JP4536185B2 - 縮合燐酸エステルの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、縮合型燐酸エステルを製造するための方法に関する。より詳細には、樹脂の品質に悪影響を及ぼす揮発性成分の含有量が少なく、可塑剤や難燃剤などの樹脂添加剤として優れている縮合型燐酸エステルを製造するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
可燃性プラスチックを難燃化するために、従来から、各種の難燃剤が使用されている。例えば、デカブロモビフェニルエーテル、およびテトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン化合物、ならびにクレジルジフェニルホスフェート、およびトリフェニルホスフェートなどの低分子燐化合物がある。
【0003】
昨今、環境上の見地、即ちダイオキシン問題などのために、樹脂組成物の非ハロゲン化が要求されている。また重金属を含む難燃剤には毒性に関する問題がある。このため、燐系難燃剤が急速に注目を集めている。燐系難燃剤の中でも、特に、PC/ABSアロイ、変性PPE等エンプラ用途に於いて、その優れた物性と共に、環境負荷の小さい難燃剤として芳香族燐酸エステル系難燃剤が有効であることが注目されている。現実に産業界での需要も好調であり、燐系難燃剤、特に芳香族燐酸エステル系難燃剤は高い伸びを続けている。
【0004】
しかし、エンジニアリングプラスッチックの用途では、その成形加工時の温度が高く、トリフェニルホスフェート(TPP)、またはトリクレジルホスフェート(TCP)などのような低分子量の単量型燐酸エステルを用いる場合、該単量型燐酸エステルが、成形加工中に熱分解したり、ブリードアウトしたり、もしくは揮発する。このために、成形不良および金型汚染などを引き起こすという問題が生じている。
【0005】
このため、高分子量の縮合型燐酸エステルを難燃剤として使用することが有効であることが知られている。特に、低分子量の単量型燐酸エステルの含有量の少ない縮合型燐酸エステルを難燃剤として使用することがこれらの問題に対して有効であることが知られている。
【0006】
一般に縮合型燐酸エステルはオキシ塩化燐とヒドロキノンやレゾルシン、ビスフェノールAなどの2価のヒドロキシ化合物およびフェノールやクレゾールなどの1価のヒドロキシ化合物とを反応させることにより得られる。
【0007】
しかしながら、2価のヒドロキシ化合物としてビスフェノールA誘導体を使用して従来の方法により製造して得られる縮合型燐酸エステルは、樹脂と配合した際、成形品を着色したり、耐熱性や成形加工性に悪影響を及ぼすという問題点が指摘されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は上記の問題点を解決することである。即ち、樹脂と配合した際成形品を着色したり、耐熱性や成形加工性に悪影響を及ぼすことのないビスフェノールA誘導体を原料とする縮合型燐酸エステルを製造する方法を提供することである。そして、本発明の方法により製造された縮合型燐酸エステルを難燃剤として使用することにより樹脂成型品の品質を高め社会へ貢献することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐およびヒドロキシ化合物とを反応させる際にビスフェノールA誘導体と反応により発生するハロゲン化水素とが接触してビスフェノールA誘導体を分解し、アリール基含有ホスフェートおよびイソプロペニルアリール基含有ホスフェート(単量型燐酸エステル)の生成原因となっていることを究明し、該反応を分解抑制剤の存在下で行うことにより単量型燐酸エステルの生成を抑制し、上記課題を解決できることを見出し本発明に至った。
【0010】
なお、本明細書中では、イソプロペニルアリール基含有ホスフェートをIPPと略す。
【0011】
具体的には、本発明の縮合型燐酸エステルの製造方法は、分解抑制剤の存在下で、ビスフェノールA誘導体、オキシ三ハロゲン化燐、およびヒドロキシ化合物を反応させるプロセスを包含する。
【0012】
1つの実施態様では、前記分解抑制剤が有機カルボン酸系化合物である。
【0013】
1つの実施態様では、前記有機カルボン酸系化合物がアスコルビン酸および/またはアジピン酸である。
【0014】
1つの実施態様では、前記分解抑制剤が錫、銅、鉄の酸化物および/または塩化物である。
【0015】
1つの実施態様では、前記錫、銅、鉄の酸化物および/または塩化物が、酸化第二錫、塩化第二鉄、または塩化第二銅である。
【0016】
1つの実施態様では、前記分解抑制剤の使用量がビスフェノールA誘導体100重量部に対して0.01〜5重量部である。
【0017】
1つの実施態様では、前記ビスフェノールA誘導体、オキシ三ハロゲン化燐、およびヒドロキシ化合物を反応させるプロセスが、
ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させてホスホロハリデートを製造する第1段階、および
該ホスホロハリデートとヒドロキシ化合物とを反応させる第2段階
を包含する。
【0018】
1つの実施態様では、前記ビスフェノールA誘導体、オキシ三ハロゲン化燐、およびヒドロキシ化合物を反応させるプロセスが、
ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させてホスホロハリデートを製造し、そして反応生成物から未反応のオキシ三ハロゲン化燐を除去する第1段階、および
該ホスホロハリデートとヒドロキシ化合物とを反応させる第2段階
を包含する。
【0019】
1つの実施態様では、前記ヒドロキシ化合物の使用量が、該ホスホロハリデートのすべてを縮合型燐酸エステルとするのに必要な理論量よりも2モル%以下の過剰である。
【0020】
1つの実施態様では、前記ビスフェノールA誘導体、オキシ三ハロゲン化燐、およびヒドロキシ化合物を反応させるプロセスが、
ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させてホスホロハリデートを製造する第1段階、および
該第1段階で得られる反応生成物とモノフェノール系化合物とを120℃以下で反応させ、その後昇温して120℃以上で該ホスホロハリデートとヒドロキシ化合物とを反応させる第2段階
を包含する。
【0021】
1つの実施態様では、前記ビスフェノールA誘導体、オキシ三ハロゲン化燐、およびヒドロキシ化合物を反応させるプロセスが、
ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させてホスホロハリデートを製造し、そして反応生成物から未反応のオキシ三ハロゲン化燐を除去する第1段階、および
該第1段階で得られる反応生成物とモノフェノール系化合物とを120℃以下で反応させ、その後昇温して120℃以上で該ホスホロハリデートとヒドロキシ化合物とを反応させる第2段階
を包含する。
【0022】
1つの実施態様では、前記縮合型燐酸エステルが2,2−ビス{4−[ビス(フェノキシ)ホスホリル]オキシフェニル}プロパンである。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を具体的に説明するが本発明の範囲は以下に限定されない。
【0024】
本発明の縮合型燐酸エステルの製造プロセスとしては、大別して、以下の3通りのプロセスが例示され得る。
1.分解抑制剤の存在下、ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させる第1段階を行い、その後、得られた反応生成物にヒドロキシ化合物を反応させる第2段階を行うプロセス。
2.分解抑制剤の存在下、オキシ三ハロゲン化燐とヒドロキシ化合物とを反応させる第1段階を行い、その後、得られた反応生成物にビスフェノールA誘導体を反応させる第2段階を行うプロセス。
3.分解抑制剤の存在下、ビスフェノールA誘導体、オキシ三ハロゲン化燐、およびヒドロキシ化合物を同時に反応させる工程を行うプロセス。
【0025】
これらのプロセスの中でも、上記1.のプロセスは、揮発性の単量型燐酸エステルを効率的に低減できる点で好ましい。
【0026】
まず、上記1.のプロセスについて説明する。
【0027】
上記1.のプロセスは、以下に説明する第1段階および第2段階を含む。
【0028】
(1.のプロセスの第1段階)
1.のプロセスの第1段階では、分解抑制剤の存在下、ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させてホスホロハリデートを得る。
【0029】
本発明において分解抑制剤とは、ビスフェノールA誘導体のハロゲン化水素による分解を抑制する作用を示す化合物を意味する。このような化合物の好ましい例としては、有機カルボン酸系化合物、および錫、銅、鉄のいずれかを含有する化合物などが挙げられる。
【0030】
上記有機カルボン酸系化合物とは有機カルボン酸およびその塩を意味する。有機カルボン酸が好ましい。具体的にはアスコルビン酸、テレフタル酸、リンゴ酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、シュウ酸、クエン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。好ましくはアスコルビン酸、アジピン酸である。
【0031】
上記錫、銅、もしくは鉄のいずれかを含有する化合物とは、好ましくは錫、銅、もしくは鉄の酸化物および塩化物を意味し、具体的には酸化第二錫、塩化第二銅、塩化第二鉄などが挙げられ、より好ましくは酸化第二錫である。
【0032】
これらの分解抑制剤は、ビスフェノールA誘導体がハロゲン化水素により分解する反応を抑制する。このため、縮合型燐酸エステルの製造において、単量型燐酸エステルの副生を抑制することができる。
【0033】
分解抑制剤は単独で使用されてもよく、また2種類以上の分解抑制剤を併用してもよい。
【0034】
分解抑制剤の使用量は、ビスフェノールA誘導体100重量部に対して0.01〜5重量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜2重量部である。さらに好ましくは、0.15〜1.5重量部である。分解抑制剤が少なすぎる場合には、分解抑制効果が少なくなり、十分な分解抑制効果を得にくくなる。分解抑制剤が多すぎる場合には、分解抑制剤が不純物として製品中に残存しやすい。
【0035】
分解抑制剤は、縮合型燐酸エステルを製造する際の任意のタイミングで添加され得る。ただし、分解抑制剤は、ビスフェノールA誘導体とハロゲン化水素との間の反応を抑制するので、ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させる前に分解抑制剤を添加することが好ましい。
【0036】
分解抑制剤は、縮合型燐酸エステルの製造後に除去せずにそのまま縮合型燐酸エステル製品中に残存させてもよい。ただし、目的とする縮合型燐酸エステル製品の品質として、分解抑制剤が残存すべきでない場合もしくは一定量以下の残存量とする必要がある場合には、分解抑制剤を除去する工程を設けてもよい。この場合、分解抑制剤を除去する方法としては、任意の方法が可能であり、例えば、ろ過またはデカンテーションなどがある。また、分解抑制剤を除去するタイミングとしては、ホスホロハリデートとヒドロキシ化合物との反応が完了した後であることが好ましい。
【0037】
オキシ三ハロゲン化燐の例としては、オキシ塩化燐、オキシ臭化燐などが挙げられる。
【0038】
ビスフェノールA誘導体とは、ビスフェノールAまたはその誘導体であって、下記式(A)で表される化合物を意味する。
【0039】
【化1】
【0040】
〔式中、R5およびR6は、同一または異なって炭素数1〜3のアルキル基を示す。n1およびn2は0〜4の整数を示す。〕
本発明においてホスホロハリデートとは、下記式(I)で表される化合物を意味する。
【0041】
【化2】
【0042】
[式中、Xはハロゲン原子を示し、nは1〜10の整数を示す。R5、R6、n1およびn2は上記と同義で示される]
オキシ三ハロゲン化燐およびビスフェノールA誘導体の使用量について、従来の一般的な技術常識としては、オキシ三ハロゲン化燐の使用量をビスフェノール系化合物の使用量から計算される化学量論的な反応量(すなわちビスフェノール系化合物の2モル倍)よりも過剰にするほど、残存する未反応オキシ三ハロゲン化燐の量が必然的に増大し、未反応オキシ三ハロゲン化燐を回収する操作が煩雑になるため好ましくないとされていた。しかし、オキシ三ハロゲン化燐の使用量を、ビスフェノールA誘導体に対して4.5モル倍以上、より好ましくは、5モル以上、さらに好ましくは5.4モル倍以上の過剰量で使用すると、ビスフェノールA誘導体の分解が抑制されるという利点が予想される。
【0043】
従って、本発明においてオキシ三ハロゲン化燐およびビスフェノールA誘導体の使用量は特には限定されないが、上述した理由で、オキシ三ハロゲン化燐の使用量を、ビスフェノールA誘導体に対して4.5モル倍以上とすることが好ましく、より好ましくは、5モル以上であり、さらに好ましくは5.4モル倍以上とする。
【0044】
ここで、「モル倍」とは、モル数を基準とした配合比をいう。
【0045】
一方、オキシ三ハロゲン化燐の使用量の上限は特に限定されないが、多く使用し過ぎると釜効率が低下しやすく、生産性を低下させ易いため、通常は8モル倍以下で使用されることが好ましく、6モル倍以下で使用することがより好ましい。さらに好ましくは、前記の範囲内において、反応液中のハロゲン化水素濃度が5重量%以下となるように、オキシ三ハロゲン化燐およびビスフェノールA誘導体の使用量を調整する。
【0046】
また、本発明においては触媒を使用しても差し支えない。例えば、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、四塩化チタン等のルイス酸系触媒が挙げられる。
【0047】
その他の反応条件、例えば、反応温度、反応時間、減圧度、などは目的とする縮合型燐酸エステルの種類および縮合度、ならびに使用する装置の種類、規模に応じて適宜選択することができる。1.のプロセスの第1段階の温度条件としては、好ましくは、80〜130℃である。また、80℃よりも低い温度で開始して、その後80℃〜130℃まで昇温させてもよい。例えば、室温で開始して、その後80℃〜130℃まで昇温させてもよい。また、1.のプロセスの第1段階の時間としては、好ましくは、3時間〜20時間である。また、好ましくは、反応時に発生するハロゲン化水素ガスは、水により捕集される。
【0048】
また、通常は必要としないが、必要な場合には有機溶媒を使用しても差し支えない。例えば、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン等の芳香族系の有機溶媒、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系の有機溶媒などが使用可能である。
【0049】
また、生成物の着色を防止する必要がある場合においては、トリフェニルホスファイト、およびトリ(2,6−ジ−t−ブチル)ホスファイトなどの燐系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2−メチル−6−t−ブチル−p−クレゾールなどのヒンダードフェノール系化合物などを着色防止剤として添加することができる。
【0050】
(残存オキシ三ハロゲン化燐の除去)
上記1.のプロセスの第1段階においては、ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させた後に未反応のまま残存するオキシ三ハロゲン化燐を除去する操作をさらに行うことが好ましい。
【0051】
オキシハロゲン化燐の除去は、従来公知の任意の方法を用いて行うことができる。
【0052】
未反応のオキシ三ハロゲン化燐の除去操作は、通常、常圧または減圧下で行われる。該オキシ三ハロゲン化燐の除去が充分でない場合、すなわちオキシ三ハロゲン化燐が残存している状態で下記1.のプロセスの第2段階を実行すると単量型燐酸エステルを生成し易い。従って、出来る限りオキシ三ハロゲン化燐を除去、回収することが好ましい。オキシ三ハロゲン化燐を除去、回収する条件としては、例えば、真空ポンプにて好ましくは200mmHg以下、より好ましくは100mmHg以下、さらに好ましくは50mmHg以下に減圧する。回収温度は、100〜200℃とすることが好ましく、100〜170℃とすることが、より好ましい。さらに好ましくは、100〜150℃である。
【0053】
より具体的には、例えば、真空ポンプにて5〜20mmHgに減圧しながら、90〜130℃にてオキシ三ハロゲン化燐を除去、回収することが望ましい。
【0054】
なお、1.のプロセスの第1段階後の反応生成物には、通常、1.のプロセスの第1段階において副生したIPPのうちの一部が残存する。1.のプロセスの第1段階の後に、例えば、クロマトグラフィーによる精製などの、残留するIPPを除去することのみを目的とする操作を行っても構わないが、本発明の方法では、特に、IPPを除去することのみを目的とする操作を行わずに、第2段階に進むことができる。
【0055】
(1.のプロセスの第2段階)
1.のプロセスの第2段階では、上記のようにして得られたホスホロハリデートとヒドロキシ化合物とを反応させて縮合型燐酸エステルを製造することを目的とする。
【0056】
本発明において縮合型燐酸エステルとは、その分子中に2個の燐原子を有するオキシ三ハロゲン化燐、ヒドロキシ化合物、およびビスフェノールA誘導体を反応させて得られる燐酸エステルを意味する。好ましい縮合型燐酸エステルとしては式(II)で表される化合物が挙げられる:
【0057】
【化3】
【0058】
[式中、R1、R2、R3およびR4は、同一または異なった炭素数6〜15のアリール基を示す。R5、R6、n1、n2およびnは上記と同義で示される]
上記炭素数6〜15のアリール基としては、フェニル、(o−,m−,p−)メチルフェニル、(o−,m−,p−)エチルフェニル、(o−,m−,p−)n−プロピルフェニル、(o−,m−,p−)イソプロピルフェニル、(o−,m−,p−)n−ブチルフェニル、(o−,m−,p−)sec−ブチルフェニル、(o−,m−,p−)tert−ブチルフェニル、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジメチルフェニル、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジエチルフェニル、2−メチル,3−エチルフェニル、2−メチル,4−エチルフェニル、2−メチル,5−エチルフェニル、2−メチル,6−エチルフェニル、3−メチル,4−エチルフェニル、3−メチル,5−エチルフェニル、2−エチル,3−メチルフェニル、2−エチル,4−メチルフェニル、2−エチル,5−メチルフェニル、3−エチル,4−メチルフェニル、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジ−n−プロピルフェニル、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジイソプロピルフェニル、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジ−n−ブチルフェニル、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジ−sec−ブチルフェニル、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジ−tert−ブチルフェニル、(2,3,6−、2,3,5−、2,3,4−、2,4,5−、2,4,6−、3,4,5−)トリメチルフェニル、(2,3,6−、2,3,5−、2,3,4−、2,4,5−、2,4,6−、3,4,5−)トリエチルフェニル、(2,3,6−、2,3,5−、2,3,4−、2,4,5−、2,4,6−、3,4,5−)トリプロピルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。ここで「(o−,m−,p−)」は、それぞれの置換基が独立して、ベンゼン環上の置換基をo−(オルト)、m−(メタ)、またはp−(パラ)のいずれかの位置に有することを示す。また、「(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)」は、それぞれの置換基が独立して、ベンゼン環上の2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、または3,5−のいずれかの位置に存在することを示す。また、「(2,3,6−、2,3,5−、2,3,4−、2,4,5−、2,4,6−、3,4,5−)」は、それぞれの置換基が独立して、ベンゼン環上の2,3,6−、2,3,5−、2,3,4−、2,4,5−、2,4,6−、3,4,5−のいずれかの位置に存在することを示す。
【0059】
式(II)で表される縮合型燐酸エステルの好ましい具体例としては、ビスフェノールAを原料とする2,2−ビス{4−[ビス(フェノキシ)ホスホリル]オキシフェニル}プロパン、2,2−ビス{4−[ビス(メチルフェノキシ)ホスホリル]オキシフェニル}プロパン、2,2−ビス{4−[ビス(ジメチルフェノキシ)ホスホリル]オキシフェニル}プロパン、2−ビス{4−[ビス(メチルエチルフェノキシ)ホスホリル]オキシフェニル}プロパンなどを挙げることができる。
【0060】
ヒドロキシ化合物としては、例えばフェノール、(o−,m−,p−)メチルフェノール、(o−,m−,p−)エチルフェノール、(o−,m−,p−)n−プロピルフェノール、(o−,m−,p−)イソプロピルフェノール、(o−,m−,p−)n−ブチルフェノール、(o−,m−,p−)sec−ブチルフェノール、(o−,m−,p−)tert−ブチルフェノール、(o−,m−,p−)メチルフェノール、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジメチルフェノール、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジエチルフェノール、2−メチル,3−エチルフェノール、2−メチル,4−エチルフェノール、2−メチル,5−エチルフェノール、2−メチル,6−エチルフェノール、3−メチル,4−エチルフェノール、3−メチル,5−エチルフェノール、2−エチル,3−メチルフェノール、2−エチル,4−メチルフェノール、2−エチル,5−メチルフェノール、3−エチル,4−メチルフェノール、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジ−n−プロピルフェノール、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジイソプロピルフェノール、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジ−n−ブチルフェノール、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジ−sec−ブチルフェノール、(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジ−tert−ブチルフェノール、(2,3,6−、2,3,5−、2,3,4−、2,4,5−、2,4,6−、3,4,5−)トリメチルフェノール、(2,3,6−、2,3,5−、2,3,4−、2,4,5−、2,4,6−、3,4,5−)トリエチルフェノール、(2,3,6−、2,3,5−、2,3,4−、2,4,5−、2,4,6−、3,4,5−)トリプロピルフェノール、ナフトールなどが挙げられ、特に好ましくはフェノールである。該ヒドロキシ化合物は一種または二種以上の混合で使用することも差し支えない。
【0061】
また、本発明において、単量型燐酸エステルとは分子内に燐原子を1個有する燐酸エステルであって、
▲1▼ビスフェノールA誘導体の分解物とオキシ三ハロゲン化燐との反応により生成する燐酸のトリエステル、および
▲2▼ビスフェノールA誘導体と反応せずに残存するオキシ三ハロゲン化燐とヒドロキシ化合物との反応により生成する燐酸のトリエステル
を総称する。具体例としては、例えば、ビスフェノールA誘導体がビスフェノールAであり、ヒドロキシ化合物がフェノールの場合にはトリフェニルホスフェート、イソプロペニルフェニルジフェニルホスフェート、ヒドロキシ化合物がクレゾール[(o−,m−,p−)メチルフェノール]の場合にはトリクレジルホスフェート、フェニルジクレジルホスフェート、イソプロペニルフェニルジクレジルホスフェート、ヒドロキシ化合物がキシレノール[(2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−、3,5−)ジメチルフェノール]の場合にはトリキシリルホスフェート、フェニルジキシレニルホスフェート、イソプロペニルフェニルジキシレニルホスフェートなどが挙げられる。
【0062】
1.のプロセスの第2段階を行う温度は、60〜170℃が好ましく、80〜170℃がより好ましく、120〜170℃がさらに好ましく、140〜160℃が特に好ましい。
【0063】
1.のプロセスの第2段階の時間は、好ましくは、1時間30分間〜21時間であり、より好ましくは、3時間〜15時間である。
【0064】
好ましい実施態様では、ヒドロキシ化合物の使用量は、反応混合物中に含まれるホスホロハリデートのすべてを縮合型燐酸エステルとするのに必要な理論量に対して2モル%以下の過剰率とする。この過剰率の詳細については後述する。
【0065】
その他の反応条件は所望により適宜選択される。なお、反応中に発生、および反応後に残存するハロゲン化水素は、常圧または減圧下により回収することが好ましい。
【0066】
(1.のプロセスの第2段階の好ましい実施態様)
好ましい実施態様では、1.のプロセスの第2段階において、第1段階で得られる反応生成物とモノフェノール系化合物とを120℃以下で反応させ、その後昇温して120℃以上でさらに該ホスホロハリデートとヒドロキシ化合物とを反応させる。
【0067】
この実施態様では、まず、1.のプロセスの第1段階で得られる反応生成物とモノフェノール系化合物とを120℃以下で反応させる。この際の温度は、好ましくは、110℃以下であり、より好ましくは、105℃以下であり、さらに好ましくは100℃以下である。
【0068】
このように、比較的低い温度を採用することにより、モノフェノール系化合物の一部が、1.のプロセスの第1段階の後の反応混合物中に含まれるIPPと反応し、その結果、IPPが除去される。
【0069】
反応温度が高すぎる場合にはモノフェノール系化合物とホスホロハリデートとが優先的に反応してしまうためモノフェノール系化合物とIPPとの反応が十分に進みにくい。その結果、IPPの量が十分に低減されにくい。
【0070】
一方、この実施態様における1.のプロセスの第2段階の反応温度の下限は特に限定されない。ただし、脱ハロゲン化水素反応が起こらずに、IPPとモノフェノール系化合物とが効率的に接触できるような温度であることが好ましい。モノフェノール系化合物の種類、量および添加する速度、反応スケール、その他の反応条件(反応時間、減圧度、溶媒の使用の有無)などの組合せから適宜決められる。例えば、40℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましい。
【0071】
この実施態様における1.のプロセスの第2段階の反応温度を120℃以下で行う期間は、好ましくは、30分〜8時間であり、より好ましくは、1〜6時間である。
【0072】
この実施態様によれば、1.のプロセスの第1段階後の反応物にイソプロペニルアリール基含有ホスフェートが含まれている場合に、第2段階において、イソプロペニルアリール基含有ホスフェートを除去することができる。
【0073】
そして、上記120℃以下で反応させる操作の後に、120℃を超える温度に昇温してホスホロハリデートとヒドロキシ化合物とを反応させることにより縮合型燐酸エステルを製造することができる。
【0074】
この実施態様では、好ましくは、30分間〜8時間、より好ましくは、1時間〜6時間をかけて、上記120℃以下の反応温度から上記120℃を超える反応温度にまで温度を上昇させる。好ましくは120〜170℃まで昇温させる。より好ましくは140〜160℃まで昇温させる。さらに、昇温させた後、好ましくは30分間〜5時間、より好ましくは、1〜3時間、120℃を超える温度を維持する。好ましくは140〜160℃で維持する。
【0075】
1.のプロセスの第2段階に使用される材料の全量が、好ましくは、1.のプロセスの第2段階の開始前に添加される。しかし、必要に応じて、その一部を1.のプロセスの第2段階の途中に添加してもよい。例えば、材料の一部を、上記120℃以下で反応させる際に添加してもよく、上記120℃以下の反応温度から上記120℃を超える反応温度にまで温度を上昇させる際に添加してもよく、上記120℃を超える反応温度で反応させる際に添加してもよい。
【0076】
なお、本明細書中で説明する1.のプロセスの第2段階で使用される反応材料の量は、1.のプロセスの第2段階の完了までに添加される材料の総量をいう。
【0077】
その他の反応条件は所望により適宜選択される。なお、反応中に発生、および反応後に残存するハロゲン化水素は、常圧または減圧下により回収することが好ましい。
【0078】
好ましい実施態様では、ヒドロキシ化合物の使用量は、反応混合物中に含まれるホスホロハリデートのすべてを縮合型燐酸エステルとするのに必要な理論量に対して2モル%以下の過剰率とする。
【0079】
この実施態様によれば、収率および品質を低下させることなく、一旦生成した縮合型燐酸エステルとヒドロキシ化合物とのエステル交換反応が起きることによる単量型燐酸エステルの副生を抑制することができる。特に工業スケールでの大規模生産では、反応時間が長くなるため、縮合型燐酸エステルとヒドロキシ化合物とのエステル交換反応が起こりやすいことを考慮すれば、ヒドロキシ化合物を上記過剰率で使用することが非常に有利である。
【0080】
ここで、工業スケールとは、モノフェノール系化合物とホスホロハリデートとを反応させる際のモノフェノール系化合物とホスホロハリデートとの合計量が通常の工業生産における規模であることをいう。工業スケールとは、具体的には、好ましくは5リットル以上、より好ましくは、30リットル以上、さらに好ましくは、100リットル以上、特に好ましくは、300リットル以上である。
【0081】
ここで、ヒドロキシ化合物とホスホロハリデートとを反応させる際のヒドロキシ化合物とホスホロハリデートとの合計量は、反応装置の制約などから具体的には、好ましくは20000リットル以下、より好ましくは、10000リットル以下である。
【0082】
ヒドロキシ化合物の使用量が、化学量論的に計算される理論量未満の場合には、必然的に未反応ホスホロハリデートが残存し、精製および後処理工程が煩雑になるなどの問題が起こりやすい。
【0083】
ヒドロキシ化合物の使用量が、化学量論的に計算される理論量である場合には、反応未完結となりやすく、このため未反応ホスホロハリデートが残存し、不純物として製品中に残存したり、精製および後処理工程が煩雑になるなどの問題が起こりやすい。
【0084】
モノフェノール系化合物の量が多すぎる場合には、単量型燐酸エステルの副生が増大するため好ましくない。このため、モノフェノール系化合物の過剰率として2.0モル%以下であることが好ましい。より好ましくは、1.8モル%以下であり、さらにより好ましくは1.6モル%以下であり、特に好ましくは、1.5モル%以下である。
【0085】
なお、ホスホロハリデートのすべてを縮合型燐酸エステルとするのに必要な化学量論的な理論量とは、ホスホロハリデートに含まれるハロゲン原子を全てアリールエステル基に置換するのに必要な量を指し、例えば、上記式(I)においてn=1の場合では、ホスホロハリデート1molに対してモノフェノール系化合物4mol、n=2の場合では、ホスホロハリデート1molに対してモノフェノール系化合物5mol、n=3の場合では、ホスホロハリデート1molに対してモノフェノール系化合物6molである。
【0086】
ここで、過剰率とは、モノフェノール系化合物の使用量のモル数から、化学量論的な理論量のモル数を減算し、化学量論的な理論量のモル数で除して比率を求め、その後100倍して%表示とした値をいう。
【0087】
モノフェノール系化合物の量の下限は、縮合型燐酸エステルの種類および反応条件などにより異なるため決定することはできないが、好ましくは、0.2モル%以上である。より好ましくは、0.3モル%以上であり、特に好ましくは、0.4モル%以上であり、さらに好ましくは、0.5モル%以上である。
【0088】
その他の反応条件(例えば、減圧度、およびヒドロキシ化合物の追加時間)などは所望により適宜選択される。
【0089】
なお、反応中に発生し、そして反応後に残存するハロゲン化水素は、常圧または減圧下で回収することが好ましい。例えば、水に捕集することにより回収され得る。
【0090】
通常、このようにして製造される縮合型燐酸エステルは、部分反応物、未反応原料、および触媒残分などの不純物を多く含有しているため、中和、水洗、水蒸気蒸留などの公知の精製方法により粗製の縮合型燐酸エステルから不純物を除去する。
【0091】
例えば、精製方法として、エポキシ化合物を使用する方法を採用すれば、部分反応物の−OH基にエポキシ化合物を付加させ、次いで選択的に加水分解することにより燐酸に転換することができ、そして、その後湯洗すれば、燐酸分を除去することができ製品の酸価を下げることができる。
【0092】
このようにして得られる製品は単量型燐酸エステルの含有量が極めて少ない高品質な縮合型燐酸エステルである。
【0093】
上述したように、最も好ましくは、1.のプロセスの第1段階において、ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させてホスホロハリデートを製造し、さらに反応生成物から未反応のオキシ三ハロゲン化燐を除去し、そして第2段階において、該第1段階で得られる反応生成物とモノフェノール系化合物とを120℃以下で反応させ、その後昇温して120℃以上で該ホスホロハリデートとヒドロキシ化合物とを反応させることにより、最も効率良く、単量型燐酸エステルを低減することができる。
【0094】
このような高品質の縮合型燐酸エステルは、各種の樹脂に難燃剤として使用され得る。
【0095】
具体的には、例えば、以下の樹脂に使用され得る:ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)系樹脂、耐衝撃性スチレン系樹脂、SAN(スチレンアクリロニトリル)系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリメタクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂、および、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、フェノール系樹脂、ノボラック系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂などの熱硬化性樹脂。
【0096】
特に、成形温度が高い樹脂、例えば、1つの実施態様では、160℃以上で成形される樹脂、より好ましい実施態様では180℃以上で成形される樹脂、特に好ましい実施態様では、200℃以上で成形される樹脂において、本発明の方法により得られた縮合型燐酸エステルが有利に使用され得る。
【0097】
上記の樹脂に難燃剤として添加した場合、その樹脂を成形機にて加工する際の高い処理温度によりガスを発生することなく耐熱性、耐着色性に優れた高品質な成形品を得ることができる。
【0098】
本発明の方法により得られる縮合型燐酸エステルは、樹脂に添加され、成形されて、任意の所望の、難燃性の成形品が提供される。
【0099】
樹脂への難燃剤の添加方法、および難燃剤が添加された樹脂の成形方法は、公知の任意の方法が採用され得る。
【0100】
例えば、各成分(例えば、樹脂、難燃剤、可塑剤、難燃助剤、離型剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、遮光剤、耐候性改良剤、および無機充填剤など)を単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキサー、ロール等の汎用の混練装置を用いて溶融混練して樹脂中に配合することが可能であり、また例えば、押出成形機などの成形機により、板状、シート状、またはフィルム状に成形加工することができ、所望の成形品が得られる。
【0101】
(2.のプロセス)
次に、上記2.のプロセスについて説明する。上記2.のプロセスでは、
分解抑制剤の存在下で、オキシ三ハロゲン化燐とヒドロキシ化合物とを反応させる第1段階、および
得られた反応生成物にビスフェノールA誘導体を反応させる第2段階
を行う。
【0102】
必要であれば、2.のプロセスの第1段階と第2段階との間に、ジフェニルホスホロクロライドを蒸留する工程を設けてもよい。
【0103】
2.のプロセスの第1段階の条件としては、従来公知の縮合型燐酸エステルの製造方法に採用される条件が採用され得る。好ましくは、40℃〜130℃の温度で行われる。温度以外の条件については、例えば、上述した1.のプロセスの第2段階と実質的に同等の条件が使用可能である。
【0104】
2.のプロセスの第2段階の条件としては、従来公知の縮合型燐酸エステルの製造方法に採用される条件が採用され得る。好ましくは、120℃〜150℃の温度で行われる。温度以外の条件については、例えば、上述した1.のプロセスの第1段階と実質的に同等の条件が使用可能である。
【0105】
また、このプロセスに使用され得る材料としては、従来公知の縮合型燐酸エステルの製造方法に採用される材料が採用され得る。例えば、上述した1.のプロセスに使用される材料と同様の材料が使用され得る。
【0106】
2.のプロセスにおいて、分解抑制剤は、縮合型燐酸エステルの製造後に除去せずにそのまま縮合型燐酸エステル製品中に残存させてもよい。ただし、目的とする縮合型燐酸エステル製品の品質として、分解抑制剤が残存すべきでない場合もしくは一定量以下の残存量とする必要がある場合には、分解抑制剤を除去する工程を設けてもよい。この場合、分解抑制剤を除去する方法としては、任意の方法が可能であり、例えば、ろ過またはデカンテーションなどがある。また、分解抑制剤を除去するタイミングとしては、2.のプロセスの第2段階の後であることが好ましい。
【0107】
(3.のプロセス)
次に、上記3.のプロセスについて説明する。上記3.のプロセスでは、
分解抑制剤の存在下、ビスフェノールA誘導体、オキシ三ハロゲン化燐、およびヒドロキシ化合物を同時に反応させる工程
を行う。
【0108】
上記3.のプロセスの反応条件としては、従来公知の縮合型燐酸エステルの製造方法に採用される条件が採用され得る。例えば、40℃〜170℃の温度で反応させることができる。
【0109】
また、このプロセスに使用され得る材料としては、従来公知の縮合型燐酸エステルの製造方法に採用される材料が採用され得る。例えば、上述した1.のプロセスに使用される材料と同様の材料が使用され得る。
【0110】
3.のプロセスにおいて、分解抑制剤は、縮合型燐酸エステルの製造後に除去せずにそのまま縮合型燐酸エステル製品中に残存させてもよい。ただし、目的とする縮合型燐酸エステル製品の品質として、分解抑制剤が残存すべきでない場合もしくは一定量以下の残存量とする必要がある場合には、分解抑制剤を除去する工程を設けてもよい。この場合、分解抑制剤を除去する方法としては、任意の方法が可能であり、例えば、ろ過またはデカンテーションなどがある。また、分解抑制剤を除去するタイミングとしては、ビスフェノールA誘導体、オキシ三ハロゲン化燐、およびヒドロキシ化合物の反応が完了した後であることが好ましい。
【0111】
【実施例】
以下に、本発明の非限定的な実施例を示す。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0112】
実施例において、製品中の単量型燐酸エステルの含有量は液体高速クロマトグラフィー(装置名:島津製作所社製LC10AD、カラム:SilicaODS−80TM、オ−ブン:CTO−10A、溶離液:メタノール:水=8:2(V/V)、流量:0.8ml/min、検出器:SPD10A、検出器UV周波数:254nm)によりそれぞれ測定した。本実施例においては特にことわりがない限り、「%」は「重量%」を指す。
【0113】
(実施例1)
攪拌機、温度計、滴下装置、および塩酸回収装置およびコンデンサー(30℃)を有する1Lの反応装置に、オキシ塩化燐552.6g(3.6mol)、ビスフェノールA228.4g(1mol)、塩化マグネシウム2.3g、BHT0.38g、酸化第二錫0.5g(ビスフェノールA100重量部に対して0.22重量部)を充填し、攪拌しながら2時間かけて105℃まで加熱し、さらに3時間反応させた。この時、発生する塩酸は塩酸回収装置に回収した(回収量71.0g)。
【0114】
その後、窒素雰囲気下、温度160℃、圧力350mmHgで、未反応のオキシ塩化燐(243.0g)を回収した。得られた反応生成物中の塩素濃度は30.0%であった。
【0115】
該反応生成物459.8gに、常圧、100℃にてフェノール368.9g(1%過剰)を3時間かけて追加した後、2時間かけて150℃まで昇温し、引き続き1時間熟成した。この時、発生する塩酸は同様に塩酸回収装置に回収した(回収量125.6g)。次いで、10mmHg、150℃で1時間かけて系内に残存する塩酸を完全に除去し、粗縮合型燐酸エステル681.3gを得た。
【0116】
該粗縮合型燐酸エステルをトルエンで希釈した後、希塩酸水溶液によって洗浄し、粗縮合型燐酸エステルを含む有機相をプロピレンオキシドで処理した。次いで水洗いを繰り返した後、減圧蒸留によりトルエンを回収し、更に水蒸気蒸留により未反応フェノールを除去することにより、一般式(II)においてn=1に相当する化合物(2,2−ビス{4−[ビス(フェノキシ)ホスホリル]オキシフェニル}プロパン)を85.6%、n=2に相当する化合物を12.5%、n=3に相当する化合物を2.0%含有する縮合型燐酸エステルを680g得た。得られた製品の単量型燐酸エステル含有量は0.9%、酸価(KOH/mg)は0.04であった。
【0117】
(実施例2)
酸化第二錫の替わりにアスコルビン酸0.5gを使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた製品の単量型燐酸エステル含有量は2.0%、酸価(KOH/mg)は0.06であった。
【0118】
(比較例1)
酸化第二錫を使用しなかった以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた製品の単量型燐酸エステル含有量は4.2%、酸価(KOH/mg)は0.04であった。
【0119】
(実施例3)
酸化第二錫の替わりに塩化第二銅を使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた製品の単量型燐酸エステル含有量は2.9%、酸価(KOH/mg)は0.06であった。
【0120】
(実施例4)
酸化第二錫の替わりに塩化第二鉄を使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた製品の単量型燐酸エステル含有量は2.4%、酸価(KOH/mg)は0.07であった。
【0121】
(実施例5)
酸化第二錫の替わりにアジピン酸を使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた製品の単量型燐酸エステル含有量は2.0%、酸価(KOH/mg)は0.09であった。
【0122】
(実施例6)
酸化第二錫の替わりにシュウ酸を使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた製品の単量型燐酸エステル含有量は2.7%、酸価(KOH/mg)は0.06であった。
【0123】
(実施例7)
酸化第二錫の替わりにクエン酸を使用した以外は実施例1と同様の操作を行った。得られた製品の単量型燐酸エステル含有量は2.4%、酸価(KOH/mg)は0.05であった。
【0124】
【発明の効果】
本発明により得られる縮合型燐酸エステルは、製品の収率を落とすことなくビスフェノールA誘導体の分解に起因する単量型燐酸エステルの含有量を低減することができる。さらに条件を設定することにより実質的に単量型燐酸エステルを含まない縮合型燐酸エステルを得ることが可能である。従って、本発明の方法によって製造された縮合型燐酸エステルは耐熱性、揮発性および耐着色性の点で優れており、樹脂に対する可塑剤や難燃剤として使用したとき、成形時における有害ガスの発生や金型の汚染、成型品の耐熱性低下といった問題を生じることがないという利点を有している。この中でも、特に金型の汚染防止効果の向上は連続ショット数の増加につながるため、製品のコストダウンとなり産業上非常に有利である。
Claims (12)
- 前記分解抑制剤が有機カルボン酸系化合物である、請求項1に記載の方法。
- 前記有機カルボン酸系化合物がアスコルビン酸および/またはアジピン酸である、請求項2に記載の方法。
- 前記分解抑制剤が錫、銅、鉄の酸化物である、請求項1に記載の方法。
- 前記錫、銅、鉄の酸化物が、酸化第二錫である、請求項4に記載の方法。
- 前記分解抑制剤の使用量がビスフェノールA誘導体100重量部に対して0.01〜5重量部である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 前記ビスフェノールA誘導体、オキシ三ハロゲン化燐、およびヒドロキシ化合物を反応させるプロセスが、
ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させてホスホロハリデートを製造する第1段階、および
該ホスホロハリデートとヒドロキシ化合物とを反応させる第2段階
を包含する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。 - 前記ビスフェノールA誘導体、オキシ三ハロゲン化燐、およびヒドロキシ化合物を反応させるプロセスが、
ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させてホスホロハリデートを製造し、そして反応生成物から未反応のオキシ三ハロゲン化燐を除去する第1段階、および
該ホスホロハリデートとヒドロキシ化合物とを反応させる第2段階
を包含する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。 - 前記ヒドロキシ化合物の使用量が、該ホスホロハリデートのすべてを縮合型燐酸エステルとするのに必要な理論量よりも2モル%以下の過剰である、請求項7または8に記載の方法。
- 前記ビスフェノールA誘導体、オキシ三ハロゲン化燐、およびヒドロキシ化合物を反応させるプロセスが、
ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させてホスホロハリデートを製造する第1段階、および
該第1段階で得られる反応生成物とモノフェノール系化合物とを120℃以下で反応させ、その後昇温して120℃以上で該ホスホロハリデートとヒドロキシ化合物とを反応させる第2段階
を包含する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。 - 前記ビスフェノールA誘導体、オキシ三ハロゲン化燐、およびヒドロキシ化合物を反応させるプロセスが、
ビスフェノールA誘導体とオキシ三ハロゲン化燐とを反応させてホスホロハリデートを製造し、そして反応生成物から未反応のオキシ三ハロゲン化燐を除去する第1段階、および
該第1段階で得られる反応生成物とモノフェノール系化合物とを120℃以下で反応させ、その後昇温して120℃以上で該ホスホロハリデートとヒドロキシ化合物とを反応させる第2段階
を包含する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。 - 前記縮合型燐酸エステルが2,2−ビス{4−[ビス(フェノキシ)ホスホリル]オキシフェニル}プロパンである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
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