以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、MEMSスイッチ100の概略構成を示す図である。
MEMSスイッチ100は、所謂高周波スイッチ(RFスイッチ)の1つであり、圧電又は静電アクチュエータによって機械的にスイッチングを行う装置である。
図1に示すように、MEMSスイッチ100は、第1駆動部SP1と、第1信号線14と、接触端子15と、第1グランド(第1GND)16と、第2駆動部SP2と、第2信号線24と、第2グランド(第2GND)26と、を含んで構成される。第1駆動部SP1は、第1駆動素子11(圧電駆動素子)と、第1駆動回路12と、第1ビーム13(梁)とを含んで構成される。また、第2駆動部SP2は、第2駆動素子21と、第2駆動回路22と、第2ビーム23(梁)とを含んで構成される。また、MEMSスイッチ100を構成する上述の要素は、例えば筐体等の固定部材PKによって覆われた状態とされる。
第1信号線14及び第2信号線24はそれぞれCu等の導体から構成される。また、接触端子15は、例えばAu等の導体から構成される。MEMSスイッチ100では、外部からの入力信号を第1信号線14及び第2信号線24を介して導き、第2信号線24から出力信号として外部へ出力する。第1信号線14と第2信号線24との間は、接触端子15により接続及び切断が切り換えられる。
接触端子15が、第1信号線14に固定されている場合は、接触端子15が第2信号線24に対して接触することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続(ON)され、接触端子15が第2信号線24から離間することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に切断(OFF)される。接触端子15は、第1信号線14ではなく、第2信号線24に固定することもできる。
接触端子15が、第1信号線14及び第2信号線24の双方から離間している構造の場合、接触端子15の移動によって、接触端子15が第1信号線14及び第2信号線24の双方に対して接触することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続(ON)され、接触端子15が第1信号線14及び第2信号線24から離間することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に切断(OFF)される。
なお、第1信号線14と第1GND16とは、電磁気学的な影響が生じる程度に近接配置されており、所定の特性インピーダンスを有する高周波線路が形成される。また、第2信号線24と第2GND26とは、電磁気学的な影響が生じる程度に近接配置されており、所定の特性インピーダンスを有する高周波用の高周波線路が形成される。第1GND16と、第2GND26とは、電気的に接続されており、同電位に固定されていることが好ましい。これらのグランドは、第1信号線14と第2信号線24と共に高周波線路、例えばコプレーナ導波路(CPW:Coplanar Waveguide)を構成する。なお、第1信号線14と第1GND16との間には容量C1が介在し、第2信号線24と第2GND26との間には容量C2が介在する。
接触端子15による第1信号線14と第2信号線24との間の接続及び切断の切り替えは、第1信号線14、接触端子15及び第2信号線24のうちの一部の物理的な移動によって行われる。第1駆動部SP1は、第1駆動素子11によって、第1ビーム13を変形させ、第1信号線14に接触端子15が固定されている場合には、これら双方を移動させ、第1信号線14に接触端子15が固定されていな場合には、接触端子15を移動させる機能を有している。
第2駆動部SP2は、第2駆動素子21によって、第2ビーム23を変形させることができるので、第2ビーム23に固定された第2信号線24は、必要に応じて、接触端子15の方向へ移動したり、離間することができる。なお、第2ビーム23を変形する必要が無い場合には、第2駆動素子21には第2駆動回路22から駆動信号は与えられず、第2ビーム23の変形が不要である場合は、第2駆動回路22は無くてもよい。
第1駆動部SP1では、制御回路CONTからの信号に基づいて第1駆動回路12からの電圧印加により、第1駆動素子11が変形する。第1ビーム13(第1可撓性部材13)は、可撓性を有する部材により構成され第1駆動素子11の変形に伴って変形する。
同様に、第2駆動部SP2では、制御回路CONTからの信号に基づいて第2駆動回路22からの電圧印加により、第2駆動素子21が変形する。第2ビーム23(第2可撓性部材23)は、可撓性を有する部材により構成され第2駆動素子21の変形に伴って変形する。
図2は、圧電駆動素子の構成について説明する概略断面図である。
以下では、XYZ三次元直交座標系を設定する。図1に示した第1ビーム13の厚み方向をZ軸方向とし、長手方向をX軸方向として、Z軸及びX軸の双方に垂直な幅方向をY軸方向とする。
図2に示すように、第1駆動部SP1の第1駆動素子11は、Pt等の下部電極層11a、圧電体材料層11b、及びPtなどの上部電極層11cをZ方向に積層配置した構成を有する。この第1駆動素子11の下部電極層11aと上部電極層11cとの間に所定の電圧を印加することにより、圧電体材料層11bの厚さが増加し、面内寸法が減少する(面内方向では縮む)。圧電体の分極と、同一の方向に正の直流電圧を印加すると圧電素子は伸び、逆に負の直流電圧をかけると縮む。したがって、電圧の向き制御することで、圧電素子の面内方向の伸縮を制御することができる。
第1駆動素子11が、圧電素子である場合の材料について、補足説明する。
圧電体の材料としては、電気機械結合係数が大きく、伝搬損失およびパワーフロー角が小さく、遅延時間温度係数が小さい材料が好ましい。例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BaTiO3)などが好適である。各層の形成には、従来公知の成膜方法を適宜用いることができ、例えば、蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長(CVD)法、プラズマアシスト気相成膜(PCVD)法、めっき等を用いることができる。その他、圧電体の材料としては、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、チタン酸ビスマスナトリウム(BNT)、窒化アルミ(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ビスマス鉄酸化物(例えば、BiFeO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)等を用いることができる。
第1駆動素子11の寸法について説明する。
第1駆動素子11のX軸方向の寸法は200μm(50〜500μm)、Y軸方向の寸法は250μm(50〜500μm)、Z軸方向の寸法は2μm(0.3〜3μm)である。なお、括弧内は、好適範囲を示している。この場合、第1駆動素子11の形態的なバランスが、小型化された圧電型MEMSスイッチに要求される駆動素子の微小変位(サブミクロンから数ミクロン)を制御しやすいものとなるという効果がある。
第2駆動部SP2の第2駆動素子21についても、第1駆動素子11と同様に、下部電極層21a、圧電体材料層21b、及び上部電極層21cを含んで構成される。また、第2駆動素子21の構造、材料及び作用効果は、第1駆動素子11の場合と同一である。さらに、第2駆動素子21のXY平面内の形状は、第2ビーム23のXY平面内の形状と同一であり、これらが固着しているため、第2駆動素子21の変形の通りに、第2ビーム23は変形する。
図3は、第1ビーム13及び第2ビーム23の周辺構造を説明する概略構造図である。
本実施形態に係るMEMSスイッチ100では、第1ビーム13及び第2ビーム23はそれぞれX軸方向に延びる平板状の可撓性部材であり、長手方向がX軸方向に沿って整列し、同一のXY平面内に配置されている。第1ビーム13の−X方向の一端側及び第2ビーム23の+X方向の一端側がそれぞれ固定部材PKに対して固定されていて、第1ビーム13及び第2ビーム23において、互いに対向する先端部分は、自由端とされている。すなわち、第1ビーム13及び第2ビーム23は所謂片持ち梁構造を有する。
第1ビーム13には第1信号線14が取り付けられていると共に、第2ビーム23には第2信号線24が取り付けられている。第1信号線14及び第2信号線24は、それぞれ第1ビーム13及び第2ビーム23の延在方向(X軸方向)に沿って配置されている。また、第1ビーム13における自由端側の端部には接触端子15が取り付けられる。接触端子15は、第1信号線14と接続している。接触端子15は、第1ビーム13から接続する本体部15a(接触端子本体)と、本体部15aから突出する接点部15bとを含んで構成される。接点部15bは、本体部15aにおいて、第2信号線24と対向する位置に設けられる。接触端子15は導体により構成されて、第1駆動素子11及び第2駆動素子21が駆動していない状態では、本体部15aにおいて第1信号線14に対して接続する側の端部とは逆側の端部に設けられ、第2信号線24側へ突出する接点部15bが第2信号線24に対して離間した状態に配置される。なお、接触端子15の接点部15bは、接触端子15の本体部15aと同一の材料であってもよいし、本体部15aとは別の材料であってもよい。
第1駆動素子11は、第1ビーム13と固着しているため、第1駆動素子11の変形の通りに、第1ビーム13は変形する。また、第2駆動素子21は、第2ビーム23と固着しているため、第2駆動素子21の変形の通りに、第2ビーム23は変形する。
第1駆動素子11に対して電圧を印加することによって、第1駆動素子11が電圧に連動して変形すると、第1ビーム13が変形し、接点部15bが、例えば、下方へ移動する。同様に、必要に応じて、第2駆動素子21に対して、電圧を印加することによって、第2駆動素子21が電圧に連動して変形すると、第2ビーム23が変形する。第1ビーム13の変形および/または第2駆動素子21による第2ビーム23の変形により、接点部15bが第2ビーム上の第2信号線24と接触する。これにより、接触端子15を介して第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続される。なお、第1駆動素子11と第2駆動素子21に逆方向の駆動電圧を印加すれば、互いに逆方向に湾曲して移動するため、個々の素子においては、接触に必要なストロークを小さくすることもできる。
なお、接触端子15による第1信号線14と第2信号線24との間の接続及び切断の切り替えができる構成であれば、第1駆動部SP1及び第2駆動部SP2の構成は特に限定されない。例えば、第1駆動部SP1及び第2駆動部SP2の一方は駆動回路を備えず、駆動素子の圧電駆動によってビームが移動しない(すなわち、固定部材PKに対して固定される)構成であってもよい。この場合であっても、一方側のビームの変形によって、第1信号線14、第2信号線24、及び接触端子15の位置関係を変更することによって、接触端子15による第1信号線14と第2信号線24との間の接続及び切断の切り替えを実現することができる。
第1ビーム13及び第2ビーム23の材料について、補足説明する。
第1ビーム13及び第2ビーム23の材料は特に限定はされないが、歪応力曲線において線形性を示す材料、すなわち弾性を有する材料が好ましい。例えば、Fe−Ni−Cr合金、Cu−Sn−P合金などの金属間化合物や、単結晶Si等を適宜用いることができる。なかでも単結晶Siは、歪応力曲線において広い線形領域を有するため、特に好適に用いることができる。第1ビーム13及び第2ビーム23の材質は、上述のように、可撓性を有する材料から適宜選択することができるが、上述の材料の他に、SiNx(窒化シリコン)、Al2O3(アルミナ)、TiNx(窒化チタン)、SiO2(酸化ケイ素)、AlN(窒化アルミ)、多結晶Si、アモルファスシリコン、ダイアモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等を用いることができる。
第1ビーム13及び第2ビーム23の寸法について説明する。
第1ビーム13のX軸方向の寸法は250μm(50〜500μm)、Y軸方向の寸法は250μm(50〜500μm)、Z軸方向の寸法は3μm(0.5〜5μm)である。なお、括弧内は、好適範囲を示している。この場合、第1ビーム13の形態的なバランスが、小型化された圧電型MEMSスイッチに要求されるビームの微小変位(サブミクロンから数ミクロン)を制御しやすいものとなるという効果がある。また、第1ビーム13のXY平面内の形状は、偏向可能な可動領域(固定部材PKに固定された部分よりも先端側の領域)に関しては、概ね長方形であるが、この可動領域の形状としては、例えば、半円形、フォーク状形状、三角形が考えられる。
図4は、第1実施形態のMEMSスイッチの斜視図である。
上述の固定部材PKは、対向する凹部を有する第1部材PK(1)と第2部材PK(2)からなる筐体パッケージである。上述のビーム13及びビーム23は、これを含む基板13Kの一部であり、基板13Kの周辺領域は、第1部材PK(1)と第2部材PK(2)によって挟まれている。
入力信号INを入力側の電極パッドB3を介して、MEMSスイッチ100に入力すると、内部の接触端子によって第1信号線と第2信号線が導通している場合は、出力側の電極パッドB1から出力信号OUTが出力される。MEMSスイッチ100の内部の接触端子の位置によって、第1信号線と第2信号線が切断されている場合には、入力信号INは、出力側の電極パッドB1からは取り出されない。
上述の第1GND16に電気的に接続された第1電極パッドBGND1、第2GND26に電気的に接続された第2電極パッドBGND2は、互いに接続用の電極パターンEP1によって電気的に接続され、これらのグランド電極は同電位に設定されている。なお、接続用の電極パターンEP1は、パッケージの外表面上に設けることとしたが、これはパッケージの内部に設けてよい。
図5は、図4に示したMEMSスイッチの縦断面構成(V−V矢印断面)を示す図である。
第1駆動素子11は、第1ビーム13の下面に固着されており、第2駆動素子21は、第2ビーム23の下面に固着されている。
第1駆動素子11には、第1駆動回路12によって、駆動電圧が与えられる。具体的には、第1駆動素子11の下部電極層11aと上部電極層11cとの間に所定の電圧が印加される。接触端子15は、第1信号線14に固定されており、電気的に接続されている。所定の電圧の印加により、第1ビーム13がXZ平面内において撓み、接触端子15が上下方向に移動し、接触端子15が第2信号線24に接触した場合には、第1信号線14と第2信号線24とが電気的に接続される。
なお、第1駆動素子11の上部電極層11cは、第1部材PK(1)に設けられた貫通孔を介して、バンプ又は電極パッド(図示せず)に電気的に接続されている。
第2駆動素子21には、第2駆動回路22によって、駆動電圧を与えてもよい。具体的には、第2駆動素子21の下部電極層21aと上部電極層21cとの間に所定の電圧を印加してもよい。この所定の電圧の印加により、第2ビーム23がXZ平面内において撓み、第2信号線24の先端部分が、接触端子15の方向へ移動した場合には、接触端子15と第2信号線24とが接触し、第1信号線14と第2信号線24とが電気的に接続される。
なお、第2駆動素子21の上部電極層21cは、第1部材PK(1)に設けられた貫通孔を介して、バンプ又は電極パッド(図示せず)に電気的に接続されている。
図6は、図5に示したMEMSスイッチにおける基板の平面図(VI−VI矢印方向に見た平面図)である。
第1ビーム13及び第2ビーム23は、これらを含む基板13Kの一部であり、基板13Kの2点鎖線Pの外側領域(周辺領域)は、上述の第1部材PK(1)と第2部材PK(2)によって挟まれている。
第1ビーム13上には、第1信号線14が設けられ、第2ビーム23上には、第2信号線24が設けられているが、それぞれの信号線は、先端部に向かうほど、幅が細くなっている。第1ビーム13と第2ビーム23の先端部間には、ギャップとなる空間GAPが介在しており、この空間GAPを横断するように、接触端子15が延びている。
第1ビーム13上に固定されたグランド電極である第1GND16は、第1グランド電極パッドBGND1に電気的に接続され、第2ビーム23上に固定されたグランド電極である第2GND26は、第2グランド電極パッドBGND2に電気的に接続されている。
第1GND16の平面形状は、扇形であり、第2GND26の平面形状も、同一形状の扇形であり、ビーム先端部間の空間GAPの重心を中心として、これらは点対称に配置されている。したがって、第1GND16の外側の円弧の含む仮想的な円の軌道上に、第2GND26の外側の円弧が重なる。この仮想的な円の内側の領域が、基板13Kにおいて実効的に撓むビームの領域であり、この領域内の厚みは、領域外の厚みよりも薄くしてもよい。
また、第1ビーム13と第2ビーム23も、ビーム先端部間の空間GAPの重心を中心として、これらは点対称に配置されている。同様に、第1信号線14と第2信号線24も、ビーム先端部間の空間GAPの重心を中心として、これらは点対称に配置されている。
上述の空間GAPのY軸方向の両端部からは、XY平面内において、これに連続するギャップとしての空間GAP1及び空間GAP2が、互いに逆方向に延びている。一方の空間GAP1は、第1信号線14の一方の側面と平行に延びており、また、扇型の第2GND26の径方向の辺とも平行に延びており、これらの側面と辺によって挟まれている。他方の空間GAP2は、第2信号線24の一方の側面と平行に延びており、また、扇型の第1GND16の径方向の辺とも平行に延びており、これらの側面と辺によって挟まれている。
このMEMSスイッチ100においては、第1ビーム13と、第1ビーム13に設けられた第1信号線14と、第1ビーム13に設けられ、第1信号線14に隣接する第1グランド電極(第1GND16)と、第1ビーム13に対してギャップ(GAP、GAP1,GAP2)を介して隣接した第2ビーム23と、第2ビーム23に設けられた第2信号線24と、第2ビーム23に設けられ、第2信号線24に隣接する第2グランド電極(第2GND26)と、を備えている。
そして、このスイッチは、少なくとも第1ビーム13を変形させる第1駆動素子を備えており、接触端子15は、第1信号線14及び第2信号線24のいずれか一方に固定され、第1ビーム13の変形に伴って、第1信号線14と第2信号線24との間の接続を行っている。
このMEMSスイッチ100によれば、第1信号線14と第1GND16は、同一の第1ビーム13に設けられているので、第1駆動素子によって第1ビーム13を変位させても、相対位置が変化せず、第1信号線14の特性インピーダンスの変化を抑制できる。
同様に、第2信号線24と第2GND26は、同一の第2ビーム23に設けられているので、第2駆動素子によって第2ビーム23を変位させても、相対位置が変化せず、第2信号線24の特性インピーダンスの変化を抑制できる。
また、第1ビーム13と第2ビーム23は、いずれも信号線とグランド電極を備えているため、物理的な特性が一致しやすく、したがって、温度変化に伴う構成要素の特性やスイッチング用の接触端子15の位置の変化を相殺して軽減することが可能である。したがって、MEMSスイッチ100は、温度変化及びビームの撓みに対して、高い耐性を有することとなり、高品質な信号伝達をすることができる。
なお、コプレーナ導波路構造に関して、上述のMEMSスイッチにおいては、図6に示すように、第1ビーム13上には、第1信号線14及び第1GND16(グランド電極)が設けられ、第2ビーム23上には、第2信号線24及び第2GND26(グランド電極)が設けられ、第2GND26は、第1の隙間W1を介して、第1信号線14に隣接するまで延びており、第1信号線14は、第1GND16と第2GND26とにより挟まれるように位置することで、第1のコプレーナ導波路を構成し、第1GND16は、第2の隙間W2を介して、第2信号線24に隣接するまで延びており、第2信号線24は、第2GND26と第1GND16とにより挟まれるように位置することで、第2のコプレーナ導波路を構成している。
また、このMEMSスイッチ100においては、第1ビーム13と、第2ビーム23とは、平面視において、点対称に配置されている。これらのビームが点対称に配置されている場合、その変位動作も点対称になるため、これらのビームの温度変位量と撓み動作が同じようになる。したがって、温度変化と撓み動作の相違に伴う接触端子15による接触位置のバラつきを抑制し、信号伝達品質の劣化を抑制することができる。
図7および図8は、図6に示したMEMSスイッチを改良した基板の平面図である。
図6では、圧電素子からなる第1駆動素子11及び第2駆動素子21は、第1GND16及び第2GND26と、第1信号線14および第2信号線24との下部に存在している。本例では、それぞれ、Z軸方向から見た場合、第1GND16及び第2GND26に重なる位置に配置される。したがって、第1駆動素子11及び第2駆動素子21の形状も、第1GND16及び第2GND26に対して、若干のマージン領域を除いて一致し、扇形を形成している。
この領域に駆動素子を固定した場合いおいても、バイメタル効果によって、駆動電圧の印加時においては、第1ビーム13及び第2ビーム23は撓むことになり、上記と同様い動作するが、信号線とは重なる位置にないため、信号線への影響が少ないという利点がある。図8の例では、第1駆動素子11及び第2駆動素子21の信号線(14、24)側の外縁が、第1GND16及び第2GND26の信号線(14、24)側の外縁よりも各信号線から遠くに位置し、各GND内部に設けられている。このため、図7の場合よりも、駆動素子の信号線への影響をさらに低減できるという利点がある。
図9および図10は、図7および図8に示したMEMSスイッチを変形した基板の平面図である。
この例では、グランド電極の一番外周の辺と重なる仮想的な形状を、円形ではなく、正六角形としたものである。この場合、単独のグランド電極形状は、第1GND16及び第2GND26共に、それぞれ五角形となる。その他の構造及び作用効果は、上述のものと同一である。
なお、上記のMEMSスイッチ100は、例えば、図11に示す電子機器に適用することができる。
図11は、本実施形態に係るMEMSスイッチが適用される電子機器の一例の概略構成図である。
図11に示す電子機器200は、無線通信を行う電子機器であり、ハウジングHに収容された複数のMEMSスイッチ100と、複数のMEMSスイッチ100に対してそれぞれ直列に接続されたフィルタ102と、アンテナ103と、スイッチ104と、処理回路105と、入力装置106と、ディスプレイ107と、制御回路CONTと、を含んで構成される。
アンテナ103からは、変調された高周波信号(RF信号)が入力される。電子機器200では、制御回路CONTからの制御によって複数のMEMSスイッチ100におけるON/OFFが切り替えられる。例えば、アンテナに含まれる複数の周波数帯域の信号から、単一の周波数帯域の信号を選択することができる。アンテナ103により受信された入力信号は、必要に応じて、アンプで増幅された後、ON状態が選択されたMEMSスイッチ100、及び、当該MEMSスイッチ100に接続されたフィルタ102を通り、スイッチ104を経て処理回路105に入力し、処理回路105において入力信号に係る処理が行われる。それぞれのフィルタ102は、通過帯域の異なる周波数フィルタであり、選択された周波数の信号が、処理回路105に入力されることとなる。
処理回路105は、変調されていた入力信号を復調し、復調された信号から、文字又は画像情報を抽出し、制御回路CONTは、処理回路105から得られた文字又は画像情報をディスプレイ107上に表示することができる。なお、アンテナ103への入力信号は、映像信号又は音声信号とすることもできる。
また、入力装置106からユーザにより入力される情報が、制御回路CONTに対して送られて制御回路CONTによる複数のMEMSスイッチ100の制御に反映されると共に、処理回路105による処理の結果等が制御回路CONTを介して、ディスプレイ107に対して出力されて、ユーザに通知される。なお、電子機器は、携帯電子機器とすることができる。
本実施形態に係るMEMSスイッチ100は、上述したように、第1駆動素子11及び第2駆動素子21の圧電駆動により、接点部15bと第2信号線24との接触及び離間が繰り返されることにより、第2信号線24と接触端子15との接続及び切断が繰り返される。
上記MEMSスイッチを用いた電子機器は、MEMSスイッチ100と、アンテナ103と、アンテナ103にMEMSスイッチ100を介して接続された周波数フィルタ102とを備えている。この電子機器は、MEMSスイッチが高品質な信号伝達を行うため、誤動作が少ないなどの高性能な動作をすることができる。なお、アンテナ103は、MEMSスイッチ100への信号入力を行う信号入力素子であり、周波数フィルタ102はMEMSスイッチ100からの出力信号を処理する信号処理素子である。信号入力素子としては、例えば、実験システムにおける信号発生器を適用することもできるし、信号処理素子としては、周波数逓倍器やAD変換器などを適用することも可能である。
上述のMEMSスイッチにおいて、ビームが容易に変形し、スイッチングをスムーズに行うことができるためには、ビームを薄層化する必要がある。CVDやスパッタ等の薄膜成膜工程で薄膜を作成するほかに、薄層化処理には、バックグラインド処理(裏面研削処理)が挙げられるが、かかる処理には、グラインド(研削)の他、ポリッシュ(研磨)やエッチングなどの方法が考えられる。
上述の構造によれば、MEMS自体の変形(スイッチング、製造時反り、熱応力反り)によらず、安定したCPW形成が可能で、RF性能の高性能化、安定化(バラつき減少)が可能である。また、複数のスイッチを並べることができるため、マルチチャンネル化を行うこともできる。