JPWO2014171358A1 - 難燃剤組成物ならびにそれを含有する難燃性樹脂組成物および成形体 - Google Patents

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Abstract

一般式(I):(式中、R1およびR2は炭素数1〜5のアルキル基であり、R3およびR4は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Yは結合手、−CH2−、−C(CH3)2−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−または−N=N−基であり、kは0または1であり、mは0〜4の整数である)で表される有機リン化合物を含有し、かつ前記有機リン化合物をGPCで測定したときに、式(II):で表される化合物の含有量が1.8面積%以下である難燃剤組成物。

Description

本発明は、樹脂用のリン系難燃剤組成物ならびにそれを含有する難燃性樹脂組成物およびそれからなる成形体に関する。
熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂に難燃性を付与するためには、樹脂成形体の調製時に難燃剤を添加する方法が採用されている。難燃剤としては無機化合物、有機リン化合物、有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物などがある。これらの化合物の中で、有機ハロゲン化合物およびハロゲン含有有機リン化合物は優れた難燃効果を発揮する。しかし、これらのハロゲンを含有する化合物は、樹脂成形時に熱分解によりハロゲン化水素を発生して金型を腐食させ、樹脂自身を劣化させ、着色を起こし、作業環境を悪化させるという問題がある。また、火災や焼却などに際して、人体に有害なハロゲン化水素などの有毒ガスが発生するという問題もある。
そこで、ハロゲンを含まない難燃剤が望まれている。
このような難燃剤としては、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの無機系化合物、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェートやメラミンポリホスフェートなどの窒素系化合物がある。しかし、これらの無機系化合物や窒素系化合物は難燃効果が著しく低く、充分な効果を得るためには多量に添加する必要があり、それによって樹脂本来の物性が損なわれるという問題がある。
ハロゲンを含まず、比較的良好な難燃効果が得られる難燃剤として、有機リン化合物が挙げられ、その中でも有機リン酸エステル類が汎用されている。代表的な有機リン酸エステルとしてトリフェニルホスフェート(TPP)がよく知られている。しかし、TPPは耐熱性に劣り、揮発性が高いという性質がある。
したがって、近年、開発が進んでいるエンジアリングプラスチック、さらにはスーパーエンジニアリングプラスチックなどの高機能プラスチックでは、成形加工などに300℃前後の高い温度が必要とされ、TPPはこのような高温には耐えられない。
そこで、低揮発性で熱安定性を有する難燃剤として、本発明の一般式(I)で表される化合物のような芳香族ジホスフェートに着目し、高純度で成形加工性がよく、しかも取扱い、包装や運搬に有利な粉末状のものが研究されてきた(特開平5−1079号公報(特許文献1)および特開平9−87290号公報(特許文献2)参照)。
特許文献1に記載の製造方法では、反応後の精製工程において溶剤を用いて再結晶や晶析により高純度の芳香族ジホスフェートを得ている。しかしこの場合、固液分離、乾燥、溶剤のリサイクル工程が必要となり、また溶剤への溶解ロスによる収率低下も加わるため、とりわけ規模の大きい工業スケールを想定した場合には工程面やコスト面からは必ずしも有利とはいえない。
そこで、特許文献2では、得られた芳香族ジホスフェートを特別な精製処理に付することなく固化させ粉末化する方法が提案された。
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、特別な精製処理に付さないために、副生成物としてヒドロキシフェニル基を有するリン化合物が芳香族ジホスフェート中に存在する。
この副生成物を含む芳香族ジホスフェートを難燃剤としてポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂に添加した場合、熱分解した樹脂の分子の末端と反応を起こす、樹脂成形体の長期間の使用中に徐々に悪影響を与えるなどして樹脂の分子量を低下させ、その結果、樹脂成形体の耐久性、耐水性、耐加水分解性、耐熱性などの物性が低下するという問題がある。
また、この副生成物は、成形加工などの高温条件において、主成分である芳香族ジホスフェートとエステル交換を起こし、さらなる副生成物の増加を引き起こし、主成分の純度が低下するという問題もある。
そこで、上記の問題を解決するために、この副生成物であるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物の含有量を低減した難燃剤組成物およびその製造方法が提案された(国際公開第2010/082426号(特許文献3)および国際公開第2012/005109号(特許文献4)参照)。
この製造方法では、予め第1工程後の反応混合物中のハロゲン濃度などを測定し、これらに基づいて算出した、第2工程で必要となる化学量論量の芳香族ジヒドロキシ化合物と、第1工程で生成したジアリールホスホロハリデートとを第2工程で反応させることにより、副生成物であるヒドロキシフェニル基を有するリン化合物の生成を抑えている。
特開平5−1079号公報 特開平9−87290号公報 国際公開第2010/082426号 国際公開第2012/005109号
しかしながら、特許文献3および4の難燃剤組成物は、高温度で樹脂と混練して添加する際に樹脂組成物から揮発分やガスが発生して、成形体の成形時に金型汚染(モールドデポジット)を引き起こすというおそれがあった。
また、この難燃剤組成物は、樹脂組成物の可塑性を増大させ、その荷重たわみ温度を低下させるなど、樹脂組成物の機械的物性に悪影響を与えるというおそれもあった。
そこで、本発明は、樹脂組成物の混練時や成形体の成形時において揮発分やガスの発生を最小限に抑え、金型汚染などを最小限に抑えることができる難燃剤組成物ならびにそれを含有する難燃性樹脂組成物および成形体を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、高温度での樹脂組成物の混練時や成形体の成形時の金型汚染などの問題が、分子量が小さく揮発性が高い、リン化合物単量体である芳香族モノホスフェートに起因することを見出した。そして、従来の製造方法では、この芳香族モノホスフェートの副生を抑制することは困難であったところ、特定の条件下で原料化合物を反応させることにより、その芳香族モノホスフェートの含有量を低減した難燃剤組成物を、反応生成後、再結晶や晶析などの特別な精製工程を施すことなしに、使用した溶剤や触媒を除去する後処理工程のみで製造できること、ひいては上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして、本発明によれば、一般式(I):
Figure 2014171358
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基であり、R3およびR4はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Yは結合手、−CH2−、−C(CH3)2−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−または−N=N−基であり、kは0または1であり、mは0〜4の整数である)
で表される有機リン化合物を含有し、かつ
前記有機リン化合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したときに、式(II):
Figure 2014171358
(式中、R1、R2およびR3は一般式(I)と同義である)
で表される化合物の含有量が1.8面積%以下である難燃剤組成物が提供される。
また、本発明によれば、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、耐衝撃性スチレン樹脂、ゴム変性スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂から選択される1種以上の樹脂および上記の難燃剤組成物を含有する難燃性樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、上記の難燃性樹脂組成物からなる成形体が提供される。
本発明によれば、樹脂組成物の混練時や成形体の成形時において揮発分やガスの発生を最小限に抑え、金型汚染などを最小限に抑えることができる難燃剤組成物ならびにそれを含有する難燃性樹脂組成物および成形体を提供することができる。
すなわち、本発明の難燃剤組成物は、上記の課題を解決すると共に、優れた難燃性および耐久性を樹脂に付与することができ、しかもその難燃剤組成物を、反応生成後、再結晶や晶析などの特別な精製工程を施すことなしに、使用した溶剤や触媒を除去する後処理工程のみで製造することができる。
また、本発明の難燃剤組成物は、有機リン化合物をGPCで測定したときに、式(III):
Figure 2014171358
(式中、R1、R2、R3、R4、Y、kおよびmは一般式(I)と同義である)
で表される化合物の含有量が1.0面積%以下である場合に、上記の優れた効果をさらに発揮する。
また、本発明の難燃剤組成物は、次のいずれか1つの要件を満足する場合に、上記の優れた効果をさらに発揮する。
・一般式(I)で表される有機リン化合物と式(II)で表される化合物との組み合わせが、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート;テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−p−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート;またはテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートである。
・一般式(I)で表される有機リン化合物と式(III)で表される化合物との組み合わせが、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェート;テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−p−フェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルホスフェート;またはテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4’−ヒドロキシフェニル−4−フェニルホスフェートである。
・一般式(I)で表される有機リン化合物と式(II)で表される化合物と式(III)で表される化合物との組み合わせが、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェートである。
・難燃剤組成物が、示差熱熱重量分析で昇温速度10℃/分で加熱し、250℃で300分間保持したときに10%以下の熱減量を有する。
さらに、本発明の難燃性樹脂組成物は、樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部の割合で前記難燃剤組成物を含有する場合に、上記の優れた効果をさらに発揮する。
実施例1および比較例1の難燃剤組成物の熱分析結果を示す図である。 図1の300〜400℃の領域の拡大図である。 実施例2および比較例2の難燃剤組成物の熱分析結果を示す図である。
1.難燃剤組成物
本発明の難燃剤組成物は、一般式(I):
Figure 2014171358
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基であり、R3およびR4はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Yは結合手、−CH2−、−C(CH3)2−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−または−N=N−基であり、kは0または1であり、mは0〜4の整数である)
で表される有機リン化合物(以下、「芳香族ジホスフェート(I)」ともいう)を含有し、かつ
前記有機リン化合物をGPCで測定したときに、式(II):
Figure 2014171358
(式中、R1、R2およびR3は一般式(I)と同義である)
で表される化合物(以下、「芳香族モノホスフェート(II)」ともいう)の含有量が1.8面積%以下であることを特徴とする。
ここで、GPC測定での芳香族モノホスフェート(II)の含有量が「1.8面積%以下である」とは、その含有量が「0面積%を超えかつ1.8面積%以下である」ことを意味する。その下限は、好ましくは0.01面積%、より好ましくは0.001面積%、さらに好ましくは0.0001面積%であり、その上限は、好ましくは1.7面積%、より好ましくは1.6面積%、さらに好ましくは1.5面積%、一層好ましくは1.4面積%、より一層好ましくは1.3面積%、特に好ましくは1.2面積%、とりわけ好ましくは1.1面積%、ひときわ好ましくは1.0面積%である。
具体的なGPC測定での芳香族モノホスフェート(II)の含有量(面積%)は、例えば、0.0001、0.0005、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7および1.8などである。
GPC測定での芳香族ジホスフェート(I)の含有量は、96面積%以上であるのが好ましく、96.5面積%以上であるのがより好ましく、97面積%以上であるのがさらに好ましい。また、その含有量の上限値は、理論上99.99面積%であるが、好ましくは99面積%、より好ましくは99.5面積%、さらに好ましくは99.9面積%である。
具体的なGPC測定での芳香族ジホスフェート(I)の含有量(面積%)は、例えば、96、96.5、97.0、97.5、98.0、98.5、99.0、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8および99.9などである。
また、本発明の難燃剤組成物は、有機リン化合物をGPCで測定したときに、式(III):
Figure 2014171358
(式中、R1、R2、R3、R4、Y、kおよびmは一般式(I)と同義である)
で表される化合物(以下、「ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(III)」ともいう)の含有量が1.0面積%以下であるのが好ましい。
ここで、GPC測定でのヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(III)の含有量が「1.0面積%以下である」とは、その含有量が「0面積%を超えかつ1.0面積%以下である」ことを意味する。その下限は、好ましくは0.01面積%、より好ましくは0.001面積%、さらに好ましくは0.0001面積%であり、その上限は、好ましくは0.9面積%、より好ましくは0.8面積%、さらに好ましくは0.7面積%である。
具体的なGPC測定でのヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(III)の含有量(面積%)は、例えば、0.0001、0.0005、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9および1.0などである。
一般式(I)におけるR1およびR2の「炭素数1〜5のアルキル基」としては、直鎖または分枝状の炭素数1〜5のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、neo−ペンチルなどが挙げられる。これらの中でも最終的に得られる難燃剤組成物または芳香族ジホスフェート(I)中のリン含有率が高くなるという点でメチル、エチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
一般式(I)におけるR3およびR4は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、「炭素数1〜5のアルキル基」としては、直鎖または分枝状の炭素数1〜5のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、neo−ペンチルなどが挙げられる。これらの中でも最終的に得られる難燃剤組成物または芳香族ジホスフェート(I)中のリン含有率が高くなるという点で、水素原子、メチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
芳香族ジホスフェート(I)と芳香族モノホスフェート(II)の組み合わせは、具体的には、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート;テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−p−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート;またはテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートであるのが好ましく、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート;またはテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートの組み合わせであるのがより好ましく、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートの組み合わせであるのが特に好ましい。
また、芳香族ジホスフェート(I)とヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(III)の組み合わせは、具体的には、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェート;テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−p−フェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルホスフェート;またはテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4’−ヒドロキシフェニル−4−フェニルホスフェートであるのが好ましく、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェート;またはテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4’−ヒドロキシフェニル−4−フェニルホスフェートの組み合わせであるのがより好ましく、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェートの組み合わせであるのが特に好ましい。
さらに、芳香族ジホスフェート(I)と芳香族モノホスフェート(II)とヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(III)の組み合わせは、具体的には、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェート;テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−p−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルホスフェート;またはテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4’−ヒドロキシフェニル−4−フェニルホスフェートであるのが好ましく、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェート;またはテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4’−ヒドロキシフェニル−4−フェニルホスフェートの組み合わせであるのがより好ましく、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェートの組み合わせであるのが特に好ましい。
本発明の難燃剤組成物は、さらに式(IV):
Figure 2014171358
(式中、R、R、R、R、Y、kおよびmは一般式(I)と同義である)で表されるリン化合物も同時に含有する。
しかしながら、式(IV)の化合物(以下、「芳香族トリホスフェート(IV)」ともいう)は分子量が大きいため揮発せず、かつヒドロキシフェニル基を有さないので、前述のような問題を何ら与えないが、芳香族ジホスフェート(I)の純度を低下させるので含有量は少ないことが好ましい。
本発明の難燃剤組成物は、樹脂組成物の混練時や成形体の成形時における揮発分やガスの発生が少なく、金型汚染などを最小限に抑えることができる。
このことは、実施例に示すように、エンジアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックなどの成形加工である300℃前後の温度において熱減量が少ないことを意味する。
したがって、本発明の難燃剤組成物は、例えば、芳香族ジホスフェート(I)の示差熱熱重量分析で昇温速度10℃/分で加熱し、250℃で300分間保持したときの熱減量が10%以下であるのが好ましい。
ここで、熱減量が「10%以下である」とは、熱減量が「0%を超えかつ10%以下である」ことを意味する。その下限は、好ましくは5.0%、より好ましくは3.0%であり、その上限は、好ましくは9.8%、より好ましくは9.5%である。
具体的な難燃剤組成物の上記条件における熱減量(%)は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9および10などである。
本発明の難燃剤組成物は、酸価が1.0KOHmg/g以下であることが好ましい。酸価が前記範囲内であると、樹脂組成物の混練時や成形体の成形時、樹脂組成物が高温高湿環境下に曝された場合、および樹脂成形体の使用時等において、樹脂組成物の耐衝撃性、機械的物性、および難燃性能等の低下を良好に抑えることができる傾向がある。
ここで、酸価が「1.0KOHmg/g以下である」とは、酸価が「0KOHmg/gを超えかつ1.0KOHmg/g以下である」ことを意味する。その下限は好ましくは0.01KOHmg/g、より好ましくは0.001KOHmg/gであり、その上限は好ましくは0.8KOHmg/g、より好ましくは0.5KOHmg/gである。
酸価は、例えば、約10gの試料を精秤し、三角フラスコに取り、10gのキシレンに溶解させた後、得られた溶液をエチルアルコールに完全に溶解させ、B.T.B(ブロモチモールブルー)溶液を指示薬として、N/10水酸化ナトリウム溶液で滴定し、その滴定量から求めることができる。実施例ではこの方法で酸価を測定している。
2.難燃剤組成物の製造
本発明の難燃剤組成物は、好適には、一般式(V):
Figure 2014171358
(式中、R1、R2、R3は一般式(I)と同義である)
で表されるオルト位に立体障害基を有する芳香族モノヒドロキシ化合物(以下、「芳香族モノヒドロキシ化合物(V)」ともいう)とオキシハロゲン化リンとをルイス酸触媒の存在下、100〜160℃の温度範囲で反応させて、次いで減圧下で未反応のオキシハロゲン化リンを除去して、一般式(VI):
Figure 2014171358
(式中、R1、R2、R3は一般式(I)と同義であり、Xはハロゲン原子である)
で表されるジアリールホスホロハリデート(以下、「ジアリールホスホロハリデート(VI)」ともいう)を得る第1工程、および
第1工程で得られた反応生成物と、それに含まれるハロゲン1モルに対して0.5モルの一般式(VII):
Figure 2014171358
(式中、R4、Y、kおよびmは一般式(I)と同義である)
で表される芳香族ジヒドロキシ化合物(VII)とをルイス酸触媒の存在下に反応させて、一般式(I)で表される芳香族ジホスフェート(I)を得る第2工程
を含む製造方法により得ることができる。
この製造方法によれば、特定の組成を有する本発明の難燃剤組成物を、反応生成後、使用した溶剤や触媒を除去する後処理工程のみで得ることができる。すなわち、上記の製造方法では、副生物である芳香族モノホスフェート(II)を除去するための再結晶や晶析などの特別な精製工程を施す必要がない。
第1工程の反応温度は、100〜180℃の範囲であるのが好ましい。
従来の製造方法では、第1工程の反応温度は、50〜200℃、好ましくは100〜200℃とされ、工業的には、180℃程度で実施されている。一般に、反応温度が高温度である程、反応速度が高くなり、同じ容量の反応であっても反応時間が短縮され、その点では工業的には有利である。しかしながら、本発明者らの知見によれば、第1工程の反応温度が180℃を超えると、芳香族モノホスフェート(II)が生成し易くなり、難燃剤組成物中の含有量をGPC測定で1.8面積%以下にできないことがあり、好ましくない。したがって、第1工程の反応温度の上限は好ましくは175℃であり、より好ましくは170℃である。
一方、第1工程の反応温度が100℃未満では、反応速度が低くなり、反応の完結に長時間を要するため、好ましくない。したがって、反応温度の下限は好ましくは100℃であり、より好ましくは110℃であり、さらに好ましくは120℃である。
上記のように、従来の製造方法では、本願発明の難燃剤組成物における規定以上の芳香族モノホスフェート(II)を含む難燃剤組成物が製造されるため、芳香族モノホスフェート(II)を除去して本願発明の難燃剤組成物を得るためには、使用した溶剤や触媒を除去する後処理工程以外に、溶剤への溶解、混合溶液からの析出(晶出)、分離(濾過)、乾燥などの操作を繰り返す精製工程を必要とする。
このような精製工程は、単に工程数が増加するだけでなく、溶剤や加熱・冷却のためのエネルギーが必要になり、また使用した溶剤の処理が必要になり、製品のコスト高につながり、工業的には不利である。
一方、上記の製造方法では、このような精製工程を施さずとも、本発明の難燃剤組成物を得ることができ、工業的に極めて有利である。
以下、反応図式に基づいて、第1工程および第2工程について詳述する。
(1)第1工程
Figure 2014171358
(式中、R1、R2、R3は一般式(I)と同義であり、Xはハロゲン原子であり、LCはルイス酸触媒である)
芳香族モノヒドロキシ化合物(V)の具体例としては、2,6−キシレノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノールなどが挙げられ、入手し易くかつ最終的に得られる難燃剤組成物または芳香族ジホスフェート(I)中のリン含有率が高くなるという点で2,6−キシレノールが特に好ましい。
POX3はオキシハロゲン化リンである。Xのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、これらの中でも塩素および臭素が好ましく、塩素が特に好ましい。
すなわち、オキシハロゲン化リンとしては、オキシ塩化リンおよびオキシ臭化リンが好ましく、コストおよび入手し易さの点でオキシ塩化リンが特に好ましい。
ルイス酸触媒(LC)としては、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、四塩化チタン、五塩化アンチモン、塩化亜鉛、塩化スズなどが挙げられ、これらの中でも、塩化マグネシウムが特に好ましい。またこれらの化合物を2種以上混合して使用してもよい。
触媒の使用量は、オキシハロゲン化リンに対して0.1〜5.0重量%であるのが好ましく、より好ましくは0.3〜3.0重量%、さらに好ましくは0.5〜2.0重量%の範囲である。
第1工程における原料化合物、オキシハロゲン化リンと芳香族モノヒドロキシ化合物(V)とのモル比は、製造スケールなどに合わせて適宜調節すればよい。
第1工程においては、必ずしも反応溶剤を必要としないが、任意に用いることができる。その溶剤としては、反応に対して不活性な溶剤であれば特に限定されないが、例えばキシレン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの有機溶剤が挙げられる。これらは2種以上の混合で使用してもよい。
第1工程の反応時間は、通常4〜18時間である。
第1工程においては、反応を促進させるために、常圧脱ハロゲン化水素の後、反応系内を減圧にして、反応により副生するハロゲン化水素を反応系外に除去する。
そのときには30kPa以下の減圧によりハロゲン化水素およびオキシハロゲン化リンを除去するのが好ましい。
しかしながら、第1工程のすべてを170〜180℃で行うと反応速度が上がり、オキシハロゲン化リンが芳香族モノホスフェート(II)へと生成し易くなるので、常圧脱ハロゲン化水素は120〜140℃で行い、次いで減圧脱ハロゲン化水素の前半を120〜140℃で行い、減圧脱ハロゲン化水素の後半を160〜170℃で行うことが好ましい。
(2)第2工程
Figure 2014171358
(式中、R1、R2、R3、R4、Y、kおよびmは一般式(I)と同義であり、Xは第1工程の反応図式と同義であり、LCはルイス酸触媒である)
芳香族ジヒドロキシ化合物(VII)の具体例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、ピロカテコール、4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−チオジフェノールなどが挙げられ、これらの中でも入手し易く、かつ最終的に得られる難燃剤組成物または芳香族ジホスフェート(I)のリン含有率が高くなるという点でハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ビフェノールが特に好ましい。
第2工程の反応に用いられるルイス酸触媒(LC)としては、第1工程のルイス酸触媒が挙げられ、第1工程の反応後に除去することなしに、第1工程で用いたルイス酸触媒を第2工程の反応にそのまま使用してもよいが、さらに添加してもよい。添加するルイス酸触媒としては、塩化アルミニウムが特に好ましい。また、ルイス酸触媒の代わりに、もしくは併用触媒として、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのアミンを用いてもよい。
第2工程の触媒の使用量は、第1工程で使用されたオキシハロゲン化リンに対して0.1〜8.0重量%であるのが好ましい。より好ましくは塩化アルミニウムを1.0〜3.0重量%添加して、合計1.3〜6.0重量%、さらに好ましくは合計1.5〜5.0重量%の範囲である。
第2工程は、ジアリールホスホロハリデート(VI)と芳香族ジヒドロキシ化合物(VII)の反応により、芳香族ジホスフェート(I)を製造する工程である。
しかしながら、前述のように第1工程においては、純度100%のジアリールホスホロハリデート(VI)を得ることはできず、「第1工程で得られた反応生成物」は、ジアリールホスホロハリデート(VI)以外に芳香族モノホスフェート(II)、アリールホスホロジハリデートなどの副生成物を含む。
そこで、本発明の難燃剤組成物を得るためには、第2工程において、第1工程で得られた反応生成物と、それに含まれるハロゲン1モルに対して0.5モルの芳香族ジヒドロキシ化合物(VII)を使用するのが好ましい。
その使用量は、第1工程で得られた反応生成物の総重量(Ag)、それに含まれるハロゲン原子の濃度(B重量%)およびハロゲンの原子量(C)から、芳香族ジヒドロキシ化合物(VII)の必要モル数Mとして次式により算出することができる。
M=A×(B/100)/C×(1/2)
このように、第2工程における芳香族ジヒドロキシ化合物(VII)の使用量を精密に調節することにより、芳香族モノホスフェート(II)の含有量をGPC測定で1.8面積%以下にすると共に、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(III)の含有量を1.0面積%以下にした難燃剤組成物を得ることができる。
第2工程の反応温度は、通常50〜250℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは150〜180℃である。
また、第2工程の反応時間は、通常4〜10時間である。
反応により副生するハロゲン化水素を反応系外に除去し反応を促進させる目的で、反応系内を減圧にすることが好ましい。減圧は30kPa以下が好ましく、より好ましくは20kPa以下である。
(3)工業スケールにおける第1工程および第2工程の実施
上記の第1工程および第2工程を工業スケールで実施する場合には、第1工程においてジアリールホスホロハリデート(VI)を製造する際に副生するハロゲン化水素と共に、オキシハロゲン化リンが飛散し易くなる傾向が顕著になるため、オキシハロゲン化リンの1モル当たり芳香族モノヒドロキシ化合物(V)が2モル以上の状態になり易く、芳香族モノホスフェート(II)が生成し易い。ゆえに、第1工程の常圧脱ハロゲン化水素および減圧脱ハロゲン化水素の前半においては、反応温度の上限を160℃、より好ましくは150℃、さらに好ましくは140℃とし、かつその下限を110℃、より好ましくは120℃とし、減圧脱ハロゲン化水素の後半においては反応温度の上限を180℃、より好ましくは170℃、かつその下限を150℃、より好ましくは160℃として、単位時間当たりに発生するハロゲン化水素の量および反応速度を制御することにより、芳香族モノホスフェート(II)の生成を抑えることが特に重要である。
また、第1工程では、芳香族モノヒドロキシ化合物(V)の2モルから、ジアリールホスホロハリデート(VI)の1モルが生成されない傾向があり、このような現象は工業スケールが大きくなるほど、また第1工程において単位時間当たりに発生するハロゲン化水素の量が多くなるほど顕著になる。
工業スケールでは、通常、第1工程と第2工程を続けて同じ反応容器で実施するので、第2工程は第1工程の反応の影響をそのまま受けることになる。すなわち、第2工程における芳香族ジヒドロキシ化合物(VII)の量は、理論的には芳香族モノヒドロキシ化合物(V)の当初の量の1/4モル等量になるが、実際にはそれより少なくなっている。ゆえに、第2工程において、芳香族ジヒドロキシ化合物(VII)を第1工程で使用した芳香族モノヒドロキシ化合物(V)の当初の量の1/4モル等量を一律に用いると、化学量論的には過剰であり、反応では完全には消費されずに未反応のまま残る。つまり、反応系中に芳香族ジヒドロキシ化合物(VII)の一部のヒドロキシ基が残ってしまう。その結果ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(III)が難燃剤組成物中に含有される。
ここで、「工業スケール」とは、第2工程で芳香族ジヒドロキシ化合物(VII)とジアリールホスホロハリデート(VI)とを反応させる際に反応容器に投入される、有機溶剤などを含む原材料の合計量が通常の工業生産における規模であることをいう。その規模は、具体的には、好ましくは5リットル以上、より好ましくは30リットル以上、さらに好ましくは100リットル以上、特に好ましくは300リットル以上である。
また、それらの原材料の合計量は、反応装置の制約などから、具体的には、好ましくは20000リットル以下、より好ましくは10000リットル以下である。
(4)後処理工程
第2工程の反応終了後、後処理工程として反応物中の触媒などの不純物を公知の方法により洗浄除去する。例えば、反応物を塩酸などの酸水溶液と接触させ、これらの不純物を水溶液側に抽出する。このとき、難燃剤組成物が固体化することを防止するために、有機溶剤を添加してもよい。
有機溶剤としては、難燃剤組成物の溶解度が高温で高く、低温で低いものが好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよびこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、処理温度は、室温から前記溶剤の沸点以下までであり、有機溶剤の使用量は処理温度において、少なくとも難燃剤組成物の析出が起こらない量であればよい。
(5)粉末化工程
第2工程において得られた油状物を、芳香族ジホスフェート(I)の融点より5〜100℃低い温度で、一般にプラスチック材料の混練に使用されるニーダーを用いて応力付加を行って粉末化することができる。
「混練」とは、プラスチック材料に数種の添加剤を混ぜ合わせる場合、材料と添加剤に同時に剪断力を与え、添加剤を材料内部に均一に分散させることをいう。
また、「応力付加」とは、ニーダーに供給される材料の温度を均一にすると同時に、材料に剪断力、すなわち応力を付与する点で「混練」と同義である。
一般にニーダーは、ミキシングロール、Σ羽根型混練機、インテンシブミキサなどの回分式、および高速二軸連続ミキサ、押出機型混練機などの連続式に分類される。本発明のように固化目的でこれらの混練機を用いる場合、生成した固化物を同時に圧搾することができる連続式ニーダーが好ましい。また連続式はその処理能力が高く、工業的利用面からも有利である。
特に好適なニーダーとして、押出機型混練機の一種であり強力な剪断力を持ち、混練効果が高く、連続的な固化粉末化が可能であるという特徴をもつコニーダー型混練機が挙げられるが、同様の効果がある機種であれば特にこれに限定されるものではない。
また、ニーダーは電気抵抗型バンドヒーター、アルミニウム鋳込みヒーターまたは誘電加熱方式などの加熱機構、およびシリンダに設けたジャケット部やスクリュー内に設けたパイフに水または油を流通させるなどの加熱または冷却機構を備え、ニーダー内部の温度を制御することができる。
ニーダー内部を適当な温度範囲に制御する必要があるが、その最適な温度範囲は、固化させる油状物の熱的物性の他、特に混練時の粘度、流動性、摩擦熱、また使用する装置の特性により変動する。その温度は、一般的には芳香族ジホスフェート(I)の融点より、5〜100℃低い温度、好ましくは10〜70℃低い温度、より好ましくは10〜50℃低い温度である。温度がこの範囲であれば、ニーダー内の化合物に適当な応力が付加され、完全固化および固化時間の短縮が達成できる。この方法は粉末化において溶剤を使用しないので粉末の乾燥工程がなく、また溶剤の精製や再使用を考慮しなくてもよいため、工業生産の場合には有利である。
第2工程において得られた油状物を粉末化する他の方法としては、有機溶剤を使用した再結品法、晶析法、分別蒸留法等の精製処理が挙げられるが、前述のように精製工程に溶剤を使用すると、溶剤の精製や再使用を考慮する必要があり、工業的には有利とは言えないため本発明では採用しない。
3.樹脂組成物
本発明の難燃剤組成物は、高純度かつ高品質であり、各種の熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の難燃剤として使用することができる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、耐衝撃性スチレン樹脂、ゴム変性スチレン樹脂、SAN(スチレン−アクリロニトリル)樹脂、ACS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂およびPBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂などのポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリチオエーテルスルホン樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、液晶ポリマー、複合化プラスチックなどが挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
また、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
上記の樹脂の中でも、本発明の難燃剤組成物がその機能を充分に発揮し得る樹脂として、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、耐衝撃性スチレン樹脂、ゴム変性スチレン樹脂、SAN樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂、ポリチオエーテルスルホン樹脂、ポリペンズイミダゾール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、液晶ポリマー、複合化プラスチック、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの高機能でかつ成形加工温度や耐熱温度が高いエンジニアプラスチックやスーパーエンジニアプラスチックなどが挙げられ、これらの中でも、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、耐衝撃性スチレン樹脂、ゴム変性スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂が特に好ましい。
したがって、本発明の難燃性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、耐衝撃性スチレン樹脂、ゴム変性スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂から選択される1種以上の樹脂と、本発明の難燃剤組成物とを含有するのが好ましい。
本発明の難燃剤組成物は、通常、上記の樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、さらに好ましくは1〜40重量部、特に好ましくは3〜30重量部の割合で用いられる。
具体的な難燃剤組成物の樹脂100重量部に対する配合割合(重量部)は、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95および100などである。
本発明の難燃剤組成物を配合した難燃性樹脂組成物は、必要に応じて、通常樹脂に添加されるその他の成分を樹脂本来の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。このような成分として、例えば、他の難燃剤、ドリップ防止剤、酸化防止剤、充填剤、滑剤、改質剤、香料、抗菌剤、顔料、染料、耐熱剤、耐候剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、強化剤、アンチブロッキング剤、木粉、でんぷんなどが挙げられる。
本発明の難燃剤組成物を樹脂に添加する方法は特に限定されず、例えば、各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキサー、ロールなどの汎用の混練装置を用いて溶融混練するなどの公知の方法が挙げられる。
成形温度が高い樹脂、例えば、1つの実施態様では、160℃以上で混練、成形加工される樹脂、より好ましい実施態様では180℃以上で混練、成形される樹脂、特に好ましい実施態様では、200℃以上で混練、成形される樹脂において、本発明の難燃剤組成物が有利に使用され得る。
4.成形体
本発明の成形体は、本発明の難燃性樹脂組成物からなる。
本発明の難燃剤組成物は、難燃剤として樹脂に添加して成形機で加工する際に、その高い処理温度においても多量のガスを発生することなく、また金型を汚染することもなく、難燃性、耐熱性、耐着色性に優れた高品質な成形体を提供することができる。
本発明の難燃剤組成物は、公知の方法により、樹脂に添加され、成形されて、所望の成形体を提供することができる。
本発明を以下の製造例および比較製造例ならびに実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、これらの製造例および実施例により本発明の範囲が限定されるものではない。
以下の製造例および比較製造例では、得られた生成物中の各成分の割合を、GPCにより測定した各成分の面積の面積%で表す。GPCの装置および測定条件を以下に示す。
分析装置:東ソー株式会社製、型式:HLC−8220
カラム:東ソー株式会社製、型式:TSKgel G1000HXL(7.8mm×30cm)×2本
TSKguard column HXL-L×1本
カラム槽温度:40℃
溶剤:テトラヒドロフラン(工業用)
溶剤流量:0.8ml/分
検出器:RI(本体内蔵、偏光型示差屈折計)
INTEレンジ:256RIU/1V
試料溶液注入量:10μl(ループ管)
試料溶液::試料約0.04gをテトラヒドロフラン10mlに溶解した溶液
データ処理装置:東ソー株式会社製、型式:SC−8010
データ処理条件:START TIME 10.0分
STOP TIME 25.0分
WIDTH 10
SENSITIVITY 0.8
DRIFT 0.1
MINIMUM AREA 0.0
MINIMUM HEIGHT 0.0
(製造例1)
1.第1工程
撹拌機、温度計、滴下装置(ロート)および塩酸回収装置(水スクラバーを連結したコンデンサー)を備えた1リットルの4つロフラスコに、芳香族モノヒドロキシ化合物(V)として2,6−キシレノール244g、溶剤としてキシレン14gおよび触媒として塩化マグネシウム1.3g(オキシ塩化リンに対して0.9重量%)を充填した。得られた混合溶液を撹拌しながら加熱し、混合溶液の温度が120℃に達した時点で、オキシ塩化リン153gを約2時間かけて滴下により添加した。添加終了後、混合溶液の温度を130℃まで4時間かけて徐々に加熱昇温し、反応させて、発生する塩化水素(塩酸ガス)68gを水スクラバーから回収した。その後、同温度(130℃)でフラスコ内の圧力を徐々に20kPaまで減圧して5時間、およびその後165℃まで昇温して同減圧で6時間かけて未反応のオキシ塩化リンおよびキシレンを除去し、ジアリールホスホロハリデート(VI)としてジ(2,6−キシリル)ホスホロクロリデートを含む反応混合物322gを得た。また、反応混合物の塩素含有率は10.8重量%であった。
2.第2工程
次に、第1工程で得られた反応混合物に、芳香族ジヒドロキシ化合物(VII)としてレゾルシノール53.8g(ジ(2,6−キシリル)ホスホロクロリデートに対して化学量論的に等量である量)、追加触媒として塩化アルミニウム3.2g(第1工程のオキシ塩化リンに対して2.1重量%、触媒合計で3.0重量%)を加えた。得られた混合溶液を撹拌しながら加熱し、混合溶液の温度を170℃まで2時間かけて徐々に加熱昇温し、脱塩酸反応を行なった。同温度(170℃)で6時間反応させ、フラスコ内の圧力を徐々に15kPaまで減圧し、その減圧下でさらに2時間反応させ、芳香族ジホスフェート(I)の粗製物を得た。
3.後処理工程
得られた粗製物を85℃に加熱し、キシレン90g、35%塩酸水10gおよび水100gを加え、同温度(85℃)で1時間撹拌し、静置後に水相を分離した。
得られた粗製物と溶剤(キシレン)との混合物(粗製物濃度は約80重量%)に、28%水酸化ナトリウム水溶液5gおよび水110gを加えた。得られた混合溶液を85℃で1時間撹拌し、静置後に水相を分離した。
次いで、得られた混合溶液の油相を、液温85℃において水130gで洗浄し、油相430g(芳香族ジホスフェート(I)の濃度は約80重量%)を得た。得られた油相から、減圧下でキシレンを除去し、その後140℃、圧力6kPaで減圧水蒸気蒸留を行い、芳香族ジホスフェート(I)を含む油状物330gを得た。
4.粉末化工程
回転数表示機能付き撹拌機(新東科学株式会社製、型式:HEIDON TYPE3000H型)および温度計を備えた1リットルの4つ口フラスコに、芳香族ジホスフェート(I)を含む油状物320gを充填し、低回転(回転数100rpm程度)で撹拌しながら温度60℃まで放冷し、湯浴を用いて同温度(60℃)に保持した。
次いで、結晶核として結晶状の芳香族ジホスフェート(I)を固化対象物(油状物)に対して0.1重量%を添加し、回転数200rpmで撹拌したところ、所要時間8分で油状物が完全に固化した。
得られた難燃剤組成物の固化物320gは白色粉末で、融点97〜98℃、酸価0.20KOHmg/gであった。
また、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により、その組成を測定したところ、芳香族ジホスフェート(I)として化合物(1)が97.9面積%、芳香族モノホスフェート(II)として化合物(2)が0.9面積%、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(III)として化合物(3)が0.4面積%および芳香族トリホスフェート(IV)として化合物(4)が0.8面積%であった(下記構造式参照)。
Figure 2014171358
(比較製造例1)
第1工程において、混合溶液の温度が120℃に達した時点以降の反応温度を165℃に設定したこと以外は、製造例1と同様にして、難燃剤組成物315gの白色粉末を得た。融点は94〜95℃、酸価0.25KOHmg/gであった。
GPCにより測定した組成は、芳香族ジホスフェート(I)として化合物(1)が96.2面積%、芳香族モノホスフェート(II)として化合物(2)が2.3面積%、ヒドロキシフェニル基を有するリン化合物(III)として化合物(3)が0.7面積%および芳香族トリホスフェート(IV)として化合物(4)が0.8面積%であった。
(実施例1および比較例1)
製造例1および比較製造例1で得られた難燃剤組成物の白色粉末の熱減量(%)を、それぞれ下記の示差熱熱重量同時測定装置を用いて、下記の測定条件で測定した。
分析装置:セイコーインスツル株式会社(現 株式会社日立ハイテクサイエンス)製、
型式:EXSTAR6000シリーズ TG/DTA6200
試料量:10mg
試料パン:アルミニウム
雰囲気:窒素ガス150ml/分
温度:30〜530℃、昇温速度10℃/分
得られた結果を図1、図2および表1に示す。
図1および図2は、各難燃剤組成物の熱分析結果を示す図であり、横軸が温度(℃)、右縦軸が熱減量(%)である。図2は、図1の300〜400℃の領域の拡大図である。
また、表1には、300〜400℃の領域における10℃毎の熱減量(%)およびそれらの比較を示す。
Figure 2014171358
(実施例2および比較例2)
製造例1および比較製造例1で得られた難燃剤組成物の白色粉末を、それぞれ実施例1および比較例1と同様にして、示差熱熱重量同時測定装置を用いて加熱し、温度が250℃に達した時点で5時間(300分間)保持し、熱減量(%)を測定した。
得られた結果を図3および表2に示す。
図3は、各難燃剤組成物の熱分析結果を示す図であり、横軸が温度(℃)、右縦軸が熱減量(%)である。
また、表2には、保持時間における1時間(60分)毎の熱減量(%)およびそれらの比較を示す。
Figure 2014171358
図1、図2および表1から、実施例1(製造例1の難燃剤組成物)は、比較例1(比較製造例1の難燃剤組成物)よりも温度上昇による熱減量が少ないことがわかる。
特に、エンジニアプラスチックやスーパーエンジニアプラスチックの混練や成形加工に近い温度である300〜340℃に注目すると、比較例1では実施例1よりも熱減量が1.5倍も多い。これは揮発分や発生するガスが多いことを意味する。すなわち、実施例の難燃剤組成物は、比較例1の難燃剤組成物よりも揮発分や発生するガスが少なく、金型汚染を引き起こし難いことがわかる。
また、図3および表2から、温度保持の開始から60分までの初期において比較例2(比較製造例1の難燃剤組成物)の熱減量が特に大きく、その後、時間の経過と共に揮発分が減少するためか、実施例2(製造例1の難燃剤組成物)と比較例2の差が小さくなる傾向にあることがわかる。
このことから、実施例2の難燃剤組成物は、樹脂組成物の混練や成形加工時のような高温において揮発分および発生するガスの減少効果の高いことがわかる。
(実施例3および4ならびに比較例3および4)
樹脂として、変性PPE樹脂(PPE+PS、SABICイノベーティブプラスチックス社製、商品名:NORYL Resin731)およびPC/ABSアロイ樹脂(ダイセルポリマー株式会社製、商品名:ノバロイS 一般グレードS−1500)ならびに添加剤にドリップ防止剤としてフッ素樹脂(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、商品名:テフロン(登録商標)PEFEファインパウダー6−J)を用いた。
表3に示す配合で各樹脂組成物の原料をミキサーで混合し、250〜300℃に保持した押出機を通してコンパウンディングペレットを得た。得られたペレットを射出成形機に投入し、250〜300℃で成形して試験片を得た。
得られた試験片について、下記の条件で難燃性(垂直燃焼性)を評価した。
試験方法:UL−94に準拠(5検体の平均消炎時間)
試験片:厚さ1.6mm
評価:規定によるランク V−0、V−1およびV−2
得られた結果を樹脂組成物の配合と共に表3に示す。
Figure 2014171358
表3の結果から、本発明の難燃剤組成物(製造例1の難燃剤組成物)を含有する実施例3および4の難燃性樹脂組成物の成形体は、それを含有しない比較例3および4の樹脂組成物の成形体と比較して優れた難燃性を有することがわかる。
第2工程において得られた油状物を粉末化する他の方法としては、有機溶剤を使用した再結法、晶析法、分別蒸留法等の精製処理が挙げられるが、前述のように精製工程に溶剤を使用すると、溶剤の精製や再使用を考慮する必要があり、工業的には有利とは言えないため本発明では採用しない。

Claims (9)

  1. 一般式(I):
    Figure 2014171358
    (式中、R1およびR2はそれぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基であり、R3およびR4はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Yは結合手、−CH2−、−C(CH3)2−、−S−、−SO2−、−O−、−CO−または−N=N−基であり、kは0または1であり、mは0〜4の整数である)
    で表される有機リン化合物を含有し、かつ
    前記有機リン化合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したときに、式(II):
    Figure 2014171358
    (式中、R1、R2およびR3は一般式(I)と同義である)
    で表される化合物の含有量が1.8面積%以下である難燃剤組成物。
  2. 前記一般式(I)で表される有機リン化合物と前記式(II)で表される化合物との組み合わせが、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート;テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−p−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェート;またはテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートである請求項1に記載の難燃剤組成物。
  3. 前記一般式(I)で表される有機リン化合物をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したときに、式(III):
    Figure 2014171358
    (式中、R1、R2、R3、R4、Y、kおよびmは一般式(I)と同義である)
    で表される化合物の含有量が1.0面積%以下である請求項1または2に記載の難燃剤組成物。
  4. 前記一般式(I)で表される有機リン化合物と前記式(III)で表される化合物との組み合わせが、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェート;テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−p−フェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルホスフェート;またはテトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンビスホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−4’−ヒドロキシフェニル−4−フェニルホスフェートである請求項3に記載の難燃剤組成物。
  5. 前記一般式(I)で表される有機リン化合物と前記式(II)で表される化合物と前記式(III)で表される化合物との組み合わせが、テトラキス(2,6−ジメチルフェニル)−m−フェニレンビスホスフェートとトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフェートとビス(2,6−ジメチルフェニル)−3−ヒドロキシフェニルホスフェートである請求項3に記載の難燃剤組成物。
  6. 前記難燃剤組成物が、示差熱熱重量分析で昇温速度10℃/分で加熱し、250℃で300分間保持したときに10%以下の熱減量を有する請求項1〜5のいずれか1つに記載の難燃剤組成物。
  7. ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、耐衝撃性スチレン樹脂、ゴム変性スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂およびエポキシ樹脂から選択される1種以上の樹脂および請求項1〜6のいずれか1つに記載の難燃剤組成物を含有する難燃性樹脂組成物。
  8. 前記難燃性樹脂組成物が、前記樹脂100重量部に対して、0.1〜100重量部の割合で前記難燃剤組成物を含有する請求項7に記載の難燃性樹脂組成物。
  9. 請求項7または8に記載の難燃性樹脂組成物からなる成形体。
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