以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
図1は、圧電型MEMSスイッチ100の概略構成を示す図である。
圧電型MEMSスイッチ100は、所謂高周波スイッチ(RFスイッチ)の1つであり、圧電アクチュエータによって機械的にスイッチングを行う装置である。
図1に示すように、圧電型MEMSスイッチ100は、第1駆動部SP1と、第1信号線14と、接触端子15と、第1グランド(第1GND)16と、第2駆動部SP2と、第2信号線24と、第2グランド(第2GND)26と、を含んで構成される。第1駆動部SP1は、第1駆動素子11(圧電駆動素子)と、第1駆動回路12と、第1ビーム13(梁)とを含んで構成される。また、第2駆動部SP2は、第2駆動素子21と、第2駆動回路22と、第2ビーム23(梁)とを含んで構成される。また、圧電型MEMSスイッチ100を構成する上述の要素は、例えば筐体等の固定部材PKによって覆われた状態とされる。
第1信号線14及び第2信号線24はそれぞれCu等の導体から構成される。また、接触端子15は、例えばAu等の導体から構成される。圧電型MEMSスイッチ100では、外部からの入力信号を第1信号線14及び第2信号線24を介して導き、第2信号線24から出力信号として外部へ出力する。第1信号線14と第2信号線24との間は、接触端子15により接続及び切断が切り換えられる。
接触端子15が、第1信号線14に固定されている場合は、接触端子15が第2信号線24に対して接触することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続(ON)され、接触端子15が第2信号線24から離間することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に切断(OFF)される。接触端子15は、第1信号線14ではなく、第2信号線24に固定することもできる。
接触端子15が、第1信号線14及び第2信号線24の双方から離間している構造の場合、接触端子15の移動によって、接触端子15が第1信号線14及び第2信号線24の双方に対して接触することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続(ON)され、接触端子15が第1信号線14及び第2信号線24から離間することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に切断(OFF)される。
なお、第1信号線14と第1GND16とは、電磁気学的な影響が生じる程度に近接配置されており、したがって、これらの間には容量C1が介在する。また、第2信号線24と第2GND26とは、電磁気学的な影響が生じる程度に近接配置されており、したがって、これらの間には容量C2が介在する。第1GND16と、第2GND26とは、電気的に接続されており、同電位に固定されていることが好ましい。これらのグランドは、第1信号線14と第2信号線24と相まって所定の特性インピーダンスのコプレナ線路を形成する。
接触端子15による第1信号線14と第2信号線24との間の接続及び切断の切り替えは、第1信号線14、接触端子15及び第2信号線24のうちの一部の物理的な移動によって行われる。第1駆動部SP1は、第1駆動素子11によって、第1ビーム13を変形させ、第1信号線14に接触端子15が固定されている場合には、これら双方を移動させ、第1信号線14に接触端子15が固定されていな場合には、接触端子15を移動させる機能を有している。
第2駆動部SP2は、第2駆動素子21によって、第2ビーム23を変形させることができるので、第2ビーム23に固定された第2信号線24は、必要に応じて、接触端子15の方向へ移動したり、離間したりすることができる。なお、第2ビーム23を変形する必要が無い場合には、第2駆動素子21には第2駆動回路22から駆動信号は与えられず、第2ビーム23の変形が不要である場合は、第2駆動回路22は無くてもよい。
第1駆動部SP1では、制御回路CONTからの信号に基づいて第1駆動回路12からの電圧印加により、第1駆動素子11が変形する。第1ビーム13(可撓性部材)は、可撓性を有する部材により構成され第1駆動素子11の変形に伴って変形する。
同様に、第2駆動部SP2では、制御回路CONTからの信号に基づいて第2駆動回路22からの電圧印加により、第2駆動素子21が変形する。第2ビーム23は、可撓性を有する部材により構成され第2駆動素子21の変形に伴って変形する。
図2は、圧電駆動素子の構成について説明する概略断面図である。
以下では、XYZ三次元直交座標系を設定する。図1に示した第1ビーム13の厚み方向をZ軸方向とし、長手方向をX軸方向として、Z軸及びX軸の双方に垂直な幅方向をY軸方向とする。
図2に示すように、第1駆動部SP1の第1駆動素子11は、Pt等の下部電極11a、圧電体11b、及びPtなどの上部電極11cをZ方向に積層配置した構成を有する。この第1駆動素子11の下部電極11aと上部電極11cとの間に電圧を印加することにより、圧電体11bの厚さが増加し、面内寸法が減少する(面内方向では縮む)。
第1駆動素子11が、圧電素子である場合の材料について、補足説明する。
圧電体の材料としては、電気機械結合係数が大きく、伝搬損失およびパワーフロー角が小さく、遅延時間温度係数が小さい材料が好ましい。例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BaTiO3)などが好適である。各層の形成には、従来公知の成膜方法を適宜用いることができ、例えば、蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長(CVD)法、プラズマアシスト気相成膜(PCVD)法、めっき等を用いることができる。その他、圧電体の材料としては、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、チタン酸ビスマスナトリウム(BNT)、窒化アルミ(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ビスマス鉄酸化物(例えば、BiFeO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)等を用いることができる。
第1駆動素子11の寸法について説明する。
第1駆動素子11のX軸方向の寸法は200μm(50〜500μm)、Y軸方向の寸法は250μm(50〜500μm)、Z軸方向の寸法は2μm(0.3〜3μm)である。なお、括弧内は、好適範囲を示している。この場合、第1駆動素子11の形態的なバランスが、小型化された圧電型MEMSスイッチに要求される駆動素子の微小変位(サブミクロンから数ミクロン)を制御しやすいものとなるという効果がある。
第2駆動部SP2の第2駆動素子21についても、第1駆動素子11と同様に、下部電極21a、圧電体21b、及び上部電極21cを含んで構成される。また、第2駆動素子21の構造、材料及び作用効果は、第1駆動素子11の場合と同一である。さらに、第2駆動素子21のXY平面内の形状は、第2ビーム23のXY平面内の形状と同一であり、これらが固着しているため、第2駆動素子21の変形の通りに、第2ビーム23は変形する。
図3は、第1ビーム13及び第2ビーム23の周辺構造を説明する概略構造図である。
本実施形態に係る圧電型MEMSスイッチ100では、第1ビーム13及び第2ビーム23はそれぞれX軸方向に延びる平板状の可撓性部材であり、長手方向がX軸方向に沿って整列し、同一のXY平面内に配置されている。第1ビーム13の−X方向の一端側及び第2ビーム23の+X方向の一端側がそれぞれ固定部材PKに対して固定されていて、第1ビーム13及び第2ビーム23において、互いに対向する先端部分は、自由端とされている。すなわち、第1ビーム13及び第2ビーム23は所謂片持ち梁構造を有する。
第1ビーム13には第1信号線14が取り付けられていると共に、第2ビーム23には第2信号線24が取り付けられている。第1信号線14及び第2信号線24は、それぞれ第1ビーム13及び第2ビーム23の延在方向(X軸方向)に沿って配置されている。また、第1ビーム13における自由端側の端部には接触端子15が取り付けられる。接触端子15は、第1信号線14と接続している。接触端子15は、第1ビーム13から接続する本体部15a(接触端子本体)と、本体部15aから突出する接点部15bとを含んで構成される。接点部15bは、本体部15aにおいて、第2信号線24と対向する位置に設けられる。接触端子15は導体により構成されて、第1駆動素子11及び第2駆動素子21が駆動していない状態では、本体部15aにおいて第1信号線14に対して接続する側の端部とは逆側の端部に設けられ、第2信号線24側へ突出する接点部15bが第2信号線24に対して離間した状態に配置される。なお、接触端子15の接点部15bは、接触端子15の本体部15aと同一の材料であってもよいし、本体部15aとは別の材料であってもよい。
第1駆動素子11は、第1ビーム13と固着しているため、第1駆動素子11の変形の通りに、第1ビーム13は変形する。また、第2駆動素子21は、第2ビーム23と固着しているため、第2駆動素子21の変形の通りに、第2ビーム23は変形する。
第1駆動素子11に対して電圧を印加することによって第1駆動素子11と連動して変形すると、第1ビーム13が変形し、接点部15bが下方へ移動する。同様に、第2駆動素子21に対して電圧を印加することによって第2駆動素子21と連動して変形すると、第2ビーム23が変形する。第1ビーム13の変形および/または第2駆動素子21の変形により、接点部15bが第2ビーム上の第2信号線24と接触する。これにより、接触端子15を介して第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続される。
なお、接触端子15による第1信号線14と第2信号線24との間の接続及び切断の切り替えができる構成であれば、第1駆動部SP1及び第2駆動部SP2の構成は特に限定されない。例えば、第1駆動部SP1及び第2駆動部SP2の一方は駆動回路を備えず、駆動素子の圧電駆動によってビームが移動しない(すなわち、固定部材PKに対して固定される)構成であってもよい。この場合であっても、一方側のビームの変形によって、第1信号線14、第2信号線24、及び接触端子15の位置関係を変更することによって、接触端子15による第1信号線14と第2信号線24との間の接続及び切断の切り替えを実現することができる。
第1ビーム13及び第2ビーム23の材料について、補足説明する。
第1ビーム13及び第2ビーム23の材料は特に限定はされないが、歪応力曲線において線形性を示す材料、すなわち弾性を有する材料が好ましい。例えば、Fe−Ni−Cr合金、Cu−Sn−P合金、単結晶Si等を適宜用いることができる。なかでも単結晶Siは、歪応力曲線において広い線形領域を有するため、特に好適に用いることができる。第1ビーム13及び第2ビーム23の材質は、上述のように、可撓性を有する材料から適宜選択することができるが、上述の材料の他に、SiNx(窒化シリコン)、Al2O3(アルミナ)、TiNx(窒化チタン)、SiO2(酸化ケイ素)、AlN(窒化アルミ)、多結晶Si、アモルファスシリコン、ダイアモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等を用いることができる。
第1ビーム13及び第2ビーム23の寸法について説明する。
第1ビーム13のX軸方向の寸法は250μm(50〜500μm)、Y軸方向の寸法は250μm(50〜500μm)、Z軸方向の寸法は3μm(0.5〜5μm)である。なお、括弧内は、好適範囲を示している。この場合、第1ビーム13の形態的なバランスが、小型化された圧電型MEMSスイッチに要求されるビームの微小変位(サブミクロンから数ミクロン)を制御しやすいものとなるという効果がある。また、第1ビーム13のXY平面内の形状は、偏向可能な可動領域(固定部材PKに固定された部分よりも先端側の領域)に関しては、概ね長方形であるが、この可動領域の形状としては、例えば、半円形状、フォーク状形状、三角形状が考えられる。
なお、上記の圧電型MEMSスイッチ100は、例えば、図4に示す電子機器に適用することができる。
図4は、本実施形態に係る圧電型MEMSスイッチが適用される電子機器の一例の概略構成図である。
図4に示す電子機器200は、無線通信を行う電子機器であり、ハウジングHに収容された複数の圧電型MEMSスイッチ100と、複数の圧電型MEMSスイッチ100に対してそれぞれ直列に接続されたフィルタ102と、アンテナ103と、スイッチ104と、処理回路105と、入力装置106と、ディスプレイ107と、制御回路CONTと、を含んで構成される。
アンテナ103からは、変調された高周波信号(RF信号)が入力される。電子機器200では、制御回路CONTからの制御によって複数の圧電型MEMSスイッチ100におけるON/OFFが切り替えられる。例えば、アンテナから供給される信号を特定のフィルタ102に接続し、複数の周波数帯域の信号から、単一の周波数帯域の信号を選択することができる。アンテナ103により受信された入力信号は、必要に応じて、アンプで増幅された後、ON状態が選択された圧電型MEMSスイッチ100、及び、当該圧電型MEMSスイッチ100に接続されたフィルタ102を通り、スイッチ104を経て処理回路105に入力し、処理回路105において入力信号に係る処理が行われる。それぞれのフィルタ102は、通過帯域の異なる周波数フィルタであり、選択された周波数の信号が、処理回路105に入力されることとなる。
処理回路105は、変調されていた入力信号を復調し、復調された信号から、文字又は画像情報を抽出し、制御回路CONTは、処理回路105から得られた文字又は画像情報をディスプレイ107上に表示することができる。なお、アンテナ103への入力信号は、映像信号又は音声信号とすることもできる。
また、入力装置106からユーザにより入力される情報が、制御回路CONTに対して送られて制御回路CONTによる複数の圧電型MEMSスイッチ100の制御に反映されると共に、処理回路105による処理の結果等が制御回路CONTを介して、ディスプレイ107に対して出力されて、ユーザに通知される。なお、電子機器は、携帯電子機器とすることができる。
以下、本実施形態に係る圧電型MEMSスイッチのより具体的な構成例について説明する。
(第1構成例)
図5は、第1構成例に係る圧電型MEMSスイッチを示す平面図であり、図6は、図5のVI−VI線に沿った圧電型MEMSスイッチの端面図であり、図7(A)は、図5のVIIA−VIIA線に沿った圧電型MEMSスイッチの端面図であり、図7(B)は、図5のVIIB−VIIB線及び図6のVIIB−VIIB線に沿った圧電型MEMSスイッチの端面図であり、図8(A)は、図5のVIIIA−VIIIA線に沿った圧電型MEMSスイッチの端面図であり、図8(B)は、図5のVIIIB−VIIIB線に沿った圧電型MEMSスイッチの端面図である。これらの図は、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に切断された状態(OFF状態)にある圧電型MEMSスイッチの構成を示している。
図5〜図8に示すように、本構成例の圧電型MEMSスイッチ100は、基板3と、第1の一対の駆動素子11x、11yと、第1ビーム13と、第1信号線14と、信号線用の接触端子15と、一対のグラウンド(GND)16a、16bと、第2ビーム23と、第2の一対の駆動素子21x、21yと、第2信号線24と、を備える。基板3は、固定部材PK(図1参照)の一部又は全部に対応する。第1の一対の駆動素子11x、11yは、第1駆動素子11(図1参照)に対応し、第2の一対の駆動素子21x、21yは、第2駆動素子21(図1参照)に対応する。一対のGND16a、16bは、いずれも図1における第1GND16と第2GND26とを接続したものに対応する。
第1ビーム13及び第2ビーム23は、片持ち梁構造を有するように、一端部が基板3に片持ち支持されている。具体的には、第1ビーム13は、端部13bと離間部13fとを有する。端部13bは、基板3の−X方向の端部3e上に固定されている。離間部13fは、端部13bに固定されていると共に、基板3の主面3mと+Z方向に離間している。これにより、第1ビーム13の+X方向の先端部は自由端となっている。主面3mは、XY平面に沿って(例えば平行に)延びる面である。同様に、第2ビーム23は、端部23bと離間部23fとを有する。端部23bは、基板3の+X方向の端部3e上に固定されている。離間部23fは、端部23bに固定されていると共に、基板3の主面3mと+Z方向に離間している。これにより、第2ビーム23の−X方向の先端部は自由端となっている。OFF状態においては、第1ビーム13の先端部と第2ビーム23の先端部はX軸方向に沿って離間して対向するため、第1ビーム13及び第2ビーム23に設けられた第1信号線14及び第2信号線24も、X軸方向に沿って離間して対向する。
第1信号線14は、X方向に沿って延びるように第1ビーム13上に設けられ、第2信号線24は、X方向に沿って延びるように第2ビーム23上に設けられている。第1信号線14と第2信号線24は、互いにX方向に離間している。
一対のGND16a、16bは、基板3上に設けられている。平面視で(即ち、+Z方向から−Z方向に向かって見て)、一対のGND16a、16bは、第1信号線14及び第2信号線24とY方向に沿って離間すると共に、当該第1信号線14及び第2信号線24をY方向に沿って挟むように設けられており、第1信号線14及び第2信号線24に沿って延びている。
第1の一対の駆動素子11x、11y、及び、第2の一対の駆動素子21x、21yは、それぞれ圧電材料を利用した圧電駆動素子である。第1の一対の駆動素子11x、11yは、第1ビーム13の離間部13f内に設けられており、第2の一対の駆動素子21x、21yは、第2ビーム23の離間部23f内に設けられている。駆動素子11x及び駆動素子21xは、GND16aに沿って延びており、駆動素子11y及び駆動素子21yは、GND16bに沿って延びている。平面視で、第1信号線14及び第2信号線24は、第1の一対の駆動素子11x、11y及び第2の一対の駆動素子21x、21yと重複していない。
平面視で、駆動素子11xは、GND16aよりも第1信号線14側とは反対側に設けられ、駆動素子11yは、GND16bよりも第1信号線14側とは反対側に設けられ、駆動素子21xは、GND16aよりも第2信号線24側とは反対側に設けられ、駆動素子21yは、GND16bよりも第2信号線24側とは反対側に設けられている。そのため、平面視で、第1の一対の駆動素子11x、11yは、第1信号線14及び一対のGND16a、16bをY方向に沿って挟み、第2の一対の駆動素子21x、21yは、第2信号線24及び一対のGND16a、16bをY方向に沿って挟む。
GND16aと基板3との間、及び、GND16bと基板3との間には、それぞれ絶縁部18a、18bが介在している。絶縁部18a、18bは、第1ビーム13及び第2ビーム23を構成する材料と同じ絶縁材料からなってもよいし、異なる材料からなってもよい。絶縁部18a、18bの厚さは、第1信号線14、第2信号線24、及び、一対のGND16a、16bが、ほぼ同一のZ方向の高さ位置に設けられるように調節される。これにより、第1信号線14及び第2信号線24は、一対のGND16a、16bによってほぼ同一面内において挟まれるため、一対のGND16a、16bと第1信号線14及び第2信号線24によってコプレナ導波路(Coplanar Wave Guide)構造が形成され、信号伝搬機能を安定化させることができる。第1信号線14、第2信号線24、及び、一対のGND16a、16bの一部又は全部は、互いにZ方向の異なる高さ位置に設けられていてもよい。
駆動素子11xと駆動素子11yは、第1ビーム13の離間部13f内において、ほぼ同一のZ軸方向の高さ位置に設けられている。駆動素子21xと駆動素子21yは、第2ビーム23の離間部23f内において、ほぼ同一のZ軸方向の高さ位置に設けられている。
第1ビーム13の上面、第1信号線14の上面及び側面、並びに、接触端子15の本体部15aの上面及び側面には、絶縁層17が設けられており、第2ビーム23の上面及び第2信号線24の上面及び側面には、絶縁層27が設けられている。平面視で、絶縁層17と絶縁層27は、X方向に沿って離間するように設けられている。絶縁層17及び絶縁層27は、第1ビーム13及び第2ビーム23と同じ絶縁材料からなるが、異なる材料からなってもよい。接触端子15は、絶縁層17によって、X方向及びY方向に沿った方向から補強されると共に支持される。
圧電型MEMSスイッチ100をOFF状態からON状態に変化させる際には、第1の一対の駆動素子11x、11yを変形させることによって第1ビーム13を撓ませるように変形させることにより、及び/又は、第2の一対の駆動素子21x、21yを変形させることによって第2ビーム23を撓ませるように変形させることにより、接触端子15の接点部15bと第2信号線24とを、互いに接触するまでZ方向に沿って近づける。ON状態から再びOFF状態に変化させる際には、変形させた第1の一対の駆動素子11x、11y及び第2の一対の駆動素子21x、21yを元の形状に戻すことによって、接触端子15の接点部15bと第2信号線24とを互いに離間させる。このようにして、接触端子15によって圧電型MEMSスイッチ100のOFF状態とON状態とを可逆的に切り替えることができる。
上述のような本構成例に係る圧電型MEMSスイッチ100においては、平面視で、駆動素子11xは、GND16aよりも第1信号線14側とは反対側に設けられ、駆動素子11yは、GND16bよりも第1信号線14側とは反対側に設けられ、駆動素子21xは、GND16aよりも第2信号線24側とは反対側に設けられ、駆動素子21yは、GND16bよりも第2信号線24側とは反対側に設けられている(図5参照)。
そのため、圧電駆動素子を、平面視で一対のグラウンドと第1信号線との間の領域に設けなくてもよい。そのため、第1信号線14及び第2信号線24並びに一対のGND16a、16bの幅を小さくし、第1信号線14と一対のGND16a、16bとの離間距離、及び、第2信号線24と一対のGND16a、16bとの離間距離を小さくしても、圧電駆動素子を小さくする必要は無い。その結果、圧電駆動素子の大きさを十分に確保することが可能であるため、小型化を図っても第1信号線14及び第2信号線24間のオン・オフを切り替えるための駆動力が不足する問題は生じない。そのため、本構成例に係る圧電型MEMSスイッチ100によれば、小型化することが容易となる。
さらに、本構成例に係る圧電型MEMSスイッチ100においては、平面視で、第1信号線14は、第1の一対の駆動素子11x、11yと重複しておらず、第2信号線24は、第2の一対の駆動素子21x、21yと重複していない(図5参照)。平面視でこれらの要素が重複していると、第1信号線14及び第2信号線24の下に、浮遊電位となっていない電位を有する圧電駆動素子の電極部が存在することになる。そのような電極部が存在すると、第1信号線14及び第2信号線24を通過する高周波信号の伝送損失が増加してしまう。そのため、上記のような構成とすることにより、圧電駆動素子の電極部に起因する伝送損失の増加を抑制することができる。
図9は、本構成例の変形例に係る圧電型MEMSスイッチを示す平面図であり、本構成例の基本例に関する図5に対応している。本変形例に係るMEMSスイッチ100xは、主として、第1ビームの離間部の形状、及び、第2ビームの離間部23fの形状の点において、基本例の上記圧電型MEMSスイッチ100と相違する。図9に示すように、圧電型MEMSスイッチ100xは、第1ビーム13xと第2ビーム23xとを有する。
第1ビーム13xは、基板3に片持ち支持された一端部(−X方向の端部)から、第2ビーム23xと対向する側の他端部(X方向の端部)に向かって、平面視で幅が漸次減少する先細り形状を有している。また、第1ビーム13xの形状に対応して、第1の一対の駆動素子11xx、11yx(基本例の圧電型MEMSスイッチ100の第1の一対の駆動素子11x、11yに対応、図5参照)、及び、絶縁層17x(基本例の圧電型MEMSスイッチ100の絶縁層17に対応、図5参照)も、平面視で幅が漸次減少する先細り形状を有している。また、絶縁層17xは、第1ビーム13xの一部、及び、GND16a及びGND16bの一部のみを覆っている。
同様に、第2ビーム23xは、基板3に片持ち支持された一端部(X方向の端部)から、第1ビーム13xと対向する側の他端部(−X方向の端部)に向かって、平面視で幅が漸次減少する先細り形状を有している。また、第2ビーム23xの形状に対応して、第2の一対の駆動素子21xx、21yx(基本例の圧電型MEMSスイッチ100の第2の一対の駆動素子21x、21yに対応、図5参照)、及び、絶縁層27x(基本例の圧電型MEMSスイッチ100の絶縁層27に対応、図5参照)も、平面視で幅が漸次減少する先細り形状を有している。また、絶縁層27xは、GND16a及びGND16bの一部のみを覆っている。
本変形例に係る圧電型MEMSスイッチ100xによれば、基本例の上記圧電型MEMSスイッチ100と同様の理由に基づき、小型化することが容易である。さらに、本変形例に係る圧電型MEMSスイッチ100xによれば、上述のように第1ビーム13x及び第2ビーム23x等が先細り形状を有するため、第1の一対の駆動素子11xx、11yx及び第2の一対の駆動素子21xx、21yxによって第1ビーム13x及び第2ビーム23xの先端部を高速で変形させることができるため、ON状態とOFF状態との切り替えを高速で行うことができると共に、圧電型MEMSスイッチ100xをより小型化することが可能となる。
(第2構成例)
続いて、第2構成例に係る圧電型MEMSスイッチについて説明する。図10は、第2構成例に係る圧電型MEMSスイッチ220を示す平面図であり、図11(A)は、図10のXIA−XIA線に沿った圧電型MEMSスイッチの端面図であり、図11(B)は、図10のXIB−XIB線に沿った圧電型MEMSスイッチの端面図であり、図12(A)は、図10のXIIA−XIIA線に沿った圧電型MEMSスイッチの端面図であり、図12(B)は、図10のXIIB−XIIB線に沿った圧電型MEMSスイッチの端面図である。これらの図は、第1信号線と第2信号線との間が電気的に切断された状態(OFF状態)にある圧電型MEMSスイッチの構成を示している。
図10〜図12に示すように、本構成例の圧電型MEMSスイッチ220は、主として第2ビーム23を備えていない点、第2の一対の駆動素子21x、21yを備えていない点、及び、第1信号線14及び第2信号線24が設けられている場所の点において、第1構成例の圧電型MEMSスイッチ100と異なる。
圧電型MEMSスイッチ220は、第2ビーム23を備えていない。また、第1信号線14及び第2信号線24は、第1ビーム13上ではなく、絶縁部18を介して基板3上に設けられている。絶縁部18は、第1ビーム13を構成する材料と同じ絶縁材料からなってもよいし、異なる材料からなってもよい。一対のGND16a、16bも、絶縁部18を介して基板3上に設けられている。絶縁部18の厚さは、第1信号線14、第2信号線24、及び、一対のGND16a、16bが、ほぼ同一のZ軸方向の高さ位置に設けられるように調節される。第1信号線14、第2信号線24、及び、一対のGND16a、16bの一部又は全部は、互いにZ方向の異なる高さ位置に設けられていてもよい。
接触端子215は、Au等の導体から構成され、本体部215aと2つの接点部215bとを有している。OFF状態においては、接触端子15は、第1信号線14及び第2信号線24の双方と離間している。2つの接点部215bは、それぞれ、第1信号線14及び第2信号線24と対向するように本体部215aに固定されている。
絶縁層217は、第1構成例の圧電型MEMSスイッチ100における絶縁層17に対応する要素であり、第2構成例においては、第1ビーム13の上面の一部、第1信号線14の上面及び側面の一部、並びに、接触端子215の本体部15aの上面及び側面に設けられている。絶縁層217によって、接触端子215は第1信号線14と第2信号線24とが対向する領域の上方に支持される。
第1構成例の圧電型MEMSスイッチ100における場合と同様に、圧電型MEMSスイッチ220においては、一対のGND16a、16bは、基板3上に設けられており、平面視で、第1信号線14及び第2信号線24とY方向に沿って離間すると共に、当該第1信号線14及び第2信号線24をY方向に沿って挟むように設けられており、第1信号線14及び第2信号線24に沿って延びている。
また、第1構成例の圧電型MEMSスイッチ100における場合と同様に、圧電型MEMSスイッチ220においては、平面視で、駆動素子11xは、GND16aよりも第1信号線14側とは反対側に設けられ、駆動素子11yは、GND16bよりも第1信号線14側とは反対側に設けられている。そのため、平面視で、第1の一対の駆動素子11x、11yは、第1信号線14及び一対のGND16a、16bをY方向に沿って挟む。
第2構成例に係る圧電型MEMSスイッチ220によれば、第1構成例に係る圧電型MEMSスイッチ100と同様の理由に基づき、小型化することが容易となる。
図13は、第2構成例の変形例に係る圧電型MEMSスイッチを示す平面図であり、第2構成例の基本例に関する図10に対応している。本変形例に係る圧電型MEMSスイッチ220xは、主として、第1ビームの離間部の形状の点において、基本例の圧電型MEMSスイッチ220と相違する。図13に示すように、MEMSスイッチ220xは、第1ビーム213xを有する。
第1ビーム213xは、基板3に片持ち支持された一端部(−X方向の端部)から、反対側の他端部(X方向の端部)に向かって、平面視で幅が漸次減少する先細り形状を有している。また、第1ビーム213xの形状に対応して、第1の一対の駆動素子11xx、11yx(基本例の圧電型MEMSスイッチ220の第1の一対の駆動素子11x、11yに対応、図10参照)、及び、絶縁層217x(基本例の圧電型MEMSスイッチ220の絶縁層217に対応、図10参照)も、平面視で幅が漸次減少する先細り形状を有している。また、絶縁層217xは、第1ビーム213xの一部、及び、GND16a及びGND16bの一部のみを覆っている。
本変形例に係るMEMSスイッチ220xによれば、基本例の上記圧電型MEMSスイッチ220と同様の理由に基づき、小型化することが容易である。さらに、本変形例に係るMEMSスイッチ220xによれば、上述のように第1ビーム213x等が先細り形状を有するため、第1の一対の駆動素子11xx、11yx及び第2の一対の駆動素子21xx、21yxによって第1ビーム13x及び第2ビーム23xの先端部を高速で変形させることができるため、ON状態とOFF状態との切り替えを高速で行うことができると共に、MEMSスイッチ220xをより小型化することが可能となる。
本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。
例えば、上記第1構成例の圧電型MEMSスイッチ100及び上記第2構成例の圧電型MEMSスイッチ220においては、平面視で、駆動素子11x(11xx)の全体が、GND16aよりも第1信号線14側とは反対側に設けられ、駆動素子11y(11yx)の全体が、GND16bよりも第1信号線14側とは反対側に設けられ、駆動素子21x(21xx)の全体が、GND16aよりも第2信号線24側とは反対側に設けられ、駆動素子21y(21yx)の全体が、GND16bよりも第2信号線24側とは反対側に設けられているが(図5、図10参照)、駆動素子11x(11xx)の一部、駆動素子11y(11yx)の一部、駆動素子21x(21xx)の一部、及び、駆動素子21y(21yx)が、GND16a、GND16bよりも第1の信号線14、第2の信号線24に近い位置になければよく、これらの要素の他の一部は、平面視で上述のような条件を満たさない位置(例えば、第1信号線14、第2信号線24、一対のGND16a、16bの一部又は全部と重複する位置)に設けられていてもよい。
また、上記第1構成例の圧電型MEMSスイッチ100及び上記第2構成例の圧電型MEMSスイッチ220においては、第1ビーム13の離間部13fには、第1の一対の駆動素子11x、11y及び第1の一対の駆動素子11xx、11yxが設けられているが(図5、図10参照)、一つの駆動素子のみが離間部13fに設けられており、当該一つの駆動素子の一部が、平面視で一対のGND16a、16bの少なくとも一方よりも第1信号線14側とは反対側に設けられていてもよく、その場合、当該一つの駆動素子の他の一部は、平面視で第1信号線14の一部、一対のGND16a、16bの一部又は全部と重複する位置に設けられていてもよい。
同様に、上記第1構成例の圧電型MEMSスイッチ100においては、第2ビーム23の離間部23fには、第2の一対の駆動素子21x、21yが設けられているが(図5参照)、一つの駆動素子のみが離間部23fに設けられており、当該一つの駆動素子の一部が、平面視で一対のGND16a、16bの少なくとも一方よりも第2信号線24側とは反対側に設けられていてもよく、その場合、当該一つの駆動素子の他の一部は、平面視で第2信号線24の一部、一対のGND16a、16bの一部又は全部と重複する位置に設けられていてもよい。
また、第1構成例に係る圧電型MEMSスイッチ100においては、図14に示すような変形態様も可能である。図14は、当該変形態様を示す端面図であり、第1構成例の圧電型MEMSスイッチ100に関する図7(B)に対応している。図14に示すように、当該変形態様に係る圧電型MEMSスイッチ300は、圧電型MEMSスイッチ100と比較して、追加電極としての一対の導電部310、320をさらに備えている点において異なる。導電部310は、駆動素子11xの上部電極11c(又は下部電極11a)と電気的に接続されるように離間部13fに設けられている。導電部310は、第1信号線14と接していない。導電部310の一部は、GND16aの少なくとも一部とZ軸方向に離間して対向する。即ち、導電部310の当該一部は、平面視でGND16aの当該少なくとも一部と重複する。導電部310の当該一部とGND16aの当該少なくとも一部とが接触しないように、これらの間に絶縁層311が介在している。絶縁層311は空気ギャップであってもよい。同様に、導電部320は、駆動素子11yの上部電極11c(又は下部電極11a)と電気的に接続されるように離間部13fに設けられている。導電部320は、第1信号線14と接していない。導電部320の一部は、GND16bの少なくとも一部とZ軸方向に離間して対向する。即ち、導電部320の当該一部は、平面視でGND16bの当該少なくとも一部と重複する。また、導電部320の当該一部とGND16bの当該少なくとも一部とが接触しないように、これらの間に絶縁層312が介在している。絶縁層312は空気ギャップであってもよい。
このような変形態様の圧電型MEMSスイッチ300においては、第1ビーム13を変形させて第1信号線14及び第2信号線24間の接続及び切断を行うために駆動素子11x及び駆動素子11yの上部電極11c(又は下部電極11a)に電圧が印加されると、当該電圧は追加電極としての一対の導電部310、320にも印加される。その結果、一対の導電部310、320と、一対の導電部310、320とZ軸方向に離間して対向する一対のGND16a、16bの少なくとも一部との間に静電気力が働く。その結果、第1信号線14及び第2信号線24間の接続及び切断を行うために第1ビーム13を変形させる際に、第1ビーム13を変形させるための駆動力を増加させることができるため、第1信号線14及び第2信号線24間の接続及び切断をより安定して行うことが可能となる。
なお、当該変形態様は、第1信号線14が基板3上に設けられている第2構成例に係る圧電型MEMSスイッチに適用することも可能である。即ち、第2構成例に係る圧電型MEMSスイッチは、上述のような追加電極としての一対の導電部310、320をさらに備えていてもよい。この場合であっても、上述した理由と同様の理由に基づき、第1信号線14及び第2信号線24間の接続及び切断をより安定して行うことが可能となる。