JP4536374B2 - 低い比表面積のシリカで強化されたタイヤトレッド - Google Patents

低い比表面積のシリカで強化されたタイヤトレッド Download PDF

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Description

本発明はタイヤトレッドに関し、特に無機充填剤、更に正確にはシリカで強化されたトレッド及びその様なトレッドを含むタイヤに関する。
タイヤトレッドは、先ず第一に、高い摩擦又は摩耗抵抗を有し且つ自動車のタイヤに極めて良好な道路挙動(ハンドリング)、特に横滑り推力(又はコーナリング)を必要とする道路挙動を与えながら優れたグリップを有すると言う、しばしば矛盾する多くの技術的要求に適合せねばならない事が知られている。
タイヤトレッドにおいて充填剤により与えられる最適な強化性能、即ち高い耐摩耗性を得る為には、この充填剤は、一般的に、エラストマーマトリックス中では出来るだけ微細に分割されていて且つ出来るだけ均質に分散された最終形態で存在すべきものである事が知られている。所で、その様な条件は、第一に、この充填剤が、エラストマーとの混合中にこのマトリックス中に混入される為の極めて良好な能力と解凝集能力を有し、第二に、このマトリックス中に均質に分散される能力を有する場合においてのみ得ることができる。
カーボンブラックは、一般的に無機充填剤にはない、特にシリカではあり得ない様な能力を有し、これらの無機充填剤粒子は、相互の吸引力の為に、エラストマーマトリックス内で一緒に凝集すると言う困った傾向を有する事が知られている。これらの相互反応の有害な結果は充填剤の分散を制限する事となり、従って、強化性は、混合操作中に創り出す事のできる(無機充填剤/エラストマー)結合の全てが得られるとした場合に理論的に達成する事ができるであろう強化性よりも実質的に低い水準のものとなる。これらの相互反応は、更に、未加硫状態にあるゴム組成物のコンシステンシーを増加させる傾向にあり、従って、カーボンブラックの存在下での作業よりも更にゴム組成物の作業(加工)を難くさせる。
燃費の経済性並びに環境保護が優先的となっているので、タイヤの耐摩耗性に悪影響を及ぼさずに低減されたローリング抵抗を有するタイヤを製造する事が必要である事が分かっている。
これは、特に、これらのタイヤのトレッドに、無機充填剤、特に、強化の観点から通常のタイヤグレードのカーボンブラックに匹敵し、これらの組成物に低いヒステリシス(それらを含むタイヤに対する低いローリング抵抗と同じ意味)と、濡れた道路、雪で覆われら道路又は氷結した道路上での改善されたグリップを与える高分散性のシリカで強化された新しいゴム組成物の使用によって可能となった。
使用者に提供されるエネルギー節約の故に「グリーンタイヤ」と言われる低ローリング抵抗を有するタイヤ(グリーンタイヤの概念)で使用できる、その様な高分散性シリカで充填されたトレッドは、数多く記載されていて、特に、特許出願EP501227、EP692492、EP692493、EP735088、EP767206、EP786493、EP881252、WO99/02590、WO99/02601、WO99/02602、WO99/06480、WO00/05300及びWO00/05301が参照される。
従来技術のこれらの文献の全てが、十分な耐摩耗性を得る為には、十分に分散ができて、然も、100〜250m2/g、一般的には150m2/gよりも大きい高いBET比表面積を有するシリカの使用の必要性を教示している(特に、前述のEP501227を参照)。「グリーンタイヤ」の分野での基準を形成する高い比表面積のシリカの一つは、特に、ローディア社(Rhodia)から市販されているシリカの「ゼオシル1165 MP](Zeosil 1165 MP)(BET表面積が約160m2/gである)である(前述の文献参照)。
強化充填剤として高い比表面積のこれらのシリカの使用は、それらを含むゴム組成物の加工の困難性を低減したが、それらは、今尚加工するのには取扱い難く、普通にカーボンブラックで充填されたゴム組成物よりも加工が困難である。
第一に、シリカ粒子の表面(シラノール基、Si−OH)とエラストマーとの間の連結或いは結合を与え、その一方でエラストマーマトリックス内でこの充填剤の分散を促進する機能を持つカップリング剤を使用する事が必要であり、これらのシリカに対して推奨される高い比表面積は、期待される強化の高水準を達成する為に、シリカとカップリング剤との間の結合の数及び質を正確に増加させる事を意図するものである。
その様なカップリング剤は当業者に周知のもであり、本質的にオルガノシラン又は多官能ポリシロキサンである。最も良く知られているカップリング剤は多硫化アルコキシシランであり、特に、ビス−(アルコキシルシリルプロピル)ポリスルフィドの様なビス−(アルコキシルシリルアルキル)ポリスルフィド、更に具体的には、ビス−3−トリエトキシシリルプロピルテトラスルフィド及びジスルフィド(それぞれ、TESPT及びTESPDと略称する)であり、これらは、一般的に、シリカ充填トレッドに対して、スコーチ抵抗、加工の容易さ及び強化能力に関して最高の平衡性を用意する製品として認められている。従って、それらは、現在では「グリーンタイヤ」の殆どで使用されるカップリング剤である。
これらの多硫化アルコキシシランは、然しながら、非常に高価であり、然も、シリカの質量当り8〜12質量%程度(一般的に、6〜10phr(phr=ジエンエラストマー100部当りの質量部)の量に等しい)の比較的多量で使用する必要があると言う良く知られた欠点を有する。アルコキシシランのこれらの量を低減させる為に、カップリング活性剤が特に提案されている(前述の出願WO00/05300及びWO00/05301を参照)。
カーボンブラックの使用に比べて、未加硫状態におけるゴム組成物の加工に悪影響を及ぼすその他の要因は、その大きな反応性表面積によってこれらの強化シリカとゴム組成物のその他の成分、特に加硫系との間に確立される強力な物理−化学的相互反応に関連するものである。この欠点は収量の損失と加硫動力学における低減の原因である。これらの付随的な効果を相殺する為には、加硫剤の量、特に促進剤の量は、カーボンブラックをベースとする通常の配合において、添加されるその他のタイプの促進剤(第二促進剤)を増加させなければならない。
要するに、高い比表面積の分散性シリカで充填されたトレッドは、ローリング抵抗、耐摩耗性及びグリップに関る性質の平衡性(これは、タイヤ用の通常のカーボンブラックでは得る事ができない)を達成する事を可能とするが、その様な結果は、一層困難な加工のコストと、比較的に多量のカップリング剤、特に多硫化アルコキシシランの使用に関連する追加の生産コスト及び加硫剤の量の増加によってのみ得る事ができる。
少なくとも部分的には、上記の困難性の幾つかは、例えば、耐摩耗性が、周知の通り、優先的性能を構成するものではない冬型のタイヤに対するトレッドに関する限りにおいては、極めて高い耐摩耗性を必要としないゴム組成物に対して、シリカの比表面積を或程度の範囲、100〜150m2/gの範囲内まで減少させる事によって解消させる事が確かに考えられ得る事であった。
然しながら、低い比表面積のシリカは、それらを含むトレッド又はタイヤの加硫では、工業的加硫条件に関して壊滅的と思われる方法において、加硫反応の開始に当って必要な遅れ(所謂、誘導遅延)を極めて顕著に増加させると言う別の欠点を有する事が証明されている。
増加した加硫時間は、「冷間」再生(予め加硫されたトレッドの使用)或いはより一般的な「熱間」再生(未加硫状態のトレッドの使用)である再生の為のトレッドにとっては有害である。この後者の場合、延長された加硫時間は、製造コストを増加させるばかりでなく、周知の通り、擦り減ったタイヤ(既に加硫されている)のケーシング(「カーカス」)の残りの過剰加硫(後−加硫)をもたらし、これは後者の幾つかの性能に悪影響を及ぼす。
ここにおいて、意外にも、その研究中に、本発明者は、低い比表面積のシリカの使用が、高い耐摩耗性を有するトレッドを得るのに不適合でないばかりでなく、加硫遅延の延長につながる前述の欠点が、加硫活性剤として、実施的に低減された亜鉛の量の使用によって解消され得る事を見出した。
従って、本発明の第一の対象は、少なくとも、
(i) ジエンエラストマー
(ii) 強化無機充填剤として、80phrより多い、次の特徴を有するシリカ、
(a)130m2/g未満のBET比表面積と、
(b)30〜300nmの平均粒径(dw)、
(iii) 強化無機充填剤とジエンエラストマーとを結合するカップリング剤、及び
(iV)硫黄、第一加硫促進剤及び、加硫活性剤として0.5〜1.5phrの亜鉛を含む加硫系、
をベースとした、無機充填剤で強化されたエラストマー組成物を含むタイヤトレッドに関する。
又、本発明の一つの対象は、タイヤの製造又は再生の為の本発明のトレッドの使用、及びタイヤが本発明のトレッドを含む場合のそれらタイヤ自身である。本発明のタイヤは、特に、乗用車、4x4車両(4つの駆動輪を有する)、SUV(Sport Utility Vehicles)、二輪車(特にモーターサイクル)、バン、重量車両(特に、地下鉄、バス及び、ローリー、トラクター又はトレラーの様な道路輸送機械)の様な継続して高速で走行する車両に適合させる為のものである。
本発明のトレッドは、本発明の別の対象でもある方法によって調製することができる。(耐摩耗性/ローリング抵抗/グリップ)機能の改善された平衡性を有し、ジエンエラストマー、強化無機充填剤及び加硫系をベースとした硫黄加硫可能なタイヤトレッドの製造方法は、以下の工程を含む:
・「非生産的」と称する第一工程中に、少なくとも、
・強化無機充填剤として、80phrより多い、次の特徴、
(a)130m2/g未満のBET比表面積と、
(b)30〜300nmの平均粒径(dw)、
を有するシリカ、及び
・シリカとジエンエラストマーとを結合するカップリング剤、
・加硫活性剤として、0.5〜1.5phrの亜鉛、
とをジエンエラストマーに混入する工程、
・全体の混合物を一段階以上で、110℃〜190℃の最大温度が達成されるまで熱機 械的に混練する工程、
・全体の混合物を100℃未満の温度まで冷却する工程、
・次いで、「生産的」と称する第二工程中に、硫黄と加硫促進剤を混入する工程、
・全体の混合物を110℃未満の最大温度が達成されるまで混練する工程、
・この様にして得られたエラストマー組成物をタイヤトレッドの形態でカレンダー加工 又は押出し加工する工程。
本発明の上記方法の今一つの別の可能な方法は、亜鉛の全部又は一部を、非生産的工程中ではなく生産的工程中に硫黄と第一促進剤と同時に混入する事から成る。
本発明並びにその利点は、以下の記述及び実施態様の実施例並びに、本発明だけに限らない、タイヤトレッド用のゴム組成物の為に記録された、伸び(%)の関数としての弾性率(MPa)の変化の曲線を示す、これらの実施例に関連する単独図によって容易に理解されるであろう。
I.使用された測定方法並びにテスト

I−1.シリカの特徴付け

以降で記述されるシリカは、良く知られた粒子の凝集体として存在し、外力の作用下で、例えば、機械的作業又は超音波の作用下でその粒子に解凝集できる。本願で使用される「粒子」と言う用語は、通常の「凝集体」(又は、「ニ次粒子」と言われる)を意味するものであって、該当する場合にはこの凝集体の部分を形成する事のできる基本粒子(又は、「一次粒子」と言われる)を意味するものではない。「凝集体」は、通常、充填剤の合成中に生成される、一緒に凝集される基本(一次)粒子で一般的に形成される非分割単位(即ち、一般的に切断したり分割したりする事ができない)を意味するものと理解されるものである。
これらのシリカは以下に示される様な特徴を有する。

A)比表面積

BET比表面積は、"Journal of the American Chemical Society"の第60巻、第309頁(1938年2月)に記載されているBrunauer-Emmett-Tellerの方法を使用するガス吸着によって決定された。更に正確には、フランス規格NF ISO9277(1996年12月)(多点容積法(5点)−ガス:窒素−脱気:160℃で1時間−相対圧力(p/po)の範囲:0.05〜0.17)によって決定された。

CTAB比表面積は、フランス規格NF T45−007(1987年11月)(方法B)で決定された。
B)平均粒径(d w

粒子の平均径(質量)(dw)は、水中で、分析される充填剤を超音波解凝集による分散後に従来通りに測定された。
測定は、ブルックヘブンインスツルメント(Brookhaven Instruments)社から市販されている遠心X-線検出沈降速度計型(「XDC」(X-rays Disk Centrifuge))を使用して、以下の操作方法により行われた。
水40ml中の分析すべきシリカのサンプル3.2gの懸濁液を、1500W超音波プローブ(バイオブロック(Bioblock)から市販されているVIbracell3/4インチ超音波発生機)の60%出力(「出力調節」の最大位置の60%)で8分間の作動で調製した。超音波発生後、15mlのこの懸濁液を回転盤に入れ、120分間の沈降後、粒径の質量分布と粒子の質量による粒径(dw)が、「XDC]沈降速度計のソフトウエア(dw=Σ(nii 5)/Σ(nii 4)(niは、その粒子直径diの対象物の数である)によって計算された。

C)解凝集速度〈α)

解凝集速度〈α)は、超音波解凝集テストの手段によって、測定中の超音波プローブの過熱を避ける為に、600Wプローブの100%出力で(即ち、1秒間ONで、1秒間OFF)測定された。特に、特許出願WO99/28376(又、WO99/28380、WO00/73372、WO00/73373参照)の主題であるこの公知のテストは、以後の明細書で、超音波発生中における粒子の凝集体の平均径(質量による)の変化を連続的に測定する事を可能とするものである。
使用された設備は、レーザー粒度分布計(「マスターサイザーS」型、マルベルンインスツルメント社から市販されている−He-Ne赤色レーザー源、波長632.8nm)及びそのプレパラー(preparer)(「マルベルンスモールサンプルユニットMSX1」)から構成され、それらの間に超音波プローブ(バイオブロック社から市販されている、600W1/2インチ超音波発生機型Vibracell)を備えた連続的流量処理セル(バイオブロックM72410)が挿入されている。
分析の為の少量(150mg)のシリカを160mlの水と一緒にプレパラーに入れ、回転速度をその最大に設定する。公知のフラウンホウファー計算法(マルベルン3$$D計算マトリックス)により、凝集体の初期平均直径(質量による)(dv[0])を決める為には少なくとも三回の連続測定が行われる。次いで、超音波発生(パルスモード:1秒間ONで、1秒間OFF)が100%の出力(即ち、「先端振幅」の最大位置の100%)で確立され、時間「t」の関数としての容積による平均直径(dv[t])の展開が、凡そ10秒毎に1回の測定で約8分間観察された。誘導期間(約3〜4分)の後、容積による平均直径の逆数(1/dv[t])が、時間[t]と共に直線的に、又は実質的に直線的に変動する事が認められた(安定な解凝集条件)。解凝集速度〈α)は、安定な解凝集条件(一般的には約4〜8分間)の帯域内で、時間[t]の関数としての1/dv[t]の展開曲線の直線回帰によって計算され、μm-1/分で表される。
前述の出願WO99/28376は、この超音波解凝集テストを行うのに使用できる測定装置を詳細に記述している。この装置は閉回路から成り、その内で液体に懸濁した粒子の凝集体の流れが循環できる様になっている。この装置は、本質的にサンプルプレパラー、レーザー粒度分布計及び処理セルを含む。大気圧への排出口は、サンプルプレパラーと処理セルそれ自身の水準において、超音波発生中に形成する空気泡(超音波プローブの作用)の連続的な排出を可能にする。
サンプルプレパラー(「マルベルンスモールサンプルユニットMSX1」)は、テストされるシリカ(液体3の懸濁液中で)のサンプルを受取り、それを、予め調節された速度で(ポテンショメーター−凡そ3l/分の最大速度)、液体懸濁液の流れの状態で回路を通して送る為のものである。このプレパラーは、単に、分析の為の懸濁液を含みそれを循環させる受容タンクから成る。それは、懸濁液の粒子の凝集体の沈降を防ぐ為に可変速の攪拌モターを備えている。遠心ミニポンプはこの回路内で懸濁液を循環させる為のものである。プレパラーへの入口は、テストされる充填剤のサンプル及び/又は懸濁液の為に使用された液体を受け取る為の開口部を介して開放空気に接続される。
プレパラーには、レーザー粒度分布計(「マスターサイザーS」)が接続されていて、その役割は、粒度分布計の自動記録手段と計算手段が結合されている処理セルの手段によって、通過流量として凝集体の容量による平均径(dv)を一定の間隔で連続的に測定する事である。レーザー粒度分布計は、良く知られた、その屈折率が固体の屈折率とは異なる媒体中に懸濁した固体対象物による光の回折の原理を利用するものである。フラウンホーファーの理論によれば、対象物の径と光の回折の角度との間には対象物が小さければ小さい程、回折の角度はますます大きくなる関係が存在する。実際には、サンプルの粒度分布(dv)(容量による)(この粒度分布の容量による平均径に相当する)(dv=Σ(nii 4)/Σ(nii 3)(niは、その粒子直径diの対象物の数である)を決める事のできる、回折の異なる角度に対して回折された光の量を測定する事で十分である。
プレパラーとレーザー粒度分布計との間に挿入された状態で、最後に、通過流量としての粒子の凝集体を連続的に破壊する為の、連続的又はパルス形式で操作できる超音波プローブを備えた処理セルが存在する。この流量は、セルの水準でこのプルーブの周りの二重ケーシング内に配置された冷却回路によって(例えば、その温度はプレパラーの水準で液体に浸漬されたヒートセンサーによって)サーモスタット制御される。
I−2.ゴム組成物の特徴付け
ゴム組成物は、加硫の前後で、以下に示される様に特徴付けられる。

A)ムーニー粘度

フランス規格NF T53−005(1991)に記載されている様な振動粘度計が使用される。ムーニー粘度は次の原理によって測定される:未加硫状態(即ち、加硫前)の組成物は100℃に加熱された円筒形の囲いの中で成形される。1分の予備加熱後、ローターをテストピース内で2rpmで回転させ、この運動を維持するのに必要とされるトルクが4分間の回転後に測定される。ムーニー粘度(ML 1+4)が「ムーニー単位」として表示される(MU、1MU=0.83Nm)。

B)スコーチタイム

この測定は、フランス規格NF T43−004(1991)により130℃で行われる。時間の関数としての粘度指数の展開は、パラメーターT5(大きいローターの場合)により上記規格によって評価されるゴム組成物のスコーチタイム(「分」で表示され且つ、測定された粘度指数の最大値よりも5単位の粘度指数(MUで表示される)の増加を得るのに必要な時間として定義される)を決めるのを可能とする。

C)粘弾性

この測定は、DIN規格53529−パート3(1983年6月)により、振動−チャンバーレオメーターで150℃で行われる。時間の関数としての粘弾性トルクの展開は、その後の加硫反応の組成物の硬化の展開を記述するものである:この測定はDIN規格53529−パート2(1983年3月)によって行われる:tiは誘導の遅れ、即ち、加硫反応の開始に必要な時間である:tα(例えば、t90又はt99)は、α%、即ち、最少と最大トルクとの間の偏差のα%(例えば、90又は99%)の転換率を達成するのに必要な時間である。30%〜80%の間の転換率で計算される1のオーダーの転換率定数K(/分で表示される)が測定され、これは、加硫の動力学を評価する事を可能とする。
D)引張り試験

これらの試験は、可塑性応力及び破断点における性質を決める事を可能とする。特に指示がなければ、それらは、フランス規格NF T46−002(1988年9月)によって行われる。10%伸び(ME10)、100%伸び(ME100)及び300%伸び(ME300)での名目の割線モジュラス(又は見掛けの応力、MPa)は、第二の伸び(即ち、適応サイクル後)で測定される。破断応力(MPa)及び破断点伸び(%)も測定される。全てのこれらの引張り測定は、フランス規格NF T40−101(1979年12月)により、標準条件の温度(23±2℃)と湿度(50±5%相対湿度)で行われる。
記録された引張りデータの処理は、又、伸びの関数としての弾性率曲線(添付図を参照)を引く事を可能とする。ここで使用される弾性率は、第一の伸びで測定される真の割線モジュラスであり、テストピースの断面に換算して計算された。

E)動力学的性質

動力学的性質のΔG*とtan(δ)maxは、ASTM D5992−96により、粘度分析計(メトラビブVA4000)(Metravib VA4000)で測定された。ASTM D1349−99による標準条件の温度(23℃)下で、又は、ケースによっては異なる温度下で、10Hzの周波数で、交互単一正弦剪断応力に掛けられた加硫された組成物のサンプル(厚さ4mmで断面が400mm2の円筒形テストピース)の応答が記録された。走査は、0.1〜50%(外向きサイクル)、次いで50%〜1%(戻りサイクル)の変形の振幅で行われた。使用される結果は、複合動的剪断モジュラス(G*)と損失ファクターtan(δ)である。戻りサイクルに対しては、0.15と50%変形の間の複合モジュラスにおける偏差(ペイネ効果)として、観察されたtan〈δ)の最大値、tan(δ)maxが示される。
F)ショアA硬度

硬化後の組成物のショアA硬度は、ASTM D2240−86により評価される。

G)「結合ゴム」テスト

所謂、「結合ゴム」テストは、強化充填剤と深く関わる、非加硫エラストマー中のエラストマーの割合(エラストマーのこの部分は通常の有機溶剤には不溶である)を決める事ができる。混合中の強化充填剤と関連するゴムのこの不溶割合の知識は、ゴム組成物における充填剤の強化活性の数値目標を与える。その様な方法は、例えば、カーボンブラックに結合したエラストマーの量の決定に適用されるフランス規格NF T45−114(1989年6月)に記載されている。
このテストは、強化充填剤によって与えられる強化性を特徴付けるものとして当業者に良く知られており、例えば、次の文献に記載されている:Plastics, Rubber and Composites Processing and Application, Vil. 25, No. 7, p.327 (1996); Rubber Chemistry and Technology, Vol. 69, p. 325 (1996)。
本件の場合、トルエンで抽出できないエラストマーの量は、この溶剤中で(例えば、80〜100cm3のトルエン中で)、ゴム組成物のサンプル(一般的には、300〜350mg)を15日間膨潤させた後、この様に処理されたゴム組成物のサンプルの計量前に、真空中で、100℃で24時間乾燥させることによって測定される。好ましくは、上記膨潤工程は、周囲温度(凡そ20℃)で行われ、光から保護され且つ、例えば、最初の5日間の膨潤後に溶剤(トルエン)は一度交換される。
「結合ゴム」(BR)の量〈質量%)は、公知の方法で、ゴム組成物中に初めから存在しているエラストマー以外の本来不溶性である成分のその画分を計算に入れ且つ除外する引当を行った後に、ゴム組成物の初期質量と最終質量との間の差によって計算される。

I−3.タイヤ又はトレッドの特徴付け

A)ローリング抵抗

ローリング抵抗は、ISO87−67(1992)の方法により、テストドラム上で測定される。任意に100に設定された対照の値よりも大きい値は改善結果、即ち、低いローリング抵抗を示す。

B)耐摩耗性

タイヤは、走行による摩耗が、トレッドのグルーブ中に配置された摩耗指示計に到達するまで、特定の自動車で実際の路上運転に掛けられる。任意に100に設定された対照の値よりも大きい値は、改善結果、即ち、大きな走行マイル数を示す。

C)乾燥地面上の制動

タイヤは、ABSブレーキシステムを備えた自動車に取付けられ、乾燥地面(アスファルトコンクリート)上で急ブレーキを掛けた場合に100km/時間から0km/時間までに必要とする距離が測定される。任意に100に設定された対照の値よりも大きい値は、改善結果、即ち、短い制動距離を示す。
D)湿った地面上での制動

タイヤは、ABSブレーキシステムを備えた自動車に取付けられ、湿潤地面(アスファルトコンクリート)上で急ブレーキを掛けた場合に50km/時間から10km/時間までに必要とする距離が測定される。任意に100に設定された対照の値よりも大きい値は、改善結果、即ち、短い制動距離を示す。

E)湿潤地面上のグリップ

湿潤地面上でのグリップ性能を評価する為に、多数の曲がりを含み且つ、湿潤地面を保つ為に湿潤状態にされたサーキットを回って走行する特定の自動車に取付けられたタイヤの挙動が、制限速度条件の下で分析される。
一方で、全体のサーキットをカバーするのに必要な最少時間が測定される。任意に100に設定された対照の値よりも大きい値は、改善された全体の挙動を示す。
他方、車の専門的ドライバーは、曲がりを含むこの湿潤サーキット上での車の、従ってタイヤの道路挙動の為の対象的全体のマークを指定する。任意に100に設定された対照のマークよりも大きいマークは、改善された全体的挙動を示す。

F)横滑り(ドリフト)推力

テストされるそれぞれのタイヤを適当な寸法の車輪に取付けて2.2バールまで膨らませる。適当な自動装置(MTSから市販されている"sol-plan"型装置)で80km/時間の一定速度で走らせる。負荷「Z」は1度の横滑り角度で変動され、横滑り剛性又は推力「D」(この推力に対してゼロドリフトで補正される)は、センサーを使用して、この負荷「Z」の関数として、車輪上の横断力を記録する事によって、公知の方法で測定される。表に示される横滑り推力は、曲線D(Z)の原点における勾配である。横滑り推力の増加は乾燥地面上の路面挙動にとって好ましいものである。
II.本発明の実施条件

本発明のタイヤトレッドは、従って、その全体又は一部が、少なくとも、
(i) ジエンエラストマー、
(ii) 強化無機充填剤として、以降で詳細に記述されるシリカ((a)と(b)の特徴を持つ)を80phrより多い量、
(iii) 強化無機充填剤とジエンエラストマーとを結合するカップリング剤、
(iV) 硫黄、第一加硫促進剤及び、加硫活性剤として、0.5〜1.5phrの亜鉛を含む加硫系、
をベースとしたゴム組成物で形成される。
勿論、表示の組成物の「ベースとした」とは、使用される種々の成分のその場での混合物及び/又は反応生成物を含む組成物を意味する事が理解されるべきで、これらの基本構成成分の幾つかは、タイヤ及びトレッドの製造の異なる段階中に、特にその加硫中に共に反応する、少なくとも一部が反応する傾向にある。

II−1.ジエンエラストマー

「ジエン」エラストマー(又はゴム)とは、ジエンモノマー、即ち、共役であるか否かに拘らず、二つの炭素−炭素二重結合を持つモノマーから少なくとも一部が得られるエラストマー(即ち、ホモポリマー又はコポリマー)を意味するものと理解される。「本質的に不飽和」のジエンエラストマーとは、15%(モル)より多いジエン源(共役ジエン)の単位の含有量を有する、共役ジエンモノマーから少なくとも一部が得られるジエンエラストマーを意味するものと理解される。「本質的に不飽和」のジエンエラストマーの範疇では、
「高度に不飽和」なジエンエラストマーとは、特に、50%より多いジエン源(共役ジエン)の単位の含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解される。
与えられているこれらの一般的な定義を、タイヤの当業者は、本発明では、先ず第一に、高度に不飽和なジエンエラストマー、特に、

(a)4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られるホモポリマー、
(b)一種以上の共役ジエン相互の、或いは、8〜20個の炭素原子を有する一種以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られるコポリマー、
が使用されるものと理解するであろう。
適当な共役ジエンは、特に、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジ(1〜5個の炭素原子を有するアルキル)−1,3−ブタジエン、例えば、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−3−イソプロピル−1,3−ブタジエン、アリール−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン及び2,4−ヘキサジエンである。適当なビニル芳香族化合物は、例えば、スチレン、o−、m−及びp−メチルスチレン、市販の混合物「ビニルトルエン」、p−t−ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン及びビニルナフタレンである。
コポリマーは、99質量%〜20質量%のジエン単位と、1質量%〜80質量%のビニル芳香族単位を含んでも良い。エラストマーは、使用される重合条件の関数、特に、変性剤及び/又はランダマイズ剤の有無及び使用される変性剤及び/又はランダマイズ剤の量の関数である微細構造を有しても良い。エラストマーは、例えば、ブロック、統計的、順次又は微細順次エラストマーであっても良く、分散又は溶液で調製されても良い。それらは、カップリング剤及び/又は星状化剤又は官能化剤でカップリング及び/又は星状化又は官能化されても良い。
本発明のジエンエラストマーは、好ましくは、その全体又は一部が、更に好ましくは少なくとも50phrのブタジエンタイプの高度に不飽和なエラストマー、即ち、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンコポリマー及びこれらのエラストマーの混合物で構成されている高度に不飽和なジエンエラストマーの群から選ばれるエラストマーで構成される。これらのブタジエンコポリマーは、特に、ブタジエン−スチレンコポリマー(SBR)、ブタジエン−イソプレンコポリマー(BIR)又はイソプレン−ブタジエン−スチレンコポリマー(SBIR)である。
適当な好ましいブタジエンエラストマーは、特に、4%〜80%の1,2−単位の含有量を有するBR、又は、80%より多いシス−1,4の含有量を有するBR、5質量%〜50質量%、更に好ましくは20質量%〜40質量%のスチレン含有量と、4%〜65%のブタジエン画分のシス−1,2結合の含有量と、20%〜80%のトランス−1,4結合の含有量を有するSBR、5質量%〜90質量%のイソプレン含有量と、−40℃〜−80℃のガラス転移温度(ASTM D3418−82により測定される「Tg」)を有するBIRである。SBIRコポリマーの場合は、適当なものは、特に、5質量%〜50質量%、更に好ましくは10質量%〜40質量%のスチレン含有量と、15質量%〜60質量%、更に好ましくは20質量%〜50質量%のイソプレン含有量と、4%〜85%のブタジエン画分の1,2−単位の含有量と、6%〜80%のブタジエン画分のトランス−1,4単位の含有量と、5%〜70%のイソプレン画分の(1,2−)+(3,4−)単位の含有量と、10%〜50%のイソプレン画分のトランス−1,4単位の含有量を有するSBIRであり、更に一般的には、−20℃〜−70℃のTgを有するSBIRである。
ブタジエンエラストマーは、特に、BR、SBR及びそれらの混合物から選ばれる。
好ましくは、乗用車用のタイヤ用トレッドの場合は、ブタジエンエラストマーは、SBRエラストマーが主体で、エマルションで調製されたSBR(ESBR)又は溶液で調製されたSBR(SSBR)、又は、SBRとその他のジエンエラストマー、特に、ブタジエンエラストマー、例えば、SBRとBR又はSBRとNR(天然ゴム)、又はSBRとIR(合成ポリイソプレン)とのブレンドのブタジエンエラストマーとの混合物である。
特に、20質量%〜30質量%のスチレン含有量と、15%から65%のブタジエン画分のビニル結合含有量と、15%〜75%のトランス−1,4結合の含有量及び−20℃〜−55℃のTgを有するSBRが使用される。その様なSBRコポリマー、好ましくはSSBRは、好ましくは90%より多いシス−1,4結合を有するBRとの混合物で使用される。
本発明のトレッドの組成物は、単一ジエンエラストマー又は幾つかのジエンエラストマーの混合物を含んでも良く、このジエンエラストマーは、ジエンエラストマー以外の合成エラストマーの任意のタイプと一緒に、或いは、エラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーと一緒に使用する事ができる。
II−2.強化無機充填剤("LS"シリカ)

本発明のトレッドは、無機充填剤として、以下の特徴を有する特定のシリカで80phrより多い量で強化される本質的な特徴を有する:

(a)130m2/g未満のBET比表面積と,
(b)30〜300nmの平均粒径(dw)。

「LS」(Low Surface)と言われるこの特定のシリカは、先ず第一に、タイヤトレッド用途にとって一般的ではないBET比表面積を有する。130m2/gより大きい、特に、150m2/gより大きいBET値では、「グリーンタイヤ」のタイヤトレッド用の高い比表面積の通常のシリカの欠点、即ち、一方において、ゴムマトリックス中での低減された分散性及び未加硫状態での加工の困難性、特に、ゴム組成物の他の成分(例えば、加硫系)との付随的相互反応による加工の困難性、そして、他方において、カップリング剤を多量に使用する事の必要性が存在する。
当業者は、これらのLSシリカに対して、特に、所望の特定の用途の関数として、ここに示される記述によって、使用できるBETの下限を定義する事ができる。好ましくは、LSシリカは、50m2/g以上のBET表面積を有する。50m2/g未満の値では、ゴム組成物は容易な作業性と低減されたヒステリシスを有するが、破壊的方法では小さくする事のできるトレッドの耐摩耗性と共に、破断時の性質の低下の危険性が存在する。これらの全ての理由から、特に、乗用車のタイヤトレッドの場合には、BET比表面積は、70m2/gより大きい、更に好ましくは、100〜125m2/gの範囲内にある事が好ましい。
LSシリカは、一方において、30〜300nmの粒径(dw)を有さなければならない。300nmより大きい粒径(dw)では、粒子は応力を局在化させる様に作用し、摩耗性に関しては有害である。粒径が小さ過ぎると、即ち、30nm未満では、未加硫状態での加工とこの加工中のシリカの分散性に悪影響を及ぼす。
最後に、最高水準の強化が要求される用途では、使用されるLSシリカは、更に、好ましくは、5x10-3μm-1/分より大きい解凝集速度α(上記セクションIで記載された超音波解凝集テストで測定される)で示される高い固有の分散性を有する。その様な解凝集速度では、LSシリカは極めて高い分散性、即ち、わずかな微小凝集体が、当該技術分野の方法によって調製されるゴム組成物の断面において光学顕微鏡反射で観察される分散性を有した事が注目された。
上記に示された様々な理由で、選択されるLSシリカは、好ましくは少なくとも一つ、更に好ましくは全ての以下の特徴を満足させるものである。

−70〜130m2/gのBET表面積;
−50〜200nmの粒径(dw);
−5x10-3μm-1/分よりも大きい解凝集速度〈α)。

尚好ましくは、このLSシリカは以下の特徴の少なくとも一つを満足するものである。

−100〜125m2/gの範囲内のBET表面積;
−100〜150nmの範囲内の粒径(dw);
−1x10-2μm-1/分より大きい解凝集速度〈α)。

LSシリカが存在しても良い物理的状態は重要ではなく、それは、粉末、微小球、粒状、ペレット、球の形態又はその他の圧縮形態である。それは沈降性シリカ又は熱分解シリカであっても良い。BET/CTAB比表面積の比は、好ましくは、1.0〜1.5、更に好ましくは1.0〜1.2の範囲内にある。
LSシリカは、本発明の最高の実施態様を構成する全体の強化無機充填剤を構成しても良い。
然しながら、その他の強化無機充填剤は、このLSシリカと組合せることが可能であり、例えば、高い比表面積を有する通常の強化シリカの少量を組合せることが可能である。 「強化無機充填剤」とは、その色及びその源(天然か合成か)の如何を問わず、それ自身で、中間のカップリング剤以外の手段無しで、タイヤの製造の為のゴム組成物を強化する事のできる、換言すれば、その強化機能において通常のタイヤ−グレードのカーボンブラックを置換える事のできる、カーボンブラックとは逆の、「白色」充填剤又は時には「透明」充填剤とも言われる無機充填剤を意味するものと理解される。その様な強化無機充填剤に相当する充填剤として、有機タイプの強化充填剤、特に、エラストマーへ結合する為にカップリング剤の使用を必要とする少なくとも一部が無機層(例えば、シリカ層)でカバーされたタイヤ用のカーボンブラックを使用する事ができる。
LSシリカと一緒に、通常のタイヤグレードのカーボンブラック、特に、タイヤ用トレッドで通常使用されるHAF、ISAF、SAFタイプのブラック(例えば、ブラックN115、N134、N234、N330、N339、N347、N375)から選ばれるカーボンブラックを組合せても良い。このカーボンブラックは、好ましくは、2〜20phrの量で、更に好ましくは5〜15phrの範囲内の少割合で使用される。示された範囲内では、LSシリカによって与えられる一般的な性能に悪影響を及ぼす事無しに、カーボンブラックのその着色性(ブラック顔料剤)及び耐UV性によってもたらされる利点が存在する。
好ましくは、LSシリカの量は、90phrより多く、更に好ましくは、90〜150phrであり、その最適範囲は所望のタイヤのタイプによって異なる。
最後に、LSシリカの量は、全強化充填剤(全無機充填剤+カーボンブラック(適用可能であれば))の好ましくは80質量%より多く、更に好ましくは90質量%よりも多くを占める。

II−3.カップリング剤

(無機充填剤/エラストマー)カップリング剤とは、無機充填剤とジエンエラストマーとの間に化学的及び/又は物理的結合を確立する事のできる剤を意味するものと理解される。少なくとも2官能性のその様なカップリング剤は、例えば、簡単な一般式:Y−T−Xを有する(式中、Yは、無機充填剤と物理的に及び/又は化学的に結合できる官能基(Y官能)を表し、その様な結合は、例えば、カップリング剤のケイ素原子と無機充填剤の表面水酸基(OH)(例えば、シリカの場合では表面シラノール)との間に確立される;Xは、ジエンエラストマーと、例えば、硫黄原子を介して物理的に及び/又は化学的に結合できる官能基(X官能)を表し、Tは、YとXを結合させる事のできる二価の有機基を表す)。
このカップリング剤は、無機充填剤とは活性であるY官能を含むが、ジエンエラストマーと活性であるX官能を欠く無機充填剤を包含する単一剤と混同されるべきではない。
可変性効果の(シリカ/ジエンエラストマー)カップリング剤は、極めて多くの文献に開示されていて、当業者には公知である。タイヤトレッドの製造に使用できるジエンゴム組成物において、シリカの様な強化無機充填剤とジエンエラストマーとの間に有効な結合を確保する為の公知のカップリング剤、特に、上記のX及びY官能を持つ有機シラン又は多官能性ポリオルガノシロキサンが使用されても良い。
特に、その特定構造によって「対称」又は「非対称」と言われる多硫化シランが使用され、その様なシランは、例えば、FR2149339、FR2206330、US3,842、111、US3,873、489、US3,978,103、US3,997,581,US4,002,594、US4,072,701、US4,129,585、US5,580,919、US5,583,245、US5,650,457、US5,663,358、US5,663,395、US5,663,396、US5,674,932、US5,675,014、US5,684,171、US5,684,172、US5,696,197、US5,708,053、US5,892,085又はEP1043357に記載されている。
本発明を実施するのに特に適当なものとしては、次の一般式(I)を満足する対称多硫化シランがあるが、これらに限定されない。
(I) Z−A−Sn−A−Z
[式中、nは、2〜8(好ましくは、2〜5)の整数であり、Aは、二価の炭化水素基(好ましくは、1〜18個の炭素原子を有するアルキレン基又は6〜12個の炭素原子を有するアリーレン基、更に好ましくは1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基、特に1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基、特にプロピレン)であり、Zは、以下の式の一つに相当するものである:





Figure 0004536374
(式中、基R1は、置換されていてもいなくても良く、同じか異なっていても良く、1〜18個の炭素原子を有するアルキル基、5〜18個の炭素原子を有するシクロアルキル基又は6〜18個の炭素原子を有するアリール基を表し(好ましくは、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、シクロヘキシルまたはフェニル、特に、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基、更に特定すれはメチル及び/又はエチル)、基R2は、置換されていてもいなくても良く、同じか異なっていても良く、水酸基、1〜18個の炭素原子を有するアルコキシル基又は5〜18個の炭素原子を有するシクロアルコキシル基を表す(好ましくは、水酸基、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシル基及び5〜8個の炭素原子を有するシクロアルコキシル基から選ばれ、更に好ましくは、水酸基及び1〜4個の炭素原子を有するアルコキシル基、特に、メトキシ及びエトキシ基から選ばれる)]。
上記式(I)の多硫化シランの混合物の場合、特に、市販の通常の混合物の場合、「n」の平均値は分数であり、好ましくは2〜5の範囲内である。
多硫化シランの例としては、特に、ビス−((1〜4個の炭素原子を有する)アルコキシル−(1〜4個の炭素原子を有する)アルキルシリル(1〜4個の炭素原子を有する)アルキル)のポリスルフィド(特に、ジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、例えば、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)又はビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドが挙げられる。これらの化合物の内では、式[(C25O)3Si(CH2322のビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPTと略称する)、又は、式[(C25O)3Si(CH23S]2のビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド(TESPDと略称する)が特に使用される。
TESPDは,例えば、デグッサ社からSi75(75質量%のジスルフィドとポリスルフィドとの混合物の形態で)の名称で、或いは、シルクエスト(Silquest)A1589の名称でウイットコ社から市販されている。TESPTは、例えば、デグッサ社からSi69(又は、50質量%がカーボンブラック上に担持されている場合はX50S)の名称で、或いは、オシスペシャリティー社(Osi Specialities)からシルクエスト(Silquest)A1289の名称で市販されている(両方共、nが4に近い平均値を有するポリスルフィドの市販混合物)。
当業者は、目的用途、使用されるエラストマーの性質及び、追加強化充填剤として使用される他の無機充填剤が適用できる場合は補充されたLSシリカによって本発明の組成物におけるカップリング剤の含有量を調整する事ができる。
LSシリカの使用は、本発明のトレッドにおいては、高い比表面積を有する通常のシリカの存在下で使用される通常の量に比べてカップリング剤、特に、多硫化シランの量を実質的に低減させる事を可能とする。従って、本発明のこれらのトレッドにおいては、カップリング剤の量、特に、多硫化シランの量は、好ましくは、2〜5phr、更に好ましくは3〜4.5phrの範囲内である。LSシリカが全体の強化無機充填剤を構成する場合の強化無機充填剤、特にLSシリカの質量に対して低減されるこのカップリング剤の量は、強化無機充填剤の質量当り8質量%未満、更に好ましくは6質量%未満である。
使用されるカップリング剤は、本発明の組成物のジエンエラストマー上に前以ってグラフトさせる事ができ、この様にして官能化又は「予めカップリングされた」エラストマーは、強化無機充填剤に対して遊離の「Y」官能を含む。又、カップリング剤は、強化無機充填剤上に前以って(「Y」官能を介して)グラフトさせる事ができ、この様にして「予めカップリングされた」充填剤は遊離の「X」官能によってジエンエラストマーに結合する事ができる。然しながら、特に、未加硫状態での組成物の良好な処理の為には、遊離の状態で(即ち、グラフトされていない状態)又は強化無機充填剤、特にLSシリカにグラフトされたカップリング剤を使用する事が好ましい。
最後に、カップリング剤は適当な「カップリング活性剤」と組合せる事が可能である。即ち、本体(単独化合物又は化合物の組合せ)がこのカップリング剤と混合されると、カップリング剤の有効性を増加させる(例えば、前述の出願WO00/5300及びWO00/5301を参照)。

II−4.加硫系

本発明の基本の加硫系は、硫黄及び第一加硫促進剤、好ましくはスルフェンアミド促進剤から構成される。この基本加硫系に対して、第一の、非生産的段階中に、及び/又は、生産的段階中に様々な公知の第二促進剤又は加硫活性剤が添加され混入される。
0.50〜1.5phr、更に好ましくは0.7〜1.3phrの範囲内の極めて少量の亜鉛が加硫活性剤として使用される。
亜鉛のこの特定の量は、当業者に公知の方法で、好ましくは、酸化亜鉛の形態で、この場合は、従って、0.6〜1.9phr、更に好ましくは0.9〜1.6phrの範囲内の相当する好ましい量でゴム組成物に供給されても良い。
好ましくは、0.5〜3phr、更に好ましくは1〜3phrの好ましい量で存在する脂肪酸、更に好ましくはステアリン酸が、この酸化亜鉛と組合わされる。
又、使用される亜鉛の全部又は一部は、脂肪酸亜鉛塩の形態で、特に、ステアリン酸亜鉛の形態で、或いは、加硫に関して活性であるその他の亜鉛ドナー化合物の形態でトレッド及びその組成物に混入されても良い。
第一加硫促進剤は、好ましくは、スルフェンアミドタイプの促進剤である。LSシリカの使用は、硫黄及びスルフェンアミド促進剤の量を、1.25〜2.75phr、更に好ましくは1.5〜2.5phrの範囲内の好ましい値まで実質的に低減させる事が可能であり、硫黄及びスルフェンアミド促進剤は、更に、0.5〜1.5phrの量でも使用される。
好ましくは、グアニジン誘導体、特に、第一の、非生産的段階(本発明の好ましい実施態様)中に及び/又は生産的段階中に混入されるジフェニルグアニジン(DPG)が第二加硫促進剤として使用される。このグアニジン誘導体は、更に、LSシリカの被覆剤としても有効に作用する。LSシリカの使用は、硫黄、スルフェンアミド及びグアニジン誘導体の全体の量を、1.75〜4.25の範囲内、更に好ましくは2〜4phrの範囲内の好ましい量まで低減させる事ができる。
II−5.様々な添加剤

勿論、本発明のトレッドのエラストマー組成物は、タイヤトレッドの製造の為のゴム組成物で使用される通常の添加剤、例えば、エクステンダーオイル、可塑剤、耐オゾンワックスの様な保護剤、化学的耐オゾン剤、耐酸化剤、耐疲労剤、カップリング活性剤、強化樹脂又はメチレンアクセプター及び/又はドナーの全部又は一部を含む。又、必要であれば、通常の低い強化性の又は非強化性の白色充填剤、例えば、着色タイヤトレッドで使用できる粘土、ベントナイト、タルク、チョーク、カオリンをLSシリカと一緒に組合せても良い。
又、エラストマー組成物は、前述のカップリング剤に加えて、ゴムマトリックス中での強化無機充填剤の分散性の改善及び未加硫状態でのその作業能力を改善する為の組成物の粘度を低減させる為に、例えば、単独のY官能を含む、無機充填剤用の被覆剤、又は、より一般的な加工助剤を含んでも良い。0.5〜3phrの好ましい量で使用されるこれらの剤としては、例えば、アルキルアルコキシシラン、特に、アルキルトリエトキシシラン、例えば、デグッサ−ヒュルス社からダイナシランオクテオ(Dynasylan Octeo)の名称で市販されている1−オクチル−トリエトキシシラン、又は、デグッサ−ヒュルス社からSi216の名称で市販されている1−ヘキサ−デシル−トリエトキシシラン、ポリオール、ポリエーテル(例えば、ポリエチレングリコール)、第一級、第二級又は第三級アミン(例えば、トリアルカノールアミン)、水酸化又は加水分解性ポリオルガノシロキサン、例えば、α,ω−ジヒドロキシ−ポリオルガノシロキサン(特に、α,ω−ジヒドロキシ−ポリジメチルシロキサン)が挙げられる。
II−6.組成物及びトレッドの調製

エラストマー組成物は、当業者に公知の二つの連続する調製工程:110℃〜190℃、好ましくは130℃〜180℃の最大温度(Tmax)までの高温における熱機械的作業又は混練の第一工程(時に、「非生産的」工程と言われる)、それに続く、低温における、一般的には110℃未満、例えば、40℃〜100℃での機械的作業(時に、「生産的」工程と言われる)の第二工程(この仕上げ工程中に、基体加硫系が混入される)を使用して適当な混合機で製造される。その様な工程は、例えば、前述の出願EP501227、EP735088、WO00/5300又はWO00/5301に記述されている。
本発明の組成物を製造する為の方法は、少なくとも、LSシリカ(その他の強化無機充填剤或いはカーボンブラックと組合わされているか否かに拘らず)とカップリング剤とが混練によって、第一の、所謂非生産的工程中にジエンエラストマー中に混入される点、即ち、少なくともこれらの異なる基体構成成分が混合機に混入され、一段階以上で、最大温度が110℃〜190℃、好ましくは130℃〜180℃に到達するまで熱機械的に混練される点に特徴がある。
例えば、第一(非生産的)工程は、単独の熱機械的段階において行われ、その間に、第一工程において、全ての必要な基体構成成分(ジエンエラストマー、強化無機充填剤及びカップリング剤)が、次いで、第二工程において、例えば、1〜2分の混練後に、硫黄と第一促進剤、特にスルフェンアミドで構成される基体加硫系を除いて、補充の被覆剤又は加工助剤及び、特に亜鉛とDPGを含むその他の様々な添加剤が適当な混合機、例えば通常の密閉式混合機中に混入される。LSシリカの見掛け比重は一般的に低いので、その導入を二分割以上にすると有利である。
混合物が取出された後で且つ中間体の冷却(好ましくは100℃未満の冷却温度)後に、組成物に補充の熱機械的処理を受けさせる目的で、特に、強化無機充填剤とそのカップリング剤のエラストマーマトリックス中での更なる分散を改善する為に、熱機械的作業の第二の工程(又は幾つかの工程)がこの密閉式混合機に付加されても良い。この非生産的工程における混練の全期間は、好ましくは2〜10分間である。
この様にして得られた混合物を冷却した後に、硫黄と第一促進剤が低温で、一般的にはオープンミルの様な外部混合機に混入される。次いで、全体の混合物は数分間、例えば、5〜15分間混合される。
この様にして得られた最終組成物は、次いで、例えば、薄いスラブの形態で(2〜3mmの厚さ)、又は、その物理的又は機械的性質を測定する為に、特に実験室的特徴付けの為に薄いゴムシートの形態でカレンダー加工されるか、又は、タイヤ用のトレッドとして所望の寸法に切断された或いは組立てられた後で直接使用されるゴム状プロファイル要素を形成する為に押出される。
要するに、本発明のタイヤトレッドの製造方法は、以下の工程を含む。
・ジエンエラストマー中に、「非生産的」と言われる第一工程において、
・強化無機充填剤として、80phrよりも多い量の、次の特徴:
(a)130m2/g未満のBET比表面積と、
(b)30〜300nmの平均粒径(dw
を有するLSシリカと、
・該シリカと該ジエンエラストマーとを結合するカップリング剤、
・加硫活性剤として、0.5〜1.5phrの亜鉛、
とを混入する工程、
・全体の混合物を、1段階以上で、110℃〜190℃の最大温度に到達するまで熱機械的に混練する工程、
・全体の混合物を100℃未満の温度まで冷却する工程、
・次いで、「生産的」と言われる第二工程において、硫黄と第一加硫促進剤を混入する工程、
・全体の混合物を110℃未満の最大温度に到達するまで混練する工程、
・この様にして得られたエラストマー組成物をタイヤトレッドの形状でカレンダー加工又は押出し加工する工程。
本発明の上記方法に代わる事のできる一つの方法は、第一の非生産的工程中ではなく、第二の生産的工程中に、亜鉛の量の全部又は一部を硫黄及び第一促進剤と同時に混入する事から成る。
トレッド又はタイヤの加硫又は硬化は、公知の方法で、好ましくは130℃から200℃の温度で、好ましくは加圧下で、特に、加硫温度、適用される加硫系、該当の組成物の加硫動力学及びタイヤのサイズの関数として、例えば、5〜90分の間で変動する十分な時間で行われる。
LSシリカをベースとした前述のゴム組成物は、一般的に、本発明の全体のトレッドを構成する。然しながら、又、本発明は、これらのゴム組成物が、例えば、別々の横に隣接するトレッドで形成されている複合タイプのトレッド、又は、別々の構造の二つの放射状に重ね合わされた層の部分のみを形成する場合にも適用する。LSシリカで充填されたこの部分は、例えば、新しいタイヤの走行開始から地面との接触を始めるトレッドの放射状の外側層を構成するか、或いは、逆に、後日地面との接触を始めるその放射状の内側層を構成する。
本発明は、「未加硫」状態(即ち、加硫前)及び「硬化」又は加硫された状態(即ち、加硫後)における前述のトレッド及びタイヤに関することは言うまでもない。
III.本発明の実施態様の実施例

III−1.使用された充填剤

以下の実施例で使用された充填剤の特徴は表1に示される。充填剤Aは、高い比表面積(凡そ160m2/gのBET)の通常の強化シリカで、「グリーンタイヤ」のトレッドの強化用の対照の無機充填剤である(ローディア社のシリカ"Zeosil 1165 MP")。充填剤Bは、低い比表面積のLSシリカである。両方共、沈降性シリカであり、マイクロビーズの形態で、BET/CTAB比は1に近い。
然しながら、BET表面積とサイズdwの特徴は二つの充填剤を明確に区別するものであり、充填剤Bは、極めて実質的に低減された質量の単位当りの表面(160m2/gに代わる108m2/g)を有し、大体50%大きい平均粒径dw(85nmに代わる125nm)を有する。二つのシリカは、共に、更に、1.25x10-2μm-1/分の極めて高い解凝集速度αによって示される高い固有の分散性によって特徴付けられる。
LSシリカは次の好ましい特徴を満足する点が注目される。
−100〜125m2/gの範囲内のBET表面積;
−100〜150nmの範囲内の粒径dw
−1x10-2μm-1/分よりも大きい解凝集速度α。
III−2.組成物の調製

以下のテストの為の手順は次の通りである:ジエンエラストマー(又は、適用可能であればジエンエラストマーの混合物)、強化充填剤、カップリング剤、次いで、1〜2分の混練後に、様々なその他の成分が、硫黄とスルフェンアミド第一促進剤を除いて、70%まで充たされた密閉式混合機中に導入される。その初期タンク温度は凡そ60℃である。次いで、熱機械的作業が、約160〜165℃の最大「落下」温度が達成されるまで、1又は2段階で行われる(約7分の混練の合計期間)。
この様にして得られた混合物は回収され、冷却され、次いで、硫黄とスルフェンアミド促進剤が、全てを3〜4分間攪拌する事によって、30℃で外部混合機(ホモ−フィニシャー)に添加される。
この組成物は、次いで、その物理的又は機械的性質を測定する為にプレート(2〜3mmの厚さ)の形態にカレンダー加工されるか、又は、タイヤトレッドの形態で直接押出し加工される。
以下のテストにおいて、使用されたシリカは、少量のカーボンブラック(10phr未満)と組合わされた全体の強化無機充填剤を構成する。

III−3.テスト

A)テスト1

このテストの目的は、「グリーンタイヤ」用のトレッドに対する通常のLSシリカ(高い比表面積)を使用する対照の組成物と比較して、シリカをベースとしたエラストマー組成物の改善された性能を実証する事である。
この為に、乗用車タイヤ用のトレッドの製造の為に三つのブタジエンゴム組成物(SBR/BRブレンド)が比較された。
−組成物C−1(対照):通常の量のZnO(2.5phr)を伴うシリカA(80phr);
−組成物C−2(対照):通常の量のZnO(2.5phr)を伴うシリカB(94phr);
−組成物C−3(本発明):通常の量のZnO(1.25phr)を伴うシリカB(94phr)。

表2及び3は、異なる組成物の配合(表2−phrで表示される異なる生成物の量)、150℃で40分間の硬化前及び後のそれらの性質(表3)を続けて示す。添付の図面は、伸び(%)の関数としての弾性率(MPa)の曲線を示す。これらの曲線はC1〜C3で示され、それぞれ、組成物C−1〜C−3に相当する。
ブタジエンエラストマーは、25%のスチレン、58%の1,2−ポリブタジエン単位及び23%のトランス−1,4−ポリブタジエンを含むSSBRと、90%より多いシス−1,4結合を有するBRとの組合せで構成されている。LSシリカと少量のカーボンブラック(10phr未満)で構成される全強化充填剤の量は、本発明の組成物では100phrよりも多い。
本発明のトレッド用の組成物C−3は、一方において、LSシリカの非常に多い量(対照の組成物C−1に比べて、20%近い増量)によって特徴付けられ、他方において、明らかに低減されたZnOの量(対照のC−1とC−2に比べて半分減少されている)によって特徴付けられる。
組成物C−3は、対照の溶液C−1に比べて、更に、以下の有利な特徴を有する。
−6phr未満の多硫化アルコキシシラン(TESPT)、
−シリカの質量当り、この同じカップリング剤の質量当りの量(これは、明らかに低減されている(8%に比べて6%未満)、
−硫黄、スルフェンアミド促進剤及びグアニジン誘導体の全体量同様に(4.5phrに代わる3.95phr)実質的に低減されている硫黄とスルフェンアミド促進剤の全体量(3phrに代わる2.5phr)。
対照のC−1と比較して、LSシリカをベースとした組成物は、先ず第一に、
−高い比表面積の通常のシリカの等しい量(94phr)において対照組成物に対して観察される粘度にほぼ相当するが明確に低い未加硫状態における粘度(これは、未加硫状態での優れた加工能力を示すものである)(高い比表面積のシリカの場合は、対照溶液のC−1に対しては120MUより多い)、
−同等の「結合ゴム」(BR)(これは、既に、LSシリカとカップリング剤との間の極めて良好な結合を示すものである)、
−意外にも、対照溶液のものと少なくとも等しい硬化後の強化性:等しいショア硬度、少なくとも高い、高変形(ME100、ME300)とME300/ME100比における弾性率、両者共に、LSシリカによって与えられる強化性の高品質の明確な指標である、
−100%〜300%の伸びに対して、三つのタイプの組成物に対する相当する弾性率で上記結果を明確に確証している添付図面、
−同等のヒステリシス特性(ΔG*及びtan(δ)max)、
を示す。
一つの特定のコメントは粘弾性に関わるものである。
対照組成物C−1と同量のZnOを含む対照組成物C−2では、粘弾性は、対照溶液に比べて明らかに低下している:高比表面積の通常のシリカのLSシリカでの置換は、誘導遅延(ti)において30%の増加、時間T5において60%の増加、加硫動力学(K)は更に同一である結果をもたらす。その様な増加は、タイヤトレッドの工業的加硫条件に関して壊滅的と思われる。
ここに、意外にも、上記問題点は、本発明の溶液において加硫活性剤ZnOの極めて実質的な低減(1.25phr)によって解決され、対照(組成物C−1)に関して、工業的観点からみても受け入れ可能な値を維持しながらtiとT5が低減される。
その様な結果は、以下のテスト2で示されるトレッドについての実際の走行テストで証明されなければならない。

B)テスト2

上記組成物C−1とC−3は、このテストでは、普通に製造された、トレッドを構成するゴム組成物以外は全ての点で同一の、197/65R15(速度指数H)の寸法の、放射状カーカスを有する乗用車タイヤ用トレッドとして使用された。対照の「グリーンタイヤ」に対する組成物C−1(P−1)、本発明のタイヤに対する組成物C−3(P−3)。
このタイヤは、先ず初めに、そのローリング抵抗とその横滑り推力を決める為の装置でテストされ、次いで、テストの残りを、車両に取付けてテストされた。
全ての運転試験は表4に纏められる。
先ず第一に、タイヤの二つのタイプのローリング抵抗性能は、本発明の改善がなくても(+1%)同等である点が注目される。これは、本発明のタイヤを装着した車両が低燃費である事と同じ意味である。
次いで、タイヤは、プジョウー406型の乗用車で路上運転に掛けられ、その耐摩耗性が決められた。周知の通り、タイヤの運転中のトレッドの耐摩耗性は、直接に強化充填剤とそれと一緒のカップリング剤によって与えられる強化の水準に関連する。換言すれば、耐摩耗性の測定は、若し最善でなければ、最終的に製造される製品として評価されるので、使用されるシリカの全体の性能についての優れた指標である。
次いで、本発明のタイヤは、既に、当業者にとって顕著で且つ予期せぬ結果を構成する対照のタイヤのそれと同じ性能を示す点が注目される。トレッドにおいて極めて多量に使用される事が条件とされている低い比表面積の強化シリカは、従って、高比表面積のシリカ、一般的には150m2/gより大きいシリカだけが利用できると考えられていたそれに等しい平衡性(ローリング抵抗性/耐摩耗性)をもたらすかも知れない。
更に、乾燥地面での道路挙動についての当業者にとって指標となる横滑り推力は、それ自身、同じ水準で保持される点が注目される。
タイヤは、最後に、別の乗用車(ルノーラグナ型、前と後ろに定格圧力)に取付けられ、以下の特定の条件によって、セクションI−3で記述された制動及びグリップテストに掛けられた。

−制動(乾燥及び湿潤地面上における): テストされるタイヤはその車両の前に取付けられている。
−曲がりを含む湿潤サーキットでの運転: テストされるタイヤはその車両の前と後ろに取付けられている。

タイヤ(P−3)は、湿った地面上での制動に関する限り、顕著な増加(+6%)を示す。この最初の結果は、制限速度下でサーキットを網羅するのに必要な最少時間(一周当り1.5秒毎に減少されるラップタイム)での低減及び運転者に起因する挙動マークの展開(10%の増加)によって示される、LSシリカの使用がグリップにおける顕著な改善をもたらす事を明確に示している曲がりを含む湿潤サーキットでの走行テストによって実証される。これらの二つの変動はその様なテストでは極めて顕著である。
要するに、本発明のタイヤP−3は、従って、対照の「グリーンタイヤ」(P−1)で造られたタイヤに比べて全体に改善された平衡性(ローリング抵抗/耐摩耗性/グリップ/挙動)を示す。
高比表面積のシリカと比べて、前述のLSシリカは、その低減された比表面積によって、多数の利点を有する:
−一方において、シリカそれ自身の粒子間、及び他方において、シリカ粒子と他のゴム添加剤との間の付随的相互反応が殆どない(ゴムマトリックスでの再凝集の危険の低減)、
−混練操作、即ち、未加硫状態での組成物の加工において、ジエンマトリックスにおける分散性の全体的改善、
−カップリング剤と加硫剤、特に、硫黄とスルフェンアミド促進剤の可能な低減(配合のコスト低減をもたらす)。
最後に、トレッドの加硫での誘導遅延の延長の問題を解決するのに必要な特徴である極めて少量の亜鉛の使用は、同時に、これらのトレッドの工業的コストの全体的低減に貢献する。
表1

Figure 0004536374
(A)シリカ"Zeosil 1165MP"(ローディア社)(CTAB:158m2/g);
(B)シリカ"Zeosil 1115MP"(ローディア社)((CTAB:107.5m2/g)。




表2

Figure 0004536374
(1)59.5%の1,2−ポリブタジエン単位、26.5%のスチレンのSSBR;Tg=−29℃;18質量%の芳香族油で伸ばされた乾燥SBR75phr(即ち、SSBR+油の合計=88.5phr)。
(2)4.3%の1,2;2.7%のトランス;93%のシス1,4のBR(Tg=−106℃)。
(3)カーボンブラックN234。
(4)遊離形態の芳香族油(BP社の"Enerflex 65")。
(5)TESPT(デグッサ社の"Si69")。
(6)ジフェニルグアニジン(バイエル社の"Vulcacit D")。
(7)ZnO(ゴムグレード)の形態で供給される亜鉛。
(8)マクロ及びミクロ結晶の耐オゾンワックスの混合物。
(9)N−1,3−ジメチルブチル−N−フェニル−p−フェニレンジアミン(Flexsys社の"Santoflex 6-PPD")。
(10)N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(Flexsys社の"Santocure"CBS)。















表3

Figure 0004536374
表4

Figure 0004536374
(100より大きい値は、対照(100を基準)と比べて改善された性能を示す)。
伸び(%)の関数としての弾性率(MPa)の曲線を示す。
符号の説明
C1:対照組成物
C2:対照明組成物
C3:本発明組成物

Claims (7)

  1. 無機充填剤で強化されたエラストマー組成物を含むトレッドを有するタイヤであって、該トレッドが、少なくとも、
    (i)ジエンエラストマー、
    (ii)無機充填剤として、80phrより多い量の、
    (a)130m2/g未満のBET比表面積と、
    (b)30〜300nmの平均粒径(dw)、
    とを特徴として有するシリカ、
    (iii) 無機充填剤とジエンエラストマーとを結合するカップリング剤、
    (iV)硫黄、
    (v)加硫促進剤、及び、
    (vi)加硫活性剤として0.5〜1.5phrの亜鉛、
    をベースとしたタイヤ(phr=ジエンエラストマー100部当りの質量部)。
  2. シリカの量が90〜150phrである、請求項1に記載のタイヤ。
  3. 加硫促進剤が、スルフェンアミド加硫促進剤であり、前記硫黄と前記スルフェンアミド加硫促進剤の全体量が1.25〜2.75phrである、請求項1又は2に記載のタイヤ。
  4. 前記トレッドが、更に、グアニジン誘導体を含み、前記硫黄、前記スルフェンアミド加硫促進剤及び前記グアニジン誘導体の全体量が1.75〜4.25phrの範囲内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ。
  5. 亜鉛の量が0.7〜1.3phrの範囲内である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ。
  6. カーボンブラックを更に含み、該カーボンブラックが5〜15phrの範囲内の量で存在する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ。
  7. ジエンエラストマー、無機充填剤、硫黄、加硫促進剤及び加硫活性剤をベースとした、耐摩耗性、ローリング抵抗性、グリップ性能の改善された平衡性を有する硫黄加硫性タイヤトレッドの製造方法であって、次の工程:
    ジエンエラストマー中に、第一工程において、少なくとも、無機充填剤として、80phrよりも多い量の、
    (a)130m2/g未満のBET比表面積と、
    (b)30〜300nmの平均粒径(dw
    を特徴として有するシリカと、該シリカと該ジエンエラストマーとを結合するカップリング剤と、加硫活性剤として0.5〜1.5phrの亜鉛とを混入する工程、
    全体の混合物を、1段階以上で、110℃〜190℃の最大温度が達成されるまで熱機械的に混練する工程、
    全体の混合物を100℃未満の温度まで冷却する工程、
    次いで、第二工程において、前記硫黄と前記加硫促進剤を混入する工程、
    全体の混合物を110℃未満の最大温度が達成されるまで混練する工程、
    この様にして得られたエラストマー組成物をタイヤトレッドの形状でカレンダー加工又は押出し加工する工程、
    を含む事を特徴とする方法(phr=ジエンエラストマー100部当りの質量部)。
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