JP6693154B2 - 超音波トランスデューサー、超音波プローブ、超音波装置、超音波トランスデューサーの製造方法、及び振動装置 - Google Patents
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Description
このような超音波トランスデューサーにおける超音波の送信や受信の効率は、振動膜の開口部を閉塞する領域(振動領域)の膜厚方向のひずみに依存する。超音波の送信や受信の効率を向上させるためには、振動領域のひずみを大きくする必要があり、この場合、超音波トランスデューサーを膜厚方向から見た場合の振動領域の2次元形状を低アスペクト比にすればよい。
このような構成では、振動膜における振動素子が設けられた位置(振動領域)が振動された場合に、その振動の振動領域外への伝達が抑制部により抑制され、すなわち、開口部が大きい場合でも、抑制部により振動領域のアスペクト比を低アスペクト比にでき、振動領域内の振動膜の膜厚方向のひずみが大きくなり、振動素子による駆動処理時(超音波送信時)には、高出力(大音圧)の超音波を出力でき、振動素子による検出処理時(超音波受信時)には、受信感度を向上させることができる。
また、1つの開口部に対して複数の振動素子が設けられる構成であるため、例えば1つの開口部に対して1つの振動素子を設ける構成に比べ、開口部のサイズを大きくできる。したがって、開口部の形成が容易であり、優れた量産性の超音波トランスデューサーを得ることができる。
本適用例では、振動膜に振動素子に接続された接続配線が設けられ、導電性フィラーを含む抑制部により接続されている。このような構成では、振動素子に近い位置で、抑制部から振動素子に対する信号の入出力を行うことができる。つまり、従来、振動素子の接続配線は、振動膜の外周部に引き出され、例えばFPC(Flexible printed circuits)やワイヤボンディング等によって外部回路の端子に接続されていた。この場合、接続配線が長くなり、電気抵抗も増大するため、振動素子に対して入出力される信号の減衰(電圧降下)が発生してしまう。これに対して、本適用例では、上記のように、振動素子に近い位置に配置された抑制部から信号の入出力を行えるので、電圧降下を抑制でき、超音波トランスデューサーの駆動効率を向上させることができる。つまり、超音波トランスデューサーから超音波を送信する際には、所望の出力値の超音波を好適に出力でき、超音波トランスデューサーにおいて超音波を受信する場合では、強い信号値の受信信号を取得でき、受信感度を向上させることができる。
本適用例では、支持基板の振動膜に対向する面に設けられた配線部に抑制部が接続される。よって、上述のように、振動素子に接続された接続配線と、配線部とを、抑制部で接合することで、これらを電気的に接続することができる。
本適用例では、さらに、支持基板に貫通電極が設けられており、当該貫通電極は、配線部に接続されている。したがって、支持基板の振動膜とは反対側の面に露出した貫通電極を回路基板に接続することで、FPC等を用いることなく、容易に振動素子を回路基板に電気的に接続することができる。
このような製造方法では、振動膜に樹脂材料からなる抑制部を形成するため、フォトリソグラフィ等によって、振動素子間に高い位置精度で抑制部を形成でき、振動膜の所望の位置に振動領域を形成できる。したがって、各振動領域と振動素子との位置がずれることによる、超音波の送信および受信の効率低下を抑制できる。また、接合工程で加熱接合により抑制部を支持基板に接合するため、接着剤等を用いる必要がなく、製造効率性を向上できる。また、開口部形成工程では、複数の振動素子に跨る開口部を形成すればよいので、開口部のサイズを比較的大きくでき、製造効率性の更なる向上を図れる。
本適用例では、上述したように、振動膜の振動領域に沿って樹脂材料により構成された抑制部が設けられているので、振動領域以外への振動の伝達を抑制でき、高効率で超音波の送信や受信を行うことができる。また、振動膜に対して樹脂材料の抑制部を、例えばフォトリソグラフィ等によって、容易にかつ高精度に形成することができ、例えば加熱圧着等により抑制部を振動膜や支持基板に容易に接合することができる。よって、超音波トランスデューサーの製造効率性の向上を図れる。
以下、第一実施形態について説明する。
図1は、第一実施形態の超音波測定装置1の概略構成を示す図である。図2は、本実施形態の超音波測定装置1の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の超音波測定装置1(超音波装置)は、図1に示すように、超音波プローブ2と、超音波プローブ2にケーブル3を介して電気的に接続された制御装置10(制御部)と、を備えている。
この超音波測定装置1は、超音波プローブ2を生体(例えば人体)の表面に当接させ、超音波プローブ2から対象物(例えば生体等)の内部に超音波を送出し、生体内の器官にて反射された超音波を超音波プローブ2にて受信し、その受信信号に基づいて、例えば生体内の内部断層画像を取得したり、生体内の器官の状態(例えば血流等)を測定したりする。
超音波プローブ2は、筐体21(図1参照)と、筐体21内部に設けられた超音波センサー22と、超音波センサー22を制御するためのドライバ回路等が設けられる回路基板23と、を備えている。
なお、本実施形態では、ケーブル3を用いて、超音波プローブ2と制御装置10とが接続される構成例を示すが、これに限定されず、例えば超音波プローブ2と制御装置10とが無線通信により接続されていてもよく、超音波プローブ2内に制御装置10の各種構成が設けられていてもよい。
図3は、超音波センサー22における基部41を、封止板42側から見た平面図である。図4は、図3の一部を拡大した拡大平面図である。図5は、超音波センサー22の断面図であり、(A)は図4のA−A線に対応した断面図、(B)は図4のB−B線に対応した断面図、(C)は図4のC−C線に対応した断面図である。
超音波センサー22(超音波トランスデューサー)は、図4に示すように、基部41と、封止板42(支持基板)と、抑制部43と、音響整合層44と、音響レンズ45と、を備える。
基部41は、図5に示すように、基板411と、基板411に積層された振動膜412と、振動膜412に積層された圧電素子413(振動素子)と、を備えている。
ここで、図3に示すように、基部41を厚み方向から見た平面視において、基部41の中心にアレイ領域Ar1が設けられ、当該アレイ領域Ar1内に、複数の圧電素子413がアレイ状に配置される。
基板411は、例えばシリコン(Si)等の半導体基板である。この基板411のアレイ領域Ar1内には、上述したように開口部411Aが設けられ、基板411は、開口部411Aを取り囲む隔壁411Bを備える。この開口部411Aは、図3から図5に示すように、振動膜412の膜厚方向(Z方向)から見た平面視において、第1方向(X方向)に沿う長さ寸法に対して第2方向(Y方向)に沿う長さ寸法がかなり大きい高アスペクト比、例えば、アスペクト比1:70の形状を有する。一方、圧電素子413において、下部電極414、圧電体層415、及び上部電極416が積層される能動部413Aは、X方向に沿う長さ寸法がY方向の長さ寸法に近い低アスペクト比、例えば、アスペクト比が1に近い形状を有する。なお、能動部413Aの膜厚方向のひずみを大きくすることを考慮すると、理論的には能動部413Aのアスペクト比は、1であることが最も理想的であるといえるが、1よりも大きな値であってもよい。能動部413Aは、1つの開口部411Aに対して、例えばY方向に沿って複数配置されている。
振動膜412は、例えば酸化シリコン膜(SiO2)及び酸化ジルコニウム(ZrO2)からなる積層体である。振動膜412は、基板411の隔壁411Bによって支持されている。振動膜412は上記のように、基板411に設けられた開口部411Aを閉塞する。
振動膜412の厚み寸法は、基板411に対して十分小さい厚み寸法となる。また、本実施形態では、開口部411Aを閉塞する振動膜412のうちの開口部411Aと重なる領域内で、隔壁411B及び後述する抑制部43により囲われる個々の領域(振動領域Ar2)がY方向に沿って複数配置される構成となる。本実施形態では、これらの各振動領域Ar2のそれぞれに1つの能動部413Aが配置される。そして、能動部413Aの駆動により振動領域Ar2が振動することで超音波が送信され、振動領域Ar2が振動することで、能動部413Aの圧電体層415に電位差が生じることで検出信号が出力されて受信した超音波を検出することが可能となる。
圧電素子413は、振動膜412上に設けられ、下部電極414、圧電体層415及び上部電極416により構成される。上述したように、下部電極414、圧電体層415及び上部電極416が、膜厚方向(Z方向)において重なっている部分が、圧電素子413の能動部413Aとして機能する。
また、振動膜412や圧電素子413上には、例えばアルミナなどからなる絶縁層417(保護層)が形成される。
そして、Y方向に並ぶ複数(例えば図3では3つ)の下部電極414の端部は、互いに結線され、例えば基板411の±Y側の外周端まで引き出され、その一部(例えば先端)に下部電極端子414Pが設けられる。なお、詳細は後述するが、本実施形態では、互いに結線された下部電極414に接続される圧電素子413により、1ch(チャネル)のブロックBが構成され、当該ブロックBがX方向に複数個並んで配置される構成となる。
そして、共通配線416Cは、例えば図3に示すように、隣り合うブロックBの間にY方向に沿って形成され、当該共通配線416Cが基板411の±Y側の外周端まで引き出されている。そして、共通配線416Cの一部(例えば先端)に上部電極端子416Pが設けられる。なお、本実施形態では、共通配線416CがブロックB間に配置される例を示すが、例えば、上部電極416の端部同士が結線される構成などとしてもよい。
そして、圧電体層415は、振動膜412の膜厚方向から見た平面視で、下部電極414と上部電極416との交差位置に対応してマトリックス状に配置される。
圧電体層415は、代表的には、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のペロブスカイト構造(ABO3型構造)の複合酸化物を用いることができる。これによれば、圧電素子413の変位量を確保しやすくなる。
このような非鉛系の圧電材料としては、例えば、鉄酸ビスマス(BFO;BiFeO3)を含むBFO系材料が挙げられる。BFOでは、AサイトにBiが位置し、Bサイトに鉄(Fe)が位置している。BFOに、他の元素が添加されていてもよい。例えば、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN;KNaNbO3)に、鉄酸マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、ランタン(La)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、コバルト(Co)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、クロム(Cr)、カリウム(K)、リチウム(Li)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ユウロビウム(Eu)から選択される少なくとも1種の元素が添加されていてもよい。
また、非鉛系圧電材料の他の例として、ニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)を含むKNN系材料が挙げられる。KNNに、他の元素が添加されていてもよい。たとえば、KNNに、マンガン(Mn)、リチウム(Li)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、ビスマス(Bi)、タンタル(Ta)、アンチモン(Sb)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、及びユーロビウム(Eu)から選択される少なくとも1種の元素が添加されていてもよい。
封止板42は、図5に示すように、基部41の振動膜412に対向して配置される。
封止板42は、振動膜412に対向する平坦な対向面421を有し、この対向面421が振動膜412の振動を抑制する抑制部43により、基部41の振動膜412に接合されている。封止板42が、抑制部43により基部41に接合されることによって、圧電素子413の周囲の空間Sが封止される。
なお、封止板42の材質や厚みは、超音波センサー22の周波数特性に影響を及ぼすため、超音波センサー22にて送受信する超音波の中心周波数に基づいて設定することが好ましい。
この抑制部43は、図3から図5に示すように、Y方向に並ぶ各圧電素子413の能動部413Aの間で、隣り合う能動部413Aの中点位置に配置され、X方向に沿って延びて形成されている。
つまり、振動膜412の各振動領域Ar2は、X方向において隣り合う振動領域Ar2との間に隔壁411Bが存在する。したがって、図5(A)(B)に示すように、各振動領域Ar2のY方向に平行な辺(各能動部413AのY方向に平行な辺の両外側の部分)は、隔壁411Bにより固定されている。一方、図5(C)に示すように、Y方向において、隣り合う振動領域Ar2の間には隔壁411Bが存在しない箇所があり、当該箇所に抑制部43が設けられている。そして、各振動領域Ar2のX方向に平行な辺(各能動部413AのX方向に平行な辺の両外側の部分)において、振動膜412は、抑制部43又は基板411の隔壁411Bにより固定されている。
音響整合層44は、図5に示すように、基部41の作動面(封止板42に対向する面とは反対側の面)側に設けられている。具体的には、音響整合層44は、基部41の開口部411A内に充填され、かつ、基板411の作動面側から所定の厚み寸法で形成される。
音響レンズ45は、音響整合層44上に設けられ、図1に示すように、筐体21のセンサー窓21Bから外部に露出する。
これらの音響整合層44や音響レンズ45は、超音波センサー22から送信された超音波を測定対象である生体に効率よく伝搬させ、また、生体内で反射した超音波を効率よく超音波センサー22に伝搬させる。このため、音響整合層44及び音響レンズ45は、超音波センサー22の音響インピーダンスと、生体の音響インピーダンスとの中間の音響インピーダンスに設定されている。
上記のような超音波センサー22では、アレイ領域Ar1に配置される各圧電素子413の上部電極416は互いに結線されるので同電位となる。また、Y方向に沿った圧電素子413を1組の圧電素子群として、X方向に沿った例えば3組の圧電素子群に含まれる圧電素子413の下部電極414は、互いに結線されているため同電位となる。本実施形態では、この3組の圧電素子群を1ch(チャネル)のブロックBとしてX方向に沿って複数のブロックBが配置される構造となる。
また、超音波の受信(検出処理)時には、回路基板23から上部電極端子416Pに対して共通バイアス信号が入力される。そして、対象物からの超音波が超音波センサー22に入力され、振動膜412の各振動領域Ar2が振動駆動すると、下部電極414及び上部電極416の間に電位差が生じる。これにより、各ブロックBに対応した下部電極端子414Pから回路基板23に、圧電素子413のたわみに応じた検出信号が出力される。
圧電素子413のたわみ変形のしやすさは、圧電素子413や振動膜412の構成材料や厚さ、振動領域Ar2の配置位置や大きさによって変わってくるため、用途や使用態様に応じて適宜調節することが可能である。
なお、各材料に固有の共振周波数を利用して、これと圧電素子413に印加する電荷信号の周波数とを一致又は実質的に一致させ、共振を利用して圧電素子413をたわみ変形させるようにしてもよい。
図6(A)は、本実施形態における振動膜の変位プロファイルを示す図であり、(B)は、従来(隔壁のみにより振動領域を形成する個性)の振動膜の変位プロファイルを示す図であり、(C)は、本実施形態において抑制部を設けなかった場合の変位プロファイルを示す図である。
上記のように、本実施形態では、超音波センサー22から超音波を送信する際、及び超音波を受信する際に、振動膜412の各振動領域Ar2がそれぞれ変位する。
本実施形態の振動領域Ar2の変位プロファイルをとると、図6(A)に示すように、振動領域Ar2の中心(能動部413Aの中心)が変位の中心となり、振動領域Ar2内で大きな変位(膜厚方向のひずみ)が生じている。これは図6(B)に示す、アスペクト比が低い開口部を形成した基板を用いた場合(隔壁411Bのみで振動領域Ar2を形成した場合)とほぼ一致する。一方、抑制部43を設けない場合には、図6(C)に示すように、変位の中心が能動部413Aの外側に移動し、能動部413Aの変位(膜厚方向のひずみ)はかなり小さくなる。
回路基板23は、図2に示すように、基部41に設けられた下部電極端子414Pや上部電極端子416Pと接続される基板端子部231を有する。また、回路基板23は、超音波センサー22を駆動させるためのドライバ回路等が設けられている。具体的には、回路基板23は、図2に示すように、選択回路232、送信回路233、受信回路234等を備える。
選択回路232は、制御装置10の制御に基づいて、超音波センサー22と送信回路233とを接続する送信接続、及び超音波センサー22と受信回路234とを接続する受信接続を切り替える。
送信回路233は、制御装置10の制御により送信接続に切り替えられた際に、選択回路232を介して超音波センサー22に超音波を発信させる旨の信号を出力する。
受信回路234は、制御装置10の制御により受信接続に切り替えられた際に、選択回路232を介して超音波センサー22から入力された検出信号を制御装置10に出力する。受信回路234は、例えば低雑音増幅回路、電圧制御アッテネーター、プログラマブルゲインアンプ、ローパスフィルター、A/Dコンバーター等を含んで構成されており、受信信号のデジタル信号への変換、ノイズ成分の除去、所望信号レベルへの増幅等の各信号処理を実施した後、処理後の受信信号を制御装置10に出力する。
制御装置10は、図2に示すように、例えば、操作部11と、表示部12と、記憶部13と、演算部14と、を備えて構成されている。この制御装置10は、例えば、タブレット端末やスマートフォン、パーソナルコンピューター等の端末装置を用いてもよく、超音波プローブ2を操作するための専用端末装置であってもよい。
操作部11は、ユーザーが超音波測定装置1を操作するためのUI(user interface)であり、例えば表示部12上に設けられたタッチパネルや、操作ボタン、キーボード、マウス等により構成することができる。
表示部12は、例えば液晶ディスプレイ等により構成され、画像を表示させる。
記憶部13は、超音波測定装置1を制御するための各種プログラムや各種データを記憶する。
演算部14は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算回路や、メモリー等の記憶回路により構成されている。そして、演算部14は、記憶部13に記憶された各種プログラムを読み込み実行することで、送信回路233に対して送信信号の生成及び出力処理の制御を行い、受信回路234に対して受信信号の周波数設定やゲイン設定などの制御を行う。
次に、上述したような超音波センサー22の製造方法について説明する。
図7は、本実施形態の超音波センサー22の製造における各工程を示すフローチャートである。図8は、各工程での超音波センサー22の概略を示す図である。
超音波センサー22を製造するためには、図7に示すように、基板準備工程S1、素子形成工程S2、抑制部形成工程S3、接合工程S4、及び開口部形成工程S5を実施する。
素子形成工程S2では、まず、振動膜412上に下部電極を形成する電極材料を、例えばスパッタリング等により成膜する。そして、下部電極414上に、レジストを塗布し、フォトリソグラフィ等により、レジストパターンを形成し、下部電極414を例えばエッチング等することで、パターニングする。
その後、下部電極414上に圧電体層415を形成する。圧電体層415は、例えばPZTを溶液法により形成する。例えば、Zr:Ti=52:48の組成比のPZT溶液を振動膜412及び下部電極414上に塗布する塗布処理と、塗布されたPZT溶液を、例えばプレベーグ400℃、RTA焼成700℃の条件にて焼成処理とを複数回実施し、所望厚み寸法の圧電層を得る。そして、形成された圧電層を、エッチング処理(イオンミリング)によりパターニングして、圧電体層415を形成する。
圧電体層415の形成後、上部電極416を形成するための電極材料を振動膜412上に塗布し、下部電極414の際と同様、レジストパターンを形成してエッチング等によりパターニングする。
以上により、図8(B)に示すように、振動膜412上に、下部電極414、圧電体層415、及び上部電極416からなる圧電素子413が形成される。なお、本実施形態では、能動部413Aの厚み寸法が1.3μm程度となる。
抑制部43の形成では、図8(C)のように、例えば光感光性の樹脂材料(フォトレジスト)をスピンコートやスパッタリング等により振動膜412上に塗布する。そして、振動膜412上に、各能動部413A間にX方向に沿ったマスクパターンを形成し、マスク以外の領域をフォトリソグラフィにより除去する。これにより、図8(D)に示すように、樹脂材料により構成された抑制部43が、振動膜412上に形成される。
つまり、封止板42に抑制部43を設け、その先端を振動膜412に接合する場合、抑制部43が圧電素子413の能動部413Aの中間位置に位置するように、アライメント調整を行う必要がある。抑制部43が能動部413Aに接触すると、能動部413Aの駆動効率を低下させるため、超音波送信処理では、超音波の音圧低下が起こり、また、超音波受信処理では、受信感度が低下してしまう。また、抑制部43が能動部413Aに接触していなくても、その位置がずれると、振動領域Ar2の形状やサイズにずれが生じ、所望の周波数の超音波の送受信が困難となり、能動部413Aの駆動効率が低下し、超音波送受信における効率も低下する。
これに対して、本実施形態では、上述のようにフォトリソグラフィにより振動膜412上に抑制部43をパターニングするので、能動部413Aや振動領域Ar2に対して最適な位置に抑制部43を形成できる。つまり、精度の高い超音波センサー22を形成でき、煩雑なアライメント調整が不要となるので、製造効率性を向上させることができる。
この後、基板411の開口部411A内に音響整合層44を充填し、更に、音響レンズ45を接合して、図5等に示すような超音波センサー22が製造される。
本実施形態の超音波測定装置1は、超音波の送受信を行う超音波センサー22が筐体21内に配置された超音波プローブ2と、超音波センサー22を制御する制御装置10と、を備える。超音波センサー22は、開口部411Aを有する基板411と、開口部411Aを閉塞する振動膜412と、振動膜412に設けられた圧電素子413と、振動膜412に対向する対向面421が平坦面であり、振動膜412を支持する封止板42とを備える。そして、圧電素子413(能動部413A)は、平面視において開口部411Aと重なる位置に複数設けられ、隣り合う能動部413Aの間に、振動膜412の振動の伝達を抑制する樹脂材料により構成された抑制部43が設けられている。
また、図6に示すように、各振動領域Ar2の振動の振動領域Ar2外(例えば隣り合う振動領域Ar2)への伝達が抑制部43により抑制され、各振動領域Ar2の能動部413Aが設けられる中心位置における膜厚方向のひずみ量が大きくなる。よって、超音波送信時には、高出力(大音圧)の超音波を出力でき、超音波受信時には、受信感度を向上させることができる(超音波送受信の効率が向上する)。
また、例えば1つの開口部411Aに対して1つの能動部413Aを配置する場合に比べ、開口部411Aのサイズを大きくできるので、開口部411Aの形成が容易であり、超音波センサー22の量産性を向上させることができる。
さらに、このような樹脂材料により構成された抑制部43は、例えばフォトリソグラフィ等によって容易に形成することができ、さらに、加熱接合によって容易に封止板42に接合することができる。このため、超音波センサー22の製造効率性を更に向上させることができ、量産性の更なる向上を図れる。
つまり、封止板側に設けられた突起部を抑制部として振動膜に接合する構成では、振動領域Ar2の中心位置に能動部413Aが位置するように、開口部411Aや能動部413Aに対して高精度に突起部の位置をアライメント調整する必要があり、製造効率性が低下する。また、突起部の位置がずれると、振動領域Ar2を所望位置に形成できず、膜厚方向に対するひずみ量が最大となる振動領域Ar2の中心と、能動部413Aとの位置がずれる。この場合、超音波送受信における効率が低下してしまう。
さらに、接着剤により突起部を接合する必要があるため、振動膜412に接着剤を転写する工程がさらに必要となる。この場合では、転写した接着剤が接合時に圧電素子413側にはみ出して接触するおそれがあり、圧電素子413の駆動を阻害するおそれもある。
次に、第二実施形態について説明する。
上述した第一実施形態では、下部電極414及び上部電極416は、基板411の外周部に設けられた下部電極端子414P及び上部電極端子416Pまで引き延ばされて、当該下部電極端子414P及び上部電極端子416Pで、回路基板23に接続された。これに対して、第二実施形態では、下部電極414及び上部電極416が抑制部を介して回路基板23に接続される点で、上記第一実施形態と相違する。
すなわち、各ブロックBに対応して下部電極414を回路基板23に電気接続する抑制部43Aが設けられており、下部電極414の一部が当該抑制部43Aに接触することで回路基板23に電気接続される。また、上部電極416を回路基板23に電気接続する抑制部43Aが設けられており、上部電極416の一部が当該抑制部43Aに接触することで回路基板23に電気接続される。
また、第1のブロックB1とは異なる位置の第2のブロックB2に含まれる圧電素子413の下部電極414(下部接続配線414B)は、第2の抑制部43A2が積層される部位において、絶縁層417が形成されず下部電極導通部414Cを構成する。そして、下部電極414の下部電極導通部414C上に第2の抑制部43A2が形成されることで、第2のブロックB2の下部電極414と第2の抑制部43A2とが接触して電気接続される。
他のブロックBにおいても同様であり、それぞれのブロックに対応して電気接続される抑制部43Aが存在する。
本実施形態の超音波センサー22では、抑制部43Aは、導電性フィラーを含む樹脂材料により構成されている。そして、抑制部43Aは、隣り合う能動部413A間で、X方向に沿って長手に設けられ、各能動部413Aに接続される下部電極414の下部電極導通部414C、又は上部電極416の上部電極導通部416D上に接続される。
このような構成では、例えば第一実施形態のように、下部電極414や上部電極416を、基板411の外周部の下部電極端子414Pや上部電極端子416Pまで引き出す必要がなく、抑制部43Aを介して回路基板23に電気接続することができる。したがって、配線構成の簡略化を図れるとともに、各能動部413Aに信号を入力する際に、能動部413Aに近い位置に信号を入力できるので、電圧降下の影響を抑制できる。したがって、超音波センサー22の超音波送受信の効率を向上させることができる。
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、及び各実施形態を適宜組み合わせる等によって得られる構成は本発明に含まれるものである。
例えば、Y方向に長手となる開口部411Aを、Y方向に沿ってn個配置し、各開口部411Aと重なる領域にm個の能動部413AがY方向に並んで配置される構成としてもよい。この場合、Y方向に並ぶn×m個の圧電素子413が下部電極414により接続されて1組の圧電素子群を形成する。
さらに、上記実施形態では、開口部411AがY方向に長手となり、当該開口部411A内にY方向に並ぶ複数の能動部413Aが配置される例を示したが、開口部411A内に、Y方向及びX方向に沿ったマトリックス状に配置された能動部413Aが設けられてもよい。この場合、X方向に沿って隣り合う能動部413A間にも抑制部43を配置する。これにより、各能動部413Aのそれぞれに対応した振動領域Ar2を形成することができる。
図11は、一変形例における基板の概略構成を示す図である。
例えば、図11に示すように、平面視において、1つのブロックBのX方向の両端部間に亘って抑制部43A(又は抑制部43)が設けられる構成としてもよい。なお、図11においては、ブロックB単位で、抑制部43を設ける例を示すが、開口部411A単位で抑制部43A(又は抑制部43)を設けてもよい。
また、これらの構成では、隣り合うブロックBとの間で、共通配線416C上に、Y方向に沿って長手となる接合部46を設けてもよい。接合部46としては、例えば、抑制部43A(又は抑制部43)と同じ樹脂材料に構成することができ、抑制部43と同時に形成する。この場合、抑制部43AによりX方向に沿って封止板42と基部41とを接合でき、接合部46によりY方向に沿って封止板42と基部41とを接合できるので、接合強度をより高めることができる。
また、上部電極416に対しては、接合部46を、導電性フィラーを含む樹脂材料により構成し、上部接続配線416Bと共通配線416Cとの各交点位置に上部電極導通部416Dを設ければよい。また、接合部46を、Y方向に並ぶ全ての上部電極416に跨って形成する場合では、共通配線416Cが形成されなくてもよく、導電性を有する接合部46により各上部電極416が接続される。
また、圧電体層を用いず、振動膜412上に設けられた第一電極と、第一電極とエアギャップを介して対向する、第二電極(例えば封止板42に配置)とを備え、静電力により振動膜412を振動させたり、振動膜412の振動を検出したりする振動素子を用いてもよい。
また、超音波センサー22を備えた超音波測定装置1を例示したが、その他の超音波装置に対しても適用できる。例えば、超音波を洗浄対象に対して送出して洗浄する超音波トランスデューサーを備えた超音波洗浄機等に用いることができる。
Claims (8)
- 開口部が形成された基板と、
前記開口部を塞ぐように前記基板に設けられた振動膜と、
前記振動膜を振動駆動させる駆動処理及び前記振動膜の振動を検出する検出処理の少なくともいずれかを実施する素子であって、前記振動膜の厚み方向に沿った平面視において前記振動膜と前記開口部とが重なる位置に複数配置された振動素子と、
前記振動膜に対向して配置されて、前記振動膜を支持し、前記振動膜に対向する面が平坦面である支持基板と、
前記平面視において、隣り合う前記振動素子間に設けられ、前記振動膜及び前記支持基板の双方に接合されて、前記振動膜の振動の伝達を抑制する樹脂材料により構成された抑制部と、を備え、
前記振動膜には、前記振動素子に接続される接続配線が設けられ、
前記抑制部は、導電性フィラーを含み、前記接続配線と接続されている
ことを特徴とする超音波トランスデューサー。 - 請求項1に記載の超音波トランスデューサーにおいて、
前記支持基板は、前記振動膜に対向する面に前記抑制部に接続される配線部を備えている
ことを特徴とする超音波トランスデューサー。 - 請求項2に記載の超音波トランスデューサーにおいて、
前記支持基板は、当該支持基板を厚み方向に貫通し、前記配線部と、前記振動素子を制御するための回路が設けられた回路基板とを接続する貫通電極を備えている
ことを特徴とする超音波トランスデューサー。 - 開口部が形成された基板と、
前記開口部を塞ぐように前記基板に設けられた振動膜と、
前記振動膜を振動駆動させる駆動処理及び前記振動膜の振動を検出する検出処理の少なくともいずれかを実施する素子であって、前記振動膜の厚み方向に沿った平面視において前記振動膜と前記開口部とが重なる位置に複数配置された振動素子と、
前記振動膜に対向して配置されて、前記振動膜を支持し、前記振動膜に対向する面が平坦面である支持基板と、
前記平面視において、隣り合う前記振動素子間に設けられ、前記振動膜及び前記支持基板の双方に接合されて、前記振動膜の振動の伝達を抑制する樹脂材料により構成された抑制部と、を備えた超音波トランスデューサーと、
前記超音波トランスデューサーが収納される筐体と、を備え、
前記振動膜には、前記振動素子に接続される接続配線が設けられ、
前記抑制部は、導電性フィラーを含み、前記接続配線と接続されている
ことを特徴とする超音波プローブ。 - 開口部が形成された基板と、
前記開口部を塞ぐように前記基板に設けられた振動膜と、
前記振動膜を振動駆動させる駆動処理及び前記振動膜の振動を検出する検出処理の少なくともいずれかを実施する素子であって、前記振動膜の厚み方向に沿った平面視において前記振動膜と前記開口部とが重なる位置に複数配置された振動素子と、
前記振動膜に対向して配置されて、前記振動膜を支持し、前記振動膜に対向する面が平坦面である支持基板と、
前記平面視において、隣り合う前記振動素子間に設けられ、前記振動膜及び前記支持基板の双方に接合されて、前記振動膜の振動の伝達を抑制する樹脂材料により構成された抑制部と、を備えた超音波トランスデューサーと、
前記超音波トランスデューサーを制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする超音波装置。 - 請求項5に記載の超音波装置において、
前記振動膜には、前記振動素子に接続される接続配線が設けられ、
前記抑制部は、導電性フィラーを含み、前記接続配線と接続されている
ことを特徴とする超音波装置。 - 振動膜が設けられた基板の前記振動膜上に、前記振動膜を振動駆動させる駆動処理及び前記振動膜の振動を検出する検出処理の少なくともいずれかを実施する複数の振動素子を形成する素子形成工程と、
前記振動膜の前記基板とは反対側の面で、かつ、前記振動膜の厚み方向に沿った平面視において隣り合う前記振動素子の間に、前記振動膜の振動の伝達を抑制する樹脂材料により構成された抑制部を形成する抑制部形成工程と、
前記振動膜の前記基板とは反対側の面に、前記振動膜に対向する面が平坦面である支持基板を対向させ、前記抑制部の前記振動膜と接合した一端部とは反対側の他端部を、前記支持基板に加熱接合する接合工程と、
前記基板に開口部を形成する工程であって、前記平面視において、前記振動膜と前記開口部とが重なる位置に複数の前記振動素子が配置されるように、前記開口部を形成する開口部形成工程と、
を実施することを特徴とする超音波トランスデューサーの製造方法。 - 所定の厚み寸法を有し、厚み方向に振動可能な振動膜と、
前記振動膜を振動させる振動素子と、
前記振動膜に対向して配置されて、前記振動膜を支持し、前記振動膜に対向する面が平坦面である支持基板と、
前記振動膜における振動領域に沿って設けられ、前記振動膜の前記振動領域の振動の前記振動領域外への伝達を抑制する抑制部と、を備え、
前記振動膜には、前記振動素子に接続される接続配線が設けられ、
前記抑制部は、導電性フィラーを含む樹脂材料により構成されて前記接続配線と接続され、かつ前記振動膜及び前記支持基板に接合されている
ことを特徴とする振動装置。
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