以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、各図面において、可能な場合には同一要素には同一符号を用いる。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
図1は、MEMSスイッチ100の概略構成を示す図である。
MEMSスイッチ100は、所謂高周波スイッチ(RFスイッチ)の1つであり、圧電アクチュエータ等によって機械的にスイッチングを行う装置である。
図1に示すように、MEMSスイッチ100は、第1駆動部SP1と、第1信号線14と、接触端子15と、第1グランド(第1GND)16と、第2駆動部SP2と、第2信号線24と、第2グランド(第2GND)26と、を含んで構成される。第1駆動部SP1は、第1駆動素子11(例えば圧電駆動素子)と、第1駆動回路12と、第1ビーム13(梁)とを含んで構成される。また、第2駆動部SP2は、第2駆動素子21(例えば圧電駆動素子)と、第2駆動回路22と、第2ビーム23(梁)とを含んで構成される。また、MEMSスイッチ100を構成する上述の要素は、例えば筐体等の固定部材PKによって覆われた状態とされる。
第1信号線14及び第2信号線24はそれぞれCu等の導体から構成される。また、接触端子15は、例えばAu等の導体から構成される。MEMSスイッチ100では、外部からの入力信号を第1信号線14及び第2信号線24を介して導き、第2信号線24から出力信号として外部へ出力する。第1信号線14と第2信号線24との間は、接触端子15により接続及び切断が切り換えられる。
接触端子15が、第1信号線14に固定されている場合は、接触端子15が第2信号線24に対して接触することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続(ON)され、接触端子15が第2信号線24から離間することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に切断(OFF)される。接触端子15は、第1信号線14ではなく、第2信号線24に固定することもできる。
接触端子15が、第1信号線14及び第2信号線24の双方から離間している構造の場合、接触端子15の移動によって、接触端子15が第1信号線14及び第2信号線24の双方に対して接触することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続(ON)され、接触端子15が第1信号線14及び第2信号線24から離間することで、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に切断(OFF)される。
なお、第1信号線14と第1GND16とは、電磁気学的な影響が生じる程度に近接配置されており、したがって、これらの間には容量C1が介在する。また、第2信号線24と第2GND26とは、電磁気学的な影響が生じる程度に近接配置されており、したがって、これらの間には容量C2が介在する。第1GND16と、第2GND26とは、電気的に接続されており、同電位に固定されていることが好ましい。これらのグランドは、第1信号線14と第2信号線24と組み合わされて所定の特性インピーダンスのコプレナ線路を形成する。
接触端子15による第1信号線14と第2信号線24との間の接続及び切断の切り替えは、第1信号線14、接触端子15及び第2信号線24のうちの一部の物理的な移動によって行われる。第1駆動部SP1は、第1駆動素子11によって、第1ビーム13を変形させ、第1信号線14に接触端子15が固定されている場合には、これら双方を移動させ、第1信号線14に接触端子15が固定されていな場合には、接触端子15を移動させる機能を有している。
第2駆動部SP2は、第2駆動素子21によって、第2ビーム23を変形させることができるので、第2ビーム23に固定された第2信号線24は、必要に応じて、接触端子15の方向へ移動したり、離間したりすることができる。なお、第2ビーム23を変形する必要が無い場合には、第2駆動素子21には第2駆動回路22から駆動信号は与えられず、第2ビーム23の変形が不要である場合は、第2駆動回路22は無くてもよい。
第1駆動部SP1では、制御回路CONTからの信号に基づいて第1駆動回路12からの電圧印加により、第1駆動素子11が変形する。第1ビーム13(可撓性部材)は、可撓性を有する部材により構成され、第1駆動素子11の変形に伴って変形する。
同様に、第2駆動部SP2では、制御回路CONTからの信号に基づいて第2駆動回路22からの電圧印加により、第2駆動素子21が変形する。第2ビーム23は、可撓性を有する部材により構成され、第2駆動素子21の変形に伴って変形する。
図2は、第1駆動素子11及び第2駆動素子21が圧電駆動素子である場合の、当該圧電駆動素子の構成について説明する概略断面図である。
以下では、XYZ三次元直交座標系を設定する。図1に示した第1ビーム13の厚み方向をZ軸方向とし、長手方向をX軸方向として、Z軸及びX軸の双方に垂直な幅方向をY軸方向とする。
図2に示すように、第1駆動部SP1の第1駆動素子11は、Pt等の下部電極11a、圧電体11b、及びPtなどの上部電極11cをZ方向に積層配置した構成を有する。この第1駆動素子11の下部電極11aと上部電極11cとの間に電圧を印加することにより、圧電体11bの厚さが増加し、面内寸法が減少する、又は圧電体11bの厚みが減少し、面内寸法が増加する。
第1駆動素子11が、圧電素子である場合の材料について、補足説明する。
圧電体の材料としては、電気機械結合係数が大きく、伝搬損失およびパワーフロー角が小さく、遅延時間温度係数が小さい材料が好ましい。例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム(BaTiO3)などが好適である。各層の形成には、従来公知の成膜方法を適宜用いることができ、例えば、蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長(CVD)法、プラズマアシスト気相成膜(PCVD)法、めっき等を用いることができる。その他、圧電体の材料としては、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、チタン酸ビスマスナトリウム(BNT)、窒化アルミ(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、ビスマス鉄酸化物(例えば、BiFeO3)、チタン酸鉛(PbTiO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)等を用いることができる。
第1駆動素子11の寸法について説明する。
第1駆動素子11のX軸方向の寸法は200μm(50μm〜500μm)、Y軸方向の寸法は250μm(50μm〜500μm)、Z軸方向の寸法は2μm(0.3μm〜3μm)である。なお、括弧内は、好適範囲を示している。この場合、第1駆動素子11の形態的なバランスが、小型化された圧電型MEMSスイッチに要求される駆動素子の微小変位(サブミクロンから数ミクロン)を制御しやすいものとなるという効果がある。
第2駆動部SP2の第2駆動素子21についても、第1駆動素子11と同様に、下部電極21a、圧電体21b、及び上部電極21cを含んで構成される。また、第2駆動素子21の構造、材料及び作用効果は、第1駆動素子11の場合と同一である。さらに、第2駆動素子21のXY平面内の形状は、第2ビーム23のXY平面内の形状と同一であり、これらが固着しているため、第2駆動素子21の変形の通りに、第2ビーム23は変形する。
図3は、第1ビーム13及び第2ビーム23の周辺構造を説明する概略構造図である。
本実施形態に係るMEMSスイッチ100では、第1ビーム13及び第2ビーム23はそれぞれX軸方向に延びる平板状の可撓性部材であり、長手方向がX軸方向に沿って整列し、同一のXY平面内に配置されている。第1ビーム13の−X方向の一端側及び第2ビーム23の+X方向の一端側がそれぞれ固定部材PKに対して固定されていて、第1ビーム13及び第2ビーム23において、互いに対向する先端部分は、自由端とされている。すなわち、第1ビーム13及び第2ビーム23は所謂片持ち梁構造を有する。
第1ビーム13には第1信号線14が取り付けられていると共に、第2ビーム23には第2信号線24が取り付けられている。第1信号線14及び第2信号線24は、それぞれ第1ビーム13及び第2ビーム23の延在方向(X軸方向)に沿って配置されている。また、第1ビーム13における自由端側の端部には接触端子15が取り付けられる。接触端子15は、第1信号線14と接続している。接触端子15は、第1ビーム13から接続する本体部15a(接触端子本体)と、本体部15aから突出する接点部15bとを含んで構成される。接点部15bは、本体部15aにおいて、第2信号線24と対向する位置に設けられる。接触端子15は導体により構成されて、第1駆動素子11及び第2駆動素子21が駆動していない状態では、本体部15aにおいて第1信号線14に対して接続する側の端部とは逆側の端部に設けられ、第2信号線24側へ突出する接点部15bが第2信号線24に対して離間した状態に配置される。なお、接触端子15の接点部15bは、接触端子15の本体部15aと同一の材料であってもよいし、本体部15aとは別の材料であってもよい。
第1駆動素子11は、第1ビーム13と固着しているため、第1駆動素子11の変形の通りに、第1ビーム13は変形する。また、第2駆動素子21は、第2ビーム23と固着しているため、第2駆動素子21の変形の通りに、第2ビーム23は変形する。
第1駆動素子11に対して電圧を印加することによって第1駆動素子11と連動して変形すると、第1ビーム13が変形し、接点部15bが下方へ移動する。同様に、第2駆動素子21に対して電圧を印加することによって第2駆動素子21と連動して変形すると、第2ビーム23が変形する。この結果、接点部15bが第2ビーム上の第2信号線24と接触する。これにより、接触端子15を介して第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続される。
なお、接触端子15による第1信号線14と第2信号線24との間の接続及び切断の切り替えができる構成であれば、第1駆動部SP1及び第2駆動部SP2の構成は特に限定されない。例えば、第1駆動部SP1及び第2駆動部SP2の一方は駆動回路を備えず、駆動素子の圧電駆動によってビームが移動しない(すなわち、固定部材PKに対して固定される)構成であってもよい。この場合であっても、一方側のビームの変形によって、第1信号線14、第2信号線24、及び接触端子15の位置関係を変更することによって、接触端子15による第1信号線14と第2信号線24との間の接続及び切断の切り替えを実現することができる。
第1ビーム13及び第2ビーム23の材料について、補足説明する。
第1ビーム13及び第2ビーム23の材料は特に限定はされないが、歪応力曲線において線形性を示す材料、すなわち弾性を有する材料が好ましい。例えば、Fe−Ni−Cr合金、Cu−Sn−P合金、単結晶Si等を適宜用いることができる。なかでも単結晶Siは、歪応力曲線において広い線形領域を有するため、特に好適に用いることができる。第1ビーム13及び第2ビーム23の材質は、上述のように、可撓性を有する材料から適宜選択することができるが、上述の材料の他に、SiNx(窒化シリコン)、Al2O3(アルミナ)、TiNx(窒化チタン)、SiO2(酸化ケイ素)、AlN(窒化アルミ)、多結晶Si、アモルファスシリコン、ダイアモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等を用いることができる。
第1ビーム13及び第2ビーム23の寸法について説明する。
第1ビーム13のX軸方向の寸法は250μm(50μm〜500μm)、Y軸方向の寸法は250μm(50μm〜500μm)、Z軸方向の寸法は3μm(0.5〜5μm)である。なお、括弧内は、好適範囲を示している。この場合、第1ビーム13の形態的なバランスが、小型化された圧電型MEMSスイッチに要求されるビームの微小変位(サブミクロンから数ミクロン)を制御しやすいものとなるという効果がある。また、第1ビーム13のXY平面内の形状は、偏向可能な可動領域(固定部材PKに固定された部分よりも先端側の領域)に関しては、概ね長方形であるが、この可動領域の形状としては、例えば、半円形、フォーク状形状、三角形が考えられる。
なお、上記のMEMSスイッチ100は、例えば、図4に示す電子機器に適用することができる。
図4は、本実施形態に係るMEMSスイッチが適用される電子機器の一例の概略構成図である。
図4に示す電子機器200は、無線通信を行う電子機器であり、ハウジングHに収容された複数のMEMSスイッチ100と、複数のMEMSスイッチ100に対してそれぞれ直列に接続されたフィルタ102と、アンテナ103と、スイッチ104と、処理回路105と、入力装置106と、ディスプレイ107と、制御回路CONTと、を含んで構成される。
アンテナ103からは、変調された高周波信号(RF信号)が入力される。電子機器200では、制御回路CONTからの制御によって複数のMEMSスイッチ100におけるON/OFFが切り替えられる。例えば、アンテナから供給される信号を特定のフィルタ102に接続し、複数の周波数帯域の信号から、単一の周波数帯域の信号を選択することができる。アンテナ103により受信された入力信号は、必要に応じて、アンプで増幅された後、ON状態が選択されたMEMSスイッチ100、及び、当該MEMSスイッチ100に接続されたフィルタ102を通り、スイッチ104を経て処理回路105に入力し、処理回路105において入力信号に係る処理が行われる。それぞれのフィルタ102は、通過帯域の異なる周波数フィルタであり、選択された周波数の信号が、処理回路105に入力されることとなる。
処理回路105は、変調されていた入力信号を復調し、復調された信号から、文字又は画像情報を抽出し、制御回路CONTは、処理回路105から得られた文字又は画像情報をディスプレイ107上に表示することができる。なお、アンテナ103への入力信号は、映像信号又は音声信号とすることもできる。
また、入力装置106からユーザにより入力される情報が、制御回路CONTに対して送られて制御回路CONTによる複数のMEMSスイッチ100の制御に反映されると共に、処理回路105による処理の結果等が制御回路CONTを介して、ディスプレイ107に対して出力されて、ユーザに通知される。なお、電子機器は、携帯電子機器とすることができる。
以下、本実施形態に係るMEMSスイッチのより具体的な構成例について説明する。
(第1構成例)
図5は、第1構成例に係るMEMSスイッチを示す平面図であり、図6は、図5のVI−VI線に沿ったMEMSスイッチの端面図であり、図7(A)は、図5のVIIA−VIIA線に沿ったMEMSスイッチの端面図であり、図7(B)は、図5のVIIB−VIIB線に沿ったMEMSスイッチの端面図である。これらの図は、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に切断された状態(OFF状態)にあるMEMSスイッチの構成を示している。本構成例のMEMSスイッチ100は、駆動素子として圧電駆動素子を用いた圧電型MEMSスイッチである。
図5〜図7に示すように、本構成例のMEMSスイッチ100は、基板3と、第1の一対の駆動素子11x、11yと、第1ビーム13と、第1信号線14と、信号線用の接触端子15と、第1の一対のグラウンド(GND)16a、16bと、第2ビーム23と、第2の一対の駆動素子21x、21yと、第2信号線24と、第2の一対のグラウンド(GND)26a、26bと、を備える。基板3は、固定部材PK(図1参照)の一部又は全部に対応する。第1の一対の駆動素子11x、11yは、第1駆動素子11(図1参照)に対応し、第2の一対の駆動素子21x、21yは、第2駆動素子21(図1参照)に対応する。第1の一対のGND16a、16bは、第1GND16(図1参照)に対応し、第2の一対のGND26a、26bは、第2GND26(図1参照)に対応する。
第1ビーム13及び第2ビーム23は、片持ち梁構造を有するように、一端部が基板3に片持ち支持されている。具体的には、第1ビーム13は、端部13bと離間部13fとを有する。端部13bは、基板3の−X方向の端部3e上に固定されている。離間部13fは、端部13bに固定されていると共に、基板3の主面3mと+Z方向に離間している。これにより、第1ビーム13の+X方向の先端部は自由端となっている。主面3mは、XY平面に沿って(例えば平行に)延びる面である。同様に、第2ビーム23は、端部23bと離間部23fとを有する。端部23bは、基板3の+X方向の端部3e上に固定されている。離間部23fは、端部23bに固定されていると共に、基板3の主面3mと+Z方向に離間している。これにより、第2ビーム23の−X方向の先端部は自由端となっている。OFF状態においては、第1ビーム13の先端部と第2ビーム23の先端部はX軸方向に沿って離間して対向するため、第1ビーム13及び第2ビーム23に設けられた第1信号線14及び第2信号線24も、X軸方向に沿って離間して対向する。
第1の一対のGND16a、16bは、第1ビーム13の離間部13f上に設けられており、第2の一対のGND26a、26bは、第2ビーム23の離間部23f上に設けられている。平面視で(即ち、+Z方向から−Z方向に向かって見て)、第1の一対のGND16a、16bは、第1信号線14とY軸方向に沿って離間すると共に、当該第1信号線14をY軸方向に沿って挟むように設けられており、第1信号線14に沿って延びている。同様に、平面視で、第2の一対のGND26a、26bは、第2信号線24とY軸方向に沿って離間すると共に、当該第2信号線24をY軸方向に沿って挟むように設けられており、第2信号線24に沿って延びている。
第1の一対の駆動素子11x、11yは、第1ビーム13の離間部13f内に設けられており、第2の一対の駆動素子21x、21yは、第2ビーム23の離間部23f内に設けられている。駆動素子11x、駆動素子11y、駆動素子21x、及び駆動素子21yは、それぞれGND16a、GND16b、GND26a、及び、GND26bに沿って延びている。平面視で、駆動素子11xの全体、駆動素子11yの全体、駆動素子21xの全体、及び、駆動素子21yの全体が、GND16a、GND16b、GND26a、及び、GND26bにそれぞれ重複している。また、平面視で、駆動素子11x及び駆動素子11yは第1信号線14と重複しておらず、駆動素子21x及び駆動素子21yは第2信号線24と重複していない。
駆動素子11xとGND16aとの間、駆動素子11yとGND16bとの間、駆動素子21xとGND26aとの間、及び、駆動素子21yとGND26bとの間には、絶縁材料が介在していてもよい。即ち、Z方向に沿って、駆動素子11x、絶縁材料、及び、GND16aが順に積層され、駆動素子11y、絶縁材料、及び、GND16bが順に積層され、駆動素子21x、絶縁材料、及び、GND26aが順に積層され、駆動素子21y、絶縁材料、及び、GND26bが順に積層されている構造とすることができる。本構成例においては、当該絶縁材料は、離間部13fを構成する材料の一部からなる絶縁層である場合を例示するが、当該絶縁材料は、離間部13fを構成する材料とは異なる材料からなる絶縁層であってもよい。あるいは当該絶縁材料に代えて高抵抗材料を用いてもよい。
第1信号線14と第1の一対のGND16a、16bは、第1ビーム13の離間部13fにおいて、ほぼ同一のZ軸方向の高さ位置に設けられている。これにより、第1信号線14は第1の一対のGND16a、16bによってほぼ同一面内において挟まれるため、第1の一対のGND16a、16bがコプレナ線路としてインピーダンスを設定する機能を安定化させることができる。同様に、第2信号線24と第2の一対のGND26a、26bは、第2ビーム23の離間部23fにおいて、ほぼ同一のZ軸方向の高さ位置に設けられている。これにより、第2信号線24は第2の一対のGND26a、26bによってほぼ同一面内において挟まれるため、第2の一対のGND26a、26bがコプレナ線路としてインピーダンスを設定する機能を安定化させることができる。駆動素子11xと駆動素子11yは、第1ビーム13の離間部13f内において、ほぼ同一のZ軸方向の高さ位置に設けられている。駆動素子21xと駆動素子21yは、第2ビーム23の離間部23f内において、ほぼ同一のZ軸方向の高さ位置に設けられている。
第1の一対のGND16a、16bのそれぞれから第1信号線14までの距離D16a、D16b(本構成例では、これらの要素のY軸方向に沿った離間距離であり、第1の一対のGND16a、16bのそれぞれから第2信号線24までのY軸方向に沿った離間距離と略等しい)は、第1信号線14から第1の一対の駆動素子11x、11yのそれぞれまでの距離T16a、T16b(本構成例では、これらの要素のY軸方向に沿った離間距離であり、第2信号線24から第1の一対の駆動素子11x、11yのそれぞれまでのY軸方向に沿った離間距離と略等しい)よりも短いことが好ましい。第1信号線14と、第1の一対の駆動素子11x、11yを駆動する電極である下部電極11a及び上部電極11cとが近接している場合、これらの要素が電気的にカップリングして特性インピーダンスが所定の値からずれ易くなり、これにより第1信号線14を通過する高周波信号の伝送損失が増加してしまう。そのため、上記のような構成とすることにより、第1の一対のGND16a、16bのそれぞれは、第1の一対の駆動素子11x、11yよりも第1信号線14に近くなるため、上述のような理由に基づく伝送損失の増加を抑制することができる。
同様の理由に基づき、第2の一対のGND26a、26bのそれぞれから第2信号線24までの距離D26a、D26b(本構成例では、これらの要素のY軸方向に沿った離間距離)は、第2信号線24から第2の一対の駆動素子21x、21yのそれぞれまでの距離T26a、T26b(本構成例では、これらの要素のY軸方向に沿った離間距離)よりも短いことが好ましい。
図8(A)及び図8(B)は、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に接続された状態(ON状態)にあるMEMSスイッチの端面図であり、それぞれ図6及び図7(A)に対応する端面を示している。図8(A)及び図8(B)に示されるように、MEMSスイッチ100をOFF状態からON状態に変化させる際には、駆動素子11x及び駆動素子11yを変形させることによって、第1ビーム13を撓ませるように変形させ、接触端子15の接点部15bが第2信号線24に接触するように第1ビーム13の先端部を−Z方向に移動させる。ON状態から再びOFF状態に変化させる際には、変形させた駆動素子11x及び駆動素子11yを元の形状に戻すことによって、接触端子15の接点部15bを第2信号線24から離間させる。このようにして、接触端子15によってMEMSスイッチ100のOFF状態とON状態とを可逆的に切り替える。
上述のような本構成例に係るMEMSスイッチ100においては、第1信号線14と第1の一対のGND16a、16bは、共に第1ビーム13の離間部13fに設けられている(図5〜図7参照)。そのため、平面視で第1の一対のGND16a、16bと重複する第1の一対の駆動素子11x、11yが膜応力や熱応力に起因して変形しても、第1信号線14と第1の一対のGND16a、16bとの間の相対的な位置関係は殆ど又は全く変化しない。これにより、本構成例に係るMEMSスイッチ100によれば、膜応力や熱応力に起因した可撓性部材の変形によってもたらされる第1信号線の特性インピーダンスの変化及び高周波信号の伝送性能の変化を抑制することができる。
さらに、上述のような本構成例に係るMEMSスイッチ100においては、平面視で、第1信号線14は、第1ビーム13の離間部13fにおいて第1の一対の駆動素子11x、11yと重複していない(図5参照)。平面視で第1信号線14と第1の一対の駆動素子11x、11yとが重複していると、第1信号線14の下に、浮遊電位となっていない電位を有する一対の駆動素子11x、11yの電極部(上部電極11c及び下部電極11a、図7(A)参照)が存在することになる。そのような電極部が存在すると、第1信号線14を通過する高周波信号の伝送損失が増加してしまう。そのため、上記のような構成に基づき、一対の駆動素子11x、11yの電極部に起因する伝送損失の増加を抑制することができる。
(第2構成例)
続いて、第2構成例に係るMEMSスイッチについて説明する。図9は、第2構成例に係るMEMSスイッチ100xを示す平面図であり、図10(A)は、図9のXA−XA線に沿ったMEMSスイッチの端面図であり、図10(B)は、図9のXB−XB線に沿ったMEMSスイッチの端面図である。これらの図は、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に切断された状態(OFF状態)にあるMEMSスイッチの構成を示している。本構成例のMEMSスイッチ100xは、駆動素子として圧電駆動素子を用いた圧電型MEMSスイッチ又は駆動素子として静電駆動素子を用いた静電型MEMSスイッチである。
図9及び図10に示すように、本構成例のMEMSスイッチは、主として、第1ビーム13が一対のグラウンド用の接触端子31、32をさらに備える点において第1構成例のMEMSスイッチと異なる。
接触端子31は、第1ビーム13の自由端側の端部(離間部13fの+X軸側の端部)に設けられ、GND16aと接続している。接触端子31は、第1ビーム13から接続する本体部31aと、本体部31aから突出する接点部31bとを含んで構成される。接点部31bは、本体部31aにおいて、GND26aと対向する位置に設けられる。接触端子31はAu等の導体により構成されて、OFF状態では、本体部31aにおいてGND16aに対して接続する側の端部とは逆側の端部に設けられ、GND26a側へ突出する接点部31bがGND26aに対して離間した状態に配置される。なお、接触端子31の接点部31bは、接触端子31の本体部31aと同一の材料であってもよいし、本体部31aとは別の材料であってもよい。GND16aとGND26aとの間は、接触端子31によって接続及び切断が切り替えられる。
接触端子32は、接触端子31と同様の構成を有する。即ち、接触端子32は、第1ビーム13の自由端側の端部(離間部13fの+X軸側の端部)に設けられ、GND16bと接続している。接触端子32は、第1ビーム13から接続する本体部32aと、本体部32aから突出する接点部32bとを含んで構成される。接点部32bは、本体部32aにおいて、GND26bと対向する位置に設けられる。接触端子32はAu等の導体により構成されて、OFF状態では、本体部32aにおいてGND16bに対して接続する側の端部とは逆側の端部に設けられ、GND26b側へ突出する接点部32bがGND26bに対して離間した状態に配置される。なお、接触端子32の接点部32bは、接触端子32の本体部32aと同一の材料であってもよいし、本体部32aとは別の材料であってもよい。GND16bとGND26bとの間は、接触端子32によって接続及び切断が切り替えられる。
接触端子31及び接触端子32は、接触端子15と同様に第1ビーム13の離間部13fに設けられているため、第1の一対の駆動素子11x、11yによる第1ビーム13の変形によって、接触端子31及び接触端子32は、接触端子15と同様に移動する。そのため、接触端子15が第1の一対の駆動素子11x、11yによる第1ビーム13の変形によって第1信号線14と第2信号線24との間の電気的な接続と切断とを切り替える際、第1の一対の駆動素子11x、11yによる第1ビーム13の当該変形によって、接触端子31は、GND16aとGND26aとの間の電気的な接続と切断とを切り替え、接触端子32は、GND16bとGND26bとの間の電気的な接続と切断とを切り替える。
OFF状態において、接触端子31の接点部31bとGND26aとのZ軸方向に沿った離間距離及び接触端子32の接点部32bとGND26bとのZ軸方向に沿った離間距離は、それぞれ接触端子15の接点部15bと第2信号線24とのZ軸方向に沿った離間距離よりも短くなっていてもよい。
図11(A)は、第1信号線14と第2信号線24との間が電気的に切断された状態(OFF状態)から接続された状態(ON状態)に移行する途中の段階におけるMEMSスイッチの端面図であり、図11(B)は、ON状態におけるMEMSスイッチの端面図であり、それぞれ図10(B)に対応する端面を示している。
図11(A)に示すように、OFF状態からON状態に移行する途中の段階において、接触端子31の接点部31bはGND26aと接触し、接触端子32の接点部32bはGND26bと接触するのに対して、接触端子15の本体部15aは第2信号線24と接触しない。その後、図11(B)に示すように、ON状態においては、接触端子15の接点部15bも第2信号線24に接触する。
そのため、第1の一対の駆動素子11x、11yによる第1ビーム13の変形によって、一対の接触端子31、32がGND16aとGND26aとの間、及び、GND16bとGND26bとの間をそれぞれ電気的な切断状態から接続状態に切り替えるタイミングは、第1の一対の駆動素子11x、11yによる第1ビーム13の当該変形によって、接触端子15が第1信号線14と第2信号線24との間を電気的な切断状態から接続状態に切り替えるタイミングよりも早くなる。
上述のように、本構成例のMEMSスイッチ100xにおいては、第1の一対の駆動素子11x、11y及び第2の一対の駆動素子21x、21yとして、静電型の駆動素子を用いることもできる。その場合、第1の一対の駆動素子11x、11yは、例えばそれぞれ2つの離間した電極層を有し、これらの電極層間に電圧を印加することによりこれらの電極層間に静電力を生じさせることができる。この静電力を発生させたり消滅させたりすることにより、上述のような圧電型の駆動素子の場合と同様の態様で、第1ビーム13を変形させることができる。同様に、第2の一対の駆動素子21x、21yは、例えばそれぞれ2つの離間した電極層を有し、これらの電極層間に電圧を印加することによりこれらの電極層間に静電力を生じさせることができる。この静電力を発生させたり消滅させたりすることにより、上述のような圧電型の駆動素子の場合と同様の態様で、第2ビーム23を変形させることができる。
上述のような本構成例に係るMEMSスイッチ100xによれば、第1構成例に係るMEMSスイッチ100と同様の理由に基づき、膜応力や熱応力に起因した可撓性部材の変形によってもたらされる第1信号線の特性インピーダンスの変化及び高周波信号の伝送性能の変化を抑制することができる。
さらに、上述のような本構成例に係るMEMSスイッチ100xは、上述のような構成の一対の接触端子31、32を有する(図9〜図11参照)。そのため、第1信号線14と第2信号線24とが接触端子15によって接続されると、それらの接続点の近傍において、第1の一対のGND16a、16bと、第2の一対のGND26a、26bとが一対の接触端子31、32によって電気的に接続され、同電位となる(図11参照)。そのため、第1信号線14と第2信号線24との接続点の近傍においても、第1の一対のGND16a、16b及び第2の一対のGND26a、26bの特性インピーダンスを設定する機能を安定化させることができる。そのため、安定したコプレナ線路を構成することができる。
さらに、上述のような本構成例に係るMEMSスイッチ100xによれば、第1信号線14と第2信号線24とが電気的な切断状態から接続状態に切り替わる際、第1信号線14と第2信号線24とが電気的に接続されるよりも前に、第1の一対のGND16a、16bと第2の一対のGND26a、26bとが電気的に接続される(図11参照)。これにより、第1の一対のGND16a、16bと第2の一対のGND26a、26bの特性インピーダンスを設定する機能を安定化させた後に、第1信号線14と第2信号線24とを電気的に接続することができる。逆に、接続状態から切断状態に切り替わる際は、第1信号線14と第2信号線24とが先に電気的に切断される。そのため、第1信号線14と第2信号線24との接続が成立した時点において、既に所定の特性インピーダンスを確実に確保することができる。
本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。
例えば、上記第1構成例のMEMSスイッチ100においては、平面視で、駆動素子11xの全体、駆動素子11yの全体、駆動素子21xの全体、及び、駆動素子21yの全体が、GND16a、GND16b、GND26a、及び、GND26bにそれぞれ重複しているが(図5参照)、駆動素子11xの一部、駆動素子11yの一部、駆動素子21xの一部、及び、駆動素子21yの一部が、GND16a、GND16b、GND26a、及び、GND26bにそれぞれ重複していてもよい。
また、上記第1構成例のMEMSスイッチ100においては、第1ビーム13の離間部13fには、第1の一対の駆動素子11x、11yが設けられているが(図5参照)、一つの駆動素子のみが離間部13fに設けられており、当該一つの駆動素子の一部が、平面視でGND16a及びGND16bの少なくとも一部と重複していてもよい。この場合、当該当該一つの駆動素子の一部が、平面視で、第1信号線14と重複していてもよく、平面視で離間部13fのほぼ全体と重複していてもよい。
同様に、上記第1構成例のMEMSスイッチ100においては、第2ビーム23の離間部23fには、第2の一対の駆動素子21x、21yが設けられているが(図5参照)、一つの駆動素子のみが離間部23fに設けられており、当該一つの駆動素子の一部が、平面視でGND26a及びGND26bの少なくとも一部と重複していてもよい。この場合、当該当該一つの駆動素子の一部が、平面視で、第2信号線24と重複していてもよく、平面視で離間部23fのほぼ全体と重複していてもよい。
また、上記第1構成例のMEMSスイッチ100においては、第1信号線14と第1の一対のGND16a、16bは、第1ビーム13の離間部13fにおいて、ほぼ同一のZ軸方向の高さ位置に設けられているが(図7(A)参照)、第1の一対のGND16a、16bは、第1ビーム13の離間部13fにおいて、第1ビーム13の離間部13fにおいて、第1信号線14とは異なる高さ位置に設けられていてもよい。
同様に、上記第1構成例のMEMSスイッチ100においては、第2信号線24と第2の一対のGND26a、26bは、第2ビーム23の離間部23fにおいて、ほぼ同一のZ軸方向の高さ位置に設けられているが(図7(B)参照)、第2の一対のGND26a、26bは、第2ビーム23の離間部23fにおいて、第2信号線24とは異なる高さ位置に設けられていてもよい。
また、上記第2構成例のMEMSスイッチ100xにおいては、第1信号線14と第2信号線24とが電気的な切断状態から接続状態に切り替わる際、第1信号線14と第2信号線24とが電気的に接続されるよりも前に、第1の一対のGND16a、16bと第2の一対のGND26a、26bとが電気的に接続されるように構成されているが(図11参照)、第1信号線14と第2信号線24とが電気的に接続されるのとほぼ同時に、第1の一対のGND16a、16bと第2の一対のGND26a、26bとが電気的に接続されるように構成されていてもよい。