤燐表面に金属燐化合物を析出させて安定化させる方法、赤燐を水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆する方法、赤燐表面に鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、スズなどで無電解メッキ被覆することにより安定化させる方法およびこれらを組合せた方法が挙げられるが、好ましくは、赤燐の粉砕を行わずに赤燐表面に破砕面を形成させずに赤燐を微粒子化する方法、赤燐をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法、赤燐を水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛などで被覆することにより安定化させる方法であり、特に好ましくは、赤燐表面に破砕面を形成させずに赤燐を微粒子化する方法、赤燐をフェノール系、メラミン系、エポキシ系、不飽和ポリエステル系などの熱硬化性樹脂で被覆することにより安定化させる方法である。これらの熱硬化性樹脂の中で、フェノール系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂で被覆された赤燐が耐湿性の面から好ましく使用することができ、特に好ましくはフェノール系熱硬化性樹脂で被覆された赤燐である。
【0052】
また樹脂に配合される前の赤燐の平均粒径は、難燃性、機械特性、耐湿熱特性およびリサイクル使用時の粉砕による赤燐の化学的・物理的劣化を抑える点から35〜0.01μmのものが好ましく、さらに好ましくは、30〜0.1μmのものである。
【0053】
なお赤燐の平均粒径は、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することが可能である。粒度分布測定装置には、湿式法と乾式法があるが、いずれを用いてもかまわない。湿式法の場合は、赤燐の分散溶媒として、水を使用することができる。この時アルコールや中性洗剤により赤燐表面処理を行ってもよい。また分散剤として、ヘキサメタ燐酸ナトリウムやピロ燐酸ナトリウムなどの燐酸塩を使用することも可能である。また分散装置として超音波バスを使用することも可能である。
【0054】
また本発明で使用される赤燐の平均粒径は上記のごとくであるが、赤燐中に含有される粒径の大きな赤燐、すなわち粒径が75μm以上の赤燐は、難燃性、機械的特性、耐湿熱性、リサイクル性を著しく低下させるため、粒径が75μm以上の赤燐は分級等により除去することが好ましい。粒径が75μm以上の赤燐含量は、難燃性、機械的特性、耐湿熱性、リサイクル性の面から、10重量%以下が好ましく、さらに好ましくは8重量%以下、特に好ましくは5重量%以下である。下限に特に制限はないが、0に近いほど好ましい。
【0055】
ここで赤燐に含有される粒径が75μm以上の赤燐含量は、75μmのメッシュにより分級することで測定することができる。すなわち赤燐100gを75μmのメッシュで分級した時の残さ量Z(g)より、粒径が75μm以上の赤燐含量はZ/100×100(%)より算出することができる。
【0056】
また、本発明で使用される赤燐の熱水中で抽出処理した時の導電率(ここで導電率は赤燐5gに純水100mLを加え、例えばオートクレーブ中で、121℃で100時間抽出処理し、赤燐ろ過後のろ液を250mLに希釈した抽出水の導電率を測定する)は、得られる成形品の耐湿性、機械的強度、耐トラッキング性、およびリサイクル性の点から通常0.1〜1000μS/cmであり、好ましくは0.1〜800μS/cm、さらに好ましくは0.1〜500μS/cmである。
【0057】
また、本発明で使用される赤リンのホスフィン発生量(ここでホスフィン発生量は、赤リン5gを窒素置換した内容量500mLの例えば試験管などの容器に入れ、10mmHgに減圧後、280℃で10分間加熱処理し、25℃に冷却し、窒素ガスで試験管内のガスを希釈して760mmHgに戻したのちホスフィン(リン化水素)検知管を用いて測定し、つぎの計算式で求める。ホスフィン発生量(ppm)=検知管指示値(ppm)×希釈倍率)は、得られる組成物の発生ガス量、押出し、成形時の安定性、溶融滞留時機械的強度、成形品の表面外観性、成形品による端子腐食などの点から通常100ppm以下のものが用いられ、好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。
【0058】
このような好ましい赤燐の市販品としては、燐化学工業社製“ノーバエクセル”140、“ノーバエクセル”F5が挙げられる。
【0059】
本発明に使用される芳香族ホスフェートとは、下記式(1)で表されるものである。
【0060】
【化6】
【0061】
まず前記式(1)で表されるリン系化合物の構造について説明する。前記式(1)の式中nは0以上の整数である。またk、mは、それぞれ0以上2以下の整数であり、かつk+mは、0以上2以下の整数であるが、好ましくはk、mはそれぞれ0以上1以下の整数、特に好ましくはk、mはそれぞれ1である。
【0062】
また前記式(1)の式中、R7〜R14は同一または相異なる水素または炭素数1〜5のアルキル基を表す。ここで炭素数1〜5のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、2ーイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、3−イソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基、ネオイソプロピル、ネオペンチル、tert−ペンチル基などが挙げられるが、水素、メチル基、エチル基が好ましく、とりわけ水素が好ましい。
【0063】
またAr1、Ar2、Ar3、Ar4は同一または相異なるフェニル基あるいはハロゲンを含有しない有機残基で置換されたフェニル基を表す。具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ナフチル基、インデニル基、アントリル基などが挙げられるが、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基が好ましく、特にフェニル基、トリル基、キシリル基が好ましい。
【0064】
またYは直接結合、O、S、SO2、C(CH3)2、CH2、CHPhを表し、Phはフェニル基を表す。
【0065】
好ましい芳香族ホスフェートの市販品としては、大八化学社製“PX−200”、“PX−201”、“CR−733S”、“CR−741”、“TPP”およびこれら相当品が挙げられる。
【0066】
本発明におけるリン系化合物の添加量は、ポリカーボネート系樹脂(A)と液晶性ポリエステル(B)からなる樹脂組成物100重量部に対して通常0.01〜30重量部、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.06〜15重量部、さらに好ましくは0.08〜10重量部である。リン系化合物の添加量が少なすぎると難燃性向上効果が発現せず、多すぎると物性低下するとともに難燃効果とは逆に燃焼促進剤として働く傾向にある。
【0067】
本発明の光学系駆動装置用部品の成形に用いられる熱可塑性樹脂組成物に、さらに赤燐を添加する場合には、赤燐の安定剤として金属酸化物を添加することにより、押出し、成形時の安定性や強度、耐熱性、成形品の端子腐食性などを向上させることができる。このような金属酸化物の具体例としては、酸化カドミウム、酸化亜鉛、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化第一鉄、酸化第二鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化スズおよび酸化チタンなどが挙げられるが、なかでも酸化カドミウム、酸化第一銅、酸化第二銅、酸化チタンなどのI族および/またはII族の金属以外の金属酸化物が好ましく、特に酸化第一銅、酸化第二銅、酸化チタンが好ましいが、I族および/またはII族の金属酸化物であってもよい。押出し、成形時の安定性や強度、耐熱性、成形品の端子腐食性の他に、非着色性をさらに向上させるためには酸化チタンが最も好ましい。
【0068】
金属酸化物の添加量は機械物性、成形性の面からポリカーボネート系樹脂(A)と液晶性樹脂(B)からなる樹脂組成物100重量部に対して0.01〜20重量部が好ましく、特に好ましくは0.1〜10重量部である。
【0069】
さらに、本発明の光学系駆動装置用部品の成形に用いられる熱可塑性樹脂組成物には、酸化防止剤および熱安定剤(たとえばヒンダードフェノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体など)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシレート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、滑剤、染料(たとえばニグロシンなど)および顔料(たとえば硫化カドミウム、フタロシアニンなど)を含む着色剤、滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、導電剤あるいは着色剤としてカーボンブラック、結晶核剤、可塑剤、難燃剤としては赤燐または芳香族ホスフェートが好ましく用いられるが他の難燃剤(例えば臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、水酸化マグネシウム、メラミンおよびシアヌール酸またはその塩など)、難燃助剤、摺動性改良剤(グラファイト、フッ素樹脂)、帯電防止剤などの通常の添加剤を添加して、所定の特性をさらに付与することができる。
【0070】
また、更なる特性改良の必要性に応じて無水マレイン酸などによる酸変性オレフィン系重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、ABSなどのオレフィン系共重合体、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー等のエラストマーから選ばれる1種または2種以上の混合物を添加して所定の特性をさらに付与することができる。
【0071】
本発明の光学系駆動装置用物品の成形に用いられる熱可塑性樹脂組成物は通常公知の方法で製造される。光学系駆動装置用物品の成形に用いられる熱可塑性樹脂組成物を製造するに際し、例えば“ユニメルト”タイプのスクリューを備えた単軸押出機、二軸、三軸押出機およびニーダタイプの混練機などを用いて180〜350℃で溶融混練して組成物とすることができるが、本発明の特徴である分散粒子径を好ましい範囲にし、流動性や耐衝撃性、制振性を発現するためには、混練温度が重要であり、配合する液晶性ポリエステル(B)の融点以下が好ましく、配合する液晶性ポリエステル(B)の液晶開始温度以上、かつ融点以下がより好ましい。上記範囲において混練した場合には、本発明の効果が十分に発揮され、また分散粒子径はこれ以降の加工において大きく変化しないため、二次加工を行うに際しても十分に効果が発現し好ましい。液晶開始温度の測定は、剪断応力加熱装置(CSS−450)により剪断速度1,000(1/秒)、昇温速度1.0℃/分、対物レンズ60倍において測定し、視野全体が流動開始する温度を液晶開始温度とする。
【0072】
また、混練方法としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂(A)および液晶性ポリエステル(B)成分中、その他の必要な添加剤および充填材を予備混合して、またはせずに押出機などに供給して十分溶融混練することにより調製されるが、好ましくは、ハンドリング性や生産性の面から、ポリカーボネート系樹脂(A)、液晶性ポリエステル(B)の一部(例えば(A)の一部もしくは全部、(B)成分の一部もしくは全部、または、最終的に含有せしめる(A)および(B)のうちの一部)を一旦溶融混練して実際に光学系駆動装置用部品の成形に用いられる熱可塑性樹脂組成物に配合されるべき液晶性ポリエステルの量よりも液晶性ポリエステル濃度の高い樹脂組成物(D)を製造し、残りのポリカーボネート系樹脂(A)もしくは液晶性ポリエステル(B)成分中に液晶性ポリエステル濃度の高い樹脂組成物(D)およびその他の任意に用いることができる添加剤および充填材を溶融混練することにより調製される。
【0073】
あるいはポリカーボネート系樹脂(A)の一部もしくは全部、液晶性ポリエステル(B)成分の一部もしくは全部、または、最終的に含有せしめる(A)および(B)のうちの一部とその他の任意に用いることができる添加剤を一旦溶融混練して、実際に光学系駆動装置用部品の成形に用いられる熱可塑性樹脂組成物に配合されるべき液晶性ポリエステルの量よりも液晶性ポリエステル濃度の高い樹脂組成物(D)を製造し、残りのポリカーボネート系樹脂(A)もしくは液晶性ポリエステル(B)成分中および液晶性ポリエステル濃度の高い樹脂組成物(D)の段階で添加した任意に用いることができる添加剤以外の添加剤および充填材を溶融混練することにより調製される。
【0074】
かかる液晶性ポリエステル濃度の高い樹脂組成物(D)は、いわゆるマスターペレットの形態で好ましく用いられるが、それに限定されず、いわゆるチップ状、粉末状、あるいはそれらの混合物の形態であってもよい。またかかる(D)成分と配合するポリカーボネート系樹脂(A)および液晶性ポリエステル(B)はペレット状であることが好ましいが、それに限定されず、いわゆるチップ状、粉末状あるいは、チップ状と粉末状の混合物であってもよいが、好ましくはポリカーボネート系樹脂(A)および液晶性ポリエステル(B)の形態、大きさ、形状はほぼ同等、あるいは互いに似通っていることが均一に混合し得る点で好ましい。
【0075】
かくして得られる光学系駆動装置用部品の成形に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、成形時の流動性に特に優れており、広範囲の成形条件において良好は流動性向上効果が発現する。
【0076】
また、成形品を成形するにあたっての成形方法は通常の成形方法(射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、インジェクションプレス成形など)により、三次元成形品、シート、フィルム、容器パイプなどに加工することができ、射出成形あるいはインジェクションプレス成形等が好ましい。成形温度については、180〜350℃で成形品とすることができるが、流動性、耐衝撃性や制振性、耐摩耗性バランス良く発現するために、配合する液晶性ポリエステル(B)の液晶開始温度以上が好ましい。
【0077】
本発明の光学系駆動装置用部品の成形に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、多くの場合、ASTMD256に従って測定した1/4インチ(ノッチ付き)バーアイゾット衝撃強度が、(B)成分を含まない以外は同じ組成物を用いて同様に測定した値よりも10%以上向上させることが可能であり、好ましい態様においては50%以上、特に好ましい態様においては100%以上向上させることが可能である。
【0078】
かくして得られる成形品は、特に流動性と制振性に優れるために、光学系駆動装置用部品に用いられ、特に薄肉部を有する成形品(例えば板状成形品あるいは箱形成形品)に有効である。
【0079】
さらに本発明の光学系駆動装置用部品の成形に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、流動性不足による未充填などの不良を低減可能であり、また安定した成形条件で成形できるために成形品には各種特性のバラツキがなく、そのため信頼性の高い成形品が得られる。
【0080】
かくして得られる成形品は、特に制振性が必要とされる光学系駆動装置部品に有用である。なかでもCDやMD、DVD、CD−ROM、DVD−ROM、MO、PDなどの光学系駆動装置の(軸受け部を有する)光学系取り付けブロック、スライドベース、対物レンズ保持体、対物レンズ保持体固定部材、ガイドホルダ、補強板、ラック、(2軸)アクチュエーター、(2軸)アクチュエーターベース、ボビン、カラーなどは優れた制振性や長期使用に耐えうる耐摩耗性が必要とされるために特に有用である。
【0081】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の骨子は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0082】
参考例1(LCP1)
p−ヒドロキシ安息香酸994重量部、4,4´−ジヒドロキシビフェニル126重量部、テレフタル酸112重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト216重量部及び無水酢酸960重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、芳香族ジオキシ単位7.5モル当量、エチレンジオキシ単位12.5モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる融点314℃、対数粘度1.2dl/g(ペンタフロロフェノール/クロロホルム=35/65(重量比)を溶媒として測定した)、溶融粘度(φ0.5mm、324℃)20Pa・sの液晶性ポリエステルが得られた。
【0083】
参考例2(LCP2)
p−ヒドロキシ安息香酸907重量部と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸457重量部及び無水酢酸873重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位100モル当量からなる融点283℃、対数粘度4.25dl/g(ペンタフロロフェノール/クロロホルム=35/65(重量比)を溶媒として測定した)、溶融粘度(φ0.5mm、293℃)58Pa・sの液晶性ポリエステルを得た。
【0084】
参考例3(LCP3)
p−ヒドロキシ安息香酸994重量部、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト346重量部及び無水酢酸809重量部を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、重合を行った結果、芳香族オキシカルボニル単位80モル当量、エチレンジオキシ単位20モル当量、芳香族ジカルボン酸単位20モル当量からなる、融点282℃、対数粘度1.4dl/g(ペンタフロロフェノール/クロロホルム=35/65(重量比)を溶媒として測定した)、溶融粘度(φ0.5mm、292℃)14Pa・sの液晶性ポリエステルが得られた。
【0085】
実施例1〜5、比較例1〜2
参考例で得た液晶性ポリエステル(LCP1〜LCP3)と表1に示すポリカーボネート系樹脂(A)およびガラス繊維(6μm径、3mm長)を所定量秤量し、ドライブレンドした。日本製鋼所製TEX30型2軸押出機でシリンダー温度290℃に設定し、スクリュー回転を100r.p.mの条件で溶融混練してペレットとした。熱風乾燥後、ペレットを住友ネスタ−ル射出成形機プロマット40/25(住友重機械工業(株)製)に供し、シリンダ−温度を表1に示した温度に設定し、金型温度80℃に設定し、物性比較するために射出速度99%、射出圧力は成形下限圧+10%の条件で下記(1)、(3)〜(5)の測定用テストピースを射出成形した。
【0086】
各評価については、次に述べる方法にしたがって測定した。
【0087】
(1)液晶性ポリエステル(B)の数平均分散径および数平均アスペクト比の測定
ポリカーボネート系樹脂(A)中の液晶性ポリエステル(B)の分散粒子の数平均分散径および数平均アスペクト比の測定は、ASTM D256に従って作成したアイゾット衝撃強度測定用1/8インチバーの中心部を流れ方向に切削して得られた切片をTEMにより観察し、分散粒子50個の平均値をそれぞれ数平均分散径および数平均アスペクト比として求めた。なお、分散粒子径は長径方向で測定した。
【0088】
なおアスペクト比は、各粒子のアスペクト比を測定した後、平均して数平均アスペクト比とした。
【0089】
(2)流動性
上記成形機を用いて、射出速度99%、射出圧力800kgf/cm2、シリンダー温度310℃、金型温度80℃の条件で0.5mm厚×12.7mm巾の試験片の流動長(棒流動長)を測定した。
【0090】
(3)耐衝撃性
ASTM D256に従い、1/4インチ(ノッチ付き)バーアイゾット衝撃強度を測定した。
【0091】
(4)制振性
220×12.7×3.2mm厚の試験片を成形し、得られた試験片に8φ×0.3mm厚の磁性鋼を固定部から50、150mmの位置にグリスで接着し、高低温槽中にセットして1次共振周波数での損失係数を求めた(電力増幅器(B&K製2706型)、前置増幅器(B&K製2639S型)および2チャンネルFFT分析器(B&K製2034型)を用いる)。評価は、振幅が1/10に減衰するまでの振動回数により行った。
【0092】
(5)耐摩耗性
30×30×3mm厚の角板を上記成形機を用いて成形し、その角板をジグに固定し、5kgの荷重をかけた18mmφ×2mm厚の円筒型アルミニウム角板の中心部に押しあてて円筒型アルミニウムを20r.p.m.で1時間回転させて成形品表面のへこみ量を評価した。(○:0.3mm未満、×:0.3mm以上)
【0093】
【表1】
【0094】
表1からも明らかなように本発明の組成物は比較例に比べ、流動性に優れ、かつ得られた成形品は耐衝撃性、制振性および耐摩耗性が良好であるため、振動特性が特に要求される光学系駆動装置用部品を取得する場合に非常に優れていることがわかる。
【0095】
【発明の効果】
本発明の光学系駆動装置用部品の成形に用いられる熱可塑性樹脂組成物は、成形時の流動性が改良され、成形品の耐衝撃性、制振性、耐摩耗性が優れているため、これらの特性、特に振動特性が要求される光学系駆動装置用部品に好適な材料であり、この光学系駆動装置部品は非常に信頼性の高い部品である。
Claims (3)
- ポリカーボネート系樹脂(A)100重量部に対して液晶性ポリエステル(B)0.5〜100重量部を含有してなる樹脂組成物100重量部に対し、充填材0.5〜300重量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物からなる光学系駆動装置用部品であって、該熱可塑性樹脂組成物からASTM D256に従って作成したアイゾット衝撃強度測定用1/8インチバーの中心部を流れ方向に切削して得られた切片をTEMにより観察したときの、該液晶性ポリエステルの分散粒子50個について測定して算出した数平均分散径(長径)が0.8〜3μmであり、かつ数平均アスペクト比(長径/短径)が3未満であることを特徴とする光学系駆動装置用部品。
- 光学系駆動装置用部品がCD、MD、DVD、CD−ROM、DVD−ROM、MOおよびPDから選ばれた光学系駆動装置の(軸受け部を有する)光学系取り付けブロック、スライドベース、対物レンズ保持体、対物レンズ保持体固定部材、ガイドホルダ、補強板、ラック、(2軸)アクチュエーター、(2軸)アクチュエーターベース、ボビンおよびカラーから選ばれた1つである請求項1または2記載の光学系駆動装置用部品。
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