JP2016005222A - 超音波プローブ - Google Patents

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Abstract

【課題】振動膜が疲労破壊され難い超音波プローブを提供する。
【解決手段】振動膜43上に圧電素子23が設置された素子チップ17と、素子チップ17を支持する筐体と、を備え、圧電素子23は、振動膜43上に形成された下部電極24と、下部電極24上に形成された圧電体膜26と、圧電体膜26の表面に形成された上部電極25と、を備え、圧電体膜26は上部電極25側から下部電極24側へ向かって徐々に幅広となり、その断面形状が略台形形状である。
【選択図】図15

Description

本発明は、超音波プローブに関するものである。
超音波プローブに設置された超音波トランスデューサー素子チップから生体に超音波を照射し反射波を解析する超音波診断装置が広く活用されている。超音波トランスデューサー素子チップには圧電素子であるPZT素子が用いられることが多い。PZT素子は、一般に、多結晶体からなる圧電体薄膜と、この圧電体薄膜を間に挟んで配置される上電極及び下電極と、を備えた構造を有している。
振動膜上にPZT素子が設置されたインクジェットヘッドが特許文献1に開示されている。これによると、振動膜上に下電極、圧電体薄膜及び上電極が積層されリソグラフィ法を用いてパターニングされている。
特開平5−286131号公報
特許文献1におけるPZT素子は断面形状が四角形である。従って、PZT素子の外縁部では振動膜に応力集中が生じ易い構造となっていた。その結果、振動膜に疲労破壊が生じ易くなっていた。そこで、振動膜が疲労破壊され難い超音波プローブが望まれていた。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本適用例にかかる超音波プローブであって、振動膜上に圧電素子が設置された超音波トランスデューサー素子チップと、前記超音波トランスデューサー素子チップを支持する筐体と、を備え、前記圧電素子は、前記振動膜上に設置された下電極と、前記下電極上に形成された圧電体と、前記圧電体の表面に形成された上電極と、を備え、前記圧電体は前記上電極側から前記下電極側へ向かって徐々に幅広となり、その断面形状が略台形形状であることを特徴とする。
本適用例によれば、超音波プローブは超音波トランスデューサー素子チップを備え、超音波トランスデューサー素子チップは超音波を発信する。超音波トランスデューサー素子チップは振動膜を備え、振動膜上に圧電素子が設置されている。圧電素子では振動膜上に下電極、圧電体、上電極がこの順に設置されている。そして、下電極と上電極との間に加える電圧を変化させることにより圧電体が伸縮して振動膜が振動する。そして、振動膜の振動により超音波が発信される。
圧電素子は上電極側から下電極側へ向かって徐々に幅広になっている。そして、圧電素子の断面形状が略台形形状となっている。圧電素子の断面形状が四角形のとき、圧電素子は圧電体の周囲で振動膜に応力が集中するので破壊し易くなる。本適用例では圧電素子の断面形状が略台形形状となっている。このとき、圧電素子は平面視で中央に近い場所で強く振動膜を加振し、周囲に近い場所では中央に比べて弱い力で加振する。従って、圧電素子の周囲では振動膜に応力が集中し難くなっている為、振動膜を疲労破壊され難くすることができる。
実施形態1にかかわる超音波診断装置の構成を概略斜視図。 超音波プローブの構成を示す組織側面図。 素子チップの構成を示す模式平面図。 素子チップの構成を示す模式側断面図。 補強板を示す模式平面図。 補強板を示す要部模式拡大図。 装置端末及び超音波プローブの回路図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図。 圧電体膜の形成方法を説明するための模式図。 圧電体膜の形成方法を説明するための模式図。 圧電体膜の形成方法を説明するための模式図。 変形例にかかわり、(a)は、超音波トランスデューサー素子の構造を示す要部模式拡大平面図、(b)は、超音波トランスデューサー素子の構造を示す要部模式拡大断面図。 変形例にかかわり、(a)及び(b)は、超音波トランスデューサー素子の構造を示す要部模式拡大断面図。 実施形態2にかかわり、(a)及び(b)は圧電素子の構成を示す模式断面図。 圧電素子の製造方法を説明するための模式断面図。 各層が受ける応力の状態を説明するための模式断面図。 弾性膜除去部の効果を説明するための比較例の模式断面図。 振動板に加わる力と弾性変形量との関係を示す図。 実施形態3にかかわる圧電素子の構造を示す要部模式断面図。 実施形態4にかかわる圧電素子の構造を示す要部模式断面図。 実施形態5にかかわる圧電素子の構造を示す要部模式断面図。 (a)は、圧電素子の構造を示す要部模式平面図、(b)は、圧電素子の構造を示す要部模式側断面図。 実施形態6にかかわる圧電素子の構造を示す要部模式断面図。 実施形態7にかかわる圧電素子の構造を示す要部模式断面図。 実施形態8にかかわり、各層が受ける応力の状態を説明するための模式断面図。 実施形態9にかかわり、(a)は、圧電素子の構造を示す模式平面図、(b)は、圧電素子の構造を示す模式側断面図。 実施形態10にかかわり、各層が受ける応力の状態を説明するための模式断面図。 実施形態11にかかわり、各層が受ける応力の状態を説明するための模式断面図。 実施形態12にかかわり、圧電素子の構造を示す模式断面図。 実施形態13にかかわり、(a)は、圧電素子の構造示す模式平面図、(b)は、圧電素子の構造示す模式側断面図。 (a)は、圧電素子の構造示す模式平面図、(b)は、圧電素子の構造示す模式側断面図。 実施形態14にかかわり、各層が受ける応力の状態を説明するための模式断面図。 実施形態15にかかわり、各層が受ける応力の状態を説明するための模式断面図。
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態を説明する。尚、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の総てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
(実施形態1)
本実施形態では、超音波診断装置の特徴的な例について図1〜図17に従って説明する。
(1)超音波診断装置の全体構成
図1は超音波診断装置の構成を示す概略斜視図である。図1に示すように、超音波診断装置11は装置端末12と超音波プローブ13(プローブ)とを備える。装置端末12と超音波プローブ13とはケーブル14で相互に接続される。装置端末12と超音波プローブ13とはケーブル14を通じて電気信号をやりとりする。装置端末12にはディスプレイパネル15(表示装置)が組み込まれる。ディスプレイパネル15の画面は装置端末12の表面で露出する。装置端末12では、後述されるように、超音波プローブ13で検出された超音波に基づき画像が生成される。画像化された検出結果がディスプレイパネル15の画面に表示される。
図2は超音波プローブの構成を示す組織側面図である。図2に示すように、超音波プローブ13は筐体16を有する。筐体16内には超音波トランスデューサー素子チップとしての素子チップ17が収容される。素子チップ17の表面は筐体16の表面で露出することができる。素子チップ17は表面から超音波を出力するとともに超音波の反射波を受信する。その他、超音波プローブ13は、プローブ本体13aに着脱可能に連結されるプローブヘッド13bを備えることができる。このとき、素子チップ17はプローブヘッド13bの筐体16内に組み込まれることができる。
図3は素子チップの構成を示す模式平面図である。図3に示すように、素子チップ17は基板21を備える。基板21には素子アレイ22が形成される。素子アレイ22は超音波トランスデューサー素子としての圧電素子23の配列で構成される。配列は複数行複数列のマトリックスで形成される。個々の圧電素子23は圧電素子部を備える。圧電素子部は下電極としての下部電極24、上電極としての上部電極25及び圧電体としての圧電体膜26で構成される。個々の圧電素子23ごとに下部電極24及び上部電極25の間に圧電体膜26が挟み込まれる。
下部電極24は複数本の第1導電体24aを有する。第1導電体24aは配列の行方向に相互に平行に延びる。1行の圧電素子23ごとに1本の第1導電体24aが割り当てられる。1本の第1導電体24aは配列の行方向に並ぶ圧電素子23の圧電体膜26に共通に配置される。第1導電体24aの両端は一対の引き出し配線27にそれぞれ接続される。引き出し配線27は配列の列方向に相互に平行に延びる。したがって、総ての第1導電体24aは同一長さを有する。こうしてマトリックス全体の圧電素子23に共通に下部電極24は接続される。
上部電極25は複数本の第2導電体25aを有する。第2導電体25aは配列の列方向に相互に平行に延びる。1列の圧電素子23ごとに1本の第2導電体25aが割り当てられる。1本の第2導電体25aは配列の列方向に並ぶ圧電素子23の圧電体膜26に共通に配置される。列ごとに圧電素子23の通電は切り替えられる。こうした通電の切り替えに応じてラインスキャンやセクタースキャンは実現される。1列の圧電素子23は同時に超音波を出力することから、1列の個数すなわち配列の行数は超音波の出力レベルに応じて決定されることができる。行数は例えば10〜15行程度に設定されればよい。図中では省略されて5行が描かれる。配列の列数はスキャンの範囲の広がりに応じて決定されることができる。列数は例えば128列や256列に設定されればよい。図中では省略されて8列が描かれる。その他、配列では千鳥配置が確立されてもよい。千鳥配置では偶数列の圧電素子23群は奇数列の圧電素子23群に対して行ピッチの2分の1でずらされればよい。奇数列及び偶数列の一方の素子数は他方の素子数に比べて1つ少なくてもよい。さらにまた、下部電極24及び上部電極25の役割は入れ替えられてもよい。すなわち、マトリックス全体の圧電素子23に共通に上部電極が接続される一方で、配列の列ごとに共通に圧電素子23に下部電極が接続されてもよい。
基板21の輪郭は、相互に平行な一対の直線29で仕切られて対向する第1辺21a及び第2辺21bを有する。素子アレイ22の輪郭と基板21の外縁との間に広がる周縁領域31には、第1辺21aと素子アレイ22の輪郭との間に1ラインの第1端子アレイ32aが配置され、第2辺21bと素子アレイ22の輪郭との間に1ラインの第2端子アレイ32bが配置される。第1端子アレイ32aは第1辺21aに平行に1ラインを形成することができる。第2端子アレイ32bは第2辺21bに平行に1ラインを形成することができる。第1端子アレイ32aは一対の下部電極端子33及び複数の上部電極端子34で構成される。同様に、第2端子アレイ32bは一対の下部電極端子35及び複数の上部電極端子36で構成される。1本の引き出し配線27の両端にそれぞれ下部電極端子33、35は接続される。引き出し配線27及び下部電極端子33、35は素子アレイ22を二等分する垂直面で面対称に形成されればよい。1本の第2導電体25aの両端にそれぞれ上部電極端子34、36は接続される。第2導電体25a及び上部電極端子34、36は素子アレイ22を二等分する垂直面で面対称に形成されればよい。ここでは、基板21の輪郭は矩形に形成される。基板21の輪郭は正方形であってもよく台形であってもよい。
基板21には第1フレキシブルプリント基板としての第1フレキ37が連結される。第1フレキ37は第1端子アレイ32aに覆い被さる。第1フレキ37の一端には下部電極端子33及び上部電極端子34に個別に対応して導電線すなわち第1信号線38が形成される。第1信号線38は下部電極端子33及び上部電極端子34に個別に向き合わせられ個別に接合される。同様に、基板21には第2フレキシブルプリント基板としての第2フレキ41が覆い被さる。第2フレキ41は第2端子アレイ32bに覆い被さる。第2フレキ41の一端には下部電極端子35及び上部電極端子36に個別に対応して導電線すなわち第2信号線42が形成される。第2信号線42は下部電極端子35及び上部電極端子36に個別に向き合わせられ個別に接合される。
図4は素子チップの構成を示す模式側断面図である。図4に示すように、個々の圧電素子23は振動膜43を有する。振動膜43の構築にあたって基板21の基体44には個々の圧電素子23ごとに開口45が形成される。開口45は基体44に対してアレイ状に配置される。基体44の表面には可撓膜46が一面に形成される。可撓膜46は、基体44の表面に積層される酸化シリコン層47(SiO2)と、酸化シリコン層47の表面に積層される上面層48とで構成される。上面層48は酸化ジルコニウム(ZrO2)、チタン(Ti)、酸化チタン(TiO)またはこれらが複合した膜となっている。可撓膜46は開口45に接する。こうして開口45の輪郭に対応して可撓膜46の一部が振動膜43として機能する。酸化シリコン層47の膜厚は共振周波数に基づき決定される。
振動膜43の表面に下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25が順番に積層される。下部電極24には例えばチタン(Ti)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)及びチタン(Ti)の積層膜やプラチナの膜を用いられることができる。圧電体膜26は例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)で形成されることができる。上部電極25は例えばイリジウム(Ir)や白金(Pt)で形成されることができる。下部電極24及び上部電極25にはその他の導電材が利用されてもよく、圧電体膜26にはその他の圧電材料が用いられてもよい。ここでは、上部電極25の下で圧電体膜26は完全に下部電極24を覆う。圧電体膜26の働きで上部電極25と下部電極24との間で短絡は回避されることができる。
基板21の表面には保護膜49が積層される。保護膜49は例えば全面にわたって基板21の表面に覆い被さる。その結果、素子アレイ22や第1端子アレイ32a及び第2端子アレイ32b、第1フレキ37及び第2フレキ41は保護膜49で覆われる。保護膜49には例えばシリコーン樹脂膜が用いられることができる。保護膜49は、素子アレイ22の構造や、第1端子アレイ32a及び第1フレキ37の接合、第2端子アレイ32b及び第2フレキ41の接合を保護する。
隣接する開口45同士の間には仕切り壁51が区画される。開口45同士は仕切り壁51で仕切られる。仕切り壁51の壁厚みtは開口45の空間同士の間隔に相当する。仕切り壁51は相互に平行に広がる平面内に2つの壁面を規定する。壁厚みtは壁面同士の距離に相当する。すなわち、壁厚みtは壁面に直交して壁面同士の間に挟まれる垂線の長さで規定されることができる。仕切り壁51の壁高さHは開口45の深さに相当する。開口45の深さは基体44の厚みに相当する。したがって、仕切り壁51の壁高さHは基体44の厚み方向に規定される壁面の長さで規定されることができる。基体44は均一な厚みを有することから、仕切り壁51は全長にわたって一定の壁高さHを有することができる。仕切り壁51の壁厚みtが縮小されれば、振動膜43の配置密度は高められ、素子チップ17の小型化に寄与することができる。壁厚みtに比べて仕切り壁51の壁高さHが大きければ、素子チップ17の曲げ剛性は高められることができる。こうして開口45同士の間隔は開口45の深さよりも小さく設定される。
基体44の裏面には補強板52(補強部材)が固定される。補強板52の表面に基体44の裏面が重ねられる。補強板52は素子チップ17の裏面で開口45を閉じる。補強板52はリジッドな基材を備えることができる。補強板52は例えばシリコン基板から形成されることができる。基体44の板厚は例えば100μm程度に設定され、補強板52の板厚は例えば100〜150μm程度に設定される。ここでは、仕切り壁51は補強板52に結合される。補強板52は個々の仕切り壁51に少なくとも1カ所の接合域で接合される。接合には接着剤を用いてもよい。
補強板52の表面には直線状の溝53(直線状溝部)が形成される。溝53は補強板52の表面を複数の平面54に分割する。複数の平面54は1つの仮想平面HP内で広がる。その仮想平面HP内で基体44の裏面は広がる。仕切り壁51は平面54に接合される。溝53は仮想平面HPから窪む。溝53の断面形状は四角形であってもよく三角形であってもよく半円形その他の形状であってもよい。
図5は補強板を示す模式平面図である。図5に示すように、開口45は第1方向D1に列を形成する。開口45の輪郭形状の図心45bは第1方向D1の1直線56上で等ピッチに配置される。開口45の輪郭45aは1つの形状の複写で象られることから、同一形状の開口45が一定のピッチで繰り返し配置される。開口45の輪郭45aは例えば四角形に規定される。具体的には矩形に形成される。矩形の長辺は第1方向D1に合わせ込まれる。こうして開口45は矩形の輪郭45aを有することから、仕切り壁51は全長にわたって一定の壁厚みtを有することができる。このとき、仕切り壁51の接合域は長辺の中央位置を含む領域であればよい。特に、仕切り壁51の接合域は長辺の全長を含む領域であればよい。仕切り壁51は長辺の全長にわたって開口45同士の間の全面で補強板52に面接合されることができる。さらに、仕切り壁51の接合域は四角形の各辺に少なくとも1カ所ずつ配置されることができる。仕切り壁51の接合域は四角形を途切れなく囲むことができる。仕切り壁51は四角形の全周にわたって開口45同士の間の全面で補強板52に面接合されることができる。
溝53は一定の間隔Lで相互に平行に第1方向D1に並べられる。溝53は第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる。溝53の両端は補強板52の端面57a及び端面57bで開口する。1本の溝53は1列(ここでは1行)の開口45の輪郭45aを順番に横切る。個々の開口45には少なくとも1本の溝53が接続される。ここでは、第2方向D2は第1方向D1に直交する。したがって、溝53は矩形の短辺方向に開口45の輪郭45aを横切る。
図6は補強板を示す要部模式拡大図である。図6に示すように、平面54同士の間で溝53は基体44と補強板52との間に通路58a及び通路58bを形成する。こうして溝53内の空間は開口45の内部空間に連通する。通路58a及び通路58bは開口45の内部空間と基板21の外部空間との間で通気を確保する。基板21の表面に直交する方向すなわち基板21の厚み方向から見た平面視で、1本の溝53は1列(ここでは1行)の開口45の輪郭45aを順番に横切ることから、次々に開口45同士は通路58aで接続される。溝53の両端は補強板52の端面57a及び端面57bで開口する。こうして列端の開口45から基板21の輪郭の外側に通路58bは開放される。
溝53の間隔Lは開口45の開口幅Sよりも小さく設定される。開口幅Sは、溝53の並び方向すなわち第1方向D1に開口45を横切る線分のうち最大の長さのもので規定される。言い換えると、開口幅Sは、開口45の輪郭45aに外接する平行線59同士の間隔に相当する。開口45ごとに開口45の輪郭45aに外接する平行線59は特定される。平行線59は第2方向D2に延びる。仮に開口45ごとに開口幅Sが相互に相違する場合には、開口幅Sの最小値よりも小さい間隔Lで溝53は並べられればよい。ここでは、溝53の間隔Lは、開口45の開口幅Sの3分の1以上であって2分の1よりも小さく設定される。
(2)超音波診断装置の回路構成
図7は装置端末及び超音波プローブの回路図である。図7に示されるように、超音波プローブ13には素子チップ17と接続する集積回路チップ55が設置されている。集積回路チップ55はマルチプレクサー61及び送受信回路62を備える。マルチプレクサー61は素子チップ17側のポート群61aと送受信回路62側のポート群61bとを備える。素子チップ17側のポート群61aには第1配線60経由で第1信号線38及び第2信号線42が接続される。こうしてポート群61aは素子アレイ22に繋がる。ここでは、送受信回路62側のポート群61bには集積回路チップ55内の規定数の信号線63が接続される。規定数はスキャンにあたって同時に出力される圧電素子23の列数に相当する。マルチプレクサー61はケーブル14側のポートと素子チップ17側のポートとの間で相互接続を管理する。
送受信回路62は規定数の切り替えスイッチ64を備える。個々の切り替えスイッチ64はそれぞれ信号線63に接続される。送受信回路62は個々の切り替えスイッチ64ごとに送信経路65及び受信経路66を備える。切り替えスイッチ64には送信経路65と受信経路66とが並列に接続される。切り替えスイッチ64はマルチプレクサー61に選択的に送信経路65または受信経路66を接続する。送信経路65にはパルサー67が組み込まれる。パルサー67は振動膜43の共振周波数に応じた周波数でパルス信号を出力する。受信経路66にはアンプ68、ローパスフィルター69(LPF)及びアナログデジタル変換器71(ADC)が組み込まれる。個々の圧電素子23の検出信号は増幅されてデジタル信号に変換される。
送受信回路62は駆動/受信回路72を備える。送信経路65及び受信経路66は駆動/受信回路72に接続される。駆動/受信回路72はスキャンの形態に応じて同時にパルサー67を制御する。駆動/受信回路72はスキャンの形態に応じて検出信号のデジタル信号を受信する。駆動/受信回路72は制御線73によりマルチプレクサー61に接続される。マルチプレクサー61は駆動/受信回路72から供給される制御信号に基づき相互接続の管理を実施する。
装置端末12には処理回路74が組み込まれる。処理回路74は例えば中央演算処理装置(CPU)やメモリーを備えることができる。超音波診断装置11の全体動作は処理回路74の処理に従って制御される。ユーザーから入力される指示に応じて処理回路74は駆動/受信回路72を制御する。処理回路74は圧電素子23の検出信号に応じて画像を生成する。画像は描画データで特定される。
装置端末12には描画回路75が組み込まれる。描画回路75は処理回路74に接続される。描画回路75にはディスプレイパネル15が接続される。描画回路75は処理回路74で生成された描画データに応じて駆動信号を生成する。駆動信号はディスプレイパネル15に送り込まれる。その結果、ディスプレイパネル15に画像が映し出される。
(3)超音波診断装置の動作
次に超音波診断装置11の動作を簡単に説明する。処理回路74は駆動/受信回路72に超音波の送信及び受信を指示する。駆動/受信回路72はマルチプレクサー61に制御信号を供給するとともに個々のパルサー67に駆動信号を供給する。パルサー67は駆動信号の供給に応じてパルス信号を出力する。マルチプレクサー61は制御信号の指示に従ってポート群61bのポートにポート群61aのポートを接続する。ポートの選択に応じて下部電極端子33、下部電極端子35、上部電極端子34及び上部電極端子36を通じて列ごとにパルス信号が圧電素子23に供給される。パルス信号の供給に応じて振動膜43は振動する。その結果、対象物(例えば人体の内部)に向けて所望の超音波が発せられる。
超音波の送信後、切り替えスイッチ64が切り替えられる。マルチプレクサー61はポートの接続関係を維持する。切り替えスイッチ64は送信経路65及び信号線63の接続に代えて受信経路66及び信号線63の接続を確立する。超音波の反射波は振動膜43を振動させる。その結果、圧電素子23から検出信号が出力される。検出信号はデジタル信号に変換されて駆動/受信回路72に送り込まれる。
超音波の送信及び受信は繰り返される。繰り返しにあたってマルチプレクサー61はポートの接続関係を変更する。その結果、ラインスキャンやセクタースキャンが実現される。スキャンが完了すると、処理回路74は検出信号のデジタル信号に基づき画像を形成する。形成された画像はディスプレイパネル15の画面に表示される。
(4)超音波トランスデューサー素子チップの製造方法
図8〜図12は超音波トランスデューサー素子チップの製造方法を説明するための模式図である。図8に示されるように、シリコンウエハー78(基板)の表面には酸化シリコン膜79及び酸化ジルコニウム膜81が相次いで形成される。酸化ジルコニウム膜81の表面には導電膜が形成される。導電膜はチタン、イリジウム、白金及びチタンの積層膜で構成される。フォトリソグラフィ技術に基づき導電膜から下部電極24、引き出し配線27、図示しない下部電極端子33及び下部電極端子35が形成される。下部電極24、引き出し配線27、下部電極端子33及び下部電極端子35は個々の素子チップ17ごとに形成される。
図9に示されるように、下部電極24の表面で個々の圧電素子23ごとに圧電体膜26及び上部電極25が形成される。圧電体膜26及び上部電極25の形成にあたってシリコンウエハー78の表面に圧電材料膜及び導電膜が成膜される。圧電材料膜はPZT膜から構成される。導電膜はイリジウム膜から構成される。フォトリソグラフィ技術に基づき個々の圧電素子23ごとに圧電材料膜及び導電膜から圧電体膜26及び上部電極25が成形される。
続いて、図10に示されるように、シリコンウエハー78の表面に導電膜82が成膜される。導電膜82は個々の素子チップ17内で列ごとに上部電極25を相互に接続する。そして、フォトリソグラフィ技術に基づき導電膜82から上部電極25、上部電極端子34及び上部電極端子36が成形される。
その後、図11に示されるように、シリコンウエハー78の裏面からアレイ状の開口45が形成される。開口45の形成にあたってエッチング処理が施される。酸化シリコン膜79はエッチングストップ層として機能する。酸化シリコン膜79及び酸化ジルコニウム膜81からなる振動膜43は開口45により区画される。
補強板用のウエハー83の表面には直線状の溝84が形成される。溝84は相互に平行に等間隔で延びる。溝84の少なくとも一端はウエハー83の端面で開放される。溝84は、開口45の開口幅Sよりも小さい間隔Lで並べられる。こうして溝84の間隔Lが設定されると、シリコンウエハー78と補強板用のウエハー83との間で相対的に位置ずれが生じても、少なくとも1本の溝84は開口45の輪郭45aを横切ることができる。例えば図12に示されるように、シリコンウエハー78に対して補強板用のウエハー83が第1方向D1にずれて溝84aが隣り合う開口45の間に位置しても、2つの開口45にはそれぞれ少なくとも1本の溝84bが配置されることができる。シリコンウエハー78から個々の素子チップ17が切り出された際に、溝84は補強板52の溝53を提供する。
こうして溝84が形成されると、シリコンウエハー78及びウエハー83が大気中またはその他の気体雰囲気下で相互に重ね合わせられる場合でも、比較的に簡単に重ね合わせは実現されることができる。その一方で、シリコンウエハー78の裏面が均一な平面に重ね合わせられると、個々の開口45内に補強板用のウエハーの平面で気体が押し詰められる。大気圧では開口45内の空間の体積よりも大きい体積の気体が開口45内に留まろうとする。開口45の封鎖と同時に、シリコンウエハー78及び補強板用のウエハーの隙間から余分な気体が逃げないと、シリコンウエハー78及び補強板用のウエハーの貼り合わせは実現されることができない。
図11に戻って、シリコンウエハー78の裏面に補強板用のウエハー83(補強部材)の表面が重ね合わせられる。重ね合わせに先立ってウエハー83はハンドリング機構やステージ上に保持される。ウエハー83には例えばリジッドな絶縁性基板が用いられることができる。絶縁性基板にはシリコンウエハーが用いられることができる。接合にあたって例えば接着剤を用いても良い。接合後、シリコンウエハー78から個々の素子チップ17が切り出されて素子チップ17が完成する。
(5)圧電体膜の製造方法と構造
次に、圧電素子23について詳細に説明する。
図4に示すように、基体44の補強板52とは反対側の可撓膜46の上には、厚さが例えば、約0.5μmの下部電極24と、厚さが例えば、約1μmの圧電体膜26と、厚さが例えば、約0.1μmの上部電極25とが積層形成されて、圧電素子23(圧電素子)を構成している。このように、可撓膜46の各開口45に対向する領域には、開口45毎に独立して圧電素子23が設けられている。
そして、かかる各上部電極25の上面の少なくとも周縁、及び圧電体膜26の側面を覆うように電気絶縁性を備えた保護膜49が形成されている。保護膜49は、成膜法による形成やまたエッチングによる形成が可能な材料、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、有機材料、好ましくは剛性が低く、且つ電気絶縁性に優れた感光性ポリイミドで形成するのが好ましい。
ここで、シリコン単結晶基板からなる基体44上に、圧電体膜26等を形成するプロセスを図13〜図15を参照しながら説明する。図13〜図15は圧電体膜の形成方法を説明するための模式図である。
図13(a)に示すように、まず、基体44となるシリコン単結晶基板のウエハーを約1100℃の拡散炉で熱酸化して二酸化シリコンからなる酸化シリコン層47を形成する。次に、スパッタリングで上面層48を形成する。上面層48は酸化シリコン層47と下部電極24との密着力を向上させる。上面層48にはチタンと酸化チタンとチタンとを順次数十Å形成した。上面層48のチタン、酸化チタン、チタン及び下部電極24は、直流スパッタリング法により4層連続形成し、その中で酸化チタンは10%酸素雰囲気によるリアクティブスパッタリング法によって形成した。
次に、図13(b)に示すように、スパッタリングで下部電極24を形成する。下部電極24の材料としては、Pt等が好適である。これは、スパッタリングやゾル−ゲル法で成膜する後述の圧電体膜26は、成膜後に大気雰囲気下または酸素雰囲気下で600〜1000℃程度の温度で焼成して結晶化させる必要があるからである。すなわち、下部電極24の材料は、このような高温、酸化雰囲気下で導電性を保持できなければならず、殊に、圧電体膜26としてPZTを用いた場合には、PbOの拡散による導電性の変化が少ないことが望ましく、これらの理由からPtが好適である。次に、下部電極24を所定の形状にパターニングする。このとき、公知のフォトリソグラフィ法とエッチング法を用いて下部電極24を形成する。
次に、図13(c)に示すように、圧電体膜26を成膜する。この圧電体膜26の成膜にはスパッタリングを用いることもできるが、本実施形態では、金属有機物を溶媒に溶解し分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体膜26を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いている。圧電体膜26の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系の材料が超音波プローブ13に使用する場合には好適である。
次に、図13(d)及び図14(a)に示すように、圧電体膜26をパターニングする。この際、圧電体能動部88の両側面89を上から下に向かって外側に広がるように傾斜させる。このようなテーパ面を有する圧電体能動部88の形成方法は特に限定されないが、例えば、断面略台形となるレジストパターンを設けてイオンミリング等することにより容易に製造することができる。
すなわち、まず、レジストを塗布し、所定のマスクを用いて露光し、現像することにより、断面が略台形のレジストパターンを形成する。
ここで、レジストは、例えば、ネガレジストをスピンコート等により塗布して形成し、レジストパターンは、その後、所定形状のマスクを用いて露光・現像・ベークを行うことにより、形成する。この際、ポストベークを長めに行って側面を変形させることにより、または過剰に露光することにより、傾斜した側面を有するレジストパターンを容易に形成することができる。
また、断面略台形の圧電体能動部88の底面と傾斜面とのなす角度は、レジストパターンの傾斜した側面と平行に形成されるため、ポストベークの時間により、断面略台形の圧電体能動部88の底面と傾斜面とのなす角度を容易に操作することが可能である。
そして、この後、イオンミリング等により圧電体膜26をエッチングすることにより、断面略台形の圧電体能動部88を形成することができる。尚、勿論、ネガレジストの代わりにポジレジストを用いてもよい。
次に、上部電極25を成膜する。上部電極25は、導電性の高い材料であればよく、Al、Au、Ni、Pt等の多くの金属や、導電性酸化物等を使用できる。本実施形態では、上部電極25のためにPtをスパッタリングにより成膜している。以上説明したように、まず、下部電極24の全体のパターンを形成し、次いで、圧電体能動部88をパターニングすることによりパターニングが完了する。
図14(a)に示すように、圧電体能動部88の両側の側面89は、上から下に向かって外側に傾斜しているテーパ面となって、縦断面は略台形形状となっている。このような構造とすることにより、圧電体能動部88の両端部において、その駆動時に発生する力を外側へ行くほど徐々に小さくすることができる。従って、両側面における応力集中が防止され、破壊等の虞がなくなる。
ここで、底面と傾斜面との成す角度θは、5〜75度、好ましくは、5〜45度の範囲にあるのが望ましい。このような範囲から外れると、応力集中を防止するという効果が顕著には得られ難いからである。
次に、図14(b)に示すように、上部電極25の周縁部、圧電体膜26及び下部電極24の側面を覆うように保護膜49を形成する。保護膜49の好適な材料は特に限定されないが、本実施形態ではネガ型の感光性ポリイミドを用いている。次に、各上部電極25の上面の少なくとも周縁、及び圧電体膜26の側面を覆うように電気絶縁性を備えたレジストを形成する。
図15(a)は素子と開口との位置関係を説明するための模式図である。図中保護膜49は省略されている。上記のように形成された圧電体能動部88と開口45との平面位置関係は図に示すとおりである。圧電体膜26及び上部電極25からなる圧電体能動部88は、開口45に対向する領域内に設けられている。
以上が膜形成プロセスである。このようにして膜形成を行った後、図15(b)に示すように、アルカリ溶液によりシリコン単結晶基板であるウエハーの異方性エッチングを行い、開口45等を形成する。尚、以上説明した一連の膜形成及び異方性エッチングは、一枚のウエハー上に多数のチップを同時に形成し、プロセス終了後、図3に示すような1つのチップサイズの基体44毎に分割する。また、分割した基体44と補強板52とを接着して一体化し、素子チップ17とする。
(変形例1)
次に、超音波トランスデューサー素子の一変形例について図16を用いて説明する。図16(a)は、超音波トランスデューサー素子の構造を示す要部模式拡大平面図である。図16(b)は、超音波トランスデューサー素子の構造を示す要部模式拡大断面図である。本実施形態が実施形態1と異なるところは、圧電体能動部88の底面が開口45に対向する領域より幅方向外側まで延設されている点にある。尚、実施形態1と同じ点については説明を省略する。
すなわち、変形例1では、図16に示すように、素子チップ91は基体92を備えている。基体92には開口93が形成され、仕切り壁94が開口93を仕切っている。開口93は実施形態1の開口45より小さい形状となっている。そして、圧電体能動部88は開口93に対向する領域内より広くなっている。圧電体能動部88の外周は仕切り壁94上にある。
このような構造とすることにより、実施形態1と同様に、圧電体能動部88の幅方向両側において応力集中が生じ難い。さらに、開口93の縁部93aと圧電体能動部88の両側面89との位置関係により、変位が多少小さくなるが、応力集中がさらに生じがたい構成となっている。尚、圧電体能動部88の上面88aを開口93に対向する領域内に設けることにより、十分な変位量を確保できる。
(変形例2)
次に、超音波トランスデューサー素子の一変形例について図17を用いて説明する。図17(a)及び図17(b)は、超音波トランスデューサー素子の構造を示す要部模式拡大断面図である。本実施形態が実施形態1と異なるところは、圧電体能動部88の周囲に近い場所の下部電極24及び上部電極25に凹部が設置されている点にある。尚、実施形態1と同じ点については説明を省略する。
変形例2の素子チップ95では圧電体能動部88の両側に下部電極24の厚さを薄くした下電極除去部96を形成したものである。そして、圧電体能動部88の両側に上部電極25の厚さを薄くした上電極除去部97を形成したものである。
すなわち、開口45の幅方向両側の縁部に対向した領域である圧電体能動部88の両側の振動板の腕に相当する部分の下部電極24を一部除去することにより、下電極除去部96を形成したものである。このように下電極除去部96を設けることにより、圧電体能動部88への電圧印加による変位量の向上を図ることができる。
開口45の幅方向両側の縁部に対向した領域である圧電体能動部88の両側の振動板の腕に相当する部分の上部電極25を一部除去することにより、上電極除去部97を形成したものである。このように上電極除去部97を設けることにより、圧電体能動部88への電圧印加による変位量の向上を図ることができる。
また、圧電体能動部88の両側面89がテーパ面となっているので、その駆動時に発生する力を外側へ行くほど徐々に小さくすることができ、下電極除去部96及び上電極除去部97における応力集中が防止され、破壊等の虞がない。
尚、下電極除去部96ではハーフエッチング等により下部電極24の一部を除去して下部電極24を薄肉にした。同様に、上電極除去部97ではハーフエッチング等により上部電極25の一部を除去して上部電極25を薄肉にした。
(他の変形例)
以上、の実施形態および変形例を説明したが、装置の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。例えば、上述した基板をガラスセラミックス製としてもよく、さらには、振動膜を別部材としてガラスセラミックス製としてもよく、材料、構造等の変更は自由である。
また、以上説明した実施形態及び変形例は、成膜及びリソグラフィプロセスを応用することにより製造できる薄膜型の装置を例にしたが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、基板を積層して開口を形成するもの、あるいはグリーンシートを貼付もしくはスクリーン印刷等により圧電体膜を形成するもの、または結晶成長により圧電体膜を形成するもの等、各種の構造の装置に本実施形態を応用することができる。このように、その趣旨に反しない限り、種々の構造の装置に本実施形態を応用することができる。
(効果)
以上説明したように本実施形態においては、開口に対向する圧電体能動部88の断面が略台形形状となるように形成したことにより、圧電体能動部の外縁部、特に両側の応力集中による破壊等を防止することができる。
(実施形態2)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図18〜22を用いて説明する。本実施形態が実施形態1と異なるところは、振動膜43の厚みが圧電素子23と対向する場所と対向しない場所で異なっている点にある。尚、実施形態1と同じ点については説明を省略する。
図18(a)及び図18(b)は圧電素子の構成を示す模式断面図である。すなわち、本実施形態では図18に示すように、基体44は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなる。基体44としては、通常、150〜300μm程度の厚さのものが用いられ、望ましくは180〜280μm程度、より望ましくは220μm程度の厚さのものが好適である。これは、隣接する開口45間の隔壁の剛性を保ちつつ、配列密度を高くできるからである。
基体44の一方の面は開口面となり、他方の面には、例えば、ジルコニウムの膜を形成後、熱酸化することにより形成した圧縮応力を有する酸化ジルコニウムからなる、厚さ0.2〜3.0μmの可撓膜100が形成されている。
開口45は異方性エッチングにより形成される。異方性エッチングは、シリコン単結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面と、この第1の(111)面と約70度の角度をなし且つ上記(110)面と約35度の角度をなす第2の(111)面とが出現し、(110)面のエッチングレートと比較して(111)面のエッチングレートが約1/180であるという性質を利用して行われるものである。かかる異方性エッチングにより、二つの第1の(111)面と斜めの二つの第2の(111)面とで形成される平行四辺形状の深さ加工を基本として精密加工を行うことができ、開口45を高密度に配列することができる。
本実施形態では、各開口45の長辺を第1の(111)面で、短辺を第2の(111)面で形成している。この開口45は、基体44をほぼ貫通して可撓膜100に達するまでエッチングすることにより形成されている。尚、可撓膜100は、シリコン単結晶基板をエッチングするアルカリ溶液に侵される量がきわめて小さい。
一方、基体44の開口面とは反対側の可撓膜100の上には、厚さが例えば、約0.2μmの下部電極24と、厚さが例えば、約1μmの圧電体膜26と、厚さが例えば、約0.1μmの上部電極25とが、後述するプロセスで積層形成されて、圧電素子101を構成している。ここで、圧電素子101は、下部電極24、圧電体膜26、及び上部電極25を含む部分をいう。一般的には、圧電素子101の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体膜26を開口45毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体膜26から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部88という。本実施形態では、下部電極24は圧電素子101の個別電極とし、上部電極25も圧電素子101の個別電極としている。各開口45に圧電体能動部88が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子101と当該圧電素子101の駆動により変位が生じる可撓膜100とを合わせて圧電アクチュエーターと称する。尚、上述した例では、可撓膜100及び下部電極24が振動膜102として作用するが、下部電極24が弾性膜を兼ねるようにしてもよい。
また、基体44の圧電素子101側に、この圧電素子101を構成する層と共に積層されて圧縮応力を有する膜を設け、振動板の初期撓み量を低減させている。本実施形態では、可撓膜100が圧縮応力を有する膜になっている。
ここで、シリコン単結晶基板からなる基体44上に、振動膜102及び圧電素子101を構成する各層を形成するプロセスを図19を参照しながら説明する。図19は圧電素子の製造方法を説明するための模式断面図である。
図19(a)に示すように、まず、基体44となるシリコン単結晶基板の一方面に、圧縮応力を有する可撓膜100を形成する。この可撓膜100の材質としては、所定の強度を有し、且つ圧縮応力を有する膜となる材料、例えば、金属酸化物等の多結晶体が好ましく、例えば、酸化ジルコニウム、酸化イリジウム、酸化ルテニウム、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化オスミウム、酸化レニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム及びそれらの化合物等が挙げられる。例えば、酸化ジルコニウムまたは酸化ハフニウムの場合には、単斜晶系とすることにより、圧縮応力を有する膜とすることができる。
本実施形態の可撓膜100では、シリコン単結晶基板上にジルコニウム層をスパッタリングで形成後、約1150℃の拡散炉で酸素中で熱酸化処理することにより、単斜晶系の酸化ジルコニウムからなる可撓膜100を形成した。ここで、ジルコニウムは酸化される際に、相転移温度以上に加熱されているため、冷却時に相転移を起こして単斜晶系となり、圧縮応力を有する酸化ジルコニウムとなる。次に、圧電素子101を設置する予定の場所以外の可撓膜100の薄くして弾性膜除去部100aを設置する。これには公知のフォトリソグラフィ法とエッチング法を用いる。
可撓膜100のオーバーエッチングの深さは、膜全体の応力バランスから考慮して形成すればよいが、特に、下部電極24が引張応力を有する場合には、少なくとも下部電極24の厚さよりも深いことが好ましく、例えば、本実施形態では、約0.4μmの深さで形成した。
次に、スパッタリングで下部電極24を形成する。下部電極24の材料としては、白金、イリジウム等が好適である。これは、スパッタリング法やゾル−ゲル法で成膜する後述の圧電体膜26は、成膜後に大気雰囲気下または酸素雰囲気下で600〜1000℃程度の温度で焼成して結晶化させる必要があるからである。すなわち、下部電極24の材料は、このような高温、酸化雰囲気下で導電性を保持できなければならず、殊に、圧電体膜26としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた場合には、酸化鉛の拡散による導電性の変化が少ないことが望ましく、これらの理由から白金、イリジウム等が好適である。次に、下部電極24をパターニングする。これには公知のフォトリソグラフィ法とエッチング法を用いる。
次に、図19(b)に示すように、圧電体膜26を成膜する。この圧電体膜26の成膜にはスパッタリング法を用いることもできるが、本実施形態では、金属有機物を溶媒に溶解・分散したいわゆるゾルを塗布乾燥してゲル化し、さらに高温で焼成することで金属酸化物からなる圧電体膜26を得る、いわゆるゾル−ゲル法を用いている。圧電体膜26の材料としては、PZT系の材料が超音波用の素子チップ17に使用する場合には好適である。次に、圧電体膜26の断面形状を台形に形成する。
次に、図19(c)に示すように、上部電極25を成膜する。上部電極25は、導電性の高い材料であればよく、例えば、アルミニウム、金、ニッケル、白金等の多くの金属や、導電性酸化物等を使用できる。本実施形態では、白金をスパッタリング法により成膜している。次に、上部電極25をパターニングする。次に、図19(d)に示すように、保護膜49を成膜する。
本実施形態では、その後、開口45をエッチングにより形成するが、このときの圧電体能動部88が受ける応力の状態を以下に説明する。尚、図20は、各層が受ける応力の状態を説明するための模式断面図である。
図20(a)に示すように、下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25は、基体44から引張応力を受けており、可撓膜100は、圧縮応力を受けている。そのため、図20(b)に示すように、圧電体能動部88を形成した状態では下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25は、それぞれ引張応力σ3,σ2,σ1の一部が開放され、また、可撓膜100も一部が除去されることにより、可撓膜100の圧縮応力σ4の一部が開放される。可撓膜100の圧縮応力σ4が開放される大きさは、可撓膜100がエッチングにより除去された深さに比例する。このため、可撓膜100を少なくとも下部電極24の厚さよりも深く除去し、膜全体の応力のバランスを調整している。したがって、次に、図20(c)に示すように、圧電体能動部88の下方に開口45を形成しても、基体44から受ける下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25の応力σ3,σ2,σ1の向きに対して可撓膜100の応力σ4の向きが逆であるため、下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25の引張応力σ3,σ2,σ1が開放される力と可撓膜100の圧縮応力σ4が開放される力とがつり合っている。このため、振動膜102のたわみはほとんど発生しない。
図21は弾性膜除去部の効果を説明するための比較例の模式断面図である。図21(a)に示すように可撓膜103が圧縮応力を受けていても、弾性膜除去部100aが形成されていない場合には、開口45形成前に、下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25にはそれぞれ引張応力σ3,σ2,σ1が残留している。圧電体能動部88の断面形状を台形に形成して開口45を形成すると、図21(b)に示すように、引張応力σ3,σ2,σ1は開放されて圧縮応力σ4が収縮しようとする力が強くなる。その結果、可撓膜103は、下に凸に変形され、これが初期変形として残留する。
このように、可撓膜100を圧縮応力を有する材料で形成し、可撓膜100の一部をオーバーエッチングして弾性膜除去部100aとした。これにより、圧電体能動部88の形成及び開口45の形成後に、各圧電体能動部88の幅方向両側の弾性膜除去部100aで圧縮応力が開放されて、可撓膜100が引張方向の応力を受ける。したがって、下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25の応力が相殺される。そして、開口45の形成による振動板の初期撓み量を低減または無くすことができる。また、同時に圧電体膜26の変形も防止できるため、圧電体膜26の開口45形成前の圧電特性を維持することができる。したがって、圧電素子101の変位効率を向上することができる。さらに、本実施形態では、可撓膜100を、多結晶体である金属酸化物で形成し、所定の強度を得るようにしたので、耐久性の低下も防止される。
尚、従来より酸化ジルコニウム膜を可撓膜100として用いられているが、本実施形態では、酸化ジルコニウム膜を強い圧縮応力を有する単斜晶系膜とし且つその圧縮応力をエッチングすることで開放することにより、初期変形を緩和するものである。また、酸化ジルコニウム膜を単斜晶系膜として複合膜が受ける応力のバランスをとることにより膜間の剥離を防止する技術も提案されているが、酸化ジルコニウム膜の圧縮応力を開放して初期たわみを緩和するものではない。
また、以上説明した一連の膜形成及び異方性エッチングは、一枚のウエハー上に多数のチップを同時に形成し、プロセス終了後、1つのチップサイズの基体44毎に分割する。
ここで、本実施形態の圧電素子の駆動時の振動板に加わる力と弾性変形量との関係を説明する。図22は振動板に加わる力と弾性変形量との関係を示す図である。図中振動板は可撓膜100を示す。図22(a)に示すように、本実施形態では、初期段階で、振動板に変形がないので、駆動時に発生する力Fに対する変形Tが弾性変形域で生じることになる。一方、図22(b)に示すように、下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25の応力により、初期に加わった力fによって初期変形tが生じている場合には、駆動時に力Fが加わると、塑性変形域に入ってしまうので、対応する変形Tは得られずに変形T’が生じることになり、(T−T’)が変形の損失となる。
(実施形態3)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図23を用いて説明する。本実施形態が実施形態2と異なるところは、可撓膜46の酸化シリコン層47に相当する層を複数層で構成するようにした点にある。尚、実施形態2と同じ点については説明を省略する。図23は、圧電素子の構造を示す要部模式断面図である。
本実施形態では、図23に示すように、基体44上に可撓膜106が形成されている。可撓膜106は、例えば、厚さが1.0μmの酸化シリコン膜からなる第1の弾性膜107と、この第1の弾性膜107上に設けられ、例えば、酸化ジルコニウム等の圧縮応力を有する酸化金属膜等で形成される第2の弾性膜108との二層で構成されている。そして、第2の弾性膜108の一部をオーバーエッチングして弾性膜除去部108aを形成することにより、可撓膜106の初期撓み量の減少及び圧電特性の向上を図っている。勿論、第2の弾性膜108の厚さ方向の全部を除去して弾性膜除去部108aとしてもよい。
このような構成によっても、実施形態2と同様の効果が得られる。さらに、弾性膜を二層で構成することにより、弾性膜の強度を向上することができる。弾性膜除去部108aを形成することによって、確実に振動板の変位効率を向上することができる。
尚、弾性膜除去部108aが形成される第2の弾性膜108の下層に設けられる第1の弾性膜107は圧縮応力を有することが好ましい。しかし、これに限定されず、少なくとも第2の弾性膜108が圧縮応力を有していればよく、第1の弾性膜107は、引張応力を有していてもよい。また、本実施形態では、第1の弾性膜107を酸化シリコン膜で形成したが、これに限定されず、例えば、ボロンドープシリコン膜または金属酸化膜等であってもよい。
また、本実施形態のように、可撓膜106を複数層で形成する場合には、弾性膜除去部108aを形成する圧縮応力を有する第2の弾性膜108を酸化シリコン膜で形成するようにしてもよい。
(実施形態4)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図24を用いて説明する。本実施形態が実施形態3と異なるところは、第2の弾性膜108に相当する層を複数層で構成するようにした点にある。尚、実施形態3と同じ点については説明を省略する。図24は、圧電素子の構造を示す要部模式断面図である。
本実施形態では、図24に示すように、基体44上に振動膜111が設置されている。振動膜111は、例えば、厚さが1μmの酸化シリコンからなる第1の弾性膜112と、第1の弾性膜112上に形成され、例えば、厚さが0.2μmの白金等の金属からなる第2の弾性膜113と、例えば、厚さが1μmで圧縮応力を有する酸化ジルコニウム等の金属酸化物等からなる第3の弾性膜114との三層で構成されている。そして、本実施形態では、最も上層の第3の弾性膜114の面方向の一部を第2の弾性膜113に達するまで除去して弾性膜除去部111aとした。
尚、第2の弾性膜113は、本実施形態では、白金で形成したが、これに限定されず、靭性を有する金属、例えば、イリジウム等を用いてもよい。
このように、第2の弾性膜113を、白金、イリジウム等の金属で、第3の弾性膜114とはエッチング特性が異なり選択的にエッチングされない材料で形成することにより、弾性膜除去部111aを容易に形成することができる。また、この第2の弾性膜113は、例えば、安定化もしくは部分安定化酸化ジルコニウム等の引張り応力を有する金属酸化物でもよい。
また、本実施形態では、第1の弾性膜112を、酸化シリコン膜で形成したが、例えば、ボロンドープシリコン膜等であってもよい。
このような構成によっても、上述の実施形態の効果を得ることができる。また、本実施形態では、エッチングされる第3の弾性膜114の下に、さらにそれぞれ別部材で形成された第1の弾性膜112及び第2の弾性膜113を設けるようにしたので、弾性膜除去部111a及び開口45の形成によって生じる振動板の撓みをさらに低く抑えることができる。
(実施形態5)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図25を用いて説明する。本実施形態が実施形態2と異なるところは、圧電体膜を下部電極24と上部電極25とが交差する場所以外にも設置した点にある。尚、実施形態2と同じ点については説明を省略する。図25は、圧電素子の構造を示す要部模式断面図である。図26(a)は、圧電素子の構造を示す要部模式平面図であり、図26(b)は、圧電素子の構造を示す要部模式側断面図である。
本実施形態では、図25(a)に示すように、圧電体としての圧電体膜117を全体に設け、上部電極25を各開口45に対応するように個別に設けている。この場合、上部電極25のパターニングにより圧電体膜117の厚さ方向の一部まで除去されてもよく、さらに、図25(b)に示すように、開口45に対応する領域以外の圧電体としての圧電体膜118を圧電体膜118の厚さ方向の一部まで積極的にパターニングするようにしてもよい。
また、実施形態2〜実施形態4では、圧電体能動部88が形成される領域以外の総ての領域の振動膜43をパターニングして弾性膜除去部100a、弾性膜除去部108a、弾性膜除去部111aとしたが、これに限定されない。例えば、図26(a)及び26(b)では基体44上に可撓膜119が設置され、可撓膜119上に下部電極24が設置されている。可撓膜119と下部電極24とで振動膜120が構成されている。圧電体能動部88の周囲で開口45の縁部に沿った部分のみに弾性膜除去部119aが設置されるようにしてもよい。
(実施形態6)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図27を用いて説明する。本実施形態が実施形態2と異なるところは、圧電体能動部88の周囲が弾性膜除去部に対向する領域まで延設した点にある。尚、実施形態2と同じ点については説明を省略する。図27は、圧電素子の構造を示す要部模式断面図である。
本実施形態では、図27に示すように、下部電極24上に圧電体としての圧電体膜123が設置され、圧電体膜123上に上電極としての上部電極124が設置されている。そして、圧電体能動部88の周囲が弾性膜除去部100aに対向する領域まで延設されている。そして、圧電体能動部88を構成する圧電体膜123を一様な厚さで形成されている。
このような構成によっても、実施形態2と同様の効果を奏する。また、本実施形態では、圧電体能動部88の周囲が弾性膜除去部100aに対向する領域に位置するように形成するようにした。すなわち、圧電体能動部88は、弾性膜除去部100aによって相対的に突出した部分の振動膜102の平面方向に向かう面を挟持するように設けられている。したがって、圧電体能動部88が振動膜102の平面幅方向へ位置ずれすることを防止することができる。
(実施形態7)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図28を用いて説明する。本実施形態が実施形態5と異なるところは、圧電体能動部88の周囲が弾性膜除去部に対向する領域まで延設した点にある。尚、実施形態5と同じ点については説明を省略する。図28は、圧電素子の構造を示す要部模式断面図である。
本実施形態では、図28に示すように、基体44上に可撓膜119が設置され、可撓膜119上に下部電極24が設置されている。可撓膜119と下部電極24とで振動膜120が構成されている。圧電体能動部88の周囲で開口45の縁部に沿った部分のみに弾性膜除去部119aが設置されている。
そして、下部電極24上に圧電体としての圧電体膜127が設置され、圧電体膜127上に上電極としての上部電極128が設置されている。圧電体能動部88はこの弾性膜除去部119aに対向する領域まで延設されている。
このように、弾性膜除去部119aを狭い幅で設けることにより、膜形成の際、この弾性膜除去部119aに対向する領域の圧電体膜127は、表面が振動膜120の形状に沿って形成されず、略平面状に形成される。そのため、圧電体能動部88をパターニングしても弾性膜除去部119aに対向する領域の圧電体膜127は他の部分より厚く残ることになる。
これにより、本実施形態においても、実施形態6と同様の効果を奏する。圧電体能動部88の周囲では下部電極24と上部電極128との距離が長くなる為、圧電体膜127の絶縁破壊が防止され、信頼性を向上することができる。
(実施形態8)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図29を用いて説明する。本実施形態が実施形態2と異なるところは、可撓膜100の代りに下部電極を圧縮応力を有する膜にして下部電極24の一部を除去して下電極膜除去部とした点にある。尚、実施形態2と同じ点については説明を省略する。図29は、各層が受ける応力の状態を説明するための模式断面図である。
本実施形態では、図29に示すように、基体44上に可撓膜131、下電極としての下部電極132、圧電体膜26及び上部電極25がこの順に設置されている。可撓膜131はシリコン単結晶基板からなる基体44の表面を酸化させた二酸化シリコン膜である。本実施形態の圧電体能動部88が受ける応力の状態を以下に説明する。
図29(a)に示すように、圧電体膜26及び上部電極25は、基体44から引張応力σ2,σ1を受けており、本実施形態では、下部電極132が圧縮応力σ3を受けている。そのため、図29(b)に示すように、台形となった圧電体能動部88では圧電体膜26及び上部電極25は、それぞれ引張応力σ2,σ1の一部が開放され、下部電極132は、圧縮応力σ3の一部が開放される。下部電極132には圧電体膜26と重ならない場所の厚みが薄くなるように除去された下電極膜除去部132aが設置されている。
図29(c)は、開口45をエッチングにより形成前後の各層が受ける応力の状態を模式的に示した図である。図29(c)に示すように、圧電体能動部88の下方に開口45を形成する。基体44から受ける圧電体膜26及び上部電極25の引張応力σ2,σ1が開放されて圧縮方向の力となり、一方、下部電極132の下電極膜除去部132aが形成されている部分の圧縮応力σ3が開放されて引張り方向の力となる。したがって、圧電体膜26及び上部電極25の応力σ2,σ1が開放される力と下部電極132の圧縮応力σ3が開放される力とがつり合っている場合には、可撓膜131のたわみはほとんど発生しない。
このような圧縮応力を有する下部電極132の材料としては、圧縮応力を有する膜となる材料、例えば、金属、導電性酸化物または導電性窒化物であることが好ましく、具体的に、金属としては、例えば、白金、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、レニウム、ロジウム及びパラジウム、並びにこれらの化合物等が挙げられる。導電性酸化物としては、例えば、酸化ルテニウム、酸化インジウム錫、酸化カドミウムインジウム、酸化錫、酸化マンガン、酸化レニウム、酸化イリジウム、酸化ストロンチウムルテニウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム及び酸化モリブデン、並びにこれらの化合物等が挙げられる。また、導電性窒化物としては、窒化ニオブ、窒化ジルコニウム、窒化タングステン、窒化ハフニウム、窒化モリブデン、窒化タンタル、窒化クロム及び窒化バナジウム、並びにこれらの化合物等が挙げられる。
また、このような下部電極132は、上述の実施形態と同様に、ゾル−ゲル法、スパッタリング法等により形成することができる。さらに、上述のように、一般に圧電体膜26は、スパッタリング法やゾル−ゲル法で成膜されるため、成膜後に大気雰囲気下または酸素雰囲気下で600〜1000℃程度の温度で焼成して結晶化させる必要がある。そのため、下部電極132は、材料として白金及びイリジウム等の金属を用いた場合、このような高温、酸化雰囲気下では、引張り応力となってしまう。このような場合には、圧電体膜26をゾル−ゲル法またはスパッタリング法等によりPZTの前駆体膜を形成後、アルカリ水溶液中での高圧処理法にて低温で結晶成長させる方法等により、圧縮応力とすることができる。
このように、本実施形態では、下部電極132を圧縮応力を有する材料で形成して、下部電極132の一部をオーバーエッチングして下電極膜除去部132aを設けた。これにより、圧電体能動部88のパターニング及び開口45形成後に、各圧電体能動部88の幅方向両側に設けられた下電極膜除去部132aで圧縮応力が開放される。これにより、可撓膜131が引張方向の応力を受ける。したがって、圧電体膜26及び上部電極25の圧縮方向の応力が相殺され、開口45形成による可撓膜131の初期撓み量を低減または無くすことができる。また、同時に圧電体膜26の変形も防止できるため、圧電体膜26の開口45形成前の圧電特性を維持することができる。すなわち、圧電体能動部88の変位効率を向上することができる。
尚、下部電極132の圧縮応力が開放される大きさは、下電極膜除去部132aの深さによって決る。したがって、下電極膜除去部132aの深さは、膜全体の応力バランスから考慮して決定することが好ましく、例えば、本実施形態では、0.1μmとした。
(実施形態9)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図30を用いて説明する。本実施形態が実施形態8と異なるところは、圧電体膜26と対向しない場所の下部電極24の幅を狭くした点にある。尚、実施形態8と同じ点については説明を省略する。図30(a)は、圧電素子の構造示す模式平面図であり、図30(b)は、圧電素子の構造示す模式側断面図である。
本実施形態では、図30に示すように、基体44上に可撓膜135が設置され、可撓膜135上に第2の弾性膜136が重ねて設置されている。可撓膜135はシリコン単結晶基板からなる基体44の表面を酸化させた二酸化シリコン膜である。第2の弾性膜136上には下電極としての下部電極137が設置されている。基体44の平面視において圧電体膜26と対向しない場所では圧電体膜26と対向する場所より下部電極137の幅が狭くなっている。下部電極137が狭くなるように除去された部分が下電極膜除去部137aである。この部分では下部電極137の強度が低下する。そのため、可撓膜135と下部電極137との間に、例えば、酸化ジルコニウム等からなる第2の弾性膜136が設置され、可撓膜135の強度を強めている。このような構成によっても、実施形態8と同様の効果が得られる。また、本実施形態では、第2の弾性膜136を設けているため、可撓膜135、第2の弾性膜136及び下部電極137の強度が保持され、耐久性の低下が防止される。
尚、本実施形態では、可撓膜135上に第2の弾性膜136を設けるようにしたが、これに限定されず、例えば、基体44と可撓膜135との間に酸化ジルコニウム等からなる第2の弾性膜136を設けるようにしてもよい。
下部電極137上には圧電体膜26及び上部電極25が設置されている。圧電体膜26の上面と対向しない場所では圧電体膜26の上面と対向する場所より上部電極25の幅が狭くなっている。これにより、可撓膜135の応力分布における上部電極25の応力の影響を小さくしている。
(実施形態10)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図31を用いて説明する。本実施形態が実施形態2と異なるところは、下部電極24の代りに上部電極25を圧縮応力を有する膜とした点にある。尚、実施形態2と同じ点については説明を省略する。図31は、各層が受ける応力の状態を説明するための模式断面図である。本実施形態の圧電体能動部88が受ける応力の状態を説明する。
本実施形態では、図31(a)に示すように、基体44上に可撓膜100、下部電極24、圧電体膜26及び上電極としての上部電極140がこの順に積層されている。圧電体膜26及び上部電極140の各層を成膜した状態では、圧電体膜26及び下部電極24は、それぞれ基体44から引張応力σ2,σ3を受け、上部電極140及び可撓膜100は、それぞれ圧縮応力σ1,σ4を受けている。
そして、図31(b)に示すように、台形となった圧電体能動部88では上部電極140及び圧電体膜26の応力σ1,σ2の一部が開放される。
図31(c)は、開口45をエッチングにより形成前後の各層が受ける応力の状態を模式的に示した図である。図31(c)に示すように、圧電体能動部88の下方に開口45を形成しても、圧電体膜26と上部電極140との基体44から受ける応力の向きが逆である。このため、圧電体膜26の引張応力σ2が開放される力と上部電極140の圧縮応力σ1が開放される力とがつり合っている。これにより、下部電極24及び可撓膜100からなる振動膜102の撓みはほとんど発生しない。
このような圧縮応力を有する上部電極140の材料としては、圧縮応力を有し、また導電性の高い材料で形成するのが好ましく、例えば、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム及びレニウムの何れかの金属が好適である。
また、上部電極140は、上述の実施形態と同様に、スパッタリング法により成膜すればよいが、本実施形態では、上部電極140を所定のガス中、例えば、ガス圧1Pa以下でスパッタリング法によって成膜することにより、上部電極140中にそのガスを取り込んでいる。これにより、上部電極140に、さらに大きな圧縮応力を付与することができる。
尚、この上部電極140中に取り込むガスとしては、不活性ガスであることが好ましく、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン及びラドンが好適である。また、スパッタリングの際のガス圧等の諸条件は、スパッタ装置及び材料等によって、適宜調整すればよい。
このように、本実施形態では、少なくとも成膜した状態での上部電極140に圧縮応力を付与するようにしたため、圧電体能動部88の形成及び開口45形成後に上部電極140が引張方向の応力を受ける(圧縮応力が開放される)。この引張り応力と、圧電体膜26の圧縮方向の応力とが相殺され、開口45形成による可撓膜100の初期撓み量を低減または無くすことができる。また、上述のように、可撓膜100は、初期撓み量が低減されることによって圧電体能動部88の駆動によっても塑性変形域に入ることがなく、実質的に変形量を向上することができる。
尚、本実施形態では、上部電極140中に不活性ガスを取り込むことにより、上部電極140にさらに大きな圧縮応力を付与するようにしたが、これに限定されるわけではない。上部電極140は、基本的には圧縮応力となっているので、不活性ガスを取り込まなくてもよいことは言うまでもない。
(実施形態11)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図32を用いて説明する。本実施形態が実施形態10と異なるところは、上部電極25に、不活性ガスの代わりに、上部電極25の金属とは異なる成分の金属、半金属、半導体または絶縁体等の添加物を添加することによって、上部電極25を圧縮応力とした点にある。尚、実施形態10と同じ点については説明を省略する。図32は、各層が受ける応力の状態を説明するための模式断面図である。
本実施形態では、図32(a)に示すように、基体44上に可撓膜100、下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25がこの順に積層されている。上部電極25及び圧電体膜26は台形に形成されている。そして、上部電極25に添加物142が添加される。添加物142の添加方法としては、例えば、上部電極25を形成後、上部電極25の上方からのイオン打ち込みによって、添加物142を上部電極25に添加することができる。
また、例えば、図32(b)に示すように、上部電極25上に、上部電極25に添加される添加物層143を形成する。次いで、図32(c)に示すように不活性ガスまたは真空中で加熱処理することにより添加物層143の成分元素を上部電極25に固相拡散させることにより、上部電極25に添加物142を添加することができる。
このように、イオン打ち込みまたは固相拡散によって上部電極25に添加物142を添加した場合には、図32(d)に示すように、上部電極25の上層部144に添加物142が多く添加されるため、上部電極25の上層部144が特に強い圧縮応力となる。
このように、上部電極25に、上部電極25の金属とは異なる金属等の添加物を添加することにより、上部電極25は体積が膨張することによって圧縮応力となる。したがって、実施形態10と同様に、振動膜102の初期撓み量を低減することができ、実質的に圧電体能動部88の駆動による振動膜102の変形量を向上することができる。また、本実施形態では、上部電極25の上層部144が特に強い圧縮応力となっているため、振動膜102の初期撓み量を低減するのに効果的である。
(実施形態12)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図33を用いて説明する。本実施形態が実施形態10と異なるところは、上部電極25を圧電体膜26に接する第1の電極膜とその上に積層される第2の電極膜とで構成した点にある。尚、実施形態10と同じ点については説明を省略する。図33は、圧電素子の構造を示す模式断面図である。
本実施形態では、図33に示すように、基体44上に可撓膜100、下部電極24、圧電体膜26、第1の電極膜147及び第2の電極膜148がこの順に積層されている。第1の電極膜147及び第2の電極膜148により上電極としての上部電極149が構成されている。
第1の電極膜147は、実施形態10と同様、白金、パラジウム、イリジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム及びレニウムの何れかの金属で形成され、圧縮応力を有している。また、第2の電極膜148は、第1の電極膜147よりも強い圧縮応力を有することが好ましく、例えば、酸化ルテニウム、酸化インジウム錫、酸化カドミウムインジウム、酸化錫、酸化マンガン、酸化レニウム、酸化イリジウム、酸化ストロンチウムルテニウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウムまたは酸化モリブデン等の導電性の酸化膜、あるいは、例えば、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化ジルコニウム、窒化タングステン、窒化ハフニウム、窒化モリブデン、窒化タンタル、窒化クロムまたは窒化バナジウム等の導電性の窒化膜で形成されている。
上部電極149の形成方法は、特に限定されないが、本実施形態では、以下の方法で形成した。実施形態2の薄膜製造工程と同様に、基体44上に下部電極24を形成し、圧電体膜26を成膜後台形に形成する。次に、上部電極149を構成する第1の電極膜147を成膜し、次いで、第1の電極膜147上に、第1の電極膜147とは異なる主成分を有する第2の電極膜148を形成する。ここで、第2の電極膜148は、好ましくは導電性酸化膜または導電性窒化膜からなる。これらは、直接、酸化膜または窒化膜を形成してもよいが、成膜した後、酸化または窒化して形成してもよい。その後、上述の製造工程と同様に、上部電極149及び開口45を形成する。
上部電極149をこのような構成としても、実施形態10と同様に、振動膜102の圧電体能動部88の駆動による変形量を向上することができる。また、上部電極149を圧縮応力を有する二層で構成し、上層を導電性の酸化膜または窒化膜等で構成することにより、下層よりも強い圧縮応力としたので、実施形態10と同様に、振動膜102の初期撓み量を効果的に抑えることができる。
尚、本実施形態では、上部電極149を二層で構成しているが、例えば、第1の電極膜147を設けず、導電性酸化膜または導電性窒化膜で形成される第2の電極膜148のみで構成するようにしてもよい。このような構成においても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(実施形態13)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図34を用いて説明する。本実施形態が実施形態8と異なるところは、圧電体能動部88に対向する領域の略中央部に可撓膜100の厚さ方向の一部を除去した弾性膜除去部を設けた点にある。尚、実施形態8と同じ点については説明を省略する。図34(a)は、圧電素子の構造示す模式平面図であり、図34(b)は、圧電素子の構造示す模式側断面図である。
本実施形態では、図34に示すように、基体44上に可撓膜152、下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25がこの順に積層されている。可撓膜152及び下部電極24により振動膜153が構成されている。圧電体能動部88に対向する領域の略中央部には可撓膜152の厚さ方向の一部を除去した弾性膜除去部152aが設置されている。
このような構成においても、上述の実施形態と同様に、弾性膜除去部152aによって可撓膜152の圧縮応力の一部が開放され、振動膜153の初期撓み量を低減することができる。さらに、振動膜153の初期撓み量の低減と同時に、圧電体膜26に引張り方向の力が付与される。これにより、圧電体膜26の応力が、成膜時と同等かもしくは引張り方向に強くすることができ、圧電特性を実質的に向上することができる。
尚、本実施形態では、開口45側の振動膜153の幅方向略中央部に、弾性膜除去部152aを設けるようにしたが、これに限定されない。次に、本実施形態の変形例を示す。図35(a)は、圧電素子の構造示す模式平面図であり、図35(b)は、圧電素子の構造示す模式側断面図である。
図35に示すように、基体44上に可撓膜154、下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25がこの順に積層されている。可撓膜154及び下部電極24により振動膜155が構成されている。圧電体能動部88に対向する領域の周囲には可撓膜154の厚さ方向の一部を除去した弾性膜除去部154aが設置されている。
このような構成においても、上述の実施形態と同様に、振動膜155の圧縮応力の一部が弾性膜除去部154aによって開放され、振動膜155の初期撓み量を低減することができ、圧電特性を実質的に向上することができる。
(実施形態14)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図36を用いて説明する。本実施形態が実施形態2と異なるところは、下部電極24と圧電体膜26との間に、下部電極24とは実質的に異なる材料からなる導電性膜をさらに設け、この導電性膜を圧縮応力を有する膜とした点にある。尚、実施形態2と同じ点については説明を省略する。図36は、各層が受ける応力の状態を説明するための模式断面図である。
本実施形態では、図36(a)に示すように、基体44上に可撓膜100、下部電極24、導電性膜158、圧電体膜26及び上部電極25がこの順に設置されている。可撓膜100及び下部電極24により振動膜159が構成されている。可撓膜100はシリコン単結晶基板からなる基体44の表面を酸化させた二酸化シリコン膜である。ここで、本実施形態の圧電体能動部88が受ける応力の状態を説明する。
圧電体膜26及び上部電極25等の各層を成膜した状態では、上部電極25、圧電体膜26及び下部電極24は、それぞれ基体44から引張応力σ1,σ2,σ3を受ける。可撓膜100及び導電性膜158が、それぞれ圧縮応力σ4,σ5を受けている。
そして、図36(b)に示すように、台形となった圧電体能動部88では上部電極25及び圧電体膜26の引張応力σ1,σ2の一部が開放される。そして、導電性膜158では圧電体膜26の底面と対応する場所以外の場所を除去して導電性膜除去部160とした。導電性膜除去部160により導電性膜158の圧縮応力σ5の一部が開放されている。
図36(c)は、開口45をエッチングにより形成前後の各層が受ける応力の状態を模式的に示した図である。図36(c)に示すように、圧電体能動部88の下方に開口45を形成しても、上部電極25、圧電体膜26及び下部電極24と導電性膜158及び可撓膜100とから受ける応力の向きが逆であるため、上部電極25及び圧電体膜26の引張応力σ1,σ2が開放される力と導電性膜158の圧縮応力σ5が開放される力とがつり合っていると、下部電極24及び可撓膜100からなる振動膜159の撓みはほとんど発生しない。
このように導電性膜158は圧縮応力を受ける膜であり、また、圧電体膜26と反応性に乏しい膜(好ましくは、PZTの鉛が拡散しないような膜)であることが望ましい。これらの事情を考慮すると、導電性膜158は金属酸化膜であることが好ましく、具体的には、酸化イリジウム、酸化レニウム、酸化ルテニウムのうち何れか1つを主成分とする膜であることが望ましい。
また、導電性膜158の製造方法は、特に限定されず、上述の実施形態と同様に、下部電極24を形成後、例えば、ゾル−ゲル法によって成膜することができる。また、その後、圧電体膜26及び上部電極25を成膜して、圧電体能動部88のパターニングと共に、圧電体能動部88の幅方向両側の導電性膜158をパターニングして導電性膜除去部160とすることによって、本実施形態の構成となる。
ここで、このような本実施形態の圧電素子と従来の圧電素子とので振動膜159の変位量の測定結果を以下に示す。
本実施形態における圧電素子の各層におけるパラメーターは以下のものである。上部電極25の材質は白金で、厚みは100nmである。圧電体膜26の圧電歪定数は150pC/Nで厚みは1000nmである。上部電極25と圧電体膜26の幅は40μmである。導電性膜158の材質は酸化イリジウムであり、膜厚は0.7μmである。下部電極24の材質は白金であり、膜厚は0.2μmである。可撓膜100の厚さは1.0μmである。圧電体膜26に印加される電圧は25Vである。この条件下で振動膜159の最大変位量は195nmであった。
上記と同じ条件での従来技術(導電性膜158を設けない場合)ではコンプライアンスを同じにしたとき、最大変位量は150nmであった。このように、本実施形態の構成では従来技術と比べて30%も大きな変位を得られることがわかる。すなわち、振動板の初期撓み量が確実に低減されている。
以上説明したように、本実施形態によれば、上述の実施形態と同様に、振動板の初期撓み量を低減でき、さらに、超音波プローブの振動板を駆動したときの耐久性が向上する。また、本実施形態では、下部電極24と圧電体膜26の間に導電性膜158を介在した構造であるため、圧電素子の製造工程において、下部電極24が露出するまで導電性膜158をエッチングする場合には、導電性膜158と下部電極24のエッチング選択比の大きいエッチングガスを適当に選択すれば、制御性よくエッチング停止をすることができる。例えば、プラズマモニターを用いてエッチングする場合には、エッチング終点制御が容易になる。従って、素子チップ17の製造の歩留まりが向上し、大量生産に好適な圧電素子を提供することができるため、生産性良く製造することができる。
尚、本実施形態では、導電性膜158を一層で構成するようにしたが、これに限定されず、例えば、二層で構成するようにしてもよい。この場合には、二層とも圧縮応力を有することが好ましいが、これに限定されず、少なくとも上層が圧縮応力を有していればよい。
(実施形態15)
次に、超音波診断装置の一実施形態について図37を用いて説明する。本実施形態が実施形態2と異なるところは、開口45において可撓膜100が圧電体膜26側に凹むように応力を調整した点にある。各層の応力の状態を最適化することにより、振動板を上に凸に変形した状態とすることができ、圧電特性等をさらに向上することができる。尚、実施形態2と同じ点については説明を省略する。図37は、各層が受ける応力の状態を説明するための模式断面図である。
何れかの層を圧縮膜として、その除去部を設けた各実施形態において、振動膜43の腕部の厚さ方向の一部を除去するようにしてもよい。このような構成により、振動膜43は変形し易く、結果的に上に凸になり易い。尚、このとき振動膜43は、圧縮応力であっても引張り応力であってもよい。
一例として、上部電極25及び可撓膜100が圧縮応力であり、可撓膜100の腕部に弾性膜除去部100aを設けた例の圧電体能動部88の応力状態を図37に示す。
本実施形態では、図37(a)に示すように、基体44上に可撓膜100、下部電極24、圧電体膜26及び上部電極25がこの順に設置されている。圧電体膜26及び上部電極25の各層を成膜した状態では、圧電体膜26及び下部電極24は、それぞれ基体44から引張応力σ2,σ3を受け、上部電極25及び可撓膜100は、それぞれ圧縮応力σ1,σ4を受けている。この上部電極25の圧縮応力σ1の大きさは、本実施形態では、圧電体膜26及び下部電極24の引張応力σ2,σ3の大きさより大きい。また、膜全体の応力としても圧縮方向に大きくなっている。
図37(b)に示すように、台形となった圧電体能動部88では上部電極25及び圧電体膜26及び下部電極24の応力σ1,σ2,σ3の一部が開放される。また、同時に、本実施形態では、圧電体能動部88の周囲の可撓膜100の一部を除去して弾性膜除去部100aとしているため、可撓膜100の応力σ4の一部も開放される。
次に、図37(c)に示すように、圧電体能動部88の下方に開口45を形成しても、圧電体膜26及び下部電極24と上部電極25及び可撓膜100との基体44から受ける応力の向きが逆であり、圧電体膜26及び下部電極24の引張応力σ2、σ3が開放される力よりも上部電極25の圧縮応力σ1及び可撓膜100の圧縮応力σ4の一部が開放される力の方が大きいため、可撓膜100からなる振動膜102が上に凸に変形する。
このように、本実施形態では、上部電極25に、所定以上の大きさの圧縮応力を付与するようにした。そのため、圧電体能動部88を台形に形成し開口45を形成すると、上部電極25が引張方向の応力を受けて(圧縮応力が開放されて)、上部電極25の応力が圧電体膜26及び下部電極24の圧縮方向の応力と相殺される。さらに、振動板を上に凸に変形させることができる。また、特に、本実施形態では、圧電体能動部88の周囲の可撓膜100に、厚さ方向の一部を除去した弾性膜除去部100aを形成したため、振動膜102のコンプライアンスが向上し、振動膜102がより上に凸に変形しやすくなっている。したがって、圧電体能動部88の駆動による振動板の変形量を著しく向上することができる。
尚、本実施形態では、可撓膜100及び上部電極25が、圧縮応力を有する圧縮膜となっているが、これに限定されず、少なくとも下部電極24、上部電極25、または下部電極24上に形成される圧電体膜26の何れかが圧縮膜であればよく、勿論、二者または総てが圧縮膜であってもよい。
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態を説明したが、圧電素子の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
また、以上説明した各実施形態は、成膜及びリソグラフィプロセスを応用することにより製造できる圧電素子を例にしたが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、基板を積層して仕切り壁51や開口45を形成するもの、あるいはグリーンシートを貼付もしくはスクリーン印刷等により圧電体膜を形成するもの等、各種の構造の圧電素子に本発明を採用することができる。
このように、本実施形態は、その趣旨に反しない限り、種々の構造の素子チップ17に応用することができる。
(効果)
以上説明したように、可撓膜100の腕部に対応する部分の少なくとも一部を除去するようにしたので、圧縮応力の一部が開放された。開口45をパターニングしても、振動膜102の撓みを低減することができる。また、可撓膜100の撓みがほとんど発生しない場合には、圧電体膜26の圧電特性を維持、実質的に向上することができ、圧電素子の変位効率を向上することができるという効果を奏する。
16…筐体、17…超音波トランスデューサー素子チップとしての素子チップ、24,132,137…下電極としての下部電極、25…上電極としての上部電極、26,117,118,123,127…圧電体としての圧電体膜、43,102,111,120,153,155,159…振動膜、124…上部電極、128,140,149…上電極としての上部電極。

Claims (1)

  1. 振動膜上に圧電素子が設置された超音波トランスデューサー素子チップと、
    前記超音波トランスデューサー素子チップを支持する筐体と、を備え、
    前記圧電素子は、前記振動膜上に設置された下電極と、前記下電極上に形成された圧電体と、前記圧電体の表面に形成された上電極と、を備え、
    前記圧電体は前記上電極側から前記下電極側へ向かって徐々に幅広となり、その断面形状が略台形形状であることを特徴とする超音波プローブ。
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