JP4534988B2 - 変位素子 - Google Patents

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Description

この発明は、変位素子に関するもので、特に、互いに異なる材料からそれぞれなる複数の機能材料層を厚み方向に積層した構造を有する、両持ち状態の梁を備える、変位素子に関するものである。
この発明にとって興味ある変位素子として、たとえば特開平9−63890号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この特許文献1には、可変容量素子を構成する変位素子が記載されている。特許文献1に記載される変位素子には、片持ち状態の梁を備える構造を有するものの他、たとえば、図15に示すような両持ち状態の梁1を備える構造を有するものがある。
図15を参照して、梁1は、SiO2 からなる絶縁体層2と絶縁体層2の一方主面および他方主面上にそれぞれ形成された導電体層3および4とを厚み方向に積層した構造を有している。梁1は、その長手方向の第1および第2の端部5および6が、それぞれ、第1および第2の支持部7および8によって支持された、両持ち状態とされている。
梁1は、可変容量素子における可変側の電極を与えるものである。可変容量素子の固定側の電極は、図示しないが、支持部7および8を介して、梁1に対向する位置に設けられる。したがって、可変容量素子における静電容量値の正確かつ高精度な制御のため、あるいは容量値の温度特性の向上のためには、初期状態において、梁1の形状(撓み状態)が再現性良く安定していること、より特定的には、梁1が直線性に優れていることが重要である。
これに関して、梁1は、絶縁体層2に関して表裏対称な積層構造を有しているので、絶縁体層2の表裏面に発生する応力は相互に相殺され、したがって、初期状態において、梁1の反りが生じにくい構造となっている。
しかしながら、梁1における反りを、上述した表裏対称構造によって完全に防止するためには、導電体層3および4について、少なくとも膜厚、内部応力、弾性定数および熱膨張係数を完全に一致させる必要があり、また、絶縁体層2ならびに導電体層3および4の各層において、層の厚み方向に完全に均質にする必要があるが、実際には、これらの条件を満たすことは非常に困難である。
そのため、初期状態すなわち作製直後の梁1において、図16または図17に示すような反りが生じることが避けられないのが現状である。図16では、梁1は、矢印9で示すように、上方へ湾曲した形状に反っており、梁1の中央部の初期状態での絶対位置は上方へ変位している。他方、図17では、梁1は、矢印10で示すように、下方へ湾曲した形状に反っており、梁1の中央部の初期状態での絶対位置は下方へ変位している。また、温度変化によっても、上述したような反りが梁1に生じることがある。
また、梁1に与えられる表裏対称構造は、以下のように、梁1の設計の自由度を低下させるという問題もある。
たとえば、図15に示した梁1では、絶縁体層2の表裏にそれぞれ導電体層3および4を形成することによって、合計3層の表裏対称構造を実現しているが、これに1つの機能材料層を追加したい場合には、表裏それぞれに、この機能材料層を追加することによって、合計5層の表裏対称構造としなければならない。
しかしながら、上述のように追加される機能材料層のうち、表裏いずれかの側にあるものについては、単に表裏対称構造を実現するためだけに形成されるものである。したがって、この機能材料層の形成のための作製工程数が増え、コストの上昇を招くという問題に遭遇する。
また、絶縁体層2の表裏各々側において、前述したように、膜厚、内部応力、弾性定数および熱膨張係数を完全に一致させることは、合計3層の表裏対称構造の場合に比べて、合計5層の表裏対称構造の場合の方が格段に困難になる。
また、たとえば、図15に示した構造について言えば、表裏対称構造を実現するためには、導電体層3の平面パターンと導電体層4の平面パターンとについても、対称形状としなければならない。しかしながら、梁1に求められる機能によっては、導電体層3と導電体層4とを対称形状にできない場合があり、そのため、梁1に反りが発生するという問題を単純には解決できないこともある。
特開平9−63890号公報
そこで、この発明の目的は、上述したような問題を解決し得る変位素子を提供しようとすることである。
この発明は、互いに異なる材料からそれぞれなる複数の機能材料層を厚み方向に積層した構造を有する梁と、梁を両持ち状態とするように、梁の長手方向の第1および第2の端部をそれぞれ支持する第1および第2の支持部と、梁に厚み方向への変位を生じさせるため、梁における、第1の支持部による第1の支点と第2の支持部による第2の支点との間の有効撓み部分を厚み方向に撓ませるように電気的に駆動するための駆動手段とを備え、有効撓み部分の厚み方向への撓みによって生じる、第1および第2の支持部に対する梁の厚み方向への変位を利用する、変位素子に向けられるものであって、上述した技術的課題を解決するため、次のような構成を備えることを特徴としている。
すなわち、有効撓み部分の長手方向の中央部には、当該中央部の厚みを他の部分より厚くするための厚み付与部材が配置される。また、有効撓み部分は、第1の支点と第2の支点との垂直二等分面に関して対称構造を有するとともに、有効撓み部分における、第1の支点と厚み付与部材の第1の支点側の端に位置する第1の内端との間の第1の片側撓み部分は、第1の支点と第1の内端との垂直二等分面に関して対称構造を有し、かつ、有効撓み部分における、第2の支点と厚み付与部材の第2の支点側の端に位置する第2の内端との間の第2の片側撓み部分は、第2の支点と第2の内端との垂直二等分面に関して対称構造を有している。
この発明において、有効撓み部分は、その幅方向の各端部である第1の自由端と第2の自由端との垂直二等分面に関して対称構造を有していることが好ましい。
また、厚み付与部材は、有効撓み部分の幅方向の各端部である第1の自由端と第2の自由端との間の全域にわたって延びるように配置されていることが好ましい。
この発明に係る変位素子は、特に駆動手段に関して、いくつかの実施態様がある。
第1の実施態様では、変位素子は圧電駆動型変位素子を構成するもので、複数の機能材料層のうちの少なくとも1層は、圧電体からなる圧電体層であり、駆動手段は、圧電体層を圧電効果に基づいて歪ませる手段を備えている。
第2の実施態様では、変位素子は、電磁駆動型変位素子を構成するもので、複数の機能材料層のうちの少なくとも1層は、導電体からなる導電体層であり、駆動手段は、導電体層に電流を流すことによって磁力線を発生させる手段と、導電体層に電磁力を発生させて有効撓み部分を撓ませるように導電体層に外部より磁場を与える手段とを備えている。
第3の実施態様では、変位素子は、静電駆動型変位素子を構成するもので、複数の機能材料層のうちの少なくとも1層は、導電体からなる導電体層であり、駆動手段は、導電体層に対して空気層を隔てた位置に固定的に設けられた固定導電体と、導電体層と固定導電体との間に電圧を印加する手段とを備え、導電体層と固定導電体との間に電圧を印加することにより、導電体層と固定導電体との間に静電引力を発生させ、それによって、有効撓み部分を撓ませるように構成される。
この発明に係る変位素子は、たとえば可変容量素子を構成するために有利に用いられる。この場合、厚み付与部材を含む有効撓み部分上に設けられた第1の電極と、第1の電極に対して静電容量を形成するように空気層を隔てた位置に固定的に設けられた第2の電極とをさらに備え、有効撓み部分の撓みによって静電容量が変更されるように構成される。
この発明に係る変位素子によれば、梁に備える複数の機能材料層について、表裏対称構造となるように、膜厚、内部応力、弾性定数および熱膨張係数等を制御しなくても、梁の、有効撓み部分における、第1の支点と厚み付与部材の第1の支点側の端に位置する第1の内端との間の第1の片側撓み部分の長手方向での反りと、第2の支点と厚み付与部材の第2の支点側の端に位置する第2の内端との間の第2の片側撓み部分の長手方向での反りとを、中央部に関して対称に生じさせるようにすることができる。したがって、有効撓み部分の中央部の初期状態での絶対位置を安定して一定に制御することができる。
その結果、駆動手段によってもたらされる有効撓み部分の変位量を安定させることができるので、絶対位置制御性に優れた変位素子を得ることができ、この変位素子がたとえば可変容量素子に適用された場合には、正確かつ高精度な容量制御を行なうことができる。
また、この発明に係る変位素子では、表裏対称構造が要求されないので、設計の自由度を高めることができる。
この発明において、有効撓み部分が、その幅方向の各端部である第1の自由端と第2の自由端との垂直二等分面に関しても対称構造を有していると、有効撓み部分の幅方向での反りによる絶対位置の変動を防止することができるので、より高精度な絶対位置制御性を得ることができる。
この発明において、厚み付与部材が、有効撓み部分の幅方向の各端部である第1の自由端と第2の自由端との間の全域にわたって延びるように配置されていると、この厚み付与部材が与えるリブ効果によって、有効撓み部分の幅方向での反りを生じさせにくくすることができる。
図1は、この発明に係る変位素子の、駆動手段を除く構成についての第1の実施形態を説明するためのもので、(a)は、変位素子11の平面図であり、(b)は、(a)の切断面B−Bに沿う切断部端面図である。 図2は、図1に示す変位素子11に備える梁12の初期状態において生じる反りの傾向を示す、図1(b)に対応する図である。 図3は、図2に相当する図であって、他の態様の反りの傾向を示す図である。 図4は、この発明に係る変位素子の、駆動手段を除く構成についての第2の実施形態を示す、図1(b)に対応する図である。 図5は、この発明に係る変位素子の、駆動手段を除く構成についての第3の実施形態を示す、図1(a)に対応する図である。 図6は、この発明に係る変位素子の、駆動手段を除く構成についての第4の実施形態を示す、図1(a)に対応する図である。 図7は、この発明に係る変位素子の、駆動手段についての第1の実施形態を説明するためのもので、(a)は、変位素子51の平面図であり、(b)は、 (a)の切断面B−Bに沿う切断部端面図である。 図8は、図7に示す変位素子51の動作を説明するための図7(b)に対応する図である。 図9は、図7に示す変位素子51の他の動作を説明するための図7(b)に対応する図である。 図10は、この発明に係る変位素子の、駆動手段についての第2の実施形態を説明するためのもので、(a)は、変位素子81の平面図であり、(b)は、(a)の切断面B−Bに沿う切断部端面図である。 図11は、この発明に係る変位素子の、駆動手段についての第3の実施形態を説明するためのもので、(a)は、変位素子111の平面図であり、(b)は、(a)の切断面B−Bに沿う切断部端面図である。 図12は、この発明に係る変位素子の好ましい適用例としての容量可変素子を説明するためのもので、変位素子141の平面図である。 図13は、図12の切断面X−Xに沿う切断部端面図である。 図14は、図12の切断面Y−Yに沿う切断部端面図である。 図15は、この発明にとって興味ある両持ち状態の梁1を備える従来の変位素子を図解的に示す断面図である。 図16は、図15に示した梁1の初期状態において生じ得る反りを示す、図15に対応する図である。 図17は、図15に示した梁1の初期状態において生じ得る他の態様の反りを示す、図15に対応する図である。
符号の説明
11,11a,11b,11c,51,81,111,141 変位素子
12,52,82,112,144,145 梁
13〜16,41〜45 機能材料層
17,18,57,58,87,88,116,117,150,151 端部
19,20,59,60,89,90,118,119,152,153 支持部
23,24,63,64,93,94,122,123,155,156 支点
25,65,95,124,157,160 有効撓み部分
26,66,96,125,158,161 中央部
27,67,97,126,159 厚み付与部材
28,31,34,37,68,71,74,77,98,101,104,107,127,130,133,136,162,165,168,171 垂直二等分面
29,32,69,72,99,102,128,131,163,166 内端
30,33,70,73,100,103,129,132,164,167 片側撓み部分
35,36,75,76,105,106,134,135,169,170 自由端
53,146 バッファ層
54,147 下部電極層
55,148 圧電体層
56,149 上部電極層
83,113 絶縁体層
84,114 導電体層
138,177 空気層
174,175,178 電極
図1ないし図3は、この発明に係る変位素子の、駆動手段を除く構成についての第1の実施形態を説明するためのものである。ここで、図1(a)は、変位素子11の平面図であり、図1(b)は、図1(a)の切断面B−Bに沿う切断部端面図である。図2および図3は、図1に示す変位素子11に備える梁12において初期状態で生じる反りの傾向を示す、図1(b)に対応する図である。
図1を参照して、変位素子11は梁12を備え、梁12は、互いに異なる材料からそれぞれなる複数の機能材料層13、14、15および16を厚み方向に積層した構造を有している。ここで、梁12は、特に表裏対称構造にされる必要はないことに注目すべきである。
また、変位素子11は、梁12を両持ち状態とするように、梁12の長手方向の第1および第2の端部17および18をそれぞれ支持する第1および第2の支持部19および20を備えている。この実施形態では、図1(a)によく示されているように、第1および第2の支持部19および20の各々は、貫通孔21が設けられた基板22の一部によって与えられている。
また、具体的には図示しないが、変位素子11は、梁12に厚み方向への変位を生じさせるため、梁12における、第1の支持部19による第1の支点23と第2の支持部20による第2の支点24との間の有効撓み部分25を厚み方向に撓ませるように電気的に駆動するための駆動手段とを備えている。この変位素子11は、有効撓み部分25の厚み方向への撓みによって生じる、第1および第2の支持部19および20に対する梁12の厚み方向への変位を利用するものである。
さらに、変位素子11は、次のような特徴的構成を備えている。
有効撓み部分25の長手方向の中央部26には、当該中央部26の厚みを他の部分より厚くするための厚み付与部材27が配置される。
また、有効撓み部分25は、第1の支点23と第2の支点24との垂直二等分面28に関して対称構造を有している。
また、有効撓み部分25における、第1の支点23と厚み付与部材27の第1の支点23側の端に位置する第1の内端29との間の第1の片側撓み部分30は、第1の支点23と第1の内端29との垂直二等分面31に関して対称構造を有している。
他方、有効撓み部分25における、第2の支点24と厚み付与部材27の第2の支点24側の端に位置する第2の内端32との間の第2の片側撓み部分33についても、第2の支点24と第2の内端32との垂直二等分面34に関して対称構造を有している。
また、図1(a)によく示されているように、有効撓み部分25は、その幅方向の各端部である第1の自由端35と第2の自由端36との垂直二等分面37(切断面B−Bに相当)に関しても対称構造を有している。
また、厚み付与部材27は、有効撓み部分25の幅方向の各端部である第1の自由端35と第2の自由端36との間の全域にわたって延びるように配置されている。
以上のような構成を有する変位素子11において、梁12の初期状態での反りまたは温度変化により発生する反りは、図2または図3に示すような傾向を持っている。
梁12を構成する機能材料層13〜16の作製条件等に起因して機能材料層13〜16間で異なる内部応力が発生したり、温度変化のために機能材料層13〜16を構成する材料の熱膨張係数の差に起因して機能材料層13〜16間に熱応力が発生したりすると、図2または図3に示すように、梁12における、第1および第2の片側撓み部分30および33(図1参照)にそれぞれ反りが発生する。なお、実際には、図2または図3に示すような梁12の長手方向での反りだけでなく、梁12の幅方向(図2および図3の紙面に垂直な方向)にも反りが発生する。
上述したように生じる反りの度合いは、梁12を構成している機能材料層13〜16の厚み、内部応力の大きさ、弾性定数、および熱膨張係数等によって決まる。他方、この実施形態の場合、有効撓み部分25の中央部26に配置されている厚み付与部材27が十分に厚いので、長手方向および幅方向のいずれについても、反りは第1の片側撓み部分30と第2の片側撓み部分33とで実質的に互いに独立して生じることになる。
上述のように、第1の片側撓み部分30と第2の片側撓み部分33との各々で反りが生じたとき、第1および第2の片側撓み部分30および33は、それぞれ、垂直二等分面31および34に関して対称構造を有しているので、長手方向での反りの方向および度合いについては、垂直二等分面31および34の各々の両側において対称となる。
また、有効撓み部分25は、第1の支点23と第2の支点24との垂直二等分面28に関しても対称構造を有しているので、長手方向での反りの方向および度合いについては、この垂直二等分面28の両側においても対称となる。
そして、上述のように、第1および第2の片側撓み部分30および33の各々での長手方向での反りの方向および度合いが、垂直二等分面31および34の各々の両側において対称となるとともに、垂直二等分面28の両側においても対称となるので、中央部26の初期状態での絶対位置は、常に一定とすることができる。
言い換えると、梁12を構成している機能材料層13〜16の厚み、内部応力の大きさ、弾性定数、および熱膨張係数等を制御しなくても、図2および図3において示した破線38の位置との比較からわかるように、第1および第2の内端29および32の高さ位置を、第1および第2の支点23および24の高さ位置と常に同じになるように制御することができる。
上記のことに関して、この実施形態のように、有効撓み部分25が、その幅方向の各端部である第1の自由端35と第2の自由端36との垂直二等分面37に関しても対称構造を有していると、上述の長手方向での反りについての対称性をより良好なものとすることができる。
なお、厚み付与部材27の寸法に関して、その厚み方向寸法はより厚い方が、その長手方向寸法(梁12の長手方向での寸法)はより短い方が、また、その幅方向寸法(梁12の幅方向での寸法)は梁12の幅方向寸法以上であるほど、前述した位置制御性をより向上させることができる。
図4は、この発明に係る変位素子の、駆動手段を除く構成についての第2の実施形態を示す、図1(b)に対応する図である。図4において、図1(b)に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図4に示した変位素子11aでは、梁12が有する積層構造を与える複数の機能材料層として、図1(b)に示した4つの機能材料層13〜16より多い5つの機能材料層41〜45を備えていることを特徴としている。この実施形態からわかるように、梁において積層構造を与える機能材料層の数は特に限定されるものではない。
図5は、この発明に係る変位素子の、駆動手段を除く構成についての第3の実施形態を示す、図1(a)に対応する図である。図5において、図1(a)に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図5に示した変位素子11bは、たとえば図1(a)に示した変位素子11と比較して、梁12、機能材料層13〜16(機能材料層15および16については、機能材料層14の下方に隠れるので図示しない。)、貫通孔21および厚み付与部材27の各々の平面形状を任意に変更できることを明らかにすることに意義がある。
図6は、この発明に係る変位素子の、駆動手段を除く構成についての第4の実施形態を示す、図1(a)に対応する図である。図6において、図1(a)に示した要素に相当する要素には同様の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図6に示した変位素子11cは、十字状の梁12を備えることを特徴としている。このように、梁12が十字状とされることにより、梁12の第1および第2の端部17および18、これらを支持する第1および第2の支持部19および20、第1および第2の片側撓み部分30および33、ならびに垂直二等分面28、31および34の各々については、2箇所ずつ設けられることになる。
図7ないし図9は、この発明に係る変位素子の、駆動手段についての第1の実施形態を説明するためのものである。ここで、図7(a)は、変位素子51の平面図であり、図7(b)は、図7(a)の切断面B−Bに沿う切断部端面図である。図8および図9は、図7に示す変位素子51の動作を説明するための図7(b)に対応する図である。
変位素子51は、圧電駆動型変位素子を構成するもので、図1に示した変位素子11と共通する基本的構成を備えている。
変位素子51は梁52を備え、梁52は、たとえばAl2 3 からなるバッファ層53、たとえばPtからなる下部電極層54、たとえばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる圧電体層55およびたとえばAlからなる上部電極層56を厚み方向に積層した構造を有している。上部電極層56は、第1、第2および第3の上部電極層56a、56bおよび56cに分割されて形成されている。
なお、上述したバッファ層53、電極層54および56ならびに圧電体層55は、上で例示した材料以外の材料から構成されてもよい。たとえば、バッファ層53の材料として、TiO2
またはZrO2 を用いてもよく、電極層54および/または56の材料として、AuまたはAgを用いてもよく、圧電体層55の材料として、ZnO、LiTaO3
またはLiNbO3 を用いてもよい。
また、後述する圧電効果に基づく変位量を大きくするためには、バッファ層53と下部電極層54との合計厚みは、圧電体層55の厚みと同程度にすることが望ましく、また、上部電極層56については、弾性に富む材料を用いて薄く形成することが望ましい。
変位素子51は、また、上述のような梁52を両持ち状態とするように、梁52の長手方向の第1および第2の端部57および58をそれぞれ支持する第1および第2の支持部59および60を備えている。この実施形態では、図7(a)によく示されているように、第1および第2の支持部59および60の各々は、貫通孔61が設けられた、たとえばSiからなる基板62の一部によって与えられている。
このような変位素子51は、圧電体層55を圧電効果に基づいて歪ませることにより、梁52における、第1の支持部59による第1の支点63と第2の支持部60による第2の支点64との間の有効撓み部分65を厚み方向に撓ませることが行なわれ、それによって、梁52に厚み方向への変位が生じる。有効撓み部分65の長手方向の中央部66には、当該中央部66の厚みを他の部分より厚くするための、たとえばSiからなる厚み付与部材67が配置される。
有効撓み部分65は、第1の支点63と第2の支点64との垂直二等分面68に関して対称構造を有している。
また、有効撓み部分65における、第1の支点63と厚み付与部材67の第1の支点63側の端に位置する第1の内端69との間の第1の片側撓み部分70は、第1の支点63と第1の内端69との垂直二等分面71に関して対称構造を有している。
他方、有効撓み部分65における、第2の支点64と厚み付与部材67の第2の支点64側の端に位置する第2の内端72との間の第2の片側撓み部分73についても、第2の支点64と第2の内端72との垂直二等分面74に関して対称構造を有している。
また、図7(a)によく示されているように、有効撓み部分65は、その幅方向の各端部である第1の自由端75と第2の自由端76との垂直二等分面77(切断面B−Bに相当)に関しても対称構造を有している。
また、厚み付与部材67は、有効撓み部分65の幅方向の各端部である第1の自由端75と第2の自由端76との間の全域にわたって延びるように配置されている。
また、梁52に備える下部電極層54には、引出電極78が電気的に接続され、この引出電極78の端部は、図7(a)に示すように、基板62上において外部に露出するように形成される。
また、上部電極層56のうち、両端に位置する第1および第2の上部電極層56aおよび56bには、引出電極79が電気的に接続される。また、中央に位置する第3の上部電極層56cには、引出電極80が電気的に接続される。これら引出電極79および80の各々が有するパターンは、前述した垂直二等分面68、71、74および77の各々に関する対称性が、いずれも阻害されず、すべて確保されるように配慮されている。
次に、変位素子51の作製方法の一例について説明する。
まず、Siからなる基板62が用意される。この段階では、基板62には貫通孔61が形成されていない。
次に、基板62上に、バッファ層53となるAl2 3 膜をスパッタリングまたは蒸着等の方法によって全面に形成する。次に、下部電極層54および引出電極78となるPt膜をスパッタリングまたは蒸着等の方法によって全面に形成する。このとき、Pt膜のAl2
3 膜に対する密着性を向上させるため、Pt膜を形成する前にTi等からなる膜を形成してもよい。
次に、圧電体層55となるPZT膜をMOCVDまたはスパッタリング等の方法によって全面に形成する。ここで、PZTは、基板面と垂直な方向にc軸配向していることが望ましい。
次に、上部電極層56ならびに引出電極79および80となるAl膜をリフトオフ等の方法によって形成する。
次に、レジストマスクを介して、前述したPZT膜、Pt膜およびAl2 3 膜に対して、イオンミリング等の方法を適用して、圧電体層55、下部電極層54およびバッファ層53が得られるように加工する。次に、レジストマスクを介して、圧電体層55を、イオンミリング等の方法を用いて加工することによって、引出電極78の一部を露出させる。
次に、基板62に対して、その裏面側から、レジストマスクを介してRIE等の方法を適用して、貫通孔61を形成する。このとき、厚み付与部材67が、基板62の一部によって与えられるようにする。
以上のようにして、変位素子51を得ることができる。
次に、変位素子51の動作について説明する。
変位素子51に備える梁52の有効撓み部分65は、前述したような対称構造を有しているため、変位素子11に関して図2および図3を参照して説明したのと同様の理由により、作製直後の初期状態においては、図2または図3に示すような反りが生じても、第1および第2の内端69および72の高さ位置を、第1および第2の支点63および64の高さ位置と常に同じになるように制御することができる。
上述の状態において、下部電極層54に接続される引出電極78と上部電極層56における第1および第2の上部電極層56aおよび56bに接続される引出電極79との間に電圧を印加すると、圧電体層55における下部電極層54と第1および第2の上部電極56aおよび56bとの間に位置している部分に、逆圧電効果により歪みが発生する。
その結果、この発生した圧電応力が引っ張り方向に働くとすると、有効撓み部分65は、初期において図2に示すような状態にあった場合には、図8に示すように湾曲し、他方、初期において図3に示すような状態にあった場合には、図9に示すように湾曲する。このようにして、図8および図9に示すように、梁52の有効撓み部分65の中央部66は上方へ変位する。ここで、変位量は、引出電極78および79間に印加される電圧の高さによって制御することができる。
他方、下部電極層54に接続される引出電極78と上部電極層56における中央の第3の上部電極層56cに接続される引出電極80との間に電圧を印加すると、圧電体層55における下部電極層54と第3の上部電極層56cとの間に位置している部分に、逆圧電効果により歪みが発生する。その結果、梁52の有効撓み部分65の中央部66は、図8または図9に示した状態とは逆に下方へ変位する。
以上のように、変位素子51によれば、梁52の有効撓み部分65の中央部66の初期状態での絶対位置を一定に制御できるので、圧電体層55に電圧を印加して歪みを生じさせることによって、有効撓み部分65の中央部66を所定の量だけ変位させることができ、絶対位置制御性の良好な圧電駆動型変位素子を実現することができる。
図10は、この発明に係る変位素子の、駆動手段についての第2の実施形態を説明するためのものである。ここで、図10(a)は、変位素子81の平面図であり、図10(b)は、図10(a)の切断面B−Bに沿う切断部端面図である。
変位素子81は、電磁駆動型変位素子を構成するもので、図1に示した変位素子11と共通する基本的構成を備えている。
変位素子81は、梁82を備え、梁82は、たとえばSiO2 からなる絶縁体層83およびたとえばAlからなる導電体層84を厚み方向に積層した構造を有している。導電体層84の各端部には、引出電極85および86が接続されている。
変位素子81は、また、上述のような梁82を両持ち状態とするように、梁82の長手方向の第1および第2の端部87および88をそれぞれ支持する第1および第2の支持部89および90を備えている。この実施形態では、図10(a)によく示されているように、第1および第2の支持部89および90の各々は、貫通孔91が設けられた、たとえばSiからなる基板92の一部によって与えられている。
このような変位素子81は、後述する電磁駆動により、梁82における、第1の支持部89による第1の支点93と第2の支持部90による第2の支点94との間の有効撓み部分95を厚み方向に撓ませることが行なわれ、それによって、梁82に厚み方向への変位が生じる。有効撓み部分95の長手方向の中央部96には、当該中央部96の厚みを他の部分より厚くするための、たとえばSiからなる厚み付与部材97が配置される。
有効撓み部分95は、第1の支点93と第2の支点94との垂直二等分面98に関して対称構造を有している。特に、導電体層84について言えば、導電体層84は、有効撓み部分95の中央部96上に形成され、引出電極85および86は、垂直二等分面98に関して対称形状をもって長手方向に延びている。
有効撓み部分95における、第1の支点93と厚み付与部材97の第1の支点93側の端に位置する第1の内端99との間の第1の片側撓み部分100は、第1の支点93と第1の内端99との垂直二等分面101に関して対称構造を有している。
他方、有効撓み部分95における、第2の支点94と厚み付与部材97の第2の支点94側の端に位置する第2の内端102との間の第2の片側撓み部分103についても、第2の支点94と第2の内端102との垂直二等分面104に関して対称構造を有している。
また、図10(a)によく示されているように、有効撓み部分95は、その幅方向の各端部である第1の自由端105と第2の自由端106との垂直二等分面107(切断面B−Bに相当)に関しても対称構造を有している。
また、厚み付与部材97は、有効撓み部分95の幅方向の各端部である第1の自由端105と第2の自由端106との間の全域にわたって延びるように配置されている。
次に、変位素子81の作製方法の一例について説明する。
まず、Siからなる基板92が用意される。この段階では、基板92には貫通孔91が形成されていない。
次に、基板92上に、絶縁体層83となるSiO2 膜を熱酸化またはスパッタリング等の方法によって全面に形成した後、ウェットエッチングにより、絶縁体層83を形成する。次に、導電体層84となるAlパターンをリフトオフ等の方法によって形成する。
次に、基板92に対して、その裏面側から、レジストマスクを介してRIE等の方法を適用して、貫通孔91を形成する。このとき、厚み付与部材97が、基板92の一部によって与えられるようにする。
以上のようにして、変位素子81を得ることができる。
次に、変位素子81の動作について説明する。
まず、変位素子81にあっても、梁82の有効撓み部分についての対称構造、ならびに第1および第2の片側撓み部分100および103の各々についての対称構造が確保されているので、有効撓み部分95の中央部96の初期状態での絶対位置を常に一定とすることができる。
このような状態において、まず、梁82の有効撓み部分95の長手方向に磁場が加わるように、梁82の側方に永久磁石または電磁石を配置する。ここで、引出電極85および86を通して導電体層84に電流を流すと、磁力線が発生し、有効撓み部分95の中央部96上の導電体層84は、電磁力を受けて、有効撓み部分95を撓ませ、それによって、中央部96の絶対位置は上方または下方へ変位する。ここで、変位量は、導電体層84に流す電流の大きさによって制御することができる。
以上のように、変位素子81によれば、梁82の有効撓み部分95の中央部96の初期状態での絶対位置を一定に制御できるので、電磁力によって、導電体層84、さらには有効撓み部分95の中央部96を所定の量だけ変位させることができ、絶対位置制御性の良好な電磁駆動型変位素子を実現することができる。
図11は、この発明に係る変位素子の、駆動手段についての第3の実施形態を説明するためのものである。ここで、図11(a)は、変位素子111の平面図であり、図11(b)は、図11(a)の切断面B−Bに沿う切断部端面図である。
変位素子111は、静電駆動型変位素子を構成するもので、図1に示した変位素子11と共通する基本的構成を備えている。変位素子111は梁112を備え、梁112は、たとえばSiO2からなる絶縁体層113およびたとえばAlからなる導電体層114を厚み方向に積層した構造を有している。導電体層114には、引出電極115が接続されている。
変位素子111は、また、上述のような梁112を両持ち状態とするように、梁112の長手方向の第1および第2の端部116および117をそれぞれ支持する第1および第2の支持部118および119を備えている。この実施形態では、図11(a)によく示されているように、第1および第2の支持部118および119の各々は、貫通孔120が設けられた、たとえばSiからなる基板121の一部によって与えられている。
このような変位素子111は、静電駆動によって、梁112における、第1の支持部118による第1の支点122と第2の支持部119による第2の支点123との間の有効撓み部分124を厚み方向に撓ませることが行なわれ、それによって、梁112に厚み方向への変位が生じる。有効撓み部分124の長手方向の中央部125には、当該中央部125の厚みを他の部分より厚くするための、たとえばSiからなる厚み付与部材126が配置される。
有効撓み部分124は、第1の支点122と第2の支点123との垂直二等分面127に関して対称構造を有している。
また、有効撓み部分124における、第1の支点122と厚み付与部材126の第1の支点122側の端に位置する第1の内端128との間の第1の片側撓み部分129は、第1の支点122と第1の内端128との垂直二等分面130に関して対称構造を有している。
他方、有効撓み部分124における、第2の支点123と厚み付与部材126の第2の支点123側の端に位置する第2の内端131との間の第2の片側撓み部分132についても、第2の支点123と第2の内端131との垂直二等分面133に関して対称構造を有している。
また、図11(a)によく示されているように、有効撓み部分124は、その幅方向の各端部である第1の自由端134と第2の自由端135との垂直二等分面136(切断面B−Bに相当)に関しても対称構造を有している。
また、図示されないが、厚み付与部材126は、有効撓み部分124の幅方向の各端部である第1の自由端134と第2の自由端135との間の全域にわたって延びるように配置されている。
梁112の有効撓み部分124の中央部125の上方には、たとえばガラスからなる固定部材137が固定的に配置されている。固定部材137には、前述した導電体層114に対して空気層138を隔てて位置するように、固定導電体139がたとえばAlをもって形成されている。固定導電体139は、基板121上に形成された引出電極140と電気的に接続される。
次に、変位素子111の作製方法の一例について説明する。
まず、Siからなる基板121が用意される。この段階では、基板121には貫通孔120が形成されていない。
次に、基板121上に、絶縁体層113となるSiO2 膜を熱酸化またはスパッタリング等の方法によって全面に形成し、その後、ウェットエッチングにより絶縁体層113を形成する。次に、導電体層114および引出電極115となるAl膜をリフトオフ等の方法によって形成する。また、引出電極140となるCu膜をリフトオフ等の方法で形成する。ここで、引出電極140の厚みは、引出電極115の厚みより厚くする。
次に、基板121に対して、その裏面側から、レジストマスクを介してRIE等の方法を適用して、貫通孔120を形成する。このとき、厚み付与部材126が、基板121の一部によって与えられるようにする。
他方、固定部材137上に、Alからなる固定導電体139を形成する。そして、この固定導電体139と前述の基板120上の引出電極140とが接合されるように熱圧着する。
以上のようにして、変位素子111を得ることができる。
次に、変位素子111の動作について説明する。
まず、変位素子111においても、梁112の有効撓み部分124ならびに第1および第2の片側撓み部分129および132の各々について対称構造を有しているので、中央部125の初期状態での絶対位置を常に一定に制御することができる。
この状態において、引出電極115および140の間に電圧を印加すると、導電体層114と固定導電体139との間に静電引力が働き、有効撓み部分124の中央部125は上方へ変位する。そして、この変位量は、引出電極115および140間に印加される電圧の高さによって制御することができる。
以上のように、変位素子111によれば、梁112の有効撓み部分124の中央部125の初期状態での絶対位置を制御できるので、導電体層114と固定導電体139との間に電圧を印加することにより、これら導電体層114と固定導電体139との間に静電引力を発生させ、それによって、有効撓み部分124を所定の量だけ撓ませることができ、絶対位置制御性の良好な静電駆動型変位素子を実現することができる。
図12ないし図14は、この発明に係る変位素子の好ましい適用例としての可変容量素子を説明するためのものである。ここで、図12は、変位素子141の平面図であり、図13は、図12の切断面X−Xに沿う切断部端面図であり、図14は、図12の切断面Y−Yに沿う切断部端面図である。
可変容量素子を構成する変位素子141は、たとえばSiからなる第1の基板142とたとえばガラスからなる第2の基板143とを備えている。また、変位素子141は、第1の基板142側において、第1および第2の梁144および145を備えている。第1および第2の梁144および145は、実質的に互いに同じ構成を有しているので、以下には、第1の梁144について主として説明する。
梁144は、たとえばAl2 3 からなるバッファ層146、たとえばPtからなる下部電極層147、たとえばPZTからなる圧電体層148およびたとえばAlからなる上部電極層149を厚み方向に積層した構造を有している。上部電極層149は、第1、第2および第3の上部電極層149a、149bおよび149cに分割されて形成されている。
また、梁144を両持ち状態とするように、梁144の長手方向の第1および第2の端部150および151は、それぞれ、第1および第2の支持部152および153によって支持されている。図12によく示されているように、第1および第2の支持部152および153の各々は、第1の基板142に貫通孔154が設けられることによって分けられた各部分によって与えられている。
梁144に備える圧電体層148を圧電効果に基づいて歪ませることにより、梁144における、第1の支持部152による第1の支点155と第2の支持部153による第2の支点156との間の有効撓み部分157を厚み方向に撓ませることが行なわれ、それによって、梁144に厚み方向への変位が生じる。有効撓み部分157の長手方向の中央部158には、当該中央部158の厚みを他の部分より厚くするための、たとえばSiからなる厚み付与部材159が配置される。
この実施形態では、厚み付与部材159は、第2の梁145における有効撓み部分160の中央部161にまで延びるように配置され、第1および第2の梁144および145の双方に固定されている。
有効撓み部分157は、第1の支点155と第2の支点156との垂直二等分面162(切断面Y−Yに相当)に関して対称構造を有している。
また、有効撓み部分157における、第1の支点155と厚み付与部材159の第1の支点155側の端に位置する第1の内端163との間の第1の片側撓み部分164は、第1の支点155と第1の内端163との垂直二等分面165に関して対称構造を有している。
他方、有効撓み部分157における、第2の支点156と厚み付与部材159の第2の支点156側の端に位置する第2の内端166との間の第2の片側撓み部分167についても、第2の支点156と第2の内端166との垂直二等分面168に関して対称構造を有している。
また、図12によく示されているように、有効撓み部分157は、その幅方向の各端部である第1の自由端169と第2の自由端170との垂直二等分面171(切断面X−Xに相当)に関しても対称構造を有している。
また、梁144に備える下部電極層147および他方の梁145に備える図示しない下部電極層には、引出電極172が電気的に接続され、この引出電極172の端部は、図12に示すように、第1の基板142上において外部に露出するように形成される。
また、梁144に備える上部電極層149のうち、両端に位置する第1および第2の上部電極層149aおよび149b、ならびに他方の梁145に備える対応の上部電極層には、引出電極173が電気的に接続される。
他方、第2の基板143上には、たとえばAlからなる電極174および175が互いに並んだ状態で形成される。また、第1の基板142と第2の基板143とは、ギャップ調整部材176を介して互いに接合される。そして、この接合状態において、電極174および175に対して静電容量を形成するように空気層177を隔てた位置、すなわち厚み付与部材159の下面上に、たとえばAlからなる電極178が形成される。
次に、変位素子141の作製方法の一例について説明する。
まず、Siからなる第1の基板142が用意される。この段階では、第1の基板142には貫通孔154が形成されていない。
次に、第1の基板142上に、バッファ層146となるAl2 3 膜をスパッタリングまたは蒸着等の方法によって全面に形成する。次に、下部電極層147となるPt膜をスパッタリングまたは蒸着等の方法によって全面に形成する。
次に、圧電体層148となるPZT膜をMOCVDまたはスパッタリング等の方法によって全面に形成する。
次に、上部電極層149および引出電極173となるAl膜をリフトオフ等の方法によって形成する。
次に、レジストマスクを介して、前述したPZT膜、Pt膜およびAl2 3 膜に対して、イオンミリング等の方法を適用して、第1の梁144における圧電体層148、下部電極層147およびバッファ層146ならびに第2の梁145における対応の要素が得られるように加工する。次に、レジストマスクを介して、第1の梁144における圧電体層148および第2の梁145における対応の要素を、イオンミリング等の方法を用いて加工することによって、引出電極172の一部を露出させる。
次に、第1の基板142に対して、その裏面側から、レジストマスクを介してRIE等の方法を適用して、貫通孔154を形成する。このとき、厚み付与部材159が、第1の基板142の一部によって与えられるようにする。
他方、第2の基板143上に、電極174および175をリフトオフ等の方法によって形成する。そして、第2の基板143上に、ギャップ調整部材176をたとえば感光性ポリイミド等を用いて形成し、次いで、第1の基板142をこれに熱圧着する。
以上のようにして、変位素子141を得ることができる。
次に、変位素子141の動作について説明する。
まず、前述したように、第1および第2の梁144および145のそれぞれについて、対称構造を有しているため、各々の有効撓み部分157および160の中央部158および161の初期状態での絶対位置は、常に一定に制御することができる。
この初期状態において、電極174および175と電極178とによって形成される静電容量は、電極174および175を通して取り出すことができる。
次に、引出電極172と引出電極173との間に電圧を印加すると、圧電体層148が歪み、有効撓み部分157および160の中央部158および161が上方または下方へ変位し、それによって、電極174および175と電極178との間隔が変更され、静電容量が変更される。この静電容量の変更度合いは、引出電極172および173間に印加される電圧の高さによって制御することができる。
以上のように、可変容量素子を構成する変位素子141によれば、梁144および145の有効撓み部分157および160の中央部158および161の初期状態での絶対位置を一定に制御できるので、電圧を印加した際に生じる変位量を高精度に制御することができ、その結果、静電容量を高精度に制御することができる。
この発明に係る変位素子は、静電容量値を高精度に制御できる可変容量素子として適用することができる。

Claims (7)

  1. 互いに異なる材料からそれぞれなる複数の機能材料層を厚み方向に積層した構造を有する梁と、
    前記梁を両持ち状態とするように、前記梁の長手方向の第1および第2の端部をそれぞれ支持する第1および第2の支持部と、
    前記梁に前記厚み方向への変位を生じさせるため、前記梁における、前記第1の支持部による第1の支点と前記第2の支持部による第2の支点との間の有効撓み部分を前記厚み方向に撓ませるように電気的に駆動するための駆動手段と
    を備え
    前記有効撓み部分の前記厚み方向への撓みによって生じる、前記第1および第2の支持部に対する前記梁の前記厚み方向への変位を利用する、変位素子であって、
    前記有効撓み部分の長手方向の中央部には、当該中央部の厚みを他の部分より厚くするための厚み付与部材が配置され、
    前記有効撓み部分は、前記第1の支点と前記第2の支点との垂直二等分面に関して対称構造を有するとともに、
    前記有効撓み部分における、前記第1の支点と前記厚み付与部材の前記第1の支点側の端に位置する第1の内端との間の第1の片側撓み部分は、前記第1の支点と前記第1の内端との垂直二等分面に関して対称構造を有し、かつ、
    前記有効撓み部分における、前記第2の支点と前記厚み付与部材の前記第2の支点側の端に位置する第2の内端との間の第2の片側撓み部分は、前記第2の支点と前記第2の内端との垂直二等分面に関して対称構造を有していることを特徴とする、変位素子。
  2. 前記有効撓み部分は、その幅方向の各端部である第1の自由端と第2の自由端との垂直二等分面に関して対称構造を有していることを特徴とする、請求項1に記載の変位素子。
  3. 前記厚み付与部材は、前記有効撓み部分の幅方向の各端部である第1の自由端と第2の自由端との間の全域にわたって延びるように配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の変位素子。
  4. 複数の前記機能材料層のうちの少なくとも1層は、圧電体からなる圧電体層であり、前記駆動手段は、前記圧電体層を圧電効果に基づいて歪ませる手段を備えることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の変位素子。
  5. 複数の前記機能材料層のうちの少なくとも1層は、導電体からなる導電体層であり、前記駆動手段は、前記導電体層に電流を流すことによって磁力線を発生させる手段と、前記導電体層に電磁力を発生させて前記有効撓み部分を撓ませるように前記導電体層に外部より磁場を与える手段とを備えることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の変位素子。
  6. 複数の前記機能材料層のうちの少なくとも1層は、導電体からなる導電体層であり、前記駆動手段は、前記導電体層に対して空気層を隔てた位置に固定的に設けられた固定導電体と、前記導電体層と前記固定導電体との間に電圧を印加する手段とを備え、前記導電体層と前記固定導電体との間に電圧を印加することにより、前記導電体層と前記固定導電体との間に静電引力を発生させ、それによって、前記有効撓み部分を撓ませることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の変位素子。
  7. 前記厚み付与部材を含む前記有効撓み部分上に設けられた第1の電極と、前記第1の電極に対して静電容量を形成するように空気層を隔てた位置に固定的に設けられた第2の電極とをさらに備え、前記有効撓み部分の撓みによって前記静電容量が変更される可変容量素子を構成することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の変位素子。
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