JP4537683B2 - 耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体 - Google Patents

耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体 Download PDF

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Description

本発明は、突合せ溶接部が万一脆性破壊を生じても大規模な破断に至らない溶接構造体、例えば大型コンテナ船、バルクキャリアー、建築鉄骨構造体、浮体構造体や海洋構造物等の耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体に関するもので、特に大型コンテナ船やバルクキャリアー等の安全性を向上させた船殻の溶接構造体に関するものである。
溶接構造体であるコンテナ船やバルクキャリアーは、タンカー等と異なり船倉内の仕切り壁が少なく、船上部の開口部が大きく開いている。即ち、タンカーは油槽により内部が細かく仕切られており、内部壁や上甲板に強度を分担させた構造となっている。これに対して、コンテナ船は、積載能力の向上や荷役効率の向上等のため上部開口部を大きくとった構造となっている。このため、コンテナ船では特に船体外板の強度を確保する必要がある。
近年、コンテナ船は大型化し、6000〜20000TEUの大型コンテナ船が製造されたり、計画されたりするようになってきて、船体外板の鋼板は厚肉化、高強度化し、板厚50mm以上で降伏強度390N/mm級以上の鋼板が用いられるようになってきている。なお、TEU(Twenty feet Equivalent Unit)は、長さ20フィートのコンテナに換算した個数を表し、コンテナ船の積載能力の指標を示している。
船体外板となる鋼板は大入熱溶接である例えばエレクトロガスアーク溶接方法により溶接されているが、溶接入熱が大きいため大きな溶接熱影響部が形成され、溶接継手での脆性き裂発生の原因となっていた。
このため、溶接継手等での脆性き裂を防止するために、脆性破壊特性と疲労特性に優れた鋼板(TMCP鋼板)が開発されている(例えば、特許文献1)。
これまで、6000TEU以下のコンテナ船では、板厚50mm程度のTMCP鋼板等が使用されていて、溶接継手でき裂が発生しても、溶接部の残留応力により、脆性き裂が溶接継手部から母材側に逸れていくので、母材のアレスト性能を確保しさえすれば、万一、溶接継手部で脆性き裂が発生しても母材で脆性き裂を停止できると考えられてきた。
また、板厚25mm程度の鋼板を用いた船殻の溶接構造体に関しては、複数の鋼板を交差状態に複合化して補強した構造が採用されていて、構造的に脆性き裂伝播停止性能が飛躍的に改善されている。例えば、図1に示すように隔壁1が複数枚の平板を突合せ溶接継手2によって接合して一体に形成されるとともに、隔壁1の表面に、補強材3が突合せ溶接継手2と交差するように隅肉溶接部4により取り付けられており、かつ、突合せ溶接継手2と隅肉溶接部4との干渉を逃し穴5の形成によって避けるようにしているものがある(例えば、特許文献2)
特開平6−88161号公報 特開平6−336188号公報(第4図)
しかしながら、上記特許文献1に記載のTMCP鋼板が開発された当時に比べ、コンテナ船の大型化が進み、6000TEUを超えるコンテナ船では板厚50mmを超える、かつ設計応力が高い高張力鋼の厚鋼板が使用されるようになってきている。このような厚鋼板では、溶接継手部の破壊靭性の程度によっては、脆性き裂が母材に逸れることなく、溶接継手部の熱影響域に沿って伝播することが本発明者らの8000トン大型試験機による大型破壊試験により明らかとなった。また、上記特許文献2に記載の発明の逃がし穴部の溶接部が廻し溶接継手の形状となり、疲労き裂が発生しやすい最も危険度の高い構造となるため、船体外殻のように疲労き裂の発生も懸念される溶接構造物に採用するには大きな問題がある。
そこで、本発明では、50mm以上の板厚の鋼板であっても、万一、突合せ溶接継手に脆性き裂が発生、伝播しても、船体構造等の溶接構造体の致命的な破断を防止できる溶接構造体を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、溶接構造体において、突合せ溶接部に交差するように補強材となる骨材を隅肉溶接で取り付け、該骨材として脆性破壊特性に優れた表層細粒鋼を用いると共に、前記突合せ溶接部と骨材とが交差する領域のうち、少なくとも突合せ溶接部のビード幅以上の幅で、かつ骨材の表面または裏面から板厚の70%以上の長さを有する範囲を完全溶け込み溶接を施すことにより、突合せ溶接継手に脆性き裂が発生、伝播しても、脆性き裂を骨材に突入させて、き裂を分岐させ、かつ骨材にて脆性き裂の持つエネルギーを吸収しつつ脆性き裂を停止させることで、脆性き裂の伝播が防止でき溶接構造体の致命的な破断を防止できることを見出して、本発明を完成した。
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)突合せ溶接部に脆性き裂の発生、伝播が想定される溶接構造体において、突合せ溶接部に交差するように配置された骨材に、表層部および裏層部において3mm以上の厚み領域にわたり、0.5〜5μmの平均円相当粒径を有すると共に、当該領域の集合組織が板面に平行な面において(100)結晶面のX線面強度比が1.5以上である表層細粒層を有する鋼板を用いてクラックアレスターの機能を付与し、前記突合せ溶接部と骨材とが交差する領域のうち、少なくとも突合せ溶接部のビード幅方向でのビード幅以上の幅Wで、かつ脆性き裂の伝播が想定される骨材の表面または裏面から骨材の板厚の70%以上の骨材の板厚方向の長さBを有する範囲を溶接して、突合せ溶接部を伝播してきた脆性き裂を前記骨材に導くようにしたことを特徴とする、耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体。
(2)前記溶接構造体が船舶の船殻外板であることを特徴とする、上記(1)記載の耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体。
(3)前記船殻外板の板厚が50mm以上の厚手材であることを特徴とする、上記(2)の耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体。
(4)前記骨材が、前記表層細粒層を有する鋼板を少なくとも2枚以上積層させたものであることを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体。
(5)前記骨材が、前記表層細粒層を有する鋼板と構造用鋼板とを積層させたものであって、該骨材を成すこれら積層された各鋼板のうちの少なくとも表裏最外層を成す鋼板は前記表層細粒層を有する鋼板からなることを特徴とする、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体。
本発明によれば、万一、溶接構造体の突合せ溶接継手に脆性き裂が発生し、伝播してもその脆性き裂の伝播を止めることができ、溶接構造体が破壊するような致命的な損傷を防止することができるという顕著な作用効果を生じる。
本発明者らによる鋼板の脆性破壊に係る試験によれば、板厚50mm以下の鋼板に、図2に示すように、鋼板1の突合せ溶接継手部2と交差するように隅肉溶接4により一般鋼で製作した骨材(補強板)を取り付けると、突合せ溶接継手部2(溶接金属と鋼板1の境目)に脆性き裂が発生しても骨材3により脆性き裂の伝播が止められて(アレスト)、破断に至らないことも多い。しかし、板厚が50mmを超え、70mm程度と板厚が厚くなると、突合せ溶接部自体の靭性が極めて低下する。そのため、骨材3と突合せ溶接継手との接合を部分的に溶接せずに、骨材3に脆性き裂が伝播しないように工夫したところ、骨材3が健全であっても、骨材3との取り付け部(突合せ溶接部と骨材3との境界)を脆性き裂が通過してしまい、突合せ溶接部{FL(フュージョンライン)から溶接HAZ(熱影響部)の領域を意味する。以下、同様とする。}にそってき裂が更に伝播し大規模な破壊になる可能性が判明した。即ち、50mm以上、特に70mm以上の厚肉鋼板については、骨材を隅肉溶接で取り付けても、構造的なクラックアレスターとして機能し得ないことのあることを見出した。
そこで、突合せ溶接継手部2で脆性き裂が発生した場合に、その脆性き裂を骨材3に選択的に導入させ、骨材3で脆性き裂の伝播エネルギーを吸収させることを着想し、骨材3を隅肉溶接して溶接継手の試験体を製作し、さらに、船殻外板に相当する鋼板1の突合せ溶接部と骨材が交差する部分を予め隙間を空ける等の準備をしておき、その部分を埋め込み溶接することにより完全溶け込み溶接をした試験体を作製した。その後、この試験体を用いて、脆性き裂の伝播経路を調査する実験を行った。その結果、耐脆性破壊伝播特性が低い通常の骨材を使用した場合では、突合せ溶接継手部2で発生した脆性き裂は骨材に選択的に伝播し、骨材3は脆性破断されるが、突合せ溶接部に沿って伝播したき裂の速度(き裂の伝播エネルギー)は大幅に低下し、溶接構造体としてのクラックアレスターの機能が発揮できる可能性を知見した。
次に、上記実験で用いた骨材(補強板)3として、脆性き裂が侵入した後、脆性き裂を停止可能な鋼板、つまり、図3(b)に示すように、鋼板の表裏層部に、3mm以上の厚み領域にわたり、0.5〜5μmの平均円相当粒径の結晶粒径を有し、かつ当該領域の集合組織が鋼板の表裏面における(100)結晶面のX線面強度比が、1.5以上である表層細粒層6を有する耐脆性破壊特性に優れた鋼板を用い、同様に、骨材3を隅肉溶接して溶接継手を作製し、さらに、船殻外板に相当する鋼板1の突合せ溶接部と骨材3が交差する領域を完全溶け込み溶接をした。その後、この試験体を用いて、脆性き裂の伝播経路を調査する実験を行った。その結果、突合せ溶接継手部2が脆性破壊を起こし、突合せ溶接部に沿って脆性き裂が伝播した後、接合位置から骨材3の板厚内部に選択的に脆性き裂が浸入し、骨材3の表裏層部における脆性き裂の伝播エネルギーの吸収効果により、最大でも数十mm伝播するだけで脆性き裂の伝播を停止させ、致命的な損傷を回避できることを確認した。
なお、突合せ溶接継手の溶接ビードと骨材との接合部分には、予め5〜20mmくらいの間隙を確保しておけば、間隙のない部分を先に隅肉溶接した後に、間隙を埋めるようにして溶接すれば、完全溶け込み溶接が出来る。
また、クラックアレスターとして使用する上記表裏層細粒層を備えた骨材は、船殻外板の板厚が70mmであったとしても、その板厚より薄い50mm程度であっても、十分なクラックアレスターとしての機能を有する。しかし、骨材と船殻外板の板厚とをほぼ同厚とすることが好ましい。
また、船体構造の剛性を確保するために、骨材に50mm以上の鋼板が必要な場合には、図3(a)に示すように、アレスターとして機能させる薄肉の鋼板である骨材3を少なくとも2枚以上積層させて50mm以上とすることにより、50mm以上の厚肉の鋼板と同等の骨材(補強板)3とすることができる。あるいは、図4に示すように、その他の剛性を確保する機能がある構造用鋼の鋼板7とアレスター機能を有する表裏層細粒層を備えた鋼板6とをサンドイッチ状に積層させて用いれば、一層合理的な設計が可能となる。この際、表裏層細粒層を備えた鋼板6に挟まれた構造用鋼板7も鋼板6と同様に鋼板1に溶接することにより、表裏層細粒層鋼板6へ脆性き裂を導入させることが好ましい。
本発明は、船体構造のみならず、溶接継手において脆性き裂の発生、伝播を防止するために溶接構造物に広く適用可能な溶接構造体であり、建築鉄骨の溶接継手構造、海洋構造物の溶接構造、橋梁の溶接構造、メガフロートと称される浮体構造等に適用できる。
本発明では、表裏層結晶粒を細粒化した脆性破壊特性に優れた鋼材を骨材として用いることにより、鋼板母材の脆性き裂の伝播を効果的に防止することができる。例えば、鋼板の表層部および裏層部において3mm以上の厚み領域にわたり、0.5〜5μmの平均円相当粒径を有し、かつ板面に平行な面において(100)結晶面のX線面強度比が1.5以上である鋼板である。
本発明の骨材としての鋼板又は、船殻外板としては公知の成分の溶接用構造用鋼から製造することができる。その成分は、例えば、質量%で、C:0.02〜0.20%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.3〜2.0%、Al:0.001〜0.20%、N:0.02%以下、P:0.01%以下、S:0.01%以下を含有する鋼を基本成分とし、母材強度の上昇、継手靭性の向上等の目的のため、要求される性質に応じて、Ni、Cr、Mo、Cu、W、Co、V、Nb、Ti、Zr、Ta、Hf、REM、Y、Ca、Mg、Te、Se、Bの内の1種又は2種以上を含有した鋼である。
また、骨材としての鋼板は、例えば、上記成分の溶接用構造用鋼の鋼材をAc3点以上の温度にて圧延し、圧延途中に鋼材表層から3×(冷却時のスラブ厚み)/(圧延終了後の鋼板の厚み)mm以上の領域を2℃/sec以上の冷速でAr1点以下まで急冷して、その後、当該表層部をAr3点以上の温度としてから圧延を開始もしくは再開し、(Ac3−50)℃から(Ac3)℃の範囲で圧延を終了し、その後Ac3点以上に復熱させることなく、少なくともAr1点迄を当該表層部を1℃/sec以上の冷速で冷却することによって製造することができる。
集合組織の発達した鋼板のセパレーションは板厚方向で割れを生じるために、き裂や切欠先端の応力集中度の低下が期待でき、鋼材の脆性破壊に対して有利である。
このセパレーションは(100)面と(111)面の集合組織が発達している組織において、応力が負荷されると、それに応じた歪(変位)が結晶方位により異なるため、(100)集合組織と(111)集合組織の界面でずれが生じ、き裂の芽が発生した結果形成されることが知られている。しかし、脆性き裂伝播においては、セパレーションがほとんど観察されない。歪速度が大きい脆性破壊伝播において、き裂先端の応力状態を緩和させるには、集合組織コロニーが0.5〜5μm以下の平均円相当粒径を有し、板面に平行な面において(100)結晶面のX線面強度比が1.5以上の強度比を有することが必要である。そして、鋼板の表層部および裏層部において3mm以上の領域にわたって上記細粒組織を設けることにより、脆性破壊特性と疲労強度特性が著しく向上する。
本発明では、表層部および裏層部において3mm以上の厚み領域にわたり、0.5〜5μmの平均円相当粒径を有し、かつ板面に平行な面において(100)結晶面のX線面強度比が1.5以上である脆性破壊特性に優れた鋼板を骨材として用い、この骨材へ選択的に脆性き裂を導入させることにより、構造体としてのクラックアレスター機能を効果的に発揮させるためには、骨材と突合せ溶接部とが交差する接合部が特に重要である。
骨材と突合せ溶接部とが交差する接合条件を種々変化させて、突合せ溶接部で発生した脆性き裂が骨材に進入する経路を実験的に確認した結果、以下の知見を得た。
つまり、脆性き裂は、突合せ溶接部{FL(フュージョンライン)から溶接HAZ(熱影響部)の範囲}を伝播しやすく、また、伝播したき裂は突合せ溶接部と骨材が交差する接合領域から骨材の板厚中央部へ進入するため、少なくとも突合せ溶接部のビード幅方向でのビード幅以上の幅Wで、かつ脆性き裂の伝播が想定される骨材の表面または裏面から骨材の板厚の70%以上の骨材の板厚方向の長さBの範囲を、完全溶融させて接合することにより、脆性き裂を選択的に骨材へ導入でき、耐脆性破壊特性に優れた鋼板を用いた骨材のクラックアレスター機能を効果的に発揮させることができる。
これらの理由から本発明では、突合せ溶接部を有する構造部位に対し骨材を隅肉溶接する前に、突合せ溶接部と骨材とが交差する領域のうち、少なくとも突合せ溶接部のビード幅方向でのビード幅以上の幅Wで、かつ脆性き裂の伝播が想定される骨材の表面または裏面から骨材の板厚の70%以上の骨材の板厚方向の長さBを有する範囲を完全溶け込みした溶接を施すこととした。
また、上記完全溶け込み溶接する長さ範囲は、突合せ溶接部のビード幅の1.1倍以上であるのがより好ましい。
図5は、骨材3を鋼板1に隅肉溶接した後に、骨材3と鋼板1の突合せ溶接部2とが交差する領域の一部を完全溶け込み溶接した溶接構造体の斜視図(a)と、鋼板1表面における骨材3と突合せ溶接部2との交差領域の部分拡大図(b)及びそのI−I側面図(c)を示すものである。
図5において、Wが本発明で規定する完全溶け込み溶接を施す範囲における幅(ビード幅方向)であり、Bがその長さ(骨材の板厚方向)である。
以下、本発明を実施例に基いて詳細に説明する。
板厚が25mm、50mm、及び70mmの3種類の厚みの表面改質鋼板及び一般鋼板(構造用鋼板)を骨材として準備した。
なお、表面改質鋼板は、表裏層の微細結晶粒層の厚み(深さ領域)、結晶粒径及び(100)面強度比が異なる鋼板を準備した。また、一般鋼板は造船用降伏強度390MPa級Dグレード鋼板である。
図6(a)〜(c)は溶接構造体のき裂伝播試験のための試験片を示す図であり、(b)は(a)のI−I側断面、(c)は試験片8の部分拡大図である。試験片8は、図6(a)に示すように、板厚70mm×板幅1250mmの2枚の鋼板(構造用鋼板)をエレクトロガスアーク溶接により突合せ溶接し、その両端にはピン11を有するタブ板14を連接15している。また、図6(b)及び(c)に示すように、試験片8のエッジ(上端)から1000mmの位置で突合せ溶接部9に交差するように1枚、2枚重ねまたは3枚重ね状態の板幅500mmの骨材3を隅肉溶接で接合して製作している。
試験片8に骨材3を隅肉溶接した後に、予め骨材3と突合せ溶接部9の間隙を確保した領域の一部に溶接を施すことにより、所定の幅および長さの範囲を完全溶け込み溶接を行なった。隅肉溶接する際の溶接材料や、骨材と突合せ溶接部との間隙を埋める溶接をする際の溶接材料は、溶接性、作業性、溶接部の靭性等の品質を確保できるものであれば、特に限定することはなく、例えば本検討では、YM−60C溶接ワイヤーを使用し、CO溶接を実施した。
間隙部分も特に限定はしないが、本検討では、骨材に45度の角度で表裏面から開先加工をおこない、間隙の距離は10mmとした。間隙部の長さは突合せ溶接部の幅の110%以上あればよく、ここでは70mmとした。
そして図6(c)に示すように、溶接部9のエッジから200〜400mmの位置に切欠10を設けた。
き裂伝播試験は、試験片8のき裂伝播部分である溶接部9を冷却し、その温度を−10℃の試験温度(一定温度試験)とし、ピン11により矢印方向に荷重12を負荷して、き裂伝播状態とし、き裂が停止する位置13までの停止き裂長(mm)16を調査した。また、き裂伝播領域の応力は、歪ゲージにより確認した。
き裂伝播試験の試験条件及び結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明例のNo.1〜3は、骨材として本発明範囲内の表面改質鋼を使用し、かつ骨材と突合せ溶接部との交差領域の本発明範囲内に穴埋め溶接を実施したもので、特に、本発明例のNo.2、3は同質の表面改質鋼を重ねて用いた例である。
No.1〜3のいずれも停止き裂長(切欠長200mm+き裂伝播長さの合計)が1000mm以下であり、骨材に選択的にき裂が導入され、そこでき裂伝播エネルギーの吸収によりき裂伝播がアレストされた。
また、本発明例のNo.4は、骨材として鋼板を2枚重ねしたものであり、この場合も停止き裂長が1000mm以下であり、骨材によりき裂伝播がアレストされた。
これに対して、比較例No.1は表層改質鋼板の骨材を用いているが、骨材と突合せ溶接部との接合部の完全溶け込み溶接の長さBの範囲が本発明が規定するB≧骨材板厚の70%の要件を満たしていないので充分な溶け込み溶接がなされず、骨材に選択的にき裂伝播が導入されずに、骨材でのき裂のブレーキの役割を充分に果たせなかった。
比較例のNo.2は、表層改質鋼板の2枚重ねの骨材を用いているが、骨材と突合せ溶接部との接合部の完全溶け込み溶接の幅Wおよび長さBのいずれの範囲も、本発明が規定するW≧突合せ溶接部のビード幅、B≧骨材板厚の70%の要件を満たしていないので充分な溶け込み溶接がなされず、骨材に選択的にき裂伝播が導入されずに、骨材でのき裂のブレーキの役割を充分に果たせなかった。
比較例No.3は、表層改質鋼板の骨材を用いているが表裏改質層の(100)結晶面のX線面強度比が本発明が規定する1.5以上の要件を満たしていないので、き裂伝播を停止できなかった。
比較例No.4は、骨材として通常の鋼板を用いているため、表裏層も含めて厚さ方向全体における結晶粒が本発明が規定する結晶粒径及び(100)結晶面のX線面強度比の要件を外れており、骨材に選択的に導入された脆性き裂は骨材を伝播してしまったため、突合せ溶接部のき裂伝播も停止できなかった(アレスト不能)。
Figure 0004537683
船殻の補強溶接構造体を示す図である。 溶接構造体の脆性き裂伝播を説明するための図である。 脆性き裂伝播を防止するための溶接構造体を示す図である 材質の異なる鋼板をサンドイッチ状にして形成した骨材を用いた溶接構造体を示す図である。 本発明の溶接構造体における完全溶け込み溶接部の幅Wと長さBを示す図である。 溶接構造体のき裂伝播試験のための溶接構造体の試験片を示す図である。
1 鋼板(隔壁)
2 突合せ溶接継手部
3 骨材(補強板)
4 隅肉溶接部
5 逃がし穴
6 1〜5μmの結晶粒径を有する表層細粒層
7 構造用鋼板
8 試験片
9 溶接部
10 切欠き
11 ピン
12 荷重
13 停止位置
14 タブ板
15 連接
16 停止き裂長
17 隅肉溶接
W 完全溶け込み溶接範囲における幅(ビード幅方向)
B 完全溶け込み溶接範囲における長さ(骨材の板厚方向)

Claims (5)

  1. 突合せ溶接部に脆性き裂の発生、伝播が想定される溶接構造体において、突合せ溶接部に交差するように配置された骨材に、表層部および裏層部において3mm以上の厚み領域にわたり、0.5〜5μmの平均円相当粒径を有すると共に、当該領域の集合組織が板面に平行な面において(100)結晶面のX線面強度比が1.5以上である表層細粒層を有する鋼板を用いてクラックアレスターの機能を付与し、前記突合せ溶接部と骨材とが交差する領域のうち、少なくとも突合せ溶接部のビード幅方向でのビード幅以上の幅Wで、かつ脆性き裂の伝播が想定される骨材の表面または裏面から骨材の板厚の70%以上の骨材の板厚方向の長さBを有する範囲を溶接して、突合せ溶接部を伝播してきた脆性き裂を前記骨材に導くようにしたことを特徴とする、耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体。
  2. 前記溶接構造体が船舶の船殻外板であることを特徴とする、請求項1記載の耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体。
  3. 前記船殻外板の板厚が50mm以上の厚手材であることを特徴とする、請求項2記載の耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体。
  4. 前記骨材が、前記表層細粒層を有する鋼板を少なくとも2枚以上積層させたものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体。
  5. 前記骨材が、前記表層細粒層を有する鋼板と構造用鋼板とを積層させたものであって、該骨材を成すこれら積層された各鋼板のうちの少なくとも表裏最外層を成す鋼板は前記表層細粒層を有する鋼板からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の耐脆性破壊特性に優れた溶接構造体。
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