JPH0768380A - 厚鋼板の高能率すみ肉溶接方法 - Google Patents

厚鋼板の高能率すみ肉溶接方法

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JPH0768380A
JPH0768380A JP32469993A JP32469993A JPH0768380A JP H0768380 A JPH0768380 A JP H0768380A JP 32469993 A JP32469993 A JP 32469993A JP 32469993 A JP32469993 A JP 32469993A JP H0768380 A JPH0768380 A JP H0768380A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】板厚60mm超え100mm以下の厚鋼板の高
能率すみ肉溶接方法を提供する。 【構成】フラックスの化学組成及び粉体特性、母材の化
学組成、ワイヤの化学組成並びに溶接条件を適正化する
ことにより、簡単な開先加工で、厚鋼板のT型すみ肉の
完全溶込み両側1パスサブマージドアーク溶接を行う。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は厚鋼板の高能率すみ肉溶
接方法に関し、詳しくは、簡単な開先加工を行い、厚板
のT型すみ肉サブマージドアーク溶接を両側1パスで行
う厚鋼板の高能率すみ肉溶接方法に係る。
【0002】
【従来の技術】近年、高層ビルが各地で建設されるよう
になったが、それにつれて使用される鋼材の厚さも次第
に厚くなり、例えば柱として使用されるいわゆるボック
ス柱では板厚100mmのものもあり、また、梁として
使用されるH形鋼の厚さも同様に増加しており、このた
め高層ビルに使用される部材の組立加工の能率向上が大
きな問題となっている。
【0003】一般に、ビルトHと言われる溶接H形鋼の
すみ肉溶接部は、部分溶込溶接若しくは完全溶込溶接に
より、また、クレーンガーダ重構造物などに用いられる
溶接H形鋼は通常完全溶込溶接で施工されている。この
完全溶込溶接方法はウェブが比較的薄い場合のものにつ
いては既に知られており、例えば特公昭56−3702
9号公報がある。これは細径ワイヤを用いプライマ鋼板
を溶接する場合にピットやブローホールを防止しようと
するものであり、本発明者らが目的としているところと
その主旨がやや異なるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来、ウェブ厚が厚く
なると一般にウェブ側に開先加工を施し、多層の表溶
接、裏ガウジング、グラインダ仕上後、多層の裏溶接を
行い、完全溶込を得る方法がとられてきたが、開先加
工、ガウジング、グラインダ仕上などの各工程が不可欠
であり、省力化はもとよりアークタイム率を向上させる
ことが困難であった。
【0005】ところで厚鋼板のすみ肉溶接完全溶込を簡
単な開先加工、ガウジングなしの両側1パス溶接を達成
しようとすると種々の問題があり、その解決が要望され
ている。一般に、薄肉H形鋼のすみ肉溶接では溶融型フ
ラックスが使用されるケースが多い。これは溶融型フラ
ックスの方が融点が低く、高速溶接に適しているためで
あるが、高速になるほどビード幅の狭い凸状ビードにな
り易いという欠点がある。これを防止するため、フラッ
クスを発泡させ軽質化してビード幅を広げる工夫がなさ
れているが、融点が低いため厚肉の大入熱溶接ではスラ
グが増えすぎて良好な外観を有するビードを得ることが
むずかしいという問題がある。
【0006】一方、焼成型フラックスは製法上単体酸化
物あるいは炭酸塩の混合結合体であるため一般に融点が
高く大入熱溶接に適している。また、完全溶込溶接では
溶込みを確保しなければならないため、必然的に母材希
釈が多くなり、C量の多い鋼板では高温割れが発生し易
いという問題もある。高温割れは溶接金属の化学組成の
みならず、ビード断面形状にも大きく影響され、ビード
幅(W)に対し溶込み深さ(P)が大きいとき、すなわ
ち、W/Pが小さいとき発生し易い。従って、高温割れ
を防止するためにはビード幅をできるだけ広くしなけれ
ばならない、という問題があった。
【0007】本発明は上記問題の解決を目的とし、具体
的には、簡単な開先加工を行い、厚板鋼板の高能率すみ
肉溶接方法を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、C量0.18
wt%以下を含有する板厚60mm超え100mm以下
のウェブ鋼板とフランジ鋼板をT字状に突合わせ、該ウ
ェブ鋼板の両側に板厚の0.30〜0.40倍の深さの
開先を設け、2電極法で完全溶込法により両側1パスサ
ブマージドアーク溶接するに当り、下記焼成型フラック
ス(A)とワイヤ(B)とを用い、先行極(L極)に対
する後行極(T極)の電流比(IT /I L )を0.65
〜1.00の条件下で先行極に3°〜15°の後退角
を、後行極に3°〜20°の前進角を設けて溶接するこ
とを特徴とする厚鋼板の高能率すみ肉溶接方法である。 (A)焼成型フラックス:SiO2 ,MgO,CaOの
各成分の合計量が45〜65wt%、TiO2 ,Al2
3 ,CaF2 の各成分の合計量が5〜20wt%、各
種金属粉が25〜38wt%、溶接時に添加原料が熱分
解して発生するガス量が5〜15wt%、残部が不可避
的不純物であるフラックスからなり、累積粒度分布50
wt%の粒子のメジアン径が500〜800μmであ
り、粒子径295μm以下の粒子が前記フラックス全体
の15wt%以下である焼成型フラックス (B)ワイヤ ワイヤC量(wt%)をC1 、ウェブ鋼板のC量(wt
%)をC2 (≦0.18wt%)、フランジ鋼板のC量
(wt%)をC3 (≦0.18wt%)とし、 0.50C1 +0.28C2 +0.22C3 ≦0.12
0 を満足するワイヤC量およびMn:1.20〜2.50
wt%を含む、直径4.8〜6.4mmφのワイヤ ここで、さらに、先行極のみをフランジ側に5°〜15
°傾け、ウェブ面とフランジ面とが交差する位置からフ
ランジ面の上方に向かって先行極は5〜15mm、後行
極は2〜12mm離れた位置を狙って溶接することが好
ましい。
【0009】
【作用】以下、本発明の手段たる構成ならびにその作用
について詳しく説明すると、次の通りである。本発明者
等は簡単な開先加工を行い厚板鋼板を効率よくすみ肉サ
ブマージドアーク溶接する方法について検討を行ったと
ころ、特定の各種成分を含有する焼成型フラックスと、
特定の成分、ワイヤ径を有するワイヤを用い2電極サブ
マージドアーク溶接すればよいという知見を得、既に特
開平5−57448号公報で開示している。ところが適
用板厚が更に大きくなると、より厳しい制限なしでは良
好な溶接部が得られないことが判った。そこで更に進ん
で研究開発を行い、この研究に基づいて本発明は成立し
たものである。
【0010】本発明者等の研究結果によれば、次のこと
が明らかになった。 (1)厚鋼板の高温割れを防止しビード幅を広くするた
めには、焼成型フラックスの化学組成とワイヤ径を一定
の範囲にコントロールすることが必要である (2)板厚が大きくなると溶接入熱量も大となり、高温
割れ防止のための限界C量が低くなってくる (3)スラグ巻込みを防止するためには、太径ワイヤを
用い、溶込み底部をラウンドタイプ(曲率半径大)にす
ることが必要であり、溶込み底部がシャープ(曲率半径
小)になると、スラグ巻込みが発生しやすくなるととも
に高温割れも起り易く、また、太径ワイヤはビード幅を
広げる上でも有利である (4)2電極サブマージドアーク溶接においては、先行
極(L極)、後行極(T極)の電流比(IT /IL )も
スラグ巻込みに影響し、一定の比であればスラグ巻込み
が発生しにくい (5)さらに、先行極、後行極トーチに一定の角度を設
けることにより溶込みが深く外観の良好なビードが得ら
れる (6)板厚が大きくなると自己拘束が大きくなり、水素
割れも発生し易くなるためフラックスの水素量を低くす
る必要がある (7)(5)の条件にさらにワイヤ狙い位置を限定する
と、一層少ない電流でも溶込みが深く外観の良好なビー
ドが得られる そこで、上記の様々な検討を総合的に行った結果、簡単
な開先加工のみを行い、ガウジング、グラインダなどの
工程なしで、完全溶込みならびに部分溶込みすみ肉溶接
を両側1パスで行う方法を完成した。
【0011】以下、本発明法について詳しく説明する。
まず、本発明法に用いられるフラックスについて説明す
る。フラックスはビード外観を良好に保つ必要がある
が、造滓剤としてベースとなるSiO2 はビード幅を広
くし、ビード表面を平滑に保つ効果がある。MgOは生
成スラグの融点を上げ大入熱溶接時の作業性を改善する
とともにフラックスの塩基度を上げ、溶接金属の酸素量
を低減して靭性を向上させるのに重要な成分である。C
aOはMgOと同様、生成スラグの耐火性を向上させ、
フラックスの塩基度を上げる成分として重要であり、C
aCO3 として添加すれば拡散性水素量を低減するCO
2 発生源としても有効である。重要なこれらの各成分は
フラックス構成上一定以上必要であり、ビード外観、フ
ラックス耐火性の面からこれら各成分を合計量として4
5wt%以上含む必要がある。一方、これら各成分を合
計量として65wt%を超えるとフラックス融点が高く
なりすぎてビード幅が細くなり、外観も劣化するため、
SiO2 ,MgO,CaOの各成分の合計量の値を45
〜65wt%とした。
【0012】TiO2 はスラグ剥離性を改善すると共
に、アーク安定作用のある成分であり、Al23 はス
ラグ粘性を調整する重要な成分である。また、CaF2
もスラグの流動性をコントロールする上で重要な成分で
あり、これらの合計が5wt%未満ではスラグ剥離性が
劣化したり、スラグの粘性が大きすぎて良好な外観のビ
ードが得られない。これら各成分の合計量が20wt%
を超えると逆にスラグ粘性が小さくなりすぎたり、アー
クが不安定になるため、TiO2 ,Al23 ,CaF
2 の合計量の値は5〜20wt%とした。
【0013】これらのスラグ構成成分に加え、脱酸剤、
合金元素および溶着量を増加させるための金属粉を25
wt%以上添加する必要がある。この添加量が25wt
%未満では溶接金属の靭性を確保することが難しいだけ
でなく、通常の溶接条件範囲内で開先を十分に埋めるだ
けの溶着量が確保できない。一方、38wt%を超える
と融点が高くなりすぎ良好なビードを得ることができな
い。従って、金属粉は25〜38wt%とした。金属粉
としては鉄粉、フェロマンガン、フェロシリコン、フェ
ロチタン等の粉末が使用される。
【0014】また、炭酸塩の形で含まれるガスは溶接金
属中の水素量を低減させるために必要であるが、ガス量
が5wt%未満ではその効果は乏しく、15wt%を超
えるとガスの吹上げによるビード形状の劣化が生じる。
従って、ガス発生量は5〜15wt%とした。この値は
板厚が小さい場合はもっと少なくて済むが板厚が厚い場
合にはより低水素化が必要である。
【0015】ところで上記組成で良好な溶接作業性を示
すことは認められたが、アークを安定させかつ、欠陥の
無い、幅の広いビードを安定して得るために粉体特性を
更に検討したところ、粒度構成も限定することが重要で
あることがわかった。すなわち、フラックスの粒度構成
は溶接作業性に顕著に影響し、メジアン径が500μm
より小さい場合はフラックス溶融量が増加し、しかも、
フラックスの流動性が悪化するため、アーク空洞からの
ガスの逸出が困難となりアークが不安定化する。一方、
800μmを超えると粗くなりすぎ、溶融が不均一とな
るため、この場合にもアークは不安定となる。従って、
フラックス累積粒度分布において50wt%を占める粒
子のメジアン径は500〜800μmの範囲とした。
【0016】また、製造上不可避な微粒子において29
5μm径以下のものは15wt%以下にしなければなら
ず、これを超えるとアンダーカットの発生が著しくな
る。開先加工なしで溶接する場合、最も問題となるのは
母材希釈量が多いため、溶接金属中のC量が多い場合に
は高温割れが発生し易いことである。従って、本発明の
技術のキーポイントは如何にして高温割れの発生を防止
するかにある。
【0017】割れに最も影響する成分はC量であること
から溶接金属中のC量を低減しなければならない。本技
術のような溶接入熱の大きいT型すみ肉両側1パスサブ
マージドアーク溶接では母材の希釈が大きいため溶接金
属のC量は母材のC量によって大きく影響され、母材C
量によってワイヤC量を調整しなければ割れを防止する
ことがむずかしい。後記する条件を全て設定した上で本
技術を適用するに当り種々の板厚について母材の希釈量
を測定したところ、ウェブ側の希釈率は最大で28%、
また、フランジ側の希釈率は最大で22%であった。拘
束割れ試験により割れの発生する計算上のC量を求めた
ところ、計算値で0.120wt%以下であれば割れを
防止できることが明らかになった。このときの溶接金属
中C量の分析値は0.110wt%以下となるが、実際
の溶接では溶融池内においてCとOの反応によりCOガ
スやCO2 ガスとして逸出すため、計算値よりもC量は
低値となる。
【0018】すなわち、ワイヤC量(C1 (wt%))
は 0.50C1 +0.28C2 +0.22C3 ≦0.120 (1) を満足する必要がある。ここで、 C1 :ワイヤC量(wt%) C2 :ウェブ鋼板のC量(wt%) C3 :フランジ鋼板のC量(wt%) である。ウェブ鋼板やフランジ鋼板のC量が多い場合は
ワイヤのC量低減の限界を超えるため、母材C量はウェ
ブ、フランジ側とも0.18wt%以下とする必要があ
る。
【0019】なお、ワイヤ中のMn量については母材M
n量によらず、脱酸効果と強度確保のため1.20〜
2.50wt%とする必要がある。1.20wt%未満
では脱酸不足になり易く、低C溶接金属での強度が出に
くい。一方、2.50wt%を超えると強度が出すぎ
て、今度は硬さ上昇に伴う低温割れが起り易くなる。従
って、ワイヤ中のMn量は1.20〜2.50wt%と
した。ワイヤ径については4.8mmφ未満のワイヤで
はアークが細く、ビード幅が出にくいという問題があ
る。また、溶込み底部の形状が鋭くなってスラグ巻込み
等の欠陥も発生し易い。従って、ワイヤ径としては4.
8mmφ以上とする必要がある。一方、6.4mmφを
超えると剛性が大きすぎて溶接機に負荷がかかりすぎる
ので、ワイヤ径は4.8〜6.4mmφとした。
【0020】次にサブマージドアーク溶接方法について
説明する。2電極法で先行極(L極)、後行極(T極)
の電流比(IT /IL )を0.65〜1.00としたの
は以下の理由による。すなわち、IT /IL が0.65
より小さい場合は先行極によって生じたスラグ巻込みを
後行極で浮上させることができなくなり、結果的にスラ
グ巻込みが発生し易くなる。一方、IT /IL が1.0
0より大きくなるとT極自身の電流が大きいため、T極
によりスラグ巻込みが発生する。従って、電流比IT
L を0.65〜1.00とした。また、先行極に3°
〜15°の後退角を、後行極に3°〜20°の前進角を
設けることにより溶込みが深く、ビード断面形状及び外
観の良好なビードが得られるため、電極角度は上記の通
りとした。
【0021】ここで、さらに、先行極のみをフランジ側
に5°〜15°傾け、ウェブ面とフランジ面とが交差す
る位置からフランジ面の上方に向かって先行極は5〜1
5mm、後行極は2〜12mm離れた位置を狙って溶接
することにより、先行極をフランジ側に傾けない溶接方
法に比べ一層少ない電流で溶込みが深く、ビード断面形
状及び外観の良好なビードが得られる。
【0022】上記のような条件を設定しても、ウェブ厚
60mmを超える鋼板に完全溶込法を適用するために
は、ウェブに若干の開先加工が必要である。すなわち、
ウェブ板厚の0.3〜0.4倍の深さの開先加工を両側
にしない場合は、極めて深溶込みの溶接にしなければな
らず、現実的には無理である。ウェブ側にウェブ板厚の
0.3〜0.4倍の深さの開先加工を施すことにより両
側からのビードを完全にラップさせることが可能とな
る。開先加工の深さがウェブ厚の0.3倍より小さい場
合には溶込みを深くしなければならず、幅の狭いビード
となり、また、母材希釈量も多くなるため高温割れが起
りやすい。一方、開先深さがウェブ厚の0.4倍を越え
ると完全溶込みは得られるものの開先を埋めてかつすみ
肉ビードの形状を良好にするためには大量のメタルが必
要となり、能率的でなくなり、かつ得られる継手特性も
十分でないことから、完全溶込みではウェブの開先加工
はウェブ厚の0.3〜0.4倍深さとした。ウェブ厚が
100mmを超える場合にはウェブ厚の0.3〜0.4
倍深さの開先加工を施しても完全溶込みを指向すると、
(a)溶込みが深くなりすぎ、幅の狭いビードとなって
高温割れが起り易く、また、(b)母材希釈量が大きく
なって高温割れが起り易いという問題点がある。更にフ
ラックス中に鉄粉等の合金粉を添加しても開先を十分に
埋めてかつ良好なビードを得ることが困難となってく
る。
【0023】従って、ウェブ厚が60mmを超え100
mm以下の鋼板では、ウェブ厚の0.3〜0.4倍の深
さの開先をウェブの両側に加工することにより両側1パ
スの完全溶込みT型すみ肉高能率溶接が可能である。図
1はこのようなT型すみ肉溶接を示す説明図であり、板
厚80mmのフランジ2に板厚80mmのウエブ1を溶
接する場合の開先寸法として、深さ26mm、開先角4
5度の溶接部寸法を示している。図2はこのウエブ1と
フランジ2に完全溶込みT型すみ肉溶接部3を施した溶
接部を示す説明図である。また、図3は電極角度とワイ
ヤ狙い位置を示し、先行極4のみをフランジ側に5°〜
15°傾け、ウェブ面を延長した面とフランジ面とが交
差する位置5からフランジ面の上方に向かって先行極4
は5〜15mm(図ではaで示す)、後行極6は2〜1
2mm(図ではbで示す)離れた位置を狙って溶接する
様子を示す図であり、(a)はフランジ側を水平となす
角度で55°転回した溶接施工状態を溶接方向7から見
た図、(b)は電極の上方から見た図、(c)は溶接方
向に直交する方向から見た図である。
【0024】このように厚物T型すみ肉溶接は下向き溶
接するために通常フランジと水平のなす角度で45°〜
70°転回した状態で施工される。
【0025】
【実施例】次に、本発明法の実施例について説明する。 実施例1.表1に示す化学組成および粉体特性を有する
焼成型フラックスを調整し、このフラックスを用いて表
2に示すウェブ板厚80mm、フランジ板厚80mmの
JIS規格SM−490A鋼板を、図1に示すように、
ウェブの両側に深さ26mm、角度45°の開先加工を
施してT型に組み、すみ肉溶接を行った。なお、用いた
ワイヤの化学組成を表3に、また、溶接条件を表4に示
す。
【0026】溶接時のアークの安定性、ビード外観観
察、ビード断面形状観察、溶接金属の酸素量と靭性の関
係などについて調べた結果を表5に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
【表5】
【0032】表5から明らかなように本発明フラックス
によれば、いずれの場合も良好なすみ肉溶接作業性を示
し、得られた溶接金属の靭性も良好であるのに対し、フ
ラックスの化学組成や粉体特性が本発明フラックスの適
正条件からはずれている比較フラックスB−1〜B−7
によれば、溶接作業性、溶接金属の靭性の全てにわたっ
て同時に満足することはできなかった。
【0033】すなわち、比較フラックスB−1はTiO
2 ,Al23 ,CaF2 の各成分の合計量の値が4.
3%と低く、スラグ剥離性が悪いのと同時にガス発生量
が少ないため、拡散性水素量が多くなり、溶接金属中に
水素による微小割れが認められた。比較フラックスB−
2ではSiO2 ,MgO,CaOの各成分の合計量が適
正域からはずれており、耐火性に欠けるためビード表面
の凹凸が激しかった。また、細粒フラックスの割合が多
く、ビード幅も狭く、溶込み先端形状が鋭くなってスラ
グ巻込みが認められた。
【0034】比較フラックスB−3では粒度構成上29
5μmより細かい粒子が16.8%と多いため、溶接
時、ガスが逸出しにくくアークが不安定であった。また
スラグ巻込みも認められた。比較フラックスB−4では
合金元素および脱酸剤としての金属粉添加量が少なく、
完全に開先を埋めきれないばかりでなくビード表面にポ
ックマークが発生するとともに、溶接金属中酸素量が多
いため靭性が低かった。
【0035】比較フラックスB−5ではガス発生量が多
すぎるため、溶接時の吹上げが激しくアークが安定しな
かった。また、粒度構成上粗粒のものが多く、フラック
スの溶融も不均一であった。比較フラックスB−6では
化学組成が本発明フラックスの適正域からはずれてお
り、融点が高く粘性が小さすぎるためビードが細く割れ
る危険性が大きく、また、ガス発生量が少なく拡散性水
素量が多いため溶接金属に水素による微小割れが認めら
れた。
【0036】比較フラックスB−7では合金元素および
脱酸剤としての金属粉添加量が多すぎるため、脱酸がす
すみすぎて逆に焼きが入りすぎ溶接金属靭性が劣化し
た。 実施例2.実施例1で用いた本発明フラックスA−2と
比較フラックスB−1を用い、母材、ワイヤ,溶接条件
の影響について調べた。
【0037】表6に用いた鋼板の化学組成、表7にワイ
ヤの化学組成、表8に溶接条件を示す。これらのフラッ
クス、鋼板、ワイヤ、溶接条件を適宜組合せて完全溶込
みT型すみ肉溶接を行った。その結果を表9に一括して
示した。
【0038】
【表6】
【0039】
【表7】
【0040】
【表8】
【0041】
【表9】
【0042】本発明例では欠陥の無い良好な完全溶込み
すみ肉溶接が可能であるが、比較例ではいずれも何らか
の問題があった。すなわち、比較例G1では溶接条件の
うち電流比が0.63と小さいため、スラグ巻込みが発
生した。比較例G2ではワイヤ径が細く、ビード幅が出
ず、溶込み先端のとがったビードとなってスラグ巻込み
が発生し、割れの危険性も大であった。比較例G3では
ワイヤMn量が少なく一部ブローホールが発生するとと
もに、強度が不足していた。比較例G4〜G6では母材
あるいはワイヤのC量が多いため、高温割れが発生し
た。比較例G7では本発明フラックスA−2を比較フラ
ックスB−1に変え、母材、ワイヤ、溶接条件は最適に
設定したが、すでに表5で説明した通り、ビード外観、
内部欠陥に問題が生じた。比較例G8では、T極の電流
がL極の電流よりも大きいため、スラグ巻込みが発生し
た。比較例G9では電極角度が先行極で+0°、後行極
で−25°と本発明例からはずれているため溶込不足と
ビード外観不良を起した。
【0043】以上のように満足な結果が得られるのは本
発明フラックスの範囲のみの場合であった。この方法を
ウェブ厚100mm超の場合完全溶込み溶接に適用する
と、図2の如く溶込みが深くなりすぎビード幅の狭いビ
ードとなって高温割れが起り易いのと同時に母材希釈量
が大きく、やはり高温割れが起り易くなった。
【0044】表6のC−1と同様の化学組成を有するウ
ェブ厚105mmのT型すみ肉溶接を表7のワイヤ記号
D−1を用いて種々溶接条件の選定を行ったが、いずれ
の場合も完全溶込みでは割れが生じたが板厚100mm
までの場合は割れなかった。従って本発明法では板厚6
0mmを超え100mmまでは完全溶込み法が適用対象
となる。 実施例3.表2に示す鋼板と、表3に示すワイヤを用
い、ワイヤ配置、ワイヤ狙い位置と溶接条件の影響につ
いて調べた。
【0045】溶接条件は表10に示したものを用いた。
【0046】
【表10】
【0047】L、T極のフランジ側への傾斜角度を変化
させた場合の結果を表11に示した。
【0048】
【表11】
【0049】第2発明例では少ない電流で両側ビードラ
ップも十分で、図4のように凝固会合部8も直線状でな
く上向きとなり、形状良好であるのに対し、第1発明例
1,2では、第2発明例1と同じ効果を得ようとすれば
先行極および後行極とも大きな電流が必要であることが
わかる。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば簡単な開先加工により厚
肉T型すみ肉サブマージドアーク溶接を両側1パスで行
うことができ、コスト削減、短納期など工業的に極めて
有効な技術である。
【図面の簡単な説明】
【図1】T型すみ肉溶接寸法を示す説明図である。
【図2】完全溶込みT型すみ肉溶接部を示す説明図であ
る。
【図3】ワイヤ狙い位置及び電極配置を示す説明図であ
る。
【図4】ウエブとフランジの合わせ面の溶残しを示す図
である。
【符号の説明】
1 ウェブ 2 フランジ 3 溶接部 4 先行極 5 ウェブ面とフランジ面とが交差する位置 6 後行極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B23K 35/362 310 B (72)発明者 目黒 喜三 東京都千代田区内幸町2丁目2番3号 川 崎製鉄株式会社東京本社内 (72)発明者 岡部 龍二 東京都千代田区内幸町2丁目2番3号 川 崎製鉄株式会社東京本社内 (72)発明者 林 三郎 東京都千代田区内幸町2丁目2番3号 川 崎製鉄株式会社東京本社内 (72)発明者 中島 松重 香川県丸亀市昭和町18番地 川鉄メタルフ ァブリカ株式会社内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C量0.18wt%以下を含有する板厚
    60mm超え100mm以下のウェブ鋼板とフランジ鋼
    板をT字状に突合わせ、該ウェブ鋼板の両側に板厚の
    0.30〜0.40倍の深さの開先を設け、2電極法で
    完全溶込法により両側1パスサブマージドアーク溶接す
    るに当り、下記焼成型フラックス(A)とワイヤ(B)
    とを用い、先行極(L極)に対する後行極(T極)の電
    流比(I T /IL )を0.65〜1.00の条件下で先
    行極に3°〜15°の後退角を、後行極に3°〜20°
    の前進角を設けて溶接することを特徴とする厚鋼板の高
    能率すみ肉溶接方法。 (A)焼成型フラックス:SiO2 ,MgO,CaOの
    各成分の合計量が45〜65wt%、TiO2 ,Al2
    3 ,CaF2 の各成分の合計量が5〜20wt%、各
    種金属粉が25〜38wt%、溶接時に添加原料が熱分
    解して発生するガス量が5〜15wt%、残部が不可避
    的不純物であるフラックスからなり、累積粒度分布50
    wt%の粒子のメジアン径が500〜800μmであ
    り、粒子径295μm以下の粒子が前記フラックス全体
    の15wt%以下である焼成型フラックス (B)ワイヤ ワイヤC量(wt%)をC1 、ウェブ鋼板のC量(wt
    %)をC2 (≦0.18wt%)、フランジ鋼板のC量
    (wt%)をC3 (≦0.18wt%)とし、 0.50C1 +0.28C2 +0.22C3 ≦0.12
    0 を満足するワイヤC量およびMn:1.20〜2.50
    wt%を含む、直径4.8〜6.4mmφのワイヤ
  2. 【請求項2】 さらに、前記先行極のみをフランジ側に
    5°〜15°傾け、ウェブ面とフランジ面とが交差する
    位置からフランジ面の上方に向かって先行極は5〜15
    mm、後行極は2〜12mm離れた位置を狙って溶接す
    ることを特徴とする請求項1記載の厚鋼板の高能率すみ
    肉溶接方法。
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