JP4097384B2 - ジアリールホスホロハリデートの製造方法 - Google Patents

ジアリールホスホロハリデートの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はジアリールホスホロハリデートの製造方法、およびジアリールホスホロハリデートを原料とした芳香族ジホスフェートの製造方法に関する。さらに詳しくは、製造工程において、有害な廃水の発生が少なく、副生成物である単量型ホスフェートの含有量が少なく、色相に優れたジアリールホスホロハリデートおよび芳香族ジホスフェートを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ジホスフェートは、難燃剤や可塑剤などの樹脂用添加剤、医薬品や農薬、殺虫剤などの原料または中間体として、幅広い分野において有用な化学物質である。
【0003】
特に2−位および6−位に炭素数1〜4のアルキルを有するフェニル基を有する芳香族ジホスフェートは、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を成形する時の高温に耐え得ることから、その有用性が広く知られている。
【0004】
高品質な芳香族ジホスフェートの製造方法として、特開平5−1079号公報には、まず2,6−キシレノールと全量のオキシ塩化リンとを反応させ、次いでこの反応物にレゾルシンを反応させることによって、レゾルシンビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]を得ることが記載されている(例えば、実施例6)。
【0005】
しかし、上記方法は芳香族ジホスフェートに加えて、所望でない単量型ホスフェートが比較的多く生成し、その結果、純度の低い芳香族ジホスフェートしか得られなかった。ここで、単量型ホスフェートとは、オキシ三ハロゲン化リンとモノフェノール化合物との反応により生成する、分子中にリン原子を1個のみ含有するトリエステルを意味し、例えばモノフェノール化合物が2,6−ジメチルフェノールの場合にはトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートである。
【0006】
また、上記方法においてはオキシ塩化リンの飛散量が多く、飛散したオキシ塩化リンはコンデンサーからスクラバー等を経由して反応系外へ排出される。そして、スクラバー等から排出される廃水中には、多量のオキシ塩化リンが補足されるため、自然環境に対する負荷が大きいという問題があった。
【0007】
さらに、2−位および6−位に炭素数1〜4のアルキルを有するモノフェノール化合物(以下2,6−アルキル置換フェノールと称する場合あり)は化学変化を起こしやすいので、上記方法では得られるジアリールホスホロハリデートや芳香族ジホスフェートが着色するおそれがあった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のジアリールホスホロハリデートおよび芳香族ジホスフェートの製造方法に見られた、上記のような問題点を解決するものである。すなわち、単量型ホスフェートの含有量が少ない、ジアリールホスホロハリデートおよび芳香族ジホスフェートの製造方法、ならびに色相に優れた高品質なジアリールホスホロハリデートおよび芳香族ジホスフェートの製造方法、上記製造工程で発生するオキシハロゲン化リンの廃水中への飛散を低減し、自然環境への負荷が低いジアリールホスホロハリデートおよび芳香族ジホスフェートの製造方法を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前述した課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、オキシハロゲン化リンと2,6−アルキル置換フェノールとを反応させる際に、反応に必要なオキシハロゲン化リンの一部をあらかじめ2,6−アルキル置換フェノールと反応させておき、次いで得られた反応混合物に残りのオキシハロゲン化リンを添加して反応させると、これまで考えられていた、オキシハロゲン化リンに対して理論反応量より大過剰のモノフェノール化合物を反応させると単量型ホスフェートを生成しやすいという常識に反して、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の特徴は、オキシハロゲン化リンと2−位および6−位にアルキル基を有するモノフェノール化合物の一種類または二種類以上を反応させてジアリールホスホロハリデートを製造する方法であって、以下の工程:
(a)上記モノフェノール化合物と、上記オキシハロゲン化リンの一部とを反応させる、第一工程、および
(b)上記第一工程で得られた反応生成物と、上記オキシハロゲン化リンの残部とを反応させる、第二工程
を包含する、方法である。
【0011】
本発明の一つの局面は、上記第一工程において、上記モノフェノール化合物と上記オキシハロゲン化リンの反応モル比が、1:0.1〜1:0.25である、ジアリールホスホロハリデートの製造方法である。
【0012】
本発明の別の局面は、上記第二工程が、上記第一工程よりも高い温度で行われる、ジアリールホスホロハリデートの製造方法である。
【0013】
本発明のさらに別の局面は、上記第一工程において、上記モノフェノール化合物と上記オキシハロゲン化リンとの反応温度が135℃以下である、ジアリールホスホロハリデートの製造方法である。
【0014】
本発明のさらに別の局面は、上記第二工程において、上記第一工程で得られた上記反応生成物と上記オキシハロゲン化リンとの反応温度が165℃以下である、ジアリールホスホロハリデートの製造方法である。
【0015】
本発明のさらに別の局面は、上記ジアリールホスホロハリデートが、ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスホロハリデートである、ジアリールホスホロハリデートの製造方法である。
【0016】
本発明のさらに別の局面は、芳香族ジホスフェートの製造方法であって、上記の方法で製造されたジアリールホスホロハリデートと、ジヒドロキシ化合物を反応させる工程を包含する、方法である。
【0017】
本発明のさらに別の局面は、上記芳香族ジホスフェートが、以下の一般式(II):
【0018】
【化2】
Figure 0004097384
【0019】
(R1〜R8は、同一または異なって、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基;R9〜R12は、同一または異なって、水素原子あるいは直鎖または分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基;Xは、結合手、−CH2−、−C(CH32−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−または−N=N−からなる群から選択される;nは0または1の整数;mは0から5の整数)で表される、芳香族ジホスフェートの製造方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のジアリールホスホロハリデートおよび芳香族ジホスフェートの製造方法の好適な実施の形態について説明する。
【0021】
(ジアリールホスホロハリデートの製造方法)
本発明のジアリールホスホロハリデートの製造方法は、オキシハロゲン化リンと、一種類または二種類以上の2−位および6−位にアルキルを有するモノフェノール化合物とを反応させる方法において、以下の工程:
(a)上記モノフェノール化合物と、上記オキシハロゲン化リンの一部とを反応させる、第一工程、および
(b)上記第一工程で得られた反応生成物と、上記オキシハロゲン化リンの残部とを反応させる、第二工程
を包含する。
【0022】
本発明の方法で使用されるオキシハロゲン化リンとしては、任意のオキシハロゲン化リンが使用可能であって、例えば、オキシ塩化リン、オキシ臭化リンが好ましい。コスト面からオキシ塩化リンが特に好ましい。
【0023】
本発明の方法で使用されるモノフェノール化合物(2,6−アルキル置換フェノール)とは、フェノールの2−位および6−位がアルキル基で置換された化合物を指す。アルキル基は、炭素数が1〜4である直鎖または分岐鎖のものが好ましい。好ましい具体例として、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、2,6−ジイソプロピルフェノール、2,6−ジ−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−sec−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、(2,3,6−、2,4,6−)トリメチルフェノール、(2,3,6−、2,4,6−)トリエチルフェノール、(2,3,6−、2,4,6−)トリ−n−プロピルフェノール、(2,3,6−、2,4,6−)トリイソプロピルフェノール、(2,3,6−、2,4,6−)トリ−n−ブチルフェノール、(2,3,6−、2,4,6−)トリ−sec−ブチルフェノール、(2,3,6−、2,4,6−)トリ−tert−ブチルフェノールが挙げられる。ここで「(2,3,6−、2,4,6−)」は、それぞれの置換基が独立して、ベンゼン環上に置換基を2,3,6−、2,4,6−のいずれかの位置に有することを示す。
【0024】
上記2,6−アルキル置換フェノールは、単独で使用してもよく、または二種類以上を併用することも可能である。
【0025】
(a)第一工程
第一工程のオキシハロゲン化リンと2,6−アルキル置換フェノールの一部とを反応させる。
【0026】
第一工程の「オキシハロゲン化リンの一部」とは、2,6−アルキル置換フェノールのすべてをジアリールホスホロハリデートにするのに必要なだけのオキシハロゲン化リンを全量とした時の一部分を指す。ここで、全量とは理論的には、2,6−アルキル置換フェノール1モルに対し、オキシハロゲン化リン0.5モルに相当する。ただし、現実には、合成反応の諸条件および選択される2,6−アルキル置換フェノールの種類などにより相違する。具体的には例えば、2,6−アルキル置換フェノール1モルに対し、0.40〜0.58モルが好ましく、0.43〜0.54モルがより好ましい。さらに好ましくは、0.45〜0.52モルであり、特に好ましくは、0.47〜0.50モルである。
【0027】
第一工程におけるオキシハロゲン化リンの使用量は、2,6−アルキル置換フェノールとオキシハロゲン化リンとが反応して生成するモノアリールホスホロハリデートと2,6−アルキル置換フェノールの、オキシハロゲン化リンに対する相互溶解度が上がるように調製され得る。第一工程におけるオキシハロゲン化リンの使用量は、2,6−アルキル置換フェノール1モルに対して、オキシハロゲン化リンが0.05〜0.3モルの範囲となるのが好ましく、0.1〜0.25モルの範囲となるのがより好ましく、0.15〜0.2モルの範囲が特に好ましい。オキシハロゲン化リンの使用量が多すぎる場合、第一工程におけるオキシハロゲン化リンの飛散量が多くなりやすい。また逆に、オキシハロゲン化リンの使用量が少すぎる場合、続く第二工程において生成するジアリールホスホロハリデートの純度が低下する。
【0028】
本発明の第一工程においては、反応を円滑に進める目的で、有機溶媒および/または触媒を使用することが可能である。
【0029】
第一工程の温度は、オキシハロゲン化リンの飛散量が増加することを防ぐために、やや低めに設定することが好ましい。具体的には、例えば150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、135℃以下がさらに好ましい。特に好ましくは130℃以下である。
【0030】
第一工程の温度の下限は、特に限定されない。オキシハロゲン化リンと2,6−アルキル置換フェノールとの反応が十分に進行し得る温度であればよい。具体的には例えば、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、105℃以上がさらに好ましく、110℃以上が特に好ましい。
【0031】
また、第一工程の温度条件は一定温度であってもよいが、昇温させながら行えば、例えば、室温から昇温させながら反応を行えば、エネルギー効率などの点で好ましい。
【0032】
第一工程において有機溶媒としては、反応材料(すなわち、オキシハロゲン化リン、および2,6−アルキル置換フェノール)ならびにそれらの反応生成物に不活性な任意の有機溶媒が使用可能である。例として、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン等の芳香族系の有機溶媒、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系の有機溶媒が挙げられる。
【0033】
第一工程において使用可能な触媒としては、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化第二錫等のルイス酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等のブレンステッド酸、等が挙げられる。触媒活性の点からルイス酸が好ましく使用される。触媒の使用量は、通常、第一工程および第二工程に用いるオキシハロゲン化リンの全量100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
【0034】
第一工程の反応は、大気圧下で行ってもよく、または減圧下で行ってもよい。例えば、5〜400mmHgとすることができる。また、第一工程の反応は、水のない状態で行うことが好ましい。
【0035】
第一工程の反応時間は、使用する原料の種類や使用量、製造スケール等により自由に変更し得る。工業的な製造を考えた場合、1〜10時間の範囲が好ましい。より好ましくは、2〜8時間である。なお、オキシハロゲン化リンの全量を連続的に2,6−アルキル置換フェノールに添加した場合、オキシハロゲン化リンの飛散量が増加するだけでなく、得られるジアリールホスホロハリデートおよび上記ジアリールホスホロハリデートを原料として得られる芳香族ジホスフェートが着色しやすいため好ましくない。
【0036】
また、生成物の着色を防止する必要がある場合においては、トリフェニルホスファイト、トリス(2,6−ジ−t−ブチル)ホスファイト等のリン系化合物、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、2−メチル−6−t−ブチル−p−クレゾール等のヒンダードフェノール系化合物を着色防止剤として添加することができる。
【0037】
(b)第二工程
本発明の方法の第二工程では、上記第一工程で得られた反応混合物に、残りのオキシハロゲン化リンを添加して反応させることにより、ジアリールホスホロハリデートを製造する。
【0038】
第二工程は、好ましくは第一工程の終了後、そのままの反応器等を用いて行われる。しかし、必要に応じて、第一工程で得られる生成物を取り出して別の容器で第二工程を行ってもよい。
【0039】
本発明の方法により製造されるジアリールホスホロハリデートは、一般式(I):
【0040】
【化3】
Figure 0004097384
【0041】
(R1〜R4は、同一または異なって、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基;R9およびR10は、同一または異なって、水素原子、あるいは直鎖または分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基;Xは、塩素原子または臭素原子)で表される化合物が好ましい例として挙げられる。
【0042】
好ましい実施態様においては、第一工程の反応温度よりも高い温度において第二工程の反応を行う。
【0043】
第二工程のオキシハロゲン化リンと第一工程で得られた反応混合物との反応は、副生成物である単量型ホスフェートの生成を抑制するため、170℃以下で行うことが好ましく、165℃以下で行うことがより好ましい。反応温度の下限は、反応混合物とオキシハロゲン化リンが反応する温度であればよく、好ましくは140℃以上であり、より好ましくは145℃以上である。単量型ホスフェートの生成を抑制する必要が生じる理由は、単量型ホスフェートが存在すると芳香族ジホスフェートの結晶性が低下し、その結果、製品としての商品価値が著しく落ちるからである。特に、後に記載する、レゾルシンビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、ヒドロキノンビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、ビスフェノールAビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]のようにすべての置換基が2,6−ジメチルフェニルである芳香族ジホスフェートは、結晶性が高いため粉末として製品化されるが、このような結晶性の芳香族ジホスフェートの場合、単量型ホスフェートの含有量を少しでも低減しておくことは、製品化を行うに際して意義のあることである。
【0044】
第二工程の「残りのオキシハロゲン化リン」とは、オキシハロゲン化リンの全量から第一工程で使用したオキシハロゲン化リンの量を差し引いた量を指す。
【0045】
具体的には、例えば、2,6−アルキル置換フェノール1モルに対し、オキシハロゲン化リンの0.23〜0.42モルが好ましい。0.25〜0.40モルがより好ましい。0.27〜0.38モルがさらに好ましい。0.30〜0.35モルが特に好ましい。
【0046】
第二工程において、オキシハロゲン化リンは一度に添加してもよく、一定の時間をかけて徐々に添加してもよい。例えば、0.5〜7時間かけて添加することが好ましく、1〜6時間かけて添加することがより好ましい。
【0047】
第二工程のその他の条件、例えば、反応時間、減圧度等は、目的とするジアリールホスホロハリデートの種類、使用する装置の種類および規模等に応じて適宜選択することができる。
【0048】
第二工程の反応時間は、具体的には例えば、1〜10時間が好ましく、より好ましくは2〜8時間である。
【0049】
第二工程の反応は常圧で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。減圧下で行う場合であれば、例えば、5〜500mmHgとすることが好ましく、10〜450mmHgがより好ましく、50〜400mmHgがさらに好ましい。
【0050】
第二工程において、触媒、溶媒、添加剤および設備などはすべて、第一工程に用いる触媒、溶媒、添加剤および設備などをそのまま用いることができる。
【0051】
第一工程の反応容器等をそのまま用いる場合、追加のオキシハロゲン化リン以外には材料等を追加しないで第二工程を進めることも可能である。しかし、追加の溶媒および追加の触媒を追加のオキシハロゲン化リンとともに添加してもよい。触媒を追加する場合、追加の触媒量は、追加のオキシ塩化リン100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0052】
上記の第一工程および第二工程を行うことにより、色相に優れ、単量型ホスフェートの含有量が少ない、高品質のジアリールホスホロハリデートが得られる。
【0053】
また、オキシハロゲン化リンの全量を分割して仕込んで2,6−アルキル置換フェノールと反応させることにより、オキシハロゲン化リンの飛散量を減少させることができる。
【0054】
(芳香族ジホスフェートの製造方法)
本発明の芳香族ジホスフェートの製造方法では、上記の第一工程および第二工程を経て得られた、ジアリールホスホロハリデートと、ジヒドロキシ化合物とを反応させて、芳香族ジホスフェートを製造する。本明細書中では、上記の第一工程および第二工程を経て得られた、ジアリールホスホロハリデートと、ジヒドロキシ化合物とを反応させて、芳香族ジホスフェートを得る工程を、便宜上トリエステル化工程という。トリエステル化工程は、好ましくは、第二工程の終了後、そのままの反応容器を用いて行われる。しかし必要に応じて、第二工程で得られた生成物を取り出して別の反応器で行ってもよい。
【0055】
上記ジヒドロキシ化合物としては、1分子中に2個の−OH基を有する任意の化合物が使用可能である。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族系ジヒドロキシ化合物、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビフェノール等の芳香族ジヒドロキシ化合物が挙げられる。
【0056】
トリエステル化工程により得られ得る芳香族ジホスフェートのうち好ましい化合物は、一般式(II):
【0057】
【化4】
Figure 0004097384
【0058】
(R1〜R8は、同一または異なって、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基;R9〜R12は、同一または異なって、水素原子、あるいは直鎖または分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基;Xは結合手、−CH2−、−C(CH32−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−または−N=N−からなる群から選択される;nは0または1の整数;mは0から5の整数)で表される化合物である。
【0059】
一般式(II)の芳香族ジホスフェートの具体例としては、例えばレゾルシンビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、レゾルシンビス[ビス(2,6−ジエチルフェニル)ホスフェート]、ヒドロキノンビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、ヒドロキノンビス[ビス(2,6−ジエチルフェニル)ホスフェート]、ビスフェノールAビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、ビスフェノールAビス[ビス(2,6−ジエチルフェニル)ホスフェート]、ビスフェノールFビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、ビスフェノールFビス[ビス(2,6−ジエチルフェニル)ホスフェート]、ビスフェノールSビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]、ビスフェノールSビス[ビス(2,6−ジエチルフェニル)ホスフェート]、ビフェノールビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]などが挙げられる。
【0060】
本発明の芳香族ジホスフェートの製造方法のトリエステル化工程においては、必要に応じて触媒や有機溶媒を併用してもよい。
【0061】
トリエステル化工程において有機溶媒としては、反応材料(すなわち、オキシハロゲン化リン、および2,6−アルキル置換フェノール)、ならびにそれらの反応生成物に不活性な任意の有機溶媒が使用可能である。例として、トルエン、キシレン、ジクロロベンゼン等の芳香族系の有機溶媒、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系の有機溶媒が挙げられる。
【0062】
トリエステル化工程において使用可能な触媒としては、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化第二錫等のルイス酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等のブレンステッド酸、等が挙げられる。触媒活性の点からルイス酸が好ましく使用される。触媒の使用量は、通常、トリエステル化工程に用いられるオキシハロゲン化リン100重量部に対して0.01〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。
【0063】
トリエステル化工程において、触媒、溶媒、添加剤および設備などはすべて第二工程に用いる触媒、溶媒、添加剤および設備などをそのまま用いることができる。
【0064】
第二工程の反応容器等をそのまま用いる場合、ジヒドロキシ化合物およびオキシハロゲン化リン以外には材料等を追加しないで、トリエステル化工程を進めることも可能である。しかし、追加の溶媒および追加の触媒をジヒドロキシ化合物およびオキシハロゲン化リンとともに添加することが好ましい。触媒を追加する場合、追加の触媒量は、トリエステル化工程で添加するオキシ塩化リン100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。
【0065】
トリエステル化工程のリン酸エステル化反応は、大気圧下で行ってもよく、または減圧下で行ってもよい。例えば、5〜400mmHgとすることができる。10〜200mmHgの減圧下で行うことが好ましい。またトリエステル化工程は、水のない状態で行われることが好ましい。
【0066】
トリエステル化工程の反応温度は、目的とする芳香族ジホスフェートによって適宜選択することができる。好ましくは、160〜240℃であり、165〜220℃がより好ましく、さらに好ましくは175〜200℃である。
【0067】
トリエステル化工程の反応時間は、使用する原料の種類や使用量、製造スケール等により自由に変更し得る。工業的な製造を考えた場合、1〜10時間の範囲が好ましい。より好ましくは、2〜8時間である。
【0068】
このようにして得られた生成物は、必要に応じて、水、アルカリ水溶液または酸性水溶液などによる洗浄、あるいは濾過、膜分離、減圧蒸留または水蒸気蒸留などの公知の方法により精製され得る。さらに必要に応じて、減圧乾燥やニーダーやフレーカーにより固化され製品化される。
【0069】
このようにして本発明の方法によれば、高品質の芳香族ジホスフェートが得られる。得られた芳香族ホスフェートは、難燃剤として樹脂に添加され得る。樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、または熱硬化性樹脂であってもよい。例えば、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリアミド系樹脂などに適用可能である。また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、イミド系樹脂、フェノール系樹脂などの熱硬化性樹脂に適用可能である。特に高温、例えば、200℃以上で成形される樹脂に難燃剤として添加した場合、その樹脂を成形機にて加工する際の高い処理温度によりガスを発生することなく、耐熱性、耐着色性に優れた高品質な成形品を得ることができる。
【0070】
樹脂への芳香族ジホスフェートの添加方法、および芳香族ジホスフェートが添加された樹脂の添加方法は、公知の任意の方法が採用され得る。例えば、単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキサー、ロール等の汎用の混練装置を用いて各成分を溶融混練して樹脂中に配合することが可能である。また例えば、押出機などの成形機により、板状、シート状またはフィルム状などの所望の形状に成形加工することができ、所望の成形品を得ることができる。
【0071】
【実施例】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳述するが、以下の実施例は単なる例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【0072】
実施例において、ジアリールホスホロクロリデートの含有量はガスクロマトグラフィー(GC−10A;島津製作所社製)により、またオキシ塩化リンの飛散量は廃水中のリン原子を分光光度計(UV−150−02;島津製作所社製)により測定することでそれぞれ決定した。色相測定(Hz)は、キシレンの50%溶液中でハーゼン色数法により測定した。なお、実施例中において「%」は「重量%」を表す。
【0073】
(実施例)
攪拌機、温度計、滴下装置、塩酸回収装置およびコンデンサー(10℃)を有する5000Lの反応装置に、2,6−ジメチルフェノール3101kg(25.38kmol)、オキシ塩化リン663kg(4.32kmol)、塩化マグネシウム19kg、キシレン305kgを充填した。攪拌しながら2時間かけて110℃まで昇温し、さらに2時間かけて130℃まで昇温した。この時、発生する塩酸および飛散したオキシ塩化リンを水中に回収した。その後、4時間かけて155℃まで昇温しながら、オキシ塩化リン1273kg(8.29kmol)を追加した。この時、発生する塩酸および飛散したオキシ塩化リンを水中に回収した。そして160℃に昇温した後、350mmHgで6時間反応させ、窒素雰囲気下、100℃まで冷却した後、常圧に戻し、ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホロクロリデートを含有する反応混合物4412kgを得た。この時、オキシ塩化リンの飛散量は12kgであった。
【0074】
次に、この反応混合物に塩化アルミニウム19kgとレゾルシン676kg(6.14kmol)とを添加し、常圧下で160℃まで4時間かけて昇温し、さらに160℃で1時間反応させた。続いて、1時間かけて300mmHgまで減圧した。その後、160℃で6時間熟成し、反応生成物を得た。
【0075】
この反応生成物を水洗および水蒸気蒸留することにより精製し、下記式(III)で表されるレゾルシンビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](収量4160kg、色相Hz:40)を得た。これは、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートを1.94%含有していた。
【0076】
【化5】
Figure 0004097384
【0077】
(比較例)
2,6−ジメチルフェノール3097kg(25.34kmol)、オキシ塩化リン1950kg(12.70kmol)、塩化マグネシウム19kg、キシレン305kgを一括して充填し、その後、オキシ塩化リンを添加しなかったこと以外は実施例と同様の方法により、ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホロクロリデートを得、次いでレゾルシンビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート]を得た。
【0078】
ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスホロクロリデート生成時のオキシ塩化リンの飛散量は、31kgであった。また、得られたレゾルシンビス[ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート](収量4140kg、色相Hz:40)はトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートを2.94%含有していた。
【0079】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、単量型ホスフェートの含有が少ない高品質なジアリールホスホロハリデートおよび芳香族ジホスフェートを、その製造工程で発生する廃水に負荷をかけることなく製造することができる。よって、自然環境に悪影響を及ぼさず、また浄化のための設備をも必要としないため、工業的なジアリールホスホロハリデートおよび芳香族ジホスフェートの製造方法として、従来の方法に比して有利である。

Claims (8)

  1. オキシハロゲン化リンと2−位および6−位にアルキル基を有するモノフェノール化合物の一種類または二種類以上とを反応させてジアリールホスホロハリデートを製造する方法であって、以下の工程:
    (a)該モノフェノール化合物と、該オキシハロゲン化リンの一部とを反応させる、第一工程、および
    (b)該第一工程で得られた反応生成物と、該オキシハロゲン化リンの残部とを反応させる、第二工程
    を包含し、ここで、オキシハロゲン化リンの全量を第一工程および第二工程に分割して仕込む、製造方法。
  2. 前記第一工程において、前記モノフェノール化合物と前記オキシハロゲン化リンの反応モル比が、1:0.1〜1:0.25である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記第二工程が、前記第一工程よりも高い温度で行われる、請求項1に記載の方法。
  4. 前記第一工程において、前記モノフェノール化合物と前記オキシハロゲン化リンとの反応温度が135℃以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記第二工程において、前記第一工程で得られた前記反応生成物と前記オキシハロゲン化リンとの反応温度が165℃以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記ジアリールホスホロハリデートが、ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスホロハリデートである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 芳香族ジホスフェートの製造方法であって、請求項1〜6のいずれかに記載の方法で製造されたジアリールホスホロハリデートと、ジヒドロキシ化合物を反応させる工程を包含する、方法。
  8. 前記芳香族ジホスフェートが、以下の一般式(II):
    Figure 0004097384
    (R1〜R8は、同一または異なって、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基;R9〜R12は、同一または異なって、水素原子あるいは直鎖または分岐鎖の炭素数1〜4のアルキル基;Xは、結合手、−CH2−、−C(CH32−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−または−N=N−からなる群から選択される;nは0または1の整数;mは0から5の整数)で表される、請求項7に記載の方法。
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